JP2003020965A - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置

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JP2003020965A
JP2003020965A JP2001204030A JP2001204030A JP2003020965A JP 2003020965 A JP2003020965 A JP 2003020965A JP 2001204030 A JP2001204030 A JP 2001204030A JP 2001204030 A JP2001204030 A JP 2001204030A JP 2003020965 A JP2003020965 A JP 2003020965A
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fuel
amount
fuel injection
valve
internal combustion
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JP2001204030A
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English (en)
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Yuji Konishi
祐二 古西
Naoyuki Kamiya
直行 神谷
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Denso Corp
Original Assignee
Denso Corp
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    • Y02T10/10Internal combustion engine [ICE] based vehicles
    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

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  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)
  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)
  • Valve Device For Special Equipments (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 バルブオーバラップ量が急変することによ
り、図14(c)に示すような空燃比の乱れを生じる。
これは、内部EGRガスの吹き戻し状態が変化すること
による。そこで、本発明はバルブオーバラップ量が急変
しても精度良い空燃比制御を実施することを目的とす
る。 【解決手段】 本発明では、吸気ポートに付着する付着
燃料として、燃焼室近傍の付着燃料と、燃焼室から所定
距離離れた位置での付着燃料とに対して、それぞれの付
着率と蒸発率とのモデルパラメータとを演算する。燃料
噴射量は、アキノのモデル式の逆モデルにこのモデルパ
ラメータを利用して演算される。このとき、バルブオー
バラップ量の変化に伴う内部EGRガスの変化状態から
モデルパラメータを演算するので、図14(e)のよう
に、空燃比のリッチ側とリーン側とのずれを補正して、
精度良い空燃比制御を実施することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】内燃機関の燃料噴射量制御装
置に関し、特に、吸気通路中に付着する燃料ウェット量
を精度良く推定して、燃料噴射制御を実施する技術に関
する。
【0002】
【従来技術】バルブタイミング機構を備える内燃機関に
おいては、運転状態に応じて吸気バルブと排気バルブと
が同時に開弁している期間、所謂バルブオーバラップ量
を可変設定することにより最適な制御を実施しようとす
るものである。ところで、一般的に、バルブオーバラッ
プ量を大きく設定すると排気行程時に排気バルブと吸気
バルブとが同時に開弁する期間が長くなる。このため、
気筒内の既燃ガス(以下、内部EGRと称す)が吸気ポ
ートに逆流し、吸気ポートへの内部EGRの吹き戻しが
増大する。内部EGRガスは、高温の燃焼ガスであるた
め、この内部EGRの吸気ポートへの吹き戻し量が大き
いと燃焼室内に供給される燃料量に影響を及ぼしてしま
う。
【0003】この影響としては、内部EGRガスの吹き
戻しの影響がインジェクタにより噴射される噴射燃料を
吹き戻し、吸気ポートへ付着する付着燃料を増加させて
しまう。そして、付着燃料の増加が燃焼室内に供給され
る燃料量を減少させてしまうという影響が挙げられる。
この付着燃料は、バルブオーバラップ量が大きいほど、
また、内燃機関の温度が低いほど増大する。通常、内燃
機関の運転状態に応じて設定されるバルブオーバラップ
量は、内燃機関の負荷が大きくなるほど大きく設定され
る。このため、例えば、冷始動後に急激な加速運転が行
われると、気筒内に供給される燃料量が大きく不足して
しまうことから空燃比が目標空燃比よりもリーンな空燃
比にて燃焼が行なわれてしまう虞がある。
【0004】このような課題に鑑み、特開平10−33
1612号公報に開示される技術では、吸気バルブと排
気バルブのオーバラップ量の変化速度に基づいて燃料噴
射量の補正を行なっている。すなわち、吸気ポートへの
内部EGRの吹き戻しは、バルブオーバラップ量の変化
速度に依存し、吸気ポート壁面への燃料付着量は機関温
度に依存するために、このバルブオーバラップ量の変化
速度と機関温度とに基づいて燃料噴射量の補正を行なう
ことで、冷始動後の加速運転であっても精度良く気筒内
に供給される燃料量を制御することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特開平10
−331612号公報に開示される技術には、2つの課
題がある。まず、一つ目の課題を説明する。発明者等が
実験等により確認した事実によれば、実際には、図5に
示すような現象が生じる。図5によれば、A点にて急激
な加速運転時にバルブオーバラップ量が大きく変更され
ると、内部EGRの吹き戻しによって、A点からB点ま
で一時的に空燃比が目標空燃比よりもリッチになり、B
点以降で空燃比が目標空燃比よりもリーンになることが
確認される。
【0006】すなわち、特開平10−331612号公
報の技術には、バルブオーバラップ量の変化速度に基づ
いて空燃比がリーン側へずれることを補正するための増
量補正は行なっているが、リッチ側へずれることを補正
することについては何ら開示されていない。このため、
バルブオーバラップ量が変更された直後のリッチ側の空
燃比ずれを補正することができずに精度良い空燃比制御
を実施することができない。
【0007】また、2つ目の課題として、特開平10−
331612号公報に開示される技術では、空燃比がリ
ーン側へずれることに対する補正もマップによって行な
っているため、精度良い補正を行なうためには適合工数
が膨大になってしまう虞がある。
【0008】本発明は、上述の2つの課題に鑑みてなさ
れたものであり、バルブオーバラップ量が変更されても
精度良く空燃比を制御できるとともに、適合工数を低減
し精度良い空燃比制御を実施することができる内燃機関
の燃料噴射量制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】まず、図5に示されたバ
ルブオーバラップ量の変更後に発生する空燃比変化の原
理について説明する。図6(a)にはバルブオーバラッ
プ量が無い場合の吸気ポートに付着する燃料の様子が概
念的に示してある。この図6(a)によれば、オーバラ
ップ量が無い場合には、内部EGRの吹き戻しが発生し
ないため、インジェクタから噴射された燃料の大部分
は、気筒内に供給され、一部が気筒に近い吸気ポートの
壁面に付着(定常ウェット)することとなる。
【0010】これに対して、図6(b)のように、オー
バラップ量が増加側へ変化した場合には、内部EGRの
吹き戻しが発生する。EGRガスは高温のガスであるこ
とから、内部EGRの発生によって、定常時に付着して
いたの付着燃料が高温ガスによって蒸発し、燃焼室内
に供給されることで、図5のA点からB点までの期間で
空燃比が一時的にリッチになる。また、インジェクタか
