JP2003001503A - 高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents
高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具Info
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Abstract
揮する表面被覆超硬合金製切削工具を提供する。 【解決手段】 表面被覆超硬合金製切削工具が、炭化タ
ングステン基超硬合金基体または炭窒化チタン系サーメ
ット基体の表面に、組成式:(Ti1-XAlX)N(ただ
し、原子比で、Xは0.45〜0.75を示す)を有す
るTiとAlの複合窒化物からなる素地に、窒化けい素
相が、オージェ分光分析装置による面分析で0.3〜1
0面積%の割合で分散分布した組織を有する硬質被覆層
を0.8〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる。
Description
械的および熱的衝撃が速いピッチで繰り返し付加される
スローアウエイチップによる高速断続旋削加工や、エン
ドミルおよびドリルなどによる高速切削加工において、
切刃部がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超
硬合金製切削工具(以下、被覆超硬工具という)に関す
るものである。 【0002】 【従来の技術】一般に、切削工具には、各種の鋼や鋳鉄
などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部
に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチッ
プ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリ
ルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や
溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエン
ドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着
脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと
同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具な
どが知られている。 【0003】また、一般に、例えば図1に概略説明図で
示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレー
ティング装置を用い、基本的に、ヒータで装置内を、例
えば雰囲気を1.3×10-3Paの真空として、500
℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を
有するTi−Al合金がセットされたカソード電極(蒸
発源)との間に、例えば電圧:35V、電流:100A
の条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガ
スとして窒素ガスを導入し、一方炭化タングステン(以
下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以
下、TiCNで示す)基サーメットからなる基体(以
下、これらを総称して超硬基体と云う)には、例えば−
100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基
体の表面に、例えば特開昭62−56565号公報に記
載されるように、TiとAlの複合窒化物[以下、(T
i,Al)Nで示す]で構成された硬質被覆層を0.8
〜15μmの平均層厚で蒸着することにより被覆超硬工
具を製造することが知られている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】近年の切削加工装置の
高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化
および省エネ化、さらに低コスト化の要求も強く、これ
に伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来
被覆超硬工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の
条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これ
を特に切刃部に機械的および熱的衝撃が速いピッチで繰
り返し付加されるスローアウエイチップによる高速断続
旋削加工や、エンドミルおよびドリルなどによる高速切
削加工に用いた場合には、切刃部にチッピング(微小欠
け)が発生し易く、これが原因で比較的短時間で使用寿
命に至るのが現状である。 【0005】 【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、特に鋼や鋳鉄などの高速切削加
工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮す
る被覆超硬工具を開発すべく研究を行った結果、 (a)例えば原料粉末として、Ti粉末およびAl粉
末、さらに窒化けい素(以下、Si3N4で示す)粉末を
用い、これら原料粉末を所定の配合割合に配合し、混合
した後、圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、通常の
条件、例えば真空雰囲気中、500〜600℃の範囲内
の所定の温度に所定時間保持の条件で焼結して、所定の
組成をもった焼結体を形成し、この焼結体をカソード電
極(蒸発源)として用いて、例えばアークイオンプレー
ティング装置にて、反応ガスとして窒素ガスを導入し
て、上記超硬基体表面に硬質被覆層を形成すると、形成
された硬質被覆層は、(Ti,Al)Nの素地にSi3
N4相が分散分布した組織をもつものとなること。 【0006】(b)上記(a)で得られた被覆超硬工具
の硬質被覆層の素地を、組成式:(Ti1-XAlX)Nで
表わした場合、原子比で、X:0.45〜0.75を満
足する組成に特定した上で、かつ前記素地に分散分布す
るSi3N4相の割合をオージェ分光分析装置による面分
析で0.3〜10面積%とすると、前記素地がビッカー
ス硬さで3500〜4000の高硬度とすぐれた耐熱性
を具備し、かつ前記Si 3N4相が硬さは同ビッカース硬
さで1800〜2000と相対的に低いが、特に繰り返
しの機械的および熱的衝撃を吸収して、これを著しく緩
和する作用を発揮することから、この結果の被覆超硬工
具は、これを特に高速切削加工に用いても切刃部にチッ
ピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発
揮するようになること。以上(a)および(b)に示さ
れる研究結果を得たのである。 【0007】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、組成式:(T
i1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜
0.75)を有する(Ti,Al)Nからなる素地に、
Si3N4相が、オージェ分光分析装置による面分析で
0.3〜10面積%の割合で分散分布した組織を有する
硬質被覆層を0.8〜15μmの平均層厚で物理蒸着し
