JP2003082458A - 非晶質炭素被膜の形成装置及び形成方法 - Google Patents

非晶質炭素被膜の形成装置及び形成方法

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JP2003082458A JP2001273287A JP2001273287A JP2003082458A JP 2003082458 A JP2003082458 A JP 2003082458A JP 2001273287 A JP2001273287 A JP 2001273287A JP 2001273287 A JP2001273287 A JP 2001273287A JP 2003082458 A JP2003082458 A JP 2003082458A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基材に対する密着性に優れ、かつ表面平滑性
にも優れた低摩擦係数の非晶質炭素被膜を容易に形成可
能となす。 【解決手段】 複数の陰極アーク式蒸発源13、16
と、複数のスパッタ蒸発源14、15をひとつの真空槽
10に備えさせ、陰極アーク式蒸発源13による基材2
8への金属イオン照射後に、スパッタ蒸発源15や陰極
アーク式蒸発源16を用いて非晶質炭素被膜の析出を行
えるようにした。また、その被膜と基材28との間にス
パッタ蒸発源14を用いて特定の金属や化合物の中間層
を形成したり、非晶質炭素被膜中に潤滑雰囲気下での摩
擦係数低減に有効な金属を添加することも可能ならしめ
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械部品、金型、
切削工具、摺動部品などの耐摩耗性、摺動特性、及び表
面保護機能向上のために用いられる非晶質炭素被膜の形
成装置および形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】非晶質炭素被膜は、ダイヤモンドライク
カーボン(DLC)、カーボン硬質膜、a−C、a−
C:H、i−C等とも称される非晶質の炭素被膜または
水素化炭素膜である。非晶質炭素被膜は、高硬度で表面
平滑性に優れ、摩擦係数が低いといった優れた特徴を有
するため、耐摩耗性、低摩擦係数が要求される、機械部
品、金型、切削工具、摺動部品などへの応用が期待され
ており、一部の製品でも実用化されている。この非晶質
炭素被膜は、非晶質状態であるがために、気相合成ダイ
ヤモンド薄膜よりも基材の表面形態を反映した被膜とな
る。また、気相合成ダイヤモンド薄膜と比較して成膜が
低温で行われるため、被膜は圧縮応力を有しており、こ
れも主に基材との熱膨張係数の差で発生する引張り応力
を有する気相合成ダイヤモンド薄膜とは異なる。
【0003】非晶質炭素被膜の形成法としては、CH4
等の炭化水素系ガスを用いたプラズマCVD法や、スパ
ッタ蒸着法、イオンプレーティング法、陰極アーク式蒸
着法などが用いられているが、基材と被膜の密着性が乏
しいため、さまざまな密着性改善案が採られている。非
晶質炭素被膜の密着性改善のための一般的な手法とし
て、基材と非晶質炭素被膜の間に様々な中間層を形成す
る方法が従来から試みられている。例えば特開平200
0−87218は、真空アーク蒸着法で非晶質炭素被膜
を作製する際に、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、
Cr、Mo、W、Fe、SiやAlからなる中間層を形
成し、非晶質炭素被膜の形成初期に基材にかける電圧、
即ち負のバイアスを−400V以下と大きくすることで
炭素イオンと基材表面に形成された金属中間層との混合
層を形成して高密着力を得ている。
【0004】また、特開平2000−128516は、
水素を含まない非晶質炭素層を基材側に形成して密着力
を向上させている。但し、同公報には、基材の前処理方
法についての記載はない。
【0005】一方、高密着力と低摩擦係数を得ることを
目的として特開平2000−128516の様に、フィ
ルタードカソード方式の真空アーク蒸着法を用いて水素
を含まないDLC層を密着力向上のために基板表面に形
成し、その上に低摩擦係数を実現するために水素を含む
DLCを形成することは公知である。なお、フィルター
ドカソード方式とは、蒸発源から発生したイオンの進行
方向を磁場で偏向させて基板に対するマクロパーティク
ルの飛来を抑える方式である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記、特開平2000
−87218で得られる非晶質炭素被膜は、真空アーク
蒸着法を用いるために、被膜表面が粗く、摺動相手材を
摩耗させる欠点がある。また、非晶質炭素被膜形成初期
に基材にかける負のバイアスを−400V以下と大きく
するために基材が加熱され、非晶質炭素被膜がグラファ
イト化して膜の性能劣化が起こる。その防止のために処
理時間の最適化など、条件の選定が煩雑であった。一
方、特開平2000−128516は、予めフィルター
ドカソード方式の真空アーク蒸着法により水素を含まな
いDLC層を形成し、その後、基材を別の装置に移し、
CVD法による水素含有の非晶質炭素被膜を作製してい
るため、操作が煩雑であり、装置間での基材移動時にD
LC膜の表面が汚染されて密着力が低かった。また、C
VD法により水素含有の非晶質炭素被膜を作製している
ため必ずしも低摩擦係数が十分であるとはいえない。
【0007】そこで、本発明は、従来よりも基材との密
着性に優れ、さらに、表面平滑性、低摩擦係数の面でも
優れる非晶質炭素被膜を容易に形成するための装置と方
法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
め、この発明においては、下記I、II、III の形態の被
膜形成装置と、その装置を用いて行う下記〜を基本
形とする被膜形成方法を提供する。
【0009】・装置形態I 少なくとも2基の陰極アーク式蒸発源と、非晶質炭素被
膜を形成する真空槽内の基材に負のバイアスを印加する
ための電源と、少なくとも2基のスパッタ蒸発源を備
え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1基に固体カーボ
ンを原料としてセットし、陰極アーク式蒸発源の他の少
なくとも1基に周期律表第IVa 、Va、VIa、IIIb族から
選ばれた少なくとも一種の金属原料をセットし、スパッ
タ蒸発源の少なくとも1基に固体カーボンを原料として
セットし、スパッタ蒸発源の他の少なくとも1基に周期
律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも
一種の金属を設置して構成される非晶質炭素被膜の形成
装置。
【0010】・装置形態II 少なくとも2基の陰極アーク式蒸発源と、非晶質炭素被
膜を形成する真空槽内の基材に負のバイアスを印加する
ための電源と、少なくとも1基のスパッタ蒸発源を備
え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1基に固体カーボ
ンを原料としてセットし、陰極アーク式蒸発源の他の少
なくとも1基に周期律表第IVa 、Va、VIa、IIIb族から
選ばれた少なくとも一種の金属原料をセットし、スパッ
タ蒸発源の少なくとも1基に固体カーボンを設置して構
成される非晶質炭素被膜の形成装置。
【0011】・装置形態III 少なくとも1基の陰極アーク式蒸発源と、非晶質炭素被
膜を形成する真空槽内の基材に負のバイアスを印加する
ための電源と、少なくとも1基のスパッタ蒸発源を備
え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1基に周期律表第
IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の
金属を原料としてセットし、スパッタ蒸発源の少なくと
も1基に固体カーボンを設置して構成される非晶質炭素
被膜の形成装置。
【0012】・方法 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
発源から金属を蒸発させながら−400V〜−1500
Vのバイアスを印加した真空槽内の基材に金属イオンを
照射し、その後、固体カーボンをセットした蒸発源から
蒸発させた炭素原子を前記真空槽内で基材に照射して基
材上に非晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜
の成膜工程において基材に印加する電圧を−400V〜
+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前段工程において
形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜5
00nm、水素含有率(=水素原子数/(水素原子数+
炭素原子数))を0at.%以上、8at.%以下にす
る非晶質炭素被膜の形成方法。
【0013】・方法 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の到達真空下、又
はH2 、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N2 から選ば
れた少なくとも一種の雰囲気ガス中、0.005Pa以
上、0.5Pa以下の圧力下において周期律表第IVa 、
Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属を
原料としてセットした陰極アーク式蒸発源から金属を蒸
発させて基材に金属イオンを照射し、その後、固体カー
ボンをセットした蒸発源から蒸発させた炭素原子を前記
真空槽内で基材に照射して基材上に非晶質炭素被膜を析
出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に
印加する電圧を−400V〜+40Vの範囲とし、さら
に、成膜の前段工程において形成される基材側非晶質炭
素層の膜厚を0.1nm〜500nm、水素含有率(=
水素原子数/(水素原子数+炭素原子数))を0at.
