JP2003041592A - 厚層基材吹付工法およびそれに使用される吹付用マット - Google Patents

厚層基材吹付工法およびそれに使用される吹付用マット

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JP2003041592A JP2001227028A JP2001227028A JP2003041592A JP 2003041592 A JP2003041592 A JP 2003041592A JP 2001227028 A JP2001227028 A JP 2001227028A JP 2001227028 A JP2001227028 A JP 2001227028A JP 2003041592 A JP2003041592 A JP 2003041592A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 厚層基材を吹きつける傾斜地の表層が砂質や
崩れやすい土質であっても、地肌の浸蝕・穿掘・崩壊等
の発生を可及的に抑制できる厚層基材吹付工法とそのた
めのマットを提供する。 【解決手段】 天然繊維が主体をなすフェルト素材に繊
維質ネット5を挟み込みつつ繊維相互の絡みつきが図ら
れたフェルト製マット1を法面地肌に密着させるように
して敷設する。そのフェルト製マット1をアンカーピン
10で地山2に固定した後、金網を張設することなくフ
ェルト製マット1上に厚層基材3を吹きつける。そのフ
ェルト製マット1は全体的にジュートを主体としたもの
であり、それに反毛を25ないし45%混在させてお
く。そうすれば、厚層基材の付着性・定着性が向上し、
厚層基材の薄層化と金網の不採用による工事資材の低
減、省労働力化を図り、法面の安定と緑化を推進するこ
とができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は厚層基材吹付工法お
よびそれに使用される吹付用マットに係り、詳しくは、
土砂斜面や砂質等の地肌であって安定しにくい土質の法
面に厚層基材を吹きつけ、傾斜地の安定が図られると共
に緑化も促進できるようにした厚層基材吹付工法ならび
にその工法に使用される吹付用マットに関するものであ
る。
【0002】最近の緑化工には、天然素材が使用され環
境の自然バランスを乱さないもの、さらには早期に自然
景観を復元できるものが求められている。例えば凹凸が
激しく痩せた地質の傾斜地等の緑化では、バーク堆肥な
どの厚層基材をショットガン等によって吹きつける工法
が主流となっている。
【0003】これは、特開平9−242078号公報に
も紹介されているように、法面上に予めネットを敷設
し、そのネット越しに客土を吹きつけるもので、施工実
績は極めて多い。と言うのは、バーク堆肥等からなる厚
層基材を吹付機によって迅速かつ均等に法面に堆積させ
ることが、今では極めて容易に行うことができるように
なっているからである。
【0004】しかし、バーク堆肥やピートモス等の有機
質材を主体とした厚層基材は気象の影響を受けやすく、
またバクテリアによる消耗もあって層厚が減少し、その
たびに客土の補充が要求される。糊料を加えて地山との
付着性を向上させるなどの配慮も見受けられるが、糊料
はいずれ劣化する。したがって、客土が2・3年で剥離
したり滑落し、地山に張った金網が現れて地肌も見え、
根づきつつあった植栽を枯死させてしまったり流してし
まうようなことも起こる。
【0005】これは、金網を単に厚層基材の垂れ防止と
して機能させているにすぎないからである。このような
難点を少しでも解消しようとする一つの例が、特開平1
0−96239号公報に記載されている。それは厚層基
材を吹きつける金網の周囲に枠体を設けたもので、公知
の法枠工法のように厚層基材の滑り止めをしようとする
ものである。
【0006】このような枠体付きネットは、例えば2×
4メートル広さの金網が圧力調整可能なフレキシブルパ
イプで囲繞されている。金網は高分子材料等で被覆され
