JP2003034871A - 真空処理方法 - Google Patents

真空処理方法

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JP2003034871A
JP2003034871A JP2001222788A JP2001222788A JP2003034871A JP 2003034871 A JP2003034871 A JP 2003034871A JP 2001222788 A JP2001222788 A JP 2001222788A JP 2001222788 A JP2001222788 A JP 2001222788A JP 2003034871 A JP2003034871 A JP 2003034871A
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peaks
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mhz
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JP2001222788A
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Makoto Aoki
誠 青木
Yukihiro Abe
幸裕 阿部
Hitoshi Murayama
仁 村山
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波電力によって反応容器内にプラズマを
形成して処理を行う真空処理方法において、真空処理速
度の向上および真空処理特性の向上を達成し、さらに、
真空処理特性の均一性を極めて高いレベルとする。 【解決手段】 高周波電力として、10MHz以上の周
波数を持つものを供給して速い処理速度で、かつ良好な
特性の真空処理を行う。この際、高周波電力として25
0MHz以下の範囲で、異なる周波数を有する少なくと
も2つの高周波電力を供給し、反応容器内で検出される
電力強度の周波数スペクトルに、供給する高周波電力の
周波数f1、f2に相当する周波数以外の周波数のピー
クが存在し、該ピークのうち最大のピークの電力強度
が、f1、f2に相当する周波数のピークのうち低い方
のピークの電力強度に対して、−30dB以上−3dB
以下となるようにして、極めて均一性の高い真空処理を
行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体デバイス、
電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサー、撮影デ
バイス、光起電力デバイスなどの形成に用いる、堆積膜
形成、エッチングなどの真空処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体デバイス、電子写真用感光
体、画像入力用ラインセンサー、撮影デバイス、光起電
力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素
子などを作成する際に用いられる真空処理方法として
は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティ
ング法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD(P
CVD)法など、多数の方法が知られており、その処理
に用いる装置が実用に付されている。中でも高周波電力
を用いたプラズマプロセスは、様々な材料を用いた堆積
膜作成やエッチングに用いることができる、酸化膜や窒
化膜などの絶縁性の材料からなる部材の形成にも使用で
きるなど、様々な利点を有しており、広範に使用されて
いる。プラズマプロセスの好適な使用例としては、例え
ば電子写真用水素化アモルファスシリコン(以下、a−
Si:Hと表記する)堆積膜の形成などがある。この分
野では現在実用化が非常に進んでおり、そのための装置
も各種提案されている。
【0003】また、近年では、より高い周波数の高周波
電源を用いたプラズマCVD法に関する報告(Plasma
Chemistry and Plasma Processing, Vol.7, No.3,
(1987),P267−273参照)が行われ、放電
周波数を従来の13.56MHzより高くすることによ
って、堆積膜の性能を落とさずに堆積速度を速くするこ
とができる可能性が示されており、注目されている。こ
れに関連する技術として、例えば特開平6−28776
0号公報にはa−Si系電子写真用光受容部材形成に用
い得る、VHF帯の周波数を用いたPCVDの装置およ
び方法が開示されている。また、特開平7−28823
3号公報には、VHF帯の高周波を用いて、同一円周上
に配置された複数の円筒状基体上に複数の堆積膜を同時
に形成する技術が開示されている。
【0004】また、高周波を用いる際の工夫としては、
特許第3008038号公報において、高周波電源の高
調波成分の含有率を−30dB以下に抑えることによっ
て、大電力投入時のプラズマの安定を図る方法が開示さ
れている。また、特開平7−14769号公報には、異
なる周波数の交番電圧を印加可能な複数の電極を有し、
それら電極のうち異なる2電極にそれぞれ割り当てられ
た周波数同士の差である第1次周波数差が第1の特定値
以上となっていることを特徴とする半導体製造装置が開
示されている。同公報には、この方法によってうなりの
発生が抑えられ、チャンバー内の放電が安定し、周波数
干渉を容易に防ぐことが可能になることが開示されてい
る。また、USP6126778号公報には、少なくと
も2つの異なる周波数の高周波を用いることで、周波数
をうなり(beat)によって変調した高周波が得られ、こ
れにより電源のオンオフを行うことなくパルス放電と同
様の効果を得る技術が開示されている。また、特開平0
7−321105号公報には、半導体装置の製造方法に
おいて、10MHzから1GHzの範囲、一例として1
3.56MHzの高周波電力を供給する電源と、300
kHzから500kHzの範囲、一例として400kH
zの低周波電力を供給する電源とを用いて層間絶縁膜を
作成する技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の方法および
装置により、良好な堆積膜形成、すなわち真空処理を行
うことができる。しかしながら、このような真空処理方
法を用いて製造した製品に対する市場の要求レベルは日
々高まっており、この要求に応えるべく、より高品質
化、低コスト化を実現可能な真空処理方法が求められる
ようになっている。
【0006】例えば、電子写真装置の場合、コピースピ
ードの向上、高画質化、低価格化の要求は非常に強く、
これらを実現するためには感光体特性の向上、具体的に
は帯電能、感度などの向上、感光体を構成する膜中の構
造欠陥に起因して画像上に白点あるいは黒点で現れる画
像欠陥の抑制、および感光体生産コストの削減が不可欠
となっている。また、近年その普及が目覚しいデジタル
電子写真装置、カラー電子写真装置においては、文字原
稿のみならず、写真、絵、デザイン画などのコピーも頻
繁に為されるため、画像濃度むらの低減が従来以上に強
く求められるようになっている。
【0007】このような感光体特性の向上、感光体生産
コストの削減を目指し、堆積膜積層構成の最適化なども
為されているが、同時に、真空処理方法に関しても改善
が強く望まれている。このような状況下で、前述の従来
の真空処理方法においても、真空処理特性の向上、真空
処理コストの削減に関して、まだ改善の余地が残されて
いるのが現状である。
【0008】これに対して、前述のように、近年、VH
F帯またはその近傍の周波数の高周波を用いてプラズマ
を生成して真空処理を施すことにより、真空処理速度の
向上、真空処理特性の向上を達成できる可能性が示され
ており、これを実現するため鋭意研究がなされている。
しかしながら、このような周波数帯の高周波を用いた場
合、真空処理容器中での高周波の波長が真空処理容器、
高周波電極、基板、基板ホルダーなどと同程度の長さと
なり、真空処理容器中で高周波が定在波を形成してしま
う。このように定在波が形成されると、真空処理容器中
には場所ごとに電界強度の強弱が生じ、場所ごとにプラ
ズマ特性が異なってしまう。この結果、真空処理特性の
均一性を広い範囲で得ることは難しかった。
【0009】このような問題を解決する方法として、複
数の異なる周波数の高周波を反応容器中に同時に供給す
ることが考えられる。そうすることによって、反応容器
中には各々の周波数に応じた、異なる波長の定在波が複
数形成されることとなるが、これらは同時に形成される
ので、これら複数の定在波が合成され、結果として明確
な定在波が形成されなくなる。このような考えに基づけ
ば、周波数の異なる複数の高周波の周波数や電力値はど
のような値であっても定在波抑制効果は得られると考え
られる。例えば、特開平07−321105号公報に
は、このような技術を用いることによって、反応容器中
の高周波の定在波が抑制され、真空処理の均一性が向上
することが開示されている。
【0010】しかしながら、本発明者らが、例えば特開
平07−321105号公報に開示された技術を用いて
均一性に関する実験を行った結果、確かにあるレベルま
では真空処理特性の均一性を向上させることができるも
のの、近年要求されているレベルの均一性を得るには至
らなかった。すなわち、電界強度を見れば均一化されて
いるはずの、高周波の供給方法をもってしても、実際の
真空処理においては、ある程度の不均一性が残ってしま
うことが明らかとなった。
【0011】さらに、複数の高周波を用いて定在波の影
響の抑制効果を得る方法では、プラズマ中で実効的に分
解に寄与する複数の高周波のバランスが適正に調整され
る必要があると考えられる。しかし、プラズマ中の高周
波バランスを適正にすることについては、これまであま
り注目されていなかった。そこで、定在波の影響の抑制
効果をさらに高めるために、プラズマ中での高周波のバ
ランスを適正に調整する方法が求められていた。
【0012】加えて、例えば特許第3008038号公
報、特開平7−14769号公報に記載されているよう
に、高周波電源が含有する高調波や、複数の高周波電源
を用いた場合に生じるうなりの抑制などを行っても、真
空処理の不均一性を改善することに対しては効果的では
なかった。また、USP6126778号公報に記載さ
れているように「うなり」を高周波の振幅制御に積極的
に用いる形態でも、同様に、真空処理の均一性を変化さ
せることには効果的でないことが判った。
【0013】本発明は上記課題の解決を目的とするもの
である。すなわち、本発明の目的は、反応容器中に被処
理物を設置し、該反応容器中に供給した原料ガスを高周
