JP2003049745A - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

燃料噴射ポンプ

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JP2003049745A
JP2003049745A JP2002114610A JP2002114610A JP2003049745A JP 2003049745 A JP2003049745 A JP 2003049745A JP 2002114610 A JP2002114610 A JP 2002114610A JP 2002114610 A JP2002114610 A JP 2002114610A JP 2003049745 A JP2003049745 A JP 2003049745A
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groove
fuel
groove group
fuel injection
injection pump
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Yasuhito Ooka
泰仁 大岡
Shigehiko Inayoshi
成彦 稲吉
Ryoichi Honpo
亮一 本保
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Original Assignee
Denso Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摺動部における油膜の形成ならびに異物の排
出を促進し、摺動部における焼き付きを防止し、吐出さ
れる燃料のさらなる高圧化が可能な燃料噴射ポンプを提
供する。 【解決手段】 プランジャ70のカムリング18側に設
けられているプランジャヘッド71には、カムリング1
8側の端部に複数の溝群が形成されている。溝群は複数
の溝から構成されており、複数の溝群は溝群ごとにプラ
ンジャ70とカムリング18との間の摺動方向となす角
度が異なって形成されている。そのため、摺動面には周
囲の溝から潤滑のための燃料が供給され、摺動面におけ
る油膜の形成が促進される。また、摺動部に異物が存在
する場合でも異物の排出が促進される。したがって、プ
ランジャ70とカムリング18とにより形成される摺動
部の焼き付きが防止され、吐出される燃料のさらなる高
圧化を図ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料噴射ポンプに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばディーゼルエンジンな
どの燃料噴射ポンプとして、可動部材であるプランジャ
を駆動するカムが設けられた燃料噴射ポンプが用いられ
ている。上記のような燃料噴射ポンプの場合、シリンダ
の内部でプランジャが往復移動することにより燃料が加
圧される。プランジャとカムとの間にはカムリングが設
けられ、エンジンにより駆動される駆動軸の回転運動が
カムおよびカムリングによりプランジャの往復運動に変
換される。これにより、プランジャはシリンダの内部で
往復駆動される。近年、エンジンの出力および燃費の向
上ならびにエンジンからのNOxや黒煙などの有害物質
の排出の低減を図るため、燃料の噴射圧力のさらなる高
圧化が要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】燃料の噴射圧力を高め
るためには、燃料噴射ポンプによる燃料の加圧圧力を高
め、燃料噴射ポンプから吐出される燃料の高圧化を図る
必要がある。燃料の高圧化を図ると燃料噴射ポンプの負
荷が過大となり、特に摺動しているカムリングとプラン
ジャとの間の摺動部には大きな力が作用するため部材間
で焼き付きが発生するおそれがある。従来は摺動部を構
成するカムリングまたはプランジャに例えばCrNなど
のセラミックスコーティングを施し、耐焼き付き性能の
向上を図っている。しかし、セラミックスコーティング
は高価であるため、燃料噴射ポンプの製造コストが増大
するという問題がある。
【0004】そこで、摺動部に燃料の一部を供給し、供
給された燃料により形成される油膜によって摺動部の潤
滑が図られている。摺動部を燃料により潤滑を図る技術
として、例えば特表平11−514722号公報に開示
