JP2003003948A - 形状記憶合金アクチュエータおよびその設計方法 - Google Patents

形状記憶合金アクチュエータおよびその設計方法

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    • F03GSPRING, WEIGHT, INERTIA OR LIKE MOTORS; MECHANICAL-POWER PRODUCING DEVICES OR MECHANISMS, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR OR USING ENERGY SOURCES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
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    • F03G7/06Mechanical-power-producing mechanisms, not otherwise provided for or using energy sources not otherwise provided for using expansion or contraction of bodies due to heating, cooling, moistening, drying or the like
    • F03G7/065Mechanical-power-producing mechanisms, not otherwise provided for or using energy sources not otherwise provided for using expansion or contraction of bodies due to heating, cooling, moistening, drying or the like using a shape memory element

Abstract

(57)【要約】 【課題】 動作寿命および操作範囲を従来より飛躍的に
長く、広くし、形状および性能を安定にすることができ
る形状記憶合金アクチュエータおよびその設計方法を提
供する。 【解決手段】 低温状態における応力−ひずみ線Dが、
応力マイナスの領域においてひずみ零の位置から右方に
延びるか、またはひずみ零の位置からほぼ応力零の線に
沿って右方に延びる傾きの小さい低勾配部分D1と、比
較的に大きな傾きで右上がりになる高勾配部分D2とを
有する応力−ひずみ特性を有し、二方向性形状記憶効果
を発現する形状記憶合金を、低勾配部分D1と、高勾配
部分D2と、実用応力限界線と、形状回復完了付近ひず
み限界線と実用応力限界線との交点と低温状態における
ひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲まれる領域内において
動作させるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、形状記憶合金を駆
動源とする形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】はじ
めに、従来技術の問題点が容易に理解されるようにする
ため、従来は一般的にはあまり知られていない形状記憶
合金の性質や問題等について述べる。
【0003】一般に形状記憶合金は多結晶体であり、最
大限に形状記憶合金の動きを引き出すという観点だけに
立てば、完全に焼き鈍しを行って結晶を大きくした状態
で、大きな変形を加えればよい。例えば、Ti−Ni系
形状記憶合金の場合、900℃近い温度で数分から数十
分焼き鈍ますことで、このような組織を得ることができ
る。こうした金属組織は、柔らかく、簡単に大変形を与
えることができる。しかし、結晶の大きさや方位がラン
ダムなため、内部には形状記憶効果の大変形についてい
けない部分が発生するので、形状回復時に負荷応力を加
えない状態なら、ある程度大きな形状回復を繰り返すこ
ともできるが、負荷応力が加えられた状態で同様な繰り
返し動作をさせると、いわゆるダレや伸びといった永久
変形を生じやすく、元の形に戻りにくくなる。また、微
視的な材料内部の塑性変形が徐々に蓄積され、変形の障
害となり、変形−形状回復できるひずみ、言い換えれば
運動として取り出せるひずみ(以後運動ひずみという)
も小さくなり、大きな運動ひずみは限られた僅かな回数
しか利用できない。
【0004】実際に使用される形状記憶合金や超弾性材
料では、冷間の強加工と焼きなまし処理の程度を調整す
ることにより、加工硬化でできた堅牢な組織とランダム
に分散した形状記憶効果の起きやすい結晶とが混じり合
った状態に調整されることが多い。加工硬化で生じた部
分が強固な繊維のように形状を保ち、それに囲まれた結
晶が超弾性変形や形状記憶効果による大きな変形を受け
持つ状態にしているのである。形状の安定化には、加工
硬化の他に、不純物の析出等を使うこともある。こうい
った材料は、先述の完全に焼きなました不安定であるが
よく動く材料を、非常に多数回繰り返し動かして落ち着
かせたものと似ており、取り出せる運動ひずみは小さい
ものの、短時間に安定な状態を作れる。工業的には、運
動ひずみが小さくとも、このように安定した素材の方が
扱いやすい。しかし、形状記憶合金としての機能を十分
出し切れてない状態である。
【0005】形状記憶合金の加熱時の形状回復力は、そ
れ自身の材料強度を上回ると考えるのが自然である。言
い換えれば、材料に永久的な変化を生じさせる負荷応力
の限界が形状回復力より小さなところに存在するという
ことである。このような性質は、あまり知られていない
が、形状記憶合金アクチュエータの実用化を難しいもの
にしている最大の原因であり、機構設計を誤ると、耐久
性のあるアクチュエータを作ることはできない。例え
ば、一般的なTi−Ni系形状記憶合金に引っ張りひず
みで1%を越える大きな予変形を与え、拘束した状態で
加熱した際の形状回復力は、材料自身の疲労強度や弾性
限界を上回り、材料自身の性質を変化(劣化)させるに
十分な力を発生する。繰り返し運動させる用途では、こ
れよりも小さなひずみでも、加熱のしかたによっては、
材料内部の局部的な領域において、強い形状回復力がそ
れ自身の組織を破壊することも考えられ、形状記憶合金
の形状や特性を不安定にする大きな要因となる。先述の
ように材料を加工硬化させることにより、強い外力に対
してもある程度形状を安定させることはできるが、形状
記憶効果を示す部分の多くを犠牲にするため、大きな運
動ひずみを利用することができなくなる。現状では、多
くの場合、本来は大きな回復量を持つTi−Ni系形状
記憶合金でも、コイルバネ等に加工し、小さなひずみを
ごまかしながら増幅して利用していることが多い。コイ
ル等に冷間加工される際、加工硬化で材料の強度が増す
一方、小さな予ひずみなら加熱しても結晶は大きな回復
力を発生することがないからである。
【0006】本発明者は、上述のような従来の形状記憶
合金に関する現象が生じる理由を以下のように考えてい
る。形状記憶合金は、一般に図1の模式図に示されるよ
うに多結晶体であるが、結晶粒(粒内)は、超弾性材料
の状態にあるため、大きな変形を受けても、その形状を
回復することができる。しかし結晶粒界部は、組成は結
晶粒のそれと同様でも、変形の方位が異なる隣同士の結
晶を結びつけているため、構造的矛盾や欠陥をもってお
り、結晶粒のような超弾性材というよりむしろ普通材料
に近い性質を有していると考えられる。そして、巨大な
変形を受けて拘束された状態では、変形した結晶粒が形
状記憶効果で発生する形状回復力が、この結晶粒界の強
度より強いため、結晶粒界部が選択的に破壊(塑性変形
等の永久変形や破断)されるものと考えられる。また、
比較的低い応力しか加わってない状態でも、形状回復の
完了点付近では、材料内部で、ほとんどの結晶が最大限
の形状回復を行っている状態のため、結晶粒界に大きな
力が加わり、破壊される部分が生じる可能性がある。こ
のような完全な形状回復の状態で主に結晶粒界部に発生
する、僅かな内部組織の破壊は、運動回数が少ない場合
は目立たないが、10万回を越えるような長寿命を要求
されるアクチュエータ等では、大きな問題になる。従来
の実用化されている形状記憶合金アクチュエータは、環
境温度で動く温度作動素子として利用されているものが
ほとんどで、大きな運動ひずみで10万回を大きく越え
るような使用回数が想定されることは少なく、ここで問
題にしているような応力が負荷されたままの状態で完全
な形状回復に達するまで加熱される例もあまりなかっ
た。そのため、このような問題が見えにくかったと思わ
れる。しかし、通電加熱駆動型の形状記憶合金アクチュ
エータでは、頻繁に過熱されやすい状況がある上、商品
としてはモーターやソレノイドと競合するため、大きな
運動ひずみで長寿命が要求されるので、大きな問題にな
ってくる。
【0007】本発明は、このような従来の事情に鑑みて
なされたもので、本発明の1つの目的は、非常に多数回
の繰り返し動作に耐え、動作寿命を従来より飛躍的に長
くすることができるアクチュエータおよびその設計方法
を提供することを目的とする。
【0008】本発明の他の目的は、形状記憶ひずみのほ
とんど全域を有効に使うことができ、操作範囲を従来よ
り飛躍的に広くすることができる形状記憶合金アクチュ
エータおよびその設計方法を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、形状を安定にするこ
とができる形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法を提供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、性能を安定にするこ
とができる形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法を提供することにある。
【0011】本発明の他の目的は、形状記憶合金の必要
量を非常に簡単に見積もることができる形状記憶合金ア
クチュエータおよびその設計方法を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本出願人は、先に、微細
結晶の多結晶体とされ、結晶の大きさを実質的に均一と
されるとともに、結晶の方向を予定運動方向に適した方
向に実質的に揃えられた形状記憶合金およびこのような
形状記憶合金を得るための処理方法を開示した。ここ
で、予定運動方向とは、引張りやねじり曲げ運動等、処
理後の形状記憶合金をアクチュエータとして使う場合に
想定される方向をいう。例えば線状のものを収縮−伸張
(弛緩)する形で使う場合は引張り方向、コイルバネ形
状で使う場合はねじり方向となる(なお、コイルバネ形
状で使う場合は、加熱時、ねじりおよび曲げ変形からの
形状回復を行うことになるので、厳密に言うと予定運動
方向はねじりおよび曲げ方向と言うこともできるが、実
際にはねじりの要素の比率の方がはるかに高いので、実
質的に予定運動方向はねじり方向である)。この本願出
願人が先に開示した形状記憶合金は、巨大な二方向性
(双方向性)形状記憶効果を発現する。
【0013】ここで、二方向性形状記憶効果とは、一般
的には、一定形状を記憶させた形状記憶合金を低温で変
形した後、加熱すると元の記憶した形状に戻り、これを
低温にすると、前記低温で変形した形状に戻る現象をい
う。すなわち、加熱と冷却だけで、外部からバイアス力
を作用させることなく、形状記憶合金が自発的に形状変
化を繰り返す訳であり、見た目には、低温時に変形した
形状(マルテンサイト状態の形状)と高温時に形状回復
した形状(母相状態の形状)との2つの形状を覚えてい
るような挙動を示すことになる。そして、このような現
象を生じる形状記憶合金を一般に二方向性形状記憶合金
と呼んでいる。文献等によると二方向性形状記憶効果
は、一般的に引張りひずみ換算でε=1%以下の部分的
な現象であり、不安定なため実用化が困難とされてい
る。事実、この現象を利用した実用に供されている機器
類は、これまでのところほとんど見当たらない。
【0014】しかるに、前記特願2000−20492
7において本出願人が開示した形状記憶合金は、形状記
憶効果が発生するほぼ全域、すなわち形状回復可能な全
ひずみ量の範囲で巨大な二方向性形状記憶効果を発生で
きる(多くの場合、無負状態でも引張りひずみで5%以
上の二方向性形状記憶効果を発現することができる)。
この形状記憶合金は、例えば、直線の引張方向に記憶形
状を持つワイヤ状のものでは、加熱すると記憶している
長さに収縮して硬くなる一方、冷却時には、負荷の無い
状態でも、ちょうど筋肉が弛緩するように柔らかくな
り、自分で伸びて低温時の元の長さと形に戻る。そし
て、このような巨大な二方向性形状記憶効果は、無負荷
状態で1億回近い繰り返し動作でも安定して発現する。
【0015】本発明は、このような巨大な二方向性形状
記憶効果を発現する二方向性形状記憶合金に適用するに
好適なものである(なお、本発明は、前記本願出願人が
先に開示した形状記憶合金以外にも、同様に数%に及ぶ
巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向性形状記
憶合金が今後開発されるか、または既に開発されている
ならば、これらの形状記憶合金にも適用できるものと考
えられる)。本発明は、通常の形状記憶合金で考えられ
る最大でも1%前後の小さなひずみ領域を利用する従来
の形状記憶合金アクチュエータおよびその設計方法とは
根本的に異なる。また、通常の形状記憶合金の二方向性
形状記憶効果では、形状記憶合金だけで往復運動を行う
ような応用が考えられることが多いが、本発明は、二方
向性形状記憶効果と他のバイアス力とを組み合わせる
か、または動作方向が反対の2つの形状記憶合金を組み
合わせる場合に好適なものである。また、巨大な二方向
性形状記憶効果を発現する形状記憶合金の使用を前提に
したものであり、一般的な形状記憶合金や従来から報告
されている引っ張りひずみで最大でも1%前後の小さく
て不安定な二方向性形状記憶効果を発現する形状記憶合
金には不適である。従来の二方向性形状記憶合金は、前
述のように強度の塑性加工や不純物析出等による非常に
強い応力場を材料内部に作ることによって作られる性質
のため、本発明が対象とする二方向性形状記憶合金とは
本質的に異なるものである。
【0016】なお、本明細書において、本発明が対象と
する二方向性形状記憶合金とは、完全な二方向性を示さ
ないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で、低温での
変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金をも含むもの
とする。例えば、完全な二方向性を示す形状記憶合金で
引っ張りコイルスプリングを作ると、低温では伸びきっ
てしまった状態が安定なため、製品として扱いにくい。
そのため同じ処理技術を使っていても、低温時の材料内
部の応力をできるだけ零に近づけ、マイナスの応力にな
らないように調整した方がよいことがある(マイナスの
応力については、後に図3に関連して説明する)。しか
しこのような合金は、同様な金属組織を持っているか
ら、巨大なひずみ領域で低温での変形に必要な力が零に
近く、応力−ひずみ線図もほとんど同じ形である。本発
明は、当然このような合金も対象にしており、このよう
な形状記憶合金も二方向性形状記憶合金と呼ぶ。
【0017】形状記憶合金のような機能材料は、材料自
