JP2001045981A - ペプシン処理ゼラチン - Google Patents

ペプシン処理ゼラチン

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JP2001045981A JP11228105A JP22810599A JP2001045981A JP 2001045981 A JP2001045981 A JP 2001045981A JP 11228105 A JP11228105 A JP 11228105A JP 22810599 A JP22810599 A JP 22810599A JP 2001045981 A JP2001045981 A JP 2001045981A
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裕孝 松原
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俊治 服部
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哲也 蛯原
Shinkichi Irie
伸吉 入江
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食料および医療用として使用するのに有用な
ゲル化能を有する低アレルゲン性のペプシン分解ゼラチ
ンおよびその製造法を提供。 【解決手段】 ゼラチンをペプシンで処理することによ
り得られ、ゲル化能を有する低アレルゲン性ペプシン処
理ゼラチン。この低アレルゲン性ペプシン分解ゼラチン
の重量平均分子量は20,000を超え、そのアレルゲ
ン性は、原料ゼラチンのアレルゲン性より20%以下で
ある。低アレルゲン性ペプシン分解ゼラチンは、たとえ
ば、ゼラチンをペプシンによって2〜8時間処理するこ
とにより製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食料および医療用と
して利用可能な低アレルゲン性ゼラチンに関する。
【0002】
【従来の技術】ゼラチンは生体結合組織に大量に存在す
るコラーゲンを熱水で抽出したもので、食用、医療用に
広く利用されている。一般にコラーゲンは、動物種間で
アミノ酸配列の相同性が高く、特に牛、豚と人と90%
以上同じである。このためコラーゲンより得られるゼラ
チンは、アレルゲン性が低い。
【0003】しかし、ごく少数ではあるが、近年幼児に
おいて、ワクチン接種後にアレルギー反応が報告され、
その抗原物質がワクチンに添加された、ゼラチンである
ことが明らかになった。
【0004】従来から、ゼラチンは安全で健康的な天然
物質として食用、医療用に用いられてきた。ゼラチンを
さらに安全に用いるため、低分子化することでアレルゲ
ン性をさらに低くしたゼラチンの以下の製法が報告され
ている。すなわち、特開平7-82299号公報には、
コラーゲン成分あるいはその変性体であるゼラチン成分
を含む原材料を細菌性のコラゲナーゼ酵素で特異的に分
解することによって、分子量1000以下の抗原性がな
く、アミノ酸配列が(Gly-X-Y)n:n=1〜3であるペプチ
ドが70%以上含有するようなペプチド組成物が報告さ
れている。しかし、ゼラチンを低分子化することで、ア
レルゲン性を低くする試みにおいては、数千以下の分子
量に低分子化することによってゼラチン分解物は水溶液
となり、ゼラチンゲルは形成されなくなる。
【0005】また、特開平11−12196号公報は、
ゼラチン成分またはコラーゲン成分をコラゲナーゼ酵素
を用いて特異的に分解して得られる、分子量が10,0
00以下のペプチドを主成分とする低抗原性安定化剤を
開示する。しかし、ここで得られるペプチドもゲル形成
能がない。
【0006】本出願人は、ゼラチンアレルギー患者のIg
Eのエピトープを明らかにし、ペプシンによる特異的酵
素反応を利用して、ゼラチンにおけるIgE反応部位が分
解除去された重量平均分子量3,500〜20,000の
低アレルゲン性ペプシン分解ゼラチンにかかる発明を出
願した(特願平10-173901号)。しかし、この
発明のペプシン分解ゼラチンはゲル形成能を有しない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の
目的は食料および医療用として有用なゼラチンゲル形成
能を保った状態の、低アレルゲン性ゼラチンを提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
するために、本発明者は鋭意検討した結果、所定の条件
下でゼラチンをペプシンで処理することによって、ゲル
形成能を保ちつつアレルゲン性を低下させることに成功
した。
【0009】すなわち、本発明はゼラチンをペプシンで
処理することにより得られ、ゲル化能を有する低アレル
ゲン性ペプシン処理ゼラチンにある。さらに、本発明は
ゼラチンをペプシン処理することにより得られ、重量平
均分子量が20,000を超えるゲル化能を有する低ア
レルゲン性ペプシン処理ゼラチンにある。
【0010】また、本発明はアレルゲン性が、原料ゼラ
