JP2003012985A - 耐候性に優れたインクジェットプリンター用のインク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 光沢紙やコート紙だけでなく，普通紙に印刷
しても耐水性および耐候性に優れ，長期保存安定性に優
れた顔料分散型または染料系のインクジェットプリンタ
ー用のインクを提供する。 【解決手段】 顔料，染料または反応性染料と２つ以上
の水酸基を有するヒドロキシシラン，水溶性有機溶媒，
イオン交換水，紫外線吸収剤および抗菌剤を混合後，イ
ンクに滅菌処理を施す方法を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は耐水性、耐候性に優
れた印刷画像が得られ、調合が簡単で安価であり、保存
安定性に優れたインクジェットプリンター用のインクに
関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェットプリンター用として水性
染料が用いられて来たが、普通紙上に形成した画像は耐
水性、耐候性に劣っていた。耐水性を改善するために、
多くの研究がされているが、特開２０００−８５２３６
号公報に反応性染料を用い、記録媒体支持体上にアルカ
リ性のインク吸収層を設ける方法が提案されている。ま
た、耐水性や耐候性の改善を目的として、色材に顔料を
用いたインクが開発され、注目され実用化されている。
例えば、米国特許第５０８５６９８号公報にはブロック
共重合体を分散剤に用いる方法、米国特許第５１７２１
３３号公報には特定の水溶性樹脂を用いる方法が提案さ
れている。

【０００３】しかし、水溶性樹脂はインク中に生存する
細菌類により分解し、インクの粘度が大きくなったり、
ゲル化したりしてインクの長期保存安定性が悪く、イン
クジェットノズル内のインクの流れが悪くなり．インク
カートリッジが不良になる場合がある。そこで印刷した
画像が耐水性、耐候性に優れており，長期保存安定性に
優れたインクが要望されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、長期
保存安定性に優れ、印刷した画像が耐水性および耐候性
に優れた顔料分散型または染料系のインクジェットプリ
ンター用のインクを提供することである。更に、インク
の製造が容易で安価であり、光沢紙や特殊の用紙だけで
なく、普通紙に印刷しても耐水性および耐候性に優れた
画像が得られるインクを提供することである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の目的
を達成するために研究を重ねた結果、細菌類により分解
を受け易い分散剤、湿潤剤、界面活性剤等を添加しなく
ても長期保存安定性に優れ、インクジェットノズル内の
インクの流れを良好にする顔料分散型のインクジェット
プリンター用のインクが容易にしかも安価で得られるこ
とがわかり本発明を完成するに至った。

【０００６】色材（染料または顔料），水酸基を有する
水溶性樹脂、２つ以上の水酸基を有するヒドロキシシラ
ン、水溶性有機溶剤、イオン交換水、紫外線吸収剤、抗
菌剤およびその他の添加剤を充分混合後、調製したイン
クを滅菌器内で滅菌処理することにより、上記の目的を
達成することができる。

【０００７】

【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
従来の顔料分散型インクの長期保存安定性が悪いのは，
水溶性樹脂、分散剤、湿潤剤、界面活性剤等がインク中
に棲息している細菌類により分解し、架橋したりしてイ
ンクの粘度が高くなったり、ゲル化したりしてインクジ
ェットノズル内のインクの流れが悪くなると考えられ
る。

【０００８】本発明では、分散剤、湿潤剤、界面活性剤
や殺菌剤を添加しなくても、２つ以上の水酸基を有する
ヒドロキシシランと水酸基を有する水溶性樹脂を添加す
ることによりこれらの機能が現れる。ヒドロキシシラン
化合物としては、アミノアルキレントリアルコキシシラ
ン、アミノペルフルオロアルキレントリアルコキシシラ
ンを加水分解して得られるアミノアルキレントリヒドロ
キシシラン、アミノペルフルオロアルキレントリヒドロ
キシシランが挙げられるが、中でも３−アミノプロピル
トリアルコキシシラン［Ｈ_２ＮＣＨ_２ＣＨ_２ＣＨ_２Ｓｉ
（ＯＲ）_３］と４−アミノペルフルオロブチルトリアル
コキシシラン［Ｈ_２ＮＣＦ_２ＣＦ_２ＣＦ_２ＣＦ_２Ｓｉ
（ＯＲ）_３］。これらのアミノトリアルコキシシランの
加水分解は、トリアルコキシシランと水を混合し、数時
間室温下に放置することにより起こる。

