JP2003068292A - 電極およびそれを用いた電池 - Google Patents

電極およびそれを用いた電池

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JP2003068292A
JP2003068292A JP2001252660A JP2001252660A JP2003068292A JP 2003068292 A JP2003068292 A JP 2003068292A JP 2001252660 A JP2001252660 A JP 2001252660A JP 2001252660 A JP2001252660 A JP 2001252660A JP 2003068292 A JP2003068292 A JP 2003068292A
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Mitsuhiro Kishimi
光浩 岸見
Hiroshi Fukunaga
浩 福永
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Hitachi Maxell Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活物質の充填密度が高く、安定した品質を有
し、生産性が優れた電極を提供し、かつ、その電極を用
いて高容量でかつサイクル特性が優れた電池を提供す
る。 【解決手段】 金属酸化物または金属水酸化物からなる
活物質と、グルコース、グルクロン酸、ラムノース、マ
ンノース、ガラクトースまたはその塩を含む1種以上
で、その少なくとも一部に2位または3位置換体を含む
糖類の共重合体とを含有する合剤を用いて電極を作製す
る。上記共重合体としてはキサンタンガムが好ましく、
また、活物質としては水酸化ニッケルが好ましく、電極
は、上記水酸化ニッケルからなる活物質と前記共重合体
とを含有する合剤と導電性基材とを用いて作製すること
が好ましく、電池は、上記電極と、その対極と、電解液
とを用いて構成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キャパシタや電池
などの電気化学素子に利用可能な電極と、それを構成要
素として用いた電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】キャパシタや電池などの電気化学素子に
おいては、それらの応用機器の小型化や高出力化などに
伴い高容量化のための検討が種々行われている。例え
ば、水酸化ニッケルを正極活物質とするアルカリ蓄電池
では、正極活物質の充填密度の向上を目的として、従来
の焼結式正極に代わり、水酸化ニッケル粉末をバインダ
ーや増粘剤などとともに溶剤中に分散させて正極合剤含
有ぺーストを調製し、その正極合剤含有ぺーストをニッ
ケル発泡体などからなる導電性基材に塗布し乾燥する工
程を経て作製したぺースト式正極が広く用いられるよう
になってきた。
【0003】このぺースト式正極を工業的に量産するに
は、正極合剤含有ぺーストを塗布工程に連続的に供給
し、導電性基材に連続塗布し、乾燥および加圧成形する
方法が採用される。この場合、正極合剤含有ぺーストの
調製時から塗布完了時までに長時間を要しているのが実
情であり、そのため、正極合剤含有ぺーストには、成
分、組成、粘度などの経時変化の少ないことが求められ
る。特に、上記ぺースト式正極の量産化方法では、塗布
速度の問題から塗布工程が律速段階となり、正極合剤含
有ぺーストの調製時から塗布完了時までに数日間かかる
こともあり、長時間にわたる正極合剤含有ぺーストの品
質安定性が要求される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、従来の正極
合剤含有ぺーストは、調製後、経時的に粘度が低下する
傾向があり、そのため、得られる正極は、連続塗布にお
ける塗布開始時と塗布終了時とで、正極の重量などの品
質面で均一性が損なわれるという問題を抱えていた。特
に、高容量化のために水酸化ニッケル粉末の充填率を高
めた場合は、作製される正極の特性に対する正極合剤含
有ぺーストの品質安定性の影響がより大きくなるため、
このような正極を用いて組み立てられたアルカリ蓄電池
は、容量のバラツキが生じやすくなり、歩留りの低下を
招くという問題があった。
【0005】また、正極の高容量化のためにはバインダ
ーや増粘剤の含有量を低減することが必要となるが、そ
れらを低減した場合には、正極合剤含有ぺーストの調製
後、活物質などの固形物が沈降し、バインダーや増粘剤