体の性質に注目が集まることが多いが、実用的なものに
するには、材料の改良と同時に使い方の開発や改良の方
が大切である。不完全ながらも実際に使えるものが出て
くれば、材料に求められる性質もより鮮明になって改良
も進む。このように素材とその利用技術は、車の両輪の
ような関係である。本発明は、このような新しい性質を
持った形状記憶合金の新しい使い方を提唱するものであ
る。
【0018】一般的な形状記憶合金を焼きなました標準
材料の応力−ひずみ線図(σ-ε線図)は、図2のよう
になる。形状記憶合金は、Mf点より低い低温で変形す
ると、図2の太線Aのような応力−ひずみ線図を示す
(実線は荷重を増大して行く過程、破線は除荷して行く
過程を示している)。見かけは、鉄等の一般的な金属の
塑性変形と同じような形であるが、ひずみ6〜7%付近
から急激に応力が増加し、ついには破断する。これは、
形状記憶合金の隣り合う原子同士の結びつきが関節を持
ったリンクのような関係で、はじめは比較的小さな力で
変形するが、動きやすい範囲が限定されており、これを
超える変形は、リンクを壊さなくては起こせないためで
ある。一旦低温で変形した形状記憶合金は、低い温度の
ままでは、応力を取り除いても、ほとんど変形が戻らな
い。同じ材料をAf点より高い高温にした状態で引張り
試験を行うと、細線Bのようになる(実線は荷重を増大
して行く過程、破線は除荷して行く過程を示してい
る)。横に寝る形や長さは低温のときと似ているが、変
形させるためにずっと大きな応力が必要になる。この変
形は、力を徐々に取り除くと、はじめに変形させた経路
を下回るような経路をたどって回復する。形状記憶合金
を低温で変形させた後に加熱したときは、経路Hから前
記回復時の経路をたどって、元の形に戻る。しかしこの
ような大きな変形を繰り返し加えていると、原点の位置
や線図の形が変わって行く。これは材料の内部が変化し
てしまうからである。通常は、経験的に変形を小さめに
抑さえることで、こういった変化が生じない範囲で利用
している。この変形の限界は、先に説明したように変形
を受けた結晶粒が加熱時に発生する形状回復力が結晶粒
界の強度を超えない変形の大きさで、最大でも引っ張り
ひずみで1%前後と考えられる。従来の形状記憶合金ア
クチュエータの一般的な設計方法は、低温時と高温時の
応力−ひずみの差を利用するものであり、図2の原点付
近の僅かな範囲にしか適用できない。一般に形状記憶合
金アクチュエータを設計するには、いろいろな制約があ
るが、もっとも注意しなければいけないことは、先に述
べたように低温で大きな変形を与えたまま拘束したり、
強い力を加えた状態で加熱すると、高温で発生する形状
回復力で形状記憶合金は、自分自身を壊してしまうこと
である。
【0019】本発明者のこれまでの経験では、多くの人
は、形状記憶合金の動きや寸法変化には敏感であるが、
発生する力の管理には、ほとんど関心を持たない。形状
記憶合金を普通の材料のスプリングと同じように扱っ
て、知らないうちに性能が劣化したり、寿命を縮めてし
まうのはこのためと考えられる。普通の形状記憶合金で
は、形状回復力やバイアス力を完全に利用できないので
ある。このような性質は、形状記憶合金アクチュエータ
を難しいものにしている大きな原因であり、機構設計を
誤ると耐久性のあるアクチュエータを作ることはできな
い。特に二つの形状記憶合金を相補的に使う差動型とい
われるアクチュエータは、比較的大きな予ひずみを与え
られた二つの形状記憶合金が、同時に加熱されて互いに
強い形状回復力で引き合う状態になりやすい。この状態
は、アクチュエータを動きにくくするだけでなく、先の
ような劣化現象を起こしやすいため、実用化が難しいと
思われる。また実用的な動作寿命に影響を与える限界
も、この変形の限界よりかなり小さいところに存在する
と思われる。本発明者らの経験では、10万回以上の動
作を想定した場合、例えばTi−Ni系形状記憶合金で
は、外部から加わる力とバイアスバネ等のアクチュエー
タの構成要素によって加わる力の和を、引張り応力で1
00Mpaからそれをやや上回る程度以下に制限しない
と使用中に伸びたり、破断したりする虞がある。10万
回というのは、よく使われる民生部品の動作寿命の基準
である。この応力の上限は、図中では、実用応力限界線
と記した横線になる。実際には、この線より下の応力で
しか繰り返し使えないのである。
【0020】低温状態の一般的なTi−Ni系形状記憶
合金では、この応力によって加えることのできる変形
は、大きくても引っ張り応力換算で1%前後である。一
般的な形状記憶合金では、低温時の変形に必要な力が回
復可能なひずみの広い区間でこの実用応力限界線を上回
ってしまう。したがって、たとえ加熱時に力がかからな
いような使い方をしても、大きな変形と形状回復を繰り
返すと材料内部が徐々に変化する。これ以上の大変形域
を利用した往復運動を安定して繰り返すアクチュエータ
を作ることは困難である。このような理由で一般的な形
状記憶合金を使った、繰り返し動作を行うアクチュエー
タでは、板バネやコイルバネ等に加工し、発生する回復
応力が大きくならないように、ひずみを小さく抑えた
り、強い加工硬化をあたえて強度と引き替えに動きを悪
くして狭いひずみの範囲で利用することが多い。従来、
実用化されている多くの形状記憶合金アクチュエータを
よく観察すると、鉄やステンレス等の普通材料のスプリ
ングと同じくらいの小さなひずみ量でしか使っていない
ことが分かる。また種々の文献で公表されているコイル
バネの計算式等は、弾性限度内の僅かな範囲でしか適用
できないものであり、ほとんどの応用は、その範囲で用
を足していることも事実である。素材自体の持つ形状回
復可能な範囲に比べ、先述した形状の不安定さや動作寿
命の問題を生じずに利用できる運動ひずみや負荷応力は
非常に少ないのである。従来の形状記憶合金アクチュエ
ータの実際の設計では、図2の応力−ひずみ線図の原点
付近の非常に狭い範囲で、複雑な応力−ひずみ線図と格
闘することになる。扱うひずみが小さいため材料の厳し
い品質管理と緻密な設計が必要となることは言うまでも
ない。
【0021】図3は、巨大な二方向性形状記憶効果を発
現する二方向性形状記憶合金(以下、特に断らない限
り、単に二方向性形状記憶合金と言うとき、それは本発
明が対象とする巨大な二方向性形状記憶効果を発現する
二方向性形状記憶合金を指すものとする)の応力−ひず
み線図(力−変位線図)であり、加熱されて形状回復
(収縮)した位置を原点にしており、一般的な形状記憶
合金の応力−ひずみ線図に対応するものである。太線D
はMf点より低い低温状態の応力−ひずみ線を示してい
る。細線EはAf点より高い高温状態の応力−ひずみ線
を示している(実線は荷重を増大して行く過程、破線は
除荷して行く過程を示している)。一般的な形状記憶合
金では、加熱・形状回復後、低温に戻しても形状が維持
されるため、高温と低温時の変形の原点はほぼ一致す
る。一方、二方向性形状記憶合金は、低温時は普通の形
状記憶合金でいう変形状態(伸びた状態)で内部の応力
がマイナスから零になるため、実際は図中の点O’で形
状的に安定する。点O’は、応力が零となる点である。
しかしここでは、図2の一般的な形状記憶合金の応力−
ひずみ線図と比較するため、便宜的に、加熱されて収縮
した位置(形状回復した位置)を原点にして図3を表わ
した。二方向性形状記憶合金の高温時の応力−ひずみ線
の形は、一般的な形状記憶合金と大きな違いはないが、
低温時の応力−ひずみ線では、応力がマイナス方向に現
れる。このマイナスの応力のため、力を加えなくても図
中の点O’まで変形する(弛緩伸張する)。
【0022】本発明が対象とする二方向性記憶合金は、
基本的に言って、このように応力−ひずみ線図におい
て、低温状態における応力−ひずみ線Dが、応力マイナ
スの領域においてひずみ零の位置から右方に延びる傾き
の小さい低勾配部分D1と、この低勾配部分D1より右方
において比較的に大きな傾きで右上がりになる高勾配部
分D2とを有するような応力−ひずみ特性を備えてい
る。ただし、前述のように本発明は、完全な二方向性を
示さないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で低温で
の変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金をも対象と
し、この場合は、低勾配部分D1はひずみ零の位置から
ほぼ応力零の線に沿って右方に延びることになる。
【0023】次に、本発明による形状記憶合金のアクチ
ュエータの設計方法を具体的に説明する。まず、二方向
性形状記憶合金も、一般的な形状記憶合金と同様、拘束
したまま加熱されれば材料が傷むので、応力の制限をす
る。すなわち、図3中の横線(実用応力限界線)以下で
利用することにする。この値は、図2に記載した一般的
な形状記憶合金に対する実用応力限界線のそれとほぼ同
じである。しかし、二方向性形状記憶合金の場合は、低
温での変形時に応力が必要ないかまたはほとんど必要な
いため、利用できるひずみの大きさが、応力−ひずみ線
の応力の立ち上がる部分と、この実用応力限界線の交点
で制限される非常に広い範囲になる。なお、本発明にお
いて、応力の限界値を具体的にどのような値にするか
は、必要とするアクチュエータの動作寿命に応じて定め
ることができる。
【0024】次に、形状記憶合金が十分加熱されて形状
回復完了時に到達する、ひずみ領域の手前にも運動ひず
みの限界を設ける。すなわち、前述のように徐々に進行
する材料内部の自己破壊を防ぐため、形状回復完了状態
付近にひずみ一定の直線である形状回復完了付近ひずみ
限界線を設け、基本的には、これより左側では形状記憶
合金を動作させないようにする。ここにおいて、この使
用を禁止した領域は、前記一般的な形状記憶合金の設計
において設定される利用可能なひずみの範囲とほぼ一致
する。つまり従来の一般的な形状記憶合金で利用可能な
範囲(図2で斜線を施した領域)が、本発明の設計方法
では、使用を禁止する領域となる。本発明の設計方法
は、言い方を変えれば、普通の形状記憶合金アクチュエ
ータでは使用しないひずみの部分を主に使う方法であ
る。前記形状回復完了付近ひずみ限界線の具体的な値を
設定する一つの目安は、図5に示すような温度−ひずみ
線図において加熱過程の曲線が横に寝る点(温度T1
点)であり、この点以上に形状回復させると、自己破壊
が始まる傾向があることが本発明者の実験により確認さ
れている。なお、図6は、図5の温度−ひずみ線図の測
定条件を示しており、ワイヤ状の形状記憶合金1に錘2
を吊して測定している。この場合、応力は100Mpa
とされている。図5では、形状記憶合金1の低温時の安
定状態を変位零とし、加熱による形状回復とともに変位
が増大することとなるように縦軸がとられていることに
注意されたい。
【0025】以上のようにして、本発明においては、形
状記憶合金を動作させる範囲を、基本的に言って、応力
−ひずみ線図(力−変位線図)において図3の斜線を施
した領域とする。このような領域内で形状記憶合金を使
用することにより、形状記憶合金の記憶形状の消失や性
能低下に結びつく自己破壊を生じることなく、形状記憶
ひずみのほとんど全域を有効に使い、非常に長寿命とす
ることができる。ただし、前記斜線の領域に加えて、図
3中の格子縞模様を施した領域(低勾配部分D 1と、形
状回復完了付近ひずみ限界線と、実用応力限界線と形状
回復完了付近ひずみ限界線との交点と低温状態における
ひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲まれる領域)も、応力
を十分小さくするか、または形状回復を完了させなけれ
ば、前記形状記憶合金の自己破壊を防止可能であるの
で、利用できる可能性はある。
【0026】図4は、本願発明のアクチュエータ設計法
をより実用に便利にするために、二方向性形状記憶合金
の使用領域を簡略化して考えたものである。すなわち、
前記図3の斜線を施された形状記憶合金の動作領域を、
応力零の線と、高勾配部分D 2に近似した直線と、実用
応力限界線と、形状回復完了付近ひずみ限界線とで囲ま
れる斜線を施した四角形の領域に簡略化して考える。こ
の範囲に加えて、図4中の格子縞模様を施した領域(応
力零の線と、実用応力限界線と、実用応力限界線と形状
回復完了付近ひずみ限界線との交点と原点とを結ぶ直線
とで囲まれる領域)も、応力を十分小さくするか、また
は形状回復を完了させなければ、利用できる可能性はあ
る。なお、図4においては、低勾配部分D1もそれに近
似した直線で示している。
【0027】このように簡易化することにより、精緻な
応力−ひずみ線図は考える必要がなくなる。利用できる
力と変位が、高温のときは実用応力限界線をたどり、低
温のときは原点(応力およびひずみ零の点)を通る応力
零の線をたどるものと考える訳である。二方向性形状記
憶合金の機械的な特性は、このように簡単な図形にまと
めることができるため、アクチュエータ設計が非常に簡
単なり、自由度が増す。
【0028】図19は、本発明による設計法を適用した
アクチュエータモデルの寿命試験の結果(途中経過)を
示している(比較のために、従来の一般的形状記憶合金
の動作寿命を併せて示している)。負荷応力100Mp
a、引っ張りで運動ひずみ3%のものは、これまで1億
3千万回、同一応力で運動ひずみ4.5%のものは、9
百万回を越える動作をしており、破断等の問題もなく、
現在も試験を続行中である。運動ひずみの範囲や電気抵
抗値等の物性的な変化もほとんど認められないため、材
料内部で塑性ひずみの発生や進行等も起こっておらず材
料がきわめて安定な条件で運動しているものと考えられ
る。従来の形状記憶合金アクチュエータは、負荷応力1
00Mpaで運動ひずみ2%の場合10万回を越える操
作を安定に行うことが難しかったことを考えれば、驚異
的な性能と考えられる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
説明する。
【0030】
【実施例】図7は、本発明によるアクチュエータの一実
施例を示す。応力限界設定バネ3は、本実施例において
応力限界設定手段を構成するもので、形状記憶合金では
ない通常の金属で構成された引張コイルバネからなり、
その一端部はバネ取付具4を介してアクチュエータ本体
5に取り付けられている。前記応力限界設定バネ3は、
図8に示されるように初期状態(外力を作用されておら
ず、該バネ3の変位が零の状態)において、所定の大き
さの引張方向の初期バネ力(初張力)を有する特性のも
のとされている。前記応力限界設定バネ3の他端部に
は、接合具6を介してワイヤ状の形状記憶合金1の一端
部が取り付けられている。前記形状記憶合金1は、前記
特願2000−204927において本出願人が開示し
た方法により作成された巨大な二方向性形状記憶効果を
発現するTi−Ni系またはTi−Ni−Cu系二方向
性形状記憶合金であり、図7に示されている状態より短
い長さの状態を記憶している。この形状記憶合金1の他
端部は、該合金1が延びる方向と平行方向に移動可能な
操作端部材7に取り付けられている。この操作端部材7
とアクチュエータ本体5との間には形状記憶合金ではな
い通常の金属で構成された引張コイルバネからなるバイ
アスバネ8の一端部が取り付けられている。このバイア
スバネ8の他端部は、バネ取付具4と反対位置におい
て、バネ取付具9を介してアクチュエータ本体5に取り
付けられている。ここにおいて、前記バイアスバネ8
は、操作端部材7を介して形状記憶合金1を引っ張るよ
うに付勢している。このアクチュエータは操作端部材7
を介して負荷(図示せず)を駆動するようになってい