%以上、8at.%以下にする非晶質炭素被膜の形成方
法。
【0014】・方法 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
発源から金属を蒸発させながら−400V〜−1500
Vのバイアスを印加した真空槽内の基材に金属イオンを
照射し、その後、スパッタ蒸発源を用いて周期律表第IV
a 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の元
素からなる金属層もしくは基材を構成する元素との化合
物層を前記真空槽内において基材上に形成し、さらに、
その上に、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発さ
せた炭素原子を照射して非晶質炭素被膜を析出させ、そ
の非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電
圧を−400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の
前段工程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚
を0.1nm〜500nm、水素含有率(=水素原子数
/(水素原子数+炭素原子数))を0at.%以上、8
at.%以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
【0015】・方法 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の到達真空下、又
はH2 、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N2 から選ば
れた少なくとも一種の雰囲気ガス中、0.005Pa以
上、0.5Pa以下の圧力下において周期律表第IVa 、
Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属を
原料としてセットした陰極アーク式蒸発源から金属を蒸
発させて基材に金属イオンを照射し、その後、スパッタ
蒸発源を用いて周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から
選ばれた少なくとも一種の元素からなる金属層もしくは
基材を構成する元素との化合物層を前記真空槽内におい
て基材上に形成し、さらに、その上に、固体カーボンを
セットした蒸発源から蒸発させた炭素原子を照射して非
晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工
程において基材に印加する電圧を−400V〜+40V
の範囲とし、さらに、成膜の前段工程において形成され
る基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜500n
m、水素含有率(=水素原子数/(水素原子数+炭素原
子数))を0at.%以上、8at.%以下にする非晶
質炭素被膜の形成方法。
【0016】・方法 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
発源から金属を蒸発させながら−400V〜−1500
Vのバイアスを印加した真空槽内の基材に金属イオンを
照射し、その後、固体カーボンをセットした蒸発源から
蒸発させた炭素原子を前記真空槽内で基材に照射して基
材上に非晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜
の成膜工程において基材に印加する電圧を−400V〜
+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前段工程において
形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜5
00nm、炭素、水素及び基材構成元素以外の不純物元
素の含有率(=不純物原子数/(不純物原子数+炭素原
子数))を0at.%以上、4at.%以下にする非晶
質炭素被膜の形成方法。
【0017】・方法 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の到達真空下、又
はH2 、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N2 から選ば
れた少なくとも一種の雰囲気ガス中、0.005Pa以
上、0.5Pa以下の圧力下において周期律表第IVa 、
Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属を
原料としてセットした陰極アーク式蒸発源から金属を蒸
発させて基材に金属イオンを照射し、その後、固体カー
ボンをセットした蒸発源から蒸発させた炭素原子を前記
真空槽内で基材に照射して基材上に非晶質炭素被膜を析
出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に
印加する電圧を−400V〜+40Vの範囲とし、さら
に、成膜の前段工程において形成される基材側非晶質炭
素層の膜厚を0.1nm〜500nm、炭素、水素及び
基材構成元素以外の不純物元素の含有率(=不純物原子
数/(不純物原子数+炭素原子数))を0at.%以
上、4at.%以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
【0018】・方法 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
発源から金属を蒸発させながら−400V〜−1500
Vのバイアスを印加した真空槽内の基材に金属イオンを
照射し、その後、スパッタ蒸発源を用いて周期律表第IV
a 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の元
素からなる金属層もしくは基材を構成する元素との化合
物層を前記真空槽内において基材上に形成し、さらに、
その上に、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発さ
せた炭素原子を照射して非晶質炭素被膜を析出させ、そ
の非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電
圧を−400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の
前段工程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚
を0.1nm〜500nm、炭素、水素及び基材構成元
素以外の不純物元素の含有率(=不純物原子数/(不純
物原子数+炭素原子数))を0at.%以上、4at.