されているポンプが公知である。特表平11−5147
22号公報に開示されているポンプによると、制御リン
グの摺動部に摺動方向とほぼ直角をなす溝を形成し、溝
を介して燃料を供給することにより摺動部に形成される
油膜の保持力の向上を図っている。
【0005】しかし、特表平11−514722号公報
に開示されているようなポンプでは、摺動部に流入する
燃料が少なく、摺動部の全体で十分な油膜を形成するこ
とが困難である。また、形成されている溝部に異物が侵
入すると、摺動部への燃料の流入が阻害され、油膜を十
分に形成することができない。その結果、摺動部の潤滑
が不十分となり、焼き付きの発生を招くという問題があ
る。
【0006】そこで、本発明の目的は、摺動部における
油膜の形成ならびに異物の排出を促進し、摺動部におけ
る焼き付きを防止し、吐出される燃料のさらなる高圧化
が可能な燃料噴射ポンプを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1または
9記載の燃料噴射ポンプによると、対向して摺動部を構
成する可動部材またはカムリングの少なくとも一方の端
部は複数の溝群を有している。溝群はそれぞれ複数の溝
から構成され、複数の溝群は溝群ごとに可動部材とカム
リングとの間の相対的な摺動方向となす角度が異なるよ
うに形成されている。複数の溝群を溝群ごとに摺動方向
とは異なる角度に形成することにより、可動部材または
カムリングの摺動側の端部には例えば格子状の溝が形成
される。溝を形成することにより、端部には溝により区
画された微小な摺動面が形成される。また、各溝群の角
度を変えることにより、摺動部には摺動方向とは異なる
複数の方向から燃料が流入する。その結果、端部に形成
された微小な摺動面には油膜を形成するために十分な燃
料が供給され、摺動部における油膜の形成が促進され
る。さらに、溝群の角度を変えて複数形成することによ
り、溝群を構成する溝に異物が侵入した場合でも、他の
溝群を構成する溝から燃料の供給ならびに異物の排出が
なされる。そのため、燃料の供給が阻害されず、摺動部
での油膜の形成を促進することができる。したがって、
摺動部は燃料により形成される油膜により潤滑されるた
め焼き付きを防止することができ、吐出される燃料のさ
らなる高圧化を図ることができる。
【0008】本発明の請求項2または3記載の燃料噴射
ポンプによると、複数の溝群は相互に交差する第一溝群
と第二溝群とからなる。摺動部には摺動方向と所定の角
度をなす二つの溝群が形成され、それら二つの溝群から
燃料が供給される。そのため、摺動部における油膜の形
成が促進される。したがって、摺動部の焼き付きを防止
でき、吐出される燃料のさらなる高圧化を図ることがで
きる。
【0009】本発明の請求項4記載の燃料噴射ポンプに
よると、複数の溝群は相互に交差する第一溝群と第二溝
群と第三溝群とからなる。摺動部には摺動方向と所定の
角度をなす三つの溝群から燃料が供給され、それら三つ
の溝群から燃料が供給される。そのため、摺動部におけ
る油膜の形成が促進される。また、溝群の数を増すこと
により、摺動部に形成される溝が増加し、溝によって区
画される摺動面の面積は小さくなる。摺動部における摺
動面の面積が小さいほど油膜の形成が容易であるため、
摺動部の油膜の形成がより促進される。したがって、摺
動部の焼き付きを防止でき、吐出される燃料のさらなる
高圧化を図ることができる。
【0010】本発明の請求項5記載の燃料噴射ポンプに
よると、溝群を構成する複数の溝の間隔を摺動方向の相
対的な移動距離すなわちカムリングのストロークよりも
小さくすることにより、摺動部には少なくとも1本の溝
が配置される。そのため、摺動部には常に燃料が供給さ
れ、油膜の形成を促進することができる。
【0011】本発明の請求項6、7または8記載の燃料
噴射ポンプによると、溝群を構成する複数の溝の間隔、
深さおよび幅を規定することにより、油膜の形成に適し
た溝を形成することができる。したがって、摺動部の焼
き付きを防止でき、吐出される燃料のさらなる高圧化を
図ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す
複数の実施例を図面に基づいて説明する。 (第1実施例)本発明の第1実施例による燃料噴射ポン
プを図1および図2に示す。本実施例による燃料噴射ポ
ンプは、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射
