JP2009062758A - 自然植生誘導ネット及び斜面の自然植生誘導構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】飛来種子等を良好に捕捉し、また表土シードバンクや自生木本種子を用いた地域性種苗の自然発芽・生育を促進する。
【解決手段】複数条の反毛繊維を積層し、これをニードルパンチ等によってマット状に成型し、方形板状、角柱状、帯状、丸柱状とする。このマット状成型材2を網状体1に結びつけるなどして、網状材1の全面或いは一部に配する。該網状体1を、アンカーピン3等を用いて法面に張設・固定し、該網状体の表面に地域性種苗や埋土種子を含む表土シードバンク等を混入した生育基盤層11を形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、風飛来種子や表土シードバンクなどを切土法面や盛土法面上に定着させ、草本植物や木本植物の自然な生育を促がすための自然植生誘導ネット及び斜面の自然植生誘導構造を提供するものである。
植生緑化工は1960年頃より草本植物や木本植物を用いて、はげ山等の復旧治山工事において土壌の侵食を防ぎ、土地生産力を高める技術として開発され、急速全面緑化工として、主に外国産牧草種子を用いて機械施工する種子散布工や、これらの種子を装着した人工芝と称される植生シート、マット工として普及して来た。
他方、自然景観や自然生態系を復元する手法の一つとして、木本自生種と称される国内産地域性種苗を播種工によって導入する早期樹林化方式があり、斜面樹林化工法として普及しつつある。
しかし、ここで用いられる種苗は必ずしも地域性のものとは限定されず、広く国内全地域産のものが用いられており、生産量も限定的であり流通が少ないため計画しても施工時期によっては入手が困難であったり、時には価格が暴騰する等、非常に使用しにくい状態にあった。又、生産地表示も明確でなく、遺伝子レベルに配慮した地域性種苗の入手は至難の状態であった。
また、自生種といわれる木本植物は、その大半が発芽勢が低く、発芽日数が固体毎に異なり、播種後2〜3年と長期間を必要とするものが多く、初期生育は極めて緩慢で草本植物を混播すると被圧されてしまうため、草本植物の混入量を極端に少なくしたり、あるいは草本を全く使用せず生育基盤を長期「疎」の状態で維持することが必要となる場合がある。
さらに地域の生態系や景観を早期に復元する手法の一つとして、開発地付近の森林表土に含まれる埋土種子を植物材料として用いる森林表土シードバンクによる緑化手法や、飛来種子あるいはシートレインと称される風散布種子や鳥散布種子、あるいは施工斜面上部の森林から種子が供給される重力散布種子を用いる手法も提案されている。
下に掲げる特許文献と非特許文献は、提案された緑化のための具体的手段である。
特許文献1には、種子を含まない生育基盤のみを法面に造成し、この上に、種子を捕捉するための棚状物を設置する方法が開示されている。
しかしこの方法によれば、棚状物と棚状物の間や、網状物の表面に付着した風散布種子は、風によって容易に飛散してしまうという問題があり、その捕捉効率は確実なものではなかった。
さらにこの方法によって運良く網状体の網目部分に捕捉され、生育基盤に接地する事ができても、この飛来種子が発芽するためには十分な水分の確保が必要とされるが、この発明では水分の保持あるいは保水機能を持たないため当該種子の発芽する可能性は極めて低いものとなる。
又、棚状部によってせき止められる表面水は一時的に貯留されるが、その後生育基盤内に浸透するか、あるいは蒸散によって失われてしまうため、発芽しても幼苗期に乾燥害や日照りによって枯死するという問題もある。
特許文献2では、法面上に設置されるネットと、ネットに取り付けられた薄綿を有し、収容部に周辺植物の種子を捕捉するポケットを形成している。
この手法によれば、風散布や重力散布による飛来種子は、ポケット部に収容され、ネットに取り付けられた薄綿に絡み付き、その捕捉効果はより確実なものとなる。
又、ネットが風に対する緩衝材の役割をするため、飛来し捕捉された種子は風によって飛散しにくい構造となっている。
しかしながら、このネットに装着された薄綿は、種子を絡ませて捕捉し、定着させる事と法面の表面を被覆して風雨による侵食を防止する事が主な目的であり、捕捉された種子の発芽を促進させるための十分な水分を貯留して保水する構造とはなっていないため、飛来し捕捉された周辺植物種子の発芽はかなり限定的なものとなり、さらに発芽した幼植物は日照り等の異常気象や冬期の凍上等によって枯死するという問題がある。
