JP2003002862A - 酸化方法および反応装置 - Google Patents

酸化方法および反応装置

Info

Publication number
JP2003002862A
JP2003002862A JP2001189840A JP2001189840A JP2003002862A JP 2003002862 A JP2003002862 A JP 2003002862A JP 2001189840 A JP2001189840 A JP 2001189840A JP 2001189840 A JP2001189840 A JP 2001189840A JP 2003002862 A JP2003002862 A JP 2003002862A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
reaction
substrate
catalyst
carboxylic acid
imide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001189840A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4859291B2 (ja
Inventor
Hitoshi Watanabe
仁志 渡邊
Narihisa Hirai
成尚 平井
Hiroyuki Miura
裕幸 三浦
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daicel Corp
Original Assignee
Daicel Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daicel Chemical Industries Ltd filed Critical Daicel Chemical Industries Ltd
Priority to JP2001189840A priority Critical patent/JP4859291B2/ja
Publication of JP2003002862A publication Critical patent/JP2003002862A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4859291B2 publication Critical patent/JP4859291B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 イミド系酸化触媒を利用して効率よく基質を
酸化する方法及び反応装置を提供する。 【解決手段】 下記式(I) 【化1】 (式中、Xは酸素原子、ヒドロキシル基又はアシルオキ
シ基を示す)で表されるイミド単位を有する酸化触媒及
び金属触媒の存在下、基質(複数のアルキル基を有する
芳香族化合物など)と酸素とを接触させて、前記基質を
酸化する方法において、前記金属触媒と前記基質とを同
一の経路3で反応系(反応ユニット1)に供給し、前記
酸化触媒を前記金属触媒の経路とは異なる経路4で反応
系に供給する。基質が、複数のアルキル基を有する芳香
族化合物である場合、生成した反応混合物から多価カル
ボン酸と多価カルボン酸前駆体とを分離して(分離ユニ
ット2)、この多価カルボン酸前駆体を反応系に循環さ
せることにより(リサイクルライン6)、高純度の多価
カルボン酸を得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イミド系酸化触媒
を用いて、基質(複数のアルキル基含有芳香族化合物な
ど)を効率よく酸化する方法及び反応装置に関する。
【0002】
【従来の技術】芳香族多価カルボン酸(例えば、テレフ
タル酸)はポリエステルの原料として極めて重要な化合
物である。テレフタル酸の代表的な工業的製造法とし
て、パラキシレンを重金属及び臭素を含む触媒の存在
下、酢酸溶媒中、分子状酸素含有ガスで酸化する方法が
大規模に行われている。この方法では、攪拌槽型の酸化
反応器に触媒、酢酸溶媒、パラキシレン及び分子状酸素
含有ガスとを連続的に供給し、パラキシレンをテレフタ
ル酸に酸化する。生成したテレフタル酸を含む反応混合
物は、酸化反応器から抜出され、所望によりさらに酸化
したのち析出したテレフタル酸結晶を分離回収する。不
純物の蓄積を防ぐため、結晶を分離した後の濾液の一部
を系外に排出し、残りの濾液を酸化反応器に循環してい
る。また、燃焼及び系外への排出などによって、反応系
から失われる酢酸溶媒及び触媒は、新たな酢酸および触
媒成分を系外から供給することにより補充され、系内は
常に一定の状態に保たれる。
【0003】このようなテレフタル酸の製造方法とし
て、例えば、特開平6−321854号公報には、重金
属と臭素を含む触媒を溶解した酢酸溶媒を収容している
酸化反応器に、パラキシレンと分子状酸素含有ガスとを
連続的に供給してパラキシレンをテレフタル酸に酸化す
る工程と、酸化反応器から抜出した反応混合物からテレ
フタル酸結晶を分離する工程と、結晶を分離した後の反
応母液の少なくとも一部を酸化反応器に循環する工程と
を含むテレフタル酸の連続的製造法において、酸化反応
器に補給する触媒成分のうち、重金属はパラキシレンに
混合して酸化反応器に供給し、臭素は別の経路で酸化反
応器に供給する方法が開示されている。
【0004】また、テレフタル酸の品質を向上させるた
めに、種々の方法が提案されている。例えば、種々の溶
媒より高純度テレフタル酸を再結晶することによって高
純度テレフタル酸を得る方法、また、各種の酸化剤によ
り粗テレフタル酸を再び酸化して高純度テレフタル酸を
得る方法、さらには触媒含量をコントロールすることに
より、パラキシレンを酸化して、直接高純度テレフタル
酸を得る方法などが挙げられる。これらの方法は、テレ
フタル酸の製造において、着色物、不純物を減少でき
る。しかし、いずれの方法も、多量の再結晶溶媒や触媒
を必要とするため、コスト的に不利である。さらに、上
記のような方法を用いても、反応中間体である4−カル
ボキシベンズアルデヒドやパラトルイル酸を減少させる
のは困難であり、そのため、高純度カルボン酸を効率よ
く得ることができない。
【0005】また、反応器内の混合分散効率を高めて高
純度カルボン酸を製造する方法も提案されている。例え
ば、原料パラキシレンの複数の仕込み口を反応容器壁の
上部及び下部に設け、反応器内に原料を各仕込み口から
仕込む方法、攪拌機を回転させて、攪拌翼端から原料を
仕込む方法などが挙げられる。これらの方法のうち、後
者の方法の効果は非常に大きいが、機械構造上、技術的
に困難である。
【0006】例えば、特公昭56−21016号公報に
は、反応器の頂部にガス排出口を、また底部に反応生成
物取出口及び酸素含有ガス導入口を備え、かかる反応器
の内部には少なくとも攪拌器ならびに複数のパラキシレ
ン含有液仕込み口、反応器の上部から下部にわたり液面
に対してほぼ垂直に取り付けられた複数枚の邪魔板を備
えたテレフタル酸製造用液相酸化反応装置において、反
応液面上下部ないし中部であり、かつ隣接する邪魔板に
囲まれている範囲ごとに、パラキシレン含有液仕込み口
を設け、パラキシレンを分割して反応器内に仕込む高純
度テレフタル酸の製造方法が開示されている。
【0007】一方、イミド系触媒は、分子状酸素による
酸化、カルボキシル化、ニトロ化、スルホン化、アシル
化、ラジカルカップリング反応などの諸反応を温和な条
件下で円滑に進行させる触媒として注目されている。
【0008】N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド
化合物を利用すると、酸素との接触により基質を効率よ
く酸化できる。例えば、特開平8−38909号公報お
よび特開平9−278675号公報には、酸化触媒とし
て、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド化合物を
用い、基質(炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、キ
シレンなどのメチル基含有芳香族炭化水素、ジエン類な
ど)を、分子状酸素と接触させて酸化する方法が開示さ
れている。また、特開平10−316610号公報に
は、前記イミド化合物の存在下、エーテル類を酸化し
て、エステル、酸無水物、ラクトンなどを製造する方法
が開示されている。WO99/50204号公報には、
前記イミド化合物及び共酸化剤の存在下、非芳香族性エ
チレン結合を有する化合物を分子状酸素により酸化し
て、対応するエポキシドを製造する方法、及び前記イミ
ド化合物及び共酸化剤の存在下、ケトンを分子状酸素で
酸化して対応するエステル又はラクトンを製造する方法
が記載されている。
【0009】さらに、前記イミド化合物は、ニトロ化反
応などの種々の反応においても触媒として有用である。
例えば、特開平11−239730号公報には、前記イ
ミド化合物の存在下、基質と窒素酸化物とを反応させ
て、対応するニトロ化合物を得る方法、基質と一酸化炭
素及び酸素とを反応させて、対応するカルボン酸を生成
させる方法が開示されている。WO99/41219号
公報には、前記イミド化合物の存在下、基質を酸素及び
1,2−ジカルボニル化合物(ビアセチルなど)と反応
させると、アシル化反応が進行することが開示されてい
る。日本化学会1999年春季年会予稿集では、N−ヒ
ドロキシフタルイミドを触媒とし、α,β−不飽和エス
テルとアルコールと酸素とを反応させると、ラジカルカ
ップリング反応が進行し、α−ヒドロキシ−γ−ブチロ
ラクトンが生成すること、炭化水素類を酸素及び二酸化
硫黄と反応させると、対応するスルホン酸が生成するこ
とが報告されている。
【0010】特に、特開平9−327626号公報に
は、N−ヒドロキシフタルイミドなどのイミド系酸化触
媒及び金属触媒で構成された酸化触媒系が開示されてお
り、この文献の実施例では、o−キシレン、N−ヒドロ
キシフタルイミド、コバルトアセチルアセトナート及び
酢酸の混合物を、酸素雰囲気下で攪拌して、フタル酸及
びo−メチル安息香酸を製造している。しかし、このよ
うな方法では、前記イミド系酸化触媒を効率よく利用す
ることができないばかりか、多価カルボン酸(フタル酸
など)の純度を改善できない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、イミド系酸化触媒を利用して、基質(複数のアルキ
ル基を有する芳香族化合物など)を効率よく酸化する方
法および反応装置を提供することにある。
【0012】本発明の他の目的は、高純度の多価カルボ
ン酸を、簡便に工業的に有利に製造するのに有用な酸化
方法および反応装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を達成するため鋭意検討の結果、イミド系酸化触媒と、
金属触媒とを異なる経路で反応系に供給すると、イミド