システムに適用される。
【0013】図1に示すように、燃料噴射ポンプ10の
ハウジングは、ハウジング本体11とシリンダヘッド1
2、13とを有する。ハウジング本体11はアルミ製で
ある。シリンダヘッド12、13は鉄製であり、内部に
形成されているシリンダ12a、13aに可動部材とし
てのプランジャ70を往復移動可能に支持している。シ
リンダヘッド12、13の内周面と、逆止弁32の端面
と、プランジャ70の端面とにより燃料加圧室30が形
成されている。本実施例では、シリンダヘッド12とシ
リンダヘッド13とはほぼ同一形状に形成されているも
のの、ねじ穴や燃料通路などの形成位置が異なってい
る。これに対し、ねじ穴や燃料通路などの形成位置を同
一にし、シリンダヘッド12およびシリンダヘッド13
の形状を同一にすることも可能である。
【0014】駆動軸14はジャーナル15を介してハウ
ジング本体11に回転可能に支持されている。ハウジン
グ本体11と駆動軸14との間はオイルシール16によ
りシールされている。図2に示すように、断面が円形状
のカム17は駆動軸14に対し偏心して一体形成されて
いる。駆動軸14を挟んで180°反対側にプランジャ
70が配置されている。カムリング18は外径が四角形
状に形成されており、カムリング18とカム17との間
にカムリング18およびカム17に摺動可能なブッシュ
19が介在している。プランジャ70と対向するカムリ
ング18の外周面とプランジャヘッド71の端面とは平
面上に形成され互いに接触している。互いに接触するカ
ムリング18の外周面とプランジャヘッド71の端面と
は摺動部を形成している。ハウジング本体11の内部は
燃料により満たされており、カムリング18とプランジ
ャヘッド71とにより形成される摺動部は燃料による潤
滑が図られている。
【0015】プランジャ70は、駆動軸14の回転にと
もないカムリング18を介してカム17により往復駆動
され、燃料流入通路31から逆止弁23を通り燃料加圧
室30に吸入した燃料を加圧する。逆止弁23は弁部材
23aを有し、燃料加圧室30から燃料流入通路31に
燃料が逆流することを防止する。
【0016】スプリング21はカムリング18側にプラ
ンジャ70を付勢している。カムリング18は、カム1
7の回転にともないカム17と摺動しながら自転するこ
となく公転する。これにより、摺動部を形成するカムリ
ング18とプランジャ70とは、図2の左右方向へ往復
移動しながら摺動する。
【0017】燃料吐出通路は、シリンダヘッド12、1
3にそれぞれ直線上に形成されており、燃料加圧室30
との連通口32aを有している。シリンダヘッド12に
形成した燃料吐出通路32の下流側には燃料吐出通路3
2よりも通路面積の大きい長孔状の燃料室33が形成さ
れており、燃料室33に逆止弁44が収容されている。
燃料室33の燃料下流側に燃料室33よりも通路面積の
大きい収容孔34が形成されている。収容孔34はシリ
ンダヘッド12の外周壁に開口し燃料出口34aを形成
している。燃料配管接続用の接続部材41は収容孔34
にねじ止めなどにより収容されている。接続部材41の
内部に燃料通路41aが形成されており、燃料通路41
aは燃料室33と連通している。燃料通路41aは燃料
吐出通路32とほぼ同一直線上に形成されている。
【0018】シリンダヘッド13はハウジング本体11
の図1において下方に配設されている。図1に示すよう
に、燃料配管接続用の接続部材42は収容孔34にねじ
止めなどにより収容されている。接続部材42の内部に
は燃料通路42aが形成されており、燃料通路42aは
燃料室33と連通している。燃料通路42aは燃料吐出
通路32とほぼ同一直線上に形成されている。
【0019】シリンダヘッド12、13の燃料吐出通路
32の燃料下流側に配設されている逆止弁44は、ボー
ル状の弁部材45と、弁部材45が着座可能な弁座部材
46と、弁部材45を弁座部材46に付勢するスプリン
グ47とを有している。逆止弁44は、逆止弁44の燃
料下流側である燃料室33および連通路35から燃料吐
出通路32を経由して燃料加圧室30に燃料が逆流する
ことを防止する。接続部材は、図示しない燃料配管によ
り図示しないコモンレールと接続されており、燃料噴射
ポンプ10で加圧された燃料は接続部材41に形成され
ている燃料通路41aからコモンレールへ供給される。
【0020】次に、本実施例のプランジャ70について