%以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
【0019】・方法 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の到達真空下、又
はH2 、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N2 から選ば
れた少なくとも一種の雰囲気ガス中、0.005Pa以
上、0.5Pa以下の圧力下において周期律表第IVa 、
Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属を
原料としてセットした陰極アーク式蒸発源から金属を蒸
発させて基材に金属イオンを照射し、その後、スパッタ
蒸発源を用いて周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から
選ばれた少なくとも一種の元素からなる金属層もしくは
基材を構成する元素との化合物層を前記真空槽内におい
て基材上に形成し、さらに、その上に、固体カーボンを
セットした蒸発源から蒸発させた炭素原子を照射して非
晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工
程において基材に印加する電圧を−400V〜+40V
の範囲とし、さらに、成膜の前段工程において形成され
る基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜500n
m、炭素、水素及び基材構成元素以外の不純物元素の含
有率(=不純物原子数/(不純物原子数+炭素原子
数))を0at.%以上、4at.%以下にする非晶質
炭素被膜の形成方法。
【0020】なお、形態I、IIの装置は、固体カーボン
を原料としてセットした陰極アーク式蒸発源としてフィ
ルタードカソード形のものを用いてもよい。
【0021】また、方法〜は、いずれも、非晶質炭
素被膜の成膜の前段工程における固体カーボンの蒸発源
として陰極アーク式蒸発源もしくはスパッタ蒸発源を用
い、その前段工程では真空槽内に炭化水素系ガスを導入
せずに基材側非晶質炭素被膜を析出させる方法や、非晶
質炭素被膜の成膜の前段工程における固体カーボンの蒸
発源として陰極アーク式蒸発源を用い、その前段工程で
は真空槽内の圧力を1×10-6Pa以上、0.1Pa以
下にしてアーク放電を開始させる方法、或いは、成膜の
前段工程における固体カーボンの蒸発源としてスパッタ
蒸発源を用い、その前段工程ではHe、Ne、Ar、K
r、Xe、N2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガ
ス中、0.005Pa以上、0.5Pa以下の圧力下で
スパッタ放電を開始させる方法を採ることによって、基
材側非晶質炭素の水素含有率を0at.%以上、8a
t.%以下、同層の不純物元素の含有率を0at.%以
上、4at.%以下となすことができる。密着性向上の
面では水素含有率と不純物元素の含有率について上記の
範囲を共に満足させるのがよい。
【0022】また、基材側非晶質炭素層上に析出させる
上層の非晶質炭素層の少なくとも一部を、アンモニア又
は炭化水素ガスを真空槽内に導入した状態でスパッタ蒸
発源もしくは陰極アーク式蒸発源を用いて形成する、或
いは、基材側非晶質炭素層上に析出させる上層の非晶質
炭素層の少なくとも一部を、アンモニア又は炭化水素ガ
スを真空槽内に導入した状態でスパッタ蒸発源もしくは
陰極アーク式蒸発源を用いて形成し、かつその層に周期
律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも
一種の金属元素を添加すると、表面平滑性に優れた低摩
擦係数の非晶質炭素被膜を得ることができる。このと
き、雰囲気ガスにArなどの不活性ガスを混合してもよ
い。また、アンモニアや炭化水素ガスの導入により上層
の非晶質炭素層に含ませる水素の量は8at.%以上、
50at.%以下にするのがよい。
【0023】
【作用】形態Iの装置を用いると、基材の前処理、即
ち、陰極アーク式蒸発源による金属イオンの照射処理後
に、スパッタ蒸発源による金属層または化合物中間層の
形成を行い、その後、陰極アーク式蒸発源またはスパッ
タ蒸発源を用いて非晶質炭素被膜を形成することがで
き、陰極アーク式蒸発源とスパッタ蒸発源を用いて性質
の異なる非晶質炭素被膜、即ち、下層側には基材との密
着性に優れ、一方、上層側は表面平滑性に優れた低摩擦
係数の非晶質炭素被膜を積層化して形成することができ
る。非晶質炭素被膜の形成にあたっては、固体カーボン
を原料としてセットしてあるスパッタ蒸発源もしくは、
陰極アーク式蒸発源による成膜を行いながら、金属を原
料としてセットしてあるスパッタ蒸発源もしくは、陰極
アーク式蒸発源により金属イオンを蒸発させ、非晶質炭
素内に金属粒子、またはその炭化物粒子が分散した構造
を得ることも可能である。
【0024】また形態IIの装置を用いると、陰極アーク
式蒸発源による金属イオンの照射処理後に、陰極アーク
式蒸発源とスパッタ蒸発源を用いて基材との密着性に優
れた非晶質炭素被膜と表面平滑性に優れた低摩擦係数の
非晶質炭素被膜を積層化して形成することができる。
【0025】さらに、形態III の装置を用いると、陰極
アーク式蒸発源による金属イオンの照射処理後に、スパ
ッタ法で非晶質炭素被膜を作製することができる。
【0026】陰極アーク式蒸発源とは、アークイオンプ
レーティングや、真空アーク蒸着、カソードイオンプレ
ーティングと言われるものと同様であり、固体ターゲッ
トをカソードとし、高電流を印加することにより、ター
ゲット表面にアーク放電を発生させてターゲットを蒸
発、イオン化させる。電子は真空槽本体、または別途真
空中に設けてあるアノードへと流れ込み、正イオンが基
材上に析出するものである。陰極アーク式蒸発源には、
ターゲット周辺に配置した磁場コイルによる磁界により
高密度のプラズマが得られるタイプのものや、蒸発源か
ら発生したイオンの進行方向を磁場により偏向させ、マ
クロパーティクルの基材への飛来を抑えたフィルタード
カソードと呼ばれるタイプのものも使用することができ
るが、基材前処理用の蒸発源は前記したような特別な機
能をもたないものでも構わない。陰極アーク式蒸発源
は、イオン化率が高いために、基材表面をエッチングす
る速度が速く、クリーニング効果が高い。前記固体カー
ボンを原料としてセットしてある陰極アーク式蒸発源が
フィルタードカソード型であっても同様の効果が得られ
る。
【0027】これらの装置によって得られる非晶質炭素
被膜は、従来よりも基材の密着性に優れ、かつ表面平滑
性に優れ、摩擦係数も低い。また、基材の前処理から非
晶質炭素被膜の形成完了までが1つの真空槽で完了し、
基材を2つ以上の真空槽間で移動させる必要がないた
め、処理が非常に簡単になり、膜の表面の基材移動によ
る汚染も起こらない。非晶質炭素被膜の形成方法として
は、周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少
なくとも一種の金属を原料としてセットしてある陰極ア
ーク式蒸発源から金属を蒸発させながら、基材に−40
0V〜−1500Vの負のバイアスを印加して、基材に
金属イオンを照射し、その後、炭素原子を照射する。こ
のとき、炭素原子を発生する方法として、スパッタ蒸発
源もしくは陰極アーク式蒸発源を用いる。
【0028】周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族の金属
元素は、陰極アーク式蒸発源により蒸発させやすく、高
いイオン密度を得ることができて望ましい。これらの元
素の中でも特に、Ti、V、Cr、Zrのイオンはエッ
チング速度が早くて望ましい。Crはアーク放電により
昇華しやすくて前処理時に基材表面に付着するドロップ
レットが極めて少なく、表面のより平滑な膜が形成可能
であるため、更に望ましい。
【0029】陰極アーク式蒸発源により周期律表第IVa
、Va、VIa 、IIIb族の原子を蒸発させる場合、1×1
-6Pa以上、0.1Pa以下の到達真空下で行う。到
達真空度はできるだけ低い方が望ましいが、一般的な真
空成膜装置では1×10-6Pa以下の到達真空度を得る
ことが難しく、また、このような低真空度を実現できる
装置であっても、これ以下の真空に達するのに時間がか
かりすぎて、実用的でない。一方、圧力が0.1Pa以
上であると、前処理終了時から成膜を開始するまでの間
に基材表面にガスが吸着したり、基材表面に酸化層が形
成されたりして膜の密着力が低下するため、望ましくな
い。
【0030】金属イオンの照射は、H2 、He、Ne、
Ar、Kr、Xe、N2 から選ばれた少なくとも一種の
雰囲気ガス中、0.005Pa以上、0.5Pa以下の
圧力下において行っても良い。圧力が0.005Pa以
下であると、ガス導入の効果がなく望ましくない。ま
た、0.5Pa以上である場合は、基材のエッチング速
度が遅くなったり、基材表面に脆い金属膜が形成されて
望ましくない。
【0031】蒸発源から発生させた金属イオンは、基材
に印加された負のバイアスにより加速され、基材表面に
照射せしめられる。このようにして高い運動エネルギー
をもった金属イオンを基材表面に照射することにより、
基材表面の付着物や酸化層が除去され、その上に形成す
る被膜の高い密着性が得られる。基材に印加する負のバ
イアスとしては、直流バイアス、パルス直流バイアス、
高周波バイアスの使用、直流バイアスと高周波バイアス
の併用などが可能であるが、高周波バイアスの単独での
印加は高いVdcが得られないため望ましくない。特に
絶縁体の基材を使用する際には、チャージアップの防止
や異常放電の防止のため、パルス直流バイアスを用いる
ことがさらに望ましい。基材に印加する負のバイアス
は、−1500V以上、−400V以下であることが望
ましい。負のバイアスの絶対値が小さい場合、つまり−
400V以上の電圧では、イオンが十分に加速されない
ため、基材表面をエッチングすることができない。ま
た、負のバイアスの絶対値が大きい場合、つまり−15
00V以下の電圧では、基材の温度が上昇しすぎて望ま
しくない。
【0032】このイオン照射処理では、蒸発源から発生
させた金属イオン以外にも、アークプラズマ中の金属ラ
ジカルやマクロパーティクルなどの金属中性粒子、電
子、雰囲気ガスのイオンやラジカルなどが基材表面に照
射されるが、基材表面のエッチングは主に金属イオンに
より行われる。
【0033】金属イオン照射後に形成する非晶質炭素被
膜は、基材側の非晶質炭素層(A層)の水素含有率(=
水素原子数/(水素原子数+炭素原子数))が0at.
