JP2002371446A - 生分解性繊維を用いたリボン状布帛 - Google Patents

生分解性繊維を用いたリボン状布帛

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JP2002371446A
JP2002371446A JP2001179073A JP2001179073A JP2002371446A JP 2002371446 A JP2002371446 A JP 2002371446A JP 2001179073 A JP2001179073 A JP 2001179073A JP 2001179073 A JP2001179073 A JP 2001179073A JP 2002371446 A JP2002371446 A JP 2002371446A
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acid
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Hideo Isoda
英夫 磯田
Yoshihiro Amagi
義弘 天城
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Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】焼却時の溶融塊の発生を軽減し、かつ溶融塊の
生分解処理を容易にするリボン状布帛を提供する。 【解決手段】 先染めされた生分解性脂肪族ポリエステ
ル繊維を用いたリボン状布帛であり、好ましくは、前記
の生分解性脂肪族ポリエステル繊維がポリ乳酸であるリ
ボン状布帛である。さらに、リボン状布帛は、意匠を施
されていることが好ましい。本発明のリボン状布帛は、
意匠性に優れるにもかかわらず、生分解性で、かつ焼却
時の溶融塊発生が少なく、土中に埋設するのも容易で、
埋設後数年以内に生分解して消滅させることができるた
め、環境への負荷が少ない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃棄したとき環境
に負荷を与えないリボン状布帛に関する。特には、神
社、仏閣で回収焼却される御札、お守り、破魔矢、縁起
物等の使用に適するリボン状布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】リボン状布帛は、贈り物の包装リボン、
鉢巻、名札、たすき、帽子リボン、装飾用リボンなどに
使用されてきた。元々は天然繊維を用いていたが、近年
は価格の面から熱可塑性合成繊維を使用したものが大部
分となった。リボン状布帛は、神社、仏閣で縁起と魔除
け祈願のため提供されてきた和紙を用いてつくられてい
た御札やお守り等にも用いられるようになり、返却され
る縁起物は、神社仏閣内で主には儀式として焼却処分さ
れている。しかして、熱可塑性合成繊維は、境内での焼
却時に巨大な溶融塊を形成して、完全焼却処理が困難と
なり、残った巨大な溶融塊の処理に困る問題がある。
【0003】石化資源から得られる熱可塑性合成繊維の
環境負荷を軽減する観点から、生分解ポリマーの研究が
行われ、植物資源を原料として酵素や微生物により容易
に分解してオリゴマー化すると植物の成長にも有用な堆
肥になり、最終的には水と炭酸ガスに分解され、光合成
を介して再度植物資源に再生できる脂肪族ポリエステル
の中でも、特にはポリ乳酸が注目を集めている。ポリ乳
酸は光合成以外にも加水分解させ乳酸として又は環化反
応でラクチドとして原料回収する方法により直接マテリ
アルリサイクルもできる。現在では生体適合除放性ポリ
マーでもあるポリ乳酸はフイルム、繊維、成形品として
一般家庭用品以外にも医療用途や農業用途にも使用され
るようになった。しかして、脂肪族ポリエステル繊維を
テープ状布帛へ適用する提案が未だなされてはいない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記問題点を解決し、