波電力により分解し、速い処理速度で被処理物に処理を
施す真空処理方法において、真空処理特性を向上させ、
さらに、真空処理特性の均一性を極めて高いレベルと
し、また真空処理コストを低減することが可能な真空処
理方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の真空処理方法
は、上記課題を解決するため、内部を減圧可能な反応容
器内に被処理物を設置する工程と、高周波電力を高周波
電極に印加して反応容器内にプラズマを形成する工程と
を有する真空処理方法において、プラズマ形成工程で
は、10MHz以上250MHz以下の範囲で、異なる
周波数を有する少なくとも2つの高周波電力を供給し、
これらの高周波電力のうち2つの高周波電力の周波数を
f1、f2としたとき、反応容器内で検出される電力強
度の周波数スペクトルには、f1、f2に相当する周波
数以外の周波数のピークが存在し、該ピークのうち最大
のピークの電力強度が、f1、f2に相当する周波数の
ピークのうち低い方のピークの電力強度に対して、−3
0dB以上−3dB以下であることを特徴とする。
【0015】このように、プラズマ形成工程において反
応容器内に生じる、電力強度の周波数スペクトルが所定
の条件を満たすようにして真空処理を行うことによっ
て、良好でかつ広範囲の領域にわたって均質な真空処理
を行うことができる。電力強度の周波数スペクトルが所
定の条件を満たすようにすることは、放電条件や装置構
成を適宜微調整することによって実施可能である。
【0016】本発明の真空処置方法では、加えて、周波
数スペクトルのピークのうちでf1、f2に相当するピ
ークを除いて最大の電力強度を持つピークの周波数が、
f1またはf2よりも低いことが好ましい。
【0017】加えて、f2<f1としたとき、周波数ス
ペクトルのピークのうちf1、f2に相当する周波数の
ピークを除いて最大の電力強度を持つピークの周波数が
f1−f2の周波数であることが好ましい。
【0018】加えて、周波数スペクトルには、f1、f
2に相当する周波数のピークのうち低い方のピークの電
力強度に対して−30dB以上の電力強度を持つピーク
が複数存在し、かつそのようなピークがf1とf2の間
の周波数に5つ以下存在することが好ましい。
【0019】加えて、周波数スペクトルには、f1、f
2に相当する周波数のピークのうち低い方のピークの電
力強度に対して−30dB以上の電力強度を持つピーク
が複数存在し、かつ各ピークの周波数の間隔のうちで最
も小さい周波数間隔が、10MHzより大きく、f1−
f2以下であることが好ましい。
【0020】加えて、各ピークの周波数の間隔のうちで
最も小さい周波数間隔が、f1とf2の最大公約数であ
ることが好ましい。
【0021】加えて、前記f1、f2の周波数範囲は、
30MHz以上250MHz以下であることがさらに好
ましい。
【0022】加えて、f1、f2の周波数は、f2<f
1としたとき、0.5<f2/f1≦0.9の関係式を満
たすことが好ましい。
【0023】加えて、2つの高周波電力は、それぞれの
電力値をP1、P2としたとき、0.1≦P2/(P1+
P2)≦0.9の関係式を満たすことが好ましい。
【0024】加えて、異なる周波数を有する高周波電力
を、同一の高周波電極に同時に印加することが好まし
い。
【0025】本発明による真空処理方法は、大面積の領
域に均質な堆積膜を形成する必要がある、被処理物に電
子写真感光体を構成する堆積膜を形成する方法として好
適であり、この場合に、本発明の作用は、製品品質を向
上させるのに最大限に有効に役立つ。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明者らは上記目的を達成すべ
く鋭意検討を行った結果、まず、高周波電極に周波数の
異なる複数の高周波を供給し、それらの周波数および電
力値の関係を変化させた際に均一化効果が変化すること
を見出した。さらに、プラズマ中にアンテナを挿入し、
プラズマ中で実際に分解に寄与している高周波のスペク
トルを測定し、周波数分布やその強度を測定して調べた
ところ、測定して得られた周波数分布および強度が所定
の条件を満たすように真空処理条件や装置の最適化を行
うことで、真空処理速度の向上、真空処理特性の向上、
真空処理特性の均一性向上、真空処理の安定性向上、真
空処理コストの低減を、同時に、かつ極めて効果的に実
現可能であることを見出し、本発明を完成させるに至っ
た。
【0027】このような本発明の効果が得られるメカニ
ズムについては、現段階では明らかにはなっていない
が、おおよそ以下のような作用によるものと考えてい
る。
【0028】前述した通り、より高い周波数の高周波を
用いることで、速い堆積速度で高品質な堆積膜を形成す
ることができる。しかし、その場合、定在波の影響で品
質にムラが生じる場合がある。そこで、基準となる第1
の高周波f1に、それと異なる周波数の第2の高周波f
2を重畳することで、品質のムラを低減することができ
る。これは、一方の周波数の高周波の定在波の「ふし」
に当たる部分で、他方の周波数の高周波の定在波が振幅
をもつため、「ふし」の影響が抑制されるというよう
に、各高周波の定在波同士が、真空処理特性の不均一性
を補い合うためと考えられる。
【0029】ただし、これは非常に単純なモデルであ
り、実際にはもっと複雑な現象が起きていることは言う
までもない。真空処理特性の均一性に影響を与える要因
としては、他にも、例えばプラズマの状況、電磁波の減
衰や様々な反射面での反射などの要因がある。そのた
め、特に比較的高い周波数の高周波を用いる場合には、
任意の周波数の高周波を重畳させただけでは、この不均
一性の抑制効果は必ずしも得られないことが判った。つ
まり、少なくとも、外部から供給する高周波の周波数を
特定の範囲内に設定することが、不均一性の抑制効果を
得るための必要条件である。
【0030】具体的には、堆積速度の観点から、供給す
る高周波の周波数f1、f2は、下限として、10MH
z以上、より好ましくは30MHz以上の範囲とするこ
とが望ましい。一方、供給する高周波の周波数が250
MHzよりも大きいと、電力の進行方向での減衰が顕著
となり、異なる周波数の高周波電力間の減衰率のずれが
顕著となってしまい、十分な均一化効果が得られなくな
ってしまう。このため、高周波電力同士の重畳効果を有
効に得る観点から、供給する高周波の周波数は、その上
限を250MHzとすることが好ましい。以上の周波数
範囲の条件が、まず不均一性抑制効果を得るために望ま
しい必要条件として挙げられる。
【0031】加えて、プラズマ中にアンテナを挿入し、
スペクトラムアナライザーによって測定した電力強度の
周波数スペクトルのピークが特定の分布を持っている場
合に、より良好な不均一性抑制効果が得られる。具体的
には、スペクトラムアナライザーによって検出される周
波数スペクトルに現れるピークには、供給される高周波
の周波数f1、f2に相当するピークが観測されるほ
か、その他にも様々なピークが観測される。これらのピ
ークのうち、特に、f1、f2に相当するピーク以外の
ピークのうちで最大の強度を持つピークが、f1または
f2に相当するピークのうちで低い方のピーク強度に対
して、−30dB以上、−3dB以下の強度を持つ場
合、極めて高いレベルで真空処理特性の均一性を向上さ
せることができる。
【0032】このメカニズムに関しては、現時点では明
らかになっていないが、上記のようなピークが得られる
場合には、周波数f1の高周波や周波数f2の高周波な
ど、電源から供給される高周波(以後、基本波と記す)
のプラズマに対する様々な作用が、複数の基本波の間で
絶妙なバランスになっているのではないかと考えてい
る。このようなバランスは、装置と複数の基本波とが特
定の関係となるように設定することで得られる。
【0033】この特定の関係とは、マッチング回路を用
いたインピーダンス整合とは異なった考え方に基づいて
いる。通常インピーダンス整合とは、電源への反射電力
を低減するなど、マッチング回路を含む系全体で電源と
整合を取ることである。しかしこのようなインピーダン
ス整合を行い、仮に電源への反射電力を最小またはゼロ
にしたとしても、マッチング回路より反応容器側の装置
において、高周波がどのようにプラズマに作用するのか
ということに関しては厳密に決めることはできない。そ
こで、複数の基本波のプラズマへの作用の仕方(例えば
ガス分解とバイアス効果への作用の割合)を、複数の基
本波の間でちぐはぐにならないように、最適な組み合わ
せにすることが必要であると考えられる。
【0034】さらに詳細に説明すると、投入された高周
波電力は、ガスの分解や、プラズマの電位(バイアス)
などに作用する。この高周波電力の作用うち、仮にガス
分解とバイアスとに寄与する作用量の割合を考えると、
この割合は使用するガスの種類、反応圧力、高周波の周
波数などに依存して変化すると考えられ、複数の高周波
を印加する場合には、これらの割合が高周波の周波数に
よって異なることになる。すると、複数の異なる周波数
の高周波によるバイアス分への寄与量を揃えるようにそ
れぞれの高周波の電力を調整し、異なる定在波によるバ
イアスのかかり具合を平均化して真空処理特性の均一化
を図ったとしても、ガス分解の仕方が複数の高周波毎に
異なってしまい、結局は真空処理特性に不均一性が生じ
てしまう可能性がある。このようなバランスの違いは、
投入する高周波の電力をそれぞれの周波数の高周波毎に
調整しても是正することができない。また、この違いは
単独のガス種からなるガスを処理に用いる場合には問題
のないレベルであったとしても、分解しやすさの異なる
複数のガスを混合したガスを処理に用いる場合には顕著
な問題となる可能性がある。
【0035】そこで、複数の基本波の周波数を装置毎に
最適になるように適切に選ぶか、複数の基本波の周波数
に合わせて装置を最適化したところ、例えば混合ガスを
用いて合金の膜堆積を行った場合でも膜の均一性を極め
て良好にすることができた。このように真空処理の均一
性が得られるようにした場合には、上記のような、基本
波以外のピークが特定の強度を持って現れた。この理由
としては、装置構成、高周波のパラメータ(電力、周波
数)を変化させることによって、プラズマへの高周波の
作用の仕方を制御でき、上記に挙げた各々の作用(ガス
分解とバイアス効果)量を同程度にできたためではない
かと考えている。
【0036】また、このような場合にのみ、基本波以外
のピークが特定の強度で現れることに関しては、現時点
ではその理由は不明だが、次のように予想している。プ
ラズマ中でこのような基本波以外のピークが現れる起源
は、プラズマによって基本波が歪むためであると考えら
れる。この歪みによって、複数の基本波の周波数の差に
相当する周波数など、様々な周波数でピークが発生する
が、この発生割合がバイアス効果のバランスと相関があ