てなる、高速切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮
する被覆超硬工具に特徴を有するものである。 【0008】なお、この発明の被覆超硬工具において、
硬質被覆層の素地を構成する(Ti,Al)Nにおける
AlはTiNに対して高温硬さを向上させるために固溶
するものであり、したがって組成式:(Ti1-XAlX)
NのX値が原子比で0.45未満では所望の高温硬さを
確保することができず、一方その値が同0.75を越え
ると、TiNによってもたらされるすぐれた靭性が急激
に低下するようになり、切刃部にチッピングが発生し易
くなるという理由で、X値を原子比で0.45〜0.7
5、望ましくは0.5〜0.7と定めた。 【0009】また、硬質被覆層の素地に分散分布するS
i3N4相は、上記の通り特に切刃部に機械的および熱的
衝撃が速いピッチで繰り返し付加されるスローアウエイ
チップによる高速断続旋削加工や、エンドミルおよびド
リルなどによる高速切削加工時に、前記機械的および熱
的衝撃をよく吸収して、硬質被覆層にチッピングが発生
するのを抑制する作用をもつが、硬質被覆層におけるS
i3N4相の割合が、オージェ分光分析装置による面分析
で0.3面積%未満では前記作用に所望の効果が得られ
ず、一方同割合が10面積%を超えると素地によっても
たらされる高温硬さが急激に低下し、摩耗進行が促進す
るようになることから、Si3N4相の硬質被覆層におけ
る割合を0.3〜10面積%、望ましくは1〜8面積%
と定めた。 【0010】さらに、硬質被覆層の平均層厚を0.8〜
15μmとしたのは、その層厚が0.8μmでは所望の
すぐれた耐摩耗性を長期に亘って確保することができ
ず、一方その層厚が15μmを越えると、切刃部にチッ
ピングが発生し易くなるという理由によるものである。 【0011】 【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 (実施例1)原料粉末として、いずれも1〜3μmの範
囲内の所定の平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、
ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr
3 C 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末
を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成
に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した
後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、こ
の圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間
保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.05
のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120
408の形状をもったWC基超硬合金製のチップ超硬基
体A1〜A10を形成した。 【0012】また、原料粉末として、いずれも0.5〜
2μmの範囲内の所定の平均粒径を有する平均粒径を有
するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)
粉末、Mo2 C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC
粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、
これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、
ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100
MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2
kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持
の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホ
ーニング加工を施してISO規格・CNMG12040
8の形状をもったTiCN系サーメット製のチップ超硬
基体B1〜B6を形成した。 【0013】さらに、原料粉末として、いずれも0.5
〜2μmの範囲内の所定の平均粒径を有するTi粉末お
よびAl粉末、さらにSi3N4粉末を用い、これら原料
粉末を所定の配合組成に配合し、ボールミルで72時間
湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉
体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、50
0〜600℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件
で焼結して、Ti、Al、およびSi3N4の含有割合を
所定の含有割合とした種々のカソード電極用焼結体(本
発明硬質被覆層形成用)を製造した。また、比較の目的
で、Si3N4粉末の配合を行わない以外は同一の条件で
TiとAlの含有割合を所定の含有割合とした種々のカ
ソード電極用焼結体(従来硬質被覆層形成用)を製造し
た。 【0014】ついで、これらチップ超硬基体A1〜A1
0およびB1〜B6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾
燥した状態で、それぞれ図1に例示される通常のアーク
イオンプレーティング装置に装入し、一方カソード電極
(蒸発源)として上記の本発明硬質被覆層形成用焼結体
または従来硬質被覆層形成用焼結体を装着し、装置内を
排気して1.3×10-3Paの真空に保持しながら、ヒ
ーターで装置内を500℃に加熱した後、Arガスを装
置内に導入して2.5PaのAr雰囲気とし、この状態
で超硬基体に−800Vのバイアス電圧を印加して超硬
基体表面をArガスボンバート洗浄し、ついで装置内を
2.5Paの窒素ガス(反応ガス)の雰囲気とすると共
に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−100V
に下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にア
ーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A1〜A10
およびB1〜B6のそれぞれの表面に、表3、4に示さ
れる目標組成および目標層厚の硬質被覆層を蒸着するこ
とにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆
超硬合金製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超
硬チップと云う)1〜20、および従来被覆超硬工具と
しての従来表面被覆超硬合金製スローアウエイチップ
(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜19をそれぞ
れ製造した。 【0015】なお、この結果得られた本発明被覆超硬チ
ップ1〜20および従来被覆超硬チップ1〜19の硬質
被覆層について、その厚さ断面中央部をオージェ分光分
析装置を用いて、素地のX値およびSi3N4相の分布割