系酸化触媒の失活を抑制でき、基質を効率よく酸化でき
ること、さらには基質として複数のアルキル基(特にメ
チル基)含有芳香族化合物を用い、対応する多価カルボ
ン酸を生成させて、生成した反応混合物から、多価カル
ボン酸前駆体を分離して反応系に循環させると、高純度
の多価カルボン酸が得られること、ならびに複数の邪魔
板を有する反応装置において、イミド系酸化触媒供給口
を邪魔板間の領域に設け、各供給口からイミド系酸化触
媒を供給すると、基質を効率よく酸化でき、さらに基質
が前記芳香族化合物である場合、多価カルボン酸を高純
度で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】すなわち、本発明の方法では、下記式
(I)
【0015】
【化3】
【0016】(式中、Xは酸素原子、ヒドロキシル基又
はアシルオキシ基を示す)で表されるイミド単位を有す
る酸化触媒及び金属触媒の存在下、基質と酸素とを接触
させて、前記基質を酸化する方法であって、反応系に対
して、前記金属触媒と前記基質とを供給するとともに、
前記酸化触媒を前記金属触媒とは異なる経路で反応系に
供給する。特に、本発明の方法では、前記式(1)で表
されるイミド単位を有する酸化触媒及び金属触媒の存在
下、複数のアルキル基を有する芳香族化合物(キシレン
など)と酸素とを接触させて、前記芳香族化合物に対応
する多価カルボン酸を製造する方法であって、反応系に
対して、前記金属触媒と前記芳香族化合物と供給すると
ともに、前記酸化触媒を前記金属触媒とは異なる経路で
反応系に供給し、生成した反応混合物から多価カルボン
酸と多価カルボン酸前駆体とを分離して、この多価カル
ボン酸前駆体を反応系に循環させることにより、高純度
の多価カルボン酸を得ることができる。この方法におい
て、多価カルボン酸前駆体と酸化触媒とを同一の経路で
反応系に供給してもよい。反応混合物から、晶析によ
り、多価カルボン酸を分離してもよい。
【0017】また、本発明には、前記イミド系酸化触媒
の存在下で、基質(複数のアルキル基を有する芳香族化
合物)と酸素とを接触させて、前記基質を酸化するため
の反応装置、すなわち、反応容器の内壁に取り付けられ
た複数の邪魔板と、これらの邪魔板間の領域に前記酸化
触媒を供給するための供給口と、前記邪魔板間の少なく
とも1つの領域に前記基質を供給するための供給口と、
反応容器内の混合物を攪拌するための攪拌手段と、反応
容器に酸素源を供給するための供給口と、前記酸化反応
によって生成した反応混合物を反応容器から取り出すた
めの取り出し口とを備えている反応装置も含まれる。な
お、前記反応装置を用いて行う酸化反応において、さら
に金属触媒を併用してもよい。併用する場合には、イミ
ド系酸化触媒と金属触媒とは異なる経路で供給するのが
好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】[イミド化合物]イミド化合物
は、下記式(I)で表されるイミド単位を有している。
【0019】
【化4】
【0020】(式中、Xは酸素原子、ヒドロキシル基又
はアシルオキシ基を示す)アシルオキシ基としては、例
えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ(アセトキ
シ)、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシなどの炭素
数1〜6程度のアシルオキシ基(好ましくはC1-4アシ
ルオキシ基、特にアセチルオキシ基)が含まれる。
【0021】イミド化合物の具体例としては、例えば、
下記式(II)で表される化合物が例示できる。
【0022】
【化5】
【0023】(式中、R1及びR2は、同一又は異なっ
て、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール
基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ
基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル
基を示し、R1及びR2は、互いに結合して二重結合、あ
るいは芳香族性又は非芳香族性環を形成してもよく、R
1及びR2により形成される芳香族性又は非芳香族性環
は、前記式(I)で示されるイミド単位を少なくとも1
つ有していてもよい。Xは前記に同じ)前記式(II)の化
合物において、置換基R1及びR2のうちハロゲン原子に
は、ヨウ素、臭素、塩素及びフッ素が含まれる。アルキ
ル基には、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブ
チル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシ
ル基などの炭素数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状ア
ルキル基(好ましくはC1-6アルキル基、特にC1 -4アル
キル基)が含まれる。
【0024】アリール基には、フェニル基、ナフチル基
などが含まれ、シクロアルキル基には、シクロペンチ
ル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのC3-10
シクロアルキル基が含まれる。アルコキシ基には、例え
ば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキ
シ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチル
オキシ、ヘキシルオキシ基などの炭素数1〜10程度の
アルコキシ基、好ましくはC1-6アルコキシ基、特にC
1-4アルコキシ基が含まれる。
【0025】アルコキシカルボニル基には、例えば、メ
トキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカ
ルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボ
ニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニ
ル、ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボ
ニル基などのアルコキシ部分の炭素数が1〜10程度の
アルコキシカルボニル基(好ましくはC1-6アルコキシ
−カルボニル基、さらに好ましくはC1-4アルコキシ−
カルボニル基)が含まれる。
【0026】アシル基としては、例えば、ホルミル、ア
セチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレ
リル、イソバレリル、ピバロイル基などの炭素数1〜6
程度のアシル基が例示できる。
【0027】前記置換基R1及びR2は、同一又は異なっ
ていてもよい。また、前記式(II)において、R1及びR2
は互いに結合して、二重結合、あるいは芳香族性又は非
芳香族性の環を形成してもよい。好ましい芳香族性又は
非芳香族性環は5〜12員環、特に6〜10員環程度で
あり、複素環又は縮合複素環であってもよいが、炭化水
素環である場合が多い。芳香族性又は非芳香族性環は、
前記式(I)で表されるイミド単位を少なくとも1つ
(通常、1又は2)有していてもよい。このような環に
は、例えば、非芳香族性脂環族環(置換基を有していて
もよいシクロアルカン環(シクロヘキサン環など)、置
換基を有していてもよいシクロアルケン環(シクロヘキ
セン環など)など)、非芳香族性橋かけ環(5−ノルボ
ルネン環などの置換基を有していてもよい橋かけ式炭化
水素環など)、ベンゼン環、ナフタレン環などの置換基
を有していてもよい芳香族環が含まれる。前記環は、芳
香族環で構成される場合が多い。
【0028】好ましいイミド化合物には、下記式で表さ
れる化合物が含まれる。
【0029】
【化6】
【0030】(式中、R3〜R6は、同一又は異なって、
水素原子、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ
基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アシル
基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、ハロゲン原子を示
す。R1、R2及びXは前記に同じ) 置換基R3〜R6において、アルキル基、アルコキシ基、
アルコキシカルボニル基、アシル基、ハロゲン原子とし
ては、前記と同様の基又は原子が例示できる。置換基R
3〜R6は、通常、水素原子、炭素数1〜4程度の低級ア
ルキル基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン原子で
ある場合が多い。
【0031】イミド化合物は、単独で又は二種以上組み
合わせて使用できる。
【0032】なお、前記式(I)で表されるイミド化合
物に対応する酸無水物には、例えば、無水コハク酸、無
水マレイン酸などの飽和又は不飽和脂肪族ジカルボン酸
無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水
フタル酸(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水
物)、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン
酸1,2−無水物などの飽和又は不飽和非芳香族性環状
多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水
物)、無水ヘット酸、無水ハイミック酸などの橋かけ環
式多価カルボン酸無水物(脂環族多価カルボン酸無水
物)、無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テト
ラクロロ無水フタル酸、無水ニトロフタル酸、無水トリ
メリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水
物、無水ピロメリット酸、無水メリト酸、1,8;4,
5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族
多価カルボン酸無水物が含まれる。
【0033】好ましいイミド化合物としては、例えば、
N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイ
ン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミ
ド、N,N′−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカル
ボン酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒ
ドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシ
テトラクロロフタル酸イミド、N−アセトキシフタル酸
イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキ
シハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸
イミド、N,N′−ジヒドロキシピロメリット酸イミ
ド、N,N′−ジヒドロキシナフタレンテトラカルボン
酸イミドなどが挙げられる。特に好ましい化合物には、
イミド化合物[脂環族多価カルボン酸無水物、なかでも
芳香族多価カルボン酸無水物から誘導されるN−ヒドロ
キシイミド化合物、例えば、N−ヒドロキシフタル酸イ
ミド、N−アセトキシフタル酸イミド]などが含まれ
る。
【0034】前記イミド化合物は、慣用のイミド化反
応、例えば、対応する酸無水物とヒドロキシルアミンN
2OHとを反応させて酸無水物基を開環した後、閉環
してイミド化することにより調製できる。
【0035】なお、前記イミド化合物の存在下、基質と
酸素とを接触させるだけで、カルボン酸類(芳香族カル
ボン酸、複素環式カルボン酸など)などを高い選択率及
び収率で得ることができる。
【0036】前記式(I)のイミド化合物の使用量は、
広い範囲で選択でき、例えば、基質1モルに対して1×
10-6モル(1×10-4モル%)〜1モル(100モル
%)、好ましくは1×10-5モル(1×10-3モル%)
〜0.5モル(50モル%)、さらに好ましくは1×1
-4モル(1×10-2モル%)〜0.4モル(40モル
%)程度であり、1×10-4モル(1×10-2モル%)
〜0.35モル(35モル%)程度である場合が多い。
【0037】[金属触媒]前記イミド化合物は金属触媒
(助触媒)と併用してもよい。金属触媒としては、金属
化合物、例えば、遷移金属化合物や、ホウ素化合物など
のように周期表13族元素(ホウ素B、アルミニウムA
lなど)を含む化合物が含まれる。金属触媒は、一種で
又は二種以上組合わせて使用できる。
【0038】前記遷移金属の元素としては、例えば、周
期表3族元素(例えば、スカンジウムSc、イットリウ
ムYの他、ランタンLa、セリウムCe、サマリウムS
mなどのランタノイド元素、アクチニウムAcなどのア
クチノイド元素)、周期表4族元素(チタンTi、ジル
コニウムZr、ハフニウムHfなど)、5族元素(バナ
ジウムV、ニオブNb、タンタルTaなど)、6族元素
(クロムCr、モリブデンMo、タングステンWな
ど)、7族元素(マンガンMnなど)、8族元素(鉄F
e、ルテニウムRu、オスミウムOsなど)、9族元素
(コバルトCo、ロジウムRh、イリジウムIrな
ど)、10族元素(ニッケルNi、パラジウムPd、白
金Ptなど)、11族元素(銅Cu、銀Ag、金Auな
ど)などが挙げられる。
【0039】特に、前記式(I)で表されるイミド化合
物と組合せたとき、Ceなどのランタノイド元素、Ti
などの4族元素、Vなどの5族元素、Mo、Wなどの6
族元素、Mnなどの7族元素、Fe、Ruなどの8族元
素、Co、Rhなどの9族元素、Niなどの10族元
素、Cuなどの11族元素を含む化合物は、高い酸化活
性を示す。
【0040】助触媒は、前記元素を含み、かつ触媒能を
有する限り特に制限されず、水酸化物などであってもよ
いが、通常、前記元素を含む金属酸化物、有機酸塩、無
機酸塩、ハロゲン化物、前記金属元素を含む配位化合物
(錯体)やヘテロポリ酸又はその塩などである場合が多
い。また、ホウ素化合物としては、例えば、水素化ホウ
素(例えば、ボラン、ジボラン、テトラボラン、ペンタ
ボラン、デカボランなど)、ホウ酸(オルトホウ酸、メ
タホウ酸、四ホウ酸など)、ホウ酸塩(例えば、ホウ酸
ニッケル、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸マンガンな
ど)、B23などのホウ素酸化物、ボラザン、ボラゼ
ン、ボラジン、ホウ素アミド、ホウ素イミドなどの窒素
化合物、BF3、BCl3、テトラフルオロホウ酸塩など
のハロゲン化物、ホウ酸エステル(例えば、ホウ酸メチ
ル、ホウ酸フェニルなど)などが挙げられる。
【0041】有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、プロ
ピオン酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、ステアリン
酸塩などのC1-30カルボン酸塩(C2-24カルボン酸塩な
ど)が例示され、無機酸塩としては、例えば、硝酸塩、
硫酸塩又はリン酸塩などが挙げられる。また、ハロゲン
化物としては、例えば、塩化物や臭化物などが例示でき
る。
【0042】錯体を形成する配位子としては、OH(ヒ
ドロキソ)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキ
シ基などのアルコキシ基、アセチル、プロピオニルなど
のアシル基、メトキシカルボニル(アセタト)、エトキ
シカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、アセチル
アセトナト、シクロペンタジエニル基、塩素、臭素など
ハロゲン原子、CO、CN、酸素原子、H2O(ア
コ)、ホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィンな
どのトリアリールホスフィン)などのリン化合物、NH
3(アンミン)、NO、NO2(ニトロ)、NO3(ニト
ラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ピ
リジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物などが
挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異種の配
位子は一種又は二種以上配位していてもよい。
【0043】好ましい錯体には、前記遷移金属元素を含
む錯体が含まれる。前記遷移金属元素と配位子とは適当
に組合せて錯体を構成することができ、例えば、セリウ
ムアセチルアセトナト、コバルトアセチルアセトナト、
ルテニウムアセチルアセトナト、銅アセチルアセトナト
などであってもよい。
【0044】ヘテロポリ酸を形成するポリ酸は、例え
ば、周期表5族又は6族元素、例えば、V(バナジン
酸),Mo(モリブデン酸)及びW(タングステン酸)
の少なくとも一種である場合が多く、中心原子は特に制
限されない。ヘテロポリ酸の具体例としては、例えば、
コバルトモリブデン酸塩、コバルトタングステン酸塩、
モリブデンタングステン酸塩、バナジウムモリブデン酸
塩、バナドモリブドリン酸塩などが挙げられる。
【0045】助触媒として、周期表7族元素及び/又は
9族元素で構成された助触媒[例えば、7族元素を含む
化合物と9族元素を含む化合物との組み合わせ(特に、
マンガン化合物とコバルト化合物との組み合わせ)]を
使用すれば、芳香族カルボン酸(テレフタル酸など)を
効率よく生成できる。
【0046】前記イミド化合物、又はイミド化合物
(I)と助触媒とで構成される触媒系は、均一系であっ
てもよく、不均一系であってもよい。また、触媒系は、
担体に触媒成分を担持した固体触媒であってもよい。担
体としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、シリカ−ア
ルミナ、ベントナイトなどの多孔質担体を用いる場合が
多い。固体触媒における触媒成分の担持量は、担体10
0重量部に対して、前記式(I)のイミド化合物0.1
〜50重量部程度である。また、助触媒の担持量は、担
体100重量部に対して、0.1〜30重量部程度であ
る。
【0047】助触媒の使用量は、例えば、基質1モルに
対して1×10-6モル〜0.7モル、好ましくは1×1
-5モル〜0.3モル、さらに好ましくは1×10-5
ル〜0.1モル(10モル%)程度であり、1×10-6
モル〜1×10-2モル、特に1×10-6モル〜1×10
-3モル程度であってもよい。ヘテロポリ酸又はその塩を
助触媒として使用する場合、基質100重量部に対して
0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜10重量部、
さらに好ましくは1〜5重量部程度である。
【0048】助触媒は、液相反応系において、重量基準
で、通常、1〜10000ppm、好ましくは5〜50
00ppm、さらに好ましくは10〜3000ppm程
度の濃度で使用できる。
【0049】なお、イミド化合物と助触媒との割合は、
例えば、イミド化合物/助触媒=95/5〜5/95
(モル比)、好ましくは90/10〜20/80(モル
比)、さらに好ましくは85/15〜50/50(モル
比)程度である。
【0050】[基質]基質としては、特に制限されず、
特開平9−327626号公報に開示されている種々の
基質、例えば、炭化水素類(飽和又は不飽和脂肪族炭化
水素類、飽和又は不飽和脂環式炭化水素類、第三級炭素
原子(メチン炭素)を含む橋かけ環式炭化水素類、非芳
香族性環を含む縮合環式炭化水素類、芳香族性環にメチ
ル基又はメチレン基が結合した芳香族炭化水素類な
ど)、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン
類、複素環化合物、チオール類、スルフィド類、アミド
類などが挙げられる。
【0051】好ましい基質には、複数のアルキル基を有
する芳香族化合物が使用できる。アルキル基としては、
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t
−ブチル基などのC1-4アルキル基が挙げられる。好ま
しいアルキル基は、C1-2アルキル基、特にメチル基で
ある。芳香族化合物は、少なくともメチル基(特に複数
のメチル基)を有している場合が多い。
【0052】前記芳香族性化合物としては、少なくとも
2つ(例えば、2〜10、好ましくは2〜6、さらに好
ましくは2〜4程度)のアルキル基(特に、メチル基)
が芳香族性環に置換した化合物であればよく、芳香族性
環は、芳香族性炭化水素環、芳香族性複素環のいずれで
あってもよい。
【0053】複数のアルキル基含有芳香族炭化水素類に
は、例えば、o−,m−又はp−キシレン、トリメチル
ベンゼン(例えば、1,2,3−トリメチルベンゼン、
1,3,5−トリメチルベンゼンなど)、テトラメチル
ベンゼン(例えば、1,2,3,4−テトラメチルベン
ゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼンなど)、
ヘキサメチルベンゼン、4−t−ブチル−1−メチルベ
ンゼン、エチルジメチルベンゼン、t−ブチルジメチル
ベンゼン、1,5−ジメチルナフタレン、2,5−ジメ
チルナフタレンなどの2〜6個程度のC1-4アルキル基
