JP2003061577A - 食用油脂製造方法及び食用油脂脱臭方法 - Google Patents

食用油脂製造方法及び食用油脂脱臭方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制され、
風味の優れた食用油脂を製造することのできる食用油脂
製造方法を提供すること。 【解決手段】 本発明の食用油脂製造方法は、脱臭処理
を行った食用油脂を活性炭によりろ過する工程を含むこ
とを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食用油脂製造方法
及び食用油脂脱臭方法に関するものであり、更に詳細に
は、加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制され、風味の
優れた食用油脂を製造することのできる食用油脂製造方
法及び食用油脂脱臭方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】平成11年に我が国において消費された
食用植物油脂は約220万トンであり、その内訳は、菜
種油が最も多く約90万トンで第1位であり、次いで大
豆油が約70万トンとなっている。菜種油及び大豆油両
者の合計で実に我が国における食用植物油脂消費量の全
体の約70%を占めている。我が国における食用植物油
脂消費量の第3位は近年増加傾向にあるパーム油である
が、約36万トンと前記二品種に比べて量的に大きな開
きがある。その他に、とうもろこし油、こめ油、サフラ
ワー油、ごま油、綿実油等の消費もあるが、これらをあ
わせても全体消費量の約10%に満たない。
【0003】大豆油の原料である大豆は世界各国で生産
されているが、最も生産量の多いのは米国であり、我が
国の大豆総輸入量の約80%が米国から輸入されてい
る。食用油の搾油用に使用される大豆も米国からの輸入
ものが中心である。大豆種子を搾油処理して得られる大
豆油の一般的な脂肪酸組成は、リノール酸が約55質量
%と最も多く、次いでオレイン酸が約20質量%強、パ
ルミチン酸が約10質量%強である。大豆油に特徴的な
脂肪酸はリノレン酸であり、全脂肪酸のうち約8質量%
含まれている。通常に流通している食用植物油脂ではリ
ノレン酸が5%以上含まれるものは、大豆油と以下に述
べる菜種油くらいしかない。
【0004】このリノレン酸はω3系列(n−3系列と
もいう)に属する多価不飽和脂肪酸の一種(α−リノレ
ン酸)で、炭素鎖中に3個の炭素−炭素二重結合を有す
るため、空気中の酸素によって酸化反応を受けやすく、
該酸化反応の速度は20℃においてオレイン酸を1とす
るとリノール酸は約10倍、リノレン酸は約20倍にな
るといわれている。大豆油は、その風味に油にふさわし
い特有のうまみがあり、熱安定性は食用植物油の中で中
位程度である。
【0005】一方、我が国において消費される菜種は、
ほぼ全量が海外からの輸入によりまかなわれており、輸
入量の約85%がカナダから輸入されるものである。菜
種は、近年、種子の品種改良の研究が進められ、エルシ
ン酸およびグルコシノレートの両含有量を低減させた、
所謂ダブル・ロー・タイプの改良品種であるキャノーラ
(Canola)種の種子が開発され、このキャノーラ
種子が食用菜種油の製造用原料の主流となっている。こ
のような菜種油は、従来の菜種油とは区別されキャノー
ラ油として商品化されている(1992年より日清製油
株式会社より市販)。
【0006】菜種油(以下、本明細書においてキャノー
ラ油ともいう)の一般的な脂肪酸組成は、オレイン酸が
最も多く、約60質量%、次いでリノール酸が約20質
量%、リノレン酸は9〜13質量%程度である。菜種油
の風味は淡白で軽く、酸化安定性が高く、熱安定性も大
豆油より優れている。このような状況下、大豆油及び菜
種油の品質上問題の一つとして挙げられることは、いわ
ゆる「戻り臭」の発生である。戻り臭とは、油の劣化過
程初期における、過酸化物価がほとんど上昇していない
段階において発生する異臭のことである。特に大豆油に
おいては、この戻り臭が発生しやすく、その臭いも強
い。菜種油にも同様の傾向がみられるが、大豆油に比し
て戻り臭の発生度合いはやや弱い。戻り臭の発生の大き
な要因として光の影響がある。このため、プラスチック
やガラス瓶等の透明容器に収容した食用油は、その品質
保持上、戻り臭の発生が常に大きな問題とされてきた。
【0007】安定性の向上や食用油の風味、加熱臭の改
質を目的として、現在までに脂肪酸組成に関する研究も
盛んに行われている。大豆に関してはE.G.Hamm
ondらは、変異誘発剤を用いた大豆の処理により、リ
ノレン酸含有量を約2質量%程度まで低減させた品種改
良を成功させている。同様に、飽和脂肪酸の増加やオレ