【０００９】本発明に使用される水酸基を有する水溶性
樹脂としては、ポリビニールアルコール、メチルセルロ
ース、エチルセルロース等が挙げられる。これらの水溶
性樹脂の添加量はインク全量に対して、０．１〜１０重
量％が好ましく、０．５〜２重量％がより好ましい。こ
れらの水溶性樹脂は、ジブチル錫ジラウレート（ＤＢＴ
ＤＬ）等の縮合触媒を含有した記録媒体（普通紙、光沢
紙、フイルム）に印刷された後、架橋して水に不溶性の
皮膜を形成すると考えられる。水溶性樹脂の架橋反応式
を下記に示す。

【００１０】

【化１】

【００１１】本発明に使用される黒顔料としては、Ｒａ
ｖｅｎ７０００（コロンビア社製）、Ｍｏｎａｒｃｈ７
００（キャボット社製）、Ｃｏｌｏｒ Ｂｌａｃｋ Ｆ
ＷＩ（デグサ社製）、ＭＡ６００（三菱化学社製）等が
挙げられる。

【００１２】シアン顔料としては、Ｃ．Ｉ．Ｐｉｇｍｅ
ｎｔ Ｂｌｕｅ、マゼンタ顔料としてはＣ．Ｉ．Ｐｉｇ
ｍｅｎｔ Ｒｅｄ５、イエロー顔料としてはＣ．Ｉ．Ｐ
ｉｇｍｅｎｔ Ｙｅｌｌｏｗ１等が挙げられるが、これ
らの顔料の添加量は、インク全量に対して０．５〜８重
量％が好ましい。

【００１３】水溶性染料としては、酸性染料が好まし
く、例えばＣ．Ｉ．アシッドブラック１、Ｃ．Ｉ．アシ
ッドイエロー１、Ｃ．Ｉ．アシッドオレンジ７，Ｃ．
Ｉ．アシッドレッド１、Ｃ．Ｉ．アシッドバイオレット
７等が挙げられるが，これらの染料の添加量は、インク
全量に対して０．３〜１５重量％が好ましい。

【００１４】水溶性有機溶媒としては、インクのゲル化
あるいは凍結を防止するために、多価アルコール類や多
価アルコールのアルキルエーテル類が好ましい。例え
ば、グリセリン、エチレングリコール、ポリエチレング
リコール、プロピレングリコールエチレングリコールメ
チルエーテル等が挙げられるが，これらを１種でも、２
種以上を混合してもよい。

【００１５】また、水溶性有機溶媒としては、メチルア
ルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール
等の低級アルコールやアセトン、テトラヒドロフラン等
を使用することができるが、長期間に亘って分散安定性
を良好にするためには、溶解度パラメーター（ＨＬＢ）
が１１以下の水溶性有機溶媒を添加しないのが望まし
い。また、溶解度パラメーターが１１〜１５の水溶性有
機溶媒のインク全重量に対する含有量を５重量％以下に
するのが望ましく、溶解度パラメーターが１５以上の水
溶性有機溶媒の含有量は５〜５０重量％にするのが望ま
しい。

【００１６】紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン
系，ベンゾトリアゾール系，シアノアクリレート系、サ
リチル酸系が知られているが、ベンゾフェノン系の代表
例としては、２，４−ジヒドロキシベンゾフェノン、ベ
ンゾトリアゾール系の代表例としては２−（２’−ヒド
ロキシ−５’−メチルフェニル）ベンゾトリアゾール、
サリチル酸系の代表例としてはｐ−ｔ−ブチルフェニル
サリシレートが挙げられるが、有機溶媒、特にエタノー
ルへの溶解度が高い、２，４−ジヒドロキシベンゾフェ
ノンとｐ−ｔ−ブチルフェニルサリシレートが好まし
い。紫外線吸収剤の含有量は全インク重量に対して０．
１〜０．５重量％が望ましい。

【００１７】抗菌剤としては，有機系抗菌剤，無機系抗
菌剤および天然抗菌剤が知られているが，有機系抗菌剤
の代表例としてはトリクロサン，クロルヘキシジン，ジ
ンクピリチオン，クロルキシレノール，無機抗菌剤の代
表例としては，銀ゼオライト系，抗菌ガラス，リン酸ジ
ルコニウム銀系，銀錯体系，天然抗菌剤の代表例として
はキトサン，カテキン，ヒノキチオール，孟宗竹等が挙
げられるが，抗菌力，有機溶剤，特にエチルアルコール
に対する溶解度の高い有機系抗菌剤の１種であるトリク
ロサン（商品名 イルガサンＤＰ−３００），クロルキ
シレノール（商品名 ＰＣＭＸ）が好ましい。トリクロ
サンの全インク重量に対する含有量は０．０３〜１００
ｐｐｍ，クロルキシレノールの含有量は１０〜２００ｐ
ｐｍが望ましい。以下に本発明を実施例によりより具体
的に説明するが，本発明はこれらの実施例によって限定
されるものではない。