詳細に説明する。プランジャ70は、カムリング18側
にプランジャヘッド71を有している。プランジャヘッ
ド71は概略円柱形状に形成され、カムリング18側の
端部に複数の溝群が形成されている。溝群は、図3に示
すように第一溝群51と第二溝群52とからなる。第一
溝群51と第二溝群52とは相互に直角に交差するよう
に形成されている。第一溝群51と第二溝群52とが直
角に交差することにより、プランジャヘッド71のカム
リング18側の端部71aには、格子状に複数の溝が形
成される。格子状に形成された複数の溝により、プラン
ジャヘッド71のカムリング18側の端部71aには、
複数の微小な摺動面72が形成される。第一溝群51お
よび第二溝群52はそれぞれ複数の溝511、521か
ら構成されている。第一溝群51を構成する複数の溝5
11の間隔と第二溝群52を構成する複数の溝521の
間隔とを同一にすることにより、摺動面72は正方形状
に形成される。第一溝群51および第二溝群52は、レ
ーザ加工、エッチング、マイクロブラスト、マイクロカ
ッターあるいは転造などにより加工されている。
【0021】上記のように第一溝群51および第二溝群
52を形成した場合と、従来のように摺動方向に垂直な
溝群のみを形成した場合とを比較した模式図を図4に示
す。図4(A)は本実施例による摺動部の一部を拡大し
た模式図であり、(B)は従来例による摺動部の一部を
拡大した模式図である。図4の矢印X−Y方向に往復摺
動する摺動部において、矢印X方向へ摺動するとき、摺
動面72、101には網掛けで示したような油膜が形成
される。
【0022】図4(A)に示すように本実施例の場合、
第一溝群51および第二溝群52の溝によって区画され
る摺動面72は微小であるため、摺動面72ごとに容易
に油膜が形成される。本実施例の場合、異なる方向に第
一溝群51および第二溝群52が形成されているため、
摺動面72へ供給される燃料が増大する。その結果、摺
動面72における油膜の形成が容易になる。また、本実
施例の場合、溝の一部に異物2が侵入した場合でも、周
囲の他の溝から潤滑のための燃料が供給される。さら
に、溝の一部に異物2が侵入しても異なる方向に複数の
溝が形成されているため、異物2の排出が容易である。
その結果、溝に侵入した異物2により摺動面72の油膜
の形成が阻害されることがない。
【0023】一方、図4(B)に示すように従来例の場
合、潤滑のための燃料は溝102の両端側から摺動面1
01へ流入するため、図4(B)に示すように摺動面1
01の中央部ほど油膜が薄くなる。また、溝102の一
部に異物2が侵入した場合、異物2が侵入した溝への燃
料の供給が阻害される。さらに、溝における燃料の流れ
は摺動により溝内で往復流を形成するため、溝に一旦侵
入した異物2を排出するのは困難である。その結果、摺
動面101への燃料の供給が阻害され油膜が十分に形成
されず、焼き付きが発生しやすくなる。
【0024】第一溝群51および第二溝群52を構成す
る複数の溝511、521は、次の条件を満たすように
形成されている。図5に示すように、第一溝群51を構
成する溝511ならびに第二溝群52を構成する溝52
1の間隔Pは、プランジャ70とカムリング18との間
の相対的な摺動距離をSとすると、P≦S/2を満たす
ように設定されている。プランジャ70とカムリング1
8との間の相対的な摺動距離Sは、カムリング18が図
2の左右方向へ移動する距離すなわちカムリング18の
ストロークと一致する。駆動軸14の回転にともないカ
ム17を介してカムリング18が図2の左右方向へ往復
移動することにより、プランジャ70とカムリング18
とが摺動する。このとき、図2の左右方向へ移動するカ
ムリング18のストロークが摺動距離Sである。
【0025】第一溝群51を構成する溝511ならびに
第二溝群521を構成する溝の間隔Pを摺動距離Sの1
/2以下に設定することにより、図2の左右方向へ往復
駆動されるカムリング18のストロークの間に少なくと
も1本の溝が存在することになる。そのため、摺動面7
2には第一溝群51を構成する溝511または第二溝群
52を構成する溝521から潤滑のための燃料が供給さ
れる。
【0026】プランジャ70は、カムリング18との摺
動により周方向へ回転する。本実施例のように第一溝群
51と第二溝群52とを摺動方向とそれぞれ異なる角度
で形成することにより、プランジャ70の周方向の回転
にかかわらず摺動面72に燃料が供給される。