焼却時の溶融塊の発生を軽減し、溶融塊の処理を容易と
するリボン状布帛を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意検討を行った結果、生分解ポリエ
ステル樹脂を用いた布帛が、溶融塊を形成し難く、形成
した溶融塊を埋設により生分解させて処理できることを
知見し本発明に到達した。すなわち、第一の発明は、先
染めされた生分解性脂肪族ポリエステル繊維からなるリ
ボン状布帛であり、第2の発明は、生分解性脂肪族ポリ
エステル繊維がポリ乳酸であるリボン状布帛であり、第
3の発明は、意匠を施されたリボン状布帛である。
【0006】
【発明の実施形態】以下に本発明を詳述する。本発明で
いう生分解性脂肪族ポリエステル繊維とは、脂肪族ポリ
エステル樹脂からなる繊維が、水または海水中、土壌ま
たは堆肥中で微生物等の作用で分解する繊維である。
【0007】本発明に用いられる脂肪族ポリエステル繊
維の原料である脂肪族ポリエステル樹脂は、脂肪族ヒド
ロキシカルボン酸のポリマーまたはコポリマー、および
脂肪族多塩基酸と脂肪族多価アルコールを重縮合して得
られる脂肪族ポリエステルを包含する。
【0008】本発明において、脂肪族ヒドロキシカルボ
ン酸のポリマーまたはコポリマーは、乳酸、グリコール
酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒ
ドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキ
シカプロン酸等のポリマーまたはコポリマーであり、例
えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロ
キシ酪酸、あるいは3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキ
シ吉草酸のコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトンがあ
げられ、特に、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、
乳酸と6−ヒドロキシカプロン酸のコポリマーが好まし
い。脂肪族ヒドロキシカルボン酸中に不斉炭素を有する
場合、D体、L体、それぞれ単独であってもよいし、D
体とL体の混合物、すなわちラセミ体であってもよい。
【0009】これらの脂肪族ヒドロキシカルボン酸のポ
リマーまたはコポリマーは、上記脂肪族ヒドロキシカル
ボン酸を直接脱水縮合するか、上記脂肪族ヒドロキシカ
ルボン酸の環状2量体(例えば、ラクタイドまたはグリ
コライド)または環状エステル(例えば、ε−カプロラ
クトン)を開環重合して得ることができる。
【0010】本発明において、脂肪族ポリエステルの原
料である脂肪族多価アルコール類は脂肪族系水酸基を持
つものであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレン
グリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリ
コール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオ
ール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6
−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペ
ンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、
1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ベンゼ
ンジメタノールなどがあげられる。これらは単独で、ま
たは混合して用いられる。分子内に不斉炭素を有する場
合、D体、L体、それぞれ単独であってもよいし、D体
とL体の混合物、すなわちラセミ体であってもよい。
【0011】本発明において、脂肪族ポリエステルの原