などと分離されるので、正極合剤含有ぺーストが不均一
となり、後の塗布工程でバラツキを生じるという、新た
な問題が発生することになる。
【0006】それに対し、正極合剤含有ぺーストの安定
性を高めるため、増粘剤およびバインダーの含有量を増
大させた系では、それに伴う活物質量の減少によって容
量が低下したり、導電性の低下によって電池反応が阻害
されるという問題があった。
【0007】また、水酸化ニッケルを正極活物質とする
ぺースト式正極では、サイクル数の増加に伴って正極活
物質がアルカリ電解液を吸収するため、正極が膨潤して
セパレータを圧縮し、セパレータに保持されるべき電解
液を枯渇させてサイクル特性を低下させ、これがぺース
ト式正極を用いるアルカリ蓄電池においてサイクル劣化
を引き起こす主たる要因となっていた。
【0008】また、コバルト酸リチウムなどのリチウム
含有金属酸化物を正極活物質として用いる非水二次電池
においても、正極活物質中に残存する水酸化リチウムな
どのアルカリ分により、正極合剤含有ぺーストの安定性
に問題を生じることがあった。
【0009】本発明は、上記のような従来技術の問題点
を解決し、活物質の充填密度が高く、安定した品質を有
し、生産性が優れた電極を提供し、かつ、その電極を用
いて高容量でかつサイクル特性が優れた電池を提供する
ことを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためになされたものであり、金属酸化物または金
属水酸化物からなる活物質と、グルコース、グルクロン
酸、ラムノース、マンノース、ガラクトースまたはその
塩を含む1種以上で、その少なくとも一部に2位または
3位置換体を含む糖類の共重合体とを含有する合剤を用
いて電極を作製することにより、活物質の充填密度が高
く、安定した品質を有し、かつ生産性が優れる電極を提
供したものである。また、上記電極と対極と電解液を用
いて電池を構成することにより、高容量でかつサイクル
特性が優れた電池を提供したものである。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明においては、電極を作製す
るための合剤の構成成分として、グルコース、グルクロ
ン酸、ラムノース、マンノース、ガラクトースまたはそ
の塩を含む1種以上で、少なくともその一部に2位また
は3位置換体を含む糖類の共重合体(以下、含置換体多
糖類という)を用いるが、この含置換体多糖類が水酸化
ニッケルを正極活物質とする正極合剤含有ぺーストの品
質安定性に好結果を与える理由は、以下のように考えら
れる。水酸化ニッケルのような正極活物質は、表面が活
性なために、正極合剤含有ぺースト中のバインダーや増
粘剤などの有機物の加水分解や酸化分解などを促進する
触媒として作用し、上記有機物の分子量を低下させて粘
度を低下させ、さらにその機能をも低下させる。また、
上記分解物が水酸化ニッケルの表面に不可逆的に吸着し
て粘度低下を助長するとともに、その分解物が充放電反
応を阻害する原因ともなる。
【0012】しかしながら、本発明において用いる含置
換体多糖類では、糖類の2位または3位を置換している
ことにより、立体障害が生じ、主鎖を保護しているの
で、加水分解や酸化分解を受けるのが抑制され、正極合
剤含有ぺーストの安定性を大幅に向上させることができ
る。
【0013】また、上記含置換体多糖類は、耐アルカリ
性が優れているので、電池内で安定で、活物質、導電性
基材および添加剤などの電極構成要素に接着し、活物質
同士および活物質と基材などとを相互に強固に結び付け
ることができるので、充放電サイクルでの電極の膨潤を
低減することができる。
【0014】また、水酸化ニッケルを正極活物質とする
ようなアルカリ性の正極合剤含有ぺーストでは、静止状
態でゲル化を生じるので、高容量化のためにバインダー
や増粘剤の含有量を低減した場合においても、正極活物
質などの固形物が沈降することなく、非常に安定で、経
時変化の少ない正極合剤含有ぺーストとすることができ
る。
【0015】上記含置換体多糖類は、本来、天然高分子
の一種であるが、現在では、例えば、ザントモナスキャ
ベトリスやアルカリジェネス菌種の発酵などにより製造
されるバイオガムを上記含置換体多糖類として用いるこ
とができ、その含置換体多糖類の具体例としては、例え
ば、ウェランガム、キサンタンガム(ザンサンガム)、
カラギーナン、グアーガム、ジェランガム、ローカスト
ビーンガムなどが挙げられる。この含置換体多糖類は、
例えば、図1に示すウェランガムの化学構造単位に示さ
れているように、グルコース、グルクロン酸、ラムノー
ス、マンノースのいずれか一つまたは2以上を含んでポ