る。
【0031】前記操作端部材7には通電ブラシ10が取
り付けられており、この通電ブラシ10は形状記憶合金
1の操作端部材7側の端部に電気的に接続されるととも
に、導体11に摺接されている。前記導体11はアクチ
ュエータ本体5に対して固定設置されており、形状記憶
合金1が延びる方向と平行方向に延びている。前記通電
ブラシ10および導体11は、一種のリミットスイッチ
(センサー)の機能を果たして、本実施例においてひず
み限界設定手段を構成するものである。前記導体11は
電源12の一方の極に電気的に接続されており、電源1
2の他方の極はスイッチ13を介して形状記憶合金1の
応力限界設定バネ3側の端部に電気的に接続されてい
る。
【0032】本実施例を理解しやすくするため、便宜
上、まず、本実施例のアクチュエータが適切に設計され
たものとして、その基本的な動作を説明する。スイッチ
13をオンにすると、電源12−導体11−通電ブラシ
10−形状記憶合金1−スイッチ13−電源12の経路
で電流が流れ、ジュール熱により形状記憶合金1が所定
温度範囲まで加熱され、形状記憶効果によりバイアスバ
ネ8に抗して記憶している長さに戻ろうとして収縮する
ので、操作端部材7が図上左方に移動する。他方、スイ
ッチ13をオフにすると、形状記憶合金1に対する通電
が停止され、形状記憶合金1が冷却して該合金1が弛緩
して自ら伸び変形しようとする上、バイアスバネ8が引
っ張り力を作用しているので、形状記憶合金1は伸び変
形し、操作端部材7は図上右方に移動する。以後、同様
にしてスイッチ13がオンオフされる毎に、形状記憶合
金1が伸縮し、操作端部材7は図上左右に往復運動す
る。
【0033】次に、本実施例における設計方法を説明す
る。ここでは、図4と同様に簡略化された図9の応力−
ひずみ線図を用いて形状記憶合金1の動作領域を決定す
る。すなわち、応力零の線と、高勾配部分D2に近似し
た直線と、実用応力限界線と、形状回復完了付近ひずみ
限界線とで囲まれる領域(斜線を施した領域)を形状記
憶合金の動作領域とする。
【0034】実用応力限界線の値、すなわち応力の実用
限界値は、予め行っておく基礎実験による寿命のデータ
に基づいて、このアクチュエータに要求される寿命に応
じた値とする。そして、応力限界設定バネ3の初期バネ
力(初張力)をこの決定された応力の実用限界値に対応
した大きさに設定する。すると、形状記憶合金1に作用
する応力が前記実用限界値以下の場合は、応力限界設定
バネ3は伸ばされないので、形状記憶合金1と応力限界
設定バネ3との接続部はアクチュエータ本体5に対し固
定されているため、アクチュエータは前述のように動作
する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が前記限
界値を超えようとすると、応力限界設定バネ3が伸ばさ
れるので、形状記憶合金1に作用する応力が前記実用限
界値を超えることが防止される。これにより、図9にお
いて形状記憶合金1の動作範囲を実用応力限界線より下
方とすることができる。なお、操作端部材7に掛かる負
荷の大きさ等から考えて、形状記憶合金1に作用する応
力が実用応力限界線を越えることはないことが明らかな
場合は、応力限界設定バネ3等の応力限界設定手段を省
略することができる。
【0035】形状回復完了付近ひずみ限界線のひずみの
値は、前記図5のような温度−ひずみ線図において、加
熱過程の曲線が横に寝る点(温度T1の点)のひずみの
値とする。そして、形状記憶合金1がこの形状回復完了
付近ひずみ限界線まで形状回復して来ると、通電ブラシ
10が導体11から離れてしまうように通電ブラシ10
と導体11の位置関係を設定する。すると、形状記憶合
金1が形状回復完了付近ひずみ限界線まで形状回復しな
い間は、通電ブラシ10と導体11とが接触しているの
で、アクチュエータは前述のように動作するが、形状記
憶合金1が形状回復完了付近ひずみ限界線まで形状回復
してくると、通電ブラシ10と導体11とが非接触にな
り、形状記憶合金1に対する通電ひいては加熱が停止さ
れるので、形状記憶合金1の形状回復が停止される。こ
れにより、図9において形状記憶合金1の動作範囲を形
状回復完了付近ひずみ限界線より右方とすることができ
る。
【0036】次に、バイアスバネ8の設定について述べ
る。形状記憶合金1の応力−ひずみ線図(力−変位線
図)にバイアスバネ8のそれを重ね、バイアスバネ8の
線が形状記憶合金1の動作領域を横切るようにバイアス
バネ8のバネ定数(バイアスバネ8の線の傾き)および
変位が特定の値であるときのバネの力の大きさを設定す
る。例えば図9のようにバイアスバネ8のバネ定数等を
設定した場合、操作端部材7に対し外力が作用していな
いとすると、形状記憶合金1が低温状態では、該合金1
がバイアスバネ8を変形させようとする力は最大でも零
であるから、操作端部材7はバイアスバネ8の力で低温
状態の形状記憶合金1の応力−ひずみ線が立ち上がる部
分とバイアスバネ8の線との交点cまで動かされる。低
温では、この状態で安定し、交点cの位置がアクチュエ
ータの動作の原点になる。形状記憶合金1を加熱し高温
にしたときは、形状記憶合金1の形状回復力がバイアス
バネ8の力を上回るので、操作端部材7はバイアスバネ
8の線と形状回復完了付近ひずみ限界線との交点hまで
動くと考える。このようにバイアスバネ8の線が形状回
復完了付近ひずみ限界線および低温時の応力−ひずみ線
の高勾配部分D2に交差するようにすれば、運動ひずみ
(変位)のほぼ全域がアクチュエータの有効操作ひずみ
量となる。なお、実用応力限界線とバイアスバネ8の線
との差が加熱時のアクチュエータの有効操作力となり、
バイアスバネ8の線と低温時の形状記憶合金1の応力−
ひずみ線の低勾配部分D1との差が冷却のアクチュエー
タの有効操作力となる。したがって、図9により、加熱
時と冷却時にそれぞれ必要な有効操作力を考えてバイア
スバネ8の特性を設定することができる。
【0037】なお、図9から明らかなように、極端な例
では、図9においてバイアスバネ8の線が応力零の線に
近くなるような弱いバネを用い、バイアス力がほとんど
ないような状態としても、往復運動ができるアクチュエ
ータを作ることができる。この場合、形状回復力をほぼ
完全に有効に取り出せるが、冷却時の有効操作力はほぼ
零になる。動くだけならバイアス力は必要ないのであ
る。また、長寿命を狙って実用応力限界線を低くして
も、アクチュエータの操作量は大きく変わらない。少し
強いバイアス力を使えば、変態点を上昇させることもで
きるし、低温時にその力を反対方向の運動に有効に使え
る。さらに、図9においてバイアスバネ8の線が実用応
力限界線と交差するようにしてもよいが、その場合は、
アクチュエータの有効操作ひずみ量が減少する。
【0038】このような本発明の設計法を適用すると、
アクチュエータに必要な二方向性形状記憶合金1の量を
見積もることも非常に簡単に行えるようになる。二方向
性形状記憶合金1の運動を図4や9のように加熱時の実
用最大応力一定、最低応力ほぼ零と考えることができる
ため、実用最大応力と通常4.5〜5%の運動ひずみ量
との積を材料によってほぼ一定と考えることができる。
したがってアクチュエータに必要な出力をこの値で割れ
ば、必要な材料の量が得られることになる。例えば、図
20に示すようにワイヤ状の二方向性形状記憶合金1m
当たり1ストローク(1収縮)毎の実用最大仕事量をW
p、実用最大負荷荷重をFp、実用最大操作変位をLp
すると、 Fp=応力σ×断面積A Lp=材料長さL×運動ひずみε Wp=Fp×Lp (kgf・mm/m ) =k×A×L(kは一定値) =k×体積 これにより、形状記憶合金1の径または長さの一方を決
めれば、他方も決まる。
【0039】図10は、図7の応力限界設定バネ3に代
えて使用することができる応力限界設定手段の他の実施
例を示している。本実施例においては、応力限界設定手
段は板バネ14とバネ拘束体15とからなり、板バネ1
4の一端部はアクチュエータ本体5に取り付けられてい
る。前記板バネ14の他端部には図7の形状記憶合金1
の一端部が取り付けられる。前記板バネ14は、もしバ
ネ拘束体15がないとすると、形状記憶合金1から力を
作用されない状態では一点鎖線で示すように図上左方に
湾曲するようになっているが、実際には実線で示される
ようにバネ拘束体15に当接されて真直ぐな状態となる
ようにされている。これにより、板バネ14は図7の応
力限界設定バネ3の初張力に相当する初期バネ力を有し
ている。
【0040】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が所定の実用限界値以下の場合は、応力限界
設定バネ3は図の実線で示されるような真直ぐな状態と
なっており、形状記憶合金1と板バネ14との接続部は
アクチュエータ本体5に対し固定されているため、アク
チュエータは通常通り動作する。しかし、形状記憶合金
1に作用する応力が前記実用限界値を超えようとする
と、板バネ14が形状記憶合金1の応力を緩和させる方
向、すなわち二点鎖線で示すように自由な状態とは逆方
向に湾曲され、バネ拘束体15から離間するので、形状
記憶合金1に作用する応力は前記実用限界値を超えな
い。
【0041】図11は、応力限界設定手段のさらに他の
実施例を示している。本実施例においては、応力限界設
定手段は外筒部材16と、内筒部材17と、形状記憶合
金ではない圧縮コイルバネ22とを有してなる。前記外
筒部材16の図上左端部はアクチュエータ本体5に取り
付けられた取付具4に回動軸19を中心として回動可能
に支持されており、この外筒部材16の内周には内筒部
材17が軸方向に移動可能に嵌合されている。前記内筒
部材17の図上右端部には図7の形状記憶合金1の図上
左端部が取り付けられる。前記外筒部材16に固定的に
設けられていて内方に突出するバネ受け20は、内筒部
材17の周壁に軸方向と平行方向に設けられたスリット
21から内筒部材17内に侵入している。前記バネ受け
20と内筒部材17の底部との間には前記圧縮コイルバ
ネ22が介装されており、この圧縮コイルバネ22は外
筒部材16に対して内筒部材17を図上左方に付勢して
いる。これにより、通常は、図11のようにバネ受け2
0がスリット21の図上右端部に当接し、外筒部材16
に対して内筒部材17がそれ以上左方に動けない状態と
なっている。この状態において圧縮コイルバネ22は図
7の応力限界設定バネ3の初張力に相当する初期バネ力
を有している。
【0042】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が所定の実用限界値以下の場合は、圧縮コイ
ルバネ22の力によりバネ受け20がスリット21の図
上右端部に当接した状態となっており、形状記憶合金1
と内筒部材17との接続部はアクチュエータ本体5に対
し固定されているため、アクチュエータは通常通り動作
する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が前記実
用限界値を超えようとすると、圧縮コイルバネ22が一
層圧縮され、外筒部材16に対して内筒部材17が図上
右方に移動するので、形状記憶合金1に作用する応力は
前記実用限界値を超えない。
【0043】図12は、本発明によるアクチュエータの
他の実施例を示している。本実施例においては、応力限
界設定手段は図10のそれと同様の板バネ14およびバ
ネ拘束体15を備えているが、板バネ14およびバネ拘
束体15にはそれぞれ接点24,25が設けられてお
り、形状記憶合金1に作用する応力が所定の実用限界値
以下の場合は、2つの接点24,25が互いに接触され
るようになっている。前記板バネ14およびバネ拘束体
15は導電性を有しており、接点24は板バネ14を介
して形状記憶合金1の一端に接続される一方、接点25
はバネ拘束体15を介してスイッチ13の一方の極に電
気的に接続されている。他の構成は前記図7の実施例と
同様である。
【0044】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が前記実用限界値以下の場合は、板バネ14
は図の実線で示されるように真直ぐな状態となってい
て、形状記憶合金1と板バネ14との接続部はアクチュ
エータ本体5に対し固定されており、2つの接点24,
25が互いに接触されているため、アクチュエータは通
常通り動作する。しかし、形状記憶合金1に作用する応
力が前記実用限界値を超えようとすると、板バネ14が
二点鎖線で示すように自由な状態とは逆方向に湾曲さ
れ、バネ拘束体15から離間し、板バネ14と形状記憶
合金1との接続部が形状記憶合金1に作用する応力を緩
和する方向(図上右方)に移動すると同時に、2つの接
点24,25が互いに離間され、形状記憶合金1に対す
る通電が停止されるので、形状記憶合金1に作用する応
力は前記実用限界値を超えない。
【0045】図13は、図12の応力限界設定手段に代
えて使用することができる応力限界設定手段の他の実施
例を示している。本実施例においては、応力限界設定手
段のバネ拘束体26はアクチュエータ本体5に取り付け
られた取付具4に回動軸28を中心として回動可能に支
持されている。このバネ拘束体26内には接点25が固
定されるとともに、板バネ29がその両端部を支持され
て装着されている。前記板バネ29はその中央部に接点
24を固定されるとともに、図12の形状記憶合金1の
左端部を接続される。前記板バネ29は自由な状態では
図示の状態よりさらに回動軸28側に大きく湾曲される
ようになっており、これにより形状記憶合金1から力を
作用されない状態では、形状記憶合金1の所定の応力の
実用限界値に対応する初期バネ力で接点24を接点25
に押圧している。接点24,25は図12の場合と同様
にそれぞれスイッチ13、形状記憶合金1に電気的に接
続される。
【0046】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が前記実用限界値以下の場合は、板バネ29
の初期バネ力により接点24,25が互いに接触させる
状態に湾曲されているため、アクチュエータは通常通り
動作する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が実
用限界値を超えようとすると、板バネ29の湾曲が小さ
くなり、板バネ29と形状記憶合金1との接続部が形状
記憶合金1に作用する応力を緩和する方向(図上右方)
に移動すると同時に、2つの接点24,25が互いに離
間され、形状記憶合金1に対する通電が停止されるの
で、形状記憶合金1に作用する応力は前記実用限界値を
超えない。
【0047】図14は、本発明によるアクチュエータの
さらに他の実施例を示す。アクチュエータ本体5に固定
された取付具4には、接合具6を介して前記各実施例と
同様のワイヤ状の形状記憶合金1の一端部が取り付けら
れている。この形状記憶合金1は、図14に示されてい
る状態より短い長さの状態を記憶している。操作端部材
7は、基本的には直線状のアーム状をなしていて、その
中間部をアクチュエータ本体5に立設された軸30に回
動可能に支持されている。前記操作端部材7には、軸3
0と同軸になるようにして横断面円形のプーリー状の巻
き掛け部31が一体的に設けられている。前記形状記憶
合金1の他端部は巻き掛け部31の外周の1点に固定さ
れており、この端部付近の部分は巻掛け部31の外周に
巻き掛けられている。前記アクチュエータ本体5に立設
されたピン32と操作端部材7の一端部との間には、形
状記憶合金ではない通常の金属で構成された引張コイル