料である脂肪族多塩基酸類は、脂肪族系カルボキシル基
を持つものであり、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グ
ルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼ
ライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二
酸、ドデカン二酸、フェニルコハク酸、1,4−フェニ
レンジ酢酸などがあげられる。これらは単独で、または
混合して用いられる。必要に応じて鎖延長剤などを加え
ても良い。分子内に不斉炭素を有する場合、D体、L
体、それぞれ単独であってもよいし、D体とL体の混合
物、すなわちラセミ体であってもよい。
【0012】上記脂肪族多塩基酸と脂肪族多価アルコー
ルを公知の方法により重縮合して、本発明の繊維に用い
られる種々の脂肪族ポリエステル樹脂が得られるが、脂
肪族多塩基酸がコハク酸またはアジピン酸であり、脂肪
族多価アルコールがエチレングリコールまたは1,4−
ブタンジオールであるものが好ましい。すなわち、本発
明の繊維に用いられるの脂肪族ポリエステル樹脂は、ポ
リブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートお
よびポリブチレンアジペートが好ましい。また、ヒドロ
キシカルボン酸と脂肪族多塩基酸およびと脂肪族多価ア
ルコールから得られるコポリマー、例えば、ポリ乳酸と
ポリブチレンサクシネートのコポリマーも、本発明の脂
肪族ポリエステル樹脂として好適に用いられる。
【0013】上記脂肪族ポリエステルの中で特に推奨で
きるものとしては、ポリ乳酸が例示できる。ポリ乳酸
は、乳酸又はラクチドを主原料にして特公昭56−14
688号公報等に開示されたオクチル酸錫等の周期律表
IA族、IVA族、IVB族、VA族の中の一種の金属又は
金属化合物を触媒として重合した平均分子量50000
から500000のポリヒドロキシカルボン酸を主成分
としたポリ乳酸である。
【0014】ポリ乳酸繊維は、平均分子量が50000
以下では繊維の強度が弱くなりすぎて脆いポリ乳酸繊維
となるので好ましくない。平均分子量が500000以
上では溶融粘度が高くなり過ぎてポリ乳酸繊維の形成が
難しくなるので好ましくない。本発明のポリ乳酸繊維を
構成する好ましい平均分子量は100000以上400
000以下である。なお、本発明で言う平均分子量は高
温液クロマトグラフィーを用いて測定された質量平均分
子量である。
【0015】本発明のポリ乳酸繊維を構成するポリ乳酸
の融点(示差走査熱量計:DSCで測定した結晶融解に
由来する吸熱ピーク温度)は、耐熱性の観点から160
℃以上が好ましく、より好ましくは170℃以上であ
る。融点を示さない非晶性のポリ乳酸を本発明に適用す
る場合、耐熱性の制限を受けるので用途を吟味して用い
る必要がある。なお、本発明に適用するポリ乳酸は繊維
形成するために溶融押し出しを行うため、溶融時の熱分
解を抑制するために触媒を失活又は酸末端封鎖させてお
くのが好ましい。
【0016】本発明で言うリボン状布帛とは、幅300
mm未満で、長さ方向に連続した形態の編織物を言う。
本発明のリボン状布帛は、先染めされた生分解性脂肪族
ポリエステル繊維、特にはポリ乳酸繊維を用いて構成さ
れるのが好ましい。リボン状布帛は図柄、文字等の意匠
を構成する必要がある場合、公知の如く、先染め繊維を
用いてジャガード織機で製織することが好ましい。特
に、ジャガード開口装置を用いると精巧な柄織物を製織
できる。このため、本発明のリボン状布帛は先染めされ
た生分解性脂肪族ポリエステル繊維を用いて構成するこ
とが好ましい。使用する染料や先染めされた繊維の色
調、繊度、経糸や横糸密度と製織された布帛絵柄、色調
等は特に制限されない。
【0017】又、適用用途はあらゆる用途に適用できる
が、特には神社、仏閣での縁起と魔除け祈願のため提供
される御札やお守り等に適用するのが望ましい。この用
途は、返却され、神社仏閣内で主には儀式として焼却処