リマーすることによって構成され、カリウム塩、ナトリ
ウム塩、カルシウム塩などを含み、その3位の位置が置
換されている。
【0016】上記含置換体多糖類を構成するための糖類
としては、少なくとも、一部に2位または3位置換体を
含む、グルコース、グルクロン酸、ラムノース、マンノ
ース、ガラクトースのいずれか一つまたは2以上で構成
され、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩を含ん
でいてもよく、それを共重合して得られる共重合体は、
その融点や分解温度などの熱的性質、弾性などの力学的
性質、溶剤への溶解度や他のバインダーまたは増粘剤と
の相溶性などの化学的性質を目的に応じたものにすれば
よい。そして、その分子量は約200,000である
が、高分子間の会合現象を生じるため、その数値は定か
ではない。この含置換体多糖類は、冷水、温水に容易に
溶解し、ぺースト調製時の混合による温度上昇、剪断力
にも耐えることができる。
【0017】このような含置換体多糖類の合剤中での含
有量としては、活物質100重量部に対して、0.03
〜5重量部が好ましく、0.05〜3重量部がより好ま
しく、0.1〜1重量部がさらに好ましい。含置換体多
糖類の合剤中の含有量を活物質100重量部に対して
0.03重量部以上とすることにより、前記含置換体多
糖類の吸着層が活物質の表面を充分に被覆することがで
きるので、バインダーや増粘剤などの酸化分解を充分に
抑制することができ、さらに、電池内で安定であること
から、活物質同士や活物質と導電性基材などとを強固に
結び付け、電極の膨潤を抑制する効果を良好なものとす
ることができる。また、含置換体多糖類の合剤中の含有
量を活物質100重量部に対して5重量部以下とするこ
とにより、活物質の充填率の低下を抑制することがで
き、さらには活物質の表面被覆層の量を充放電に支障が
ない範囲に抑制することができ、活物質の高い充填率と
優れたサイクル特性を確保することができる。
【0018】また、上記含置換体多糖類は、静止状態で
はゲル化を生じさせるため、さらなる高容量化、高出力
化を目的として、合剤中の含有量を活物質100重量部
に対して0.1重量部とした場合でも、活物質などの固
形物が沈降することなく、非常に安定で経時変化の少な
い合剤含有ぺーストとすることができる。
【0019】本発明において、電極は、上記活物質と含
置換体多糖類とを含有する合剤を用い、例えば以下のよ
うにして作製することができる。
【0020】活物質(例えば、水酸化ニッケル粉末)を
含置換体多糖類の水溶液に分散させて合剤含有ぺースト
を調製し、これを導電性基材に塗布し、乾燥および加圧
成形することにより、導電性基材の内部および表面に、
活物質と含置換体多糖類とを含有する合剤を有する電極
を得ることができる。
【0021】活物質として水酸化ニッケル粉末を用いる
場合は、表面をコバルト化合物で被覆した水酸化ニッケ
ル粉末が、高出力化が可能であることから好適に用いら
れる。このような水酸化ニッケル粉末は、表面が活性
で、バインダーや増粘剤などを酸化分解させやすいが、
含置換体多糖類の存在により、そのような作用が抑制さ
れる。特に、上記水酸化ニッケル粉末に対して、良好な
コバルト酸化物の導電性ネットワークの形成を目的とし
て、マイクロ波などによるアルカリ性雰囲気での加温処
理を行った場合は、残留するアルカリにより合剤含有ぺ
ーストのpHが11〜14程度と強アルカリ性になるた
め、従来のバインダーや増粘剤などでは分解が促進され
るが、このような条件下でも、含置換体多糖類は分解を
受けることが少なく、顕著な効果を奏することができ
る。
【0022】また、合剤含有ぺーストの調製にあたって
用いる溶剤としては、水だけでなく、例えば、メタノー
ル、エタノール、イソプロパノールなどで代表されるア
ルコールなどの有機溶媒も用いることができる。そし
て、それらの溶剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、
また2種以上を併用してもよい。
【0023】上記合剤含有ぺースト中には、必要によ
り、従来から用いられているバインダーや増粘剤などを
含有させてもよい。そのようなバインダーや増粘剤とし
ては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ
化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオ
ロプロピレン系共重合体などのフッ素樹脂、スチレン−
ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体な