非特許文献1として掲げた「表土シードバンクを吹付けに活用した施工事例(IV)」−吹付法枠と植生マットによる侵入種の捕捉試験結果−によれば、森林表土シードバンクと飛来種子と共に用いる事によってその地域の自然植生に近似する多様な植生を成立させる事ができるとしており、侵食の防止と共に保水機能の重要性さらに鳥が飛来する環境の整備の必要性が述べられている。
さらに、非特許文献2として掲げた「法面における森林表土利用工と自然侵入促進工の適用」には、森林表土利用工においては切土、南向き・西向き、少雨、乾燥、岩盤、砂質の法面等の悪条件下では成果が落ちると記述されている。
又、自然進入促進工に関しては肥効力が数年間持続する肥料の開発や飛来した種子の発芽生育に最適な環境を造成するネット(マット)の開発あるいは植物の生育が遅いという観点から、発芽・生育に必要な土壌が形成されやすい様に法面表面の形成を工夫する等が必要であるとしている。
特開平11−81327号公報 特開2006−266043号公報 日本緑化工学会誌 第32号 第12号「表土シードバンクを吹きつけに活用した施工事例(IV)」 緑化工技術 第28巻「法面における森林表土利用工と自然侵入促進工の適用」(日本緑化工協会編)
本発明が解決しようとする課題は、飛来種子の捕捉効果が高く、加えて日照り等の異常気象にも耐えられる保水性の高い自然植生誘導ネットと、飛来種子のみならず、撒き種子の発芽・育成も促進する斜面の自然植生誘導構造を提供しようとするものである。
本発明では、反毛繊維をマット状に成型したマット状成型材を使用する。
この複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱して成型するか、および/もしくはニードルパンチによってマット状に成型し、これによって厚さ5mm〜20mm程度のマット状物を得る。このマット状物を金網や繊維系ネット等の網状体に係り止め・定着した事を特徴とする自然植生誘導用ネットである。
ここでニードルパンチとは、多数本のニードル(針)の先端が繊維間を往復して、繊維同士を絡ませる工程である。
この網状体に取付けられた複数条の反毛繊維を積層し、加圧・加熱および/もしくはニードルパンチによって成型されたマット状体は、反毛繊維そのものが吸水して保水するばかりでなく、その繊維間に水分を抱水する。
又、かかる複数条の繊維を積層したマットを形成する手法として、合成樹脂接着剤や合成ゴム系接着剤を用いて繊維と繊維を固着する製法や合成樹脂を溶解して繊維状に溶出して一定厚のマットを成型する手法があるが、これらの手法で成型されたマット状体は撥水性を有し抱水能は劣る。
又、繊維材として用いられる反毛は、毛布・じゅうたん等の古布地を細切りし反毛機によって綿状に加工したもので、吸水性が高く繊維1本1本の間に水分を抱水するため保水能も他のマット状物に比して格段に高く好適な繊維材料である。
本発明の第1発明では、前記したようなマット状成型材を、ヤシ繊維を撚って網としたもの、金網、合成樹脂ネットなどの網状体の全面、或いは一部に配して、固定して自然植生誘導ネットとする。
第2発明では、前記マット状成型材の形状を、方形板状、帯状、棒状、柱状とするものである。
第3発明では、丸め、或いは折り畳んで棒状や柱状としたマット状成型材の中心に、固形の肥料を挟み込むものである。
肥料は少しづつ周辺地盤に浸透していき、数年の間植物に供給される。
第4発明では、棒状若しくは柱状としたマット状成型材を、略直線状若しくは円弧状にし、
これを網状体に取付けるものである。
第5発明は、前記したようなマット状成型材を、網状材の全面、或いは一部に配した自然植生誘導用ネットを、斜面に敷設固定する。
マット状成型材を配するとは、網状材の下全面に敷設することや、一部に部分的に設置して、ピンによって斜面に固定することも含む。
或いは、マット状成型材を紐によって結び付けるなどして、予め取付けておき、網状材の一部に配することもある。
網状材としては、ヤシ繊維などを撚って紐状にし、これを網のように編んだもの、合成樹脂繊維によるネット、金網などが使用可能である。
このような自然植生誘導用ネットの上に、植生基盤材を吹き付けて、植生基盤層を形成するものである。