分されている。しかして、非生分解性熱可塑性合成繊維
は、境内での焼却時に巨大な溶融塊を形成して、完全焼
却処理が困難となり、残った巨大な溶融塊の処理に困る
問題があったが、本発明のリボン状布帛は、生分解性脂
肪族ポリエステル繊維で構成されているため、従来公知
の非生分解性熱可塑樹脂繊維からなる布帛に比較して、
焼却時の溶融塊発生が少ない。この理由は不明である
が、燃焼熱量が低く、融点が150℃〜180℃とやや
低いため、徐々に溶融ドリップしつつ燃焼して、巨大な
溶融塊を生じ難いのではないかと類推される。更には、
残った溶融塊も大きくならないので、土中に埋設するの
も容易で、埋設後数年以内に生分解して消滅させること
ができる。
【0018】本発明の布帛を構成する脂肪族ポリエステ
ルは、燃焼時の大きい溶融塊の発生が少なくなると類推
される融点が170℃近傍のポリ乳酸が好ましい。又、
加熱溶融時にドリップがし易い低分子量のものは、先述
した実用強度を維持できない問題と、低い熱量で容易に
溶融して溶融塊を形成し易くなる。また、ドリップし難
い高分子量のものは、先述した如く、製糸での問題と、
燃焼時適度にドリップし難く、溶融塊が大きくなってド
リップすることで溶融塊を形成し易くなるので、好まし
くは、ポリ乳酸の平均分子量は100000以上400
000以下である。
【0019】本発明のリボン状布帛は、先染めされた脂
肪族系ポリエステル繊維で構成される。この脂肪族系ポ
リエステル繊維の染色は、特には制限を受けないが、脂
肪族系ポリエステル繊維を高温染色すると劣化等を生じ
るため、低温染色とするのが好ましい。しかして、低温
染色では濃色鮮明な色調を出し難い場合が多い。このた
め、本発明での染色は、染料にアセテート用染料やジア
セテート用染料のような低分子量の染料を使用するのが
望ましい。
【0020】アセテート染料としては、例えば、Sum
ikaronでは、YellowSE−5G、Yell
ow SE−3GL conc、Yellow E−R
PD、Yellow SE−RPD、 Orange
S−R、Orenge SE−B 200%、Scar
let SE−3GL、Red S−GG、RedSE
−RPD、Red E−3BR、Red E−RPD、
Red E−FBL、Br.Red SE−BL、B
r.Red SE−2BF、Br.RedS−BLF、
Br.Red S−BF、Br.Red S−BF、R
ubineSE−GL、Rubine S−3GF、R
ubine SE−RPD、Boedeaux SE−
BL、Violet S−4RL ex.cc、Vio
let E−2RL、Blue S−3RF、Blue
E−FBL、BlueE−BL、Blue E−RP
D、Blue S−BG、Turq.BlueS−G
L、Br.Blue S−BL、Yellow Bro
wn S−2RL、Navy Blue S−3G、N
avy Blue SE−RPD、Black SB−
GLとNavy Blue S−3G配合でのBlac
k等が例示できる。
【0021】Serisolでは、Fast Yell
ow GD120、Fast Yellow GWD、
Fast Yellow GRD、Fast Yell
owPL150、Brilliant Orange
RGL200、FastScarlet BD200、
Fast Pink RFL150、Brillian
t Red X3B200、Fast Crimson
BD150、Fast Rubine BD200、
Blue 3RD400、Blue RD400、Bl
ue 2RD400、Fast Blue FGL、F
ast Blue Green BC、Brillia
nt Blue BGN、Black BSN、Azo
ic Black BT、Black BSN li
q.50等が例示できる。
【0022】ジアセテート染料としては、kiwalo
n Polyester DRでは、Yellow D
R−6G、Yellow DR−4G、Yellow
DR、Orange DR、Red Brown D
R、Rubine DR、Violet DR、Blu