バネからなるバイアスバネ8が介装されており、このバ
イアスバネ8は操作端部材7を形状記憶合金1を伸張す
る方向、すなわち図上時計方向に付勢している。このア
クチュエータは操作端部材7の他端部側(図上上端部)
を介して負荷(図示せず)を駆動するようになってい
る。
【0048】応力管理素子33は本実施例における応力
限界設定手段を構成しており、次のような構成を有して
いる(図15はこの応力管理素子33の拡大断面図であ
る)。ケース34内には形状記憶合金1と同一材料から
なるワイヤ状の参照用形状記憶合金35が収容されてお
り、この参照形状記憶合金35の一端部はケース34の
一方の端部に取り付けられている。前記参照用形状記憶
合金35の他端部にはバネ受け36が取り付けられてい
る。前記バネ受け36には接点37が固定されており、
この接点37はケース34の他方の端部の内面に固定さ
れた接点38に対向されている。前記バネ受け36とケ
ース34の接点38と反対側の端部との間には形状記憶
合金ではない通常の金属で構成された圧縮コイルバネか
らなるバイアスバネ39が介装されており、このバイア
スバネ39は参照用形状記憶合金35を、該合金35を
伸ばして接点37を接点38に接触させる方向に付勢し
ている。前記バイアスバネ39は、形状記憶合金1の所
定の応力の実用限界値に対応する初期バネ力で接点37
を接点38に押圧している。前記参照用形状記憶合金3
5のバネ受け36と反対側の端部はスイッチ13を介し
て電源12の一方の極に接続されており、この電源12
の他方の極は形状記憶合金1の巻き掛け部31側の端部
に電気的に接続されている。接点38は次に説明するひ
ずみ管理素子40に電気的に接続されている。
【0049】前記ひずみ管理素子40は本実施例におけ
るひずみ限界設定手段を構成しており、次のような構成
を有している(図17はこのひずみ管理素子40の拡大
断面図である)。ケース41内には形状記憶合金1と同
一材料からなるワイヤ状の参照用形状記憶合金42が収
容されており、この参照用形状記憶合金42の一端部は
ケース41の一方の端部に取り付けられるとともに、応
力管理素子33の接点38に電気的に接続されている。
前記参照用形状記憶合金42の他端部にはブラシ支持体
43が取り付けられている。このブラシ支持体43とケ
ース41の反対側の端部との間には形状記憶合金ではな
い通常の金属で構成された圧縮コイルバネからなるバイ
アスバネ44が介装されており、このバイアスバネ44
は参照用形状記憶合金42を伸ばす方向に付勢してい
る。前記ブラシ支持体43に設けられた通電ブラシ45
は、ブラシ支持体43を介して参照用形状記憶合金42
に電気的に接続されるとともに、導体46に摺接されて
いる。前記導体46はケース41内に固定設置されてお
り、参照用形状記憶合金42と平行方向に延びている。
前記導体46は形状記憶合金1の取付具4側の端部に電
気的に接続されている。
【0050】本実施例を理解しやすくするため、まず、
本実施例が適切に設計されたものとして、本実施例の基
本的な動作を説明する。スイッチ13をオンにすると、
電源12−形状記憶合金1−ひずみ管理素子40の導体
46−通電ブラシ45−参照用形状記憶合金42−応力
管理素子33の接点38−接点37−参照用形状記憶合
金35−スイッチ13−電源12の経路で電流が流れ、
形状記憶合金1が所定温度範囲まで加熱され、形状記憶
効果によりバイアスバネ8に抗して記憶している長さに
戻ろうして収縮するので、操作端部材7が図上反時計方
向に回動する。他方、スイッチ13をオフにすると、形
状記憶合金1に対する通電が停止され、形状記憶合金1
が冷却して、バイアスバネ8により操作端部材7は図上
時計方向に回動する。なお、このとき形状記憶合金1は
弛緩し、バイアスバネ8の付勢力によってのみならず、
自らも伸び変形しようとする。以後、同様にしてスイッ
チ13がオンオフされる毎に、形状記憶合金1が伸縮
し、操作端部材7は図上反時計方向および時計方向に往
復運動する。
【0051】本実施例においても、図7の実施例の場合
と全く同様にして、図9に示したような応力−ひずみ線
図を用いてアクチュエータの設計を行うことができる。
また、本実施例では、形状記憶合金1、応力管理素子3
3の参照用形状記憶合金35およびひずみ管理素子40
の参照用形状記憶合金42が直列に接続されているの
で、各形状記憶合金1,35,42には同一の電流が流
れる。したがって、応力管理素子33のバイアスバネ3
9の初期バネ力を適切に設定しておけば、形状記憶合金
1の応力が前記実用限界値に達することとなるような状
態になったとき、参照形状記憶合金35も形状記憶合金
1と同様の加熱状態となり、参照形状記憶合金35の形
状回復力により応力管理素子33の接点37,38が離
間し、形状記憶合金1に対する通電が停止されることに
より、形状記憶合金1の応力が前記実用限界値を超えな
いようにすることができる。また、同様にして、ひずみ
管理素子40の通電ブラシ45が導体46から離れる位
置を適切に設定しておけば、形状記憶合金1が形状回復
完了付近ひずみ限界線のひずみの値まで形状回復してく
ると、通電ブラシ45と導体46とが非接触になり、形
状記憶合金1に対する通電ひいては加熱停止され、形状
記憶合金1の形状回復が停止されるようにすることがで
きる。このようにして本実施例では、応力管理素子33
およびひずみ管理素子40により、電流を介して間接的
に駆動用形状記憶合金1の応力および形状回復完了状態
付近のひずみの管理を行うことができる。これらの素子
33,40は、前記各実施例におけるように駆動用形状
記憶合金1に直接機械的に連係する応力限界設定手段や
ひずみ限界設定手段を設置しにくい場合に特に有効であ
る。
【0052】図17は、本発明によるアクチュエータの
さらに別の実施例を示す。本実施例は、バイアス力とし
て重力を利用する例である。アクチュエータ本体5には
プーリー47が回転可能に支持されている。このプーリ
ー47に巻き掛けられた糸の一端部は操作端部材7に取
り付けられており、この糸48の他端部には錘49が吊
り下げられている。このようにバイアス手段としてバネ
8の代わりに重力(錘49)が用いられるになっている
以外は、本実施例の構成は前記図7の実施例のそれと同
様の構成とされている。
【0053】本実施例を理解しやすくするため、まず、
本実施例が適切に設定されたものとして、本実施例の基
本的な動作を説明する。スイッチ13をオンにすると、
形状記憶合金1に通電され、該合金1が所定温度範囲ま
で加熱され、バイアスバネ8に抗して記憶している長さ
に戻ろうとして収縮するので、操作端部材7が図上左方
に移動する。他方、スイッチ13をオフにすると、形状
記憶合金1に対する通電が停止され、形状記憶合金1が
冷却して該合金1が弛緩して自ら伸び変形しようとする
上、錘49が引っ張り力を作用しているので、形状記憶
合金1は伸び変形し、操作端部材7は図上右方に移動す
る。以後、同様にしてスイッチ12がオンオフされる毎
に、形状記憶合金1が伸縮し、操作端部材7は図上左右
に往復運動する。
【0054】次に、本実施例における設計方法を説明す
る。本実施例においても、図4および9と同様に簡略化
された図18の応力−ひずみ線図を用いて形状記憶合金
1の動作領域を決定することとし、実用応力限界線およ
び形状回復完了付近ひずみ限界線を図9の場合と同様に
して定める。次に、形状記憶合金1の応力−ひずみ線図
(力−変位線図)に錘49による重力の線を重ね、この
重力の線が形状記憶合金1の動作領域を横切るように錘
49の重さを設定する。重力の線は図では水平になるの
で、形状記憶合金1の動作変位が変化しても操作力の変
化はほとんどない。錘49によるバイアス力を限界応力
の半分になるように設定すれば、アクチュエータのほぼ
全操作量の範囲で往復とも同じ力を発生できるアクチュ
エータを作ることができる。応力限界設定バネ3(応力
限界設定手段)並びに通電ブラシ10および導体11
(ひずみ限界設定手段)の作用は図7の実施例の場合と
同様である。
【0055】なお、本発明においては、応力限界設定手
段やひずみ限界設定手段としては、前記各実施例に示し
た以外の形式のものも使用できる。勿論、前記各実施例
におけるスイッチやブラシの部分を電子的なセンサーや
半導体に置き換えることもできる。
【0056】また、本発明においては、バイアス手段と
しては、前記各実施例のようなものに限られることはな
く、形状記憶合金の動作領域を横切って、変位を大きく
とれるなら、どんなものでもよい。また、動作方向が反
対の2つの形状記憶合金を組み合わせて用いることも可
能である。
【0057】また、前記各実施例では形状記憶合金はワ
イヤ状とされているが、本発明においては形状記憶合金
はコイル状、板状等のワイヤ状以外の形状とされていて
もよい。
【0058】また、本発明における形状記憶合金とアク
チュエータの操作端との連係機構は、前記各実施例のよ
うな機構に限られることはない。
【0059】
【発明の効果】以上のように本発明は、(イ)動作寿命
を従来より飛躍的に長くすることができる、(ロ)操作
範囲を従来より飛躍的に広くすることができる、(ハ)
形状および性能を安定にすることができる、(ニ)アク
チュエータに必要な形状記憶合金の量を非常に簡単に見
積もることができる、等の優れた効果を得られるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】形状記憶合金の金属組織を示す模式図である。
【図2】従来の一般的なTi−Ni系形状記憶合金の代
表的な応力−ひずみ線図である。
【図3】巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向
性形状記憶合金の代表的な応力−ひずみ線図である。
【図4】図3を簡略化した応力−ひずみ線図である。
【図5】巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向
性形状記憶合金の代表的な温度−ひずみ線図である。
【図6】図5の温度−ひずみ線図の測定条件を示す正面
図である。
【図7】本発明によるアクチュエータの一実施例を示す
正面図である。
【図8】図7の実施例における応力限界設定バネの特性
を示す特性図である。
【図9】図7の実施例における設計方法を示す応力−ひ
ずみ線図である。
【図10】応力限界設定手段の他の実施例を示す正面図
である。
【図11】応力限界設定手段のさらに他の実施例を示す
断面図である。
【図12】本発明によるアクチュエータの他の実施例を
示す正面図である。
【図13】応力限界設定手段の別の実施例を示す断面図
である。
【図14】本発明によるアクチュエータのさらに他の実
施例を示す正面図である。
【図15】図14の実施例における応力管理素子を示す
拡大断面図である。
【図16】図14の実施例におけるひずみ管理素子を示
す拡大断面図である。
【図17】本発明によるアクチュエータのさらに別の実
施例を示す正面図である。
【図18】図17の実施例における設計方法を示す応力
−ひずみ線図である。
【図19】本発明による設計法を適用したアクチュエー
タモデルの寿命試験の結果(途中経過)を示すグラフで
ある。
【図20】二方向性形状記憶合金の1ストローク毎の仕
事量と必要な形状記憶合金の量の概算の説明図である。
【符号の説明】
D 低温状態における応力−ひずみ線 D1 低勾配部分 D2 高勾配部分 1 形状記憶合金 3 応力限界設定バネ(応力限界設定手段) 7 操作端部材 8 バイアスバネ 10 通電ブラシ(ひずみ限界設定手段) 11 導体(ひずみ限界設定手段) 14 板バネ(応力限界設定手段) 15 バネ拘束体(応力限界設定手段) 16 外筒部材(応力限界設定手段) 17 内筒部材(応力限界設定手段) 22 圧縮コイルバネ 24,25 接点(応力限界設定手段) 26 バネ拘束体(応力限界設定手段) 33 応力管理素子(応力限界設定手段) 35 参照用形状記憶合金 39 圧縮コイルバネ 40 ひずみ管理素子(ひずみ限界設定手段) 42 参照用形状記憶合金 44 圧縮コイルバネ 45 通電ブラシ 46 導体
【手続補正書】
【提出日】平成14年6月19日(2002.6.1
9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 形状記憶合金アクチュエータおよびそ
の設計方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、形状記憶合金を駆
動源とする形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】はじ
めに、従来技術の問題点が容易に理解されるようにする
ため、従来は一般的にはあまり知られていない形状記憶
合金の性質や問題等について述べる。
【0003】一般に形状記憶合金は多結晶体であり、最
大限に形状記憶合金の動きを引き出すという観点だけに
立てば、完全に焼き鈍しを行って結晶を大きくした状態
で、大きな変形を加えればよい。例えば、Ti−Ni系
形状記憶合金の場合、900℃近い温度で数分から数十
分焼き鈍ますことで、このような組織を得ることができ
る。こうした金属組織は、柔らかく、簡単に大変形を与
えることができる。しかし、結晶の大きさや方位がラン
ダムなため、内部には形状記憶効果の大変形についてい
けない部分が発生するので、形状回復時に負荷応力を加
えない状態なら、ある程度大きな形状回復を繰り返すこ
ともできるが、負荷応力が加えられた状態で同様な繰り
返し動作をさせると、いわゆるダレや伸びといった永久
変形を生じやすく、元の形に戻りにくくなる。また、微
視的な材料内部の塑性変形が徐々に蓄積され、変形の障
害となり、変形−形状回復できるひずみ、言い換えれば
運動として取り出せるひずみ(以後運動ひずみという)
も小さくなり、大きな運動ひずみは限られた僅かな回数
しか利用できない。
【0004】実際に使用される形状記憶合金や超弾性材
料では、冷間の強加工と焼きなまし処理の程度を調整す
ることにより、加工硬化でできた堅牢な組織とランダム
に分散した形状記憶効果の起きやすい結晶とが混じり合
った状態に調整されることが多い。加工硬化で生じた部
分が強固な繊維のように形状を保ち、それに囲まれた結
晶が超弾性変形や形状記憶効果による大きな変形を受け
持つ状態にしているのである。形状の安定化には、加工
硬化の他に、不純物の析出等を使うこともある。こうい
った材料は、先述の完全に焼きなました不安定であるが
よく動く材料を、非常に多数回繰り返し動かして落ち着
かせたものと似ており、取り出せる運動ひずみは小さい
ものの、短時間に安定な状態を作れる。工業的には、運
動ひずみが小さくとも、このように安定した素材の方が
扱いやすい。しかし、形状記憶合金としての機能を十分
出し切れてない状態である。
【0005】形状記憶合金の加熱時の形状回復力は、そ
れ自身の材料強度を上回ると考えるのが自然である。言
い換えれば、材料に永久的な変化を生じさせる負荷応力
の限界が形状回復力より小さなところに存在するという
ことである。このような性質は、あまり知られていない
が、形状記憶合金アクチュエータの実用化を難しいもの
にしている最大の原因であり、機構設計を誤ると、耐久
性のあるアクチュエータを作ることはできない。例え
ば、一般的なTi−Ni系形状記憶合金に引っ張りひず
みで1%を越える大きな予変形を与え、拘束した状態で
加熱した際の形状回復力は、材料自身の疲労強度や弾性
限界を上回り、材料自身の性質を変化(劣化)させるに
十分な力を発生する。繰り返し運動させる用途では、こ
れよりも小さなひずみでも、加熱のしかたによっては、