どのスチレンユニットを有する共重合体、メチルセルロ
ース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシ
プロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースなど
のセルロース類、ポリエチレン、ポリアクリルアミド、
ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリN
−ビニルアセトアミド、ポリアクリル酸などが挙げられ
る。これらのバインダーや増粘剤は、前述した問題の発
生防止や活物質の充填率の確保を考えると、活物質10
0重量部に対して0.01〜4重量部とすることが好ま
しい。
【0024】また、電極の性能を向上させるために、上
記の合剤中に従来から用いられている導電助剤を含有さ
せてもよい。このような導電助剤としては、ニッケル、
コバルト、銅などの金属粉末、黒鉛やアセチレンブラッ
クなどの炭素粉末、酸化スズ、酸化コバルトなどの化合
物が用いられるが、アルカリ電解液と組み合わせて用い
る場合には、導電性ネットワークを形成可能なコバルト
化合物が好適に用いられる。また、合剤中の導電性を高
めて活物質の利用率を向上させる目的から、導電助剤は
一般に微粒子状態のものが用いられるが、このような微
粒子状態のものは、通常、粒子同士が凝集しやすく均一
なぺーストの調製に困難である。しかし、水酸化コバル
トは、この点を考慮しても、含置換体多糖類との相互作
用により、分散性がよく、均一な合剤含有ぺーストを容
易に得ることができる。
【0025】上記電極において、導電性基材としては、
例えば、ニッケル発泡体などの発泡メタルやパンチング
メタル、ニッケル箔などの金属板、あるいはエキスパン
ドメタルなどの金属網が用いられる。金属板または金属
網を用いる場合、従来のバインダーでは合剤の膨潤が進
行しやすいため、発泡メタルを用いた場合に比べてサイ
クル特性が低下しやすいが、含置換体多糖類を合剤中に
含有させた場合には、含置換体多糖類の結着作用により
合剤の膨潤が抑制されてサイクル特性の低下が抑制され
る。
【0026】上記電極を構成するにあたり、その活物質
としては、前記の水酸化ニッケルだけでなく、それ以外
にも、コバルト酸リチウム、コバルトマンガン酸リチウ
ム、ニッケル酸リチウム、チタン酸リチウム、酸化ニッ
ケル、酸化バナジウムなどの金属酸化物、水酸化コバル
ト、水酸化銀、水酸化鉄などの金属水酸化物を用いるこ
とができる。
【0027】上記の電極は、セパレータを介して対極と
共に積層し、そのままか、あるいは必要に応じて巻回体
とし、電解液と共に金属缶などの密閉容器に封入して電
池とされる。本発明は、電極の構成にあたって、前記例
示の水酸化ニッケル以外にも、各種の金属酸化物または
金属水酸化物を用いることができるから、電極をそれに
応じて各種のものにすることができ、したがって、電池
も前記アルカリ蓄電池のみでなく、リチウム電池、リチ
ウム二次電池、キャパシタなど他の電気化学素子への適
用が可能である。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例を記載して本発明をよ
り具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例
のみに限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱し
ない範囲内で適宜変更可能である。
【0029】実施例1 表面をコバルト化合物で被覆した水酸化ニッケル粉末
(コバルト化合物中のコバルトが水酸化ニッケルに対し
て4重量%であり、水酸化ニッケル中に亜鉛が4.5重
量%、コバルトが1重量%固溶したもの)100重量部
と、水酸化コバルト1重量部とを乾式混合し、さらに濃
度が2重量%のキサンタンガム水溶液10重量部とを混
合し、正極合剤含有ぺーストを調製した。なお、上記キ
サンタンガムの分子構造を図2に示す。
【0030】この正極合剤含有ぺースト100gをビー
カーに採取し、20℃で6日間放置し、その間の粘度変
化を粘度計で測定することにより正極合剤含有ぺースト
の安定性を調べた。また、上記正極合剤含有ぺーストを
1日間放置後、沈降度合いを目視にて観察した。
【0031】つぎに、厚さが1.3mm、幅が120m
m、長さが200mのニッケル発泡体からなる導電性基
材に、約5mmの幅の未塗布部を形成しながら、上記正
極合剤含有ぺーストを連続塗布方式により塗布し、85
℃で乾燥して正極合剤層を形成したのち、総厚が約0.