%以上、8at.%以下となるように炭化水素系ガスを
用いずに行う。炭素原子の照射時に基材に印加する電圧
は膜のグラファイト化を回避するために−400V〜+
40Vの範囲とする。
【0034】ここで云う基材側とは、炭素を主成分とす
る被膜の中で、もっとも基材側にある層のことである。
一般的には金属またはその炭化物の層を非晶質炭素膜と
基材との間に中間層として形成することが多いが、その
場合の「基材側」とは、中間層側である。中間層の形成
方法としては、特にスパッタ蒸発源を用いて周期律表第
IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の
元素からなる金属層または化合物層を形成することが、
被膜の平滑性の点から望ましかった。また、陰極アーク
式蒸発源を用いた前記の金属イオン照射時にも、金属薄
膜が形成されたり、その後に形成する非晶質炭素膜と反
応して化合物層が形成されたりする場合があるが、これ
らの層が形成されることは被膜の密着力向上の点から望
ましかった。
【0035】基材側非晶質炭素層(A層)の水素含有率
(=水素原子数/(水素原子数+炭素原子数))を0a
t.%以上、8at.%以下とするために、成膜にはC
4、C22 などの炭化水素ガスを用いず、被膜内部に
不可避の水素のみしか含まれないようにすることが、密
着力を向上させる点から望ましかった。水素はなるべく
少ないほうが、密着力向上の観点から望ましいが、成膜
時に避けることのできない不可避の水素が含まれる場合
がある。不可避の水素とは、成膜を同一装置で繰り返す
と、真空槽の内壁や基板ホルダ、回転テーブルなどに炭
化水素の分解物が付着する。これらの分解物が、水素原
子を含有していない非晶質炭素被膜を成膜しているとき
にエッチングされて気体となり、被膜内に混入される場
合がある。このように被膜の生産上避けることのできな
い被膜内部の含有水素を不可避の水素という。このよう
な不可避の水素の含有率を0at.%以上、8at.%
以下となす。このような層を基材側に形成することによ
り、基材との密着力を高めることができる。基材側非晶
質炭素層の水素含有率を0at.%以上、8at.%以
下となすために成膜は、陰極アーク式蒸発源、もしくは
スパッタ蒸発源を用いて行うことが望ましく、このとき
に基材に印加する電圧は−400V〜+40Vの範囲と
する。また、この後も非晶質炭素被膜の形成は、基材に
印加する電圧を、−400V〜+40Vの範囲にして行
う。基材にかかる負のバイアスが大きくなる(−400
V以下)なると、正に帯電した炭素イオンの引き込み効
果が大きくなるため、イオンによる加熱効果により、形
成された非晶質炭素被膜がグラファイト化し、脆くな
る。また、印加電圧が+40Vよりも大きくなると、正
に帯電した炭素イオンの引き込み効果が小さくなり、か
わりに炭素ラジカルなどの析出が被膜の主成分となって
良好な被膜が形成されない。加えて、成膜速度も減少す
る。また、電子の流入量が大きくなることから加熱効果
が大きくなり、得られる被膜が脆いものとなる。
【0036】また、基材側の非晶質炭素層(A層)に含
まれる基材を構成する元素以外の不純物元素(不純物原
子数/(不純物原子数+炭素原子数))を0at.%以
上、4at.%以下とすることは密着力を高める上で重
要である。不純物元素とは、炭素、水素、および基材を
構成する元素以外の元素であり、例えば、He、Ne、
Ar、Kr、Xe、N、Oなどの雰囲気、及び大気中成
分に起因する元素である。これらの元素は、なるべく少
ないほうが密着力が高いが、成膜上、避けることができ
ない場合がある。
【0037】その不純物元素の含有量を少なくするため
に、基材側の非晶質炭素層の形成を陰極アーク式蒸発源
を用いて行う場合には、1×10-6Pa以上、0.1P
a以下の到達真空下で行う。到達真空度をこの範囲に限
定する理由は、陰極アーク式蒸発源を用いて金属イオン
を照射するときに1×10-6Pa以上、0.1Pa以下
の到達真空下で行うとした理由と同じである。
【0038】基材側非晶質炭素層の形成にスパッタ蒸発
源を用いる場合は、He、Ne、Ar、Kr、Xe、N
2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガス中0.00
5Pa以上、0.5Pa以下の圧力下において行っても
よい。圧力が0.005Pa以下では、スパッタ現象が
発生せず、0.5Pa以上では、前処理終了時から成膜
を開始するまでの間に基材表面にガスが吸着したり、基
材表面に酸化層が形成されたりして、膜の密着力が低下
し、望ましくない。
【0039】前述の様にして形成される基材側非晶質炭
素層(A層)上にさらに積層して形成する上層の非晶質
炭素層(B層)については、少なくとも一部を、炭化水
素系ガスまたはアンモニアを真空槽内に導入した状態で
スパッタ蒸発源、陰極アーク式蒸発源により形成するの
がよく、こうすることは、低摩擦係数、表面平滑性を得
る上で効果がある。
【0040】一般に、陰極式アーク放電蒸着法を用いる
場合、ドロップレットが被膜内に混入するので、表面粗
さが問題とならないレベルまで膜厚を減少させたり、特
殊なフィルタードカソードを用いる必要がある。これに
対し、アンモニア、または炭化水素ガスを用いると陰極
アーク式蒸発源の固体カーボンのみを原料とする場合よ
りも成膜速度を上げることができ、短時間での成膜が可
能となる。陰極アーク式蒸発源から発生して基材に到達
するドロップレットは、単位時間あたり同じ数であるこ
とから、成膜時間が短縮されれば被膜内に混入するドロ
ップレットの数が減少する。これによりフィルタードカ