ら噴射される燃料は、内部EGRの吹き戻しにより燃焼
室から離れたの位置に付着燃料が生成されることで、
B点以降では、燃料が燃焼室内に供給されず、空燃比が
リーンとなってしまい、実空燃比を目標空燃比に追従さ
せることができない。
【0011】そこで、請求項1の発明では、吸気ポート
に燃料を噴射し、内燃機関の燃焼室内に燃料を供給する
燃料噴射手段と、内燃機関の運転状態に応じて吸気バル
ブおよび/または排気バルブの駆動タイミングを設定す
るバルブタイミング設定手段とを備える内燃機関の燃料
噴射量制御装置において、吸気バルブおよび/または排
気バルブの駆動タイミングが変更されるときに、変更さ
れた駆動タイミングに応じて、変化する吸気ポートの燃
料付着量の影響を考慮して、燃料噴射量を増量側と減量
側とに補正する。
【0012】これにより、燃料噴射量制御手段によって
設定される燃料噴射量に対して、増量側の補正と減量側
との補正ができるので、バルブオーバラップ量が急変す
ることによって内部EGRガスが急変しても、リッチ側
への空燃比のずれとリーン側への空燃比のずれを補正す
ることができ、実空燃比を目標空燃比に追従させ、精度
良い空燃比制御を実施することができる。
【0013】請求項2と請求項3との発明では、バルブ
オーバラップ量が変更されたときに生じる図5の現象を
考慮して、バルブオーバラップ量が増加側に変更された
ときには燃料噴射量を減量側に補正(図中A−B)した
後に、燃料噴射量を増量側(図中B以降)に補正する。
また、バルブオーバラップ量が減少側に変更されたとき
には燃料噴射量を増量側に補正した後に、燃料噴射量を
減量側に補正する。
【0014】これにより、バルブオーバラップ量の変更
に伴う実空燃比の目標空燃比に対するずれを補正するこ
とができるので、バルブオーバラップ量が変更されても
精度良く空燃比を制御することができる。
【0015】ところで、オーバラップ量が急変すること
により内部EGRガスが急変することは、前述した通り
である。内部EGRガスの変化は、運転条件によっても
変化する。この運転条件として、内燃機関の回転速度
や、内燃機関の負荷、機関温度等が挙げられる。たとえ
ば、内燃機関の回転速度が高いときには、吸気ポート中
の燃焼室側への流速が大きくなるために内部EGRガス
の吹き戻し量が減少する。同様に、内燃機関の負荷が増
加しても内部EGRガスの吹き戻し量が減少する。ま
た、内燃機関の温度が低いときは、吸気ポートに付着す
る燃料量が増加する。このように内部EGRガスの変化
と吸気ポートに付着する燃料量は、運転条件に影響を受
けて、その特性が変化する。
【0016】そこで、請求項4の発明のように、燃料噴
射量補正手段は、内燃機関の回転速度と内燃機関の負荷
と内燃機関の水温とのうち少なくともいずれか一つに基
づいて燃料噴射量の補正量を設定することにより精度良
く実空燃比を目標空燃比に追従させることができ、さら
に、たとえば、吸気脈動等を考慮することでより正確に
実空燃比を目標空燃比に追従させることができる。
【0017】請求項5の発明では、バルブタイミング設
定手段により設定される吸気バルブおよび/または排気
バルブの駆動タイミングに基づいてバルブオーバラップ
量を算出するバルブオーバラップ量算出手段と、バルブ
オーバラップ量算出手段により算出される吸気バルブと
排気バルブとのオーバラップ量に基づいて、燃焼室内の
燃焼にて発生する燃焼ガスの吸気ポートへの吹き戻しの
状態を推定する内部燃焼ガス吹き戻し状態推定手段とを
備え、内部燃焼ガス吹き戻し状態推定手段により推定さ
れる状態に応じて前記吸気ポートに付着する付着燃料へ
の影響を考慮する。
【0018】これにより、燃料噴射量に影響する燃焼ガ
スの吹き戻しの状態を推定し、精度良く吸気ポートに付
着する付着燃料への影響を考慮することができるので、
バルブオーバラップ量が変更されても精度良く実空燃比
を目標空燃比に追従させることができる。
【0019】すでに記したように、バルブオーバラップ
量の変更は内部EGRガスの吹き戻しの状態が変更され
る。すなわち、この吹き戻しの状態として、請求項6の
発明のように、内部燃焼ガス吹き戻し状態推定手段は、
前記燃焼ガスの吹き戻しの状態として、前記燃焼ガスの
逆流量と、前記燃焼ガスの熱量とを推定する。
【0020】これにより、オーバラップ量の急変によっ
て燃焼ガスの吹き戻しが生じても、吸気ポートに付着す
る燃料の位置に応じて、付着燃料を精度良く推定するこ
とができるので、リッチ側とリーン側への空燃比のずれ
を補正し、精度良い空燃比制御を実施することができ
る。
【0021】また、請求項7の発明によれば、内燃機関
の燃焼室内に燃料を供給する燃料噴射手段と、内燃機関
の運転状態に応じて吸気バルブおよび/または排気バル
ブの駆動タイミングを設定するバルブタイミング設定手
段とを備える内燃機関の燃料噴射量制御装置において、
前記バルブタイミング設定手段により設定されるバルブ
タイミングの変更に応じて前記吸気ポートに付着する付
着燃料の付着位置を考慮した付着率をα、付着燃料の付
着位置を考慮した蒸発率をβとし、前記インジェクタに
より噴射する燃料量の前回値をGF(i−1)、前記吸
気ポートに付着する付着燃料量の前回値をMf(i−
1)、前記吸気ポートに付着する付着燃料量の今回値M
f(i)とたとき、燃料輸送系の関係をモデル化した以
下に示すアキノのモデル式により前記吸気ポートに付着
する付着燃料量の今回値Mf(i)を、Mf(i)=
(1−β)・Mf(i−1)+α・GF(i−1)に基
づいて推定する付着燃料推定手段と、内燃機関の燃焼室
に供給される要求燃料量の今回値をGFE(i)としたと
き、燃料輸送系の関係をモデル化した以下に示すアキノ
のモデル式により前記インジェクタにより噴射する燃料
F(i)を、GFE(i)=β・Mf(i)+(1−
α)・GF(i)に基づいて設定する燃料噴射手段とを
備える。
【0022】これにより、図6(b)に示すようにバル
ブオーバラップ量が変更することに伴って変化する燃料
付着量の付着位置に応じた蒸発率と付着率とを用いて、
吸気ポートに付着する付着燃料を推定することができる
ので、上述のアキノのモデル式を用いて精度良く燃料噴
射量を演算することができる。よって、目標空燃比に対
して実空燃比を追従させることができる精度良い燃料噴
射制御を実施することができる。
【0023】また、請求項8の発明のように、請求項7
の付着燃料の付着率αと蒸発率βとは、燃焼室近傍の吸
気ポートに付着する燃料量に対する付着率α1と蒸発率
β1と、燃焼室から所定間隔離れた吸気ポートに付着す
る燃料量に対する付着率α2と蒸発率β2との2つの異
なるパラメータから構成され、燃料噴射手段は、2つの
異なる付着率と蒸発率に対してそれぞれ前記アキノのモ
デル式を用いて前記吸気ポートに付着する燃料量を推定
する。
【0024】これにより、図6(b)に示すようにバル
ブオーバラップ量が変更された場合に吸気ポートに付着
する燃料の位置が変更されても、2つの位置に対してそ
れぞれのアキノのモデル式を用いて吸気ポートに付着す
る燃料を推定することができるので、バルブオーバラッ
プの変更によらず精度良く実空燃比を目標空燃比に追従
させることができる。
【0025】ところで、燃焼ガスの吹き戻しが同一の条
件であっても、燃料噴射時期によって、燃料噴射量への
影響が変化する。これは、バルブオーバラップ量の変更
によるEGRガスの吹き戻しに対して、燃料噴射時期が
変更されることで噴射燃料に対するEGRガスの吹き戻
しの影響が変化する。そこで、請求項9の発明のよう
に、燃焼室内へ供給する燃料の燃料噴射時期を設定する
燃料噴射時期設定手段を備え、付着燃料パラメータ演算
手段は、燃焼ガスの逆流量と、燃焼ガスの熱量と、前記
燃料噴射時期設定手段により設定される燃料噴射時期の
噴射終了時期とに基づいて前記付着率と前記蒸発率とを
設定すると良い。
【0026】これによれば、付着率と蒸発率とのパラメ
ータに対して燃料噴射時期に応じた補正を加えること
で、燃料噴射時期の変更に伴う燃焼ガスの吹き戻しの燃
料噴射量への影響を考慮することができるので、精度良
い空燃比制御を実施することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下添付図面を用いて本発明の実
施形態について説明する。図1は本発明の燃料噴射制御
装置をバルブ特性制御装置を有する4サイクル機関に適
用した場合の構成の一例を示す図である。本発明では、
バルブ特性制御装置として、例えば吸排気弁の少なくと
も一方のバルブタイミングを変更することによりバルブ
オーバラップ量を調整可能とする形式のもの、あるいは
