JP2009062758A - 自然植生誘導ネット及び斜面の自然植生誘導構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数条の反毛繊維を積層し、これをニードルパンチ等によってマット状に成型し、方形板状、角柱状、帯状、丸柱状とする。このマット状成型材2を網状体1に結びつけるなどして、網状材1の全面或いは一部に配する。該網状体1を、アンカーピン3等を用いて法面に張設・固定し、該網状体の表面に地域性種苗や埋土種子を含む表土シードバンク等を混入した生育基盤層11を形成する。
【選択図】図2
Description
しかし、ここで用いられる種苗は必ずしも地域性のものとは限定されず、広く国内全地域産のものが用いられており、生産量も限定的であり流通が少ないため計画しても施工時期によっては入手が困難であったり、時には価格が暴騰する等、非常に使用しにくい状態にあった。又、生産地表示も明確でなく、遺伝子レベルに配慮した地域性種苗の入手は至難の状態であった。
特許文献1には、種子を含まない生育基盤のみを法面に造成し、この上に、種子を捕捉するための棚状物を設置する方法が開示されている。
しかしこの方法によれば、棚状物と棚状物の間や、網状物の表面に付着した風散布種子は、風によって容易に飛散してしまうという問題があり、その捕捉効率は確実なものではなかった。
又、棚状部によってせき止められる表面水は一時的に貯留されるが、その後生育基盤内に浸透するか、あるいは蒸散によって失われてしまうため、発芽しても幼苗期に乾燥害や日照りによって枯死するという問題もある。
この手法によれば、風散布や重力散布による飛来種子は、ポケット部に収容され、ネットに取り付けられた薄綿に絡み付き、その捕捉効果はより確実なものとなる。
又、ネットが風に対する緩衝材の役割をするため、飛来し捕捉された種子は風によって飛散しにくい構造となっている。
又、自然進入促進工に関しては肥効力が数年間持続する肥料の開発や飛来した種子の発芽生育に最適な環境を造成するネット(マット)の開発あるいは植物の生育が遅いという観点から、発芽・生育に必要な土壌が形成されやすい様に法面表面の形成を工夫する等が必要であるとしている。
この複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱して成型するか、および/もしくはニードルパンチによってマット状に成型し、これによって厚さ5mm〜20mm程度のマット状物を得る。このマット状物を金網や繊維系ネット等の網状体に係り止め・定着した事を特徴とする自然植生誘導用ネットである。
ここでニードルパンチとは、多数本のニードル(針)の先端が繊維間を往復して、繊維同士を絡ませる工程である。
この網状体に取付けられた複数条の反毛繊維を積層し、加圧・加熱および/もしくはニードルパンチによって成型されたマット状体は、反毛繊維そのものが吸水して保水するばかりでなく、その繊維間に水分を抱水する。
又、かかる複数条の繊維を積層したマットを形成する手法として、合成樹脂接着剤や合成ゴム系接着剤を用いて繊維と繊維を固着する製法や合成樹脂を溶解して繊維状に溶出して一定厚のマットを成型する手法があるが、これらの手法で成型されたマット状体は撥水性を有し抱水能は劣る。
又、繊維材として用いられる反毛は、毛布・じゅうたん等の古布地を細切りし反毛機によって綿状に加工したもので、吸水性が高く繊維1本1本の間に水分を抱水するため保水能も他のマット状物に比して格段に高く好適な繊維材料である。
第2発明では、前記マット状成型材の形状を、方形板状、帯状、棒状、柱状とするものである。
第3発明では、丸め、或いは折り畳んで棒状や柱状としたマット状成型材の中心に、固形の肥料を挟み込むものである。
肥料は少しづつ周辺地盤に浸透していき、数年の間植物に供給される。
第4発明では、棒状若しくは柱状としたマット状成型材を、略直線状若しくは円弧状にし、
これを網状体に取付けるものである。
マット状成型材を配するとは、網状材の下全面に敷設することや、一部に部分的に設置して、ピンによって斜面に固定することも含む。
或いは、マット状成型材を紐によって結び付けるなどして、予め取付けておき、網状材の一部に配することもある。
網状材としては、ヤシ繊維などを撚って紐状にし、これを網のように編んだもの、合成樹脂繊維によるネット、金網などが使用可能である。
このような自然植生誘導用ネットの上に、植生基盤材を吹き付けて、植生基盤層を形成するものである。
植生基盤材としては、バーク堆肥、ピートモス、土壌、肥料、種子などを適宜混ぜたものが選択的に採用できる。
種子としては、表土シードバンクの種子、自生種植物種子などが広く採用できる。
飛来種子などは、網状材によって捕捉するものであって、この網状材の捕捉作用によって、種子が流れ落ちないようにするものである。
飛来種子の捕捉には、網状材の固定を幾分ルーズにして、網状材の下側に植生基盤材を吹き込み、植生基盤層の表面に網状材が露出するようにし、飛来種子の捕捉効果を高めることができる。
マット状成型材を帯状に切断する、折り畳む、複数枚を積み重ねる、或いは丸めるようにして、これら形状にするものである。