イン酸の増加等改良が進められている(INFORM,
3,1288(1996))。リノレン酸の低減、オレイン酸の
増加による酸価安定性の向上や栄養面への配慮がなされ
ている。
【0008】菜種油に関しては、これまでリノレン酸含
有量を3%にまで低下させた菜種油が開発され(R.S
carch et al.,Can.J.Plant
Sci.68,509(1988))、フライ油や加工
食品原料への利用がなされている。また、低リノレン酸
であり、かつオレイン酸含有量を80%にまで上昇させ
た菜種油(D.Charne,Prgram,of E
ight Curcifer Genetic Wor
kshop,Saskatoon,SK,Canad
a,1993,p19)は、従来より用いられている菜
種油を上回る酸化安定性を示すものと思われる。
【0009】我が国において用いられている家庭用食用
油は、二種類以上の食用油が配合された配合油として供
給されるケースが多く、一般家庭向け天ぷら油やサラダ
油は、大豆油と菜種油とを配合したものが主流である。
大豆油と菜種油とを配合するのは、大豆油及び菜種油の
それぞれの特長を活かして全体の味及び風味を整え、熱
安定性を高めるといった理由に加え、原料の安定的な入
手状況、搾油時に発生する粕の生産量の調製等の意味合
いもある。このように、大豆油及び菜種油を配合した配
合食用油は供給量が安定しており、価格の点でも比較的
安価であるため、目玉焼き等の焼き物、野菜炒め等の炒
め物、ドレッシング等の生食、天ぷらやフライ等の揚げ
物等の各種料理に汎用的に使用されている。
【0010】しかし、配合油の場合は、大豆油や菜種油
に由来する青臭い風味、青豆様の風味、強い刺激臭、生
臭い加熱臭など油種に起因する風味、加熱臭についての
問題が残っており、風味改善のためには原料の改質のみ
ならず、食用油の精製方法等の多くの研究が進められて
いる(例えば特開昭57−5793号公報及び特開20
00−262214号公報等)。
【0011】しかし、近年における消費者の健康志向の
向上等によって、いわゆるプレミアムオイルと呼ばれる
キャノーラ油の消費量が伸びてきている。一般的には、
国内に輸入されるキャノーラ油と菜種油とは同一のもの
であるが、生産者によっては従来の菜種油と差別するた
めに特殊な精製法により油の精製を行って色度を淡くし
たり、一番絞り油のみとして圧搾油のみを使用する等し
てキャノーラ油独特の商品アピールを行っている。上記
キャノーラ油は生産者の広告効果もあいまって、従来の
配合油(調合油)と比較して、「油っぽくない」、「加
熱時の臭いが強くない」等の特性が消費者に認知されて
いるようである。
【0012】食用油のプレミアムオイルの代表としては
紅花油が挙げられる。紅花(サフラワー)はキク科、ベ
ニバナ属に属する一年生木であり、古来より染料や化粧
用として利用されている。油脂原料として栽培されるよ
うになったのは1930年頃からである。日本国内にお
ける搾油は1958年から本格的に開始されている。紅
花の用途は、当初は工業用途向けであったが、リノール
酸の健康ブームによって食用としての価値が高まり、食
用油脂として利用されるようになった。現在にいたって
は紅花油(以下、本明細書においてサフラワー油ともい
う)は健康イメージを持つ食用油、特に食用油ギフトの
中で差別化された高品質な食用油との評価を得ている。
【0013】紅花種子の主要な産地としては、インド、
米国、メキシコなどがあるが、輸出国となると米国が中
心となる。世界の生産量としては大豆の1%以下、菜種
の3%以下であり、生産量としてマイナー作物である。
紅花は油分が28%と低く、油糧作物としては魅力に欠
けるものであったが、米国での研究、品種開発により油
分が32〜34%と高油分の品種も見出された。紅花の
品種を大別するとリノール酸含有量の高い従来型の高リ
ノール種とリノール酸含有量が低く、オレイン酸含有量
が高い高オレイン種に分けられるが、現在では高オレイ
ン種が栽培の中心となっている。近年ではさらに油分が
40%に近い高油分、オレイン酸含有量が80%の高オ
レイン種の品種改良が進んでいる(P.K.Knowl
es,JAOS、46,130(1966))。
【0014】サフラワー油は、キャノーラ油同様にプレ
ミアムオイルの一つとしてフライ油、炒め油などの加熱
調理から、ドレッシングなどの生食用途まで幅広く利用
されている。特にハイオレイックサフラワー油は酸化安
定性に優れており、独特の淡い色合いと淡白な風味でフ
ライ物の仕上がりが良好となる。栄養面についても、必
須脂肪酸であるリノール酸の含有量が多いことで高リノ
ール酸サフラワー油が有名になった。さらにオレイン酸
についてもコレステロール低下作用を示すことが分かっ
てきており(F.M.Mattson,andS.M.