植生基盤材としては、バーク堆肥、ピートモス、土壌、肥料、種子などを適宜混ぜたものが選択的に採用できる。
種子としては、表土シードバンクの種子、自生種植物種子などが広く採用できる。
飛来種子などは、網状材によって捕捉するものであって、この網状材の捕捉作用によって、種子が流れ落ちないようにするものである。
飛来種子の捕捉には、網状材の固定を幾分ルーズにして、網状材の下側に植生基盤材を吹き込み、植生基盤層の表面に網状材が露出するようにし、飛来種子の捕捉効果を高めることができる。
第6発明としては、上記発明において、マット状成型材として、方形板状、帯状、角柱状、若しくは丸柱状にしたものが選択的に使用可能である。
マット状成型材を帯状に切断する、折り畳む、複数枚を積み重ねる、或いは丸めるようにして、これら形状にするものである。
第7発明としては、方形板状などのマット状成型材を、水平、若しくは略水平にして使用するものである。
略水平とは、長尺の成型材を、中間部が左右端部よりも下がるように、弧状にするなども含む。
また、マット状成型材の配置としては、横縞となるように、斜面の上下に適宜間隔を離して配したり、上下左右に千鳥状に配したり、ランダムな縞状となるように配するよう自然植生誘導用ネットを張設することができる。
第8発明は、植生基盤材の中に表土シードバンクか自生木本種子を、或いはその双方を混入するものである。
このようにすることにより、飛来種子に限定せずに、しかも地域性自生種植物の生育が期待できる。
第9発明は、植生基盤層として、まず、植物材料を混入していない下部植生基盤層を形成し、その上に埋土種子を含む表土シートバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入した植生基盤材を吹付けて上部植生基盤層を形成するものである。
このようにすることで、種子などを有効に使用することとなる。
また、上部植生基盤層を、種子が発芽する深さの3cm以下とすることで、種子を有効利用できる。
第10発明は、マット成型材が、その長手方向の向きが水平、若しくは略水平と成るようにし、
その上に植生基盤材を吹き付けて、一部がフラット若しくは略フラットとなった階段状のステップ部分を持つ植生基盤層を形成するものである。
第11発明は、階段状の植生基盤層のステップ部分に、苗木を植栽する、挿し木(穂)を行なう、或いは、植物根系やドングリ状の大型種子を埋める、のうち一又は二以上の植生を行うものである。
第12発明は、植物生育基盤材に容積比5〜60%の径又は幅1mm以下の短繊維材料、及び/若しくは、容積比5〜40%の人工ゼオライトを混入するものである。
本発明による効果の第1は、反毛繊維を複数条積層し、これを加圧・加熱し、および/もしくはニードルパンチによってマット状に成型したマット状成型材を使用することにより、この綿状に加工された複数条の反毛の繊維の積層材はその繊維自体の吸水・保水能だけでなく、繊維と繊維間に水分を抱水し、その保水能は実に自重の9〜10倍に達する。
又、ヤシ繊維等を原料としマット状に成型する際、接着剤を用いてマット状に成型するものやマット表面に合成樹脂等を噴霧あるいは塗布して成型するマット状材は撥水性を持ち、その保水能、吸水能は大きな差がある。
表1は各種マット状物の自重と水分吸水し、湿潤飽和状態での100cm3当たりの重量の比較表であり、各3点のテストピースでの平均値であり、〔1〕は反毛繊維をニードルパンチにより成型したマット状物 〔2〕はヤシ繊維を合成ゴム系接着剤により接着したマット状物 〔3〕は合成繊維材料に合成樹脂を噴霧、展圧してなるマット状物である。反毛繊維を材料としたマット状物は実に自重の10倍近い水分を保水する。
すなわち本発明によるマット状成型材の抱水能(保水能)と吸水能の高さが斜面において自生種木本種子や埋土種子あるいは飛来種子の発芽・生育を促進する大きな効果を発揮し、幼苗期の日照り等異常気象時にも抵抗しその生育を促進する。
(表1)
Figure 2009062758
本発明による第2の効果は、前掲のマット状成型材を金網や繊維系ネット等の網状体に結び付けるなどして一体とした事により、緑化基礎工としての網状体の張設作業と一体になって該マット状成型材が敷設されるため、特許文献1で開示の方法に比べて、格段に作業効率が高く施工コストや工期が大幅に縮減される事であり、且つ高所急斜面での危険な作業が大幅に軽減される。又、アンカーピンや止め釘等の補助材料もその使用量を削減できる。