e DR、Dark Blue DR、Navy Bl
ue DR、Black DRなどが例示できる。
【0023】染色加工は、先染めの場合は、カセ染めが
望ましいが、特には、その方法は制限されない。例え
ば、パーン染めも超臨界二酸化炭素染色法を適用すれ
ば、染料の選定を吟味すれば、濃色で均一な染色が可能
である。
【0024】汗取りやワイパー機能を付与する場合は、
疎水性の脂肪族ポリエステル繊維に水との親和性も向上
させる必要がある。即ち、親油性と親水性を同時に付与
する必要がある。水との親和性を向上させる場合、染色
前に、精錬を兼ねて、アルカリ性薬剤による減量加工を
行う。脂肪族ポリエステルは減量加工され易いのでアル
カリ薬剤濃度を通常の減量加工の1/10以下の濃度で
低温で行うのが望ましい。減量率は1%から30%未満
が望ましい。理由は不明であるが、驚くべきことに、ア
ルカリ薬剤水溶液で減量加工すると親水性と親油性が同
時に付与される。減量加工による親水処理を行った後、
次いで染色し、先染め繊維として本発明のリボン状布帛
に製織することができる。
【0025】本発明のリボン状布帛を構成する生分解性
繊維は、繊度や断面形状、構成フィラメント数等は、特
には制限されないが、ジャガード織機で製織が可能な繊
維として、繊度は20デシテックスから150デシテッ
クス、フィラメント数は1本から64本、繊維断面形状
は丸、異型、中空、異型中空等の断面、撚りは収束され
ているものが望ましく、仮撚り等によるバルキー加工が
施されたもの等が例示できる。その他の特性も特には制
限されないが、本発明に用いる繊維の強度は実用使用に
耐える必要から、好ましくは2g/デシテックス以上、
より好ましくは、3g/デシテックス以上である。本発
明のリボン状布帛を汗取りサポーターのような用途に使
用する場合は、紡績糸も使用することができる。
【0026】以下に本発明の生分解性ポリエステル繊維
よりなるリボン状布帛の製造方法の一例を提示する。通
常公知の溶融紡糸装置にて、生分解性ポリエステルであ
るポリ乳酸(PLA)を常法にて溶融紡糸する。使用す
るポリ乳酸は、開環重合開始時に酸末端を封鎖して加水
分解を抑制するのが特に好ましい。PLAの製法は公知
の方法、例えば、特公昭56−14688号公報、特開
平7−33861号公報、特開平10−158370号
公報等に開示された方法にて乳酸から直接又はラクチド
から所定の重合処方により得られる。得られたポリ乳酸
は水分を乾燥により除去すると紡糸時に加水分解を抑制
できるので好ましい。
【0027】紡糸温度は融点より10℃以上30℃未満
で行うのが熱劣化を抑制できるので好ましい。引取速度
は特には制限されないが、通常公知の引取速度である1
000m/分から5000m/分が選択できる。引取時
にインターレーサーなどで収束してバラケを防止するこ
ともできる。
【0028】本発明の生分解性ポリエステル繊維は、紡
糸により繊維化し、次いで延伸して配向度を高めて通常
使用に耐えるPLA延伸繊維とするが、紡糸時、連続し
て延伸して、PLA延伸繊維とすることもできる。延伸
温度はガラス転移点温度でネック延伸を行い、次いでや
や高い温度で熱延伸するのが好ましい。延伸速度が速い
場合は、脆い素材のため糸切れする場合があるので、適
切な速度設定が必要である。紡糸、延伸は、延伸繊維の
強度が3g/デシテックス以上、伸度は20%以上50
%未満とするのが、後工程の通過性が良好となるので好
ましい。強度が3g/デシテックス未満では、糸切れし
易いので注意を要する。伸度が15%未満では糸切れし
やすい。又、50%以上では、加工時に引きつりを生じ
易いので好ましくない。
【0029】得られたPLA延伸繊維は、そのまま、カ
セどりして染色加工できるが、布帛に嵩高性を必要とす
る場合は、仮撚り加工後、染色加工するのが好ましい。
仮撚り加工は、繊維が脆いので張力を高くすると糸切れ
し易いため、低張力での仮撚りが好ましい。次いで得ら
れた仮撚り糸はカセどりして染色加工される。紡績糸と
する場合は、延伸糸に捲縮を付与後切断してステープル
とし、紡績工程を経て紡績糸とする。