Grundy,J.LipidRes.,26,194
−202、(1985))、オレイン酸の供給源として
キャノーラ油と同様に高オレイン酸サフラワー油が健康
イメージの高い食用油として着目されている。
【0015】一方、食用油脂の精製工程において、特に
脱色工程において活性炭が利用されていることは公知で
ある。食用油脂の脱色工程は、通常活性白土を食用油脂
の脱酸工程後に油脂に対し数%程度添加し減圧下に攪拌
することにより色素等を吸着して行われる。活性白土に
更に活性炭を添加することにより油脂の脱色効率を高め
る研究が多くなされている(例えば特開昭56−215
54号公報及び特開平4−154897号公報等)。
【0016】また、食用油脂に対する活性炭の利用の研
究については、揚げ物等の加熱調理後の使用済みの食用
油の再生方法として用いることが研究されている。揚げ
物等に使用された食用油は揚げ物材料より移行する物質
や食用油脂自体の酸化、重合又は分解等による多くの成
分や不純物を含んでいる。また、揚げ物特有の油臭いと
いわれる臭気が発生している。このような揚げ油を繰り
返し使用すると調理品の味覚を損なうという問題があ
る。
【0017】このような問題を解決するため、揚げ油の
再生を行うための装置、器具等の多くの研究がなされて
おり、そのような再生装置等に活性炭が利用されている
(例えば特開昭56−15646号公報、特開昭56−
166820号公報、特開平6−510563号公報及
び特開平9−19612号公報等)。また、食用油以外
にも、活性炭の特長である、微細な細孔が多く比表面積
が大きいことを利用して食品産業のみならず、工業用油
脂等の精製に活性炭が利用されている。活性炭は、例え
ば酒類等の醸造産業において酒類の脱色等の浄化や、水
道水の浄化等に利用されている。
【0018】今日における我が国の食用油使用実態は、
大豆油及び菜種油の配合油に依存する度合いが極めて高
く、その供給安定性や搾油粕の需要等を考慮すると、大
豆油及び菜種油の配合は将来においても存続するものと
思われる。また、同時に今後の少子化、高齢化の社会が
進むと、一方においてはキャノーラ油に代表されるプレ
ミアム系の食用油の使用量が増加することが予想され
る。なお、本明細書において食用油とは、製油時に脱ガ
ム、脱酸、脱色及び脱臭等の精製工程を経て製造された
精製油のことである。
【0019】上述したような状況下、食用油の品質上の
問題として挙げられるのが、風味についてである。風味
とは、臭い、味、食感やこれらの複合した要素等からな
り、風味の問題には所謂「戻り臭」の発生による臭い及
び味等の面における劣化の問題、食用油脂そのものの口
当たり、喉越し等の好ましくない食感の問題等がある。
戻り臭とは、油の劣化過程の初期の段階で、過酸化物価
がほとんど上昇していない段階において発生する異臭の
ことである。特に、大豆油においてはこの戻り臭が発生
しやすく、その臭いも独特の「青豆臭」を発する。菜種
油にも同様の傾向が見られるが、大豆油に比して戻り臭
の発生度合いは弱いといえる。戻り臭の発生の大きな要
因として光の影響がある。このため、プラスチック製の
透明容器に収容した食用油は、戻り臭の発生が常に大き
な問題とされてきた。食用油は高エネルギーで、かつ栄
養価の高い食品であり、また脂溶性ビタミン類の供給源
にもなっており、栄養学的に見ても価値の高い食品であ
るが、その独特の臭いと食感(「油っぽい」と称される
こともある)などによって、敬遠される機会が少なくな
かった。
【0020】さらに食用油の品質上の問題として挙げら
れることは、加熱時の異臭の発生である。高温に加熱さ
れた多量の食用油に食材を投入して行う加熱調理、すな
わち揚げ物調理においては、熱や水分、被調理品の成分
等の影響によって油には様々な劣化が起こされる。油の
熱による劣化としていは、トリグリセリドから脂肪酸が
遊離する加水分解反応や、酸化反応における二次生成物
である様々なケトンやアルデヒド等の化合物の発生があ
り、これらの化合物が空気中に揮散し、異臭の原因とな
っている。このような物質の中には、所謂「油酔い」の
原因と考えられるものも含まれており、調理する者の食
欲減退を引き起こし、揚げ物調理を行う意欲を失わせる
ことにもつながっている。特に大豆油、菜種油は使用頻
度も多いことからもこの加熱時の異臭、強い刺激臭の改
質、低減が求められている。
【0021】また、食用油脂は、炒め油や、揚げ油等と
して加熱調理に使用されるのみならず、生のままドレッ
シングやマヨネーズ等に調理素材として加工されて食さ
れることもある。従って、食用油の品質という問題にお
いては生の風味(臭い、味及び食感等)も重要な評価項
目である。
【0022】従って、加熱調理をする際に異臭が発生し
ない、すなわち加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制さ
れ、風味の優れた食用油脂が望まれている。
【0023】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制され、風味の
優れた食用油脂を製造することのできる食用油脂製造方
法及び食用油脂脱臭方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】上述したような状況に鑑
みて、本発明者らは鋭意検討した結果、食用油脂を活性
炭によりろ過、または活性炭と接触させることにより、
上記目的が達成し得るという知見を得た。本発明は、上
記知見に基づいてなされたもので、脱臭処理を行った食
用油脂を活性炭によりろ過する工程を含むことを特徴と
する食用油脂製造方法を提供するものである。また、本
発明は、減圧水蒸気蒸留脱臭処理を行った食用油脂を活
性炭によりろ過する工程を含むことを特徴とする食用油