本発明の効果の第3は、装着するマット状成型材を全面張に限定せず、所定の幅員および間隔で固定・装着する事ができることであり、これによって斜面の勾配や地質状況等に応じてマット状成型材の装着部を変更し、材料コストの縮減が可能となるばかりでなく飛来種子等の捕捉に有効なポケット部を形成する事ができる。
さらに本発明の第4の効果は、所要の高さ(厚さ)を得られる様、丸めあるいは折り畳んだマット状成型材を網状体に装着し、より大きなギャップを形成しダム効果を高める事によって、より多量の水分を斜面上に貯留する事ができる。
又マット状物を丸めあるいは折り畳む際に豆炭状の大型の緩効性肥料を挟み込んで封入し、長期間の肥効を得る事ができる。さらにこの網状体の上面に所定厚さの植物生育基盤材料を吹付ける事によって凹部と凸部を持つ階段状の生育基盤が造成され、表流水は生育基盤内にも貯留され、自生種木本種子や埋土種子、飛来種子等の発芽をより促進する事ができる。
又、飛来種子や鳥散布種子は、造成された階段状の生育基盤のステップ部に確実に捕捉され、貯留された水分によってその発芽・生育は促進される。又、この階段状生育基盤の凸部は風雨により侵食されて覆土となり、飛来種子の発芽・生育をより一層確実なものとする事ができる。
本発明の第5の効果は、前記所要の高さ(厚さ)を持つマット状成型材を装着・固定した網状体をアンカーピン等を用いて斜面に張設し、これに生育基盤を吹付ける際、種子や根系等の植物材料を混入することなく所要の厚さの階段状の生育基盤を造成し、しかる後該生育基盤の表面に埋土種子を含む表土シードバンクおよび/もしくは在来自生種種子等を含む生育基盤材を厚さ3cm以下で吹付ける事ができる。
これによって造成する植生基盤全層に表土シードバンクや自生種と称される地域性種苗を混入する場合に比して、その高価なあるいは採取が困難な表土シードバンクを節約する事により、コストの大幅な縮減が可能となる。すなわち植物種子の発芽可能深度は種子により異なるが、ドングリ類を除いて一般に3cm程度以下であり、それより下層に混入される植物材料は無駄となるからである。
表土シードバンクとは、土壌の中に生存中の種子を多く含み、植物生育に伴う種子の増加と、発芽による減少を繰り返しているものを言う。
さらに本発明の第6の効果は、前記の階段状に造成される生育基盤のステップ部分に苗木を植栽し、あるいは挿し木(穂)を埋設し、あるいはドングリを埋土する事ができる。植栽された苗木や挿し木(穂)は種子あるいは根系に比べて成長が早く、早期に景観を改善し安定を図ると共に、鳥類の止まり木や食餌木となって鳥散布種子の散布効果を高め、自然植生の誘導をさらに促進し、その林床部に飛来種等の付近の森林樹種の発芽・生育を助長する。
この苗木の植栽や挿し木の埋設はステップ部に貯留された水分によって確実に生育し、早期に樹林となって景観を改善するばかりでなく、鳥類の食餌木や止まり木として鳥散布種子の侵入を促進する事ができる。又、ドングリ類を所望の位置に埋土する事により、大型種子の木本植物をより確実に発芽させる事ができる。
さらに本発明の効果の第7は、造成する植生基盤の基盤材の5〜60容積部好ましくは10〜30容積部の割合で人工ゼオライトを混入する事によって、人工ゼオライトは肥料分のうち窒素分をイオン交換により吸着し、これによって肥料分のうち窒素分が少ない基盤を人工的に造成し、草本植物の成長を抑制し、木本植物の草本による被圧を抑制し、木本植物の発芽・生育を助長することができる。
さらに生育基盤材料の5〜60容量部、好ましくは30〜50容量部の径又は幅1mm以下の短繊維材を混入する事ができる。これによって短繊維が絡み合いより強固で安定した基盤を造成すると共に短繊維間に水分を抱水し、さらに保水性の高い生育基盤の造成ができ、発芽・生育の遅い木本種子を安定して発芽・生育させると共に異常気象等に対応できるより安定した生育基盤の造成を図る事ができる。
本発明の実施例を、図面により説明する。
図に示すのは、勾配1:1.5(約33°)で造成された盛土法面における実施例である。
図1は反毛を原材料とするマット状物を装着した網状体の斜視図であり、1は反毛を原材料として複数条積層し、これをニードルパンチによってマット状に成型したものを厚さ20mm、幅20cm、長さ2m程度に切断したものであり、これをヤシ繊維等で編んだ繊維製ネット2に40cm間隔で装着一体化する。