吸排気弁の少なくとも一方のバルブリフトを変更するこ
とによりバルブオーバラップ量を調整可能とする形式の
もの等が使用可能である。図1の実施形態では上記のう
ち、吸気弁のバルブタイミングのみを変更することによ
りバルブオーバラップ量を調整可能としたバルブ特性制
御装置、すなわちバルブタイミング制御装置が使用され
ている。
【0028】すなわち、本実施形態においては、吸気弁
と排気弁との駆動用ににそれぞれ別のカムシャフトを有
するダブルオーバヘッドカムシャフト(DOHC)型機
関が使用され、バルブタイミングを変更するための可変
バルブタイミング機構が吸気カムシャフトのみに設けら
れている。つまり、本実施形態では排気弁のバルブタイ
ミング変更は行わず、吸気弁のバルブタイミングのみを
運転条件に応じて変更することにより吸気弁と排気弁と
のバルブオーバラップ量を変更する。
【0029】以下、図1のバルブ特性制御装置の構成に
ついて簡単に説明する。図1において、1はDOHC型
機関の吸気弁(図示せず)を開閉駆動する吸気カムシャ
フト、その全体を10で示すのは吸気カムシャフト端部
に設けられた可変バルブタイミング機構である。可変バ
ルブタイミング機構10は、円筒状スリーブ13を有す
るタイミングプーリ12と、カムシャフト1の端部を覆
うカバー14とを備えており、タイミングプーリ12は
円筒状スリーブ13を介して吸気カムシャフト1の周囲
にカムシャフト1に対して回転可能に装着されている。
また、カバー14はタイミングプーリ12にボルト15
により固定され、プーリ12と一体に回転するようにな
っている。
【0030】カバー14内部にはピストン部材17が設
けられている。ピストン部材17は、円環状のピストン
部19と、ピストン部19から延びる円筒部21とを備
えており、ピストン部19の外周面と内周面とは、カバ
ー14の内周面とプーリ12のスリーブ13の外周面と
にそれぞれ摺接している。また、ピストン部材17の円
筒部21の外周面と内周面とには、それぞれ所定の捩じ
れ角を有するアウターヘリカルギヤ21aとインナーヘ
リカルギヤ21bとが刻設されており、アウターヘリカ
ルギヤ21aはカバー14内周面に形成された内歯ヘリ
カルギヤ22aと、またインナーヘリカルギヤ21bは
カムシャフト1の端面にボルト1a、ピン1bにより一
体に装着されたリング状の外歯ヘリカルギヤ22bとそ
れぞれ噛合している。
【0031】本実施形態の可変バルブタイミング機構1
0では、機関のクランク軸(図示せず)の回転は、タイ
ミングベルト12aを介してタイミングプーリ12に伝
えられる。プーリ12が回転すると、カバー14がプー
リ12と一体に回転し、ヘリカルギヤ22a、21aを
介してカバー14に連結されたピストン部材17がカバ
ー14と一体に回転する。ピストン部材17は、ヘリカ
ルギヤ21b、22bを介して同時にカムシャフト1に
も連結されているため、これによりカムシャフト1がプ
ーリ12と一体に回転する。
【0032】すなわち、本実施形態の可変バルブタイミ
ング機構10では、カムシャフト1の回転駆動力は、ク
ランク軸からタイミングベルト12aを介してタイミン
グプーリ12に伝達され、プーリ12からカバー14、
ヘリカルギヤ22a、21a、ピストン部材17及びヘ
リカルギヤ21b、22bを経てカムシャフト1に伝達
される。
【0033】本実施形態の可変バルブタイミング機構1
0は、ピストン部材17をカムシャフト1軸線方向に移
動させることにより吸気弁のバルブタイミングの変更を
行う。すなわち、ピストン部材17は、互いに噛合す
る、それぞれ所定の捩じれ角のヘリカルギヤ22a、2
1aと21b、22bとによってカバー14およびカム
シャフト1に連結されている。このため、ピストン部材
17がカムシャフト軸線方向に移動すると、ヘリカルギ
ヤ22aと21a及び21b、22bの噛合位置はそれ
ぞれの歯筋に沿って軸線方向に移動する。ところが、そ
れぞれのギヤの歯面は、カムシャフト軸線方向に対して
捩じれ角を有するため、噛合位置が軸線方向に移動する
と、カバー14とピストン部材17、及びピストン部材
17とカムシャフト1とはそれぞれヘリカルギヤの歯筋
に沿って円周方向に相対移動する。このため、ピストン
部材17の軸線方向移動にともなってカバー14とピス
トン部材17、及びピストン部材17とカムシャフト1
とは相対的に回転することになる。従って、機関の運転
中にピストン部材17をカムシャフト1軸線方向に移動
させることにより、タイミングプーリ12の回転位相、
すなわちクランク軸の回転位相に対するカムシャフト1
の回転位相を進める(或いは遅らせる)ことが可能とな
り、カムシャフト1に駆動される吸気弁の開閉タイミン
グを進角(或いは遅角)させることができる。
【0034】上述のように、本実施形態の可変バルブタ
イミング機構10は吸気カムシャフト1の回転位相のみ
を変化させるものであるため、バルブタイミング変更の
際には吸気弁の開弁時期と閉弁時期とは常に同じ量だけ
変化し、吸気弁の開弁期間自体は一定に維持される。本
実施形態では、機関運転中に、油圧を用いてピストン部
材17を移動させることによって吸気弁のバルブタイミ
ング変更操作を行う。図1に示すように、カムシャフト
1内には2つの油通路2及び3が軸線方向に沿って穿設
されている。油通路2はカムシャフト1の中心に設けら
れ、油通路2の軸端側はボルト1aに穿設されたポート
2aを介してカバー14内面とピストン17の軸端側端
面との間に形成される油圧室5に連通している。また、
油通路2のもう一方の端部はカムシャフト1に半径方向
に穿設されたポート2bを介して後述するリニアソレノ
イドバルブ25に接続されている。一方、油通路3の軸
端側端部は前述のリング状外歯ヘリカルギヤ22bによ
り閉塞されている。また、油通路3は半径方向に穿設さ
れたポート3aを介して、ピストン17端面とタイミン
グプーリ12及びカバー14とで形成される油圧室8に
連通するとともに、別のポート3bを介してリニアソレ
ノイドバルブ25に連通している。
【0035】リニアソレノイドバルブ25は、スプール
26を有するスプール弁であり、前述の油通路2のポー
ト2bに配管を介して接続された油圧ポート26aと、
油通路3のポート3bに配管を介して接続された油圧ポ
ート26b、機関潤滑油ポンプ等の圧力油供給源28に
接続されたポート26c及び2つのドレーンポート26
d、26eを備えている。バルブ25のスプール26は
ポート26aと26bのうちのいずれかをポート26c
に連通し、他方をドレーンポートに接続するように動作
する。
【0036】すなわち、図1においてスプール26が左
方向に移動すると、油圧通路2のポート2bに連通する
ポート26aはポート26cを介して油圧供給源28に
接続され、ドレーンポート26dは閉鎖される。また、
この時同時に油圧通路3のポート3bに接続されたポー
ト26bはドレーンポート26eに連通する。このた
め、可変バルブタイミング機構10の油圧室5には、機
関の潤滑油ポンプ等の油圧供給源28から油圧通路2、
ポート2aを介して潤滑油が流入し、ピストン19を図
1右方向に押動する。また、この時油圧室8内の潤滑油
はポート3aから油通路3、ポート3b、リニアソレノ
イドバルブ25のポート26b等を通ドレーンポート2
6eから排出される。このため、ピストン部材17は図
1右方向に移動する。
【0037】また、図1において逆にスプール26が右
方向に移動すると、ポート26bはポート26cに接続
され、ポート26aはドレーンポート26dに接続され
る。これにより、油圧室8には油通路3を通って潤滑油
が流入し、油圧室5からは油通路2を通ってドレーンポ
ート26dに潤滑油が排出されるため、ピストン部材1
7は図1左方向に移動する。
【0038】なお、本実施形態では、油圧室5に潤滑油
が供給されてピストン部材17が図1右方向に移動する
と吸気弁バルブタイミングは進角側に変更され、油圧室
8に潤滑油が供給されてピストン部材17が図1左方向
に移動すると吸気弁バルブタイミングは遅角側に変更さ
れるようにヘリカルギヤ21a、21b及び22a、2
2bの捩じり角が設定されている。
【0039】また、図1に25bで示すのは、スプール
26を駆動するリニアソレノイドアクチュエータであ
る。リニアソレノイドアクチュエータ25bは後述する
制御回路30からの制御信号を入力し、この制御信号の
大きさに比例する量だけスプール26を移動させること
により、ピストン部材17の位置、すなわち吸気弁のバ
ルブタイミングを変更する。
【0040】図1に30で示すのは、リニアソレノイド