脂製造方法である。また、本発明は、脱臭処理を行った
食用油脂を活性炭と接触させる工程を含むことを特徴と
する食用油脂製造方法である。また、本発明は、減圧水
蒸気蒸留脱臭処理を行った食用油脂を活性炭と接触させ
る工程を含むことを特徴とする食用油脂製造方法であ
る。また、本発明は、食用油脂を繊維状活性炭によりろ
過する、ろ過工程を含むことを特徴とする、食用油脂脱
臭方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、先ず本発明の食用油脂製造
方法について説明する。本発明の食用油脂製造方法は、
脱臭処理を行った食用油脂を活性炭によりろ過する工程
を含むことを特徴とする。本発明の食用油脂製造方法に
おいて原料として用いられる食用油脂の種類には特に限
定はなく、食用油脂として用いられるものであればいか
なるものであっても使用可能である。例をあげると、大
豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、ゴマサラダ油、シソ
油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花
油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、綿実油、ブ
ドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、
カボチャ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、
ボラージ油、オリーブ油、米糠油、小麦胚芽油、パーム
油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、牛脂、ラード、鶏
脂、乳脂、魚油、アザラシ油及び藻類油などの植物油及
び動物油脂があげられるが、本発明の食用油脂製造方法
においては、植物油を用いることが望ましい。また常温
で液体であるか固形であるかに限定はない。
【0026】上記植物油としては、例えばキャノーラ種
に属する菜種種子を圧搾処理及び/又は抽出処理して得
られる植物油、及び紅花種子を圧搾処理及び/又は抽出
処理して得られる植物油が挙げられるが、本発明の食用
油脂製造方法において原料として用いられる食用油脂は
上記のものに限定されない。また、様々な品種改良によ
って創出された従来品とは異なる品質を持つ食用油につ
いても、特に限定するものではない。
【0027】また、本発明の食用油脂製造方法において
原料として用いられる食用油脂の製油方法及び製油条件
については特に限定はなく、例えば一般の製油工程手
段、すなわち圧搾処理及び/又はヘキサンや液化プロパ
ン等の有機溶剤を用いる抽出処理、脱ガム処理、アルカ
リ脱酸処理、活性炭や白土による脱色処理及び減圧脱臭
処理等により製油されたものが用いられる。
【0028】菜種種子としては、グルコシノレート等の
人体にとって好ましくない成分を多く含有するものを除
けば、その種類等に限定はないが、上述した、キャノー
ラ種に属する菜種種子から製造された菜種油を用いるこ
とが好ましい。また、菜種油としては十分に精製されて
いるものを用いることが好ましく、具体的には、日本農
林水産規格(JAS)に定める精製油あるいはサラダ油
の規格に適合する程度の精製状態のものを用いることが
好ましい。
【0029】また、本発明の食用油脂製造方法において
原料として植物油を用いる場合、植物油中のトランス酸
含有量は2.5質量%以下であることが好ましく、1質
量%以下であることが更に好ましい。ここで、トランス
酸とは、不飽和脂肪酸のトランス型不飽和脂肪酸のこと
をいう。天然に存在する不飽和脂肪酸の二重結合はシス
型であるが、トランス型に異性化した二重結合を有する
不飽和脂肪酸のことをトランス酸(トランス脂肪酸)と
いう。トランス酸は、自然界においては牛等の脂肪に多
く含有されるが、植物油を原料とするマーガリンの製造
の際に行われる油脂の水素添加等によって人工的に発生
する。市販のマーガリン中のトランス酸含有量は0〜3
5質量%程度、平均で15質量%前後であるといわれて
いる。トランス酸は、一部のものを除くと通常には含ま
れていない脂肪酸であり、油脂の精製等の加工途中に生
成される人工的脂肪酸である。油脂の精製時の加熱等に
よってもトランス酸が生成されることが知られている。
なお、通常の食用油脂の精製工程における脱臭処理の温
度を低くすることにより、トランス酸の生成を抑制する
ことができる。
【0030】キャノーラ油や菜種油等の通常の植物油の
精製工程においては、100〜300℃の高温、減圧下
で脱色及び脱臭が行われており、市販のマーガリンほど
ではないが、通常の精製された植物油中にもトランス酸
が含有されている。本発明の食用油脂製造方法において
原料として用いられる植物油中の好ましいトランス酸含
有量が上記範囲である理由は、トランス酸含有量が上記
範囲内である植物油を原料として用いた場合、得られた
食用油脂の加熱臭及び戻り臭の発生抑制効果が更に向上
するからである。
【0031】本発明の食用油脂製造方法においては、脱
臭処理を行った食用油脂を活性炭ろ過する工程を含む。
上記脱臭処理としては、食用油脂の脱臭を行うために通
常に用いられている方法であり、その処理方法に特に制
限はない。食用油脂の脱臭法としては、通常、減圧水蒸
気蒸留脱臭法が用いられており、本発明の食用油脂製造
方法は、食用油脂を、例えば上述した減圧水蒸気蒸留脱
臭法により脱臭処理した後に、活性炭ろ過する工程を含
む。減圧水蒸気蒸留脱臭法については、食用油脂の脱臭
処理として公知であり、本明細書においては特に詳細に
説明しない。
【0032】本発明の食用油脂製造方法においては、脱