合を測定したところ、それぞれ表3、4に示される素地
の目標X値およびSi3N4相の目標割合と実質的に同じ
値を示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用い
て断面測定したところ、いずれも同じく表3、4に示さ
れる目標層厚と実質的に同じ平均値(5点測定の平均
値)を示した。 【0016】つぎに、上記本発明被覆超硬チップ1〜2
0および従来被覆超硬チップ1〜19について、これを
工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状
態で、本発明被覆超硬チップ1〜12および従来被覆超
硬チップ1〜12ついては、 被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝
入り丸棒、 切削速度:350m/min.、 切り込み:2mm、 送り:0.4mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での鋳鉄の乾式高速断続旋削加工試験、 被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本
縦溝入り丸棒、 切削速度:300m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.25mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、
また本発明被覆超硬チップ13〜20および従来被覆超
硬チップ13〜19ついては、 被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:350m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での鋳鉄の乾式高速断続旋削加工試験、 被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:250m/min.、 切り込み:1.5mm、 送り:0.22mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式高速断続旋削加工試験を行い、
いずれの旋削加工試験でも切刃部の逃げ面摩耗幅を測定
した。この測定結果を表3、4に示した。 【0017】 【表1】 【0018】 【表2】【0019】 【表3】 【0020】 【表4】【0021】(実施例2)原料粉末として、平均粒径:
5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微
粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μm
のNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μ
mのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0
μmの(Ti,W)C粉末、および同1.8μmのCo
粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表5に示され
る配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン
中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、10
0MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形
し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/
分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の
温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で
焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの
3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、この3種の
丸棒焼結体から、研削加工にて、表5に示される組み合
わせで、切刃部の直径×長さが、それぞれ6mm×13
mm、10mm×22mm、および20mm×45mm
の寸法をもった6枚刃スクエア形状のエンドミル超硬基
体a〜hをそれぞれ製造した。 【0022】ついで、これらのエンドミル超硬基体a〜
hのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した
状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオンプ
レーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件
で、表6、7に示される目標組成および目標層厚をもっ
た硬質被覆層を蒸着することにより、本発明被覆超硬工
具としての本発明表面被覆超硬合金製エンドミル(以
下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜16および
従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製エン
ドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8
をそれぞれ製造した。 【0023】また、この結果得られた本発明被覆超硬エ
ンドミル1〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜8
の硬質被覆層について、その厚さ断面中央部をオージェ
分光分析装置を用いて、素地のX値およびSi3N4相の
分布割合を測定したところ、それぞれ表6、7に示され
る素地の目標X値およびSi3N4相の目標割合と実質的
に同じ値を示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡
を用いて断面測定したところ、いずれも同じく表6、7
に示される目標層厚と実質的に同じ平均値(5点測定の
平均値)を示した。 【0024】つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1
〜16および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、本
発明被覆超硬エンドミル1〜6および従来被覆超硬エン
ドミル1〜3ついては、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SCM440の板材、 切削速度:300m/min.、 半径方向切込み:0.3mm、 軸方向切込み:8mm、 テーブル送り:5m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での合金鋼の高速側面切削加工試験、本発明被覆
超硬エンドミル7〜12および従来被覆超硬エンドミル
4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD61(HRC52)の板材、 切削速度:300m/min.、 半径方向切込み:0.5mm、 軸方向切込み:15mm、 テーブル送り:6m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での焼入れ鋼の高速側面切削加工試験、本発明被
覆超硬エンドミル13〜16、および従来被覆超硬エン