【0027】第一溝群51を構成する溝511ならびに
第二溝群52を構成する溝521の深さDは、上述した
溝の間隔Pとの間にP/100≦D≦P/30の関係が
成立するように形成されている。溝511、521の深
さDは、浅くなるほど摺動面72における油膜が容易に
形成される。一方、溝511、521の深さDが浅すぎ
ると、溝511、521を経由して供給される燃料の流
量が不足したり、異物の排出が困難になる。そのため、
本実施例では、深さDを上記の範囲に設定している。上
述した第一溝群51を構成する溝511ならびに第二溝
群52を構成する溝521は、プランジャヘッド71の
端部71aにおいて、次の関係が成立するように形成さ
れている。溝部511、521が形成されていない部分
(非溝部分)の総面積すなわち摺動面72の総面積をA
とし、溝部511、521の総面積をaとするとき、A
/(A+a)>1/2の関係が成立する。Aは摺動する
面に垂直な荷重を負担する面積であり、Aが小さくなり
すぎると、接触面圧が過大となり焼き付きを生じやすく
なる。そのため、本実施例では、非溝部分の総面積Aと
溝511、521の総面積aとの比が、1/2より大き
くなるように設定している。
【0028】第一溝群51を構成する溝511ならびに
第二溝群52を構成する溝521の幅Wは、上述した溝
の深さDとの間にD≦W≦100Dの関係が成立するよ
うに形成されている。溝が形成された平行平面摺動部に
おける油膜発生機構は、次の通りと考えられる。すなわ
ち、カムリング18とプランジャヘッド71との間のな
じみ運転中に、溝511、521のエッジ部がわずかに
摩耗することにより微小な角度のくさび形状部が形成さ
れる。その結果、摺動部を形成するカムリング18とプ
ランジャヘッド71との間の直接接触を防止する油膜圧
力が発生する。そして、溝511、521のエッジ部に
形成されるくさび形状部の角度が溝511、521のエ
ッジ部ならびに摺動する相手面すなわちカムリング18
の弾性変形によって決定され、溝の幅Wと溝の深さDと
の比に適正範囲が存在する。そこで、本実施例では、溝
の幅Wと溝の深さDとの間の関係を上記の範囲に設定し
ている。また、溝の幅Wと溝の深さDとの比が同一であ
るとき、溝の幅Wと溝の深さDとの積すなわち溝容積は
小さい方が望ましい。
【0029】次に、燃料噴射ポンプ10の作動について
説明する。駆動軸14の回転に伴いカム17が回転し、
カム17の回転にともなってカムリング18が自転する
ことなく公転する。このカムリング18の公転にともな
いカムリング18およびプランジャ70の摺動部が摺動
し、プランジャ70が往復駆動される。
【0030】カムリング18の公転にともない上死点に
あるプランジャ70が下降すると、図示しないフィード
ポンプから吐出された燃料が調量弁の制御によって調整
され、調整された燃料が燃料流入通路31から逆止弁2
3を経て燃料加圧室30に流入する。下死点に達したプ
ランジャ70が再び上死点に向けて上昇すると、逆止弁
23が閉塞され燃料加圧室30の燃料圧力が上昇する。
燃料加圧室30の燃料圧力が燃料通路41a、42aの
燃料圧力よりも上昇すると逆止弁44が交互に開弁す
る。
【0031】シリンダヘッド12側の燃料加圧室30で
加圧された燃料は、燃料吐出通路32、逆止弁44、燃
料室33から燃料通路41aに送出される。シリンダヘ
ッド13側の燃料加圧室30で加圧された燃料は、燃料
吐出通路32、逆止弁44、燃料室33から燃料通路4
2aへ送出される。両燃料加圧室30で加圧された燃料
は燃料室33で合流し、燃料通路41aから図示しない
コモンレールに供給される。つまり、シリンダヘッド1
2、13に形成された燃料吐出通路32から送出される
燃料はポンプハウジングの内部で直接合流するのではな
く、シリンダヘッド13に形成された燃料吐出通路32
から一旦図示しない燃料配管を通ってポンプハウジング
の外部に送出された燃料が、シリンダヘッド12に形成
された燃料吐出通路32から送出された燃料とシリンダ
ヘッド12に形成された燃料室33で合流する。コモン
レールは燃料噴射ポンプ10から供給される圧力変動の
ある燃料を蓄圧し一定圧に保持する。コモンレールに蓄
えられた燃料は、図示しないインジェクタへ供給され
る。
【0032】以上、説明したように本発明の第1実施例
によると、プランジャヘッド71の端部71aには、摺
動方向となす角度がそれぞれ異なる第一溝群51と第二
溝群52とが形成されているため、摺動面72には異な