た鋼線からなって柔軟性の高いものが採用され、各縁辺
においては樹脂またはゴム製のフレキシブルパイプを金
網で巻き込み一体としている。
【0007】この種の金網はラスなどとは異なって面変
形自在で地肌に馴染ませやすく、フレキシブルパイプは
内圧を弱めるなど適宜圧力調整すればネット縁辺も地山
の凹凸に沿わせやすくなる。このようなネットを多数法
面に配置してロックアンカーで固定すれば、ネット上に
吹きつけられた厚層基材は枠体で滑り落ちが阻止され
る。ネットは厚層基材である植栽材と絡み合い、植栽材
の法面への定着性が上がるだけでなく生育途上の草木の
植根を絡ませやすくもなる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の例では枠体があ
るとはいえ、地肌と厚層基材との間にあるのは金網だけ
である。厚層基材にはパーライトやバーミキュライトと
いった保水材を混入しておくことが多いが、厚層基材に
浸透した雨水が地肌に到達することは避けられない。
【0009】地肌が砂質や凝集力の低い土質の場合、施
工直後に降水量が多いと浸蝕や穿掘が激しくなる。また
表層の蓄水能力を超える降水があると、簡単に表層崩れ
を起こす。いずれにしても、厚層基材に混入させた牧草
種にしても野草種にしても植根が表層を越えて伸び地山
にしっかり根づくまでは、厚層基材は下支えを失いやす
く、流亡の不安は解消し得ない。
【0010】加えて、上記したように、厚層基材の滑り
落ちを防止する枠体を金網1枚ごとに形成しておくこと
は、金網の製作に手間を要して高騰をきたす。施工に際
しては敷設位置ごとに枠体内圧の調整作業が強いられ、
作業性が著しく低下するといった問題や、変化のある傾
斜地に定形性・保形性の高いものを隙間なく敷設するこ
との困難もつきまとう。
【0011】また、枠体により厚層基材の流れ落ちを抑
えることができると言っても、法面の傾斜が大きくなる
と枠体を高くしたり上下枠辺の間隔を短くしなければな
らなくなる。その場合には金網の面積は小さくせざるを
得ず、結局複雑な構造の金網を多数枚必要とし、工事費
用の割高感は拭いされない。
【0012】本発明は上記の問題に鑑みなされたもの
で、その目的は、厚層基材を吹きつける法面の表層が砂
質や崩れやすい土質であっても、地肌の浸蝕・穿掘・崩
壊等の発生を可及的に抑制できること、吹きつけられた
厚層基材の保持性能を高めるべく基材の付着性向上が図
られること、法面保護と緑化に要する資材の総合的な低
廉化と法面工事の労力負担の軽減が推し進められるこ
と、天然素材を主たる構成品として採用し自然界のバラ
ンスを崩さないようにしつつ、法面の安定を図ると共に
緑化を促進できるようにすること、を実現した厚層基材
吹付工法およびそれに使用される吹付用マットを提供す
ることである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、砂質や崩れや
すい土質が表層に存する法面に厚層基材を吹きつけ、法
面の安定を図ると共に緑化を促進するようにした厚層基
材吹付工法に適用される。その特徴とするところは、図
1および図2を参照して、天然繊維が主体をなすフェル
ト素材1a,1bに繊維質ネット5を挟み込みつつ繊維
相互の絡みつきが図られたフェルト製マット1を法面地
肌に密着させるようにして敷設する。そのフェルト製マ
ット1をアンカーピン10で地山2に固定した後、金網
を張設することなくフェルト製マット1上に厚層基材3
を吹きつけるようにしたことである。
【0014】厚層基材吹付用マットの発明は、図2に示
すように、フェルト素材1a,1bの段階で繊維質ネッ
ト5が上層1Aと下層1Bに挟み込み込まれ、フェルト
成形時にフェルト素材相互の絡みつきのみならず繊維質
ネット5との絡みつきも図られた天然繊維が主体のフェ
ルト製マットとしたことである。
【0015】図6のようにフェルト製マット1の表面に
は繊維質ネット5が一部露出していてもよいが、マット
は全体的にジュートを主体としたものであり、それに反