り、複数の基本波のバランスが揃っている場合にこれら
のピーク強度が大きくなると考えている。よって、上記
のように基本波と装置との間で極めて良好な組み合わせ
が得られると、複数の異なる周波数の高周波の間で、バ
イアス効果への作用の割合が揃ったために、基本波以外
のピーク強度が大きくなったものと考えている。
【0037】以上のような考え方に基づけば、選ばれる
基本波の周波数や電力とその組み合わせ方法、また装置
の高周波等価回路における回路定数の変更などにより、
高周波のプラズマへの作用のバランスを最適な状態にす
ることが重要であり、その結果として基本波以外のピー
クが所定値以上の強度で現れたと考えられる。よって、
例えば特許第3008038号公報、特開平7−147
69号公報に記載されているように高調波や近接する複
数の高周波を用いても、USP6126778号公報に
記載されているように2つの周波数の高周波を合成して
うなりによる振幅制御を行う方法を用いても、装置と高
周波との適切な調整を行わなかったために本発明の効果
が得られなかったと考えることができる。
【0038】このような特定のピークの強度は、基本波
のピークのうち、強度が低い方のピークの強度に対し
て、−30dB以上検出できることが望ましく、最適に
は−20dB以上であることがより好ましい。ピーク強
度がこのようなレベルになるようにすることで、装置と
印加する複数の高周波との組み合わせが良好となり、複
数の周波数の高周波のプラズマへの作用のバランスが良
好となる。一方、ピーク強度がある程度以上大きくなる
と、特性ムラの抑制効果が十分に得られない場合がある
ことが判った。原因は定かではないが、恐らくこのピー
クの周波数において装置の固有の共振点があって強い共
振が起こっており、この共振によって基本波である、周
波数f1の高周波や周波数f2の高周波のプラズマへの
作用の仕方に影響が出てしまうためと考えられる。この
ような場合、周波数f1の高周波や周波数f2の高周波
における反射電力が増大する傾向があることも確認され
た。このような観点から、ピーク強度は、好ましくは−
3dB以下、最適には−5dB以下であることがより好
ましい。
【0039】また、基本波以外のピークのうち、最大の
ピーク強度を持つピークは、その高周波電力によって発
生するプラズマにおける高周波スペクトルの分布の様
子、すなわち放電の最適化具合を最もよく反映している
と考えられる。このピークの周波数は、f1またはf2
よりも低い方が望ましいことが判った。原因は定かでは
ないが、f1、f2のいずれよりも高い周波数のピーク
は、放電の最適化に相関しない場合があることが実験的
に明らかとなった。つまり、f1、f2のいずれよりも
高い周波数のピークが基本波以外で最大強度を持つ場
合、上記に示したものとは別のメカニズムが働いている
可能性がある。よって、f1またはf2よりも低い周波
数のピークが、f1、f2のピークを除いて最大の強度
をもつことが、本発明の効果を確実に得るためにはより
好ましい。
【0040】また、f2<f1としたときにf1−f2
に相当する周波数のピーク強度がf1、f2を除く最大
の強度を持っている場合、放電の状態が極めて良好とな
り、真空処理特性のムラがさらに低減されていることが
判った。この原因は定かではないが、f1とf2の差分
の周波数は特異的であり、このピークが大きい場合に
は、ガス分解とプラズマのバイアス成分への寄与のバラ
ンスが周波数f1の高周波と周波数f2の高周波でほと
んど一致するのではないかと考えている。このことか
ら、f1−f2に相当する周波数のピークが、f1、f
2を除く最大の強度を持つピークである場合が最も望ま
しい。
【0041】また、f1とf2に相当する周波数の間
に、−30dB以上−3dB以下の強度を持つピーク
が、5つ以下存在する場合に本発明の効果が最大限に得
られる。電力強度の周波数スペクトル上に、基本波の周
波数以外の周波数に複数のピークが生じる場合には、装
置と複数の基本波との組み合わせが極めて良好であり、
本発明の効果が最大限に得られる。ここでf1とf2と
の間に存在するピークの数は、上記の複数のピークの数
を最もよく反映しており、f1とf2の間で特定の強度
を持つピークの数が適正であれば、全体の周波数スペク
トルの分布状態も適正となることが多い。このような観
点から、f1とf2の間で特定の強度をもつピークの数
は5つ以下が望ましい。しかしこのようなピークが6つ
以上ある場合には、特性のムラの低減効果がさほど向上
しない。現時点ではこの理由は定かではないが、ピーク
の数が増えすぎると、それぞれのピーク強度は相対的に
低くなってしまい、次第に−30dBの下限に近づく。
このようにピーク強度が低下するということから、ピー
クの数が増えすぎた場合には、装置と複数の基本波との
組み合わせが良好な範囲から次第にずれてくるのではな
いかと思われる。以上のことから、ピークの数に関して
は、f1とf2の間に、−30dB以上−3dB以下の
強度を持つピークが、5つ以下存在することが最も好ま
しい。
【0042】また、さらに厳密に周波数スペクトルの分
布状態を適正化したい場合には、−30dB以上−3d
B以下の強度を持つピーク同士の周波数間隔を適切に定
めることがより好ましい。f1、f2がVHF帯とその
近傍の周波数であることから、特定の強度を持つピーク
の周波数間隔が10MHz以下であると、ピークの数は
非常に多くなる場合が多く、前述したように特性ムラ低
減の効果が向上しない。逆にこのような特定の強度を持
つピーク同士の周波数間隔が広くなりすぎると、具体的
にはf1−f2より大きくなると、ピークの数が少なく
なり過ぎることとなり、プラズマの状態としてはさらに
最適化が可能な状態であると考えられる。以上のことか
ら、f1とf2を除いて−30dB以上で−3dB以下
の強度を持つピークの周波数間隔が、10MHzより大
きくf1−f2以下であることが最も好ましく、この場
合にピークの数も適正になる。
【0043】またさらに、上記のような周波数間隔が、
f1とf2との最大公約数である場合に本発明の効果が
最大限に得られる。上記の例では、例えば特定の強度以
下の多数のピークが存在する場合も含んでいるが、最も
望ましくは、特定の強度を持ったピークのみが存在し、
その他に特定の強度以下の弱いピークが全くない状態
が、基本波のプラズマ中の作用がバランスするため好ま
しい。ところで、ピークの発生過程を考えると、最も狭
いピーク間隔はf1とf2の周波数の最大公約数とな
る。つまり、前述したようなピークの発生起源を考える
と、f1とf2の最大公約数以下の周波数間隔でピーク
が出現することは導けず、これよりも低い間隔のピーク
はノイズなどの不必要な周波数成分である可能性が高い
ことがわかった。このことから、特定の強度を持つピー
ク同士の間隔が、最大公約数に一致する場合には、特定
の強度以下のピーク(多くはノイズ成分であると思われ
る)を持たないことになり、プラズマ中での基本波の作
用のバランスが最も良好であることを示していると考え
られる。
【0044】このように周波数スペクトルのピークの状
態を適正な範囲に調整することは、放電条件の調整、装
置構成の調整によって行うことができる。具体的には、
複数の高周波の周波数が、装置のもつ様々な特性(例え
ば固有インピーダンス)と一定の関係を持つように周波
数を最適化することでピークの状態の調整を行うことが
できる。また逆に、装置の高周波等価回路が持つ回路定
数を変化させて、印加する高周波の周波数に応じて、ピ
ークの状態が適正になるように装置を最適化してもよ
い。装置の高周波等価回路がもつ回路定数を変化させる
ことは、例えば、高周波を印加する電極の位置関係(電
極間距離など)の変更、電極の長さまたは幅または径の
変更、電極先端または電力供給端などの部分のインピー
ダンスの変更(例えばコンデンサまたはキャパシタンス
成分が大きい部材の挿入、先端のアース接地など)、真
空容器の大きさ(高さ、幅または径)の変更などを適宜
行うことによって実施可能である。また、周波数の調整
と回路定数の調整を組み合わせて行ってもよい。加え
て、印加する高周波のパワーバランスや反応容器内の圧
力を変化させると放電状態が変化するために、これらの
放電に関わるパラメータも、周波数スペクトルのピーク
の状態の調整に無関係ではない。これらは非常に複雑に
関係し合っており、装置によって微妙に異なるために一
概にどの部分をどのように変化させればよいとは言えな
いが、周波数スペクトルを観測しながらこれらの条件や
部材の微調整をすれば本発明の効果が得られる。
【0045】また、本発明においては、供給する高周波
の周波数をf1とf2としたとき、f1、f2の周波数
の関係に関し、その周波数の比であるf2/f1が、
0.5より大きく、0.9以下であることがより望まし
い。周波数f1とf2とが1桁以上も異なると、場合に
よっては各周波数の高周波による原料ガスの分解の仕方
が異なることがあり、生成される活性種の種類、比率が
異なってしまうことがある。この結果、活性種の種類、
比率に空間的な分布が生じてしまうことがあり、最悪の
場合、真空処理特性に不均一化をもたらしてしまう場合
があるため、注意が必要である。
【0046】また、供給する高周波f1、f2の電力を
P1、P2としたとき、P1、P2の関係に関しては、
全体の投入電力に対する個々の高周波の電力の割合であ
るP2/(P1+P2)が、0.1以上0.9以下であるこ
とがより望ましい。これは実験的事実から、いずれの高
周波の電力も全体の投入電力に対して10%以上の範囲
とすることで定在波を抑制する効果が最も良好に得られ
るためである。
【0047】また、本発明においては、真空処理容器中
への高周波電力の供給は、同一の高周波電極から行うこ
とが望ましい。各々異なった周波数の高周波電力を各々
別の高周波電極から供給した場合、高周波電極上では電
極毎に供給高周波電力の周波数に依存した波長の定在波
が生じやすい。この結果、高周波電極近傍のプラズマ特
性は、この定在波に応じた分布形状を持ちやすく、生成
活性種の種類・比率や、イオンのエネルギーが位置によ
って異なってしまうため、高周波電極に対応した反応容
器壁面に付着する膜の構造が高周波電極上の位置に依存
して異なってしまう場合がある。このため、膜構造その
もの、または近傍の膜との内部応力の違いに起因して、
付着膜が剥がれやすい部分が生じやすく、剥がれた膜が
被処理物上に付着しやすくなる。このような付着物は、
膜の異常成長を引き起こしやすく、例えば電子写真感光
体を作成する場合であれば、このような異常成長は画像
欠陥として顕在化する場合がある。このような問題を回
避するために、本発明では周波数の異なる複数の高周波
電力は同一の電極に供給した方が望ましい。このように
することにより、電極上においても定在波は抑制され、
上述したような問題の発生を効果的に抑制できる。
【0048】また、本発明の真空処理方法は、被処理物