バルブ25の動作を制御するエンジン制御回路(以下、
ECUと称する)である。本実施形態では、ECU30
はリードオンリメモリ(ROM)32、ランダムアクセ
スメモリ(RAM)33、マイクロプロセッサ(CP
U)34、入力ポート35、出力ポート36を相互に双
方向性バス31で接続した公知の構成のマイクロコンピ
ュータとして構成される。また、ECU30は、バッテ
リ等の電源に直結され機関が停止されても記憶保持が可
能なバックアップRAM37を備えている。本実施形態
のECU30は、機関運転条件に応じてリニアソレノイ
ドバルブ25の動作を制御して吸気弁のバルブタイミン
グを調節し、吸排気弁のバルブオーバラップ量を制御す
る。この制御のため、ECU30の入力ポート35に
は、機関の吸気通路に設けられた吸気圧センサ41から
機関吸入空気量(重量流量)に比例する電圧信号と、機
関冷却水通路に設けられた水温センサ42から機関冷却
水温度THWに比例する電圧信号、また機関吸気通路の
スロットル弁(図示せず)近傍に配置されたスロットル
開度センサ40からスロットル弁開度TAを表す電圧信
号とが、それぞれAD変換器43を介して入力されてい
るほか、機関クランク軸に設けられたクランク軸回転角
センサ44からクランク軸回転角を表すパルス信号と、
カムシャフトに設けられたカム回転角センサ45からカ
ムシャフト1の回転角を表すパルス信号とが入力されて
いる。
【0041】クランク軸回転角センサ44からのパルス
信号は、クランク軸回転720度毎に発生するクランク
軸の基準位置を示すN1信号と、クランク軸回転30度
毎に発生するNe信号とからなり、カム回転角センサ4
5からはカムシャフト回転360度毎に、カムシャフト
が基準位置に到達したことを示すCN1パルス信号が発
生する。ECU30は一定時間毎にNe信号のパルス間
隔からエンジン回転速度NEを計算するとともに、この
エンジン回転速度Neを用いてN1信号とCN1信号と
の時間間隔からカムシャフト1の実際の回転位相(吸気
弁のバルブタイミング)VTを演算する。この演算結果
はRAM33に格納される。また、スロットル弁開度T
Aと冷却水温度THWとは一定時間毎にAD変換され同
様にRAM33に格納される。つまり、RAM33に格
納されるNe、VT、TA、Thw等の値は一定時間毎
に更新され、常時最新の値がRAM33に格納されてい
る。
【0042】後述するように、エンジン回転速度Neと
吸気圧Pmとはエンジンの負荷条件を表すパラメータと
して使用される。また、冷却水温度Thwは後述する燃
料噴射量増量値の算出等のために使用される。一方、E
CU30の出力ポート36は、駆動回路48を介してリ
ニアソレノイドバルブ25のアクチュエータ25bに接
続され、制御信号をアクチュエータ25bに供給してい
る。また、ECU30の出力ポート36は、燃料噴射回
路50を介して機関の燃料噴射弁51に接続され、機関
への燃料噴射量を制御している。
【0043】次に、本実施形態の吸気弁のバルブタイミ
ング設定について図2を用いて説明する。図2は吸気弁
と排気弁との一般的な開閉時期を模式的に示す図であ
る。図2ににおいて、TDCはピストン行程上死点、B
DCは下死点を示し、IO、ICはそれぞれ吸気弁の開
弁時期と閉弁時期、EO、ECはそれぞれ排気弁の開弁
時期と閉弁時期とを表している。図2に示すように、吸
気弁は排気行程上死点(TDC)前から開弁し、吸気行
程下死点(BDC)後に閉弁する。また、排気弁は爆発
行程下死点(BDC)前から開弁し、排気行程上死点
(TDC)後に閉弁する。図2に示すように、排気行程
では排気弁が閉じる(EC)前に吸気弁が開く(IO)
ようにバルブタイミングが設定されるため、吸気弁と排
気弁との両方が開弁している期間(図2にOL)で示す
期間が存在する。本実施形態では期間OLの長さ(角
度)をバルブオーバラップ量と称する。本実施形態で
は、後述するように、吸気弁バルブタイミング(開弁時
期)は図2にIO0で示したタイミング(最遅角タイミ
ング)からIO1で示したタイミング(最進角タイミン
グ)まで調整することができる。また、本実施形態では
バルブタイミング最遅角位置(IO0)から現在の位置
(IO)までのクランク軸回転角をバルブタイミング値
VTと定義している。図2から判るように、本実施形態
では排気弁の閉弁時期は固定されているため、バルブタ
イミング値VTとバルブオーバラップ量OLとは一対一
に対応する。すなわち、VTが大きい(吸気弁の開弁時
期IOが早い)ことはバルブオーバラップ量OLもそれ
に応じて大きくなっていることを意味し、VTが小さい
(吸気弁の開弁時期IOが遅い)ことは、バルブオーバ
ラップ量OLもそれに応じて小さくなっていることを意
味している。
【0044】一般に、吸排気弁のバルブオーバラップ量
OL(吸気弁バルブタイミングVT)の設定が機関性能
に及ぼす影響は以下の通りである。(1)VTを増大さ
せてバルブオーバラップ量OLを大きく設定すると、既
燃ガスの吸気ポートへの吹き返しが大きくなる。これに
より、吸気ポートに吹き返した既燃ガスが燃焼室内に再
吸入される、いわゆる内部EGR効果が増大する。この
既燃ガスの吹き返しは、吸気管圧力低い時(低負荷運転
時)には大きく、吸気管圧力が高い高負荷運転時等には
小さくなる。
【0045】(2)VTを減少させて(吸気弁開弁時期
を遅らせて)バルブオーバラップ量OLを小さく設定す
ると、吸気弁の閉弁時期(図2、IC)が遅くなるた
め、圧縮行程時(BDC後)に吸気弁が開弁している期
間が長くなる。このため、低中速回転領域では気筒内に
吸入された新気が圧縮行程初期に気筒から吸気ポートに
押し戻されるようになり、気筒の新気充填効率が低下す
る。従って、バルブオーバラップ量OLを小さく設定す
ると、気筒の実圧縮比が低下する。
【0046】一方、高回転領域では吸気の流速が早くな
るため吸気慣性効果が生じ、閉弁時期を遅くするほど充
填効率が向上して実圧縮比が増大する。このため、機関
高回転領域では、バルブオーバラップOLを小さく設定
すると、気筒の実圧縮比は増大する。本実施形態では、
上記の機関性能に対するバルブタイミング値の影響を考
慮して、以下に説明するように機関の各運転領域におけ
る吸気弁バルブタイミングを設定している。
【0047】図3は、本実施形態における暖機完了後の
運転時のバルブタイミング値VTの設定値の一例を示し
ている。以下、この標準状態における、バルブタイミン
グ設定値を基本バルブタイミング値(tVVT)と称す
る。図3においてtVVTの値は最遅角状態のバルブタ
イミング位置(図2,IO0)からの進角量(クランク
軸回転角CA)で表わしている。前述のように、本実施
形態では、基本バルブタイミングtVVTの値はバルブ
オーバラップ量OLと1対1の関係を有する。
【0048】図3の表中、縦軸は機関負荷を表すパラメ
ータとして使用する機関1回転当たりの吸入空気重量G
N(グラム/回転)、横軸は機関回転数NE(RPM)
をそれぞれ表している。図3に示すように、基本バルブ
タイミング値tVVTは、機関の中回転中負荷運転領域
(図3においてNE≒2400〜3200RPM、GN
≒1.0〜1.25グラム/回転付近の領域)で最大値
をとり(すなわち、バルブオーバラップOLも最大とな
り)、この中回転中負荷領域から回転数または負荷が離
れるほど小さな値になり、バルブオーバラップ量OLも
小さくなる。
【0049】すなわち、本実施形態では低負荷領域(例
えば、GN<1.00)では、負荷が低いほど基本バル
ブタイミングtVVTを小さく(すなわち、バルブオー
バラップ量OLを小さく)設定して、既燃ガスの吹き返
しによる内部EGRの低減による燃焼の安定を図ってい
る。また、中負荷領域では、内部EGR量を大幅に増大
することによりエミッションの改善とポンピングロスの
低減を図ることができるためバルブオーバラップ量OL
は低負荷または高負荷時より全般的に大きく設定され
る。しかし、中負荷領域においても、低速領域でバルブ
オーバラップ量OLをあまり大きく設定すると燃焼不安
定が生じやすくなるため、また高速中負荷領域ではOL
を大きく設定する吸気慣性を利用できなくなり逆に充填
効率が低下するため、低速領域と高速領域ではOLは比
較的小さい値に設定される。このため本実施形態では、
中速中負荷領域でバルブオーバラップOLが最大となる
ように基本バルブタイミングtVVTの値が設定されて
いる。
【0050】また、高負荷領域では、内部EGRを低減
して出力を増大する必要があるためVTは全般的に小さ
く設定される。特に高速領域ではVTを小さくするほど
吸気慣性による新気充填効率の向上効果が大きいため、