材料内部の局部的な領域において、強い形状回復力がそ
れ自身の組織を破壊することも考えられ、形状記憶合金
の形状や特性を不安定にする大きな要因となる。先述の
ように材料を加工硬化させることにより、強い外力に対
してもある程度形状を安定させることはできるが、形状
記憶効果を示す部分の多くを犠牲にするため、大きな運
動ひずみを利用することができなくなる。現状では、多
くの場合、本来は大きな回復量を持つTi−Ni系形状
記憶合金でも、コイルバネ等に加工し、小さなひずみを
ごまかしながら増幅して利用していることが多い。コイ
ル等に冷間加工される際、加工硬化で材料の強度が増す
一方、小さな予ひずみなら加熱しても結晶は大きな回復
力を発生することがないからである。
【0006】本発明者は、上述のような従来の形状記憶
合金に関する現象が生じる理由を以下のように考えてい
る。形状記憶合金は、一般に図1の模式図に示されるよ
うに多結晶体であるが、結晶粒(粒内)は、超弾性材料
の状態にあるため、大きな変形を受けても、その形状を
回復することができる。しかし結晶粒界部は、組成は結
晶粒のそれと同様でも、変形の方位が異なる隣同士の結
晶を結びつけているため、構造的矛盾や欠陥をもってお
り、結晶粒のような超弾性材というよりむしろ普通材料
に近い性質を有していると考えられる。そして、巨大な
変形を受けて拘束された状態では、変形した結晶粒が形
状記憶効果で発生する形状回復力が、この結晶粒界の強
度より強いため、結晶粒界部が選択的に破壊(塑性変形
等の永久変形や破断)されるものと考えられる。また、
比較的低い応力しか加わってない状態でも、形状回復の
完了点付近では、材料内部で、ほとんどの結晶が最大限
の形状回復を行っている状態のため、結晶粒界に大きな
力が加わり、破壊される部分が生じる可能性がある。こ
のような完全な形状回復の状態で主に結晶粒界部に発生
する、僅かな内部組織の破壊は、運動回数が少ない場合
は目立たないが、10万回を越えるような長寿命を要求
されるアクチュエータ等では、大きな問題になる。従来
の実用化されている形状記憶合金アクチュエータは、環
境温度で動く温度作動素子として利用されているものが
ほとんどで、大きな運動ひずみで10万回を大きく越え
るような使用回数が想定されることは少なく、ここで問
題にしているような応力が負荷されたままの状態で完全
な形状回復に達するまで加熱される例もあまりなかっ
た。そのため、このような問題が見えにくかったと思わ
れる。しかし、通電加熱駆動型の形状記憶合金アクチュ
エータでは、頻繁に過熱されやすい状況がある上、商品
としてはモーターやソレノイドと競合するため、大きな
運動ひずみで長寿命が要求されるので、大きな問題にな
ってくる。
【0007】本発明は、このような従来の事情に鑑みて
なされたもので、本発明の1つの目的は、非常に多数回
の繰り返し動作に耐え、動作寿命を従来より飛躍的に長
くすることができるアクチュエータおよびその設計方法
を提供することを目的とする。
【0008】本発明の他の目的は、形状記憶ひずみのほ
とんど全域を有効に使うことができ、操作範囲を従来よ
り飛躍的に広くすることができる形状記憶合金アクチュ
エータおよびその設計方法を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、形状を安定にするこ
とができる形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法を提供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、性能を安定にするこ
とができる形状記憶合金アクチュエータおよびその設計
方法を提供することにある。
【0011】本発明の他の目的は、形状記憶合金の必要
量を非常に簡単に見積もることができる形状記憶合金ア
クチュエータおよびその設計方法を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本出願人は、先に、特願
2000−204927において、微細結晶の多結晶体
とされ、結晶の大きさを実質的に均一とされるととも
に、結晶の方向を予定運動方向に適した方向に実質的に
揃えられた形状記憶合金およびこのような形状記憶合金
を得るための処理方法を開示した。ここで、予定運動方
向とは、引張りやねじり曲げ運動等、処理後の形状記憶
合金をアクチュエータとして使う場合に想定される方向
をいう。例えば線状のものを収縮−伸張(弛緩)する形
で使う場合は引張り方向、コイルバネ形状で使う場合は
ねじり方向となる(なお、コイルバネ形状で使う場合
は、加熱時、ねじりおよび曲げ変形からの形状回復を行
うことになるので、厳密に言うと予定運動方向はねじり
および曲げ方向と言うこともできるが、実際にはねじり
の要素の比率の方がはるかに高いので、実質的に予定運
動方向はねじり方向である)。この本願出願人が先に開
示した形状記憶合金は、巨大な二方向性(双方向性)形
状記憶効果を発現する。
【0013】ここで、二方向性形状記憶効果とは、一般
的には、一定形状を記憶させた形状記憶合金を低温で変
形した後、加熱すると元の記憶した形状に戻り、これを
低温にすると、前記低温で変形した形状に戻る現象をい
う。すなわち、加熱と冷却だけで、外部からバイアス力
を作用させることなく、形状記憶合金が自発的に形状変
化を繰り返す訳であり、見た目には、低温時に変形した
形状(マルテンサイト状態の形状)と高温時に形状回復
した形状(母相状態の形状)との2つの形状を覚えてい
るような挙動を示すことになる。そして、このような現
象を生じる形状記憶合金を一般に二方向性形状記憶合金
と呼んでいる。文献等によると二方向性形状記憶効果
は、一般的に引張りひずみ換算でε=1%以下の部分的
な現象であり、不安定なため実用化が困難とされてい
る。事実、この現象を利用した実用に供されている機器
類は、これまでのところほとんど見当たらない。
【0014】しかるに、前記特願2000−20492
7において本出願人が開示した形状記憶合金は、形状記
憶効果が発生するほぼ全域、すなわち形状回復可能な全
ひずみ量の範囲で巨大な二方向性形状記憶効果を発生で
きる(多くの場合、無負状態でも引張りひずみで5%以
上の二方向性形状記憶効果を発現することができる)。
この形状記憶合金は、例えば、直線の引張方向に記憶形
状を持つワイヤ状のものでは、加熱すると記憶している
長さに収縮して硬くなる一方、冷却時には、負荷の無い
状態でも、ちょうど筋肉が弛緩するように柔らかくな
り、自分で伸びて低温時の元の長さと形に戻る。そし
て、このような巨大な二方向性形状記憶効果は、無負荷
状態で1億回近い繰り返し動作でも安定して発現する。
【0015】本発明は、このような巨大な二方向性形状
記憶効果を発現する二方向性形状記憶合金に適用するに
好適なものである(なお、本発明は、前記本願出願人が
先に開示した形状記憶合金以外にも、同様に数%に及ぶ
巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向性形状記
憶合金が今後開発されるか、または既に開発されている
ならば、これらの形状記憶合金にも適用できるものと考
えられる)。本発明は、通常の形状記憶合金で考えられ
る最大でも1%前後の小さなひずみ領域を利用する従来
の形状記憶合金アクチュエータおよびその設計方法とは
根本的に異なる。また、通常の形状記憶合金の二方向性
形状記憶効果では、形状記憶合金だけで往復運動を行う
ような応用が考えられることが多いが、本発明は、二方
向性形状記憶効果と他のバイアス力とを組み合わせる
か、または動作方向が反対の2つの形状記憶合金を組み
合わせる場合に好適なものである。また、巨大な二方向
性形状記憶効果を発現する形状記憶合金の使用を前提に
したものであり、一般的な形状記憶合金や従来から報告
されている引っ張りひずみで最大でも1%前後の小さく
て不安定な二方向性形状記憶効果を発現する形状記憶合
金には不適である。従来の二方向性形状記憶合金は、前
述のように強度の塑性加工や不純物析出等による非常に
強い応力場を材料内部に作ることによって作られる性質
のため、本発明が対象とする二方向性形状記憶合金とは
本質的に異なるものである。
【0016】なお、本明細書において、本発明が対象と
する二方向性形状記憶合金とは、完全な二方向性を示さ
ないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で、低温での
変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金をも含むもの
とする。例えば、完全な二方向性を示す形状記憶合金で
引っ張りコイルスプリングを作ると、低温では伸びきっ
てしまった状態が安定なため、製品として扱いにくい。
そのため同じ処理技術を使っていても、低温時の材料内
部の応力をできるだけ零に近づけ、マイナスの応力にな
らないように調整した方がよいことがある(マイナスの
応力については、後に図3に関連して説明する)。しか
しこのような合金は、同様な金属組織を持っているか
ら、巨大なひずみ領域で低温での変形に必要な力が零に
近く、応力−ひずみ線図もほとんど同じ形である。本発
明は、当然このような合金も対象にしており、このよう
な形状記憶合金も二方向性形状記憶合金と呼ぶ。
【0017】形状記憶合金のような機能材料は、材料自
体の性質に注目が集まることが多いが、実用的なものに
するには、材料の改良と同時に使い方の開発や改良の方
が大切である。不完全ながらも実際に使えるものが出て
くれば、材料に求められる性質もより鮮明になって改良
も進む。このように素材とその利用技術は、車の両輪の
ような関係である。本発明は、このような新しい性質を
持った形状記憶合金の新しい使い方を提唱するものであ
る。
【0018】一般的な形状記憶合金を焼きなました標準
材料の応力−ひずみ線図(σ-ε線図)は、図2のよう
になる。形状記憶合金は、Mf点より低い低温で変形す
ると、図2の太線Aのような応力−ひずみ線図を示す
(実線は荷重を増大して行く過程、破線は除荷して行く
過程を示している)。見かけは、鉄等の一般的な金属の
塑性変形と同じような形であるが、ひずみ6〜7%付近
から急激に応力が増加し、ついには破断する。これは、
形状記憶合金の隣り合う原子同士の結びつきが関節を持
ったリンクのような関係で、はじめは比較的小さな力で
変形するが、動きやすい範囲が限定されており、これを
超える変形は、リンクを壊さなくては起こせないためで
ある。一旦低温で変形した形状記憶合金は、低い温度の
ままでは、応力を取り除いても、ほとんど変形が戻らな
い。同じ材料をAf点より高い高温にした状態で引張り
試験を行うと、細線Bのようになる(実線は荷重を増大
して行く過程、破線は除荷して行く過程を示してい
る)。横に寝る形や長さは低温のときと似ているが、変
形させるためにずっと大きな応力が必要になる。この変
形は、力を徐々に取り除くと、はじめに変形させた経路
を下回るような経路をたどって回復する。形状記憶合金
を低温で変形させた後に加熱したときは、経路Hから前
記回復時の経路をたどって、元の形に戻る。しかしこの
ような大きな変形を繰り返し加えていると、原点の位置
や線図の形が変わって行く。これは材料の内部が変化し
てしまうからである。通常は、経験的に変形を小さめに
抑さえることで、こういった変化が生じない範囲で利用
している。この変形の限界は、先に説明したように変形
を受けた結晶粒が加熱時に発生する形状回復力が結晶粒
界の強度を超えない変形の大きさで、最大でも引っ張り
ひずみで1%前後と考えられる。従来の形状記憶合金ア
クチュエータの一般的な設計方法は、低温時と高温時の
応力−ひずみの差を利用するものであり、図2の原点付
近の僅かな範囲にしか適用できない。一般に形状記憶合
金アクチュエータを設計するには、いろいろな制約があ
るが、もっとも注意しなければいけないことは、先に述
べたように低温で大きな変形を与えたまま拘束したり、
強い力を加えた状態で加熱すると、高温で発生する形状
回復力で形状記憶合金は、自分自身を壊してしまうこと
である。
【0019】本発明者のこれまでの経験では、多くの人
は、形状記憶合金の動きや寸法変化には敏感であるが、
発生する力の管理には、ほとんど関心を持たない。形状
記憶合金を普通の材料のスプリングと同じように扱っ
て、知らないうちに性能が劣化したり、寿命を縮めてし
まうのはこのためと考えられる。普通の形状記憶合金で
は、形状回復力やバイアス力を完全に利用できないので
ある。このような性質は、形状記憶合金アクチュエータ
を難しいものにしている大きな原因であり、機構設計を
誤ると耐久性のあるアクチュエータを作ることはできな
い。特に二つの形状記憶合金を相補的に使う差動型とい
われるアクチュエータは、比較的大きな予ひずみを与え
られた二つの形状記憶合金が、同時に加熱されて互いに
強い形状回復力で引き合う状態になりやすい。この状態
は、アクチュエータを動きにくくするだけでなく、先の
ような劣化現象を起こしやすいため、実用化が難しいと
思われる。また実用的な動作寿命に影響を与える限界
も、この変形の限界よりかなり小さいところに存在する
と思われる。本発明者らの経験では、10万回以上の動
作を想定した場合、例えばTi−Ni系形状記憶合金で
は、外部から加わる力とバイアスバネ等のアクチュエー
タの構成要素によって加わる力の和を、引張り応力で1
00Mpaからそれをやや上回る程度以下に制限しない
と使用中に伸びたり、破断したりする虞がある。10万
回というのは、よく使われる民生部品の動作寿命の基準
である。この応力の上限は、図中では、実用応力限界線
と記した横線になる。実際には、この線より下の応力で
しか繰り返し使えないのである。
【0020】低温状態の一般的なTi−Ni系形状記憶
合金では、この応力によって加えることのできる変形
は、大きくても引っ張り応力換算で1%前後である。一
般的な形状記憶合金では、低温時の変形に必要な力が回
復可能なひずみの広い区間でこの実用応力限界線を上回
ってしまう。したがって、たとえ加熱時に力がかからな
いような使い方をしても、大きな変形と形状回復を繰り
返すと材料内部が徐々に変化する。これ以上の大変形域
を利用した往復運動を安定して繰り返すアクチュエータ
を作ることは困難である。このような理由で一般的な形
状記憶合金を使った、繰り返し動作を行うアクチュエー
タでは、板バネやコイルバネ等に加工し、発生する回復
応力が大きくならないように、ひずみを小さく抑えた
り、強い加工硬化をあたえて強度と引き替えに動きを悪
くして狭いひずみの範囲で利用することが多い。従来、
実用化されている多くの形状記憶合金アクチュエータを
よく観察すると、鉄やステンレス等の普通材料のスプリ
ングと同じくらいの小さなひずみ量でしか使っていない
ことが分かる。また種々の文献で公表されているコイル
バネの計算式等は、弾性限度内の僅かな範囲でしか適用
できないものであり、ほとんどの応用は、その範囲で用
を足していることも事実である。素材自体の持つ形状回
復可能な範囲に比べ、先述した形状の不安定さや動作寿
命の問題を生じずに利用できる運動ひずみや負荷応力は
非常に少ないのである。従来の形状記憶合金アクチュエ
ータの実際の設計では、図2の応力−ひずみ線図の原点
付近の非常に狭い範囲で、複雑な応力−ひずみ線図と格
闘することになる。扱うひずみが小さいため材料の厳し
い品質管理と緻密な設計が必要となることは言うまでも
ない。
【0021】図3は、巨大な二方向性形状記憶効果を発
現する二方向性形状記憶合金(以下、特に断らない限
り、単に二方向性形状記憶合金と言うとき、それは本発
明が対象とする巨大な二方向性形状記憶効果を発現する