る方向から潤滑のための燃料が供給される。また、第一
溝群51および第二溝群52を形成することにより、プ
ランジャヘッド71の端部71aに形成される摺動面7
2の面積が小さくなる。その結果、微小な摺動面72へ
異なる方向から燃料が供給され、摺動面72の油膜の形
成を促進することができる。さらに、第一溝群51およ
び第二溝群52を形成することにより、溝の一部に異物
2が侵入した場合でも燃料の供給が阻害されることなく
異物2を容易に排出することができる。したがって、摺
動面72における油膜切れによる焼き付きを防止するこ
とができ、吐出される燃料のさらなる高圧化を図ること
ができる。
【0033】また、第1実施例によると、第一溝群51
および第二溝群52は、例えばレーザ加工やエッチング
などの安価な加工方法により形成される。そのため、摺
動部を形成するプランジャ70やカムリング18に高価
なセラミックスコーティングを処理する必要がなく、製
造コストが増大することなく燃料の高圧化を図ることが
できる。
【0034】第1実施例では、第一溝群51と第二溝群
52とが直交するように形成している。例えば、摺動方
向に沿って第一溝群51を形成することにより溝に侵入
した異物2を容易に排出することができる。また、摺動
方向とは垂直に第二溝群52を形成することにより摺動
面72の油膜の形成を促進することができる。したがっ
て、異物の排出と油膜の形成とを両立して達成すること
ができ、摺動部における焼き付きを防止することができ
る。
【0035】(第2実施例)本発明の第2実施例による
燃料噴射ポンプについて説明する。第2実施例による燃
料噴射ポンプ10に用いられるプランジャヘッド71の
端部71aを図6に示す。第2実施例による燃料噴射ポ
ンプ10は、プランジャヘッド71の端部71aに形成
されている第一溝群51および第二溝群52の角度が第
1実施例と異なる。第一溝群51を構成する溝511な
らびに第二溝群52を構成する溝521の間隔P、深さ
Dおよび幅Wなどその他の構成は第1実施例と同一であ
る。
【0036】第2実施例では、相互に交差する第一溝群
51と第二溝群52とは直交していない。そのため、摺
動面73は菱形に形成される。第1実施例でも説明した
ように、プランジャ70はカムリング18と摺動するこ
とにより周方向へ回転する。そのため、第一溝群51と
第二溝群52とを直交して形成しない場合でも異物の排
出とを両立して達成することができる。したがって、摺
動部における焼き付きを防止し、燃料のさらなる高圧化
を図ることができる。
【0037】(第3実施例)本発明の第3実施例による
燃料噴射ポンプについて説明する。第3実施例による燃
料噴射ポンプ10に用いられるプランジャヘッド71の
端部71aを図7に示す。第3実施例による燃料噴射ポ
ンプは、プランジャヘッド71の端部71aに第一溝群
61および第二溝群62に加え、第三溝群63が形成さ
れている点で第1実施例と異なる。第一溝群61を構成
する溝611、第二溝群62を構成する溝621ならび
に第三溝群63を構成する溝631の間隔P、深さDお
よび幅Wなどその他の構成は第1実施例と同一である。
【0038】第3実施例では、第一溝群61、第二溝群
62および第三溝群63はそれぞれ相互に摺動方向と異
なる角度で形成されている。そのため、摺動面74は三
角形に形成される。形成する溝群を増加することによ
り、溝群を構成する溝により区画される摺動面74の面
積が減少する。また、第2実施例と同様、プランジャ7
0はカムリング18と摺動することにより周方向へ回転
する。そのため、第一溝群61、第二溝群62および第
三溝群63を形成することにより、いずれかの溝群を構
成する溝により燃料の供給ならびに異物の排出が行われ
る。したがって、摺動部における焼き付きを防止し、燃
料のさらなる高圧化を図ることができる。
【0039】以上、本発明の複数の実施例では、プラン
ジャヘッドの端部に複数の溝群を形成する場合について
説明した。しかし、プランジャヘッドの端部だけでな
く、カムリングの端部、またはプランジャヘッドの端部
およびカムリングの端部の双方に溝群を形成してもよ
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例による燃料噴射ポンプを示
す断面図である。
【図2】図1のII−II線で切断した断面図である。
【図3】本発明の第1実施例による燃料噴射ポンプのプ