の表面に電子写真感光体を形成する方法として、非常に
有用である。電子写真感光体の形成においては、大面積
の、その全領域にわたって均一な特性の堆積膜を形成す
る必要があり、本発明による真空処理特性を均一化する
効果が最大限に生かされる。
【0049】また、電子写真感光体では、構造欠陥が生
じた場合、他のデバイスのように、構造欠陥の存在する
部分のみを不良として扱い、他の部分は良品として扱う
といったことができず、大面積にわたって形成した全体
の堆積膜が不良となってしまう。このため、電子写真感
光体形成においては、構造欠陥が生じた際にコストへ与
える影響が非常に大きく、堆積膜の全領域にわたって構
造欠陥を生じさせないようにする必要がある。その一方
で、電子写真感光体形成では一般的に数十μmもの厚さ
の堆積膜形成を行うため、真空処理容器壁面への膜付着
も多くなり、壁面に付着した膜に膜剥がれが生じやす
い。これに対して本発明によれば、構造欠陥をも効果的
に抑制でき、したがって電子写真感光体の生産コストを
低減させる上で本発明の真空処理方法を用いることは極
めて効果的である。
【0050】以下、このような効果が得られる本発明の
実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本
実施形態において、プラズマ中の周波数スペクトルを計
測する方法を示す模式図であり、図1(a)は計測系の
校正を行っている様子、図1(b)は、プラズマ中のス
ペクトルを計測している様子を示している。
【0051】プラズマ中の高周波の様子を観察するため
にはアンテナ101を使用するが、アンテナ101には
周波数特性があるため、できるだけこれに依存しない形
で高周波の強度を定量化する必要がある。そこで、まず
以下のようにアンテナの周波数特性X(f)を把握す
る。まず、図1(a)に示すように、電磁波の影響を受
けない電波無響室、または建物などのない十分広い空間
において、可変周波数発振器105に接続した、既知の
周波数特性を持つアンテナ106とアンテナ101とを
距離R、具体的には例えば1mの距離だけ離して配置す
る。アンテナ101には、同軸ケーブル102を介して
電界強度計104を接続する。また、強度によってはア
ッテネータ103を介在させてもよい。このような系に
おいて、アンテナ106から放射される高周波をアンテ
ナ101を介して計測することによって、アンテナ10
1が持つ周波数特性X(f)を得ることができる。
【0052】次に、このアンテナ101をプラズマ10
7の中に挿入し、アンテナ101から必要に応じてアッ
テネータ103を介して伝達された信号をスペクトラム
アナライザー108によって解析して周波数スペクトル
を得る。得られた周波数スペクトルは、先に求めておい
たX(f)を加味し、アンテナ101の周波数特性に実
質的に依存しない形に変換する。本発明では、このよう
な測定方法および変換方法によって得られた周波数スペ
クトルから、それに現れる様々な周波数のピークの強度
を定義するものとする。
【0053】アンテナ101の構成としては、プラズマ
への影響を最小限にするために、金属からなるアンテナ
を絶縁体で覆った構造にすることが望ましい。例えば、
金属線をガラス管に封入し、真空封止可能なコネクター
などに接続して放電空間に挿入した構成にすることが好
ましい。ラングミュアプローブでも代用可能だが、金属
線が露出しているとプラズマから電流が流れ込むため、
僅かではあるがプラズマに影響を与え、あまり好ましく
ない。また、長さとしては長いほうが長波長に対する利
得が高くなり、帯域を広く取れるために望ましいが、プ
ラズマに与える影響が大きくなる。そこでアンテナ10
1の適当な長さとしては、好ましくは1mm以上10c
m以下、より好ましくは5mm以上5cm以下程度がよ
い。
【0054】図2は、基本波として100MHz(f1
とする)と60MHz(f2とする)の2つの高周波を
印加した時の、スペクトラムアナライザー108の出力
波形の一例を示している。測定時には、f1の電力値P
1、f2の電力値P2が測定レンジの中に適切に入るよ
うに、アッテネータ103の減衰量を調整した。スペク
トラムアナライザー108によって得られたピーク強度
に対し、図1(a)に示したような校正計測で得られた
周波数特性X(f)に応じた補正を行うことによって、
アンテナ101の周波数特性に実質的に依存しないピー
ク強度を得ることができる。
【0055】なお、図2(a)は、複数の基本波に対し
て、上述したように、最適な状態になるように装置の調
整を行わない場合の周波数スペクトル、図2(b)は装
置の調整を行った場合の周波数スペクトルを示してい
る。後述するように、これら2つの場合において、堆積
膜形成を行うと、図2(a)の場合に比べ、図2(b)
の場合には、特性ムラをより低減でき、特に堆積膜形成
を行う場合には、極めて良好な膜特性が得られる。
【0056】図3には、基本波として105MHz(f
1)、60MHz(f2)の2つの高周波を印加し、さ
らにこの周波数に応じて装置の最適化を行ったときのス
ペクトラムアナライザー108の出力波形の一例を示し
ている。図2と図3を比較すると、図2の場合にf1の
周波数の高周波として印加した100MHzの高周波に
対し、f1の周波数を5MHz高くした105MHzと
するだけで、得られる波形が大きく異なってくることが
判る。このことから、装置の調整と共に、f1,f2の
選択によっても、プラズマ中の周波数スペクトルが大き
く変化することが判る。
【0057】図3の場合には、ちょうど15MHzおき
に複数のピークが表れており、基本波である60MHz
と105MHzとの間に2本のピークが見られる。この
ようにf1とf2の間に複数のピークが存在する場合、
特に良好な膜特性の均一化効果が得られる。
【0058】ところで、このピークの間隔に関しては、
ピークの発生過程を考えると、最も狭いピーク間隔はf
1とf2の周波数の最大公約数となるはずである。そこ
で、f1、f2の最大公約数の値をある程度大きくする
ことにより、ピークの出現数を比較的少なくすることが
でき、このようにした場合には各々のピーク強度が小さ
くなりにくい。特に、この間隔は10MHzより大きい
ことが好ましい。このようにf1、f2として適切な関
係の周波数を選び、かつその周波数に合うように装置構
成の最適化を行うことによって、ピークの強度、出現ピ
ークの周波数の間隔を、前述したような、好ましい処理
特性が得られる望ましい値になるように調整することが
できる。これらを適切に調整することで、得られる堆積
膜の特性ムラをより一層低減することができる。
【0059】例えば図3の例であれば、それぞれのピー
クは、基本波105MHzと60MHzの差分である4
5MHz、45MHzの2倍高調波である90MHz、
基本波60MHzと45MHzの差分の15MHz、9
0MHzと15MHzの差分である75MHzというよ
うに、様々なピーク同士の組み合わせで発生していると
考えられる。このような考え方で出現ピークの起源を考
えていくと、最終的にはこれらのピーク間隔は、f1、
f2の最大公約数以下にはなりえないことが判る。そこ
で、適当な大きさの最大公約数を有するようにf1、f
2を選ぶことによって、ピークの出現数を比較的少なく
抑えることができ、それぞれのピーク強度が低下する可
能性を低くできる。
【0060】次に、図4に、本発明を適用可能な堆積膜
形成装置の模式図を示す。図4(a)はこの堆積膜形成
装置の縦断面図、図4(b)は図4(a)のA−A’線
に沿って切断した平面断面図である。この堆積膜形成装
置は、VHF帯の高周波によって原料ガスを分解してプ
ラズマを生起し、円筒状基体401の上に堆積膜を形成
して電子写真用のアモルファスシリコン感光体を製造す
るのに好適に用いることが可能な装置である。
【0061】堆積膜形成装置400は、円筒状基体40
1を内包でき、内部を減圧可能な円筒状の反応容器40
2を有している。円筒状基体401は、反応容器402
の底部から反応容器402内に延びる回転軸410に取
付けられた基体支持体406に搭載されて反応容器40
2内に保持されている。回転軸402は、円筒状の反応
容器402と同軸の、同一円周上に等間隔に複数本設け
られている。回転軸410には、ギア412を介してモ
ータ411が接続されており、回転軸410はモータ4
11の駆動力によって回転駆動可能である。
【0062】また、反応容器402内には、堆積膜の原
料ガスなどを反応容器402内に供給するためのガス導
入管403が、基体支持体406の配置円と同軸でそれ
より外側に位置する円周上に等間隔に複数本設けられて
いる。ガス導入管403は、反応容器402内に原料ガ
スを供給する不図示のガス供給および流量調整手段に接
続されている。反応容器402の底部の中央には、反応
容器402内を排気して減圧することができる不図示の
排気手段、および反応容器402内の圧力を所定の値に
調整するための不図示の排気コンダクタンス制御手段に
接続された排気配管407が接続されている。
【0063】反応容器402の外側には、原料ガスを分
解するための高周波電力を供給する、金属の棒からなる
カソード電極(高周波電極)404が、反応容器402
と同軸の同一円周上に等間隔に複数本設けられている。
カソード電極404は、給電点に印加される電力を複数
のカソード電極404に分岐させる電力分岐部413を
介して、所定の高周波電力を供給する高周波電力供給装
置405に接続されている。高周波電力供給装置405
は、所定の高周波電力を発生する高周波電源408、4
17と、そのそれぞれに接続された、発生した電力を調
整するマッチングボックス409,418を有してい
る。
【0064】カソード電極404から放出される高周波
電力を反応容器402の内側に効率良く導入するため
に、反応容器402の側壁には誘電体であるセラミック
スが用いられている。反応容器402の側壁に用いる具
体的なセラミックス材料としては、アルミナ、二酸化チ
タン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コー
ジェライト、ジルコン-コージェライト、酸化珪素、酸
化ベリリウムマイカ系セラミックスなどが挙げられる。
これらのうち、真空処理時の不純物混入抑制、耐熱性な
どの観点から、特にアルミナ、窒化アルミニウム、窒化
ホウ素を用いることが好ましい。
【0065】カソード電極402の外側には、その配置
円と同軸の円筒状の、実質的に電磁波を閉じ込めるシー
ルド415が設けられている。シールド415は、電力
分岐板413も内包している。
【0066】なお、回転軸410は、図4に示す例では
6本配置されているが、本数は、反応容器402と円筒
状基体401の径に応じて相応に設定可能である。同様
に、ガス導入管403、カソード電極404に関して
も、図4に示す例ではそれぞれ6本ずつ配置されている
が、これらの本数は、それぞれガス、高周波電力を均等