ソードを用いたりせずに得られる非晶質炭素被膜の表面
粗さを向上させることができる。
【0041】また、スパッタ法においても水素を含まな
い非晶質炭素層を形成する成膜条件の範囲内では、被膜
の表面粗さが粗くなる。一方、成膜時にアンモニア、ま
たは炭化水素ガスを導入した場合は、非晶質炭素層を形
成する成膜条件の範囲内では、被膜は表面平滑である。
したがって、基材側に水素を含まない非晶質炭素層を形
成して密着力を向上した後、アンモニアまたは炭化水素
ガスを真空槽内に導入して成膜を行うと非晶質炭素の膜
厚が同じであれば、水素を含まない非晶質炭素で被膜全
体を形成した場合よりも表面平滑性が良くなる。表面平
滑性は摩擦係数にも影響を与え、表面が粗いと摩擦係数
が高くなることが知られている。したがって、良好な表
面平滑性が得られることにより低摩擦係数を確保でき
る。スパッタ蒸発源、陰極アーク式蒸発源とも、アンモ
ニアよりも炭化水素ガスを用いたときの方が、被膜の摩
擦係数は小さくなる。このようにして意図的に水素を含
ませた上層の非晶質炭素層は、水素含有率8at.%以
上で表面平滑性が良くなり、50at.%以上では耐摩
性が低かった。
【0042】この非晶質炭素被膜に周期律表第IVa, Va,
VIa, IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属を添加
すると、潤滑油雰囲気下での摩擦係数が低減して望まし
い。添加した金属が潤滑油中の添加剤と強固に結合して
低摩擦の潤滑層を形成し、そのために添加しない場合に
比べて摩擦係数が低減する。金属を添加する方法として
は、ガスを原料として用いる場合もあるが、スパッタ蒸
発源、陰極アーク式蒸発源を用いることで、簡単に添加
することができる。
【0043】このほか、基材側の非晶質炭素層(A層)
の膜厚は、500nm以上になると表面が粗くなりすぎ
て実用上問題となる。特に100nm以下が望ましい。
一方、膜厚が薄すぎると密着力向上の効果が得られず、
その密着力向上のために0.1nm以上は必要である。
【0044】
【発明の実施の形態】(実施例1)基材に対し陰極アー
ク式蒸発源を用いた金属イオン照射を行った後、スパッ
タ蒸発源により周期律表第IVa, Va, VIa, IIIb族から選
ばれた少なくとも一種の金属を蒸発させてその金属の層
を基材上に中間層として形成し、その後スパッタ蒸発
源、または陰極アーク式蒸発源を用いて水素含有率(=
水素原子数/(水素原子数+炭素原子数))が0at.
%以上、8at.%以下、又は不純物元素(=不純物原
子数/(不純物原子数+炭素原子数))が0at.%以
上、4at.%以下の非晶質炭素層(A層)を中間層上
に形成した。その後、スパッタ蒸発源、または陰極アー
ク式蒸発源を用いて、炭化水素ガスを導入しながらA層
上に非晶質炭素層(B層)を形成した。
【0045】また、積極的に中間層を導入せず、金属イ
オン照射の後、すぐにスパッタ蒸発源、または陰極アー
ク式蒸発源を用いて水素含有率(=水素原子数/(水素
原子数+炭素原子数))が0at.%以上、8at.%
以下、または不純物元素(=不純物原子数/(不純物原
子数+炭素原子数))が0at.%以上、4at.%以
下の非晶質炭素層を形成した。
【0046】本実施例で用いた被膜形成装置を図1に示
す。真空槽10内に水平円盤上の回転テーブル11を備
え、この回転テーブル11に垂直に固定された基材ホル
ダ12を備える。真空槽10の側壁には、イオン照射用
の陰極アーク式蒸発源13、金属または化合物の層を形
成するスパッタ蒸発源14、成膜様のスパッタ蒸発源1
5、及び陰極アーク式蒸発源16を備える。
【0047】陰極アーク式蒸発源13のターゲット17
には、Ti、V、Cr、Zrを用いた。スパッタ蒸発源
14のターゲット18には、Ti、V、Cr、Zr、
W、Mo、Nbを用いた。陰極アーク式蒸発源13に
は、直流アーク電源23が接続されている。スパッタ蒸
発源15と陰極アーク式蒸発源16のターゲット19、
20には、固体カーボンを用いた。スパッタ蒸発源1
4、15にはパルス直流電源21、22が接続されてい
る。陰極アーク式蒸発源13、16には直流電源23、
24が接続されている。回転テーブル11には、パルス
直流電源25が接続されており、回転テーブル11と電
気的に接続されている基材ホルダ12にも電圧が印加さ
れる。なお、真空槽10にはガス導入口26とガス排気
口27とが設けられている。ガス導入口26からは、C
2 2 、Arを導入することができる。
【0048】本装置でのイオン照射の方法を以下に示
す。
【0049】基材ホルダ12に基材28をセットした
後、真空槽10内を0.002Paまでガス排気口27
から真空排気した。雰囲気ガスとして、Ar、He、N
2 、Ne、Kr、Xeのいずれかを真空槽10内が所定
の圧力になるようにガス導入口26より導入し、もしく
はガスを導入せずに到達真空度のまま、基材ホルダ12
に所定の基板バイアスを印加した。回転テーブル11を
5rpmで回転させながら、ターゲット17に所定のア
ーク電流を流してアーク放電を発生させ、ターゲット1
7の金属イオンを基材28へ衝突させて、基材表面の汚
れや酸化物層をエッチング除去した。このとき、基板バ
イアスはパルス化していない。
【0050】その後、真空槽10内を真空排気した後
に、非晶質炭素被膜の形成を行った。このとき回転テー
ブル11は、5rpmで回転させた。スパッタ蒸発源1
5を用いて成膜を行う場合は、ガス導入口26からAr
を0.05Pa〜1Pa導入し、基材ホルダ12に+4
0〜−400Vの範囲でバイアス印加し、スパッタ蒸発