【0030】水との親和性を向上させたい場合は、精錬
後にアルカリ性薬剤で減量加工する。PLA繊維は減量
加工速度が通常公知のポリエステル繊維に比較して10
倍以上速いので、減量率を制御し難い問題がある。この
ため、減量加工はアルカリ薬剤濃度を低く設定し、処理
温度も低温とすることで制御し易くするのが好ましい。
例えば、苛性ソーダでは0.5質量%から5質量%以下
の濃度で、50℃以下の処理温度で30分程度の処理を
行う。減量率は0.5質量%から30%未満にしないと
布帛とした場合の強度が低くなり過ぎて実用に供せなく
なる場合がある。
【0031】次いで、染色加工を行う。染色前の精錬
は、出来るだけ中性に近い界面活性剤を用いて行うのが
望ましい。次いで染色を行う。染色温度は、高温では劣
化や収縮が顕著なため、出来るだけ低温で染色するのが
好ましい。好ましい染色温度は使用する染料により最適
温度が存在する。染色温度は110℃未満、好ましくは
70℃から100℃で行うのが好ましい。脂肪族ポリエ
ステル繊維は低温では染まり難いので本発明の場合は、
染料はアセテート染料又はジアセテート染料のような分
子量の小さい染料を使用するのが望ましい。
【0032】染色液に用いる分散剤は公知のものが使用
できる。例えば、スミポンTF、イオネットRAP、エ
スコールT、カラゾールACE、ニッカサンソルトR
X、ディスパーGS、トーホーソルトSM、ミグノール
RPなどが例示できる。濃度は0.5g/リットルが望
ましい。
【0033】染色液のpHは5から6にするのが望まし
い。pH調整は酢酸又は酢酸ソーダで行うのが望まし
い。次いで、水洗後、低濃度のソーダ灰などで還元洗浄
するかソーピングを行い、水洗乾燥して先染め繊維を得
る。布帛に意匠性を付与する場合は、必要な色数を準備
する。
【0034】次いで、リボン状布帛とするために製織す
る。製織は、精巧な文様や意匠を製織できるジャガード
織機を用いるのが好ましい。特には、リボン状布帛の製
織できる狭幅のジャガード織機を用いるのが最も好まし
い。製織は必要な色数や糸種を経糸及び横糸に準備し
て、常法により所望の必要な図柄や文様をペーパーカー
ド又はコンピューターに入力して製織する。
【0035】個々に異なる文様を意匠する場合も公知の
方法、例えば、実開平5−94286号公報の提案等を
用いることができる。織組織は特には限定されないが、
ジャガード織機で織れる組織、例えば、ニ重織物、紋織
などが例示できる。必要に応じて、製織後に樹脂加工等
を行うことも出来る。かくして、得られた生分解性ポリ
エステル繊維からなるリボン状布帛は、各種用途に適し
た形態に縫製加工される。
【0036】
【作用】本発明のリボン状布帛の適用用途はあらゆる用
途に適用できるが、特には神社、仏閣での縁起と魔除け
祈願のため提供される御札やお守り等に適用するのが望
ましい。この用途は、返却され、神社仏閣内で主には儀
式として焼却処分されている。しかして、非生分解性熱
可塑性合成繊維は、境内での焼却時に巨大な溶融塊を形
成して、完全焼却処理が困難となり、残った巨大な溶融
塊の処理に困る問題があった。が、本発明のリボン状布
帛は、生分解性脂肪族ポリエステル繊維で構成されてい
るため、従来公知の非生分解性熱可塑樹脂繊維からなる
布帛に比較して、焼却時の溶融塊発生が少ない。更に
は、残った溶融塊も大きくならないので、土中に埋設す
るのも容易で、埋設後数年以内に生分解して消滅させる
ことができるため、環境への負荷も少なくなる。本発明
布帛は所望に応じて親油性と親水性を同時に付与するこ
ともできるので、汗取りサポーターや細幅のタオル、汚
れとり、トレー敷、換気扇等のフィルター等にも使用で
きる。これらの製品は使用後、土に埋めれば生分解され
て肥料となり環境負荷を少なくできる。
【0037】
【実施例】以下に実施例で本発明を詳述する。 実施例1 常法により精製したL−ラクチド100部を窒素雰囲気
内で190℃にて溶融後、触媒を0.1部添加して開環
重合せしめた後、133Pa以下に減圧せしめて残留オ
リゴマーを除去して溶融粘度を所定の粘度に到達せし