毛を25ないし45%混在させておくことが好ましい。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、フェルト製マットを法
面に敷設して地山に固定した後、その上に厚層基材を吹
きつけるようにしたので、風雨を受けると崩れやすくな
ったり浸蝕されやすい土質の法面の安定や緑化の促進が
簡単に図られる。フェルト製マットには繊維質ネットが
挟み込まれているとはいえ、金属質でないのでフェルト
の有する軟質感は生かされ、砂質や崩れやすい土質が表
層に存する法面にも密着させるように敷設することがで
きる。
【0017】このフェルト製マットによれば、厚層基材
を透過した雨水を吸収して地肌の浸蝕を防止する。保水
性が高いので厚層基材との間での水分授受も可能とな
り、降水の少ない時期の表土乾燥が抑止される。厚層基
材との密着性はよく、地肌に直接吹きつけた場合よりも
厚層基材の定着性は格段に向上する。
【0018】マットはフェルト製であるので植根の伸長
を妨げず、マット自体が厚層基材と同じく植生床として
機能し、厚層基材の吹きつけ層厚の低減に寄与する。層
厚を小さくできれば植生基材の剥離や滑落の頻度が減
り、傾斜の急な法面に対しても適用しやすくなる。もち
ろん、マットに作用する厚層基材の重量低減とマットに
よる荷重分散作用とがあいまって、砂質や崩れやすい土
質の表層の崩壊不安を可及的に少なくすることができ
る。
【0019】また、植根の伸長を阻まないマットによっ
て草木の成長が促され、緑化の促進が図られる。厚層基
材の流亡を抑止する意味での金網の敷設は必要でなく、
フェルト製マットを導入すると言っても、厚層基材の吹
きつけ量の低減もあって、工事用資材の大幅な低廉化が
進められる。
【0020】繊維質ネットはマットの芯材として機能
し、フェルト製マットの運搬ならびに凹凸の激しい法面
における敷設作業においてもマットの取り扱いが容易と
なる。ネットをアンカーピンで地山で固定することによ
り、ネットでマットを地山にしっかり押さえつけ、ネッ
トの剥離やずれを防止できる。
【0021】厚層基材からマットに伸びた植根は繊維質
ネットにも絡み、たとえ厚層基材が薄層化することがあ
ってもその影響を大きく受けず、マットを植生床にして
草木の定着が図られる。そのマットは天然素材を主たる
構成品としており、自然界のバランスを崩さないように
しつつ、法面保護と緑化を推進することができる。
【0022】なお、フェルト製マットの表面から繊維質
ネットを一部露出させておくと、フェルト製マットに対
する厚層基材の初期付着力が増強される。ネットの全て
が表面にあるわけではないので、フェルトと繊維質ネッ
トとの絡みつけによる一体化さえできておれば、その重
畳体の取扱性を損なうこともない。
【0023】フェルト製マットはジュートを主体として
おけば、大量かつ極めて安価に入手できると共に、マッ
トの天然繊維化を容易にする。ジュートは保水力が低く
ても吸水性は高く、吹きつけられた厚層基材の付着性が
高められ、施工後の厚層基材の地形への馴染みを早める
ことができる。
【0024】フェルト製マットには反毛を25ないし4
5%混入しておけば、ジュートの高い吸水性と反毛の高
い保水性とが相乗作用し、ジュート単体のフェルトに比
べて保水力が格段に向上する。フェルト製マットの上に
厚層基材が吹きつけられることもあって、厚層基材とマ
ットとの間での相互湿潤作用も長く持続し、植生床を草
木の生育に適した環境に維持し、早期緑化を実現しやす
くする。
【0025】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る厚層基材吹
付工法およびそれに使用される吹付用マットについて、
その例を挙げて詳細に説明する。図3は厚層基材吹付用
マット1の斜視図であり、例えば厚み6ミリメートル、
幅2メートル、長さ15メートルといったものである。
【0026】この厚層基材吹付用マット1は、図1に示
すように、砂質や崩れやすい土質が表層2aに存する1
割勾配(45度)程度までの法面2の地肌に密着して敷
設され、吹きつけられた厚層基材3を安定させておくと