源15に800Wの電力を投入し、スパッタ放電して固
体カーボン19を蒸発させた。スパッタ蒸発源15に投
入する電力は、パルス直流電圧であり、1〜200kH
zの周波数である。基材ホルダ12に印加したバイアス
はパルス直流電圧であり、周波数は1〜200kHzで
ある。
【0051】陰極アーク式蒸発源16を用いる場合に
は、0.02Pa以下に真空槽10の圧力が減少するま
で待ち、その後、基材ホルダ12に+40V〜−400
Vの範囲でバイアスを印加し、陰極アーク式蒸発源16
に直流電流40Aを投入し、アーク放電を発生させて固
体カーボン20を蒸発させる。このときの基板バイアス
は、パルス化していない。
【0052】スパッタ蒸発源14にターゲット18とし
てセットしてある金属(Ti、V、Cr、Zr、W、M
o、Nb)を蒸発させて基材と非晶質炭素被膜間に、予
めこれらの金属層または化合物層を形成することも行っ
た。このとき、回転テーブル11は、5rpmで回転さ
せた。
【0053】スパッタ蒸発源14を用いて金属層を成膜
する場合は、ガス導入口26からArを0.05Pa〜
1Pa導入する。また、スパッタ蒸発源14を用いて化
合物層を形成する場合には、ガス導入口26からArと
2 2 を導入する。ArとC2 2 の比(=C2 2
/Ar)は、0.1〜0.6である。これらのガスを真
空層10内に導入した後に、基材ホルダ12に+40V
〜−800Vの範囲でバイアスを印加し、スパッタ蒸発
源14に500Wの電力を投入し、スパッタ放電させ
た。スパッタ蒸発源14に投入する電力は、パルス直流
電圧であり、1〜200kHzの周波数である。基材ホ
ルダ12に印加したバイアスはパルス直流電圧であり、
周波数は1〜200kHzである。
【0054】その後、真空層10内を真空排気した後
に、非晶質炭素被膜の形成を行った。このとき回転テー
ブル11は、5rpmで回転させた。スパッタ蒸発源1
5を用いてターゲット19を蒸発させて成膜を行う場合
は、ガス導入口26からArを0.05Pa〜1Pa導
入し、基材ホルダ12に+40V〜−400Vの範囲で
バイアスを印加し、スパッタ蒸発源15に800Wの電
力を投入し、スパッタ放電させた。スパッタ蒸発源15
に投入する電力は、パルス直流電圧であり、1〜200
kHzの周波数である。基材ホルダ12に印加したバイ
アスはパルス直流電圧であり、周波数は1〜200kH
zである。
【0055】陰極アーク式蒸発源16を用いる場合に
は、0.02Pa以下に真空層10の圧力が減少するま
で待ち、その後、基材ホルダ12に+40V〜−400
Vの範囲でバイアスを印加し、陰極アーク式蒸発源16
に直流電流40Aを投入し、アーク放電を発生させ、固
体カーボン20を蒸発させる。このときの基板バイアス
は、パルス化していない。
【0056】その後、真空層10内を真空排気した後
に、ガス導入口26からArとC2 2 を導入する。A
rとC2 2 の比(=C2 2 /Ar)は、0.1〜
0.6である。このとき回転テーブル11は、5rpm
で回転させた。
【0057】スパッタ蒸発源15を用いて成膜を行う場
合は、真空層10の圧力が0.05Pa〜1Paになる
ようにArとC2 2 を導入し、基材ホルダ12に+4
0V〜−800Vの範囲でバイアスを印加し、スパッタ
蒸発源15に400〜1000Wの電力を投入し、スパ
ッタ放電させてターゲット19を蒸発させた。基材ホル
ダ12に印加したバイアスはパルス直流電圧であり、周
波数は1〜200kHzである。スパッタ蒸発源15に
投入する電力は、パルス直流電力であり、1〜200k
Hzの周波数である。
【0058】陰極アーク式蒸発源16を用いる場合に
は、0.02Pa以下に真空層10の圧力が減少するま
で待ち、その後、基材ホルダ12に+40V〜−800
Vの範囲でバイアスを印加し、陰極アーク式蒸発源16
に直流電流40Aを投入し、アーク放電を発生させ、固
体カーボン20を蒸発させる。基材ホルダ12に印加し
た負のバイアスはパルス直流電圧であり、周波数は1〜
200kHzである。
【0059】以上、本発明の非晶質炭素被膜の形成方法
における実施例を述べたが、請求項に挙げた条件以外の
設定条件については、拘束されるものではない。
【0060】次に、本実施例によって得られた非晶質炭
素被膜について密着性、膜厚、表面粗さ、相手攻撃性を
調べた。
【0061】被膜の基材に対する密着性は、ロックウエ
ル剥離試験および打撃試験により評価した。ロックウエ
ル剥離試験には、ロックウエルCスケール硬度測定用の
ダイヤモンド圧子を用い、試験荷重450kgfで被膜
表面から圧子を押し付けてできた圧痕まわりの剥離状況
を光学顕微鏡で観察した。測定は各試料につき5回行
い、剥離面積の大、小によって5段階評価を行った。5
の全く剥離無しから、数字の減少にともなって剥離面積
が増加する。
【0062】膜厚は、カロテスト(ボール膜厚計)で計
測した。このカロテストは、ダイヤモンドペーストを塗
った鋼ボールを被膜に接触させて回転させ、被膜をクレ
ータ状に削る。そして、クレータ部に現われた断面を観
察して膜厚を求めるものである。
【0063】打撃試験は、試料の被膜を形成した面に対
し、直径1インチのタングステンカーバイト系超硬合金
製球を用いて仕事量10Jで200回打撃を加え、打痕
およびその周辺の剥離状況を光学顕微鏡で観察した。そ
して、剥離面積の大、小によって5段階評価を行った。
5の全く剥離無しから、数字の減少にともなって剥離面
積が増加する。
【0064】表面粗さは、東京精密製SURFCOM5
70Aを使い測定長さ0.4mm、CUTOFF値0.