(特にメチル基)が芳香族炭化水素環に置換した芳香族
炭化水素類などが挙げられる。好ましい芳香族性炭化水
素類には、2〜6個(特に2〜4個)程度のメチル基が
置換したC6-10芳香族炭化水素類(例えば、キシレン、
テトラメチルベンゼン)が含まれる。
【0054】複数のアルキル基含有複素環化合物として
は、複素環にメチル基が置換した化合物、例えば、3,
4−ジメチルピラン、ルチジン類(2,3−ジメチルピ
リジン、2,4−ジメチルピリジン、2,5−ジメチル
ピリジン、3,5−ジメチルピリジン)、コリジン類
(2,3,4−トリメチルピリジン、2,3,5−トリ
メチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンな
ど)などが例示できる。
【0055】なお、基質には、種々の原子又は置換基
(例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原
子;カルボニル基;ヒドロキシル基;カルボキシル基な
ど)が置換されていてもよい。
【0056】(酸素源)反応は、酸素雰囲気下で行われ
る。酸素源としては、特に制限されず、純粋な酸素を用
いてもよく、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素な
どの不活性ガスで希釈した酸素を使用してもよい。操作
性及び安全性のみならず経済性などの点から、空気を使
用するのが好ましい。酸素の使用量は、基質の種類に応
じて選択でき、通常、基質1モルに対して、0.5モル
以上(例えば、1モル以上)、好ましくは1〜100モ
ル、さらに好ましくは2〜50モル程度であり、通常、
過剰モルの酸素を含有する酸素雰囲気下で反応が行われ
る。
【0057】反応は、予め十分な分子状酸素を反応装置
内に供給した後、密閉系で行ってもよく、連続的に分子
状酸素を流通させて行ってもよい。連続的に流通させる
場合、酸素の流通速度は、前記使用量に対応した速度で
供給できる。
【0058】なお、前記酸化反応において、アルデヒド
類(特に、アセトアルデヒドなどのC1-6アルデヒド
類)、ケトン類及び/又はアルコール類などの共存下で
反応させると、前記酸化反応を促進し、高効率でカルボ
ン酸を製造できる。また、ラジカル発生剤やラジカル促
進剤などを併用すれば、反応が促進される場合もある。
【0059】(反応溶媒)反応(酸化反応など)は、反
応に不活性な溶媒の非存在下で行ってもよいが、通常、
溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、例え
ば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリ
フルオロ酢酸などの有機カルボン酸類;ヘキサン、オク
タン、ベンゼンなどの炭化水素類;クロロホルム、ジク
ロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、ジクロロベ
ンゼン、トリフルオロメチルベンゼンなどのハロゲン化
炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、
ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノールな
どのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メ
チルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸メチル、酢
酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジメチルエー
テル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど
のエーテル類;ニトロベンゼン、ニトロメタン、ニトロ
エタンなどのニトロ化合物;アセトニトリル、プロピオ
ニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類;ホルムア
ミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド(DM
F)、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;水;およ
びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0060】溶媒としては、通常、カルボン酸類(酢酸
など)、炭化水素類、アルコール類(メタノール、2−
エチルヘキサノールなど)、ケトン類、エステル類、エ
ーテル類、ニトロ化合物、ニトリル類、アミド類、含水
溶媒(酢酸水溶液などの有機カルボン酸水溶液など)な
どが使用され、基質を溶媒として用いる場合も多い。な
お、含水溶媒としては、高濃度(例えば、40〜99重
量%、好ましくは60〜95重量%、特に80〜95重
量%程度)の有機溶媒を含む水溶液を用いていてもよ
い。
【0061】反応温度は、例えば、0〜300℃、好ま
しくは15〜250℃、さらに好ましくは30〜200
℃程度であり、通常、50〜190℃(特に70〜19
0℃)程度で反応する場合が多い。
【0062】また、反応は、常圧または加圧下で行なう
ことができ、加圧下で反応させる場合には、通常、1〜
100atm(例えば、1.5〜80atm)、好ましくは2
〜70atm、さらに好ましくは3〜50atm程度である場
合が多い。反応時間(流通式反応においては滞留時間)
は、反応温度及び圧力に応じて、例えば、1分〜48時
間、好ましくは2分〜24時間、さらに好ましくは5分
〜8時間程度の範囲から適当に選択できる。
【0063】なお、反応系の水分量を、反応系全体に対
して、30重量%以下(例えば、0〜30重量%)、好
ましくは0〜20重量%(例えば、0〜18重量%)、
さらに好ましくは0〜15重量%(例えば、0〜10重
量%)程度の範囲に調整すると、前記酸化反応を促進で
きるとともに、副生物の生成を抑制でき、カルボン酸な
どの反応生成物を高収率で得ることができる。
【0064】また、反応は、水を除去しながら行う反応
蒸留で行ってもよく、デカンターなどの水分離装置と組
み合わせて水を除去する反応蒸留で行ってもよい。
【0065】本発明の方法の特徴は、前記酸化反応系に
対して、前記金属触媒と前記基質とを供給するととも
に、前記酸化触媒を、前記金属触媒とは異なる経路で
(特に、イミド系酸化触媒と金属触媒とが接触しないよ
うに)供給する点にある。さらに、本発明の他の特色と
しては、基質として、複数のアルキル基(特にメチル
基)を有する芳香族化合物を用い、酸化反応混合物から
生成した多価カルボン酸と多価カルボン酸前駆体とを分
離して、多価カルボン酸前駆体を反応系に循環させる点
にある。
【0066】図1は、本発明の製造方法を説明するため
のフロー図である。この例では、基質として複数のメチ
ル基を有する芳香族炭化水素類(p−キシレン、m−キ
シレンなど)、酸化触媒として芳香族イミド化合物(N
−アセトキシフタルイミドなど)、金属触媒として酢酸
塩、溶媒として多価カルボン酸に対して貧溶媒であり、
かつ多価カルボン酸前駆体、酸化触媒及び金属触媒に対
して良溶媒である溶媒(酢酸など)を用いて、多価カル
ボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)を製造して
いる。このプロセスでは、反応ユニット1に、金属触媒
供給ライン3から基質と金属触媒とを同伴して供給し、
予め基質を反応させた後、酸化触媒供給ライン4から酸
化触媒を供給して、基質の多価カルボン酸への酸化を行
っている。なお、酸素源は、金属触媒供給ライン3から
金属触媒及び基質とともに供給してもよく、酸素源供給
ラインを新たに設けてもよい(図示せず)。反応ユニッ
ト1において生成した反応混合物を、反応混合物供給ラ
イン5により、分離ユニット2に供給し、目的化合物の
多価カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)
と、多価カルボン酸前駆体(p−トルイル酸、m−トル
イル酸、4−カルボキシベンズアルデヒドなど)とを分
離する。なお、この例では、分離ユニットとして晶析器
を使用している。分離された多価カルボン酸前駆体を、
リサイクルライン6により、反応ユニット1に循環(リ
サイクル)する。なお、リサイクルライン6には、酸化
触媒供給ライン4から酸化触媒を新たに供給する。この
プロセスにおいて、多価カルボン酸と多価カルボン酸前
駆体との分離には、冷却晶析を利用し、多価カルボン酸
は晶析成分として、多価カルボン酸前駆体を非晶析成分
として分離できる。
【0067】図1の方法では、イミド系酸化触媒と、金
属触媒とを異なる経路(特に反対方向)から供給するこ
とにより、酸化触媒と金属触媒とが接触するのを防ぎ、
酸化触媒の失活を抑制することができる。そのため、前
記酸化触媒の供給経路(酸化触媒供給ライン4)と金属
触媒の供給経路(金属触媒供給ライン3)とが、可能な
かぎり離れているのが好ましい。
【0068】さらに、金属触媒と前記基質とを同一の経
路(金属触媒供給ライン3)で、すなわち、金属触媒と
基質とを同伴させて反応系に供給することにより、イミ
ド系酸化触媒の存在下での基質の酸化に先立って、金属
触媒の存在下で酸化反応が起こり、基質が多価カルボン
酸前駆体、さらには多価カルボン酸に酸化されると考え
られる。そして、多価カルボン酸前駆体をイミド系酸化
触媒の存在下で酸化することによって、目的生成物であ
る多価カルボン酸を効率よく得ることができる。そのた
め、前記酸化触媒の供給経路(酸化触媒供給ライン4)
と金属触媒の供給経路(金属触媒供給ライン3)とが、
可能なかぎり離れ、基質の酸化が、段階的に効率よく起
こるのが好ましい。
【0069】このような方法により、イミド系酸化触媒
の失活による反応効率の低下を抑制するとともに、イミ
ド系酸化触媒の使用量を低減でき、基質を効率よく酸化
できる。
【0070】さらに、生成した反応混合物から、目的生
成物の多価カルボン酸と多価カルボン酸前駆体を分離
(分離ユニット2)し、多価カルボン酸前駆体を反応系
に循環(ライン6)させることによって、効率よく多価
カルボン酸が得られる。特に、前記多価カルボン酸前駆
体をイミド系酸化触媒とともに反応系に循環させること
により、活性なイミド系酸化触媒の存在下で、前記多価
カルボン酸前駆体を効率よく酸化できる。そのため、本
発明は、複数の段階で酸化反応が進行する基質(複数の
アルキル基を有する芳香族化合物)から、複数の酸化ス
テップを経て目的化合物(多価カルボン酸)を連続的に
製造する方法に有利に適用される。 (反応工程)反応ユニット1及び基質及び金属触媒の供
給ライン3において、基質に対する金属触媒の濃度は、
前記記載の範囲(基質1モルに対して1×10-6〜0.
7モル)に調整できる。また、金属触媒の存在下での基
質の酸化を促進するため、供給ラインは、加温されてい