低、中速領域よりもVTが小さく設定されている。この
ため、本実施形態では、高負荷領域(GN>1.25の
領域)では、負荷が大きくなるほどバルブオーバラップ
量OLは小さくなり、更に同一負荷では低速領域(NE
<1600RPM)より高速領域(NE>3200RP
M)でバルブオーバラップOLが小さくなるように基本
バルブタイミングtVVTの値が設定されている。
【0051】次に、機関低温時のバルブオーバラップ量
OLの設定について説明する。上述したように、図3に
示したバルブタイミングtVVTは、機関が十分に暖機
された後の状態におけるものである。ところが、機関温
度が低い状態では燃料の気化状態が悪いため、吸気ポー
トへの既燃ガスの吹き返しが大きいと、吸気ポートに供
給された気化しないままの燃料粒子が既燃ガスの吹き返
しにより吸気ポート壁面に付着してしまう問題がある。
そこで、本実施形態では、機関冷却水温度THWに基づ
いて図3の基本バルブタイミングtVVTを補正し、機
関温度(機関冷却水温度THW)が低いほど実際のバル
ブオーバラップが小さくなるようにして、機関低温時の
壁面付着燃料量の増大を防止している。
【0052】図4は、冷却水温度THWと、THWに基
づくバルブタイミング温度補正量tVTHWとの関係を
示すグラフである。図4に示すように、温度補正量tV
THWの値は、暖機完了後(冷却水温度THWが所定値
THW1以上)では0に設定され、THW<THW1の
温度範囲では冷却水温度が低いほど大きな値に設定さ
れ、さらに冷却水温度が所定値THW0以下の領域では
一定の大きな値に設定される。後述するように、制御回
路30は冷却水温度TWHに基づいて、温度補正量tV
THWの値を図4から決定する。そして、機関回転数と
負荷とから決定される基本バルブタイミングtVVTを
温度補正量tVTHWを用いて補正し、実際の可変バル
ブタイミング機構10のバルブタイミング制御目標値V
VTIを、VVTI=tVVT−tVTHW(但しVV
T≧0)として算出する。
【0053】以上、説明したように上述の如く設定され
るバルブタイミング制御目標値VVTIが変化すると、
この変化に対してバルブオーバラップ量が変化する。以
下では、アキノの物理モデルを用いた本実施の形態の燃
料噴射量演算のための構成と、この構成を利用して、バ
ルブオーバラップ量の変化に対して行われる本実施の形
態の燃料噴射量制御について、図面を用いて詳細に説明
する。
【0054】まず、内燃機関の運転状態が加速運転状態
において、吸気バルブタイミング制御目標値VVTI
(バルブオーバラップ量OL)の変化に応じて、図示し
ない吸気ポートに付着するウェット燃料がどのように変
化するのかを説明する。図6(a)にはバルブオーバラ
ップ量が無い場合の吸気ポートに付着するウェット燃料
の様子が概念的に示してある。この図6(a)によれ
ば、オーバラップ量が無い場合には、内部EGRの吹き
戻しが発生しないため、インジェクタから噴射された燃
料の大部分は、気筒内に供給され、一部が気筒に近い吸
気ポートの壁面に付着(定常ウェット)することとな
る。
【0055】これに対して、図6(b)のように、オー
バラップ量が増加側へ変化した場合には、内部EGRの
吹き戻しが発生する。内部EGRガスは高温のガスであ
ることから、内部EGRの発生によって、定常時に付着
していたのウェット燃料が高温ガスによって蒸発し、
気筒内に供給されることで、図5のA点からB点までの
期間で空燃比が一時的にリッチになる。また、インジェ
クタから噴射される燃料は、内部EGRの吹き戻しによ
り気筒から離れたの位置にウェット燃料が生成される
ことで、図5のB点以降では燃料が燃焼室内に供給され
ず、空燃比がリーンとなってしまう。
【0056】このように吸気ポートに付着するウェット
燃料量は、バルブオーバラップ量の変化によって影響を
受ける。これは、加速運転時のみではなく、減速運転時
へと移行した場合にも燃料ウェット量は変化する。そこ
で、本実施の形態では、ウェット燃料量の変化を考慮
し、燃料輸送系モデルを用いて燃料噴射量を制御する。
以下、燃料輸送系のモデルを図7乃至図13を用いて説
明する。
【0057】まず、図7は、アキノの物理モデル式に基
づいて内燃機関の燃料輸送系を模式的に示した図であ
る。この図7には、吸気ポートとインジェクタと吸気バ
ルブとが示され、インジェクタから噴射される燃料が燃
焼室内に供給されるまでの系が示してある。
【0058】この図において、インジェクタから噴射さ
れる燃料量をGfとすると、この燃料噴射量Gfは、直
接燃焼室内に供給されるものと、図中の吸気ポートの斜
線部分に付着する燃料とに分類することができる。ここ
で、燃料噴射量Gfのうち、吸気ポートに付着する壁面
付着率をXとすると、吸気ポートに付着する燃料付着量
は、X・Gfで示される。そして、直接、燃焼室内に供
給される燃料量は(1−X)・Gfで示される。また、
吸気ポートに付着している燃料量(定常ウェット燃料)
をウェット燃料量Mfとすると、このウェット燃料量M
fから蒸発して燃焼室内に供給される燃料がある。
【0059】すなわち、燃焼室内に供給される燃料は、
インジェクタからの燃料噴射により直接燃焼室内に供給
される燃料量X・Gfと、壁面付着量Mfから蒸発する
燃料量(1/τ)・Mfとからなる。ここで、τは蒸発
時定数である。以上のように燃料輸送系は吸気ポートへ
付着する燃料付着量の影響を考慮すれば、燃焼室内に供
給される燃料量を精度良く算出することができる。そこ
で、燃焼室内に供給される燃料量を満足するインジェク
タによる燃料噴射量Gfを演算するために、上述の燃料
輸送系をサンプリング間隔を720°CAとした逆モデ
ルを以下のように導く。
【0060】(1),(2)式のパラメータは以下の通
りである。
【0061】 i−1:1行程前(720°CA)前 GF :単気筒において1行程間に噴射する燃料量 GF=Δt・Gf(kg/rev)(Δtは720°C
Aに要する時間) GFE :シリンダ流入燃料量(kg/rev) α :燃料付着率X β :蒸発率=Δt/τ このように求められる逆モデルによれば、燃料付着率α
と蒸発率βとを設定することにより吸気ポート部に付着
する壁面付着燃料Mf(i)を推定することができ、シ
リンダ流入燃料量GFEを満足するインジェクタの燃料噴
射量GFを算出することができる。本実施の形態では、
この燃料輸送系の逆モデルを図6(b)に示される,
の位置に付着するそれぞれのウェット燃料に対して、
適用することで、EGRガスの吹き戻しにがあっても空
燃比を精度良く制御することが可能な燃料噴射制御を実
施する。ここで、,の位置に対するそれぞれのウェ
ット燃料に対して、逆モデルを適用した場合のシリンダ
流入燃料量GFEとインジェクタからの燃料噴射量GF
の関係を(3)乃至(4)式に示す。
【0062】 Mf1 :の位置でのウェット燃料量 Mf2 :の位置でのウエット燃料量 GF :インジェクタからの燃料噴射量 GFE :シリンダ流入燃料量 α1 :の位置での燃料付着率 α2 :の位置での燃料付着率 β1 :の位置での燃料蒸発率 β2 :の位置での燃料蒸発率 以下では、シリンダ流入燃料量GFEを要求燃焼量GFE
し、この要求燃焼量G Fを満足するインジェクタからの
燃料噴射量を要求噴射量GFとして、図8に示される制
御ブロック図を用いて本実施の形態の燃料噴射制御につ
いて説明する。図8において、要求燃焼量算出ブロック
は、内燃機関の燃焼空燃比が目標空燃比A/Fとなるた
めに必要となる燃焼室内に供給される燃料量、すなわち
要求燃焼量GFEを算出するためのブロックである。要求
噴射量GFは、このブロックにおいて算出される要求燃
焼量GFEと、点線の枠で示される第1のウェット燃料演
算部にて算出されるウェット燃料からの燃料蒸発量と、
第2のウェット燃料演算部にて算出されるウェット燃料
からの燃料蒸発量とから算出される。
【0063】上述の第1と第2の蒸発燃料演算部で算出
されるウェット燃料量は、内部EGRガスの影響により
変化するため、内部EGRガスの影響を推定する必要が
ある。この内部EGRガスを推定するブロックが内部E
GR推定ブロックに相当する。内部EGR推定ブロック
では、吸気バルブ位置指令値として、バルブタイミング
制御目標値VVTIと、排気バルブ位置指令値(本実施
の形態では固定値である)と、運転条件(エンジン回転
速度Ne,吸気圧Pm,エンジン水温Thw等)とに基
づいて吸気ポートに吹き戻す内部EGRガスを推定す
る。内部EGRガスの推定は、内部EGRガスの状態を
表す指標として、予測EGR逆流量と、予測EGR熱量
とを出力する。