ランジャヘッドを示す図であって、プランジャヘッドの
カムリング側の端部を示す模式的な平面図である。
【図4】プランジャヘッドの端部の摺動面に形成される
油膜の状態を示す模式図であって、(A)は本発明の第
1実施例による油膜の状態、(B)は従来の油膜の状態
を示す図である。
【図5】本発明の第1実施例による燃料噴射ポンプのプ
ランジャヘッドの端部に形成されている溝群の形状を示
す模式図である。
【図6】本発明の第2実施例による燃料噴射ポンプのプ
ランジャヘッドを示す図であって、プランジャヘッドの
カムリング側の端部を示す模式的な平面図である。
【図7】本発明の第3実施例による燃料噴射ポンプのプ
ランジャヘッドを示す図であって、プランジャヘッドの
カムリング側の端部を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
10 燃料噴射ポンプ 11 ハウジング本体(ポンプハウジング) 12 シリンダヘッド(ポンプハウジング) 12a シリンダ 13 シリンダヘッド(ポンプハウジング) 13a シリンダ 14 駆動軸 17 カム 18 カムリング 30 燃料加圧室 51、61 第一溝群 52、62 第二溝群 63 第三溝群 70 プランジャ(可動部材) 71 プランジャヘッド 71a 端部 72、73、74 摺動面 511、521、611、621、631 溝
フロントページの続き (72)発明者 本保 亮一 愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会 社デンソー内 Fターム(参考) 3G066 AA07 AB02 AC01 AC09 AD02 BA29 BA33 BA49 CA01S CA09 CD06 CE13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダが形成されているポンプハウジ
    ングと、 前記シリンダの内部を往復移動可能に前記ポンプハウジ
    ングに支持され、吸入された燃料を加圧する可動部材
    と、 駆動軸とともに回転するカムと、 前記カムの外周側に設けられ、前記可動部材との間に摺
    動部を構成し、前記カムの回転により前記可動部材を軸
    方向へ往復駆動するカムリングとを備え、 前記摺動部を構成する前記可動部材の端部または前記カ
    ムリングの端部の少なくとも一方は平行な複数の溝から
    構成されている複数の溝群を有し、前記複数の溝群は溝
    群ごとに前記可動部材と前記カムリングとの間の摺動方
    向となす角度が異なることを特徴とする燃料噴射ポン
    プ。
  2. 【請求項2】 前記複数の溝群は、相互に交差する第一
    溝群と第二溝群とからなることを特徴とする請求項1記
    載の燃料噴射ポンプ。
  3. 【請求項3】 前記第一溝群と前記第二溝群とは、直交
    することを特徴とする請求項2記載の燃料噴射ポンプ。
  4. 【請求項4】 前記複数の溝群は、相互に交差する第一
    溝群と第二溝群と第三溝群とからなることを特徴とする
    請求項1記載の燃料噴射ポンプ。
  5. 【請求項5】 前記溝群を構成する複数の溝は、前記可
    動部材と前記カムリングとの間の前記摺動方向の相対的
    な移動距離より小さな間隔で形成されていることを特徴
    とする請求項1から4のいずれか一項記載の燃料噴射ポ
    ンプ。
  6. 【請求項6】 前記溝群を構成する複数の溝の間隔P
    は、前記移動距離をSとすると、P≦S/2に設定され
    ていることを特徴とする請求項5記載の燃料噴射ポン
    プ。
  7. 【請求項7】 前記溝群は、非溝部分の総面積Aと溝の
    総面積aとの間にA/(A+a)>1/2の関係が成立
    するように形成されていることを特徴とする請求項1か
    ら6のいずれか一項記載の燃料噴射ポンプ。
  8. 【請求項8】 前記溝群を構成する複数の溝の幅Wは、
    前記溝の深さDとの間にD≦W≦100Dの関係が成立
    するように形成されていることを特徴とする請求項7記
    載の燃料噴射ポンプ。
  9. 【請求項9】 ディーゼルエンジンのコモンレール式燃
    料噴射システムに適用されることを特徴とする請求項1
    から8のいずれか一項記載の燃料噴射ポンプ。
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