てもよい。供給ラインの温度は、反応ユニット内の反応
温度と同程度の範囲(0〜300℃程度)から適宜選択
できる。なお、基質と金属触媒とは、必ずしも同伴させ
て供給する必要はなく、異なるラインから反応ユニット
に供給してもよい。また、反応溶媒は、いずれの供給口
から供給してもよく、金属触媒とともに供給してもよ
く、イミド系酸化触媒とともに供給してもよい。
【0071】前記反応操作は、連続式又は間欠式(回分
式又は半回分式)で行ってもよい。また、反応ユニット
では、必要により、反応生成物からの多価カルボン酸の
分離に先立って、酸化反応をさらに促進させてもよい
(追酸化)。このような酸化方法としては、慣用の方法
(例えば、反応温度(0〜300℃程度)よりも低温で
行う低温追酸化、低温追酸化の後に低温追酸化での温度
よりも高い温度でさらに追酸化を行う低温追酸化−高温
追酸化など)により行われる。 (分離工程)酸化反応生成物の分離は、特に制限され
ず、慣用の方法(例えば、濾過、蒸留、晶析など)によ
り行うことができる。例えば、多価カルボン酸と多価カ
ルボン酸前駆体との分離は、慣用の方法(例えば、濾
過、蒸留、晶析など)により行うことができるが、通
常、晶析操作により分離するのが有利である。そのた
め、目的生成物の多価カルボン酸は、溶解度が、温度及
び/又は溶媒に依存し、かつ晶析可能な反応生成物であ
るのが好ましい。特に、工業的な方法では、冷却により
晶析する反応生成物が好ましい。例えば、常温(15〜
25℃程度)で固体の化合物、例えば、テレフタル酸な
どの芳香族性ジカルボン酸が有用である。
【0072】なお、溶媒の存在下で反応を行う場合、反
応溶媒として、多価カルボン酸に対して貧溶媒で、多価
カルボン酸前駆体、ならびに前記イミド化合物及び/又
は助触媒に対して良溶媒である溶媒を用いてもよい。こ
のような溶媒は晶析溶媒として利用でき、冷却により反
応混合物から多価カルボン酸を晶析させることができ
る。例えば、反応溶媒として低級カルボン酸(酢酸など
のC1-4アルカンカルボン酸、特に水溶性カルボン酸な
ど)、アルコール類(メタノール、2−エチルヘキサノ
ールなどのC1-10アルコールなど)又は含水溶媒を用い
ることにより、反応混合物から多価カルボン酸を効率よ
く晶析できる。また、金属触媒として反応溶媒に可溶な
化合物(例えば、酢酸塩などのカルボン酸塩など)を用
いると、助触媒を溶媒相に溶解させて分配できるだけで
なく、酸化触媒(芳香族イミド化合物など)も溶媒相に
有効に分配でき、多価カルボン酸前駆体とともに、反応
系に容易にリサイクルできる。
【0073】多価カルボン酸の晶析は、冷却による晶析
や晶析溶媒を用いる晶析(溶媒晶析)などにより行うこ
とができる。冷却晶析は、目的化合物と晶析溶媒とを含
み、適当な温度(例えば、70〜200℃程度)に加熱
された反応混合液又は混合液を、20〜180℃程度に
冷却することにより行うことができる。特に、生成物が
テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸である場合、冷
却晶析は、例えば、反応温度から、30℃以上(例え
ば、30〜150℃程度)冷却することにより行うこと
ができる。溶媒晶析では、多価カルボン酸を含む混合物
に溶媒を添加することにより、多価カルボン酸を晶析さ
せてもよく、混合物に溶媒を添加して、前記と同様に加
熱し、冷却することにより多価カルボン酸を晶析させて
もよい。多価カルボン酸を含む混合物を濃縮後、溶媒を
添加してもよい。
【0074】なお、反応を溶媒の存在下で行う場合、晶
析効率を高めるため、多価カルボン酸の晶析に先立っ
て、反応混合物を濃縮してもよく、濃縮することなく、
反応混合物を晶析分離操作に供してもよい。
【0075】晶析溶媒としては、前記反応溶媒の項で例
示の種々の溶媒、例えば、カルボン酸類(ギ酸、酢酸、
プロピオン酸などのC1-4アルカンカルボン酸、特にC
2-3アルカンカルボン酸など)、炭化水素類(ヘキサ
ン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、シクロヘキサ
ン、シクロペンタン、デカリンなどの脂環式炭化水素
類、エチルベンゼン、トルエン、p−キシレンなどの芳
香族炭化水素など)、アルコール類(メタノール、エタ
ノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノー
ル、イソブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサ
ノールなどの脂肪族アルコールなど)、ケトン類(アセ
トン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイ
ソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類など)、エステル
類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどの酢酸エ
ステルや乳酸エステルなど)、エーテル類(ジメチルエ
ーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、
ジ−n−ブチルエーテルなどの鎖状エーテル類、テトラ
ヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類)、α
−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリンなどのアルキ
ルピリジン、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲ
ン化炭化水素類、ニトロ化合物(ニトロメタン、ニトロ
エタンなどのニトロアルカン類など)、ニトリル類(ア
セトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルな
ど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミド、ジメチ
ルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミドな
ど)、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素、四硫化炭
素、石油エーテル、水、含水溶媒(酢酸水溶液、アルコ
ール水溶液などの水溶性有機溶媒を含む水溶液)が含ま
れる。晶析溶媒としては、これらの溶媒を混合して用い
てもよい。
【0076】晶析溶媒としては、通常、水溶性溶媒、例
えば、カルボン酸類(酢酸などのC 2-3アルカンカルボ
ン酸など)、アルコール類(メタノール、2−エチルヘ
キサノールなどのC1-10アルキルアルコールなど)、ケ
トン類、ニトリル類、アミド類、水から選択された少な
くとも一種の溶媒、これらの混合溶媒(含水溶媒など)
が使用される。なお、含水溶媒としては、例えば、10
〜95重量%、好ましくは25〜90重量%、特に30
〜90重量%程度の有機溶媒を含む水溶液を用いていて
もよい。
【0077】目的化合物(多価カルボン酸など)を含む
被処理物に対して晶析溶媒を添加して晶析させる場合、
晶析溶媒の使用量は、目的化合物が晶析可能である限り
特に制限されず、例えば、目的化合物を含む被処理物1
00重量部に対して10〜500重量部程度であっても
よい。
【0078】目的化合物の多価カルボン酸を含む晶析成
分と、多価カルボン酸前駆体を含む溶媒相(非晶析成
分)は、濾過、デカンテーション、遠心分離などの簡単
な操作で分離できる。晶析成分は、必要であれば、洗
浄、再結晶(晶析)、抽出などの操作により精製しても
よい。また、非晶析成分は、そのまま反応系にリサイク
ルしてもよく、必要により、慣用の分離手段によって、
多価カルボン酸前駆体とイミド系酸化触媒(失活した酸
化触媒など)及び/又は金属触媒とを分離してから、反
応系にリサイクルしてもよい。通常、非晶析成分の10
〜90重量%、好ましくは40〜80重量%程度が反応
系にリサイクルされる。なお、多価カルボン酸前駆体が
分離された非晶析成分は、不純物の蓄積を防止するた
め、通常、系外へ排出される。
【0079】特に、多価カルボン酸前駆体を、活性なイ
ミド系酸化触媒とともに反応系にリサイクルすれば、ワ
ンステップで効率よく多価カルボン酸を得ることがで
き、有利である。多価カルボン酸前駆体とイミド系酸化
触媒とが同伴して供給される供給ライン6において、イ
ミド系酸化触媒の濃度は、反応ユニット1と同程度の濃
度[例えば、多価カルボン酸前駆体1モルに対して1×
10-6〜1モル、好ましくは1×10-5〜0.5モル程
度]に調整できる。また、前記供給ライン6は加温され
ていてもよい。供給ライン6の温度は、反応ユニット1
内の温度と同程度(例えば、0〜300℃程度)から適
宜選択できる。
【0080】なお、図1のプロセスにおいて、基質を段
階的に効率よく酸化するため、反応工程を二段階以上に
分けて行ってもよい。
【0081】図2は、本発明の別の製造方法を説明する
ためのフロー図である。この例では、反応工程を二段階
で行う以外、図1のプロセスと基本的に共通している。
すなわち、第1の反応ユニット7に、金属触媒供給ライ
ン10から金属触媒と基質と反応溶媒とを供給し、酸化
反応を行い、多価カルボン酸前駆体、さらには多価カル
ボン酸を生成させる。なお、酸素源は、金属触媒ライン
10から金属触媒及び基質とともに供給してもよく、酸
素源供給ラインを新たに設けてもよい(図示せず)。第
1の反応ユニット7で生成した反応混合物(多価カルボ
ン酸前駆体、多価カルボン酸などを含む)を、第1反応
混合物供給ライン11により第2の反応ユニット8に供
給する。なお、供給ライン11及び第2の反応ユニット
8には、酸化触媒供給ライン12から酸化触媒を供給す
る。そして反応ユニット8では、酸化触媒(及び金属触
媒)の存在下、多価カルボン酸前駆体を酸化して、多価
カルボン酸を生成させる。生成した反応混合物を、第2
反応混合物供給ライン13により、分離ユニット9に供
給し、未反応の多価カルボン酸前駆体と多価カルボン酸
とに分離する。分離された多価カルボン酸前駆体を、リ
サイクルライン15により前記多価カルボン酸前駆体供
給ライン11にリサイクルする。なお、このプロセスに
おいても、多価カルボン酸と多価カルボン酸前駆体との
分離には、冷却晶析を利用している。また、分離ユニッ
トとしては晶析器及び濾過器を使用している。
【0082】前記方法では、酸化反応を異なるユニット
を用いて段階的に行うことにより、少量の酸化触媒で、
効率よく多価カルボン酸を得ることができる。
【0083】なお、反応ユニット7及び供給ライン10
において、金属触媒の濃度は、前記記載の範囲[基質1
モルに対して、1×10-6〜0.7モル程度]から選択
できる。また、反応ユニット8及び供給ライン11にお
いて、イミド系酸化触媒の濃度は、前記記載の範囲[多
価カルボン酸前駆体1モルに対して、1×10-6〜1モ