【0064】予測EGR逆流量は内部EGRガスの吹き
戻し量を示し、予測EGR熱量はこのとき吹き戻される
内部EGRガスの熱量を示す。図10(a)は、予測E
GR逆流量を算出するためのマップであり、バルブオー
バラップ量OLに応じて算出される。この図においてバ
ルブオーバラップ量OLが大きいほど、予測EGR逆流
量は増加する。また、図10(b)は、予測EGR熱量
を算出するためのマップであり、バルブオーバラップ量
OLに応じて算出される。この図において、バルブオー
バラップ量OLが大きいほど予測EGR熱量は増加す
る。さらに、予測EGR逆流量と予測EGR熱量とは、
運転条件(Ne,Pm,Thw)に基づいて補正され、
最終的な予測EGR逆流量と予測EGR熱量とが算出さ
れる。
【0065】第1と第2のウェット燃料演算部では、こ
の予測EGR逆流量と予測EGR熱量とに基づいて、吸
気ポートに付着するウェット燃料量を演算する。まず、
第1の付着率(α1)算出ブロックでは第1の付着率
(α1)を算出し、第2の付着率(α2)算出ブロックで
は第2の付着率(α2)を算出する。第1の付着率
(α1)と第2の付着率(α2)とは、要求燃焼量GFE
予測EGR逆流量と燃料噴射時期とに基づいて算出され
る。図11(a),(b)は、予測EGR逆流量に応じ
て第1,第2の付着率(α1,α2)を演算するためのマ
ップである。この図によれば、図6(b)のの位置に
対する第1の付着率(α1)は、EGR逆流量が大きい
ほど付着率が低下し、の位置に対する第2の付着率
(α2)は、EGR逆流量が大きいほど付着率が増加す
る。
【0066】また、このようにして算出される第1,第
2の付着率(α1,α2)は、燃料噴射時期に基づいて補
正される。燃料噴射時期に応じた補正項(γ1,γ2
は、図12(a),(b)に示す通りである。図6
(b)に示すの位置でのウェット燃料に対しては、燃
料噴射時期が吸気TDCより所定量遅角側のときに最も
小さな補正値γ1となり、の位置でのウェット燃料に
対しては、燃料噴射時期が吸気TDCよりも所定量遅角
側のときに最も大きな補正値γ2となる。第1,第2の
付着率(α1,α2)は、このように噴射時期に応じた特
性を持つ補正項(γ1,γ2)により補正される。補正方
法は、補正項(γ1,γ2)を第1,第2の付着率
(α1,α2)に乗算、若しくは加算等により行われる。
【0067】また、第1の蒸発率(β1)算出ブロック
と第2の蒸発率(β2)算出ブロックとは、第1の蒸発
率(β1)と第2の蒸発率(β2)とを要求燃焼量GFE
予測EGR熱量と燃料噴射時期とに基づいて算出するブ
ロックである。図13(a),(b)は、予測EGR熱
量に応じて第1,第2の蒸発率(β1,β2)を演算する
ためのマップである。この図によれば、図6(b)の
の位置に対する第1の蒸発率(β1)は、EGR逆流量
が大きいほど蒸発率が増加し、の位置に対する第2の
蒸発率(β2)も、EGR逆流量が大きいほど蒸発率が
増加する。第1の蒸発率(β1)と第2の蒸発率(β2
との関係は、第1の蒸発率(β1)の方が、第2の蒸発
率(β2)よりも大きい関係を有する。
【0068】以上のようにして、第1,第2の蒸発率
(β1,β2)と第1,第2の付着率(α1,α2)とを算
出すると、第1,第2のウェット量(Mf1,Mf2)算
出部により第1,第2のウェット量(Mf1,Mf2)を
算出する。
【0069】第1のウェット量(Mf1)算出部では、
図6(b)のの位置でのウェット燃料を第1の付着率
(α1)と第1の蒸発率(β1)とを用いて(4)式によ
り算出する。同様に、第2のウェット量(Mf2)算出
部では、図6(b)のの位置でのウェット燃料を第2
の付着率(α2)と第2の蒸発率(β2)とを用いて
(5)式により算出する。そして、要求燃料噴射量算出
ブロックでは、第1のウェット量(Mf1)と第2のウ
ェット量(Mf2)とを用いて、(3)式により要求噴
射量GF算出する。
【0070】つぎに、図9のフローチャートを用いて、
ECU30によって実施される燃料噴射制御の処理につ
いて説明する。図9のプログラムは、エンジン回転角1
80°CA毎に起動されるプログラムである。
【0071】まず、ステップS100では、燃焼室内に
供給する要求燃焼量GFE(i)を算出し、ステップS1
10へ進む。ステップS110では、エンジン回転速度
Neと吸気圧Pmと冷却水温Thw等を読み込む。エン
ジン回転速度Neは、カム軸回転角センサ45により出
力されるNe信号の出力間隔から30°CA毎に算出さ
れる値であり、吸気圧Pmは吸気圧センサ41の出力値
であり、冷却水温Thwは冷却水温センサ42の出力値
である。
【0072】そして、ステップS120では、ECU3
0内のRAM33から燃料噴射時期を読み込み、ステッ
プS130にて吸気バルブと排気バルブとの制御目標値
VVTIをECU30内のRAM33から読み込む。つ
ぎに、ステップS140では、第1,第2の蒸発率(β
1,β2)と第1,第2の付着率(α1,α2)とを図11
(a),(b)と図13(a),(b)とのマップによ
り算出する。これらマップにより算出される第1,第2
の付着率(α1,α2)は、燃料噴射時期に応じた補正項
(γ1,γ2)によって補正される。
【0073】ステップS150では、前回のウェット燃
料Mf1(i−1),Mf2(i−1)がECU30内の
RAM33から読み込まれ、ステップS160にて、前
回の要求噴射量GF(i−1)をECU30内のRAM
33から読み込む。そして、ステップS170にて、噴
射時期によって補正されたウェット燃料Mf1(i−
1),Mf2(i−1)と、第1,第2の蒸発率(β1
β2)と第1,第2の付着率(α1,α2)と、前回の要
求噴射量GF(i−1)と、(4),(5)式を用いて
今回の図6(b)に示すの位置,の位置に対するそ
れぞれのウェット量Mf1(i),Mf2(i)を演算す
る。
【0074】つぎに、ステップS180では、第1,第
2の蒸発率(β1,β2)と第1,第2の付着率(α1
α2)と、ステップS170にて算出されたウェット燃
料Mf 1(i),Mf2(i)と、ステップS100にて
算出された要求燃焼量GFE(i)とから(3)式を用い
て要求噴射量GF(i)を算出し、ステップS190に
て、インジェクタによる要求噴射量GF(i)に応じた
燃料噴射を実行して本ルーチンを終了する。
【0075】以上のように、本実施の形態では、バルブ
オーバラップ量OLの変化によって内部EGRガス量の
吹き戻しに影響が現れても、内部EGRガスの吹き戻し
による吸気ポートのウェット燃料に対する影響を精度良
く推定することで、常に適切な燃料噴射制御を実行する
ことができる。
【0076】つぎに、図14のタイムチャートを用い
て、バルブオーバラップ量OLが変化したとき空燃比制
御に、本実施の形態を適用した場合について説明する。
まず、図14(a)は、バルブオーバラップ量を示すタ
イムチャートである。この図によれば、図中A点にて、
バルブオーバラップ量がステップ的に増加し、C点にて
ステップ的に減少する。
【0077】図14(c)に示すタイムチャートは、バ
ルブオーバラップ量OLの変化に対する内部EGRガス
の吹き戻しの影響を考慮していない制御が示してある。
図14(a)のA点からB点では、内部EGRガスの熱
量が図6(b)のの定常ウェットに対して影響するた
め空燃比がリッチになる。B点からC点では、内部EG
Rガスの逆流量が影響して、図6(b)のの位置にウ
ェット燃料が形成されることで、空燃比がリーンとな
る。C点にてバルブオーバラップ量OLがステップ的に
減少すると、の位置に形成される定常ウェットに対し
て内部EGRガスの影響が小さくなるので、C点からD
点では空燃比がリーンになる。そして、D点以降では、
の位置に定常ウェットが形成されるので空燃比がリッ
チとなる。
【0078】図14(d)に示すタイムチャートは、バ
ルブオーバラップ量OLの変化に応じてリーン側のみの
補正を行った従来技術である。この技術では、バルブオ
ーバラップ量OLの増加側への変化に対してリーン側の
補正、すなわち燃料噴射量の増量補正しか行っていない
ため、A点からB点にて発生するリッチ側の空燃比変化
を助長してしまい、目標空燃比から実空燃比が大きくは
ずれてしまう。また、バルブオーバラップ量OLの減少
側へのステップ的な変化に対しては、何ら開示されてい
ないため図14(c)と同様の空燃比変動を生じてしま
う。
【0079】そこで、本実施の形態では図14(b)に
示す燃料噴射補正量のように、A点からB点では燃料噴
射量が減量側に補正され、B点以降では燃料噴射量が増
量側に補正されることで、図14(e)に示すタイムチ