臭処理を行った食用油脂を活性炭によりろ過する。活性
炭は、その特長として高い吸着力を有しており、このた
めに食品産業を初めとして種々の産業において使用され
てきた。しかし、吸着力を高めるためには比表面積を大
きくする必要があり、比表面積を大きくするためには活
性炭を微細な粉末とすることが必要とされている。従っ
て、活性炭を精製工程等において使用した場合には、最
終製品に活性炭の微粉が混入することを防止するために
ろ過装置等の大きな分離装置が必要になってくる。活性
炭としては、粉末状の形状以外に粒子径を大きくし、ろ
過性を多少向上させた粒状の活性炭も存在するが、比表
面積と吸着性能との関係により粒状活性炭では期待され
る成果が得られない場合が多いのも事実である。
【0033】食用油脂の製造工程において活性炭を使用
するためには、従来より活性白土等の吸着剤を使用して
おり既存のろ過分離装置を用い、脱色工程において強化
的に使用するに限られていたという実態がある。しか
し、脱色工程中における活性炭の利用については極めて
微細な粉末であるため、使用時に空気中に分散する場合
があり、その作業環境が悪化し、更にろ過装置が目詰ま
りを起こす等、作業効率が低下する等の問題があり、食
用油の脱色工程以外においては、微細な粉末状の活性炭
は使用されていないのが実状である。
【0034】従って、本発明においては、従来より事実
上食用油脂の脱臭工程において用いられていた粉末状又
は粒状の活性炭を用いるのでなく、繊維状活性炭を用い
ることが好ましい。すなわち、繊維状活性炭を主成分と
したシート、物品などの成型加工された活性炭フィルタ
ーを用いることが好ましい。
【0035】上記繊維状活性炭としては、例えばポリア
クリロニトリル系、フェノール系、レーヨン系及びピッ
チ系等の原料繊維を賦活させて製造される。このような
繊維状活性炭は、従来より用いられている粉末状又は粒
状の活性炭と比較して吸着速度が100〜1000倍と
非常に速く、粒状の活性炭と比較して吸着容量が1.5
〜10倍と多く、高比表面積のものが容易に製造できる
という利点を有する。また、フェルト状、糸状、織物状
又は紙状等に成型加工が容易であり、悪臭成分の除去や
溶剤回収等の高性能吸着材や電極材料、炭素材料等の新
素材として実用化されつつある。
【0036】繊維状活性炭を液相吸着に利用した場合、
繊維状活性炭の比表面積は粉末状又は粒状活性炭よりも
大きいために通液抵抗が小さく、吸着速度が速いために
高速処理が可能となる。また、繊維状活性炭を用いるこ
とにより、従来より用いられている粉末状又は粒状活性
炭を用いた場合のろ過工程において問題となっていた炭
塵が発生しないため、活性炭の飛散による作業環境の改
善、ろ過装置の目詰まりの解消、ろ過装置の通り抜けを
防止するための多段ろ過の実施等が不要となる。
【0037】本発明の食用油脂製造方法において用いら
れる繊維状活性炭としては、繊維状活性炭がカートリッ
ジ等に成型加工されているものが好ましい。繊維状活性
炭がカートリッジ等に成型加工されたものは、一般のろ
過ハウジングを使用することができ新たな設備、施設等
が不要であり、作業性の向上を図ることが可能である。
また、活性炭の違いによって、植物油脂の風味の改善及
び加熱臭の低減等の効果を妨げるものではない。
【0038】上述した、成型加工されたカートリッジ型
繊維状活性炭は、繊維状活性炭を主成分とし、その他に
繊維状又は粉末状の熱可塑性繊維や粒状、粉末状の活性
炭、活性白土、シリカゲル、珪藻土、イオン交換樹脂等
の各種の吸着材が混合されていてもよい。このような成
型加工されたカートリッジ型繊維状活性炭としては市販
されているものを用いることができ、例えばクラレケミ
カル(株)、ユニチカ(株)、大阪ガス(株)及びアド
バンテック東洋(株)等から販売されているものが用い
られる。
【0039】上述した市販のカートリッジ型繊維状活性
炭は、直径が60〜70cm、長さが25〜75cmに
成型されている。成型加工される繊維状活性炭の比表面
積は500m/g以上であることが好ましく、更に好
ましくは1000〜2500m/gである。上記範囲
が好ましい理由としては、吸着効果という点、及び製造
コストの点を考慮したものである。また、繊維状活性炭
は、ろ過性能を低下させない範囲で細孔構造であること
が好ましく、孔径が5μm以下であれば、カートリッジ
に充填前のチェックフィルターとしての併用も可能とな
る。
【0040】通常の食用油脂の精製工程における脱臭工
程(例えば上述した減圧水蒸気蒸留脱臭法による脱臭)
が終了した精製油は、通常は常温〜100℃程度の温度
までに冷却された後に製品タンク等に送られる。活性炭
ろ過する工程は製品タンクへの移行から製品充填までの
間で実施される。食用油脂を活性炭ろ過する場合の温度
は、バインダーの耐熱性の点等を考慮し、50〜60℃
程度が好ましい。
【0041】上述した、本発明の食用油脂製造方法によ
れば、加熱臭が少なく、風味の優れた食用油脂を得るこ
とができる。
【0042】次に、本発明の食用油脂製造方法の他の実
施形態について説明する。本実施形態においては、脱臭
処理を行った食用油脂を活性炭と接触させる工程を含む
ことを特徴とする。本実施形態において用いられる活性
炭としては繊維状活性炭が好ましい。また、食用油脂を
活性炭と接触させる方法については特に限定はなく、食
用油脂中に活性炭を混合した後、フィルターを用いてろ
過することによって行うこともでき、また、上述したカ
ートリッジ型繊維状活性炭を用いて食用油脂を活性炭に
接触させてもよい。なお、食用油脂等については上述し
た通りである。
【0043】次に、本発明の食用油脂脱臭方法について
説明する。本発明の食用油脂脱臭方法は、食用油脂を繊
維状活性炭によりろ過する、ろ過工程を含むことを特徴