図2は施工の状態を示す断面図であり、1は前記反毛を積層成型してなるマット状成型材であり、2はヤシ繊維を編んで作った網状体であり、これをアンカーピン3により盛土法面10に張設・固定する。
こうして張設した自然植生誘導用ネットAの表面に施工地近傍の森林で採取された埋土種子を多量に含む表土シードバンクを容積比10%程度混合してなる植生基盤材4を客土吹付機もしくはモルタル吹付機等を用いて厚さ30mm程度に吹付けて、植生基盤層11を造成する。
又、この生育基盤材には乾燥した刈草やスギ・ヒノキ等の樹皮等を径又は幅1mm以下の短繊維となる様加工した材料や前記反毛等の短繊維材を容積比40%程度混入する。
これによって造成された生育基盤の耐侵食性が改善されると共に、より保水性に優れた生育基盤が造成され、埋土種子や地域性自生種種子の発芽・生育をより確実なものとする事ができる。
図3は本実施例で使用する自然植生誘導用ネットAの斜視図であり、図3で網状材2は、線径2mm網目50mmの菱型金網を採用している。
マット状成型材1は、複数条の反毛繊維を積層しこれをニードルパンチによって厚さ10mmのマット状に成型加工したマット状成型材を折り畳み、略幅20cm、高さ10cmとした棒状(柱状)体1aを使用しており、この棒状(柱状)体は金網に50cm間隔で、網状材2である菱形金網に係り止め固定されて、自然植生誘導用ネットAが形成されている。
棒状や柱状としたマット状成型材には、固形の緩効性の肥料を挟み込むことも可能である。
肥料は、数年の間に、徐々に周辺地盤に浸透していく。
図4に示すのは、図3に示す自然植生誘導用ネットAを使用した施工例の断面図であり、勾配1:1.0(45°)の切土法面における施工例であり、前記自然植生誘導用ネットAをアンカーピン3を用いて切土法面12に張設し固定する。
これによって凹凸があり、且つ流下する表流水をせき止めるダム効果の高い緑化基礎工を形成する。さらにこの上に径1mm以下の短繊維状に加工された刈草やスギ、ヒノキ樹皮等からなる短繊維材料を含む生育基盤材をモルタル吹付機等によって厚さ7cmとなる様吹付け略階段状の下部植生基盤11aを造成する。
さらにこうして造成された階段状の生育基盤の表面に吹付厚さ3cmで埋土種子を含む表土シードバンクや地域性種苗を含む上部植生基盤層11bを形成する。
これによって高価で入手困難な地域性種苗を節約し、あるいは採取が困難な森林表土を節約し、コストの縮減を図る事ができる。
さらに階段状の植生基盤層13のステップ部分13aに地域性の苗木20を植栽する。
これによって早期に自然景観の回復を図ると共に、生育基盤の安定と鳥散布種子の導入による二次遷移林への遷移を促進し、自然植生への回復をより効果的にする事ができる。
図5に示すのは、本発明で使用する自然植生誘導用ネットAの斜面への敷設の一実施例を示すものである。
第3実施例では、帯状に成型したマット状成型材1を上下に適宜間隔離隔させて、複数本のマット状成型材1が水平方向へ伸び、全体が横縞状となるよう、斜面に配置した実施例である。
図6に示すのは、本発明の自然植生誘導用ネットAの斜面への敷設の他の実施例を示すものである。
左右に隣り合う自然植生誘導用ネットAを、そのマット状成型材1が上下にズレて、千鳥状となるよう配置したものである。
図7に示すのは、本発明の自然植生誘導用ネットAの斜面への敷設の他の実施例を示すものである。
自然植生誘導用ネットAを、ランダムに斜面に固定して、マット状成型材1も、ランダムに斜面の散らばるように配置した例である。
マット状成型材1は、左右端部よりも中間部が下がる弧状の形状となっており、ポケット状に種子を受け止めることが可能である。
1996年に策定された生物多様性国家戦略に基づき、地域固有の生態系の保全が求められる様になると共に、道路の建設や開発工事にともなって造成される法面についても、外来生物法の施行にともない外来種による緑化に対してその是非が問われる様になり、遺伝子レベルにまで配慮した地域性種苗を用いた緑化技術が求められる様になった。かかる観点から本発明では地域で採取された自生種種子や森林表土に含まれる埋土種子、附近の森林からの飛来種子等の植物材料を斜面緑化に導入して早期に自然景観と生態系の回復を図り、地域固有の景観や生態系を保全する技術を提供して環境保全に寄与しようとするものである。