共に、図4のように厚層基材3から発芽した草木4の生
育を促進させるように作用するものである。
【0027】その厚層基材吹付用マット1は、天然繊維
であるジュートが主体のフェルトである。このフェルト
製マットは図2に示すように上層1Aと下層1Bとを備
え、これら層に挟み込まれたネット5とによって構成さ
れている。しかし、単に重ねられているというものでは
なく、左部分に表したように、剥がしたときに見られる
細かい繊維1fが相互に絡みついて一枚のマットとなっ
ている。
【0028】詳しく述べると、フェルトの全厚を形成す
る量の嵩を持った素材を所定厚みまで順次圧縮する公知
の製造法とは少し違った要領で製造される。すなわち、
図5に示すように、上層のための素材1aと下層のため
の素材1bとが個別に供給され、両層間からは繊維質ネ
ット5を供給できるようにしておく。
【0029】このようにフェルト素材の段階でネットを
予め挟み込んでおき、その後は公知の製造法と同じく、
多数の絡み付け用ニードル6,6を持ったアッパプレッ
サ7Uと素材支え用のロアプレッサ7Lに上下方向の離
接動作を繰り返させ、所定の厚みになるまで圧縮すれ
ば、例えば6ミリメートル厚みの重畳構造のマットを得
ることができる。
【0030】ロアプレッサ7Lは絡み付け用のニードル
6の先端が貫通する孔8,8を多数有し、プレッサ相互
が離反するときニードル6の先端部や中間部に形成した
返り歯9により、圧縮されつつある両層のフェルト繊維
が一部ひっ掻き上げられるようになっている。その際
に、下層で掻き上げた繊維をネットに絡ませたり上層の
繊維と絡ませるなどして、ネットを含めた三層の一体化
も図られる。
【0031】ところで、ジュート製のフェルトはシート
状になっていても方向性が強くないので、地肌の凹凸に
馴染せやすい。しかも天然繊維であり、いずれは朽ちる
にしてもそれ以前に自然環境を乱す要因を生じない。加
えて、繊維自体がストロー状であるので吸水性や一時的
な蓄水力は高いという利点がある。従って、厚層基材吹
きつけ直後に散水すれば厚層基材のマットに対する付着
性を高め、厚層基材の凹凸のある地形への馴染みを早め
ることもできる。
【0032】一方、マットの蓄水能力を越える降雨に見
舞われても、余剰水の透過を阻んで地肌への浸透を抑制
する作用を発揮する。その際、厚層基材の下層部では溜
まり水を吸水する機会が与えられ、厚層基材に含まれる
保水材にも十分水を蓄えさせることができる。
【0033】上記のごとくジュートは吸水性がよい反
面、脱水も激しい。従って保水性が低いことから例えば
乾燥が続くと繊維がこわ張り、乾燥と湿潤が繰り返され
るうちには草木に都合のよい軟らかい植生床に戻らなく
なることがある。そこで、本発明においてはジュートを
主体にして、それに反毛を混ぜたフェルトを作ることに
より、その保水性の大いなる改善と軟質感の維持を図る
ようにしている。
【0034】反毛は植物繊維・動物繊維・合成繊維の各
種衣料を解体したとき得られる糸屑や繊維屑であり、こ
れをジュートに混ぜてフェルトにしておくと、ジュート
の利点を生かしつつ欠点をカバーする効果が発揮され
る。
【0035】その効果の一つはジュートフェルトの保水
力を高めることである。他の効果としては、天然繊維で
あるジュートが年月の経過で朽ちて形を残さなくなって
も、反毛に含まれる非天然繊維によって地肌を幾分か被
覆しておくことができることが挙げられる。後者の作用
によれば、緑化が十分進展するまで、風雨で崩れやすか
ったり浸蝕されやすい表層を保護できることになる。
【0036】最初に挙げた効果は、本発明者が見い出し
た現象に基づくものである。すなわち、反毛のフェルト
は各種繊維の混成物であるから水に対して性質の異なる
繊維が絡み合うことが多い。その結果、吸水速度はジュ
ートのように高くないが、繊維間に一旦蓄水されると、
その保水能はジュートのそれを遙に凌ぐという点に着目
し、これを利用したものである。
【0037】その意味するところは、ジュートに反毛を
混ぜておくと、両者が補完するように作用して保水性を