6mmとなるように加圧成形して、シート状物とした。
このシート状物の塗布開始部分(正極合剤層の形成開始
部分)と塗布終了部分(正極合剤層の形成終了部分)と
を裁断し、幅36mm、長さ48mmで長手方向の端部
に5mmのぺースト未塗布部(正極合剤層を形成してい
ない部分)を有するぺースト式水酸化ニッケル正極を、
塗布開始部分と塗布終了部分についてそれぞれ1000
枚ずつ作製した。
【0032】比較例1 キサンタンガム水溶液に代えて、濃度が2重量%のカル
ボキシメチルセルロース水溶液を使用した以外は、実施
例1と同様に正極合剤含有ぺーストを調製し、ぺースト
の安定性および沈降度合いを調べた後、ぺースト式水酸
化ニッケル正極を作製した。
【0033】比較例2 キサンタンガム水溶液に代えて、濃度が4重量%のカル
ボキシメチルセルロース水溶液を使用した以外は、実施
例1と同様に正極合剤含有ぺーストを調製し、ぺースト
の安定性および沈降度合いを調べた後、ぺースト式水酸
化ニッケル正極を作製した。
【0034】上記実施例1および比較例1〜2の正極合
剤含有ぺーストの粘度変化の測定結果を図3に示す。
【0035】図3に示すように、キサンタンガムを用い
た実施例1の正極合剤含有ぺーストは、正極活物質とし
て表面にコバルト化合物を被覆した活性の高い水酸化ニ
ッケル粉末を用いているにもかかわらず、長時間放置後
でも粘度変化がほとんどなく、安定性が優れていた。こ
れに対して、キサンタンガムに代えてカルボキシメチル
セルロースを用いた比較例1〜2の正極合剤含有ぺース
トは、調製から1日経過後に既に大幅な粘度低下を引き
起こし、安定性が非常に劣っていた。
【0036】また、正極合剤含有ぺーストの沈降度合い
に関しても、実施例1の正極合剤含有ぺーストは、沈降
がまったく認められなかったが、比較例1の正極合剤含
有ぺーストでは、放置後に活物質の沈降が認められた。
【0037】つぎに、上記実施例1および比較例1〜2
の正極のそれぞれ1000枚ずつについて、その重量を
測定し、平均値とバラツキを調べた。その結果を表1に
示す。
【0038】
【表1】
【0039】表1に示す結果から明らかなように、キサ
ンタンガムを用いた実施例1の正極は、塗布開始時と塗
布終了時とで重量に変化がほとんどなく、バラツキもほ
ぼ同程度であり、均質性に優れていることがわかる。こ
れに対し、濃度が2重量%のカルボキシメチルセルロー
スを用いた比較例1の正極は、塗布開始時と塗布終了時
とで重量にかなりの差があるとともに、塗布終了時では
重量のバラツキが大きくなっており、塗布工程での歩留
りに問題を生じやすく、安定した連続塗布には適さない
ことがわかる。
【0040】また、濃度が4重量%のカルボキシメチル
セルロースを用いた比較例2の正極においても、塗布終
了時には、重量減少、バラツキの増大が認められ、連続
塗布での安定性に欠けることがわかる。
【0041】つぎに、上記の方法で作製した実施例1お
よび比較例1〜2の正極を用いてそれぞれニッケル−水
素系アルカリ蓄電池を作製した。これらのアルカリ蓄電
池をそれぞれ実施例2および比較例3〜4として示す。
【0042】実施例2 上記実施例1の正極の対極となる負極を以下に示すよう
に作製した。すなわち、MmNi4.28 Co0.4 Mn
0.37Al0.3 Mg0.05(MmはLaを80重量%含有す
るミッシュメタル)の組成で平均粒径が35μmの水素
吸蔵合金粉末100重量部に、濃度が2重量%のN−ビ
ニルアセトアミド−アクリル酸系共重合体(重量平均
で、N−ビニルアセトアミドユニット:90重量%、ア
クリル酸ユニット:10重量%)の水溶液10重量部
と、濃度が2重量%のカルボキシメチルセルロース水溶
液5重量部と、スチレンと2−エチルヘキシルアクリレ
ートとの共重合体の分散液(共重合体の含率:40重量
%)1.3重量部とを加え、よく混合して負極合剤含有
ぺーストを調製し、得られた負極合剤含有ぺーストをパ
ンチングメタルからなる導電性基材に塗布し、乾燥して
負極合剤層を形成した後、加圧成形し、その後に所定サ
イズに裁断して負極とした。
【0043】正極としては、実施例1の塗布開始部分の
正極および塗布終了部分の正極を用い、それらのそれぞ
れの未塗布部分にニッケルリードを取り付け、それぞれ
別々にナイロン不織布製のセパレータを介して上記負極
と共に巻回し、得られた巻回構造の電極体を単4サイズ