とする。上述したように、通常の食用油脂は精製工程に
おいて減圧水蒸気蒸留法等による脱臭処理を行ってい
る。本発明の食用油脂脱臭方法は、通常の脱臭処理を行
った食用油脂を繊維状活性炭によりろ過する、ろ過工程
を含むものである。すなわち、本発明の食用油脂脱臭方
法におけるろ過工程は、減圧水蒸気蒸留脱臭処理を行っ
た後に行われる。
【0044】本発明の食用油脂脱臭方法において原料と
して用いられる食用油脂は、前述した本発明の食用油脂
製造方法において用いられるものが用いられる。また、
本発明の食用油脂脱臭方法において用いられる繊維状活
性炭についても、前述した本発明の食用油脂製造方法に
おいて用いられるものが用いられ、方法についても上述
した本発明の食用油脂製造方法と同様である。
【0045】次に、本発明の食用油脂脱臭方法の他の実
施形態について説明する。本実施形態の食用油脂脱臭方
法は、食用油脂を繊維状活性炭と接触させる、活性炭接
触工程を含むことを特徴とする。前記食用油脂を繊維状
活性炭と接触させる手段としては、上述した本発明の食
用油脂製造方法において説明した通りであり、食用油脂
中に活性炭を混合した後、フィルターを用いてろ過する
ことによって行うこともでき、また、上述したカートリ
ッジ型繊維状活性炭を用いて食用油脂を活性炭に接触さ
せてもよい。なお、食用油脂等については上述した通り
である。その他、繊維状活性炭の種類、食用油脂等につ
いては、上述した本発明の食用油脂製造方法において用
いられるものが用いられ、方法についても上述した本発
明の食用油脂製造方法と同様である。上述した、本発明
の食用油脂脱臭方法によれば、加熱臭が少なく、戻り臭
の発生が抑制され、風味の優れた食用油脂を得ることが
できる。
【0046】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。なお、本発明の範囲は、かかる実施例に限定され
ないことはいうまでもない。また、以下の記載におい
て、特に断らない限り部は質量部を表わす。実施例1 通常の方法により精製を行ったキャノーラ油を製品タン
クより入手した。製品タンクより入手したキャノーラ油
中のトランス酸含有量は2.8質量%であった。繊維状
活性炭を成形加工しカートリッジフィルターとした筒状
のろ紙(アドバンテック東洋(株)製 TCC−WH−
SOCP)を専用ハウジングに取付け、上記キャノーラ
油を室温にて1L/分の流量で通液ろ過し、食用油脂を
得た。フィルターからの、活性炭微粉のろ過漏れは全く
なく、その後チェックフィルター等の追加のろ過は全く
不要であった。
【0047】実施例2 キャノーラ油精製工程中、脱臭処理時の温度を240℃
に設定し、脱臭処理に要する時間を120分とした以外
は実施例1と同様に操作を行い、食用油脂を得た。な
お、実施例1における精製工程中の脱臭処理時の温度は
250℃以上であり、脱臭処理に要する時間は90分で
ある。製品タンクより得られたキャノーラ油中のトラン
ス酸含有量は1.2質量%であった。本実施例における
精製工程の脱臭温度は、通常に行われる場合よりも脱臭
温度が低く、脱臭効果を得るために通常よりも脱臭時間
を長く設定することにより通常のキャノーラ油と同様の
品質を得ることができることが確認された。
【0048】得られた食用油脂について、下記〔食用油
脂の評価基準〕に従って、それぞれ評価を行った。な
お、実施例1及び実施例2において活性炭ろ過処理を行
っていない食用油脂についても、同様に評価を行った
(それぞれ比較例1及び比較例2とする)。結果を表1
及び表2に示す。
【0049】〔食用油脂の評価基準〕 (1)製造直後の食用油脂の評価 得られた食用油脂について製造直後の生風味、加熱臭の
評価を官能試験により行った。また、酸価について、基
準油脂分析法(2.3.1酸価、基準油脂分析法
(I)、日本油化学会制定)に従って測定した。更に、
食用油脂の色度を基準油脂分析法(2.2.1.1色
(ロビボンド法)、133.4mmセル使用)に従って
測定した。それぞれの結果を表1に示す。生風味、加熱
臭の評価はサラダ油の専門パネラー6名により以下のよ
うに行った。生風味の評価は、食用油脂を直接口に含
み、下記評価基準に従った評点評価とフリーアンサーに
よる評価を行った。表1には、6名のパネラーによる得
点の平均点及び平均的な意見を記載した。 5:大変良い。 4:良い。 3:風味が低下している。 2:風味が悪い。 1:食することが不能である。
【0050】加熱臭の評価は、以下のように行った。す
なわち、100mL容ビーカーに食用油脂50gを入
れ、電気ヒーターを用いて180℃に加熱し、加熱した
時点における加熱臭を専門パネラーによって官能検査を
行い、下記評価基準に従って評価を行った。表1には、
6名のパネラーによる得点の平均点と平均的な意見を記
載した。 A:良好である。 B:刺激臭を感じる。 C:刺激臭が強い(不適格)。
【0051】
【表1】
【0052】上記表1から明らかなように、実施例1及
び実施例2で得られた食用油脂は、比較例1及び比較例
2で得られた食用油脂と比較して生の風味に優れ、加熱
臭が少ないことがわかる。
【0053】(2)光酸化安定性 食用油脂を、600gのサラダ油容器(600gのサラ
ダ油容器(PET樹脂容器))に充填した。次いで、食
用油脂が充填されたサラダ油容器を蛍光灯を設置した専
用の光照射室に入れ、容器側面の照度が3000ルクス
となるように蛍光灯を照射した。蛍光灯を24時間照射
した後、サラダ油容器内に充填された食用油脂を取り出
し、該食用油脂の過酸化物価(meq/kg)について
基準油脂分析法(2.5.2過酸化物価、基準油脂分析
試験法(I)、日本油化学会制定)に従って測定した。
また、食用油脂の色度を基準油脂分析法(2.2.1.