め、次いでペレット化後、常法にて乾燥して得られたP
LAは分子量が320000、融点が180℃、オリゴ
マー含有量は0.005質量%であった。ついで、常法
により紡糸温度210℃、引取速度1500m/分にて
得た24フィラメントの未延伸糸を、2.5倍に延伸し
て50デシテックス、強度5g/デシテックス、伸度2
8%の延伸糸を得た。延伸糸をリング式仮撚り機にて仮
撚加工し、得られた仮撚糸をカセ巻して先染め用のカセ
を作成した。
【0038】次いで、ノニオン系界面活性剤を用いて4
0℃にて精錬水洗後、染料として、アセテート染料3種
類(レッド、イエロー、ブルー)を用いた各染浴に染色
助剤60g/リットル、酢酸と酢酸ソーダでPH5.5
に調整して40℃から90℃に30分で昇温し30分9
0℃にて染色し、水洗後、60℃でソーピング、水洗乾
燥して3色の鮮明の染色された先染めされた生分解性ポ
リ乳酸繊維を得た。次いで、経糸イエロー1色、横糸3
色で長手方向10cm毎に2色で八咫鳥文様(牛王宝
印)の意匠を形成するようにジャガード織機に入力し
て、幅9cmのジャガード織物を製織し、得られた布帛
は牛王宝印文様の意匠が精密に描かれたリボン状布帛で
あった。
【0039】この布帛を常法にてお守り袋に縫製して、
燃焼試験評価を行った結果を表1に示す。また、水の吸
い取り性、汗のふき取り性、てんぷら油の吸い取り性に
ついての評価結果も表1に示した。表1の結果より、本
発明の要件を満たすリボン状布帛は発生溶融塊が小さ
く、土中に埋設が容易であり、埋設後1〜3年で生分解
により消滅し、環境への負荷が小さいものである。
【0040】比較例1 ポリエチレンテレフタレートからなる50デシテックス
のフィラメントを用いて仮撚りした繊維に実施例1と同
様の色調及び色数に、常法にて130℃で染色加工した
先染め繊維を用い、実施例1と同様の文様を持つリボン
状布帛を作成し、お守り袋に縫製して、燃焼試験評価を
行った結果を表1に示す。また、水の吸い取り性、汗の
ふき取り性、てんぷら油の吸い取り性についての評価結
果も表1に示した。表1から明かなように、本発明要件
を満足できないものは、燃焼時発煙がやや多く、大きい
溶融塊を形成しており、更なる処理を行う必要があるた
め、環境への負荷も大きいものとなる。
【0041】実施例2 実施例1の仮撚り加工した繊維を精錬後、苛性ソーダ濃
度5質量%の水溶液を用い、40℃にて減量加工を行
い、洗浄乾燥後の減量率が16%とした以外、実施例1
と同様にして得た先染めされた生分解性ポリ乳酸繊維を
用いたジャガード織物を得た。得られた布帛を100c
m毎に切断して汗取り鉢巻に縫製し、鉢巻を丸めて30
本で燃焼試験評価を行った結果を表1に示す。また、水
の吸い取り性、汗のふき取り性、てんぷら油の吸い取り
性についての評価結果も表1に示した。表1の結果よ
り、本発明の要件を満たし、親水性を付与した本発明の
リボン状布帛は、発生溶融塊が小さく、土中に埋設が容
易であり、埋設後1〜3年で生分解により消滅し、環境
への負荷が小さいものであり、更に、親水性と親油性も
併せ持ち、ワイパーや汗拭き、油拭き、水拭き、フィル
ター等の各種用途にも適用できる有用なもので、土中埋
設で生分解させれば環境への負荷が小さく出来るもので
ある。
【0042】参考例 綿番手120番手の強撚した紡績糸を用い、実施例1と
同様の組織に無地で製織した布帛を評価した結果を表1
に示す。また、水の吸い取り性、汗のふき取り性、てん
ぷら油の吸い取り性についての評価結果も表1に示し
た。天然セルロース繊維は溶融せず、溶融塊が発生しな
いことが判る。
【0043】なお、表1に示した各評価方法は以下のと
おりである。 ・燃焼試験評価:地面に乾燥した杉の葉がついた小枝を
10cm積上げ、その上に作成したお守り袋300個を
乗せ、杉の葉に着火させて杉の葉及びお守り袋の形態が
無くなるまで燃焼させて消化し、燃焼状態及び形成した
溶融塊の状態を観察し、以下に示す基準で評価を行っ
た。 溶融塊がなし:◎、溶融塊の直径が1cm以内:○、溶
融塊の直径が2cm以内:△、溶融塊の直径が2cm以
上:×。