著しく向上させることである。例えば降雨量が僅かであ
っても、ジュートはそれを迅速にかつ可能な限り吸収す
る。雨が止むなどしてジュートからの脱水が始まって
も、その蒸散水は反毛の繊維間に付着し、マット全体で
見れば保水は持続された状態となる。
【0038】もう少し具体的に述べると、例えば重量比
でジュート80に対して反毛20を混入したフェルトの
場合、ジュートのみのフェルトマットに比べて、その保
水力は30%アップする。このアップ率は数字そのもの
だけの意味ではなく、後述するように厚層基材でマット
を覆うことによって、数字以上の保水能を発揮すること
になる。
【0039】先ず、フェルトのジュートが雨水を吸い、
それがいずれ反毛の繊維間に移される。厚層基材が湿潤
している間は、フェルトからの水分の蒸散は抑制され
る。厚層基材が乾燥し始めても、フェルトの水分が厚層
基材の下層部を潤す。下層部が湿潤状態にあればフェル
トからの蒸散は緩慢なものとなる。厚層基材のみならず
フェルトもほとんど乾燥する頃には、次の雨を期待する
ことができる。
【0040】このように乾燥し切るまでに長時間を要す
る構造にしておけば、30%のアップは実質的に枯渇時
期をほとんど生じさせない状態を実現する。すなわち、
フェルト製マット全体としては次の降水まで最低限度の
湿潤状態を持続できさえすれば、湿潤と乾燥とが繰り返
されることの多い地域においても、フェルトの柔軟性が
損なわれるということは可及的に少なくなる。
【0041】なお、乾燥の激しい南斜面や西斜面に適用
する場合には、反毛の混入率を45%くらいまで上げ
て、保水力を増強しておくとよい。ちなみに、混入率は
15%より少ないと保水力に目立った改善は得られな
く、45%を越えると反毛に含まれる非天然繊維の混入
率が高くなり、地表での自然界の部分的なアンバランス
を生むおそれが高くなって好ましくない。
【0042】上で述べた二つ目の効果は反毛に含まれる
非天然繊維による地肌の保護作用であるが、雨の多い地
方や時期は保水性よりも地山の表層安定が望まれる。ジ
ュートに反毛を30%加えたとすれば、天然繊維が朽ち
た跡に元の量で言えば15%程度の非天然繊維が残され
ることになる。
【0043】天然繊維が朽ちる頃には厚層基材に含ませ
ておいた牧草類が地肌を被うように茂っているはずであ
るが、たとえ茂りの悪い箇所が生じていても、朽ちるこ
とがないか朽ちにくい非天然繊維が僅かといえども表層
を覆っていれば、風雨による地山の穿掘や浸蝕が大いに
防止される。
【0044】ところで、フェルト製マットに挟み込まれ
たネットはポリエチレン製等の化繊で十分であり、例え
ばラッシェル編みされたものが使用される。その目開き
は20ないし30ミリメートル程度のものが使用される
が、このネットは芯材としても機能するほか、次に述べ
る二つの点を果たすものである。
【0045】一つは、フェルト製マットを地山に張りつ
けておくに十分なだけの面圧を生じさせることができる
強度を発揮することであり、他は、なだらかな起伏のあ
る地肌に対して良好な密着性を発揮させることができる
程度の低い面剛性である。
【0046】このネットには、金属繊維が使われること
はないが化繊に限るものでもない。図1に示したように
フェルト製マット1をアンカーピン10等で地山2に固
定したとき、そのネットがフェルト全体を押しつけてお
くだけの力に耐えるものであればよく、従って、少なく
とも耐久性は優れたものであることが望まれる。
【0047】ところで、フェルト製マット1は、図示し
ないが、繊維質ネット5を境にした上層1Aが下層1B
より薄くなっていてもよい。上記したようにフェルト製
マットは挟み込まれた繊維質ネット5により地山に対す
るずれや剥がれが防止されるようにしているので、ネッ
トによって押さえ付けられる下層が厚くなっていること
は却って好ましいと言える。
【0048】ちなみに、極端なことを言えば、図6のよ
うに繊維質ネット5がフェルト製マット1の表面に一部
露出していてもよい。フェルト製マットの上に厚層基材
が吹きつけられたとき、その厚層基材の下層部が密度や