1色(ロビボンド法)、133.4mmセル使用)に従
って測定した。それぞれの結果を表2に示す。
【0054】更に、食用油脂の生風味、加熱臭の評価を
上述した官能検査により行った。結果を表2に併せて示
す。
【0055】
【表2】
【0056】上記表2から明らかなように、実施例1及
び実施例2で得られた食用油脂は、比較例1及び比較例
2で得られた食用油脂と比較して、光安定性として、特
に生風味に優れ、加熱臭が少ないことがわかる。また、
光安定性に優れることから、戻り臭の発生が抑制される
ことが示唆される。
【0057】(3)加熱安定性 食用油脂を、200mLのビーカーに100g入れ、食
用油脂を入れたビーカーを180℃の温度に加熱したオ
イルバスに入れ、8時間加熱を行った。加熱終了後に、
ビーカーから食用油脂を取り出し、該食用油脂中の重合
物量について以下のように測定を行った。加熱後の試料
50mgをテトラヒドロフラン10mLに溶解して、下
記の条件により赤外線検出器を備えたゲル浸透クロマト
グラフ(GPC)にてトリアシルグリセリン単量体より
速く溶出する成分を重合物として定義し、ピーク面積の
全体に対する百分率を重合物量とした。
【0058】重合物量の測定条件は以下のとおりであ
る。 検出器:赤外線検出器(HPIR−100、日本分
光)、波長1,740cm -1 カラム:TSKGEL(G2000HXL2本) 移動相:テトラヒドロフラン 流速:1.0mL/分 注入量:10μL また、上述した方法により加熱臭の評価を行った。結果
を表3に示す。
【0059】
【表3】
【0060】上記表3から明らかなように、実施例1及
び実施例2で得られた食用油脂は、比較例1及び比較例
2で得られた食用油脂と比較して、加熱安定性としての
重合物量については差は特に認められなかった。しか
し、加熱臭については、実施例1及び実施例2で得られ
た食用油脂は、比較例1及び比較例2で得られた食用油
脂と比較して、優れていることがわかる。
【0061】(4)調理時における性能比較 実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2で得られた
食用油脂を用いて加熱調理及び生食調理を行い、調理時
における性能比較を行った。実施例1、実施例2、比較
例1及び比較例2で得られた食用油脂を用いて、卵焼
き、サツマイモの天ぷら、コロッケ揚げ、ドレッシング
を調理した。調理の内容については一般家庭で頻繁に調
理されているメニューであり、特に評価について工夫が
必要となるものではない。ドレッシングは、食用油脂3
部、食酢1部、塩、こしょうを適宜とした分離型ドレッ
シングを調理した。評価は、6名の専門パネラーによる
加熱調理品についての官能検査のコメントによる評価を
行った。結果を表4に示す。表4に示す結果は、官能検
査によるコメントを平均化して記載した。
【0062】
【表4】
【0063】上記表4から明らかなように、実施例1及
び実施例2で得られた食用油脂を用いて加熱調理を行っ
た場合は、比較例1及び比較例2で得られた食用油脂を
用いて加熱調理を行った場合と比較して、明らかな風味
の改善効果が認められた。
【0064】実施例3 通常の方法により精製を行った大豆油を製品タンクより
入手した。製品タンクより入手した大豆油中のトランス
酸含有量は2.7質量%であった。実施例1と同様な方
法により、繊維状活性炭を成形加工しカートリッジフィ
ルターとした筒状のろ紙により通液ろ過し、食用油脂を
得た。実施例1と同様にカートリッジフィルターからの
ろ過もれはなかった。
【0065】実施例4 大豆油精製工程中、脱臭処理時の温度を240℃に設定
し、脱臭処理に要する時間を120分とした以外は実施
例3と同様に操作を行い、食用油脂を得た。なお、実施
例3における精製工程中の脱臭処理時の温度は250℃
以上であり、脱臭処理に要する時間は90分である。製
品タンクより得られた大豆油中のトランス酸含有量は
2.2質量%であった。実施例2の説明における記載と
同様、本実施例における精製工程の脱臭温度は、通常に
行われる場合よりも脱臭温度が低く、脱臭効果を得るた
めに通常よりも脱臭時間を長く設定することにより通常
の大豆油と同様の品質を得ることができることが確認さ
れた。
【0066】得られた食用油脂について、実施例1及び
実施例2と同様に、〔食用油脂の評価基準〕に従って、
それぞれ評価を行った。なお、実施例3及び実施例4に
おいて活性炭ろ過処理を行っていない食用油脂について
も、同様に評価を行った(それぞれ比較例3及び比較例
4とする)。製造直後の食用油脂の評価、光酸化安定
性、加熱安定性及び調理時(加熱調理及び生食調理)に
おける性能比較の評価結果を、それぞれ、表5、表6、
表7及び表8に示す。
【0067】
【表5】
【0068】上記表5から明らかなように、実施例3及
び実施例4で得られた食用油脂は、比較例3及び比較例
4で得られた食用油脂と比較して生の風味に優れ、加熱
臭が少ないことがわかる。
【0069】
【表6】
【0070】上記表6から明らかなように、実施例3及
び実施例4で得られた食用油脂は、比較例3及び比較例
4で得られた食用油脂と比較して、光安定性として生風
味において優れていることがわかる。先に表2において
比較したキャノーラ油の場合よりも生風味の評点が低く
評価されている。これは、油種がキャノーラ油と大豆油
との間で相違し、影響していることが推察される。評価
した6名の官能検査パネラーからも大豆油特有の青豆臭
を感じられはするが、比較例より更に戻り臭の発生が少
ないことを指摘する結果が得られている。一般的に大豆
油は、その諸特性により光安定性が悪いが、カートリッ
ジフィルターを通液したものは風味が明らかに改善され
ることがわかる。
【0071】
【表7】
【0072】上記表7から明らかなように、実施例3及
び実施例4で得られた食用油脂は、比較例3及び比較例
4で得られた食用油脂と比較して、加熱安定性としての
重合物量についえはキャノーラ油を用いた実施例と同様
に差は特に認められなかった。キャノーラ油よりも全体
的に大豆油の方が重合物量の生成が多く見られた。この
ことは、脂肪酸組成等、油種の性質の相違が影響してい
ると思われる。しかし、加熱臭についてはキャノーラ油