【0044】・水の吸い取り性:テーブル上の広げた鉢
巻にスポイドで水10ccを滴下して布帛に吸収される
時間を測定し、以下に示す基準で評価を行った。 10秒未満:◎、20秒未満:○、1分未満:△、1分
以上から吸収されない:×。
【0045】・汗のふき取り性:25℃、95RH%室
内で、パネラー10人に、10分間ランニングマシンで
ランニングさせた後、2分後にかいた汗を鉢巻で拭かせ
て、良好:5点、良:3点、やや不良:1点、不良:0
点の基準で官能評価させ、以下に示す基準で評価を行っ
た。 平均値が4点以上:◎、3点以上:○、2点以上:△、
2点未満:×。
【0046】・てんぷら油の吸い取り性:テーブル上の
広げた鉢巻にスポイドで菜種油10ccを滴下して布帛
に吸収される時間を測定し、以下に示す基準で評価を行
った。 10秒未満:◎、 20秒未満:○、1分未満:△、1
分以上から吸収されない:×。
【0047】
【表1】 表1の結果より、本発明の要件を満たすリボン状布帛は
発生溶融塊が小さく、土中に埋設が容易であり、埋設後
1〜3年で生分解により消滅し、環境への負荷が小さい
ものである。
【0048】
【発明の効果】神社、仏閣での縁起と魔除け祈願のため
提供される御札やお守り等は、返却され、神社仏閣内で
主には儀式として焼却処分されている。本発明のリボン
状布帛は、生分解性脂肪族ポリエステル繊維で構成され
ているため、従来公知の非生分解性熱可塑樹脂繊維から
なる布帛に比較して、焼却時の溶融塊発生が少ない。発
生溶融塊も小さいので、土中に埋設するのも容易で、埋
設後数年以内に生分解して消滅させることができるた
め、環境への負荷も少なくなる。本発明布帛は所望に応
じて親油性と親水性を同時に付与したものは、汗取りサ
ポーターや細幅のタオル、汚れとり、トレー敷、換気扇
等のフィルター等にも使用できる。これらは使用後、土
中で生分解させれば環境負荷を少なくできる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4H057 AA01 BA08 DA01 DA17 EA11 4L035 EE20 4L048 AA20 AB07 AB21 AC00 BA02 BA05 BB01 CA00 DA00 DA12 DA14 DA21 DA40

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 先染めされた生分解性脂肪族ポリエステ
    ル繊維を用いたリボン状布帛。
  2. 【請求項2】 生分解性脂肪族ポリエステル繊維がポリ
    乳酸である請求項1記載のリボン状布帛。
  3. 【請求項3】 意匠を施された請求項1記載のリボン状
    布帛。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2292338A1 (es) * 2006-03-01 2008-03-01 Filtros Industriales, S.L Procedimiento para la fabricacion de un tejido en especial para filtracion a partir de fibras de pla, y uso de dichas fibras de pla para la fabricacion de tejidos en especial para filtracion.
CN107385625A (zh) * 2017-07-21 2017-11-24 何炽斌 一种可生物降解的吸湿排汗面料的生产方法
CN107476080A (zh) * 2017-09-30 2017-12-15 界首市远航织带有限公司 一种织带低温染色方法
KR20190043197A (ko) * 2017-10-18 2019-04-26 강성환 하이브리드 의류 부속용 직물 밴드 제조 공정, 그리고 이에 의해 제조된 하이브리드 의류 부속용 직물 밴드

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