二方向性形状記憶合金を指すものとする)の応力−ひず
み線図(力−変位線図)であり、加熱されて形状回復
(収縮)した位置を原点にしており、一般的な形状記憶
合金の応力−ひずみ線図に対応するものである。太線D
はMf点より低い低温状態の応力−ひずみ線を示してい
る。細線EはAf点より高い高温状態の応力−ひずみ線
を示している(実線は荷重を増大して行く過程、破線は
除荷して行く過程を示している)。一般的な形状記憶合
金では、加熱・形状回復後、低温に戻しても形状が維持
されるため、高温と低温時の変形の原点はほぼ一致す
る。一方、二方向性形状記憶合金は、低温時は普通の形
状記憶合金でいう変形状態(伸びた状態)で内部の応力
がマイナスから零になるため、実際は図中の点O’で形
状的に安定する。点O’は、応力が零となる点である。
しかしここでは、図2の一般的な形状記憶合金の応力−
ひずみ線図と比較するため、便宜的に、加熱されて収縮
した位置(形状回復した位置)を原点にして図3を表わ
した。二方向性形状記憶合金の高温時の応力−ひずみ線
の形は、一般的な形状記憶合金と大きな違いはないが、
低温時の応力−ひずみ線では、応力がマイナス方向に現
れる。このマイナスの応力のため、力を加えなくても図
中の点O’まで変形する(弛緩伸張する)。
【0022】本発明が対象とする二方向性記憶合金は、
基本的に言って、このように応力−ひずみ線図におい
て、低温状態における応力−ひずみ線Dが、応力マイナ
スの領域においてひずみ零の位置から右方に延びる傾き
の小さい低勾配部分D1と、この低勾配部分D1より右方
において比較的に大きな傾きで右上がりになる高勾配部
分D2とを有するような応力−ひずみ特性を備えてい
る。ただし、前述のように本発明は、完全な二方向性を
示さないまでも、形状回復可能なひずみ領域内で低温で
の変形に力がほとんど必要ない形状記憶合金をも対象と
し、この場合は、低勾配部分D1はひずみ零の位置から
ほぼ応力零の線に沿って右方に延びることになる。
【0023】次に、本発明による形状記憶合金のアクチ
ュエータの設計方法を具体的に説明する。まず、二方向
性形状記憶合金も、一般的な形状記憶合金と同様、拘束
したまま加熱されれば材料が傷むので、応力の制限をす
る。すなわち、図3中の横線(実用応力限界線)以下で
利用することにする。この値は、図2に記載した一般的
な形状記憶合金に対する実用応力限界線のそれとほぼ同
じである。しかし、二方向性形状記憶合金の場合は、低
温での変形時に応力が必要ないかまたはほとんど必要な
いため、利用できるひずみの大きさが、応力−ひずみ線
の応力の立ち上がる部分と、この実用応力限界線の交点
で制限される非常に広い範囲になる。なお、本発明にお
いて、応力の限界値を具体的にどのような値にするか
は、必要とするアクチュエータの動作寿命に応じて定め
ることができる。
【0024】次に、形状記憶合金が十分加熱されて形状
回復完了時に到達する、ひずみ領域の手前にも運動ひず
みの限界を設ける。すなわち、前述のように徐々に進行
する材料内部の自己破壊を防ぐため、形状回復完了状態
付近にひずみ一定の直線である形状回復完了付近ひずみ
限界線を設け、基本的には、これより左側では形状記憶
合金を動作させないようにする。ここにおいて、この使
用を禁止した領域は、前記一般的な形状記憶合金の設計
において設定される利用可能なひずみの範囲とほぼ一致
する。つまり従来の一般的な形状記憶合金で利用可能な
範囲(図2で斜線を施した領域)が、本発明の設計方法
では、使用を禁止する領域となる。本発明の設計方法
は、言い方を変えれば、普通の形状記憶合金アクチュエ
ータでは使用しないひずみの部分を主に使う方法であ
る。前記形状回復完了付近ひずみ限界線の具体的な値を
設定する一つの目安は、図5に示すような温度−ひずみ
線図において加熱過程の曲線が横に寝る点(温度T1
点)であり、この点以上に形状回復させると、自己破壊
が始まる傾向があることが本発明者の実験により確認さ
れている。なお、図6は、図5の温度−ひずみ線図の測
定条件を示しており、ワイヤ状の形状記憶合金1に錘2
を吊して測定している。この場合、応力は100Mpa
とされている。図5では、形状記憶合金1の低温時の安
定状態を変位零とし、加熱による形状回復とともに変位
が増大することとなるように縦軸がとられていることに
注意されたい。
【0025】以上のようにして、本発明においては、形
状記憶合金を動作させる範囲を、基本的に言って、応力
−ひずみ線図(力−変位線図)において図3の斜線を施
した領域とする。このような領域内で形状記憶合金を使
用することにより、形状記憶合金の記憶形状の消失や性
能低下に結びつく自己破壊を生じることなく、形状記憶
ひずみのほとんど全域を有効に使い、非常に長寿命とす
ることができる。ただし、前記斜線の領域に加えて、図
3中の格子縞模様を施した領域(低勾配部分D 1と、形
状回復完了付近ひずみ限界線と、実用応力限界線と形状
回復完了付近ひずみ限界線との交点と低温状態における
ひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲まれる領域)も、応力
を十分小さくするか、または形状回復を完了させなけれ
ば、前記形状記憶合金の自己破壊を防止可能であるの
で、利用できる可能性はある。
【0026】図4は、本願発明のアクチュエータ設計法
をより実用に便利にするために、二方向性形状記憶合金
の使用領域を簡略化して考えたものである。すなわち、
前記図3の斜線を施された形状記憶合金の動作領域を、
応力零の線と、高勾配部分D 2に近似した直線と、実用
応力限界線と、形状回復完了付近ひずみ限界線とで囲ま
れる斜線を施した四角形の領域に簡略化して考える。こ
の範囲に加えて、図4中の格子縞模様を施した領域(応
力零の線と、形状回復完了付近ひずみ限界線と、実用応
力限界線と形状回復完了付近ひずみ限界線との交点と原
点とを結ぶ直線とで囲まれる領域)も、応力を十分小さ
くするか、または形状回復を完了させなければ、利用で
きる可能性はある。なお、図4においては、低勾配部分
1もそれに近似した直線で示している。
【0027】このように簡易化することにより、精緻な
応力−ひずみ線図は考える必要がなくなる。利用できる
力と変位が、高温のときは実用応力限界線をたどり、低
温のときは原点(応力およびひずみ零の点)を通る応力
零の線をたどるものと考える訳である。二方向性形状記
憶合金の機械的な特性は、このように簡単な図形にまと
めることができるため、アクチュエータ設計が非常に簡
なり、自由度が増す。
【0028】図19は、本発明による設計法を適用した
アクチュエータモデルの寿命試験の結果(途中経過)を
示している(比較のために、従来の一般的形状記憶合金
の動作寿命を併せて示している)。負荷応力100Mp
a、引っ張りで運動ひずみ3%のものは、これまで1億
3千万回、同一応力で運動ひずみ4.5%のものは、9
百万回を越える動作をしており、破断等の問題もなく、
現在も試験を続行中である。運動ひずみの範囲や電気抵
抗値等の物性的な変化もほとんど認められないため、材
料内部で塑性ひずみの発生や進行等も起こっておらず材
料がきわめて安定な条件で運動しているものと考えられ
る。従来の形状記憶合金アクチュエータは、負荷応力1
00Mpaで運動ひずみ2%の場合10万回を越える操
作を安定に行うことが難しかったことを考えれば、驚異
的な性能と考えられる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
説明する。
【0030】
【実施例】図7は、本発明によるアクチュエータの一実
施例を示す。応力限界設定バネ3は、本実施例において
応力限界設定手段を構成するもので、形状記憶合金では
ない通常の金属で構成された引張コイルバネからなり、
その一端部はバネ取付具4を介してアクチュエータ本体
5に取り付けられている。前記応力限界設定バネ3は、
図8に示されるように初期状態(外力を作用されておら
ず、該バネ3の変位が零の状態)において、所定の大き
さの引張方向の初期バネ力(初張力)を有する特性のも
のとされている。前記応力限界設定バネ3の他端部に
は、接合具6を介してワイヤ状の形状記憶合金1の一端
部が取り付けられている。前記形状記憶合金1は、前記
特願2000−204927において本出願人が開示し
た方法により作成された巨大な二方向性形状記憶効果を
発現するTi−Ni系またはTi−Ni−Cu系二方向
性形状記憶合金であり、図7に示されている状態より短
い長さの状態を記憶している。この形状記憶合金1の他
端部は、該合金1が延びる方向と平行方向に移動可能な
操作端部材7に取り付けられている。この操作端部材
は形状記憶合金ではない通常の金属で構成された引張
コイルバネからなるバイアスバネ8の一端部が取り付け
られている。このバイアスバネ8の他端部は、バネ取付
具4と反対位置において、バネ取付具9を介してアクチ
ュエータ本体5に取り付けられている。ここにおいて、
前記バイアスバネ8は、操作端部材7を介して形状記憶
合金1を引っ張るように付勢している。このアクチュエ
ータは操作端部材7を介して負荷(図示せず)を駆動す
るようになっている。
【0031】前記操作端部材7には通電ブラシ10が取
り付けられており、この通電ブラシ10は形状記憶合金
1の操作端部材7側の端部に電気的に接続されるととも
に、導体11に摺接されている。前記導体11はアクチ
ュエータ本体5に対して固定設置されており、形状記憶
合金1が延びる方向と平行方向に延びている。前記通電
ブラシ10および導体11は、一種のリミットスイッチ
(センサー)の機能を果たして、本実施例においてひず
み限界設定手段を構成するものである。前記導体11は
電源12の一方の極に電気的に接続されており、電源1
2の他方の極はスイッチ13を介して形状記憶合金1の
応力限界設定バネ3側の端部に電気的に接続されてい
る。
【0032】本実施例を理解しやすくするため、便宜
上、まず、本実施例のアクチュエータが適切に設計され
たものとして、その基本的な動作を説明する。スイッチ
13をオンにすると、電源12−導体11−通電ブラシ
10−形状記憶合金1−スイッチ13−電源12の経路
で電流が流れ、ジュール熱により形状記憶合金1が所定
温度範囲まで加熱され、形状記憶効果によりバイアスバ
ネ8に抗して記憶している長さに戻ろうとして収縮する
ので、操作端部材7が図上左方に移動する。他方、スイ
ッチ13をオフにすると、形状記憶合金1に対する通電
が停止され、形状記憶合金1が冷却して該合金1が弛緩
して自ら伸び変形しようとする上、バイアスバネ8が引
っ張り力を作用しているので、形状記憶合金1は伸び変
形し、操作端部材7は図上右方に移動する。以後、同様
にしてスイッチ13がオンオフされる毎に、形状記憶合
金1が伸縮し、操作端部材7は図上左右に往復運動す
る。
【0033】次に、本実施例における設計方法を説明す
る。ここでは、図4と同様に簡略化された図9の応力−
ひずみ線図を用いて形状記憶合金1の動作領域を決定す
る。すなわち、応力零の線と、高勾配部分D2に近似し
た直線と、実用応力限界線と、形状回復完了付近ひずみ
限界線とで囲まれる領域(斜線を施した領域)を形状記
憶合金の動作領域とする。
【0034】実用応力限界線の値、すなわち応力の実用
限界値は、予め行っておく基礎実験による寿命のデータ
に基づいて、このアクチュエータに要求される寿命に応
じた値とする。そして、応力限界設定バネ3の初期バネ
力(初張力)をこの決定された応力の実用限界値に対応
した大きさに設定する。すると、形状記憶合金1に作用
する応力が前記実用限界値以下の場合は、応力限界設定
バネ3は伸ばされないので、形状記憶合金1と応力限界
設定バネ3との接続部はアクチュエータ本体5に対し固
定されているため、アクチュエータは前述のように動作
する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が前記限
界値を超えようとすると、応力限界設定バネ3が伸ばさ
れるので、形状記憶合金1に作用する応力が前記実用限
界値を超えることが防止される。これにより、図9にお
いて形状記憶合金1の動作範囲を実用応力限界線より下
方とすることができる。なお、操作端部材7に掛かる負
荷の大きさ等から考えて、形状記憶合金1に作用する応
力が実用応力限界線を越えることはないことが明らかな
場合は、応力限界設定バネ3等の応力限界設定手段を省
略することができる。
【0035】形状回復完了付近ひずみ限界線のひずみの
値は、前記図5のような温度−ひずみ線図において、加
熱過程の曲線が横に寝る点(温度T1の点)のひずみの
値とする。そして、形状記憶合金1がこの形状回復完了
付近ひずみ限界線まで形状回復して来ると、通電ブラシ
10が導体11から離れてしまうように通電ブラシ10
と導体11の位置関係を設定する。すると、形状記憶合
金1が形状回復完了付近ひずみ限界線まで形状回復しな
い間は、通電ブラシ10と導体11とが接触しているの
で、アクチュエータは前述のように動作するが、形状記
憶合金1が形状回復完了付近ひずみ限界線まで形状回復
してくると、通電ブラシ10と導体11とが非接触にな
り、形状記憶合金1に対する通電ひいては加熱が停止さ
れるので、形状記憶合金1の形状回復が停止される。こ
れにより、図9において形状記憶合金1の動作範囲を形
状回復完了付近ひずみ限界線より右方とすることができ
る。
【0036】次に、バイアスバネ8の設定について述べ
る。形状記憶合金1の応力−ひずみ線図(力−変位線
図)にバイアスバネ8のそれを重ね、バイアスバネ8の
線が形状記憶合金1の動作領域を横切るようにバイアス
バネ8のバネ定数(バイアスバネ8の線の傾き)および
変位が特定の値であるときのバネの力の大きさを設定す
る。例えば図9のようにバイアスバネ8のバネ定数等を
設定した場合、操作端部材7に対し外力が作用していな
いとすると、形状記憶合金1が低温状態では、該合金1
がバイアスバネ8を変形させようとする力は最大でも零
であるから、操作端部材7はバイアスバネ8の力で低温
状態の形状記憶合金1の応力−ひずみ線が立ち上がる部
分とバイアスバネ8の線との交点cまで動かされる。低
温では、この状態で安定し、交点cの位置がアクチュエ
ータの動作の原点になる。形状記憶合金1を加熱し高温
にしたときは、形状記憶合金1の形状回復力がバイアス
バネ8の力を上回るので、操作端部材7はバイアスバネ
8の線と形状回復完了付近ひずみ限界線との交点hまで
動くと考える。このようにバイアスバネ8の線が形状回
復完了付近ひずみ限界線および低温時の応力−ひずみ線
の高勾配部分D2に交差するようにすれば、運動ひずみ
(変位)のほぼ全域がアクチュエータの有効操作ひずみ
量となる。なお、実用応力限界線とバイアスバネ8の線
との差が加熱時のアクチュエータの有効操作力となり、
バイアスバネ8の線と低温時の形状記憶合金1の応力−
ひずみ線の低勾配部分D1との差が冷却のアクチュエ
ータの有効操作力となる。したがって、図9により、加
熱時と冷却時にそれぞれ必要な有効操作力を考えてバイ
アスバネ8の特性を設定することができる。
【0037】なお、図9から明らかなように、極端な例
では、図9においてバイアスバネ8の線が応力零の線に
近くなるような弱いバネを用い、バイアス力がほとんど
ないような状態としても、往復運動ができるアクチュエ
ータを作ることができる。この場合、形状回復力をほぼ
完全に有効に取り出せるが、冷却時の有効操作力はほぼ
零になる。動くだけならバイアス力は必要ないのであ
る。また、長寿命を狙って実用応力限界線を低くして
も、アクチュエータの操作量は大きく変わらない。少し
強いバイアス力を使えば、変態点を上昇させることもで
きるし、低温時にその力を反対方向の運動に有効に使え
る。さらに、図9においてバイアスバネ8の線が実用応
力限界線と交差するようにしてもよいが、その場合は、
アクチュエータの有効操作ひずみ量が減少する。
【0038】このような本発明の設計法を適用すると、
アクチュエータに必要な二方向性形状記憶合金1の量を
見積もることも非常に簡単に行えるようになる。二方向
性形状記憶合金1の運動を図4や9のように加熱時の実
用最大応力一定、最低応力ほぼ零と考えることができる
ため、実用最大応力と通常4.5〜5%の運動ひずみ量
との積を材料によってほぼ一定と考えることができる。
したがってアクチュエータに必要な出力をこの値で割れ
ば、必要な材料の量が得られることになる。例えば、図
20に示すようにワイヤ状の二方向性形状記憶合金1m
当たり1ストローク(1収縮)毎の実用最大仕事量をW
p、実用最大負荷荷重をFp、実用最大操作変位をLp
すると、 F=応力σ×断面積A L=材料長さL×運動ひずみε W=Fp×Lp (kgf・mm/m ) =k×A×L(kは一定値) =k×体積 これにより、形状記憶合金1の径または長さの一方を決
めれば、他方も決まる。
【0039】図10は、図7の応力限界設定バネ3に代
えて使用することができる応力限界設定手段の他の実施
例を示している。本実施例においては、応力限界設定手
段は板バネ14とバネ拘束体15とからなり、板バネ1
4の一端部はアクチュエータ本体5に取り付けられてい
る。前記板バネ14の他端部には図7の形状記憶合金1
の一端部が取り付けられる。前記板バネ14は、もしバ
ネ拘束体15がないとすると、形状記憶合金1から力を
作用されない状態では一点鎖線で示すように図上左方に
湾曲するようになっているが、実際には実線で示される
ようにバネ拘束体15に当接されて真直ぐな状態となる
ようにされている。これにより、板バネ14は図7の応
力限界設定バネ3の初張力に相当する初期バネ力を有し
ている。
【0040】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が所定の実用限界値以下の場合は、板バネ1
は図の実線で示されるような真直ぐな状態となってお
り、形状記憶合金1と板バネ14との接続部はアクチュ
エータ本体5に対し固定されているため、アクチュエー
タは通常通り動作する。しかし、形状記憶合金1に作用
する応力が前記実用限界値を超えようとすると、板バネ
14が形状記憶合金1の応力を緩和させる方向、すなわ
ち二点鎖線で示すように自由な状態とは逆方向に湾曲さ
れ、バネ拘束体15から離間するので、形状記憶合金1
に作用する応力は前記実用限界値を超えない。
【0041】図11は、応力限界設定手段のさらに他の
実施例を示している。本実施例においては、応力限界設
定手段は外筒部材16と、内筒部材17と、形状記憶合
金ではない圧縮コイルバネ22とを有してなる。前記外
筒部材16の図上左端部はアクチュエータ本体5に取り
付けられた取付具4に回動軸19を中心として回動可能
に支持されており、この外筒部材16の内周には内筒部
材17が軸方向に移動可能に嵌合されている。前記内筒
部材17の図上右端部には図7の形状記憶合金1の図上
左端部が取り付けられる。前記外筒部材16に固定的に
設けられていて内方に突出するバネ受け20は、内筒部
材17の周壁に軸方向と平行方向に設けられたスリット
21から内筒部材17内に侵入している。前記バネ受け
20と内筒部材17の底部との間には前記圧縮コイルバ
ネ22が介装されており、この圧縮コイルバネ22は外
筒部材16に対して内筒部材17を図上左方に付勢して
いる。これにより、通常は、図11のようにバネ受け2
0がスリット21の図上右端部に当接し、外筒部材16
に対して内筒部材17がそれ以上左方に動けない状態と
なっている。この状態において圧縮コイルバネ22は図
7の応力限界設定バネ3の初張力に相当する初期バネ力
を有している。
【0042】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が所定の実用限界値以下の場合は、圧縮コイ
ルバネ22の力によりバネ受け20がスリット21の図
上右端部に当接した状態となっており、形状記憶合金1
と内筒部材17との接続部はアクチュエータ本体5に対
し固定されているため、アクチュエータは通常通り動作
する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が前記実
用限界値を超えようとすると、圧縮コイルバネ22が一
層圧縮され、外筒部材16に対して内筒部材17が図上
右方に移動するので、形状記憶合金1に作用する応力は
前記実用限界値を超えない。
【0043】図12は、本発明によるアクチュエータの
他の実施例を示している。本実施例においては、応力限
界設定手段は図10のそれと同様の板バネ14およびバ
ネ拘束体15を備えているが、板バネ14およびバネ拘
束体15にはそれぞれ接点24,25が設けられてお
り、形状記憶合金1に作用する応力が所定の実用限界値
以下の場合は、2つの接点24,25が互いに接触され
るようになっている。前記板バネ14およびバネ拘束体
15は導電性を有しており、接点24は板バネ14を介
して形状記憶合金1の一端に接続される一方、接点25
はバネ拘束体15を介してスイッチ13の一方の極に電
気的に接続されている。他の構成は前記図7の実施例と
同様である。
【0044】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が前記実用限界値以下の場合は、板バネ14
は図の実線で示されるように真直ぐな状態となってい
て、形状記憶合金1と板バネ14との接続部はアクチュ
エータ本体5に対し固定されており、2つの接点24,
25が互いに接触されているため、アクチュエータは通
常通り動作する。しかし、形状記憶合金1に作用する応
力が前記実用限界値を超えようとすると、板バネ14が
二点鎖線で示すように自由な状態とは逆方向に湾曲さ
れ、バネ拘束体15から離間し、板バネ14と形状記憶
合金1との接続部が形状記憶合金1に作用する応力を緩
和する方向(図上右方)に移動すると同時に、2つの接
点24,25が互いに離間され、形状記憶合金1に対す
る通電が停止されるので、形状記憶合金1に作用する応
力は前記実用限界値を超えない。
【0045】図13は、図12の応力限界設定手段に代
えて使用することができる応力限界設定手段の他の実施
例を示している。本実施例においては、応力限界設定手
段のバネ拘束体26はアクチュエータ本体5に取り付け
られた取付具4に回動軸28を中心として回動可能に支
持されている。このバネ拘束体26内には接点25が固
定されるとともに、板バネ29がその両端部を支持され
て装着されている。前記板バネ29はその中央部に接点
24を固定されるとともに、図12の形状記憶合金1の
左端部を接続される。前記板バネ29は自由な状態では
図示の状態よりさらに回動軸28側に大きく湾曲される
ようになっており、これにより形状記憶合金1から力を
作用されない状態では、形状記憶合金1の所定の応力の
実用限界値に対応する初期バネ力で接点24を接点25
に押圧している。接点24,25は図12の場合と同様
にそれぞれスイッチ13、形状記憶合金1に電気的に接
続される。
【0046】本実施例においては、形状記憶合金1に作
用する応力が前記実用限界値以下の場合は、板バネ29
のバネ力により接点24,25が互いに接触させる状態
に湾曲されているため、アクチュエータは通常通り動作
する。しかし、形状記憶合金1に作用する応力が実用限
界値を超えようとすると、板バネ29の湾曲が小さくな
り、板バネ29と形状記憶合金1との接続部が形状記憶
合金1に作用する応力を緩和する方向(図上右方)に移
動すると同時に、2つの接点24,25が互いに離間さ
れ、形状記憶合金1に対する通電が停止されるので、形
状記憶合金1に作用する応力は前記実用限界値を超えな
い。
【0047】図14は、本発明によるアクチュエータの
さらに他の実施例を示す。アクチュエータ本体5に固定
された取付具4には、接合具6を介して前記各実施例と
同様のワイヤ状の形状記憶合金1の一端部が取り付けら
れている。この形状記憶合金1は、図14に示されてい
る状態より短い長さの状態を記憶している。操作端部材
7は、基本的には直線状のアーム状をなしていて、その
中間部をアクチュエータ本体5に立設された軸30に回
動可能に支持されている。前記操作端部材7には、軸3
0と同軸になるようにして横断面円形のプーリー状の巻
き掛け部31が一体的に設けられている。前記形状記憶
合金1の他端部は巻き掛け部31の外周の1点に固定さ
れており、この端部付近の部分は巻掛け部31の外周に
巻き掛けられている。前記アクチュエータ本体5に立設
されたピン32と操作端部材7の一端部との間には、形
状記憶合金ではない通常の金属で構成された引張コイル
バネからなるバイアスバネ8が介装されており、このバ
イアスバネ8は操作端部材7を形状記憶合金1を伸張す
る方向、すなわち図上時計方向に付勢している。このア
クチュエータは操作端部材7の他端部側(図上上端部)
を介して負荷(図示せず)を駆動するようになってい
る。
【0048】応力管理素子33は本実施例における応力
限界設定手段を構成しており、次のような構成を有して
いる(図15はこの応力管理素子33の拡大断面図であ
る)。ケース34内には形状記憶合金1と同一材料から
なるワイヤ状の参照用形状記憶合金35が収容されてお
り、この参照形状記憶合金35の一端部はケース34の
一方の端部に取り付けられている。前記参照用形状記憶
合金35の他端部にはバネ受け36が取り付けられてい
る。前記バネ受け36には接点37が固定されており、
この接点37はケース34の他方の端部の内面に固定さ
れた接点38に対向されている。前記バネ受け36とケ
ース34の接点38と反対側の端部との間には形状記憶
合金ではない通常の金属で構成された圧縮コイルバネか
らなるバイアスバネ39が介装されており、このバイア
スバネ39は参照用形状記憶合金35を、該合金35を
伸ばして接点37を接点38に接触させる方向に付勢し
ている。前記バイアスバネ39は、形状記憶合金1の所
定の応力の実用限界値に対応する初期バネ力で接点37
を接点38に押圧している。前記参照用形状記憶合金3
5のバネ受け36と反対側の端部はスイッチ13を介し
て電源12の一方の極に接続されており、この電源12
の他方の極は形状記憶合金1の巻き掛け部31側の端部
に電気的に接続されている。接点38は次に説明するひ
ずみ管理素子40に電気的に接続されている。
【0049】前記ひずみ管理素子40は本実施例におけ
るひずみ限界設定手段を構成しており、次のような構成
を有している(図1はこのひずみ管理素子40の拡大
断面図である)。ケース41内には形状記憶合金1と同
一材料からなるワイヤ状の参照用形状記憶合金42が収
容されており、この参照用形状記憶合金42の一端部は
ケース41の一方の端部に取り付けられるとともに、応
力管理素子33の接点38に電気的に接続されている。
前記参照用形状記憶合金42の他端部にはブラシ支持体
43が取り付けられている。このブラシ支持体43とケ
ース41の反対側の端部との間には形状記憶合金ではな
い通常の金属で構成された圧縮コイルバネからなるバイ
アスバネ44が介装されており、このバイアスバネ44
は参照用形状記憶合金42を伸ばす方向に付勢してい
る。前記ブラシ支持体43に設けられた通電ブラシ45
は、ブラシ支持体43を介して参照用形状記憶合金42
に電気的に接続されるとともに、導体46に摺接されて
いる。前記導体46はケース41内に固定設置されてお
り、参照用形状記憶合金42と平行方向に延びている。
前記導体46は形状記憶合金1の取付具4側の端部に電
気的に接続されている。
【0050】本実施例を理解しやすくするため、まず、
本実施例が適切に設計されたものとして、本実施例の基
本的な動作を説明する。スイッチ13をオンにすると、
電源12−形状記憶合金1−ひずみ管理素子40の導体
46−通電ブラシ45−参照用形状記憶合金42−応力
管理素子33の接点38−接点37−参照用形状記憶合
金35−スイッチ13−電源12の経路で電流が流れ、
形状記憶合金1が所定温度範囲まで加熱され、形状記憶
効果によりバイアスバネ8に抗して記憶している長さに
戻ろうして収縮するので、操作端部材7が図上反時計方
向に回動する。他方、スイッチ13をオフにすると、形
状記憶合金1に対する通電が停止され、形状記憶合金1
が冷却して、バイアスバネ8により操作端部材7は図上
時計方向に回動する。なお、このとき形状記憶合金1は
弛緩し、バイアスバネ8の付勢力によってのみならず、
自らも伸び変形しようとする。以後、同様にしてスイッ
チ13がオンオフされる毎に、形状記憶合金1が伸縮
し、操作端部材7は図上反時計方向および時計方向に往
復運動する。
【0051】本実施例においても、図7の実施例の場合
と全く同様にして、図9に示したような応力−ひずみ線
図を用いてアクチュエータの設計を行うことができる。
また、本実施例では、形状記憶合金1、応力管理素子3
3の参照用形状記憶合金35およびひずみ管理素子40
の参照用形状記憶合金42が直列に接続されているの
で、各形状記憶合金1,35,42には同一の電流が流
れる。したがって、応力管理素子33のバイアスバネ3
9の初期バネ力を適切に設定しておけば、形状記憶合金
1の応力が前記実用限界値に達することとなるような状
態になったとき、参照形状記憶合金35も形状記憶合金
1と同様の加熱状態となり、参照形状記憶合金35の形
状回復力により応力管理素子33の接点37,38が離
間し、形状記憶合金1に対する通電が停止されることに
より、形状記憶合金1の応力が前記実用限界値を超えな
いようにすることができる。また、同様にして、ひずみ
管理素子40の通電ブラシ45が導体46から離れる位
置を適切に設定しておけば、形状記憶合金1が形状回復
完了付近ひずみ限界線のひずみの値まで形状回復してく
ると、通電ブラシ45と導体46とが非接触になり、形
状記憶合金1に対する通電ひいては加熱停止され、形
状記憶合金1の形状回復が停止されるようにすることが
できる。このようにして本実施例では、応力管理素子3
3およびひずみ管理素子40により、電流を介して間接
的に駆動用形状記憶合金1の応力および形状回復完了状
態付近のひずみの管理を行うことができる。これらの素
子33,40は、前記各実施例におけるように駆動用形
状記憶合金1に直接機械的に連係する応力限界設定手段
やひずみ限界設定手段を設置しにくい場合に特に有効で
ある。
【0052】図17は、本発明によるアクチュエータの
さらに別の実施例を示す。本実施例は、バイアス力とし
て重力を利用する例である。アクチュエータ本体5には
プーリー47が回転可能に支持されている。このプーリ
ー47に巻き掛けられた糸48の一端部は操作端部材7
に取り付けられており、この糸48の他端部には錘49
が吊り下げられている。このようにバイアス手段として
バネ8の代わりに重力(錘49)が用いられるになって
いる以外は、本実施例の構成は前記図7の実施例のそれ
と同様の構成とされている。
【0053】本実施例を理解しやすくするため、まず、
本実施例が適切に設定されたものとして、本実施例の基
本的な動作を説明する。スイッチ13をオンにすると、
形状記憶合金1に通電され、該合金1が所定温度範囲ま
で加熱され、錘49に作用する重力に抗して記憶してい
る長さに戻ろうとして収縮するので、操作端部材7が図
上左方に移動する。他方、スイッチ13をオフにする