ル程度]から選択できる。各ユニット及びラインにおけ
る温度は、前記図1の項で記載した範囲から適宜選択で
きる。
【0084】本発明には、前記イミド系酸化触媒の存在
下、基質(特に、複数のアルキル基を有する芳香族化合
物)と酸素とを接触させて、前記基質を酸化させるため
の反応装置であって、反応容器の内壁に取り付けられた
複数の邪魔板と、邪魔板間の領域に前記酸化触媒を供給
するための供給口と、邪魔板間の少なくとも1つの領域
に前記基質を供給するための供給口と、反応容器内の混
合物を攪拌するための攪拌手段と、反応容器に酸素源を
供給するための供給口と、前記酸化反応によって生成し
た反応混合物を反応容器から取り出すための取り出し口
とを備えた反応装置も含まれる。
【0085】図3は、本発明の反応装置を説明するため
の部分切欠斜視図である。図3の反応装置は、反応容器
本体31と、攪拌するための攪拌手段32と、前記反応
容器内壁に沿って縦方向に延び、攪拌するための複数の
邪魔板33a,33b,33cとを備えている。前記複数の邪魔板3
3a,33b,33c間の反応器内壁には、酸化触媒を供給するた
めのライン34a,34b,34cが取り付けられている。また、
前記邪魔板間の領域に基質を供給するためのライン3
5、さらに、生成した反応混合物を取り出すための取り
出し口36が取り付けられている。なお、反応容器底部
には、酸素源を供給するためのラインが取り付けられて
いる(図示せず)。
【0086】このような装置を利用すれば、イミド系酸
化触媒の失活を防止でき、イミド系酸化触媒を効率よく
利用できる。さらに、基質が複数のアルキル基を有する
芳香族化合物である場合、前記基質を均一に酸化できる
ため、高純度の多価カルボン酸を得ることができる。
【0087】前記反応容器の種類は、特に制限されず、
慣用の容器が使用でき、反応容器の形状は、特に制限さ
れず、球形、円柱形などであってもよい。
【0088】前記邪魔板は、周方向に間隔をおいて、縦
方向に伸びる邪魔板であってもよく、縦方向に複数の邪
魔板が設けられていてもよい。前記邪魔板の数は、特に
制限されず、反応容器内に少なくとも2つ設けられてい
ればよく、反応容器の容積に応じて選択でき、例えば、
2〜20、好ましくは3〜15、さらに好ましくは3〜
10、特に4〜8程度の範囲から選択できる。また、邪
魔板の容器内方への延出長さは、容器の径に応じて選択
でき、例えば、反応容器の内径の0.5〜30%、好ま
しくは1〜20%、さらに好ましくは2〜10%程度の
長さの範囲から適宜選択できる。
【0089】前記酸化触媒を供給するための供給口は、
前記邪魔板間の領域の適当な位置に形成されていればよ
い。通常、酸化触媒を供給するための供給口は、邪魔板
間の領域毎に、少なくとも1つ形成されている。例え
ば、供給口の数は、前記邪魔板の数に対応して、少なく
とも2以上、(例えば、2〜20、好ましくは3〜1
5、さらに好ましくは3〜10、特に4〜8程度)であ
る。また、前記供給口は、反応容器側部(胴部)に限ら
ず、反応容器の上部に形成されていてもよい。
【0090】また、基質を供給するための供給口は、邪
魔板間の少なくとも1つの領域に形成されていればよ
い。また、酸化触媒と同様に、邪魔板間の領域毎であっ
てもよい。基質供給口は、前記範囲と同様の高さに形成
できる。このように反応容器の内壁に形成された供給口
には、反応容器外部から酸化触媒又は基質を供給するた
めのラインがそれぞれ配設されている。
【0091】攪拌手段としては、慣用の攪拌手段、例え
ば、タービン形攪拌機(例えば、平羽根タービン、羽根
付円板タービン、オオイ羽根タービンなど)、カイ形攪
拌機(例えば、二枚羽根形、門形、イカリ形など)、プ
ロペラ形攪拌機(例えば、舶用プロペラなど)などが使
用できる。攪拌速度(剪断速度)は、容器の大きさに応
じて選択され、例えば、10〜1500回転/分、好ま
しくは10〜1000回転/分、さらに好ましくは30
〜800回転/分程度である。
【0092】前記酸化触媒の供給ライン及び基質供給ラ
インからは、反応容器本体において、前記記載のイミド
系酸化触媒濃度範囲[基質1モルに対して1×10-6
1モル、好ましくは1×10-5〜0.5モル程度]とな
るように、酸化触媒及び基質が供給される。
【0093】酸素源を供給するための供給口は、通常、
反応容器底部に形成され、外部から反応系に酸素源を供
給するためのラインが配されている。酸素源を供給する
ための供給口は、スパージャーであってもよく、挿入管
であってもよい。
【0094】また、必要に応じて、酸化反応に、金属触
媒を使用してもよく、金属触媒を使用する場合、イミド
系酸化触媒と金属触媒とは異なる経路で供給するのが好
ましい。なお、金属触媒供給口を新たに形成してもよい
が、前記基質を供給するための供給口から、基質ととも
に金属触媒を同伴させて供給するのが有利である。この
ような装置では、金属触媒を使用する場合であっても、
金属触媒と前記イミド系酸化触媒との接触によりイミド
系酸化触媒が失活するのを抑制できる。なお、反応を溶
媒の存在下で行う場合には、前記例示の反応溶媒を供給
するための供給口を、前記邪魔板間のいずれかの領域に
形成してもよく、酸化触媒供給口及び/又は基質供給口
から反応溶媒を供給してもよい。
【0095】また、生成したガス成分を排出するための
排出口を反応容器上部に設け、さらに、必要により、慣
用の冷却器(例えば、ジムロート冷却器などの還流冷却
器など)を併用してもよい。このような冷却器を使用す
ることにより、生成したガス成分のうち、溶媒(酢酸な
ど)や水を還流させ、非凝縮(非還流)成分を、系外へ
排出できる。
【0096】なお、反応容器内部には、多孔板のような
内部を多室に分割するような手段を備えていてもよい。
また、気泡塔を用いてもよい。
【0097】前記反応容器又はユニットは、1又は複数
の容器又はユニットを使用してもよい。複数の容器又は
ユニットを使用する場合、直列及び/又は並列に接続し
てもよい。
【0098】
【発明の効果】本発明では、イミド系酸化触媒と金属触
媒とを別の経路でそれぞれ反応系に供給することによ
り、イミド系酸化触媒の失活を抑制できる。さらに、基
質として、複数のアルキル基を有する芳香族化合物を用
いることにより、高純度多価カルボン酸を得ることがで
きる。また、本発明では、イミド系酸化触媒の使用量を
低減できるとともに、簡便に高純度の多価カルボン酸を
得ることができる。
【0099】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。
【0100】実施例1 還流冷却器及び攪拌手段を備えた反応装置に、原料供給
口からp−キシレン1重量部、酢酸コバルト0.001
重量部、酢酸マンガン0.001重量部及び酢酸0.7
08重量部、酸化触媒供給口からN−アセトキシフタル
イミド(NAPI)0.09重量部及び酢酸3.2重量
部をそれぞれ仕込み、エアー仕込み口から50体積%酸
素を供給し、温度150℃、圧力4MPaで反応させ
た。生成した反応混合物を反応粗液抜出口から抜出し、
晶析器にて常圧で温度80℃まで冷却し、テレフタル酸
を含む晶析物を圧力300mmHg、温度80℃で濾過
器により濾過し、晶析物を酢酸で洗浄した。また、テレ
フタル酸前駆体を含む濾液をNAPIと混合して、p−
キシレン1重量部に対して1.7重量部のリサイクル液
(NAPI0.09重量部を含む)として酸化触媒供給
口から反応系に循環させた。
【0101】この操作を繰り返し、得られた晶析物を乾
燥させた。晶析物中のテレフタル酸は、透過率80.0
%であった。なお、晶析物中の4−カルボキシベンズア
ルデヒド(4CBA)の含有量は、1030ppm(重
量基準)であった。透過率とは、テレフタル酸7.5g
を、2N(2モル/L)の水酸化カリウム水容積50m
Lに溶解させ、得られた溶液を光路長1cmの石英セル
に充填し、分光光度計で340nmにおける透過率のこ
とをいう。
【0102】比較例1 p−キシレン1重量部、N−アセトキシフタルイミド
(NAPI)0.09重量部、酢酸コバルト0.001
重量部、酢酸マンガン0.001重量部および酢酸3.
2重量部を全て混合して反応装置に仕込む以外は、実施
例1と同様に反応させた。生成した反応混合物を常圧で
温度80℃まで冷却し、テレフタル酸を含む晶析物を圧
力300mmHg、温度80℃でろ過し、酢酸で洗浄し
て乾燥させた。晶析物中のテレフタル酸は、透過率7
4.0%であった。なお、晶析物中の4−カルボキシベ
ンズアルデヒド(4CBA)の含有量は、1130pp
m(重量基準)であった。
【0103】実施例2 反応装置として、邪魔板4枚、攪拌手段として3段の攪
拌翼が取り付けられている以外、図3に記載の反応装置
と同様の装置を使用した。
【0104】原料仕込み口からp−キシレン1重量部、
酢酸コバルト0.001重量部、酢酸マンガン0.00
1重量部及び酢酸0.708重量部を仕込み、N−アセ
トキシフタルイミド(NAPI)0.09重量部及び酢
酸3.2重量部を邪魔板間の各領域の供給口から反応容
器内に仕込み、50体積%酸素(バランス:N2)雰囲
気中、温度150℃、圧力4MPa、回転数500回転
/分で攪拌しながら反応させた。生成した反応混合物
を、晶析器にて、常圧で温度80℃まで冷却して晶析さ
せ、遠心分離器及び乾燥器を用いて、テレフタル酸を含
む晶析物を分離乾燥した。晶析物中のテレフタル酸は、
透過率80.0%であった。なお、晶析物中の4−カル
ボキシベンズアルデヒド(4CBA)の含有量は、10
80ppm(重量基準)であった。
【0105】比較例2 反応装置として、酸化触媒の供給口を1つだけ備えた反
応装置を用いる以外は、実施例2と同様に反応を行っ
た。得られた晶析物中のテレフタル酸は、透過率72.
0%であった。なお、晶析物中の4−カルボキシベンズ
アルデヒド(4CBA)の含有量は、2530ppm
(重量基準)であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法を説明するためのフロー
図である。
【図2】図2は、本発明の他の方法を説明するためのフ
ロー図である。
【図3】図3は、本発明の装置を説明するための部分切
欠斜視図である。
【符号の説明】
1,7,8…反応ユニット 2,9…分離ユニット 3,10…金属触媒供給ライン 4,12…酸化触媒供給ライン 6,15…リサイクルライン 31…反応容器本体 33a,33b,33c…邪魔板 34a,34b,34c…酸化触媒供給ライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G075 AA02 AA62 BA06 BB05 BB10 BD17 CA54 DA01 DA02 EA01 EB01 EC01 EC09 EC11 ED02 ED08 4H006 AA01 AA04 AC46 BA16 BA18 BA32 BA51 BD33 BD52 BD81 BE30 BJ50 BS30 4H039 CA65 CC20 CC30