ャートのように、バルブオーバラップ量OLの増加側と
減少側との変化が生じても、内部EGRガスの影響によ
るウェット燃料の状態を推定しているため、精度良く実
空燃比を目標空燃比に制御することができる。
【0080】以上のタイムチャートでは、バルブタイミ
ングをステップ適に変更しているが、実際には、油圧の
影響等により遅れを伴って変更される。この場合、実バ
ルブタイミング等を考慮して燃料噴射量の補正を行えば
良い。
【0081】なお、本実施の形態においては、吸気可変
バルブのみを用いていたため吸気バルブの制御目標値V
VTIに基づいてオーバラップ量OLを演算している
が、吸排気可変バルブタイミングシステムに本実施の形
態を適用しても良い。吸排気可変バルブタイミングシス
テムへ適用する場合、吸気バルブと排気バルブとからオ
ーバラップ量を求め、さらにオーバラップ量OLとエン
ジンのピストン位置(たとえば、上死点:TDC)に基
づいて内部EGRガスの吹き戻し量を推定すると良い。
【0082】また、オーバラップ量を算出する際に、制
御目標値VVTIではなく、実バルブタイミングから算
出しても良い。
【0083】さらに、本実施の形態では、バルブタイミ
ングコントロールシステムとして、ヘリカルタイプのシ
ステムを記述したが、これに限られるものではなく、従
来より知られるベーン式バルブタイミングコントロール
システムによっても良い。
【0084】ところで、本実施の形態では、燃料噴射量
制御としてアキノのモデル式を用いて燃料噴射量を演算
したが、通常の燃料噴射制御にバルブオーバラップ量に
基づいてリッチ側への空燃比ずれに対する減量補正と、
リーン側への空燃比ずれに対する増量補正を行っても良
い。この補正方法としては、適合等により行っても良
い。
【0085】本実施の形態において、燃料噴射手段は図
9のフローチャートに、バルブタイミング設定手段は図
3のマップに、付着燃料パラメータ演算手段は図9のフ
ローチャートのステップS140に、付着燃料量推定手
段は図9のフローチャートのステップS170に、燃料
噴射手段は図9のフローチャートのステップS180
に、燃料噴射時期設定手段は図9のフローチャートのス
テップS120に、それぞれ相当し、機能する。
【0086】(その他の実施例)本発明の実施の形態で
は、吸気ポートの燃焼室近傍の位置と、燃焼室近傍の位
置から所定距離離れた位置とでの燃料ウェットを想定
し、この2つの位置に応じた付着率と蒸発率とをパラメ
ータとしてアキノの物理モデルを用いて燃料噴射量を演
算した。本実施例では、基本燃料噴射量に対する補正を
行うことで、内部EGRガスの吸気ポートへの吹き戻し
状態の変化に対応して精度良い空燃比制御を実施する。
以下に、基本噴射量Tpに対する燃料噴射補正量FAW
Eを設定するプログラムを図15のフローチャートを用
いて説明する。
【0087】このプログラムは、内燃機関のクランク軸
に同期して、たとえば4気筒4サイクルエンジンの場
合、180°CA毎に起動されるプログラムである。ま
ず、ステップS201にて、エンジンの運転状態に応じ
てインジェクタにより噴射する基本燃料噴射量Tpを演
算する。この運転状態としては、吸気圧と回転速度、ま
たは、エンジン1回転当たりの吸気量と回転速度とが挙
げられる。そして、運転状態に応じた基本噴射量Tpが
演算されると、ステップS202にて吸気バルブと排気
バルブとの作動位置が呼び出される。
【0088】そして、ステップS203にて、吸気バル
ブと排気バルブとの作動状態から、バルブオーバラップ
量を演算し、ステップS204へ進む。ステップS20
4では、このバルブオーバラップ量の変化度合から、基
本噴射量Tpに対する補正を行うか否かが判定される。
ここで、バルブオーバラップ量の変化がないと判定され
ると、ステップS207へ進み、後述する内部EGRガ
スの吹き戻し状態の変化に応じた補正係数COEF2に
1を入力し、ステップS208へ進む。一方、ステップ
S203にて、バルブオーバラップ量が変化したと判定
されると、ステップS205の処理へと進む。
【0089】ステップS205の処理では、バルブオー
バラップ量の変化に応じたマップ等により、内部EGR
ガスの逆流量と熱量とを演算、もしくは推定する。そし
て、ステップS206にて、内部EGRガスの逆流量と
熱量とから、バルブオーバラップ量の変化に対する補正
係数COEF2を、ステップS205にて演算された逆
流量と熱量とから設定する。バルブオーバラップ量が増
加すると、内部EGRガスの逆流量と熱量とが増加す
る。そこで、この場合は、発明の実施の形態にて示した
通り、空燃比がリッチになった後にリーンになるため、
補正係数としては、基本燃料噴射量Tpに対する補正係
数COEF2としては、減量側に補正した後に、増量側
に補正されるような補正係数を設定する。
【0090】一方、バルブオーバラップ量が減少する
と、内部EGRガスの逆流量と熱量とが減少する。この
場合には、空燃比がリーンになった後にリッチになるた
め、器基本燃料噴射量Tpに対する補正係数COEF2
としては、増量側に補正した後に、減量側に補正される
ような補正係数を設定する。
【0091】つぎに、ステップS208では、運転条件
に応じて設定される補正係数COEF1をマップ等によ
り演算する。この運転条件としては、内燃機関の冷却水
温Thw,内燃機関の回転速度Ne,内燃機関の負荷
(吸気圧、吸気量)のうち少なくとも1つ以上の条件で
ある。
【0092】このような運転条件により基本燃料噴射量
Tpを補正する理由は、機関温度Thwなどの運転条件
は、吸気ポートに付着する付着燃料量に影響を与えるか
らである。たとえば、機関温度Thwが低いときには、
吸気ポートに付着する付着燃料量が増大するため、イン
ジェクタにより噴射される噴射燃料のうち燃焼室内に供
給される燃料量が減少する。このため、付着燃料への影
響を考慮して基本燃料噴射量Tpを補正するようにして
いる。
【0093】つぎに、ステップS209では、これらの
補正係数COEF1,COEF2と図示しないO2セン
サ等の空燃比センサにより検出値に基づいて目標空燃比
に追従させるために基本燃料噴射量を補正するためのフ
ィードバック補正係数FAFと、に基づいて基本燃料噴
射量TpにCOEF1とCOEF2とFAFとを乗算
し、さらに、無効噴射時間Tvを加算して、最終的な燃
料噴射量TAUを演算する。
【0094】以上のように、本実施例では、バルブオー
バラップ量の変化に応じて演算やマップ等により基本燃
料噴射量Tpに対する補正を実施することで、バルブオ
ーバラップ量の変化によって生じる空燃比のリッチ側と
リーン側との変化を補正し、精度良い空燃比制御を実施
するこができる。
【0095】本実施例において、燃料噴射手段は図15
のフローチャートのステップS201に、バルブタイミ
ング設定手段は図3に、燃料噴射量補正手段は図15の
フローチャートのステップS206に、内部燃焼ガス吹
き戻し状態推定手段は図15のフローチャートのステッ
プS205に、それぞれ相当し、機能する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の概略構成図を示す断面図であ
る。
【図2】機関バルブタイミング設定の一例を説明する図
である。
【図3】各運転条件における基本バルブタイミングの設
定例を示す図である。
【図4】基本バルブタイミングの温度補正量を示す図で
ある。
【図5】バルブオーバラップ量急変時の空燃比変動を説
明する図である。
【図6】バルブオーバラップ量急変時の吸気ポート付着
燃料の変化を概念的に説明する図である。
【図7】インジェクタから燃焼室までの燃料輸送系を模
式的に説明する図である。
【図8】本実施の形態の燃料噴射制御のための制御ブロ
ック図である。
【図9】本実施の形態の燃料噴射制御のためのプログラ
ムを説明するメインのフローチャートである。
【図10】バルブオーバラップ量に応じた予測EGR逆
流量と、予測EGR熱量との特性を示す図である。
【図11】予測EGR逆流量に応じた付着率の特性を示
す図である。
【図12】燃料噴射時期に応じた燃料噴射量に対する補
正項の特性を示す図である。
【図13】予測EGR熱量に応じた蒸発率の特性を示す
図である。
【図14】本実施の形態を実施した場合のタイミングチ
ャートである。
【図15】第2の実施の形態のプログラムを説明するフ
ローチャートである。
【符号の説明】