チンのアレルゲン性より20%以下である上記低アレル
ゲン性ペプシン処理ゼラチンにある。さらに、本発明は
ゲル化能を有する低アレルゲン性ペプシン処理ゼラチン
が得られるに足る時間にわたって、ゼラチンをペプシン
によって処理することを特徴とするゲル化能を有する低
アレルゲン性ペプシン処理ゼラチンの製造方法にある。
【0011】以下、本発明をさらに詳細に説明する。上
述したように本出願人は、特願平10-173901号
において、ペプシン分解によって重量平均分子量3,5
00〜20,000であり、SDS−ポリアクリルアミ
ド電気泳動において15kd、17kd、36kdおよ
び60kdに特徴的分離パターンがある低アレルゲン性
の新規ペプシン処理ゼラチンを開示した。このペプシン
処理ゼラチンは室温で水溶液となり、注射用微量蛋白質
成分の安定剤として優れた性質を備えている。しかし、
このペプシン処理ゼラチンはゲル化能を有しないために
食料などには応用範囲が限られていた。そこで、本発明
では低アレルゲン性を実現しつつ、食料、医療用に広範
囲で用いることができる、可塑性を備えたゲル化能を保
ったゼラチンを提供することを目的とする。
【0012】本発明のゼラチンの原料となるゼラチンに
限定はなく、酸性法によって得られたゼラチンでもアル
カリ法によって得られたゼラチンでもよい。さらに可溶
化コラーゲンを熱変性させたゼラチン、すなわちコラー
ゲン変性物でもよい。またゼラチンの由来動物は特に限
定されず、ウシ、ブタ等ほ乳類から得られるものの他、
鳥類、魚類を含めあらゆる起原から得られるゼラチンが
利用可能である。
【0013】ゼラチンのアレルゲン活性は、ゼラチンに
対してアレルギー反応を示す患者の血清を用いて、蛍光
エライザ法(ELISA法)によって算定できる。ゼラ
チンをペプシンで加水分解した場合の、分子量と残存ア
レルゲン活性の関係は、たとえば、2〜8時間のペプシ
ン処理ではゼラチンの平均分子量は20,000より低
下しないのにかかわらず、アレルゲン活性は出発ゼラチ
ンの1/5〜1/10に低下する。一方、ゼラチンを塩
酸中で分解する塩酸分解法ではゼラチンがランダムに分
解され、2時間の処理で分子量は15,000となり4
時間で10,000以下となるが、アレルゲン活性は1
/3程度にしか低下しない(図1参照)。
【0014】一方、ゲル化能については、ペプシン処理
ゼラチンはおおよそ8〜12時間処理までゲルを形成す
るが、塩酸分解では1時間以上の処理でどのゼラチンも
ゲル形成能を有しない。つまりゼラチンをペプシンによ
ってゲル化能を残すのに足る時間、たとえば、1〜12
時間、好ましくは、2〜8時間限定分解することによっ
て、低アレルゲン性でかつゲル形成能をもったゼラチン
を製造することが可能となった。
【0015】ゼラチンを分解させるのに使用するペプシ
ンは当業界で入手できるいずれのペプシンでもよい。た
とえば、シグマ社から市販されているブタ胃粘膜由来の
もの等がある。
【0016】分解は以下に示すような条件が好ましい。
ゼラチンに対するペプシンの濃度は、通常、当業界でプ
ロテアーゼを使用して、蛋白質を加水分解するような濃
度であり、例えば、基質と酵素の重量比は10,00
0:1〜100:1、好ましくは、5,000:1〜5
00:1、より好ましくは1,000:1である。
【0017】溶液は0.05〜0.5モル濃度の酢酸も
しくは塩酸溶液で、好ましくは0.1〜0.3モル濃度
の塩酸溶液であり、ゼラチン濃度は0.01〜数10
%、より好ましくは、5〜30%である。分解温度は3
7℃〜60℃が好ましく、分解時間は、好ましくは1〜
12時間、より好ましくは2時間〜8時間である。
【0018】ペプシン処理ゼラチンの重量平均分子量は
20,000を超えるものであり、好ましくは、20,
000を超え30,000までのものである。本発明の
ペプシン処理ゼラチンはアレルゲン性が出発ゼラチンの
1/5以下であり、しかもゲル化能を有する。
【0019】本発明のペプシン分解ゼラチンは食料や医
療用に使用できる。たとえば、ゼリー、グミキャンディ
ー、嚥下リハビリ食、各種医薬品カプセルおよび賦形剤
などに有用である。
【0020】
【実施例】(実施例1)ペプシン分解ゼラチンの製造 ウシゼラチン(アルカリ法によって得たもの)100g
に精製水300mlを加えて、沸騰水浴中で加熱溶解し
た。液温を37℃まで下げてから、濃塩酸(試薬特級、
12規定濃度)10gを添加し、よく撹拌しながらペプ
シン(シグマ社製ブタ胃粘膜由来)0.1gを加えて、
そのまま37℃で限定的に加水分解を行った。すなわ
ち、濃度25%(w/v)のウシゼラチンをペプシン処理
(塩酸0.28モル濃度、pH3.0、ペプシン0.0
25%、温度37℃)によって加水分解を行い、所定時
間のペプシン処理におけるペプシン分解ゼラチンの重量
平均分子量を求めた。重量平均分子量は、得られたペプ
シン分解物を高速液体クロマトグラフィーにより以下の
方法によって測定した。分離用カラムは、Shodex Ohpak
SB803とShodex Ohpak SB802.5(昭和電工)を直列につ
ないだものを使用した。溶媒にはリン酸カルシウム緩衝
液(pH6.9)を使用し、流速は1ml/分で、カラム温度
は40℃とした。分子量はポリエチレンオキサイド分子量
マーカーを標準として算定した。比較として、同じ濃度
のウシゼラチンを使用して塩酸で処理(塩酸0.4モル
濃度、pH1.5、温度76℃)をした分解ゼラチンの
重量平均分子量も求めた。
【0021】図1に加水分解時間(横軸)に関する重量
平均分子量(縦軸)を示す。図1から分かるように、1
〜12時間のペプシン処理では分解ゼラチンの重量平均
分子量は20,000以下に低下しなかったのに対し、
塩酸による分解では2時間の処理で重量平均分子量は約
15,000となり4時間で10,000以下となっ
た。 (実施例2)ペプシン分解ゼラチンの残存アレルゲン活
性 実施例1で得たゼラチンの残存アレルゲン活性を患者血
清に対する反応から求めた。つまりペプシン処理したゼ
ラチンをELISA用プレートに吸着させ、ELISA法によっ
て、患者血清中のゼラチンに対する、IgE抗体価を測定
した。
【0022】結果を図2に示す。図2から分かるよう
に、1〜12時間のペプシン処理では分解ゼラチンの残
存アレルゲン活性は出発ゼラチンの20%以下に低下し
たのに対し、塩酸による分解では約30%までしか低下
しなかった。 (実施例3)ゲル形成能の観察 A.実施例1と同様にして得たペプシン処理分解ゼラチ
ン(処理条件:ペプシン0.025%、温度37℃)の
ゲル形成能を観察した。未処理、1、2、3、4、6、
8、12、16および24時間処理ゼラチンの水溶液を
1晩冷却(4℃)した後、ガラス球をゲルゼラチン上に
のせた。ペプシン8時間処理までのゼラチンはゲル化し
てガラス球を完全に支えることができた。12時間処理
ではガラス球をほぼ支えることができ、16時間処理で
はゲルは形成するもののゲル強度が低く、ガラス球はゲ
ル中にめり込んだ。 B.実施例1と同様にして得たペプシン処理分解ゼラチ
ン(処理条件:ペプシン0.025%、温度37℃)の
ゲル形成能を観察した。未処理、1、2、3、4、5、
6、8、12、16、20および24時間処理ゼラチン
の水溶液を1晩冷却(4℃)した後、室温に15分おい
て試験管を倒立させた。ペプシン処理8時間以内ではゲ
ル形成しており倒立させてもゲルは落下しなかった。
【0023】
【発明の効果】本発明の新規なペプシン分解ゼラチン
は、アレルゲン性を大幅に減じたうえ、ゼラチン本来の
ゲル化能が残存しており、食料および医療用に安心して
広範囲に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ペプシンによるゼラチンの加水分解時間と重量
平均分子量の関係を示すグラフである。
【図2】ペプシンによるゼラチンの加水分解と残存アレ
ルゲン活性の関係を示すグラフである。
【図3】本発明のペプシン分解ゼラチンのゲル形成能を
示す図面である。
【図4】本発明のペプシン分解ゼラチンのゲル形成能を
示す図面である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年6月19日(2000.6.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
【請求項4】 ゼラチンを1〜12時間にわたってペプ
シンによって処理することを特徴とする請求項1〜3の
いずれかに記載の低アレルゲン性ペプシン処理ゼラチン
の製造方法。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年10月13日(2000.10.
13)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09H 7/00 A61K 37/12 C12S 3/16 37/18 (72)発明者 蛯原 哲也 東京都足立区千住緑町壱丁目壱番地壱 株 式会社ニッピバイオマトリックス研究所内 (72)発明者 入江 伸吉 東京都足立区千住緑町壱丁目壱番地壱 株 式会社ニッピバイオマトリックス研究所内 Fターム(参考) 4C084 AA06 AA07 DA40 NA06 4H045 AA10 AA20 CA40 EA01 EA35 FA70 HA05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゼラチンをペプシンで処理することによ
    り得られ、ゲル化能を有する低アレルゲン性ペプシン処
    理ゼラチン。
  2. 【請求項2】 重量平均分子量が20,000を超える
    請求項1に記載の低アレルゲン性ペプシン処理ゼラチ
    ン。
  3. 【請求項3】 アレルゲン性が、原料ゼラチンのアレル
    ゲン性より20%以下である請求項1または2に記載の
    低アレルゲン性ペプシン処理ゼラチン。
  4. 【請求項4】 ゲル化能を有する低アレルゲン性ペプシ
    ン処理ゼラチンが得られるに足る時間にわたって、ゼラ
    チンをペプシンによって処理することを特徴とする請求
    項1〜3のいずれかに記載の低アレルゲン性ペプシン処
    理ゼラチンの製造方法。
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