の電池缶に挿入し、これにアルカリ電解液(17g/l
の水酸化リチウムと33g/lの酸化亜鉛とを含む濃度
28.5重量%の水酸化カリウム水溶液)を注入した
後、密閉して図4に示す構造で塗布開始部分の正極を用
いたニッケル−水素系アルカリ蓄電池1000個と塗布
終了部分の正極を用いたニッケル−水素系アルカリ蓄電
池1000個を作製した。
【0044】ここで、図4に示す電池について説明す
る。まず、符号と部材名称の関係から先に説明すると、
1は正極、2は負極、3はセパレータ、4は巻回構造の
電極体、5は電池缶、6は環状ガスケット、7は電池
蓋、8は端子板、9は封口板、10は金属バネ、11は
弁体、12は正極リード体、13は絶縁体、14は絶縁
体である。
【0045】正極1および負極2はそれぞれ前記の構成
からなるものであるが、この図1ではそれらの作製にあ
たって使用した導電性基材などは示しておらず、単一の
ものとして示している。セパレータ3は前記のようにナ
イロン不織布からなるものであり、正極1と負極2はこ
のセパレータ3を介して重ね合わせられ、渦巻状に巻回
して作製した巻回構造の電極体4として電池缶5に挿入
され、その上部には絶縁体14が配置されている。ま
た、電池缶5の底部には上記巻回構造の電極体4の挿入
に先立って絶縁体13が配設されている。そして、この
図4では、図示していないが、負極2の最外周部では導
電性基材の一部が露出していて、それが電池缶5の内壁
に接触し、それによって、電池缶5は負極端子として作
用する。
【0046】環状ガスケット6はナイロン66で作製さ
れ、電池蓋7は端子板8と封口板9とで構成され、電池
缶5の開口部はこの電池蓋7などで封口されている。つ
まり、電池缶5内に巻回構造の電極体4や絶縁体13、
絶縁体14などを挿入した後、電池缶5の開口端近傍部
分に底部が内周側に突出した環状の溝5aを形成し、そ
の溝5aの内周側突出部で環状ガスケット6の下部を支
えさせて環状ガスケット6と電池蓋7とを電池缶5の開
口部に配置し、電池缶5の溝5aから先の部分を内方に
締め付けて電池缶5の開口部を封口している。前記端子
板8にはガス排出口8aが設けられ、封口板9にはガス
検知口9aが設けられ、端子板8と封口板9との間には
金属バネ10と弁体11とが配置されている。そして、
封口板9の外周部を折り曲げて端子板8の外周部を挟み
込んで端子板8と封口板9とを固定している。
【0047】この電池は、通常の状況下では金属バネ1
0の押圧力により弁体11がガス検知口9aを閉鎖して
いるので、電池内部は密閉状態に保たれているが、電池
内部にガスが発生して電池内部の圧力が異常に上昇した
場合には、金属バネ10が収縮して弁体11とガス検知
口9aとの間に隙間が生じ、電池内部のガスはガス検知
口9aおよびガス排出口8aを通過して電池外部に放出
され、高圧での電池破裂が防止できるように構成される
とともに、前記のガス放出により電池内圧が低下した場
合には、金属バネ10が元の状態に復元し、その押圧力
により弁体11が再びガス検知口9aを閉鎖して電池内
部を密閉構造に保つようになっている。
【0048】正極リード体12はニッケルリボンからな
り、その一方の端部は正極1の支持体にスポット溶接さ
れ、他方の端部は封口板9の下端にスポット溶接されて
いて、端子板8は前記封口板9との接触により正極端子
として作用する。
【0049】比較例3 比較例1の正極を用いた以外は、実施例2と同様にニッ
ケル−水素系アルカリ蓄電池を作製した。
【0050】比較例4 比較例2の正極を用いた以外は、実施例2と同様にニッ
ケル−水素系アルカリ蓄電池を作製した。
【0051】上記実施例2および比較例3〜4のニッケ
ル−水素系アルカリ蓄電池を60℃で7時間保存した
後、175mAの電流値で5時間充電し、140mAで
電池電圧が1Vに低下するまで放電する充放電サイクル
を放電容量が一定になるまで繰り返し、さらに140m
Aで7.5時間充電し、1時間休止後に140mAで電
池電圧が1Vとなるまで放電して標準容量を測定した。
【0052】上記実施例2および比較例3〜4の電池の
塗布開始部分の正極を用いた電池と塗布終了部分の正極
を用いた電池のそれぞれ1000個ずつについて、標準
容量の平均値とそのバラツキを求めた。その結果を表2
に示す。
【0053】
【表2】
【0054】上記表2に示す結果から明らかなように、