よりも全体的に油っぽさが目立ち、評点は低いが、実施
例3及び実施例4で得られた食用油脂は、比較例3及び
比較例4で得られた食用油脂と比較して加熱臭が少な
く、優れていることがわかる。
【0073】
【表8】
【0074】上記表8から明らかなように、実施例3及
び実施例4で得られた食用油脂を用いて調理を行った場
合は、比較例3及び比較例4で得られた食用油脂を用い
て調理を行った場合と比較して、明らかな風味改善効果
が認められた。調理結果においてはキャノーラ油の場合
と同様に大豆油においてもカートリッジフィルターの調
理時の風味改善効果が認められた。また、比較例3にお
いては青豆臭さ(戻り臭)の発生が目立ったが、実施例
3及び4においては戻り臭の発生が抑制された。
【0075】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明の食用油脂製
造方法によれば、加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制
され、風味の優れた食用油脂を製造することができる。
また、本発明の食用油脂脱臭方法によれば、食用油脂の
脱臭が容易で、加熱臭が少なく、戻り臭の発生が抑制さ
れ、風味の優れた食用油脂とすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 俊久 神奈川県横須賀市神明町1番地 日清製油 株式会社研究所内 Fターム(参考) 4B026 DC01 DG04 DG08 DP10 DX01

Claims (26)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脱臭処理を行った食用油脂を活性炭によ
    りろ過する工程を含むことを特徴とする食用油脂製造方
    法。
  2. 【請求項2】 減圧水蒸気蒸留脱臭処理を行った食用油
    脂を活性炭によりろ過する工程を含むことを特徴とする
    食用油脂製造方法。
  3. 【請求項3】 前記活性炭が繊維状活性炭である、請求
    項1又は2に記載の食用油脂製造方法。
  4. 【請求項4】 前記繊維状活性炭の比表面積が1000
    〜2500m/gである、請求項3に記載の食用油脂
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記食用油脂が植物油である、請求項1
    〜4のいずれか1項に記載の食用油脂製造方法。
  6. 【請求項6】 前記植物油が、キャノーラ種に属する菜
    種種子又は紅花種子を圧搾処理及び/又は抽出処理して
    得られたものである、請求項5に記載の食用油脂製造方
    法。
  7. 【請求項7】 前記植物油中のトランス酸含有量が2.
    5質量%以下である、請求項5又は6に記載の食用油脂
    製造方法。
  8. 【請求項8】 脱臭処理を行った食用油脂を活性炭と接
    触させる工程を含むことを特徴とする食用油脂製造方
    法。
  9. 【請求項9】 減圧水蒸気蒸留脱臭処理を行った食用油
    脂を活性炭と接触させる工程を含むことを特徴とする食
    用油脂製造方法。
  10. 【請求項10】 前記活性炭が繊維状活性炭である、請
    求項8又は9に記載の食用油脂製造方法。
  11. 【請求項11】 前記繊維状活性炭の比表面積が100
    0〜2500m/gである、請求項10に記載の食用
    油脂製造方法。
  12. 【請求項12】 前記食用油脂が植物油である、請求項
    8〜11のいずれか1項に記載の食用油脂製造方法。
  13. 【請求項13】 前記植物油が、キャノーラ種に属する
    菜種種子又は紅花種子を圧搾処理及び/又は抽出処理し
    て得られたものである、請求項12に記載の食用油脂製
    造方法。
  14. 【請求項14】 前記植物油中のトランス酸含有量が
    2.5質量%以下である、請求項12又は13に記載の
    食用油脂製造方法。
  15. 【請求項15】 食用油脂を繊維状活性炭によりろ過す
    る、ろ過工程を含むことを特徴とする、食用油脂脱臭方
    法。
  16. 【請求項16】 前記ろ過工程を、減圧水蒸気蒸留脱臭
    処理を行った後に行う、請求項15に記載の食用油脂脱
    臭方法。
  17. 【請求項17】 前記繊維状活性炭の比表面積が100
    0〜2500m/gである、請求項15又は16に記
    載の食用油脂脱臭方法。
  18. 【請求項18】 前記食用油脂が植物油である、請求項
    15〜17のいずれか1項に記載の食用油脂脱臭方法。
  19. 【請求項19】 前記植物油が、キャノーラ種に属する
    菜種種子又は紅花種子を圧搾処理及び/又は抽出処理し
    て得られたものである、請求項18に記載の食用油脂脱
    臭方法。
  20. 【請求項20】 前記植物油中のトランス酸含有量が
    2.5質量%以下である、請求項18又は19に記載の
    食用油脂脱臭方法。
  21. 【請求項21】 食用油脂を繊維状活性炭と接触させ
    る、活性炭接触工程を含むことを特徴とする、食用油脂
    脱臭方法。
  22. 【請求項22】 前期活性炭接触工程を減圧水蒸気蒸留
    脱臭処理を行った後に行う、請求項21に記載の食用油
    脂脱臭方法。
  23. 【請求項23】 前記繊維状活性炭の比表面積が100
    0〜2500m/gである、請求項21又は22に記
    載の食用油脂脱臭方法。
  24. 【請求項24】 前記食用油脂が植物油である、請求項
    19〜23のいずれか1項に記載の食用油脂脱臭方法。
  25. 【請求項25】 前記植物油が、キャノーラ種に属する
    菜種種子又は紅花種子を圧搾処理及び/又は抽出処理し
    て得られたものである、請求項24に記載の食用油脂脱
    臭方法。
  26. 【請求項26】 前記植物油中のトランス酸含有量が
    2.5質量%以下である、請求項24又は25に記載の
    食用油脂脱臭方法。
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