と、形状記憶合金1に対する通電が停止され、形状記憶
合金1が冷却して該合金1が弛緩して自ら伸び変形しよ
うとする上、錘49が引っ張り力を作用しているので、
形状記憶合金1は伸び変形し、操作端部材7は図上右方
に移動する。以後、同様にしてスイッチ12がオンオフ
される毎に、形状記憶合金1が伸縮し、操作端部材7は
図上左右に往復運動する。
【0054】次に、本実施例における設計方法を説明す
る。本実施例においても、図4および9と同様に簡略化
された図18の応力−ひずみ線図を用いて形状記憶合金
1の動作領域を決定することとし、実用応力限界線およ
び形状回復完了付近ひずみ限界線を図9の場合と同様に
して定める。次に、形状記憶合金1の応力−ひずみ線図
(力−変位線図)に錘49による重力の線を重ね、この
重力の線が形状記憶合金1の動作領域を横切るように錘
49の重さを設定する。重力の線は図では水平になるの
で、形状記憶合金1の動作変位が変化しても操作力の変
化はほとんどない。錘49によるバイアス力を限界応力
の半分になるように設定すれば、アクチュエータのほぼ
全操作量の範囲で往復とも同じ力を発生できるアクチュ
エータを作ることができる。応力限界設定バネ3(応力
限界設定手段)並びに通電ブラシ10および導体11
(ひずみ限界設定手段)の作用は図7の実施例の場合と
同様である。
【0055】なお、本発明においては、応力限界設定手
段やひずみ限界設定手段としては、前記各実施例に示し
た以外の形式のものも使用できる。勿論、前記各実施例
におけるスイッチやブラシの部分を電子的なセンサーや
半導体に置き換えることもできる。
【0056】また、本発明においては、バイアス手段と
しては、前記各実施例のようなものに限られることはな
く、形状記憶合金の動作領域を横切って、変位を大きく
とれるなら、どんなものでもよい。また、動作方向が反
対の2つの形状記憶合金を組み合わせて用いることも可
能である。
【0057】また、前記各実施例では形状記憶合金はワ
イヤ状とされているが、本発明においては形状記憶合金
はコイル状、板状等のワイヤ状以外の形状とされていて
もよい。
【0058】また、本発明における形状記憶合金とアク
チュエータの操作端との連係機構は、前記各実施例のよ
うな機構に限られることはない。
【0059】
【発明の効果】以上のように本発明は、(イ)動作寿命
を従来より飛躍的に長くすることができる、(ロ)操作
範囲を従来より飛躍的に広くすることができる、(ハ)
形状および性能を安定にすることができる、(ニ)アク
チュエータに必要な形状記憶合金の量を非常に簡単に見
積もることができる、等の優れた効果を得られるもので
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】形状記憶合金の金属組織を示す模式図である。
【図2】従来の一般的なTi−Ni系形状記憶合金の代
表的な応力−ひずみ線図である。
【図3】巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向
性形状記憶合金の代表的な応力−ひずみ線図である。
【図4】図3を簡略化した応力−ひずみ線図である。
【図5】巨大な二方向性形状記憶効果を発現する二方向
性形状記憶合金の代表的な温度−ひずみ線図である。
【図6】図5の温度−ひずみ線図の測定条件を示す正面
図である。
【図7】本発明によるアクチュエータの一実施例を示す
正面図である。
【図8】図7の実施例における応力限界設定バネの特性
を示す特性図である。
【図9】図7の実施例における設計方法を示す応力−ひ
ずみ線図である。
【図10】応力限界設定手段の他の実施例を示す正面図
である。
【図11】応力限界設定手段のさらに他の実施例を示す
断面図である。
【図12】本発明によるアクチュエータの他の実施例を
示す正面図である。
【図13】応力限界設定手段の別の実施例を示す断面図
である。
【図14】本発明によるアクチュエータのさらに他の実
施例を示す正面図である。
【図15】図14の実施例における応力管理素子を示す
拡大断面図である。
【図16】図14の実施例におけるひずみ管理素子を示
す拡大断面図である。
【図17】本発明によるアクチュエータのさらに別の実
施例を示す正面図である。
【図18】図17の実施例における設計方法を示す応力
−ひずみ線図である。
【図19】本発明による設計法を適用したアクチュエー
タモデルの寿命試験の結果(途中経過)を示すグラフで
ある。
【図20】二方向性形状記憶合金の1ストローク毎の仕
事量と必要な形状記憶合金の量の概算の説明図である。
【符号の説明】 D 低温状態における応力−ひずみ線 D1 低勾配部分 D2 高勾配部分 1 形状記憶合金 3 応力限界設定バネ(応力限界設定手段) 7 操作端部材 8 バイアスバネ 10 通電ブラシ(ひずみ限界設定手段) 11 導体(ひずみ限界設定手段) 14 板バネ(応力限界設定手段) 15 バネ拘束体(応力限界設定手段) 16 外筒部材(応力限界設定手段) 17 内筒部材(応力限界設定手段) 22 圧縮コイルバネ 24,25 接点(応力限界設定手段) 26 バネ拘束体(応力限界設定手段) 33 応力管理素子(応力限界設定手段) 35 参照用形状記憶合金 39 圧縮コイルバネ 40 ひずみ管理素子(ひずみ限界設定手段) 42 参照用形状記憶合金 44 圧縮コイルバネ 45 通電ブラシ 46 導体

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二方向性形状記憶効果を発現する形状記
    憶合金を駆動源とする形状記憶合金アクチュエータを設
    計する形状記憶合金アクチュエータの設計方法におい
    て、 前記形状記憶合金は、応力を縦軸、ひずみを横軸、応力
    に関しては上方が正方向、ひずみに関しては右方が正方
    向とした応力−ひずみ線図において、低温状態における
    応力−ひずみ線が、応力マイナスの領域においてひずみ
    零の位置から右方に延びるか、またはひずみ零の位置か
    らほぼ応力零の線に沿って右方に延びる傾きの小さい低
    勾配部分と、この低勾配部分より右方において、比較的
    に大きな傾きで右上がりになる高勾配部分とを有する応
    力−ひずみ特性を有する形状記憶合金アクチュエータで
    あり、 前記応力−ひずみ線図において、前記低勾配部分と、前
    記高勾配部分と、前記形状記憶合金の応力が所定の実用
    限界値となる実用応力限界線と、形状回復完了状態付近
    に設けられるひずみが所定値となる形状回復完了付近ひ
    ずみ限界線と前記実用応力限界線との交点と低温状態に
    おけるひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲まれる領域内に
    おいて前記形状記憶合金を動作させるようにする形状記
    憶合金アクチュエータの設計方法。
  2. 【請求項2】 前記応力−ひずみ線図において、前記低
    勾配部分と、前記高勾配部分と、前記実用応力限界線
    と、前記形状回復完了付近ひずみ限界線とで囲まれる領
    域内において前記形状記憶合金を動作させるようにする
    請求項1記載の形状記憶合金アクチュエータの設計方
    法。
  3. 【請求項3】 前記形状記憶合金を動作させる領域を、
    前記応力−ひずみ線図において、応力零の線と、前記高
    勾配部分に近似した直線と、前記実用応力限界線と、前
    記形状回復完了付近ひずみ限界線と前記実用応力限界線
    との交点と応力およびひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲
    まれる領域に簡略化する請求項1記載の形状記憶合金ア
    クチュエータの設計方法。
  4. 【請求項4】 前記形状記憶合金を動作させる領域を、
    前記応力−ひずみ線図において、応力零の線と、前記高
    勾配部分に近似した直線と、前記実用応力限界線と、前
    記形状回復完了付近ひずみ限界線とで囲まれる領域に簡
    略化する請求項2記載の形状記憶合金アクチュエータの
    設計方法。
  5. 【請求項5】 前記形状記憶合金は、引張ひずみ換算で
    ひずみ2%以上の二方向性形状記憶効果を示す請求項
    1,2,3または4記載の形状記憶合金アクチュエータ
    の設計方法。
  6. 【請求項6】 前記形状記憶合金は、形状回復可能なひ
    ずみ範囲のほぼ全範囲に渡って二方向性形状記憶効果を
    発現する請求項1,2,3,4または5記載の形状記憶
    合金アクチュエータの設計方法。
  7. 【請求項7】 前記形状記憶合金アクチュエータは前記
    形状記憶合金を変形させる方向に付勢するバイアス手段
    を有し、前記応力−ひずみ線図において前記バイアス手
    段の特性を示す線が前記形状記憶合金を動作させる領域
    を横切るようにする請求項1,2,3,4,5または6
    記載の形状記憶合金アクチュエータの設計方法。
  8. 【請求項8】 前記応力−ひずみ線図において前記バイ
    アス手段の特性を示す線が前記高勾配部分および前記形
    状回復完了付近ひずみ限界線と交差するようにする請求
    項7記載の形状記憶合金アクチュエータの設計方法。
  9. 【請求項9】 二方向性形状記憶効果を発現する形状記
    憶合金を駆動源とする形状記憶合金アクチュエータにお
    いて、 前記形状記憶合金は、応力を縦軸、ひずみを横軸、応力
    に関しては上方が正方向、ひずみに関しては右方が正方
    向とした応力−ひずみ線図において、低温状態における
    応力−ひずみ線が、応力マイナスの領域においてひずみ
    零の位置から右方に延びるか、またはひずみ零の位置か
    らほぼ応力零の線に沿って右方に延びる傾きの小さい低
    勾配部分と、この低勾配部分より右方において、比較的
    に大きな傾きで右上がりになる高勾配部分とを有する応
    力−ひずみ特性を有し、 前記応力−ひずみ線図において、前記低勾配部分と、前
    記高勾配部分と、前記形状記憶合金の応力が所定の実用
    限界値となる実用応力限界線と、形状回復完了状態付近
    に設けられるひずみが所定値となる形状回復完了付近ひ
    ずみ限界線と前記実用応力限界線との交点と低温状態に
    おけるひずみ零の点とを結ぶ直線とで囲まれる領域内に
    おいて前記形状記憶合金が動作するようになっている形
    状記憶合金アクチュエータ。
  10. 【請求項10】 前記応力−ひずみ線図において、前記
    低勾配部分と、前記高勾配部分と、前記実用応力限界線
    と、前記形状回復完了付近ひずみ限界線とで囲まれる領
    域内において前記形状記憶合金が動作するようになって
    いる請求項9記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  11. 【請求項11】 前記形状記憶合金は、引張ひずみ換算
    でひずみ2%以上の二方向性形状記憶効果を示す請求項
    9または10記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  12. 【請求項12】 前記形状記憶合金は、形状回復可能な
    ひずみ範囲のほぼ全範囲に渡って二方向性形状記憶効果
    を発現する請求項9,10または11記載の形状記憶合
    金アクチュエータ。
  13. 【請求項13】 前記形状記憶合金を変形させる方向に
    付勢するバイアス手段を有し、前記応力−ひずみ線図に
    おいて前記バイアス手段の特性を示す線が前記形状記憶
    合金が動作する領域を横切るようになっている請求項
    9,10,11または12記載の形状記憶合金アクチュ
    エータ。
  14. 【請求項14】 前記応力−ひずみ線図において前記バ
    イアス手段の特性を示す線が前記高勾配部分および前記
    形状回復完了付近ひずみ限界線と交差するようになって
    いる請求項13記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  15. 【請求項15】 前記形状記憶合金の応力が前記実用限
    界値を超えないようにする応力限界設定手段を有してい
    る請求項9,10,11,12,13,または14記載
    の形状記憶合金アクチュエータ。
  16. 【請求項16】 前記応力限界設定手段は、前記形状記
    憶合金を支持する部材を有し、前記形状記憶合金の応力
    が前記実用限界値を超えようとすると、該応力が緩和す
    る方向に前記形状記憶合金を支持する部材を変位させる
    ようになっている請求項15記載の形状記憶合金アクチ
    ュエータ。
  17. 【請求項17】 前記形状記憶合金を支持する部材はバ
    ネ性を有し、前記形状記憶合金の応力が前記実用限界値
    を超えようとすると、該応力を緩和する方向に変位する
    ようになっている請求項16記載の形状記憶合金アクチ
    ュエータ。
  18. 【請求項18】 前記応力限界設定手段は、常時は前記
    形状記憶合金を支持する部材を所定位置に拘束している
    が、前記形状記憶合金の応力が前記実用限界値を超えよ
    うとすると変位して、前記形状記憶合金を支持する部材
    が前記所定位置から変位するのを許すバネを有している
    請求項16記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  19. 【請求項19】 前記形状記憶合金は通電加熱により駆
    動されるようになっており、前記応力限界設定手段は、
    前記形状記憶合金の応力が前記実用限界値を超えようと
    すると、前記形状記憶合金に対する通電を停止するよう
    になっている請求項15記載の形状記憶合金アクチュエ
    ータ。
  20. 【請求項20】 前記応力限界設定手段は前記形状記憶
    合金と共通の電流を流される参照用形状記憶合金を有
    し、前記参照用形状記憶合金の応力が前記実用限界値に
    対応する値を超えようとすると、前記形状記憶合金に対
    する通電を停止するようになっている請求項19記載の
    形状記憶合金アクチュエータ。
  21. 【請求項21】 前記形状記憶合金が前記形状回復完了
    付近ひずみ限界線を越えて形状回復するのを防止するひ
    ずみ限界設定手段を有している請求項9,10,11,
    12,13,14,15,16,17,18,19また
    は20記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  22. 【請求項22】 前記形状記憶合金は通電加熱により駆
    動されるようになっており、前記ひずみ限界設定手段
    は、前記形状記憶合金が所定以上形状回復しようとする
    と、前記形状記憶合金に対する通電を停止する請求項2
    1記載の形状記憶合金アクチュエータ。
  23. 【請求項23】 前記ひずみ限界設定手段は前記形状記
    憶合金と共通の電流を流される参照用形状記憶合金を有
    し、前記参照用形状記憶合金が所定以上形状回復しよう
    とすると、前記形状記憶合金に対する通電を停止するよ
    うになっている請求項22記載の形状記憶合金アクチュ
    エータ。
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