触感の異なるフェルトおよびネットに接することにな
り、付着性が向上しやすくもなる。このように、繊維質
ネットがフェルト製マットから一部を露出させていて
も、運搬や敷設作業においてフェルトとの一体性が損な
われない限り、特に弊害が生じるものでない。
【0049】本発明に係る厚層基材吹付用マットは以上
述べた構成となっているが、次に緑化工事のための敷設
作業について簡単に説明する。まず、ロール状にして運
搬されてきたマット1を傾斜地の上部に位置決めし、図
1のごとく上端部分にアンカーピン10を打って固定し
た後に、谷へ向かってロールを垂らすように広げる。地
肌に馴染ませるべく押さえつけてから、適宜の位置にア
ンカーピン10を打って全体を傾斜地に固定する。
【0050】15メートルの繰り出しで足らなければ、
その下端部で10センチメートル程度ラップさせて次の
ロールの上端を固定し、これを下方へ垂らす。所定の位
置まで広げ、余ればその位置で鋏もしくはカッタによっ
て切断する。この上下に伸びるマットに対して右または
左の部分でも同様に少し重ねて、下方へ広げる。施工箇
所においては全ての地肌をマットで覆う。
【0051】厚層基材はバーク堆肥を基盤材としてお
り、それにピートモス等の有機質材およびパーライトや
バーミキュライトといった保水材・土壌改良材、それに
少量の肥料と野草種や牧草種の種子が混入されたもので
ある。種子としては、発芽の早いものや一年を通して緑
を維持するもの、ガゼル,ホワイトクローバ,よもぎ,
メドハギ,バーミューダグラスといったものが採用され
る。なお、草本類の種子を控え目にして、木本類の種子
を混ぜておいてもよい。これがフェルト製マット1上に
ショットガンによって直接吹きつけられる。
【0052】本発明のフェルト製マットは厚層基材の付
着性が高く、金網を張るには及ばない。ましてや砂質や
崩れやすい土質の表層がマットで覆われ、上に載った厚
層基材の重みを分散して地山に伝えるため、厚層基材の
重みで下地が部分的に崩れるといったことも抑えられ
る。
【0053】厚層基材自体層厚が大きくなると崩れやす
くなることは否めないが、フェルト製マットはこれ自体
が植生床ともなるので、吹きつけられる厚層基材は例え
ば3センチメートルといったように、従来よりは2ない
し5センチメートルも薄くしておくことができる。すな
わち、草木に対して、実質的に従来と変わらない植生床
を準備しておくことができる。厚層基材の薄層化がなさ
れれば流亡もしにくくなることは言うまでもなく、45
度近くの傾斜が大きい法面に適用することも容易とな
る。
【0054】発芽した草は厚層基材に植根を伸ばすが、
少し成長した時点でフェルト製マットに届く。フェルト
は植根の貫通を許容する程度のものであるので、いずれ
は地山の表層へも進入する。植根は繊維質ネットにも絡
みつき、位置ずれすることのないマットによって草木は
安定した位置に保たれ、均一な緑化の持続も実現され
る。
【0055】フェルト製マットは厚層基材の保持と地山
表層の保護を主たる機能とするが、保水性を上げたこと
による乾燥防止作用のほかに、寒冷地等においては表土
の凍結を防止する意味での保温効果を発揮することも無
視できない。
【0056】上記のごとくして草木が成長する間にジュ
ートのフェルトが朽ち果てても、草木は既に地山まで根
づいており、さらに繊維質ネットによっても支持された
状態となることにより、長期にわたる法面の安定と草木
の全面繁茂が達成されやすくなる。
【0057】以上は法面勾配が1割程度までであって砂
質や崩れやすい土質が表層に存する傾斜地に適用する場
合に好適な厚層基材吹付工法やマットについて述べた。
以下には、そのマットを使用して、地肌が硬質であった
り岩盤質であって1割ないし1割5分勾配(約63度)
に到るような急斜面である場合にでも、厚層基材と共に
地山の安定を図ると共に緑化を促進することができる層
基材吹付工法について触れる。
【0058】まず、厚層基材吹付マットを地肌に沿って
敷設し、仮止めした状態でラス(菱形金網)を全面に載
せ、アンカーピンにより金網とマットを地山に固定す