略水平とは、長尺の成型材を、中間部が左右端部よりも下がるように、弧状にするなども含む。
また、マット状成型材の配置としては、横縞となるように、斜面の上下に適宜間隔を離して配したり、上下左右に千鳥状に配したり、ランダムな縞状となるように配するよう自然植生誘導用ネットを張設することができる。
このようにすることにより、飛来種子に限定せずに、しかも地域性自生種植物の生育が期待できる。
第9発明は、植生基盤層として、まず、植物材料を混入していない下部植生基盤層を形成し、その上に埋土種子を含む表土シートバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入した植生基盤材を吹付けて上部植生基盤層を形成するものである。
このようにすることで、種子などを有効に使用することとなる。
また、上部植生基盤層を、種子が発芽する深さの3cm以下とすることで、種子を有効利用できる。
その上に植生基盤材を吹き付けて、一部がフラット若しくは略フラットとなった階段状のステップ部分を持つ植生基盤層を形成するものである。
又、ヤシ繊維等を原料としマット状に成型する際、接着剤を用いてマット状に成型するものやマット表面に合成樹脂等を噴霧あるいは塗布して成型するマット状材は撥水性を持ち、その保水能、吸水能は大きな差がある。
表1は各種マット状物の自重と水分吸水し、湿潤飽和状態での100cm3当たりの重量の比較表であり、各3点のテストピースでの平均値であり、〔1〕は反毛繊維をニードルパンチにより成型したマット状物 〔2〕はヤシ繊維を合成ゴム系接着剤により接着したマット状物 〔3〕は合成繊維材料に合成樹脂を噴霧、展圧してなるマット状物である。反毛繊維を材料としたマット状物は実に自重の10倍近い水分を保水する。
すなわち本発明によるマット状成型材の抱水能(保水能)と吸水能の高さが斜面において自生種木本種子や埋土種子あるいは飛来種子の発芽・生育を促進する大きな効果を発揮し、幼苗期の日照り等異常気象時にも抵抗しその生育を促進する。
(表1)
又マット状物を丸めあるいは折り畳む際に豆炭状の大型の緩効性肥料を挟み込んで封入し、長期間の肥効を得る事ができる。さらにこの網状体の上面に所定厚さの植物生育基盤材料を吹付ける事によって凹部と凸部を持つ階段状の生育基盤が造成され、表流水は生育基盤内にも貯留され、自生種木本種子や埋土種子、飛来種子等の発芽をより促進する事ができる。
又、飛来種子や鳥散布種子は、造成された階段状の生育基盤のステップ部に確実に捕捉され、貯留された水分によってその発芽・生育は促進される。又、この階段状生育基盤の凸部は風雨により侵食されて覆土となり、飛来種子の発芽・生育をより一層確実なものとする事ができる。
これによって造成する植生基盤全層に表土シードバンクや自生種と称される地域性種苗を混入する場合に比して、その高価なあるいは採取が困難な表土シードバンクを節約する事により、コストの大幅な縮減が可能となる。すなわち植物種子の発芽可能深度は種子により異なるが、ドングリ類を除いて一般に3cm程度以下であり、それより下層に混入される植物材料は無駄となるからである。
表土シードバンクとは、土壌の中に生存中の種子を多く含み、植物生育に伴う種子の増加と、発芽による減少を繰り返しているものを言う。
この苗木の植栽や挿し木の埋設はステップ部に貯留された水分によって確実に生育し、早期に樹林となって景観を改善するばかりでなく、鳥類の食餌木や止まり木として鳥散布種子の侵入を促進する事ができる。又、ドングリ類を所望の位置に埋土する事により、大型種子の木本植物をより確実に発芽させる事ができる。
さらに生育基盤材料の5〜60容量部、好ましくは30〜50容量部の径又は幅1mm以下の短繊維材を混入する事ができる。これによって短繊維が絡み合いより強固で安定した基盤を造成すると共に短繊維間に水分を抱水し、さらに保水性の高い生育基盤の造成ができ、発芽・生育の遅い木本種子を安定して発芽・生育させると共に異常気象等に対応できるより安定した生育基盤の造成を図る事ができる。
図に示すのは、勾配1:1.5(約33°)で造成された盛土法面における実施例である。
図1は反毛を原材料とするマット状物を装着した網状体の斜視図であり、1は反毛を原材料として複数条積層し、これをニードルパンチによってマット状に成型したものを厚さ20mm、幅20cm、長さ2m程度に切断したものであり、これをヤシ繊維等で編んだ繊維製ネット2に40cm間隔で装着一体化する。
図2は施工の状態を示す断面図であり、1は前記反毛を積層成型してなるマット状成型材であり、2はヤシ繊維を編んで作った網状体であり、これをアンカーピン3により盛土法面10に張設・固定する。
こうして張設した自然植生誘導用ネットAの表面に施工地近傍の森林で採取された埋土種子を多量に含む表土シードバンクを容積比10%程度混合してなる植生基盤材4を客土吹付機もしくはモルタル吹付機等を用いて厚さ30mm程度に吹付けて、植生基盤層11を造成する。
これによって造成された生育基盤の耐侵食性が改善されると共に、より保水性に優れた生育基盤が造成され、埋土種子や地域性自生種種子の発芽・生育をより確実なものとする事ができる。
マット状成型材1は、複数条の反毛繊維を積層しこれをニードルパンチによって厚さ10mmのマット状に成型加工したマット状成型材を折り畳み、略幅20cm、高さ10cmとした棒状(柱状)体1aを使用しており、この棒状(柱状)体は金網に50cm間隔で、網状材2である菱形金網に係り止め固定されて、自然植生誘導用ネットAが形成されている。
棒状や柱状としたマット状成型材には、固形の緩効性の肥料を挟み込むことも可能である。
肥料は、数年の間に、徐々に周辺地盤に浸透していく。
これによって凹凸があり、且つ流下する表流水をせき止めるダム効果の高い緑化基礎工を形成する。さらにこの上に径1mm以下の短繊維状に加工された刈草やスギ、ヒノキ樹皮等からなる短繊維材料を含む生育基盤材をモルタル吹付機等によって厚さ7cmとなる様吹付け略階段状の下部植生基盤11aを造成する。
これによって高価で入手困難な地域性種苗を節約し、あるいは採取が困難な森林表土を節約し、コストの縮減を図る事ができる。
これによって早期に自然景観の回復を図ると共に、生育基盤の安定と鳥散布種子の導入による二次遷移林への遷移を促進し、自然植生への回復をより効果的にする事ができる。
第3実施例では、帯状に成型したマット状成型材1を上下に適宜間隔離隔させて、複数本のマット状成型材1が水平方向へ伸び、全体が横縞状となるよう、斜面に配置した実施例である。
左右に隣り合う自然植生誘導用ネットAを、そのマット状成型材1が上下にズレて、千鳥状となるよう配置したものである。
自然植生誘導用ネットAを、ランダムに斜面に固定して、マット状成型材1も、ランダムに斜面の散らばるように配置した例である。
マット状成型材1は、左右端部よりも中間部が下がる弧状の形状となっており、ポケット状に種子を受け止めることが可能である。
1 マット状成型材
1a マットの棒状(柱状)体
2 網状材
3 アンカーピン
4 植生基盤材
10 盛土斜面
11 植生基盤層
11a 下部植生基盤層
11b 上部植生基盤層
12 切土法面基盤
13 階段状植生基盤層
13a ステップ部分
20 苗木
Claims (12)
- 複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱、及び/若しくは、ニードルパンチによってマット状に成型してマット状成型体とし、
該マット状成型材を、網状体の全面若しくは一部に配して、固定してなる自然植生誘導用ネット。 - マット状成型材が、方形板状、帯状、棒状、若しくは柱状であることを特徴とする
請求項1記載の自然植生誘導ネット。 - 丸め、或いは折り畳んで棒状や柱状としたマット状成型材の中心に、
固形の肥料を挟み込んだことを特徴とする
請求項2記載の自然植生誘導ネット。 - 棒状若しくは柱状としたマット状成型材を、略直線状若しくは円弧状にし、
これを網状体に取付けたことを特徴とする
請求項2若しくは3記載の自然植生誘導ネット。 - 複数条の反毛繊維を積層し、これを加圧・加熱、及び/若しくは、ニードルパンチによってマット状に成型してマット状成型体とし、
該マット状成型材を、網状体の全面若しくは一部に配した自然植生誘導用ネットを、斜面に敷設固定し、
この上に植生基盤材を吹き付けて植生基盤層を形成してなる
斜面の自然植生誘導構造。 - マット状成型材が、方形板状、帯状、角柱状、若しくは丸柱状であることを特徴とする
請求項5記載の斜面の自然植生誘導構造。 - マット状成型材が、その長手方向の向きが水平、若しくは略水平であることを特徴とする
請求項5又は6記載の斜面の自然植生誘導構造。 - 植生基盤材には、表土シードバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入してあることを特徴とする
請求項5、6又は7のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。 - 植生基盤層は、種子を混入していない下部植生基盤層と、
その上に埋土種子を含む表土シードバンク、及び/若しくは、自生木本種子を混入した植生基盤材を吹付けた上部植生基盤層とから成ることを特徴とする
請求項5、6又は7のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導方法。 - マット状成型材が、その長手方向の向きが水平、若しくは略水平と成るようにし、
その上に植生基盤材を吹き付けて、一部がフラット若しくは略フラットとなった階段状のステップ部分を有する植生基盤層を形成したことを特徴とする
請求項5、6、7、8、又は9のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。 - 階段状の植生基盤層のステップ部分に、苗木を植栽する、挿し木(穂)を行なう、或いは、植物根系やドングリ状の大型種子を埋める、のうち一又は二以上の植生手段を採用することを特徴とする
請求項10記載の斜面の自然植生誘導構造。 - 植物生育基盤材に、容積比5〜60%の径又は幅1mm以下の短繊維材料、及び/若しくは、容積比5〜40%の人工ゼオライトを混入したことを特徴とする
請求項5、6、7、8、9、又は10のいずれか1項に記載の斜面の自然植生誘導構造。
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