正極合剤にキサンタンガムを用いた実施例2の電池は、
連続塗布方式における塗布開始部分と塗布終了部分と
で、正極の品質が均一であるから、標準容量のバラツキ
が少なく、電池の生産を安定して行うことが可能であ
り、電池の歩留りを大きく向上できることがわかる。ま
た、実施例2の電池は、前記表1に示すように正極の重
量が大きく、活物質の充填密度が向上しているので、比
較例1〜2の電池よりも高容量となった。
【0055】これに対して、濃度が2重量%のカルボキ
シメチルセルロースを用いた比較例3の電池は、標準容
量の大幅な低下とバラツキの増大のため、電池の安定し
た生産が困難であることがわかる。また、濃度が4重量
%のカルボキシメチルセルロースを用いた比較例4の電
池は、塗布開始部分の正極を用いた電池に比べて、塗布
終了部分の正極を用いた電池の容量が減少しており、こ
れも、電池の安定した生産に適さないことがわかる。
【0056】つぎに、塗布開始部分の正極を用いて作製
した実施例2および比較例3〜4の電池について、70
0mAの電流値で、−△V=5mVの充電カット条件で
充電し、700mAで電池電圧が1Vに低下するまで放
電する充放電サイクルを繰り返し、放電容量が400m
Ahに低下するまでのサイクル試験を行った。そのとき
の放電容量とサイクル数の関係を図5に示す。
【0057】図5から明らかなように、正極合剤にキサ
ンタンガムを用いた実施例2の電池は、正極の均質性が
優れ、正極合剤の膨潤が抑制されていることによって、
高容量でサイクル特性が優れていた。
【0058】これに対して、濃度が2重量%のカルボキ
シメチルセルロースを用いた比較例3の電池は、正極の
活物質の充填密度が低く、また、正極合剤の分解が生じ
るため、電池内圧などに悪影響を与え、しかも膨潤抑制
能力も低いため、容量、サイクル特性とも実施例2の電
池より劣っていた。また、濃度が4重量%のカルボキシ
メチルセルロースを用いた比較例4の電池は、カルボキ
シメチルセルロースの分解の影響が大きく、サイクル寿
命が非常に短いものとなり、サイクル特性が非常に劣っ
ていた。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
活物質の充填密度が高く、安定した品質を有し、生産性
が優れた電極を得ることができ、かつ、その電極を用い
て高容量でサイクル特性が優れた電池を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において合剤の構成にあたって用いる含
置換体多糖類の一種であるウェランガムの化学構造単位
の一例を示す図である。
【図2】本発明において合剤の構成にあたって用いる含
置換体多糖類の一種であるキサンタンガムの分子構造式
の一例を示す図である。
【図3】実施例1および比較例1〜2の正極合剤含有ぺ
ーストの粘度の経時変化を示す図である。
【図4】本発明に係るニッケル−水素系アルカリ蓄電池
の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】実施例2および比較例3〜4のニッケル−水素
系アルカリ蓄電池のサイクル特性を示す図である。
【符号の説明】
1 正極 2 負極 3 セパレータ

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属酸化物または金属水酸化物からなる
    活物質と、グルコース、グルクロン酸、ラムノース、マ
    ンノース、ガラクトースまたはその塩を含む1種以上
    で、少なくともその一部に2位または3位置換体を含む
    糖類の共重合体とを含有する合剤を有することを特徴と
    する電極。
  2. 【請求項2】 前記共重合体がキサンタンガムである請
    求項1記載の電極。
  3. 【請求項3】 活物質が水酸化ニッケルであり、その水
    酸化ニッケルからなる活物質と前記共重合体とを含有す
    る合剤と導電性基材とを用いて作製したことを特徴とす
    る請求項1または2記載の電極。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の電極
    と、その対極と、電解液とを用いて構成されたことを特
    徴とする電池。
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