【００１８】

【実施例】実施例１ 表１に示す混合物を室温で３０分間攪拌し，１ミクロン
のガラス繊維フイルターで濾過し，アルプ社製のレトル
ト高圧蒸気滅菌器（ＰＫ−３０３０型）内で２４時間滅
菌処理し，キャノン社製の空のインクカートリッジＢＣ
Ｉ−２１に注入して，インクジェットプリンターＢｊＣ
−４４０ｊを作動させて，ジブチル錫ジラウレートを
０．０３重量％含有させた普通紙にフルカラーの画像を
印刷して，耐水性，耐候性および保存安定性の試験を行
った。

【００１９】 耐水性試験 ○ ３５℃の水に２４時間浸漬後，変色および退色が全く見られ ない。 × 変色または退色した。 耐候性試験 ○ ３ヶ月屋外暴露後，変色および退色が全く見られない。 △ １ヶ月屋外暴露後，変色および退色が全く見られない。 × ２週間屋外暴露後，変色および退色した。 保存安定性 ○ 調製したインクをインクカートリッジに注入し，カートリッ 試験 ジ本体のインク吐出部にキャップをして，密封したポリエチ レン・アルミニウムラミネート袋中に１年間保存した後，従 来通りの印刷画像が得られた。 × インクジェット内のインクの流れが悪く，従来通りの印刷が できなかった。

【００２０】

【表１】

【００２１】実施例２〜実施例４ 表２に示す紫外線吸収剤および抗菌剤を用いた以外は実
施例１と同様にインクを調製し，空のインクカートリッ
ジに注入し，プリンターを作動させてＤＢＴＤＬを含有
した普通紙に印刷した。耐水性試験，耐候性試験および
保存安定性試験を行った。試験の結果を表２に示す。

【００２２】比較例１ 紫外線吸収剤および抗菌剤を無添加で，さらに滅菌処理
を行わないで実施例１と同様にインクを調製し，ＤＢＴ
ＤＬを含有した普通紙に印刷して，耐水性試験，耐候性
試験および保存安定性の試験を行った。試験の結果を表
２に示す。

【００２３】比較例２ 市販のキャノン社製のインクカートリッジＢＣＩ−２１
を用いて，ＤＢＴＤＬを含有した普通紙に印刷した。耐
水性試験，耐候性試験および保存安定性試験の結果を表
２に示す。

【００２４】

【表２】

【００２５】

【発明の効果】本発明においては，２つ以上の水酸基を
有するヒドロキシシランおよび水酸基を有する水溶性樹
脂を添加することにより，分散剤，湿潤剤および界面活
性剤を添加しなくてもインクを調製することができ，紫
外線吸収剤および抗菌剤をインクに配合し，滅菌器内で
滅菌処理することにより，耐水性および耐候性に優れた
印刷画像が得られ，さらに長期間に亘って保存安定性に
優れたインクジェットプリンター用のインクを容易に安
価に得ることができる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 2C056 EA13 FC02 2H086 BA31 BA59 4J039 AB02 AD06 AE11 BC07 BC09 BC12 BC13 BC16 BC19 BC29 BC31 BC52 BC57 BC65 BE01 BE02 BE04 BE06 BE12 BE19 BE24 CA07 DA02 EA15 EA16 EA17 EA19 EA34 EA38 EA44 GA24

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 色材（染料または顔料）、水酸基を有す
   る水溶性樹脂、２つ以上の水酸基を有するヒドロキシシ
   ラン、水溶性有機溶剤、紫外線吸収剤、抗菌剤およびそ
   の他の添加剤を攪拌混合後、滅菌処理することを特徴と
   するインクジェットプリンター用のインク。
2. 【請求項２】 水酸基を有する水溶性樹脂が、ポリビニ
   ールアルコール、メチルセルロースまたはエチルセルロ
   ースである請求項１に記載のインク。
3. 【請求項３】 ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫
   等のシラノール縮合触媒を含有したインクジェットプリ
   ンター用の記録媒体。