1…カムシャフト、 10…可変バルブタイミング機構、 30…ECU、 51…インジェクタ。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02D 43/00 F02D 43/00 301J 301Z 45/00 364 45/00 364K Fターム(参考) 3G018 AB17 BA34 CA06 DA58 DA60 EA02 EA03 EA04 EA11 EA17 EA31 EA32 EA35 FA08 FA09 FA23 GA08 3G084 AA00 BA13 BA15 BA23 DA12 EA11 FA10 FA11 FA20 FA38 3G092 AA11 BB03 BB06 DA06 EA01 EA02 EA09 EC06 FA05 HA05Z HE03Z 3G301 HA19 JA04 LA07 LC08 MA13 MA18 ND45 NE01 NE06 PA07Z PB10Z PE03Z PE08Z PE10Z

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 吸気ポートに燃料を噴射し、内燃機関の
    燃焼室内に燃料を供給する燃料噴射手段と、内燃機関の
    運転状態に応じて吸気バルブおよび/または排気バルブ
    の駆動タイミングを設定するバルブタイミング設定手段
    とを備える内燃機関の燃料噴射量制御装置において、 前記バルブタイミング設定手段により設定される前記吸
    気バルブおよび/または排気バルブの駆動タイミングが
    変更されたときに、前記変更された駆動タイミングに応
    じて変化する前記吸気ポートに付着する付着燃料量の影
    響を考慮し、前記燃料噴射手段により設定される燃料噴
    射量を増量側または減量側に補正した後に前記補正とは
    他方側に補正する燃料噴射量補正手段を備えることを特
    徴とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  2. 【請求項2】 前記バルブタイミング設定手段により設
    定される駆動タイミングにより、前記吸気バルブと前記
    排気バルブとが同時に開いているバルブオーバラップ量
    が増加する方向に変更されたときに、前記燃料噴射量補
    正手段は、減量側に前記燃料噴射手段により設定される
    燃料噴射量を補正し、減量側の補正後に前記燃料噴射手
    段により設定される燃料噴射量を増量側に補正すること
    を特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射量制
    御装置。
  3. 【請求項3】 前記バルブタイミング設定手段により設
    定される駆動タイミングにより、前記吸気バルブと前記
    排気バルブとが同時に開いているバルブオーバラップ量
    が減少する方向に変更されたときに、前記燃料噴射量補
    正手段は、増量側に前記燃料噴射手段により設定される
    燃料噴射量を補正し、増量側の補正後に前記燃料噴射手
    段により設定される燃料噴射量を減量側に補正すること
    を特徴とする請求項1または請求項2のいずれか一方に
    記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  4. 【請求項4】 前記燃料噴射量補正手段は、内燃機関の
    回転速度と内燃機関の負荷と内燃機関の水温とのうち少
    なくともいずれか一つに基づいて燃料噴射量の補正量を
    設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいず
    れか一つに記載の内燃機関の燃料噴射制御量装置。
  5. 【請求項5】 前記バルブタイミング設定手段により設
    定される前記吸気バルブおよび/または前記排気バルブ
    の駆動タイミングに基づいてバルブオーバラップ量を算
    出するバルブオーバラップ量算出手段と、 前記バルブオーバラップ量算出手段により算出される前
    記吸気バルブと前記排気バルブとのオーバラップ量に基
    づいて、燃焼室内の燃焼にて発生する燃焼ガスの吸気ポ
    ートへの吹き戻しの状態を推定する内部燃焼ガス吹き戻
    し状態推定手段とを備え、 前記内部燃焼ガス吹き戻し状態推定手段により推定され
    る状態に応じて前記吸気ポートに付着する付着燃料への
    影響を考慮することを特徴とする請求項1乃至請求項4
    のいずれか一つに記載の内燃機関の燃料噴射量制御装
    置。
  6. 【請求項6】 前記内部燃焼ガス吹き戻し状態推定手段
    は、前記燃焼ガスの吹き戻しの状態として、前記燃焼ガ
    スの逆流量と、前記燃焼ガスの熱量とを推定することを
    特徴とする請求項5に記載の内燃機関の燃料噴射量制御
    装置。
  7. 【請求項7】 内燃機関の燃焼室内に燃料を供給する燃
    料噴射手段と、内燃機関の運転状態に応じて吸気バルブ
    および/または排気バルブの駆動タイミングを設定する
    バルブタイミング設定手段とを備える内燃機関の燃料噴
    射量制御装置において、 前記バルブタイミング設定手段により設定されるバルブ
    タイミングの変更に応じて前記吸気ポートに付着する付
    着燃料の付着位置を考慮した付着率をα、付着燃料の付
    着位置を考慮した蒸発率をβとし、前記インジェクタに
    より噴射する燃料量の前回値をGF(i−1)、前記吸
    気ポートに付着する付着燃料量の前回値をMf(i−
    1)、前記吸気ポートに付着する付着燃料量の今回値M
    f(i)とたとき、燃料輸送系の関係をモデル化した以
    下に示すアキノのモデル式により前記吸気ポートに付着
    する付着燃料量の今回値Mf(i)を、 Mf(i)=(1−β)・Mf(i−1)+α・G
    F(i−1) に基づいて推定する付着燃料推定手段と、 内燃機関の燃焼室に供給される要求燃料量の今回値をG
    FE(i)としたとき、燃料輸送系の関係をモデル化した
    以下に示すアキノのモデル式により前記インジェクタに
    より噴射する燃料GF(i)を、 GFE(i)=β・Mf(i)+(1−α)・GF(i) に基づいて設定する燃料噴射手段とを備えることを特徴
    とする内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  8. 【請求項8】 前記付着率αと蒸発率βとは、燃焼室近
    傍の吸気ポートに付着する燃料量に対する付着率α1と
    蒸発率β1と、前記燃焼室から所定間隔離れた吸気ポー
    トに付着する燃料量に対する付着率α2と蒸発率β2と
    の2つの異なるパラメータから構成され、 前記燃料噴射手段は、前記2つの異なる付着率と蒸発率
    に対してそれぞれ前記アキノのモデル式を用いて前記吸
    気ポートに付着する燃料量を推定することを特徴とする
    請求項7に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
  9. 【請求項9】 燃焼室内へ供給する燃料の燃料噴射時期
    を設定する燃料噴射時期設定手段を備え、 前記付着率αと前記蒸発率βとは、燃焼ガスの逆流量
    と、燃焼ガスの熱量と、前記燃料噴射時期設定手段によ
    り設定される燃料噴射時期の噴射終了時期とに基づいて
    前記付着率αと前記蒸発率βとを設定することを特徴と
    する請求項7または請求項8のいずれか一方に記載の内
    燃機関の燃料噴射量制御装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7209825B2 (en) 2004-12-17 2007-04-24 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Control apparatus for internal combustion engine
JP2010121617A (ja) * 2008-10-20 2010-06-03 Toyota Motor Corp 燃料噴射装置
WO2014191194A1 (de) * 2013-05-27 2014-12-04 Continental Automotive Gmbh Verfahren und system zur steuerung einer brennkraftmaschine

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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