自然植生誘導ネットの一実施例の斜視図 図1の自然植生誘導用ネットを用いた施工の状態を示す断面図 自然植生誘導用ネットの他の実施例の斜視図 図2のネットを用いた施工例の断面図 マット状成型材を横縞状に配した自然植生誘導用ネットの平面図 マット状成型材を千鳥状に配した自然植生誘導用ネットの平面図 マット状成型材をランダムな縞状に配した自然植生誘導用ネットの平面図
符号の説明
A 自然植生誘導用ネット
1 マット状成型材
1a マットの棒状(柱状)体
2 網状材
3 アンカーピン
4 植生基盤材
10 盛土斜面
11 植生基盤層
11a 下部植生基盤層
11b 上部植生基盤層
12 切土法面基盤
13 階段状植生基盤層
13a ステップ部分
20 苗木

Claims (12)

  1. 複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱、及び/若しくは、ニードルパンチによってマット状に成型してマット状成型体とし、
    該マット状成型材を、網状体の全面若しくは一部に配して、固定してなる自然植生誘導用ネット。
  2. マット状成型材が、方形板状、帯状、棒状、若しくは柱状であることを特徴とする
    請求項1記載の自然植生誘導ネット。
  3. 丸め、或いは折り畳んで棒状や柱状としたマット状成型材の中心に、
    固形の肥料を挟み込んだことを特徴とする
    請求項2記載の自然植生誘導ネット。
  4. 棒状若しくは柱状としたマット状成型材を、略直線状若しくは円弧状にし、
    これを網状体に取付けたことを特徴とする
    請求項2若しくは3記載の自然植生誘導ネット。
  5. 複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱、及び/若しくは、ニードルパンチによってマット状に成型してマット状成型体とし、
    該マット状成型材を、網状体の全面若しくは一部に配した自然植生誘導用ネットを、斜面に敷設固定し、
    この上に植生基盤材を吹き付けて植生基盤層を形成してなる
    斜面の自然植生誘導構造。
  6. マット状成型材が、方形板状、帯状、角柱状、若しくは丸柱状であることを特徴とする
    請求項5記載の斜面の自然植生誘導構造。
  7. マット状成型材が、その長手方向の向きが水平、若しくは略水平であることを特徴とする
    請求項5又は6記載の斜面の自然植生誘導構造。
  8. 植生基盤材には、表土シードバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入してあることを特徴とする
    請求項5、6又は7のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。
  9. 植生基盤層は、種子を混入していない下部植生基盤層と、
    その上に埋土種子を含む表土シードバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入した植生基盤材を吹付けた上部植生基盤層とから成ることを特徴とする
    請求項5、6又は7のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導方法。
  10. マット状成型材が、その長手方向の向きが水平、若しくは略水平と成るようにし、
    その上に植生基盤材を吹き付けて、一部がフラット若しくは略フラットとなった階段状のステップ部分を有する植生基盤層を形成したことを特徴とする
    請求項5、6、7、8、又は9のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。
  11. 階段状の植生基盤層のステップ部分に、苗木を植栽する、挿し木(穂)を行なう、或いは、植物根系やドングリ状の大型種子を埋める、のうち一又は二以上の植生手段を採用することを特徴とする
    請求項10記載の斜面の自然植生誘導構造。
  12. 植物生育基盤材に、容積比5〜60%の径又は幅1mm以下の短繊維材料、及び/若しくは、容積比5〜40%の人工ゼオライトを混入したことを特徴とする
    請求項5、6、7、8、9、又は10のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。
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