ドミル7〜8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:5
0mmのJIS・SKD11(HRC60)の板材、 切削速度:60m/min.、 軸方向切込み:0.3mm×10回での溝加工、 テーブル送り:0.2m/分、 形態:乾式(エアーブロー)、 の条件での焼入れ鋼の高速溝切削加工試験、をそれぞれ
行い、いずれの切削加工試験でも外周刃の逃げ面摩耗幅
が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削
長を測定した。この測定結果を表6、7にそれぞれ示し
た。 【0025】 【表5】 【0026】 【表6】【0027】 【表7】 【0028】(実施例3)上記の実施例2で製造した直
径が8mm(超硬基体a〜c形成用)、13mm(超硬
基体d〜f形成用)、および26mm(超硬基体g、h
形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼
結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれ
ぞれ4mm×13mm(超硬基体a’〜c’)、8mm
×22mm(超硬基体d’〜f’)、および16mm×
45mm(超硬基体g’、h’)の寸法をもったドリル
超硬基体a’〜h’をそれぞれ製造した。 【0029】ついで、これらのドリル超硬基体a’〜
h’のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥し
た状態で、同じく図1に例示される通常のアークイオン
プレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条
件で、表8、9に示される目標組成および目標層厚をも
った硬質被覆層を蒸着することにより、本発明被覆超硬
工具としての本発明表面被覆超硬合金製ドリル(以下、
本発明被覆超硬ドリルと云う)1〜16、および従来被
覆超硬工具としての従来表面被覆超硬合金製ドリル(以
下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造
した。 【0030】さらに、この結果得られた本発明被覆超硬
ドリル1〜16および従来被覆超硬ドリル1〜8の硬質
被覆層についても、その厚さ断面中央部をオージェ分光
分析装置を用いて、素地のX値およびSi3N4相の分布
割合を測定したところ、それぞれ表8、9に示される素
地の目標X値およびSi3N4相の目標割合と実質的に同
じ値を示し、また、その厚さを、走査型電子顕微鏡を用
いて断面測定したところ、いずれも同じく表8、9に示
される目標割合および目標層厚と実質的に同じ平均値
(5点測定の平均値)を示した。 【0031】つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜1
6および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、本発明被覆
超硬ドリル1〜6および従来被覆超硬ドリル1〜3につ
いては、 被削材:平面寸法:100mm×250厚さ:8mmの
JIS・SS400の板材、 切削速度:120m/min.、 送り:0.18mm/rev、 の条件での構造用鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(水
溶性切削油使用)、本発明被覆超硬ドリル7〜12よび
従来被覆超硬ドリル4〜6については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:1
6mmのJIS・S50Cの板材、 切削速度:120m/min.、 送り:0.22mm/rev、 の条件での炭素鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶
性切削油使用)、本発明被覆超硬ドリル13〜16およ
び従来被覆超硬ドリル7、8については、 被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:3
2mmのJIS・SCM440の板材、 切削速度:60m/min.、 送り:0.21mm/rev、 の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶
性切削油使用)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴
あけ切削加工試験でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.
3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定
結果を表8、9にそれぞれ示した。 【0032】 【表8】【0033】 【表9】 【0034】 【発明の効果】表3〜9に示される結果から、(Ti,
Al)Nの素地にSi3N4相が分散分布した組織を有す
る硬質被覆層を形成してなる本発明被覆超硬工具は、い
ずれも前記硬質被覆層が前記素地に分散分布するSi3
N4相の作用ですぐれた耐熱衝撃性を具備するようにな
ることから、切刃部に機械的および熱的衝撃が速いピッ
チで繰り返し付加わる各種鋼の高速切削加工でも、切刃
部にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すの
に対して、硬質被覆層が(Ti,Al)Nだけで構成さ
れた従来被覆超硬工具においては、前記高速切削加工で
熱衝撃によるチッピングが切刃部に発生するのが避けら
れず、この結果比較的短時間で使用寿命に至ることが明
らかである。上述のように、この発明の被覆超硬工具
は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での切削加工は勿
論のこと、特に切刃部に機械的および熱的衝撃が速いピ
ッチで繰り返し付加されるスローアウエイチップによる
高速断続旋削加工や、エンドミルおよびドリルなどによ
る高速切削加工に用いた場合にも、すぐれた切削性能を
長期に亘って発揮するものであるから、切削加工装置の
高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さ
らに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体または
炭窒化チタン系サーメット基体の表面に、組成式:(T
i1-XAlX)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜
0.75を示す)を有するTiとAlの複合窒化物から
なる素地に、窒化けい素相が、オージェ分光分析装置に
よる面分析で0.3〜10面積%の割合で分散分布した
組織を有する硬質被覆層を0.8〜15μmの平均層厚
で物理蒸着してなる高速切削加工ですぐれた耐チッピン
グ性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具。
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Patent Citations (4)
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JPH07310174A (ja) * | 1994-05-13 | 1995-11-28 | Kobe Steel Ltd | 耐摩耗性に優れた硬質皮膜、硬質皮膜被覆工具及び硬質皮膜被覆部材 |
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