る。金網はマットから積極的に浮かした状態にする必要
はないが、甲高金網を採用しておけば、その後に吹きつ
けられた厚層基材の滞留性が一段とよくなることは言う
までもない。
【0059】マットは厚層基材の地山に対する付着性を
高め、金網は厚層基材の滞留や保形を助ける。従って上
記したように急な斜面であっても、厚層基材の滑落や流
亡は抑えやすくなる。マットはその厚み以上に厚層基材
と同様の植生床として機能するので、例えば繊維質ネッ
ト入りの10ミリメートル厚マットを使用すれば、厚層
基材の層厚を2ないし3センチメートル少なくした4な
いし8センチメートルとすることができる。
【0060】マットを例えば10ミリメートルと厚くし
ているのは、法面勾配がきつくなると厚層基材自体の保
水力が低下するので、それを高い保水能によって補おう
とする配慮である。このようなマット・金網・厚層基材
の3層構造にしておけば、傾斜の急な硬質土の法面であ
りながら、厚層基材の滞留性が高められると共に厚層基
材とマットによる保水力の増大も図られ、金網のみを敷
設して厚層基材を吹きつけている従来の厚層基材吹付工
法に比べれば、早期の緑化とその安定した長期化が実現
され、従前に例を見ない格段に優れた緑化工事が達成さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る厚層基材吹付工法を適用した傾
斜地の断面図。
【図2】 三層構造のフェルト製マットの端部を剥がし
た斜視図。
【図3】 ロール状に巻き付けられたフェルト製マット
の斜視図。
【図4】 草木が根づいた状態になっている法面の断面
図。
【図5】 フェルト素材で繊維質ネットを上下から挟み
込んだフェルト製マットの製造概念図。
【図6】 繊維質ネットがフェルト製マットの表面から
一部露出している場合の斜視図。
【符号の説明】
1…厚層基材吹付用マット(フェルト製マット)、1A
…上層、1B…下層、1a…上層のためのフェルト素
材、1b…下層のためのフェルト素材、2…法面(地
山)、2a…表層、3…厚層基材、4…草木、5…繊維
質ネット、10…アンカーピン。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 砂質や崩れやすい土質が表層に存する法
    面に厚層基材を吹きつけ、法面の安定を図ると共に緑化
    を促進するようにした厚層基材吹付工法において、 天然繊維が主体をなすフェルト素材に繊維質ネットを挟
    み込みつつ繊維相互で絡みつけたフェルト製マットを法
    面地肌に密着させるように敷設し、該フェルト製マット
    をアンカーピンで地山に固定した後、金網を張設するこ
    となく前記フェルト製マット上に厚層基材を吹きつける
    ことを特徴とする厚層基材吹付工法。
  2. 【請求項2】 砂質や崩れやすい土質が表層に存する法
    面の地肌に密着して敷設され、吹きつけられた厚層基材
    や法面表層の安定を図ると共に草木の生育を促進する厚
    層基材吹付用マットにおいて、 前記吹付用マットは天然繊維が主体のフェルトであり、
    フェルト素材の段階で繊維質ネットが挟み込み込まれ、
    フェルト成形時にフェルト素材相互の絡みつきのみなら
    ず前記繊維質ネットとの絡みつきも図られたフェルト製
    マットであることを特徴とする厚層基材吹付用マット。
  3. 【請求項3】 前記繊維質ネットは、フェルト製マット
    の表面から一部露出していることを特徴とする請求項2
    に記載された厚層基材吹付用マット。
  4. 【請求項4】 前記フェルト製マットは、ジュートが主
    体であることを特徴とする請求項2または請求項3に記
    載された厚層基材吹付用マット。
  5. 【請求項5】 前記フェルト製マットには反毛が25な
    いし45%混入されていることを特徴とする請求項4に
    記載された厚層基材吹付用マット。
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