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I) 【化1】 (式中、Xは酸素原子、ヒドロキシル基又はアシルオキ
    シ基を示す)で表されるイミド単位を有する酸化触媒及
    び金属触媒の存在下、基質と酸素とを接触させて、前記
    基質を酸化する方法であって、反応系に対して、前記金
    属触媒と前記基質とを供給するとともに、前記酸化触媒
    を前記金属触媒とは異なる経路で反応系に供給する酸化
    方法。
  2. 【請求項2】 基質が、複数のアルキル基を有する芳香
    族化合物である請求項1記載の酸化方法。
  3. 【請求項3】 複数のアルキル基を有する芳香族化合物
    が、キシレンである請求項2記載の酸化方法。
  4. 【請求項4】 複数のアルキル基を有する芳香族化合物
    と酸素とを接触させて、前記芳香族化合物に対応する多
    価カルボン酸を生成させ、生成した反応混合物から多価
    カルボン酸と多価カルボン酸前駆体とを分離して、この
    多価カルボン酸前駆体を反応系に循環させる請求項2記
    載の酸化方法。
  5. 【請求項5】 多価カルボン酸前駆体と酸化触媒とを同
    一の経路で反応系に供給する請求項4記載の酸化方法。
  6. 【請求項6】 反応混合物から、晶析により、多価カル
    ボン酸を分離する請求項4記載の酸化方法。
  7. 【請求項7】 下記式(I) 【化2】 (式中、Xは酸素原子、ヒドロキシル基又はアシルオキ
    シ基を示す)で表されるイミド単位を有する酸化触媒の
    存在下、基質と酸素とを接触させて、前記基質を酸化す
    るための反応装置であって、反応容器の内壁に取り付け
    られた複数の邪魔板と、これらの邪魔板間の領域に前記
    酸化触媒を供給するための供給口と、前記邪魔板間の少
    なくとも1つの領域に前記基質を供給するための供給口
    と、反応容器内の混合物を攪拌するための攪拌手段と、
    反応容器に酸素源を供給するための供給口と、前記酸化
    反応によって生成した反応混合物を反応容器から取り出
    すための取り出し口とを備えている反応装置。
JP2001189840A 2001-06-22 2001-06-22 酸化方法および反応装置 Expired - Fee Related JP4859291B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001189840A JP4859291B2 (ja) 2001-06-22 2001-06-22 酸化方法および反応装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001189840A JP4859291B2 (ja) 2001-06-22 2001-06-22 酸化方法および反応装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003002862A true JP2003002862A (ja) 2003-01-08
JP4859291B2 JP4859291B2 (ja) 2012-01-25