08mm、走査速度0.03mm/sで測定した。
【0065】また、相手攻撃性を見る摺動試験は、CS
EM製ピンオンディスク試験機を用い、大気中、乾式、
摺動半径2mm、回転数500rpm、荷重10N、総
回転数10000回、相手材SUJ2ボール(φ6m
m)の条件で試験した。試験後の相手材SUJ2ボール
の摩耗痕を光学顕微鏡で100倍で観察し、その摩耗直
径を計測した。
【0066】以上の試験のほかに、エンジン部品のカム
の摺動面に、本発明の非晶質炭素被膜を形成し、モータ
リング試験を行った。回転数300rpm、セット荷重
25kg、エンジンオイル潤滑、オイル温度80℃、オ
イル流量0.5cc/min、回転時間2時間として、
摩擦係数を計測した。また、試験後の相手材カムの表面
粗さを測定した。
【0067】表1に被膜の形成条件、評価結果を示す。
いずれの方法においても、ロックウエル剥離試験、打撃
試験ともに剥離が見られず、本発明の方法で形成した薄
膜は基材に対し良好な密着力を示した。
【0068】比較例として表2に、適当な金属イオン照
射を行ったあと、炭化水素ガスやアンモニアを導入しな
い雰囲気で陰極アーク式蒸発源を用いてすべての層を形
成した非晶質炭素膜(比較例1−1)、同様の雰囲気で
スパッタ蒸発源を用いてすべての層を形成した非晶質炭
素膜(比較例1−2)、及び金属イオン処理を行わず
に、適当な中間層をスパッタ蒸発源で形成した後、フィ
ルタード式陰極アーク式蒸発源により非晶質炭素膜を形
成し、その後別の装置に移してRFCVD法により非晶
質炭素膜(比較例1−3)を形成した場合の評価結果を
示した。本実施例と比較して比較例1−1は、被膜の表
面粗さが大きく、摺動時に相手材を攻撃している。ま
た、摩擦係数も大きい。比較例1−2は、摩擦係数が高
かった。比較例1−3は、密着力が低かった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【発明の効果】以上述べたように、この発明の被膜形成
装置及び被膜形成方法によれば、基材に対するイオンの
照射処理、基材側非晶質炭素層の成膜、その上に設ける
上層の非晶質炭素層の成膜を同一真空層内で行え、非晶
質炭素被膜を容易に形成することが可能になる。
【0072】また、複数の処理槽間で基材を移す必要が
なく、移動時の表面汚染による被膜の密着性低下が起こ
らない。
【0073】さらに、基材側非晶質炭素槽の水素含有率
を0〜8at.%及び/若しくは不純物元素の含有率を
0〜4at.%にするので、被膜の密着性がより優れた
ものになる。
【0074】また、非晶質炭素被膜の成膜時に基材バイ
アスを−400V〜+40Vの範囲とするので、グラフ
ァイト化が抑えられた良好な被膜を成膜速度を早めて形
成することができる。
【0075】このほか、基材と非晶質炭素被膜との間に
必要に応じて密着性向上に有効な金属や化合物の中間層
を形成したり、上層の非晶質炭素層の中に金属を添加し
て潤滑雰囲気下での基材の摩擦係数を下げたりすること
もでき、高性能、高信頼性の被膜を形成して各種部品等
の耐摩耗性、摺動特性、表面保護機能を従来以上に高め
ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の被膜形成装置の一形態を示す断面図
【符号の説明】
10 真空槽 11 回転テーブル 12 基材ホルダ 13、16 陰極アーク式蒸発源 14、15 スパッタ蒸発源 17、18、19、20 ターゲット 21、22、25 パルス直流電源 23、24 直流電源 26 ガス導入口 27 排気口 28 基材
フロントページの続き Fターム(参考) 4K029 AA02 BA34 BB02 BB10 BC02 BD04 BD05 CA03 CA05 CA13 DC05 DC16 DD06 FA07 JA02

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも2基の陰極アーク式蒸発源
    と、非晶質炭素被膜を形成する真空槽内の基材に負のバ
    イアスを印加するための電源と、少なくとも2基のスパ
    ッタ蒸発源を備え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1
    基に固体カーボンを原料としてセットし、陰極アーク式
    蒸発源の他の少なくとも1基に周期律表第IVa 、Va、VI
    a 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属原料をセ
    ットし、スパッタ蒸発源の少なくとも1基に固体カーボ
    ンを原料としてセットし、スパッタ蒸発源の他の少なく
    とも1基に周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ば
    れた少なくとも一種の金属を設置して構成される非晶質
    炭素被膜の形成装置。
  2. 【請求項2】 少なくとも2基の陰極アーク式蒸発源
    と、非晶質炭素被膜を形成する真空槽内の基材に負のバ
    イアスを印加するための電源と、少なくとも1基のスパ
    ッタ蒸発源を備え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1
    基に固体カーボンを原料としてセットし、陰極アーク式
    蒸発源の他の少なくとも1基に周期律表第IVa 、Va、VI
    a 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の金属原料をセ
    ットし、スパッタ蒸発源の少なくとも1基に固体カーボ
    ンを設置して構成される非晶質炭素被膜の形成装置。
  3. 【請求項3】 固体カーボンを原料としてセットした陰
    極アーク式蒸発源がフィルタードカソード型である請求
    項1又は2に記載の非晶質炭素被膜の形成装置。
  4. 【請求項4】 少なくとも1基の陰極アーク式蒸発源
    と、非晶質炭素被膜を形成する真空槽内の基材に負のバ
    イアスを印加するための電源と、少なくとも1基のスパ
    ッタ蒸発源を備え、陰極アーク式蒸発源の少なくとも1
    基に周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少
    なくとも一種の金属を原料としてセットし、スパッタ蒸
    発源の少なくとも1基に固体カーボンを設置して構成さ
    れる非晶質炭素被膜の形成装置。
  5. 【請求項5】 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から
    選ばれた少なくとも一種の金属を原料としてセットした
    陰極アーク式蒸発源から金属を蒸発させながら−400
    V〜−1500Vのバイアスを印加した真空槽内の基材
    に金属イオンを照射し、その後、固体カーボンをセット
    した蒸発源から蒸発させた炭素原子を前記真空槽内で基
    材に照射して基材上に非晶質炭素被膜を析出させ、その
    非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電圧
    を−400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前
    段工程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を
    0.1nm〜500nm、水素含有率(=水素原子数/
    (水素原子数+炭素原子数))を0at.%以上、8a
    t.%以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
  6. 【請求項6】 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の
    到達真空下、又はH 2 、He、Ne、Ar、Kr、X
    e、N2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガス中、
    0.005Pa以上、0.5Pa以下の圧力下において
    周期律表第IVa、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
    とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
    発源から金属を蒸発させて基材に金属イオンを照射し、
    その後、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発させ
    た炭素原子を前記真空槽内で基材に照射して基材上に非
    晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工
    程において基材に印加する電圧を−400V〜+40V
    の範囲とし、さらに、成膜の前段工程において形成され
    る基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜500n
    m、水素含有率(=水素原子数/(水素原子数+炭素原
    子数))を0at.%以上、8at.%以下にする非晶
    質炭素被膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から
    選ばれた少なくとも一種の金属を原料としてセットした
    陰極アーク式蒸発源から金属を蒸発させながら−400
    V〜−1500Vのバイアスを印加した真空槽内の基材
    に金属イオンを照射し、その後、スパッタ蒸発源を用い
    て周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少な
    くとも一種の元素からなる金属層もしくは基材を構成す
    る元素との化合物層を前記真空槽内において基材上に形
    成し、さらに、その上に、固体カーボンをセットした蒸
    発源から蒸発させた炭素原子を照射して非晶質炭素被膜
    を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工程において基
    材に印加する電圧を−400V〜+40Vの範囲とし、
    さらに、成膜の前段工程において形成される基材側非晶
    質炭素層の膜厚を0.1nm〜500nm、水素含有率
    (=水素原子数/(水素原子数+炭素原子数))を0a
    t.%以上、8at.%以下にする非晶質炭素被膜の形
    成方法。
  8. 【請求項8】 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下の
    到達真空下、又はH 2 、He、Ne、Ar、Kr、X
    e、N2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガス中、
    0.005Pa以上、0.5Pa以下の圧力下において
    周期律表第IVa、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
    とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
    発源から金属を蒸発させて基材に金属イオンを照射し、
    その後、スパッタ蒸発源を用いて周期律表第IVa 、Va、
    VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の元素からな
    る金属層もしくは基材を構成する元素との化合物層を前
    記真空槽内において基材上に形成し、さらに、その上
    に、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発させた炭
    素原子を照射して非晶質炭素被膜を析出させ、その非晶
    質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電圧を−
    400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前段工
    程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を0.
    1nm〜500nm、水素含有率(=水素原子数/(水
    素原子数+炭素原子数))を0at.%以上、8at.
    %以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
  9. 【請求項9】 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から
    選ばれた少なくとも一種の金属を原料としてセットした
    陰極アーク式蒸発源から金属を蒸発させながら−400
    V〜−1500Vのバイアスを印加した真空槽内の基材
    に金属イオンを照射し、その後、固体カーボンをセット
    した蒸発源から蒸発させた炭素原子を前記真空槽内で基
    材に照射して基材上に非晶質炭素被膜を析出させ、その
    非晶質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電圧
    を−400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前
    段工程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を
    0.1nm〜500nm、炭素、水素及び基材構成元素
    以外の不純物元素の含有率(=不純物原子数/(不純物
    原子数+炭素原子数))を0at.%以上、4at.%
    以下にする非晶質炭素被膜の形成方法。
  10. 【請求項10】 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下
    の到達真空下、又はH2 、He、Ne、Ar、Kr、X
    e、N2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガス中、
    0.005Pa以上、0.5Pa以下の圧力下において
    周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
    とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
    発源から金属を蒸発させて基材に金属イオンを照射し、
    その後、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発させ
    た炭素原子を前記真空槽内で基材に照射して基材上に非
    晶質炭素被膜を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工
    程において基材に印加する電圧を−400V〜+40V
    の範囲とし、さらに、成膜の前段工程において形成され
    る基材側非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜500n
    m、炭素、水素及び基材構成元素以外の不純物元素の含
    有率(=不純物原子数/(不純物原子数+炭素原子
    数))を0at.%以上、4at.%以下にする非晶質
    炭素被膜の形成方法。
  11. 【請求項11】 周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族か
    ら選ばれた少なくとも一種の金属を原料としてセットし
    た陰極アーク式蒸発源から金属を蒸発させながら−40
    0V〜−1500Vのバイアスを印加した真空槽内の基
    材に金属イオンを照射し、その後、スパッタ蒸発源を用
    いて周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少
    なくとも一種の元素からなる金属層もしくは基材を構成
    する元素との化合物層を前記真空槽内において基材上に
    形成し、さらに、その上に、固体カーボンをセットした
    蒸発源から蒸発させた炭素原子を照射して非晶質炭素被
    膜を析出させ、その非晶質炭素被膜の成膜工程において
    基材に印加する電圧を−400V〜+40Vの範囲と
    し、さらに、成膜の前段工程において形成される基材側
    非晶質炭素層の膜厚を0.1nm〜500nm、炭素、
    水素及び基材構成元素以外の不純物元素の含有率(=不
    純物原子数/(不純物原子数+炭素原子数))を0a
    t.%以上、4at.%以下にする非晶質炭素被膜の形
    成方法。
  12. 【請求項12】 1×10-6Pa以上、0.1Pa以下
    の到達真空下、又はH2 、He、Ne、Ar、Kr、X
    e、N2 から選ばれた少なくとも一種の雰囲気ガス中、
    0.005Pa以上、0.5Pa以下の圧力下において
    周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた少なく
    とも一種の金属を原料としてセットした陰極アーク式蒸
    発源から金属を蒸発させて基材に金属イオンを照射し、
    その後、スパッタ蒸発源を用いて周期律表第IVa 、Va、
    VIa 、IIIb族から選ばれた少なくとも一種の元素からな
    る金属層もしくは基材を構成する元素との化合物層を前
    記真空槽内において基材上に形成し、さらに、その上
    に、固体カーボンをセットした蒸発源から蒸発させた炭
    素原子を照射して非晶質炭素被膜を析出させ、その非晶
    質炭素被膜の成膜工程において基材に印加する電圧を−
    400V〜+40Vの範囲とし、さらに、成膜の前段工
    程において形成される基材側非晶質炭素層の膜厚を0.
    1nm〜500nm、炭素、水素及び基材構成元素以外
    の不純物元素の含有率(=不純物原子数/(不純物原子
    数+炭素原子数))を0at.%以上、4at.%以下
    にする非晶質炭素被膜の形成方法。
  13. 【請求項13】 非晶質炭素被膜の成膜の前段工程にお
    ける固体カーボンの蒸発源として陰極アーク式蒸発源も
    しくはスパッタ蒸発源を用い、その前段工程では真空槽
    内に炭化水素系ガスを導入せずに基材側非晶質炭素被膜
    を析出させる請求項5〜12のいずれかに記載の非晶質
    炭素被膜の形成方法。
  14. 【請求項14】 非晶質炭素被膜の成膜の前段工程にお
    ける固体カーボンの蒸発源として陰極アーク式蒸発源を
    用い、その前段工程では真空槽内の圧力を1×10-6
    a以上、0.1Pa以下にしてアーク放電を開始させる
    請求項5〜12のいずれかに記載の非晶質炭素被膜の形
    成方法。
  15. 【請求項15】 成膜の前段工程における固体カーボン
    の蒸発源としてスパッタ蒸発源を用い、その前段工程で
    はHe、Ne、Ar、Kr、Xe、N2 から選ばれた少
    なくとも一種の雰囲気ガス中、0.005Pa以上、
    0.5Pa以下の圧力下でスパッタ放電を開始させる請
    求項5〜12のいずれかに記載の非晶質炭素被膜の形成
    方法。
  16. 【請求項16】 基材側非晶質炭素層上に析出させる上
    層の非晶質炭素層の少なくとも一部を、アンモニア又は
    炭化水素ガスを真空槽内に導入した状態でスパッタ蒸発
    源もしくは陰極アーク式蒸発源を用いて形成し、その層
    の水素含有率を8at.%以上、50at.%以下とな
    す請求項5〜15のいずれかに記載の非晶質炭素被膜の
    形成方法。
  17. 【請求項17】 基材側非晶質炭素層上に析出させる上
    層の非晶質炭素層の少なくとも一部を、アンモニア又は
    炭化水素ガスを真空槽内に導入した状態でスパッタ蒸発
    源もしくは陰極アーク式蒸発源を用いて形成し、かつそ
    の層に周期律表第IVa 、Va、VIa 、IIIb族から選ばれた
    少なくとも一種の金属元素を添加する請求項5〜15の
    いずれかに記載の非晶質炭素被膜の形成方法。
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