に供給することが可能であれば、任意に設定してもよ
く、また、それぞれの配置に関しても任意に設定しても
よい。また、図4に示す例では、高周波電力供給装置4
05は2つの高周波電源408,417を有している
が、さらに第3の高周波電源を用いて、3つの異なる周
波数の高周波電力を導入してもよいし、さらに多数の高
周波電源を用いてもよい。
【0067】また、プラズマ中に発生する高周波の周波
数スペクトルを測定するために、アンテナ420が装置
上部に設置されている。アンテナ420の設置位置は任
意で構わないが、なるべく空間的に広い部分に設置する
ことが、周囲の影響を受けにくく、好ましい。アンテナ
420は、アッテネータ421を介してスペクトラムア
ナライザー422に接続されている。アッテネータ42
1は必要に応じて用いればよく、省略しても構わない。
このアンテナ420は、常時モニターを行うために取り
付けたままにしてもよいが、装置のメンテナンス後や部
品交換後、設計の変更後など、装置の微調整が必要な時
にのみ用い、調整が終わった時点で外しても構わない。
【0068】次に、図4の装置を用いた堆積膜形成の概
略を以下に説明する。
【0069】まず、反応容器402内に円筒状基体40
1を設置し、不図示の排気装置によって排気配管407
を通して反応容器402内を排気する。続いて、不図示
のガス供給および流量制御手段から、ガス導入管403
を通し、例えば不活性ガスを所定量流しながらヒーター
(不図示)によって円筒状基体401を200℃〜30
0℃程度の所定の温度に加熱・制御する。
【0070】円筒状基体401が所定の温度となったと
ころで、不図示のガス供給および流量調整手段からガス
導入管403を通し、反応容器402内に原料ガスを所
定の流量で導入する。その後、不図示の排気手段および
排気コンダクタンス制御手段を用いて、反応容器402
内の圧力が0.05〜20Paの間、好適には0.1〜1
0Paの間の所定の圧力になるように内圧を調整する。
反応容器402内の圧力が安定したのを確認した後、高
周波電源408、417よりマッチングボックス40
9、418を介してカソード電極404へ高周波電力を
供給する。この際、2つのマッチングボックスを同時に
調整して、2つの高周波電源への反射電力が最小となる
ように調整する。
【0071】これによって、反応容器402内に2つの
異なる周波数の高周波電力が導入され、グロー放電が生
起し、原料ガスは励起解離されて、円筒状基体401上
に堆積膜が形成される。堆積膜形成中、回転軸410を
介して円筒状基体401をモーター411によって所定
の速度で回転させることにより、円筒状基体401表面
全周にわたって実質的に均等に堆積膜が形成される。
【0072】所望の膜厚の堆積膜が形成された後、高周
波電力の供給を止め、続いて原料ガスの供給を停止して
堆積膜の形成を終える。同様の操作を複数回繰り返すこ
とによって、所望の多層構造の光受容層を形成できる。
【0073】本実施形態においては、高周波電源40
8,417には、前述のように、それぞれの周波数f
1,f2が10〜250MHzの間の、異なる値の高周
波を発生させる。真空処理を行う際に、アンテナ420
とスペクトラムアナライザー422とによって得られる
周波数スペクトルに、f1,f2に相当する周波数のピ
ーク以外で所定の強度を持つピークが得られない場合に
は、印加する複数の高周波の周波数とその組み合わせ、
堆積膜形成装置400の、高周波に対する等価回路の回
路定数の微調整を行う。
【0074】回路定数の変更に関しては、例えば棒状の
カソード電極404と反応容器402との距離を変えれ
ばよい。図5(a),(b)に、このような回路定数の
微調整を行うことを可能にする構成例を示す。図5
(a)は、このような構成を有する堆積膜形成装置にお
ける、図4のB−B'断面図、すなわち電力分岐部41
3部分の模式的横断面図、図5(b)は模式的縦断面図
である。この構成例では、電力分岐部413は、高周波
が給電される給電点414を中央に有し、そこから放射
状にカソード電極404の本数分の分岐棒状部が延びて
いる。各分岐棒状部の先端付近には取り付け穴が開口し
ており、カソード電極404はこの取り付け穴に通され
たビス416によって固定されている。そして、このビ
ス416の取り付け穴を長方形または楕円形にしておく
ことによって、カソード電極404の固定位置を反応容
器402の径方向に微調整できるようになっている。
【0075】また、この構成例では、カソード電極40
4は、反応容器402の天井部を形成する部材を貫通し
て下方に延びており、この部材とカソード電極404が
ショートしないように、貫通部には絶縁部材428が設
けられている。そこでこの絶縁部材428にも長方形ま
たは楕円形の穴を開けておく必要がある。また、カソー
ド電極404の位置の微調整を可能にする、カソード電
極404の先端部の構成例を図6(a)に示す。図6
(a)は、図4におけるC部分の拡大断面図である。こ
の構成例では、カソード電極404は受け部材425に
よって下から支持されており、この受け部材425が、
中心から放射状に設置されたレール424の上をスライ
ドできるようになっている。なお、このカソード電極4
04の先端部分も他から絶縁する必要があり、そのため
に、このレール424には、テフロンなどの絶縁部材を
用いることが望ましい。
【0076】また回路定数を変化させる別の方法とし
て、カソード電極404の給電端部、または先端部のイ
ンダクタンス成分やキャパシタンス成分を変化させても
よい。このような構成例として、図5(c)には、電力
分岐部413とカソード電極404との間に、セラミッ
クコンデンサなどの分岐部コンデンサ423を挿入し
て、カソード電極404の給電端部のキャパシタンス成
分を変化させた例を示している。
【0077】また、図6(b)には、カソード電極40
4の先端部を金属板426を用いてアースに接続してイ
ンダクタンス成分を変化させた例を示している。この金
属板426は、長さ、幅はもちろん、曲げ方などがイン
ダクタンスに微妙に影響を及ぼすため、できれば形状が
変化しない剛性の大きい金属を用いることが好ましい。
また、カソード電極404の先端を接地する構成とし
て、例えば受け部材425、レール424を金属から構
成してもよい。また、図6(c)には、カソード電極4
04と受け部材425との間に、カソード先端コンデン
サ423を挿入して、カソード電極404の先端部のキ
ャパシタンス成分を変化させた例を示している。
【0078】以上のような調整を適宜組み合わせて行う
ことによって、堆積膜形成装置400の高周波等価回路
が有する固有の回路定数をある程度の幅で変化させるこ
とが可能である。一方、回路定数を大きく変えたいとき
には、反応容器402の径、長さ、シールド415の
径、カソード電極404の長さなどを変えてもよい。こ
のような装置構成の変更は、前述した調整で周波数スペ
クトルのピークが所望の値に到達しない場合に、必要に
応じて適宜行えばよい。
【0079】
【実施例】以下、本発明の構成を得るために行った実験
例、および本発明に従った堆積膜形成を行って電子写真
感光体を作成した例を示す実施例について説明する。な
お、本発明はこれら実験例および実施例によって何ら限
定されるものではない。
【0080】(実験例1)図4に示すような構成の堆積
膜形成装置を用い、表1に示す条件で放電実験を行い、
周波数スペクトルを用いた装置最適化を行った。本実験
例では、カソード電極404と反応容器402の距離を
変化させて放電実験を行い、装置の最適化を試みた。
【0081】
【表1】
【0082】装置としては、回転軸410が同一円周上
に等間隔に6本配置された構成とし、各回転軸410上
に、被処理物として80mmφ、厚さ5mm、長さ35
8mmのAlシリンダーである円筒状基体401を配置
した。ガス導入管403については、Alシリンダーの
配置円の外側の同心円上に6本配置した。反応容器40
2としては、アルミナからなる円筒部を、底板と天板で
真空封止した構造とした。カソード電極404として
は、直径10mm、長さ500mmのステンレス製金属
棒を用いた。高周波電源408、417としては、それ
ぞれ、周波数100MHz(f1)、60MHz(f
2)の高周波を発生するものを用いた。またアンテナ4
20としては、長さ5cm、直径1mmφのタングステ
ン線をガラス管に封入した構造のものを用い、これを真
空封止可能なコネクターを用いて反応容器402内に挿
入し、外部に信号を取り出すことが可能な構成とした。
【0083】本実験例では、まず、表1に示した条件で
放電を生起し、アンテナ420を用いてプラズマ中の周
波数スペクトルを観測した。すなわち、排気配管407
を介して反応容器402内を排気したのち、ガス導入管
403から反応容器402中に、表1に示したように、
SiH4ガスとHeガスを供給し、所定の圧力になるよ
うに不図示の排気コンダクタンス制御手段を用いて内圧
を調整した。続いて、2つの高周波電源408,417
からそれぞれ、周波数100MHz、60MHzの高周
波を500W(P1,P2)ずつ供給し、マッチングボ
ックス409、418を調整して放電を開始した。
【0084】そして、アンテナ420、アッテネータ4
21を介してスペクトラムアナライザー422によって
周波数スペクトルを得た。得られた特性は、図2(a)
に示すような結果となった。この結果では、基本波であ
る100MHzと60MHzのピーク強度を比べると6
0MHzのピーク強度の方が低い。そして、これらを除
いた最大の強度を持つピークの強度は、低い方の60M
Hzのピーク強度に対し、アンテナ420の周波数特性
に応じた補正を行った後でも−37dBであった。
【0085】次に、カソード電極404と反応容器40
2との距離を、基準となる、調整前の20mmである場
合に加え、10mm、15mm、25mm、30mmと
4通りの距離にした場合について放電実験を行い、それ
ぞれの放電実験で得られた周波数スペクトルを比較し
た。結果、距離を25mmとした場合に、基本波以外で
最大のピークの強度がより強くなった。次に、25mm
の位置を基準としてカソード電極404をさらに前後に
1mm刻みで動かして放電実験を行った場合の周波数ス
ペクトルを観察したところ、最終的に23mmの時に、
40MHzのピークの強度が最大となった。得られた波
形は図2(b)のような波形であり、アンテナ420の
周波数特性に応じた補正後の値で、最大ピークである4
0MHzのピーク強度が−11dBであり、その他2
0、80、120MHzのピークが−30dB以上の値
であった。
【0086】次に、カソード電極404と反応容器40
2とをそれぞれの距離にした状態で、a−Si膜の堆積
を行い、得られた膜の特性ムラを評価した。この際の堆
積膜形成は概略以下のように行った。
【0087】まず、被処理基板として、25.4×38.
1mmの研磨ガラス(コーニング社製、#7059)か
らなるガラス基板を用い、この基板10枚を円筒形支持
体(外径80mmφ、厚さ5mm、長さ358mmのア
ルミ製円筒であり、基板の幅で面取りしてあるもの)の
上に軸方向に並べ、ステンレス製の押さえ金具で固定
し、これと基体支持体406とを組み合わせて反応容器
402内に設置した。
【0088】次に、排気配管407を介して反応容器4
02内を排気した。続いて、ガス導入管403から反応
容器402中に500ml/min(normal)でArを
供給しながら、不図示の発熱体によってガラス基板表面
が200℃になるように加熱・制御を行った。次いで、
Arの供給を停止し、反応容器402内を排気配管40
7を介して排気したあと、表1に示した堆積膜形成条件
でa−Si:Hからなる堆積膜を1μm程度堆積させ
た。
【0089】堆積膜形成後、反応容器402内をArに
よってパージしたあと、N2ガスを用いてリークを行い
堆積膜を取り出した。その後、この堆積膜の上に、櫛形
のマスクを載せ、通常の真空蒸着法によってCrを10
00Å堆積させ、ギャップ幅250μm、展開時の長さ
5cmの櫛形電極を堆積膜表面に形成した。
【0090】次に、作成した堆積膜の光感度を評価し
た。ここで光感度としては、明導電率σpと暗導電率σ
dとを用いて以下のように定義したものを評価の基準に
用いた。
【0091】まず、明導電率σpは、1mW/cm2
強度のHe−Neレーザー(波長632.8nm)を照
射したときの導電率とし、暗導電率σdは光を照射しな
いときの導電率とする。このとき、光感度はこれらの比
によって表されるが、導電率の値は数桁の単位で変化す
る場合もあり、単純に比較しにくいため、 光感度=log(σp/σd) と定義する。この光感度の値は、それが大きいほど堆積
膜特性が良好であることを示す。
【0092】このような測定を10枚の基板について行
うことによって、カソード電極404の長尺方向の堆積
膜の均一性を評価することができる。10枚の基板の測
定値のうち、最も光感度が高かったものと低かったもの
との比を、光感度の長尺方向の特性ムラとして評価し
た。
【0093】得られた評価結果を表2に示す。なお、表
2では、装置の調整をしていない場合の特性ムラの値を
1とし、相対評価を行っている。値が1より小さい場合
にはムラが少ないことを示している。
【0094】
【表2】
【0095】表2から、カソード電極404と反応容器
402との距離を23mmとする装置の最適化を行った
場合に、特性ムラを最も小さく抑えることができ、最適
化を行わない場合に比べて、特性ムラを30%以上低減
できたことが判る。
【0096】以上の結果から、f1、f2を除いたピー
クのうち、ピーク強度がf1、f2の低い方のピーク強
度に比べて−30dB以上になるようにすることが、膜
特性のムラを改善するのに望ましいことが確かめられ
た。
【0097】(実験例2)図4に示す堆積膜形成装置と
同型の装置を用い、表3に示す条件で放電実験を行い、
周波数スペクトルを用いた装置最適化を行った。本実験
例では、高周波電源408、417の発生電力の周波数
を順次取り替え、様々な周波数の高周波を組み合わせて
放電実験を行って、高周波の周波数の適切な組み合わせ
について検討した。
【0098】
【表3】
【0099】装置としては、回転軸410が同一円周上
に等間隔に10本配置された構成とし、各回転軸410
上に、被処理物として30mmφのAlシリンダーであ
る円筒状基体401を配置した。ガス導入管403につ
いては、Alシリンダーの配置円の外側の同心円上に5
本配置した。反応容器402としては、アルミナからな
る円筒部を、底板と天板で真空封止した構造とした。カ
ソード電極404としては、直径15mm、長さ550
mmのステンレス製金属棒を5本用いた。カソード電極
404と反応容器402との距離は3cmである。ま
た、全ての電極先端において、図6(c)に示すよう
に、カソード先端コンデンサ427として、30pFの
セラミックコンデンサを挿入した構成とした。またアン
テナ420としては、長さ5cm、直径1mmφのタン
グステン線をガラス管に封入した構造のものを用い、こ
れを真空封止可能なコネクターを用いて反応容器402
内に挿入し、外部に信号を取り出すことが可能な構成と
した。
【0100】本実験例では、まず、高周波の周波数の組
み合わせを変えたそれぞれの場合において、表3に示し
た条件で放電を生起し、アンテナを用いてプラズマ中の
周波数スペクトルを観測した。その後、実験例1のよう
な、カソード電極404と反応容器402との距離の調
整や、図6(b)、図6(c)に示したような構成を用
いた、カソード電極404先端のインピーダンス調整を
行い、高周波の周波数の組み合わせを変えたそれぞれの
場合ごとに、基本波以外で最大のピークの強度が最大に
なるように装置の最適化を行った。
【0101】高周波の周波数の組み合わせを変えたそれ
ぞれの場合において装置の最適化を行った後、表3に示
した条件で、各場合において実験例1と同様の方法でa
−SiC:H膜の堆積を行い、得られた膜の特性ムラを
評価した。結果を表4に示す。なお評価は、装置の初期
状態(カソード電極404と反応容器402との距離3
cm、カソード先端コンデンサ427の容量30pF)
を基準として、各場合ごとに特性ムラの向上の割合を示
している。また、堆積速度に関しては各基板の中央で測
定し、軸方向の全平均を取り、Aの場合を1として相対
的に示している。
【0102】
【表4】
【0103】表4の結果から、組み合わせて供給する高
周波の周波数が本発明の周波数範囲を逸脱している場合
には、速い堆積速度で特性ムラを低減して堆積膜を形成
するという、本発明の効果が得られにくいことが判っ
た。すなわち、f2が10MHzよりも小さいAの場合
には、特性ムラを低減する効果は得られているものの、
膜の堆積速度が他の場合に比べてかなり低く、堆積速度
の点で実用的には好ましくない。また、Bの場合につい
ては、堆積速度はより速くなっており、C〜Eでは更に
堆積速度が速くなっており、より好ましい。。一方、f
1が250MHzよりも高いFの場合には、装置の最適
化を行っても、特性ムラを低減する効果はあまり得られ
なかった。これは、プラズマ中に生じる高周波のバラン
スを向上させても、供給する高周波の減衰率のずれの影
響が出始めるために、定在波の組み合わせによる高周波
電界の均一化が十分に図れていないためと思われる。
【0104】以上の結果から、高速堆積と本発明の目的
である特性ムラ低減とを両立するためには、f1、f2
を共に10MHz以上250MHz以下とすることが好
ましく、更には30MHz以上250MHz以下とする
ことがより好ましいことが判った。
【0105】(実験例3)図4に示す堆積膜形成装置と
同型の装置を用い、表5に示す条件で放電実験を行い、
周波数スペクトルを用いた装置最適化を行った。
【0106】
【表5】
【0107】装置としては、回転軸410が同一円周上
に等間隔に4本配置された構成とし、各回転軸410上
に、被処理物として80mmφのAlシリンダーである
円筒状基体401を配置した。ガス導入管403につい
ては、Alシリンダーの配置円の外側の同心円上に4本
配置した。反応容器402としては、アルミナからなる
円筒部を、底板と天板で真空封止した構造とした。カソ
ード電極404としては、直径20mm、長さ530m
mのステンレス製金属棒を4本用いた。カソード電極4
04と反応容器402との距離は4cmである。また、
全ての電極上部(電力分岐直後)において、図5(c)
に示すように、分岐部コンデンサ423として、50p
Fのセラミックコンデンサを挿入した構成とした。高周
波電源408、417はそれぞれ、周波数80MHz
(f1)、50MHz(f2)の高周波を発生するもの
を用いた。またアンテナ420としては、長さ5cm、
直径1mmφのタングステン線をガラス管に封入した構
造のものを用い、これを真空封止可能なコネクターを用
いて反応容器402内に挿入し、外部に信号を取り出す
ことが可能な構成とした。
【0108】本実験例では、まず、表5に示した条件で
放電を生起し、アンテナ420を用いてプラズマ中の周
波数スペクトルを観測した。アンテナ420、アッテネ
ータ421を介してスペクトラムアナライザー422に
よって得られた周波数スペクトルでは、基本波である8
0MHzと50MHzのピーク強度を比べると50MH
zのピーク強度の方が低かった。また、これらを除いた
最大の強度を持つピークの強度は、低い方の50MHz
のピーク強度に対し、アンテナ420の周波数特性に応
じた補正を行った後での値で−43dBであった。
【0109】次に、カソード電極404の先端に取り付
けたセラミックコンデンサの容量を、30pF、40p
F、60pF、70pFと4通りに変えた場合について
放電実験を行い、得られた周波数スペクトルをそれぞれ
比較した。この結果、コンデンサ容量を30pFとした
場合には、基本波以外では30MHzのピーク(80M
Hz−50MHz)の強度が最大となり、アンテナ42
0の周波数特性に応じた補正後の値で−22dBとなっ
た。一方、コンデンサ容量を70pFとした場合には、
30MHzのピークの強度は補正後の値で−35dBで
あったが、この場合、基本波以外で最大のピークは10
0MHzのピークであり、このピークの強度は補正後の
値で−13dBであった。
【0110】次に表5に示した条件で、実験例1と同様
にa−Si膜の堆積を行い、得られた膜の特性ムラを評
価した。膜堆積の特性ムラの評価は、装置の最適化を行
わなかった場合(コンデンサ容量が50pFの場合)、
基本波以外で最大のピークがf1−f2の周波数(30
MHz)の場合(コンデンサ容量が30pFの場合)、
基本波以外で最大のピークがf1、f2よりも高い周波
数(100MHz)の場合(コンデンサ容量が70pF
の場合)の3通りの場合について比較した。結果を表6
に示す。
【0111】
【表6】
【0112】表6の結果から、基本波以外で最大のピー
クの強度が本発明の範囲に入っている、コンデンサ容量
を30pF、70pFとした場合について、特性ムラを
抑制する効果が得られた。なかでも、基本波以外で最大
のピークの周波数が、基本波の周波数f1、f2の差の
周波数となる、コンデンサ容量を30pFとした場合に
おいて、特性ムラをより低減することができた。
【0113】この結果から、基本波以外で最大のピーク
の周波数が基本波の周波数f1またはf2よりも低い周
波数になるようにすることによって、特に、周波数f
1、f2の差の周波数となるようにすることによって、
特性ムラを比較的大きく低減することができることを確
認できた。
【0114】(実験例4)実験例2で用いた堆積膜形成
装置を引き続き用い、実施例3において、基本波以外で
最大のピークの周波数がf1−f2となった30pFの
コンデンサを用いた場合を出発点とし、実験例1と同様
にカソード電極404と反応容器402との距離の調整
を行った。
【0115】調整前の初期状態での距離である4cmを
基準とし、1mm間隔で距離を近づける方向にカソード
電極404を動かして周波数スペクトルを測定したとこ
ろ、3mm、4mm、6mmと動かした場合に、f1−
f2の周波数のピーク強度がそれぞれ−12dB、−5
dB、0dBとなった。
【0116】次にそれぞれの場合において、表5に示し
た条件でa−Si膜を堆積させ、特性ムラの評価を行っ
た。特性ムラの評価は、実験例3において基準とした、
最適化を行う前の状態(コンデンサ容量50pF、距離
4cm)での特性ムラを基準とした比較によって行っ
た。得られた結果を表7に示す。
【0117】
【表7】
【0118】表7の結果から、基本波以外のピーク強
度、特にこの例ではf1−f2の周波数のピーク強度を
より大きくするように装置の調整を行うことによって、
特性ムラがより低減されることがわかる。しかし、調整
のように、この基本波以外のピーク強度が、基本波の
うちで強度の低いピークの強度と同一の強度を持つ場
合、特性ムラは装置の調整を行う前に比べて低減されな
いことが判った。この結果は、基本波以外のピーク強度
が−3dBより大きくなってしまうと、特性ムラの低減
効果が得られない場合があり、その理由として、基本波
以外のピーク強度が大きすぎると、装置と基本波との組
み合わせの最適化という点では望ましくないとした本発
明における検討結果を裏付けている。加えてこのような
場合、膜堆積中に50MHzの高周波電源417におい
て反射電力の値がかなり大きくなっており、基本波であ
る50MHzの高周波に関してマッチングが合いにくく
なったと考えられる。これは装置と周波数との組み合わ
せの調整が良好でないことを示す傍証であると考えられ
る。
【0119】以上のことから、基本波以外のピーク強度
が、基本波の低い方のピーク強度に対して−3dB以下
の範囲となるように装置を調整することによって、本発
明の効果が有効に得られることが判った。
【0120】《実施例1》図4に示すような構成の堆積
膜形成装置を用い、円筒状基体401として直径80m
m、長さ358mmのアルミシリンダーを用い、多層構
成の電子写真用感光体を作成した。
【0121】円筒状基体401を回転軸410が同一円
周上に等間隔に4本配置された構成の装置の各回転軸4
10上に配置し、回転軸410により回転させながら膜
堆積を行った。カソード電極404には直径20mmの
SUS製の棒を用い、反応容器402との距離を3cm
とし、同一円周上に等間隔に4本、各カソード電極40
4が、円筒状基体401の配置位置に対して、隣り合う
2つの円筒状基体401の中間の角度位置に位置するよ
うに配置した。
【0122】原料ガス導入管403は、内径10mm、
外径13mmのアルミナ製パイプで、端部が封止された
構造とし、パイプ上に設けられた直径0.8mmのガス
噴出口より原料ガス供給を行う構造のものを用いた。ガ
ス導入管403の設置位置は円筒状基体の配置円の外側
で、該配置円に関する同心円の円周上に等間隔に4本配
置されており、各ガス導入管403が、円筒状基体40
1の配置位置に対して、隣り合う2つのカソード電極4
04の中間の角度位置に位置するように配置した。原料
ガス導入管403はブラスト加工によって表面を粗し、
膜剥がれがおきにくくなるようにした。
【0123】膜形成を行うに前に、まず、放電条件の最
適化を行うために、ダミーであるアルミニウムシリンダ
ーを各回転軸410上に設置した。そして、Arガスを
500ml/min(normal)の流量で流し、排気コン
ダクタンスを調整して反応容器402の内圧を0.7P
aとした。この状態で、高周波電源408,417から
80MHzと60MHzの高周波をそれぞれ500Wず
つ供給してプラズマを生起し、アンテナ420を用いて
プラズマ中の周波数スペクトルを観測する。アンテナ4
20としては、長さ5cm、直径1mmφのタングステ
ン線をガラス管に封入した構造のものを用い、これを真
空封止可能なコネクターを用いて反応容器402内に挿
入し、外部に信号を取り出すことが可能な構成とした。
【0124】得られた周波数スペクトルでは、最大ピー
クの周波数が一方の基本波の周波数である80MHzで
あり、もう一つの基本波の周波数である60MHzのピ
ーク強度がやや小さく、2つの基本波を除く最大のピー
ク強度は40MHzの周波数での−33dB(補正後、
対60MHzピーク強度)であった。次に実験例で示し
たように、カソード電極404と反応容器402との距
離、電力分岐後やカソード電極404先端の容量などを
変化させることによって、最終的に20MHzのピーク
が最大で、補正後のピーク強度が−11dBとなるよう
にした。
【0125】このような放電条件の最適化を行った後、
ダミーのアルミシリンダーを取り出し、新しいアルミシ
リンダーに取り替え、表8に示す条件で電荷注入阻止
層、光導電層、表面層を形成して電子写真用感光体を作
成した。
【0126】
【表8】
【0127】得られたa−Si感光体を、キヤノン社製
複写機Image Runner 5000(商品名)を改造したも
のにセットし、画像上の濃度ムラ、光メモリーの有無と
その軸方向位置依存性を調べた。
【0128】画像濃度ムラは、まず現像器位置での暗部
電位が所定の値となるように主帯電器電流を調整したあ
と、原稿として反射濃度0.1以下の所定の白紙を用い
て露光を行った時に、現像器位置での明部電位が所定の
値となるように像露光強度を調整した。次いでキヤノン
社製中間調チャート(部品番号:FY9-9042)を原
稿台に置き、コピーを行って得られたコピー画像上の全
領域における反射濃度を評価した。
【0129】結果、80MHzの高周波電源や60MH
zの高周波電源を単独で用いて電子写真感光体を作成し
た場合に生じることが予想される「定在波の節位置」に
おいても、特性劣化もなく、画像濃度ムラはきわめて少
ないことが判った。
【0130】次に光メモリーについて調べた。まず現像
器位置における暗部電位が所定の値となるよう、主帯電
器を調整した後、所定の白紙を原稿として用いて露光を
行った際の明部電位が所定の値となるよう、像露光強度
を調整した。この状態でキヤノン社製ゴーストチャート
(部品番号:FY9-9040)に反射濃度1.1、直径
5mmの黒丸を感光体の母線方向に相当する方向に10
mm間隔で貼り付けたものを原稿台に置き、その上にキ
ヤノン社製中間調チャートを重ねておいてコピーを行っ
た。この際のコピー画像において、中間調コピー上に認
められる、ゴーストチャートに相当する直径5mmの黒
丸の反射濃度と中間調の反射濃度との差を測定すること
により評価を行った。
【0131】結果、画像濃度ムラと同じく、高周波電源
を単独で用いた場合に「定在波の節」による影響が生じ
ると予想される位置においても、特性劣化に起因する光
メモリーの増大は観測されず、全体として光メモリーが
低減されていることが判った。また、得られた画像には
画像欠陥が観測されなかった。これは反応容器全体にわ
たって膜剥がれが抑制されたためであると考えられる。
【0132】以上のように、本実施例で作成した感光体
は極めて良好な画像特性をもつ感光体であることが確か
められた。
【0133】《実施例2》実施例1で用いた装置をその
まま用い、高周波電源408,417の周波数、電力を
120MHz、400Wと80MHz、600Wに変更
した。周波数を変更したため、装置の最適化が再度必要
となる。そこでまずArガスを流しながら実施例1と同
様に放電を生起し、プラズマ中の周波数スペクトルを計
測した。
【0134】得られた周波数スペクトルでは、最大ピー
クの周波数が一方の基本波の周波数である80MHzで
あり、もう一つの基本波の周波数である120MHzの
ピーク強度がやや小さく、2つの基本波を除く最大のピ
ーク強度は40MHzの周波数での−41dB(補正
後、対120MHzピーク強度)であった。次に実験例
で示したように、カソード電極404と反応容器402
との距離、電力分岐後やカソード電極404先端の容量
などを変化させることによって、最終的に40MHzの
ピークが最大で、補正後のピーク強度が−8dBとなる
ようにした。
【0135】このような放電条件の最適化を行った後、
ダミーのアルミシリンダーを取り出し、新しいアルミシ
リンダーに取り替え、表9に示す条件で電荷注入阻止
層、光導電層、表面層を形成して電子写真用感光体を作
成した。
【0136】
【表9】
【0137】得られたa−Si感光体を、実施例1と同
様にキヤノン社製複写機Image Runner 5000(商品
名)を改造したものにセットし、コピーを行って得られ
た画像上の濃度ムラ、光メモリーの有無とその軸方向位
置依存性を調べた。
【0138】結果、120MHzの高周波電源や80M
Hzの高周波電源を単独で用いて電子写真感光体を作成
した場合に生じることが予想される「定在波の節位置」
においても、特性劣化もなく、画像濃度ムラやゴースト
もほとんどないことが判った。また、コピーを行って得
られた画像には画像欠陥が観測されなかった。これは反
応容器全体にわたって膜剥がれが抑制されたためである
と考えられる。
【0139】以上のように、本実施例で作成した感光体
は極めて良好な画像特性をもつ感光体であることが確か
められた。
【0140】《実施例3》実施例1で用いた装置を、実
施例2での調整を行った状態でそのまま用い、高周波電
源408,417の周波数、電力を105MHz、60
0Wと60MHz、400Wに変更した。周波数を変更
したため、再び装置の最適化が必要となる。そこでまず
Arガスを流しながら実施例1と同様に放電を生起し、
プラズマ中の周波数スペクトルを計測した。
【0141】得られた周波数スペクトルでは、最大ピー
クの周波数が一方の基本波の周波数である105MHz
であり、もう一つの基本波の周波数である60MHzの
ピーク強度がやや小さく、2つの基本波を除く最大のピ
ーク強度は120MHzの周波数での−28dB(補正
後、対60MHzピーク強度)であった。次に実験例で
示したように、カソード電極404と反応容器402と
の距離、電力分岐後やカソード電極404先端の容量な
どを変化させることによって、最終的に45MHzのピ
ークが最大で、補正後のピーク強度が−7dBとなるよ
うにした。
【0142】また、本実施例では、装置を最適化した後
の周波数スペクトルにおいて、基本波の周波数である6
0MHzと105MHzとの間に75MHz、90MH
zにおいてピークが得られ、その他にも15MHz間隔
で多数のピークが現れた。45MHzから150MHz
までの間に、15MHzおきに現れる全てのピークが補
正後の値で−30dBを越える強度を持っており、この
ことは、放電の調整が良好であることを示している。
【0143】このような放電条件の最適化を行った後、
ダミーのアルミシリンダーを取り出し、新しいアルミシ
リンダーに取り替え、表10に示す条件で電荷注入阻止
層、光導電層、表面層を形成して電子写真用感光体を作
成した。
【0144】
【表10】
【0145】得られたa−Si感光体を、実施例1と同
様にキヤノン社製複写機Image Runner 5000を改造
したものにセットし、コピーを行って得られた画像上の
濃度ムラ、光メモリーの有無とその軸方向位置依存性を
調べた。
【0146】結果、105MHzの高周波電源や60M
Hzの高周波電源を単独で用いて電子写真感光体を作成
した場合に生じることが予想される「定在波の節位置」
においても、特性劣化もなく、画像濃度ムラやゴースト
はほとんどないことが判った。また、コピーを行って得
られた画像には画像欠陥が観測されなかった。これは反
応容器全体にわたって膜剥がれが抑制されたためである
と考えられる。
【0147】以上のように、本実施例で作成した感光体
は極めて良好な画像特性をもつ感光体であることが確か
められた。
【0148】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、反
応容器内に少なくとも2つの異なる周波数の高周波を供
給し、プラズマを生起するプラズマCVDを用いた真空
処理方法において、プラズマ中の周波数スペクトルが適
切になるように装置や真空処理条件の調整を行うことに
よって、被処理物を大面積にわたって均一に処理するこ
とが可能な真空処理方法を提供できる。さらには、高品
質で均一性の高い大面積の堆積膜を、速い速度で堆積さ
せることができる真空処理方法を提供できる。本発明に
よれば、製品品質の向上、スループットの向上や良品率
向上による生産コスト低下を高い次元で両立することが
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるプラズマ中の周波数スペクトル
の計測方法を説明する模式図であり、図1(a)は計測
機器の校正を行っている様子、図1(b)はプラズマ内
の周波数スペクトルを計測している様子の一例を示して
いる。
【図2】本発明において計測した周波数スペクトルの一
例を示すグラフであり、図2(a)は、本発明による調
整を行う前の周波数スペクトル、図2(b)は、本発明
による調整を行った後の周波数スペクトルを示してい
る。
【図3】本発明において計測した周波数スペクトルの他
の例を示すグラフである。
【図4】本発明を適用可能な、円筒状基体に堆積膜を形
成するのに好適な、プラズマCVD法による真空処理を
行うための一例の堆積膜形成装置の模式図であり、図4
(a)は縦断面図、図4(b)は図4(a)のA−A’
線に沿って切断した平面断面図である。
【図5】図4の堆積膜形成装置の電力分岐部付近の構成
例を示す拡大図であり、図5(a)は図4(a)のB−
B’線に沿って切断した平面断面図、図5(b)は縦断
面図、図5(c)は、他の構成例の縦断面図である。
【図6】図4の堆積膜形成装置のカソード電極先端付近
の構成例を示す模式的縦断面図である。
【符号の説明】
101,106,420 アンテナ 102 同軸ケーブル 103 アッテネータ 104 電界強度計 105 可変周波数発振器 107 プラズマ 108 スペクトラムアナライザー 400 堆積膜形成装置 401 円筒状基体 402 反応容器 403 ガス導入管 404 カソード電極 405 高周波電力供給装置 406 基体支持体 407 排気配管 408,417 高周波電源 409,418 マッチングボックス 410 回転軸 411 モーター 412 ギア 413 電力分岐部 414 給電点 415 シールド 416 ビス 421 アッテネータ 422 スペクトラムアナライザー 423 分岐部コンデンサ 424 レール 425 受け部材 426 金属板 427 カソード先端コンデンサ 428 絶縁部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村山 仁 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H068 DA00 EA24 EA36 4G075 AA24 AA30 BA05 BC02 BC04 BC06 BD14 CA25 CA47 CA65 DA01 EC21 4K030 AA06 AA16 BA30 CA02 CA06 CA16 FA03 JA16 JA18 KA08 KA30 KA39 KA46 LA15 LA16 LA17

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内部を減圧可能な反応容器内に被処理物
    を設置する工程と、高周波電力を高周波電極に印加して
    前記反応容器内にプラズマを形成する工程とを有する真
    空処理方法において、 前記プラズマ形成工程では、10MHz以上250MH
    z以下の範囲で、異なる周波数を有する少なくとも2つ
    の高周波電力を供給し、これらの高周波電力のうち2つ
    の高周波電力の周波数をf1、f2としたとき、前記反
    応容器内で検出される電力強度の周波数スペクトルに
    は、f1、f2に相当する周波数以外の周波数のピーク
    が存在し、該ピークのうち最大のピークの電力強度が、
    f1、f2に相当する周波数のピークのうち低い方のピ
    ークの電力強度に対して、−30dB以上−3dB以下
    であることを特徴とする真空処理方法。
  2. 【請求項2】 前記周波数スペクトルのピークのうちで
    f1、f2に相当する周波数のピークを除いて最大の電
    力強度を持つピークの周波数が、f1またはf2よりも
    低い、請求項1に記載の真空処理方法。
  3. 【請求項3】 f2<f1としたとき、前記周波数スペ
    クトルのピークのうちf1、f2に相当する周波数のピ
    ークを除いて最大の電力強度を持つピークの周波数がf
    1−f2の周波数である、請求項1または2に記載の真
    空処理方法。
  4. 【請求項4】 前記周波数スペクトルには、前記f1、
    f2に相当する周波数のピークのうち低い方のピークの
    電力強度に対して−30dB以上の電力強度を持つピー
    クが複数存在し、かつ該電力強度を持つピークがf1と
    f2の間の周波数に5つ以下存在する、請求項1から3
    のいずれか1項に記載の真空処理方法。
  5. 【請求項5】 前記周波数スペクトルには、前記f1、
    f2に相当する周波数のピークのうち低い方のピークの
    電力強度に対して−30dB以上の電力強度を持つピー
    クが複数存在し、かつ各ピークの周波数の間隔のうちで
    最も小さい周波数間隔が、10MHzより大きく、f1
    −f2以下である、請求項1から4のいずれか1項に記
    載の真空処理方法。
  6. 【請求項6】 前記各ピークの周波数の間隔のうちで最
    も小さい周波数間隔が、f1とf2の最大公約数であ
    る、請求項5に記載の真空処理方法。
  7. 【請求項7】 前記f1、f2の周波数範囲は、30M
    Hz以上250MHz以下である、請求項1から6のい
    ずれか1項に記載の真空処理方法。
  8. 【請求項8】 前記f1、f2の周波数は、f2<f1
    としたとき、0.5<f2/f1≦0.9の関係式を満た
    す、請求項1から7のいずれか1項に記載の真空処理方
    法。
  9. 【請求項9】 前記2つの高周波電力は、それぞれの電
    力値をP1、P2としたとき、0.1≦P2/(P1+P
    2)≦0.9の関係式を満たす、請求項1から8のいず
    れか1項に記載の真空処理方法。
  10. 【請求項10】 前記異なる周波数を有する高周波電力
    を、同一の高周波電極に同時に印加する、請求項1から
    9のいずれか1項に記載の真空処理方法。
  11. 【請求項11】 前記被処理物に電子写真感光体を構成
    する堆積膜を形成する、請求項1から10のいずれか1
    項に記載の真空処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009519570A (ja) * 2005-12-15 2009-05-14 ルノー エス.アー.エス 共振器の励起周波数の最適化

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