Family

ID=19028699

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001189840A Expired - Fee Related JP4859291B2 (ja) 2001-06-22 2001-06-22 酸化方法および反応装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4859291B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004217586A (ja) * 2003-01-16 2004-08-05 Mitsubishi Gas Chem Co Inc 芳香族ポリカルボン酸及び該酸無水物の製造方法
JP2010248090A (ja) * 2009-04-10 2010-11-04 Mitsubishi Gas Chemical Co Inc 酸化反応器および芳香族ポリカルボン酸の製造法

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000239210A (ja) * 1999-02-19 2000-09-05 Daicel Chem Ind Ltd シクロアルカノンの製造方法
JP2002128726A (ja) * 2000-08-18 2002-05-09 Daicel Chem Ind Ltd カルボン酸の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000239210A (ja) * 1999-02-19 2000-09-05 Daicel Chem Ind Ltd シクロアルカノンの製造方法
JP2002128726A (ja) * 2000-08-18 2002-05-09 Daicel Chem Ind Ltd カルボン酸の製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004217586A (ja) * 2003-01-16 2004-08-05 Mitsubishi Gas Chem Co Inc 芳香族ポリカルボン酸及び該酸無水物の製造方法
JP2010248090A (ja) * 2009-04-10 2010-11-04 Mitsubishi Gas Chemical Co Inc 酸化反応器および芳香族ポリカルボン酸の製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4859291B2 (ja) 2012-01-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1273343B1 (en) Method of separating imide compound
JP4451939B2 (ja) シクロアルカノンの製造方法
JP3878812B2 (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
JP5345266B2 (ja) カルボン酸の製造方法
US7524986B2 (en) Methods for producing aromatic carboxylic acids
JPWO2009151082A1 (ja) 芳香族ポリカルボン酸の製造方法
JP4004595B2 (ja) 分岐脂肪族炭化水素の酸化方法および酸化物の製造方法
JP4859291B2 (ja) 酸化方法および反応装置
KR100824126B1 (ko) 디카르복실산의 제조 방법
US6180822B1 (en) Method of producing aromatic carboxylic acids by oxidizing alkyl aromatic compounds or partially oxidized intermediates thereof with carbon dioxide containing gas
JP5069829B2 (ja) 反応生成物とイミド化合物との分離方法
JP4520151B2 (ja) ジカルボン酸の製造方法
JP2002301376A (ja) 金属触媒の分離方法
JP4216941B2 (ja) シクロアルカノンの製造方法
JP5680959B2 (ja) 芳香族カルボン酸の製造方法
JP4469238B2 (ja) 金属触媒の回収方法およびこの回収方法を含むカルボン酸の製造方法
JP2002301382A (ja) 金属触媒の分離方法
JP2002320861A (ja) 金属触媒の分離方法
JP4865742B2 (ja) エポキシ化合物の製造方法
JP2001122808A (ja) 芳香族化合物の製造方法
US3673244A (en) Method of producing aromatic carboxylic acids from alkylbenzenes
JP2002053556A (ja) ピリジンカルボン酸の製造方法
JP2001335549A (ja) シクロアルカノンオキシムの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080401

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110512

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110524

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110721

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110809

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111003

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111025

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111101

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20141111

Year of fee payment: 3

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees