JP2002355026A - 細胞培養用の基体、その製造方法、それを用いた細胞培養法及び細胞培養装置 - Google Patents

細胞培養用の基体、その製造方法、それを用いた細胞培養法及び細胞培養装置

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JP2002355026A
JP2002355026A JP2002096547A JP2002096547A JP2002355026A JP 2002355026 A JP2002355026 A JP 2002355026A JP 2002096547 A JP2002096547 A JP 2002096547A JP 2002096547 A JP2002096547 A JP 2002096547A JP 2002355026 A JP2002355026 A JP 2002355026A
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Takeshi Miyazaki
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Ryoichi Matsuda
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化状態
の維持、細胞死から選ばれる少なくとも一つの機能を制
御する細胞培養用の基体、その製造方法、それを用いた
細胞培養法及び細胞培養装置を提供する。 【解決手段】 細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化
状態の維持及び細胞死の少なくとも一つの機能に関与し
ている細胞培養制御用物質を含む液体を微小液滴吐出手
段によって該基体に付与し、その固定化領域を形成して
細胞培養用基体とし、これを細胞培養法及びそのための
装置に利用する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば細胞の接
着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死の
少なくとも一つの機能を制御しながら細胞を培養するの
に用いる細胞培養用の基体、その製造方法、それを用い
た細胞培養方法、及び細胞培養装置に関する。更に詳し
くは、微小液滴吐出手段により吐出された細胞の接着、
増殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死の少な
くとも一つの機能に影響を与える細胞培養制御用物質が
固定化された基体、その製造方法及びそれを用いた細胞
培養方法に関する。また本発明は、細胞培養制御用物質
として、特に細胞の増殖及び分化の制御の少なくとも一
つの機能に影響を与える物質を用いて細胞の増殖や分化
を制御しながら培養する方法とそれに好適に用いること
のできる細胞培養用の基体、その製造方法及び細胞培養
装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、動植物の細胞を種々の条件下にお
いて培養する研究、あるいは特定の培養細胞の代謝活動
による産生物の研究が活発に行われており、特に人工的
には合成が不可能であるか、あるいは合成が極めて困難
な物質を特定の細胞活動を利用して製造することが多方
面において検討されている。
【0003】また、細胞工学や医工学の急速な進歩とと
もに、細胞を用いた超小型バイオセンサーや人工臓器、
更にはニューロコンピューターなどが注目を集め、これ
らの開発が活発に行われている。ところで、細胞の接
着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持、更には細胞
死(アポトーシス)等の機能に影響を与える物質には、
個体差があり、且つ複数の物質が複合的に該機能に影響
を及ぼしている場合があるため、これらの機能を制御し
つつ細胞培養を行う為には、上記したような機能を制御
する条件(物質やその組合わせ、比率などを含む)の特
定が欠かせない。
【0004】USP5108926号公報には、インクジェットプ
リンタを用いて細胞接着性蛋白質を基体に付与してパタ
ーンを形成し、細胞のポジショニングを行なう方法やそ
の為の装置が開示されている。
【0005】また、Biotechnol. Prog.,12, 700-702,(1
996)では、細胞の増殖・分化に影響を与える細胞成長因
子を基板上にフォトリソグラフィ技術を用いて固定化
し、細胞の増殖・分化に与える影響を検討している。
【0006】また、特表2000-512009号公報では、細胞
接着性に影響を与える物質を基板上に固定化し、細胞の
スクリーニングを行う方法について提案がなされてい
る。ここでは、基板上に設けられた反応性官能基と細胞
接着性物質を二価の架橋試薬により固定化している。ま
た反応性官能基と細胞接着性物質を結合させる際にフォ
トリソグラフィの手法を用いたことが記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者らの検討によれば、上記の先行技術に記載されている
装置や手法は、例えば効率的な細胞培養を行う上で未だ
改良の余地を含んでおり、またフォトリソグラフィの手
法の使用は、前記したような機能を制御した細胞培養の
低コスト化、更にはこれに基づく病気の治療等の迅速化
において未だ十分と言うことはできない。
【0008】そこで本発明の目的は、上述の従来例が有
している課題を解消し、簡便な工程で形成できる細胞の
接着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死
から選ばれる少なくとも一つの機能を制御した培養を行
うことのできる細胞培養用基体およびその製造方法を提
供し、細胞工学等の研究をさらに発展させ、また細胞を
利用した各種デバイスを作製するための基盤となる技術
を提供することにある。
【0009】また、本発明の目的は、これら細胞の接
着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死か
ら選ばれる少なくとも一つの機能を制御可能な細胞培養
方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の一態様にかかる
細胞培養用の基体は、細胞の接着、増殖、分化、生存、
未分化状態の維持及び細胞死の少なくとも一つの機能に
関与している細胞培養制御用物質を含む液体を微小液滴
吐出手段によって該基体に付与し、該基体に該細胞制御
用物質を固定化せしめることによって形成されてなる該
細胞培養制御用物質の固定化領域を有することを特徴と
する。
【0011】本発明の一態様にかかる細胞培養用の基体
の製造方法は、(i)細胞の接着、増殖、分化、生存、
未分化状態の維持及び細胞死の少なくとも一つの機能に
関与している細胞培養制御用物質を含む液体を微小液滴
吐出手段により基体上の所定領域に付与する工程と、
(ii)前記工程(i)で基体上に付与された該液体中
の細胞培養制御用物質を該基体に固定する工程と、を有
することを特徴とする。
【0012】本発明の一態様にかかる細胞培養制御用の
基体は、微小液滴吐出手段によって、細胞の接着、増
殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死の少なく
とも一つの機能に関与している細胞培養制御用物質が、
基体上に帯状又はドット状のパターンに配置されている
細胞培養用の基体であって、該細胞培養制御用物質の該
パターンの幅が、培養しようとする細胞の大きさと同等
かそれ以下であることを特徴とする。
【0013】本発明の一態様にかかる細胞培養用の基体
の製造方法は、細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化
状態の維持及び細胞死から選ばれる少なくとも1つの機
能に関与している細胞培養制御用物質を含む液体を基体
に付与し、帯状もしくはドット状のパターンに該細胞培
養制御用物質を配置する工程を有する細胞培養用の基体
の製造方法であって、該パターンが該細胞の幅と同等も
しくはそれ以下であることを特徴とする。
【0014】本発明の一態様にかかる細胞培養制御用の
基体の製造方法は、(i)細胞の接着、増殖、分化、生
存、未分化状態の維持及び細胞死から選ばれる少なくと
も一つの機能に関与している細胞培養制御用物質を基体
に配置する工程と、(ii)該細胞培養制御用物質の配
置領域上の所定部に細胞非接着物質を微小液滴吐出手段
により付与して、該細胞非接着物質が配置されてない部
分により前記パターンを形成する工程と、を有すること
を特徴とする。
【0015】本発明の一態様にかかる細胞培養方法は、
上記のいずれかの構成を有する細胞培養用基体が担持し
ている細胞培養制御用物質が培養液と接触するようにし
て細胞培養を行う工程を有することを特徴とする。
【0016】本発明の一態様にかかる細胞培養用の基体
は、細胞の接着、増殖、分化、生存及び未分化状態の維
持の少なくとも1つの機能に関与している細胞培養制御
物質が、微小液滴吐出手段により、互いに離間した複数
のスポットとして基体表面に付与され、固定化されてい
る細胞培養用の基体の、該細胞培養制御物質を含んでい
る複数のスポットのうちの少なくとも1つにおいて細胞
が付着していることを特徴とする。
【0017】本発明の一態様にかかる細胞培養用の基体
は、制御された細胞の増殖もしくは分化に用いられる細
胞培養用の基体であって、を制御細胞の増殖及び分化の
少なくとも一方の機能に関与している細胞培養制御物質
が、微小液滴吐出手段により、互いに離間した帯状もし
くはドット状のパターンとして付与されてなり、該パタ
ーンの幅は、該細胞のそれと同等もしくはそれ以下であ
ることを特徴とする。
【0018】本発明の一態様にかかる細胞培養装置は、
上記のいずれかの構成を有する細胞培養用基体が担持し
ている細胞培養制御用物質に培養液が接触する状態で細
胞を培養する手段を具備していることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。 (第1の態様)本発明の第1の態様の特徴事項の一つ
は、細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持
及び細胞死から選ばれる少なくとも一つの機能に影響を
与える細胞培養制御用物質を含む液体を微小液滴吐出手
段によって該基体に付与し、該基体に固定化せしめるこ
とによって形成されてなる該細胞培養制御用物質の固定
化領域を有する細胞培養用の基体にある。
【0020】以下に本態様にかかる細胞培養用の基体に
ついて、それの断面図である図1を用いて説明する。細
胞培養用の基体1は、ベース11上に細胞の接着、増
殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死から選ば
れる少なくとも1つの機能を通する細胞培養制御用物質
が所望の位置に配置された固定化領域12を有する。こ
の固定化領域内では、ベース11上に、細胞の培養中に
培養液中に離脱して、その機能が損なわれないように細
胞培養制御用物質が固定化されている。細胞培養制御用
物質を基体に固定化されることにより、例えば該基体の
細胞培養制御物質付着面が、細胞培養液の流れと接触し
ても、細胞培養制御用物質が流出してしまうことがな
い。更に、後述するように、細胞培養の過程において、
細胞培養制御用物質が細胞内に取り込まれることを抑制
でき、細胞に対して連続的に刺激を与え続けることとな
る。その結果として、該物質による細胞培養に与える影
響が継続し、例えば細胞の増殖効率の向上等の効果が認
められるものである。
【0021】細胞培養制御用物質は、上記のように基体
1への細胞の接着位置の制御、増殖の程度の制御(促進
する場合や抑制する場合を含む)、分化の制御(促進す
る場合や抑制する場合を含む)、生存、未分化状態の維
持、更には細胞死(アポトーシス)から選ばれる少なく
とも1つの機能に影響を与える物質であることが好まし
い。このような物質の例には、例えば細胞外基質蛋白質
や細胞の表面と特異的結合能を有する抗体、サイトカイ
ンの他、細胞と結合、あるいは、細胞内に取り込まれ、
細胞の増殖、分化に影響を与える化学物質などが含まれ
る。また、細胞外基質蛋白質の例は、コラーゲン、エラ
スチン、フィブロネクチン、ラミニンなどを含む。ま
た、サイトカインは、例えば細胞成長因子やホルモンと
呼ばれるものを含み、細胞成長因子は、例えば神経成長
因子(NGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、繊維芽細胞成
長因子などを含む。また、ホルモンの例はインスリンや
アドレナリンなどを含む。
【0022】1箇所の固定化領域にて基体に固定化され
ている細胞培養制御用物質は、1種類でも2種類以上で
もよい。例えば、異なる機能を有する2種類以上の細胞
培養制御用物質を同一固定化領域内に固定化することに
より、細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化状態の維
持及び細胞死から選ばれる少なくとも1つの更に高度な
制御が可能となる。細胞培養制御用物質は、その種類や
配置パターンといった化学的・物理的性質の違いにより
基体に固定化することができる。
【0023】また、互いに離間した複数の固定化領域に
おいて、基体に固定されている細胞培養制御用物質は、
必ずしも同一である必要はなく、細胞培養の目的に応じ
て各固定化領域に含まれている細胞培養制御用物質が異
種のものであってよい。
【0024】また、1つの固定化領域で複数の細胞培養
制御用物質が基体に固定されている場合、互いに離間し
ている複数の固定化領域で、複数の細胞培養制御用物質
の組合せは同じであってもよく、また異なっていてもよ
い。また、複数の互いに離間している固定化領域におけ
る細胞培養制御用物質の組合せが同じ場合でも、その濃
度比を異ならせることも有用である。かかる基体を用い
ることで、多種条件下で細胞の接着性、増殖、分化、未
分化状態の維持、細胞死などから選ばれる少なくとも1
つの機能を制御して培養することができる。複数の細胞
培養制御物質の協働が、細胞培養に影響を与える可能性
を考慮すると、この様に複数の固定化領域で、細胞培養
制御用物質の組合せや、濃度比を変化させることで、如
何なる環境が、細胞培養に最も大きな影響を与えるもの
であるか、といった情報の取得も可能となる。
【0025】細胞培養制御用物質のベース11上への固
定化は、共有結合を介してでも、静電引力を介してで
も、生物学的親和性を用いてもよい。共有結合を介して
ベース11上に固定化する場合は、強固な力で細胞培養
制御用物質を固定化でき、細胞や培養液などによりその
結合力は影響を受けにくく、ベース上に安定した固定化
領域を形成できる。
【0026】ここで、一具体例として、細胞培養制御用
物質12として、インスリンを用いる場合の、インスリ
ンを基板11上に共有結合で固定化する方法を説明す
る。
【0027】先ず、インスリンにリンカーとしての4-Az
idobenzoic acid N-hydroxysuccinimide ester を導入
する(下式参照):
【0028】
【化1】
【0029】こうして得られたリンカーが結合したイン
スリン溶液をインクジェットプリンタを用いて、例えば
ポリエチレンテレフタレート(PET)製ベース上に吐出
する。次いで、このベースに対してUV光を照射すると、
リンカーのアジド基が開裂してPET製ベースの炭素原子
とアミド結合を形成し、その結果としてインスリンが下
記式に示すようにベース表面に共有結合で固定される。
【0030】
【化2】
【0031】そして本発明者らは、この様に共有結合で
インスリンを表面に固定化したベースを用いて細胞培養
を行ったときの細胞の成長速度は、インスリンを溶解状
態で含む培養液で細胞培養したときと比較して、大幅に
増大するとの知見を得ている。このような結果が得られ
る理由は明らかでないが、インスリンが溶液状態で含ま
れている場合には、当該インスリンは、細胞によって取
り込まれ、消費されてしまうのに対し、ベースに固定化
した場合には、細胞によるインスリンの消費が生じ難
く、細胞がインスリンによる刺激を継続的に受け続ける
為であると考えられる。
【0032】また、静電引力による固定化の場合は、化
学的な処理を行わなくてもベース11上に固定化領域を
形成でき、化学的な処理による細胞培養制御用物質の変
性の可能性を排除できる。さらに生物学的親和性を用い
てベース上11に固定化領域を設ける場合には、細胞培
養制御用物質への固定化に必要な処理が比較的容易であ
り、安定した固定化が可能である。
【0033】ベース11は、細胞培養制御用物質を安定
して固定化できるものであれば材質や形状はいずれでも
よい。具体的には、ガラス基板、プラスチックプレー
ト、プラスチックシート、ポリマーフィルム、紙などを
好適に用いることができる。さらにベース11は透明で
あっても、遮光性のものであっても、さらには着色され
ていてもよい。また、ベース11上に細胞培養制御用物
質を固定化するため、あるいは、ベース11上での細胞
培養制御用物質の安定性を高めるため、ベース11上の
一部、あるいは全面を化学物質により処理したり、放射
線を照射する処理を行っても良い。
【0034】また、ベース11は、細胞培養制御用物質
が固定化されている個々の領域12、または、2つ以上
の固定領域から形成される固定領域群は基板表面に形成
された凹部(窪み又はウェル)内に形成されていてもよ
い。このことにより、微小液滴吐出手段により配置され
る液滴の基板の所定位置への配置を容易にすることがで
き、更に、ウェルにより連結されている個々の領域また
は領域群ごとに培養液を変えて細胞を培養することがで
きる。
【0035】また、ベース11は、細胞培養制御用物質
が固定化されている個々の領域12、または、2つ以上
の領域から形成される領域群が壁状構造物により囲まれ
ていてもよい。このことにより、微小液滴吐出手段によ
り配置される液滴の配置を容易にすることができ、更
に、窪みにより連結されている個々の領域または領域群
ごとに培養液を変えて細胞を培養することができる。加
えてベース11上に壁状構造物を作製するためには、フ
ォトリソグラフィ法などを用いることができ微細な壁状
構造物の作製が容易である。なお、ここでのフォトリソ
グラフィ法を使用は、壁状構造物の形成のためであり、
何ら細胞培養制御用物質の浪費にはつながらない。
【0036】以上説明した構成の細胞培養用基体1の製
造方法の具体例を図2を用いて説明する。ベース11
は、まず、必要に応じて前述した処理を行ってもよい。
具体的には、ベース11の洗浄を行い、所望でない物質
を取り去ったり、紫外線をはじめとする放射線の照射や
コロナ放電を行ったりすることなど様々な化学的物理的
処理を行うことができる。また、ポリマー材料やシラン
カップリング剤などを必要に応じてベース11上の一部
あるいは全面に塗布してもよい。
【0037】このようなベース11上に細胞培養制御用
物質を配置する。配置には、例えば微小液滴吐出手段1
3を用いる。微小液滴吐出手段とは、1滴あたりの体積
が例えば100pl以下、より具体的には例えば2〜4
pl程度の液滴が吐出可能なもので、マイクロピペッ
ト、マイクロディスペンサーや、インクジェット法を用
いた吐出装置が挙げられる。吐出装置が安価に作製、入
手でき、微小な液滴を制御された位置に吐出できる点で
インクジェット法を用いた吐出装置を特に好適に用いる
ことができる。さらにインクジェット法の中でも、サー
マルインクジェット法とピエゾインクジェット法を好適
に用いることができ、サーマルインクジェット法による
吐出装置は、吐出口の微細加工が容易で、細胞培養制御
用物質を含む液体を高密度に所定の位置に吐出すること
ができ、その結果として細胞培養制御用物質を基体上に
高精度に配置することができる。また、ピエゾインクジ
ェット法による吐出装置は、圧電素子の変位により、吐
出エネルギーを発生させるので、細胞培養制御用物質1
2に熱的なストレスを付加することがなく、細胞培養制
御用物質を含む液体を安定して吐出できる。
【0038】また、細胞培養制御用物質は、吐出のため
に適切な溶媒に溶解、もしくは分散される。溶媒(分散
媒)としては、細胞培養制御用物質を安定して溶解もし
くは分散させることができるものであればいずれでもよ
いが、水が好適に用いられる。水としてはイオン交換水
(脱イオン水)や細胞培養制御用物質12を安定して溶解
させるため種々の緩衝液を使用するのが好ましい。
【0039】また、必要に応じて水溶性溶剤を用いるこ
とができる。水溶性溶剤は水に溶解するものであればい
ずれでもよく、例えば、メチルアルコール、エチルアル
コール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコー
ル、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert
-ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコー
ル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等
のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケト
ンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオ
キサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリ
プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール
類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチ
レングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキ
サントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコ
ール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2から
6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセ
リン;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレ
ングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール
モノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル
エーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、
ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレ
ングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコ
ールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ
ブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエー
テル類;N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1,3-
ジメチル-2-イミダゾリン等が挙げられる。これらの1種
又は2種以上を適宜選択して使用できる。
【0040】これらの多くの水溶性有機溶剤の中でもジ
エチレングリコールなどの多価アルコール、トリエチレ
ングリコールモノメチルエーテル等の低級アルキルエー
テルが好ましい。
【0041】これらの中でもエタノールあるいはイソプ
ロピルアルコール、又は多価アルコールの低級アルキル
エーテル類を添加することによって、サーマルジェット
タイプの場合には、インクジェットの吐出口内の薄膜抵
抗体上でのインクの発泡をより安定に行うことができる
ため好適に用いることができる。
【0042】また、本発明にかかる少なくとも細胞培養
制御用物質12を含む液体には、上記成分のほかに必要
に応じて所望の物性値を持つ溶液とするために、界面活
性剤、消泡剤、防腐剤、無機塩類、有機塩類等を添加する
ことができる。
【0043】例えば、界面活性剤としては細胞培養制御
用物質12に対して保存安定性等の悪影響を及ぼさない
ものであればいずれでも用いることができ、例えば、脂
肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪
油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等
の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポ
リオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセ
チレンアルコール、アセチレングリコール等の非イオン
性界面活性剤があり、これらの1種又は2種以上を適宜選
択して使用できる。
【0044】微小液滴手段によりベース11上の所望の
位置に細胞培養制御用物質を配置すると同時あるいは配
置後に、細胞培養制御用物質をベース11上に固定化す
る。ベース11上に細胞培養制御用物質を固定化するた
めに、前記した様に、細胞培養制御用物質に予め固定化
の為の処理を施してもよいし、基体上に予め固定化に必
要な処理を施しておいてもよい。細胞培養制御用物質へ
の処理としては、共有結合に必要なアミノ基、カルボキ
シル基、ジスルフィド基、エポキシ基、カルボジイミド
基、マレイミド基などの官能基を細胞培養制御用物質1
2へ導入してもよく、静電引力を介して結合させるのに
必要な金属および無機酸化物微粒子やカチオン性高分子
やアニオン性高分子など帯電可能な物質を結合させても
よい。また、生物学的親和性を用いて結合させるため
に、アビジン分子やビオチン分子を結合させてもよく、
抗原分子や抗体分子など生物学的親和力により結合しう
る物質を結合させてもよい。また、基板表面に、高分子
やシランカップリング剤をコーティングし、共有結合に
必要なアミノ基、カルボキシル基、ジスルフィド基、エ
ポキシ基、カルボジイミド基、マレイミド基などの官能
基を導入してもよいし、基板表面を帯電させるため、
金、銀、白金、鉄などの金属やインジウム錫酸化物、酸
化チタン、酸化亜鉛などの無機酸化物さらにはポリアセ
チレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン
などの導電性高分子など、導電体層や半導体層を予め基
板表面に形成してもよい。更には、細胞培養制御用物質
に導入した生物学的親和性を有する物質と結合力を有す
るビオチン分子やアビジン分子、抗体分子や抗原分子、
抗体結合能を有するプロテインAなどの蛋白質をベース
11表面に設けてもよい。これら物質を導入することに
より、ベース11表面と細胞培養制御用物質12との結
合力を強固なものにすることができる。
【0045】固定化の際には、光をはじめとする放射線
照射や、加熱などによりエネルギーを外部から加えても
よい。これらエネルギーを外部から加えることでベース
11表面と細胞培養制御用物質12の結合を促進するこ
とができる。
【0046】以上のようにして細胞培養用基板1が作製
できる。
【0047】次に前述した細胞培養用基体1を用いた細
胞培養方法について述べる。このような細胞培養基体1
の少なくとも固定化領域が培養液と接触している状態に
おいて細胞を培養することにより、細胞の接着、増殖、
分化、生存、未分化状態の維持、細胞死から選ばれる少
なくとも一つを制御しながら細胞を培養することができ
る。細胞は特に制限されるものはないが、好ましくは、
固定化した物質により上記した何れかの機能が影響を受
ける可能性のある細胞である。細胞を培養する前に必要
に応じて細胞培養用基板1上に紫外線などを照射するこ
とにより殺菌処理してもよい。これにより所望でない微
生物などにより培養が阻害されないようにすることがで
きる。なお、細胞培養用基板1全体を培養液に浸漬して
細胞培養を行ってもよいが、少なくとも細胞培養制御用
物質が固定化されている領域が培養液と接触していれ
ば、細胞の接着、増殖及び分化の少なくとも一つを制御
しながら培養することは可能である。
【0048】また、細胞培養用基体1上で細胞を培養し
ている際、あるいは一定期間の細胞培養後、培養液中に
所望の物質を添加してもよい。これにより細胞の増殖、
分化を変化させたり、基板上への接着性を変化させたり
することができる。また、培養液の流れを細胞培養制御
用物質に対して接触させて、すなわち培養液を灌流させ
て培養を行ってもよい。
【0049】また、細胞培養用基板1上で細胞を培養し
ている際、あるいは一定期間の細胞培養後、培養細胞群
を基板上から取り外してもよい。こうすることで培養細
胞が取り除かれた基板を再度利用することができ、ま
た、取り外した培養細胞群を人工的に作製した生体組織
あるいはその一部として利用することができる。
【0050】(第2の態様)次に、本発明にかかる第2
の態様について説明する。
【0051】例えば、生体外において、胚幹細胞を様々
な機能を有する細胞に分化させ、増殖させる技術は、今
後の再生医療の発展という観点からも極めて重要なもの
と考えられている。しかし、細胞培養の過程において、
細胞を配列させ、その増殖、分化を制御することは極め
て困難で、前述のような細胞を利用した研究開発の進展
の大きな障壁となっている。蛋白質・核酸・酵素,45〜
5,727〜734,(2000)では、細胞の増殖・分化に影響を
与える細胞成長因子のパターンを細胞の大きさ以下でフ
ォトリソグラフィ技術を用いて固定化し、基板上で培養
された細胞の増殖に与える効果を蛋白質産生量の測定に
より明らかにしている。また、同文献の中で、神経成長
因子のパターンを細胞の大きさ以下でフォトリソグラフ
ィ技術を用いて固定化し、神経細胞の軸索の伸長方向を
制御している。
【0052】しかしながら、フォトリソグラフィ法を用
いた培養基体の製造は、露光、現像といったプロセスを
繰り返さなければならず製造工程が複雑となる。また、
培養基体の製造の過程において、例えば、生体内に少量
しか存在しない、細胞の接着、増殖、分化、生存、未分
化状態の維持や細胞死の何れかに影響を与えるような生
体物質を浪費してしまうなどの課題があった。
【0053】また、複数の細胞接着性蛋白質や細胞成長
因子などの細胞培養制御用物質を用いて細胞の接着・増
殖・分化の制御を行う場合は、フォトリソグラフィ法で
は、必ず固定化済みの物質と、これから固定化する物質
とを接触させねばならず、その際にこれら物質間で非特
異的な吸着が起こることは不可避で、その結果、所望で
ない領域に細胞培養制御用物質を固定化してしまい、所
望の形で細胞の接着・増殖・分化の制御を行うことは本
発明者らの検討では非常に困難であった。
【0054】しかしながら、上記した第1の態様にかか
る基体の製造に用いたような微小液滴吐出手段を利用す
ることで、上記したような種々の課題を解決し、例えば
細胞の増殖や分化を高精度に制御することのできる細胞
培養用の基体を製造することができる。
【0055】即ち、第2の態様にかかる細胞培養用の基
体は、細胞培養制御用物質が基体上に帯状又はドット状
のパターンに配置されてなり、該パターンの幅が、培養
しようとする細胞のサイズと同等もしくはそれ以下であ
り、該パターンが微小液滴吐出手段を用いて形成されて
なるものである。
【0056】なお、ここで「同等」とは、1以上2倍未
満の範囲のことを指し、好ましくは、1以上1.5倍未
満のことを言う。つまり、パターンの幅は、細胞のサイ
ズの2倍未満とすることが好ましい。このことによりパ
ターン上には細胞は物理的に1つしか付着できず、それ
により当該細胞の成長や分化の方向が自ずから規定され
てしまうこととなる。その結果として、接着性や配向
性、さらに細胞の増殖、分化を個々に制御することが可
能となる。
【0057】具体的には、例えば培養後の細胞に組織的
な構造を付与することが可能となる。図3は、本態様に
かかる細胞培養基体の製造方法の概略説明図である。図
3において31はベース、33はインクジェット記録ヘ
ッド、22はインクジェット記録ヘッド13から吐出さ
れた細胞培養制御用物質12を含んでいる液体の滴であ
り、当該液体の滴をベース31の表面に付着せしめるこ
とで細胞培養用の基体3が得られる。そしてこの基体3
の、複数の互いに離間した細胞培養制御用物質12の付
着部の幅(X)は、好ましくは培養しようとする細胞が
該細胞制御用物質付着部の幅方向に2つ並ぶことのない
サイズに形成することが好ましく、具体的には、例えば
細胞のサイズの2倍未満とする事が好ましい。細胞のサ
イズはその種類によって異なるが、一般的にミクロンオ
ーダーである。その為、上記方法で細胞培養用の基体を
製造する場合において、インクジェット記録ヘッドから
吐出させる滴のサイズとしては、例えば100pl以
下、特には10pl以下、更には4plもしくはそれ以
下が好ましい。滴のサイズをこのように調整すること
で、培養過程における細胞の制御をより高精度化するこ
とが可能である。
【0058】具体的には、4plの滴を用いた場合、基
体の種類や基体の表面状態によっても異なるが例えば1
0〜30μm程度のドットがベースに形成できる為、か
かる液滴のサイズで細胞培養制御用物質が付着された細
胞培養用の基体は、細胞の制御された培養に極めて好適
に用いることができるものである。かかる方法によれ
ば、細胞培養制御用物質を含む液体を位置制御しながら
必要量だけ基板上に吐出すればよく、フォトリソグラフ
ィ法のように、現像工程で取り去られる領域に配置され
る分まで浪費することがなく、極めて効率的に細胞培養
用基体を製造することができる。また、基体上に付着さ
れた細胞培養制御用物質は、前記第1の実施態様にて詳
述した方法により基体に固定化させることは、より好ま
しい態様である。この様に、上記した方法によれば、細
胞培養制御用物質を含む液体を位置制御しながら必要量
だけ基板上に吐出すればよく、フォトリソグラフィ法の
ように、現像工程で取り去られる領域に配置される分ま
で浪費することがなく、極めて効率的に細胞培養用基体
を製造することができる。
【0059】ところで、本態様にかかる細胞培養用の基
体において、基体上に付着させる細胞培養制御用物質や
基体としては、前記第1の実施態様と共通のものを用い
ることができる為、説明を省略する。また、本態様にか
かる基体は、複数の異なるパターン、例えば第1のパタ
ーンと第2のパターンとを、1つの基体上に有していて
もよい。またその場合、各々のパターンが含んでいる細
胞培養用制御物質は同一であっても異なっていてもよ
い。更に、第1のパターンと第2のパターンが各々複数
種の細胞培養制御用物質(例えば第1の細胞培養制御用
物質と第2の細胞培養制御用物質)を含んでいてもよ
い。そして、その場合に、第1及び第2のパターンで、
各々が含んでいる第1と第2の細胞培養制御用物質の組
合せが同じであっても異なっていてもよい。更に、この
組合せが同じ場合においても、第1のパターンと第2の
パターンとで、第1及び第2の細胞培養制御物質の比率
が異なっていてもよい。この様に基体上に配置する複数
のパターンが含む細胞培養制御用物質の種類を様々に調
整することで、例えば1つの基体上に異なる機能の細胞
を分化、成長させることも可能であると考えられる。
【0060】図4は、本態様にかかる細胞培養用基体の
他の製造方法の説明図である。この方法により得られる
基体は、細胞培養制御用物質の表面に細胞が接着できな
い(細胞非接着)物質を、細胞培養制御用物質が表出して
いる領域の各パターンの幅をその上で培養される細胞の
大きさと同等かそれ以下となるように配置したものであ
る。具体的には、ベース11上に予め細胞培養制御用物
質12の層を、例えば全面に形成し、その上に細胞非接
着物質42を含む液体の滴41を、例えば微小液滴吐出
手段13を用いて付与して、細胞培養制御用物質12の
層上に選択的に配置し、細胞培養制御用物質12が表出
する各領域の幅がその上で培養される細胞の大きさと同
等かそれ以下となるようなパターンを形成する。これに
より、本態様にかかる細胞培養制御用の基板を得ること
ができる。これにより細胞非接着物質42の浪費を低減
することができる。ここで、細胞非接着物質42は、生
体物質に限られず、高分子材料や低分子化合物などでも
よく、様々な材料で種々の配置法を用いることが可能で
あるので、細胞培養制御用物質が表出している領域形成
が容易となる。
【0061】上記図4にかかる方法では、ベース11の
表面に細胞培養制御用の物質12の層を予め形成してお
いたが、図5に示すように、細胞培養制御用物質12を
含む液滴を、微小液滴吐出手段13で付与し、ベース上
に付着させ、次いで細胞非接着物質42を含む液滴41
を微小液滴吐出手段を用いて付与する。そしてこのとき
に、該細胞培養制御用物質の付着部12に隣接して、或
いは重なって細胞非接着性物質が配置され、その結果と
して細胞培養制御用物質が露出したパターンの幅を培養
しようとする細胞のサイズと同等以下に制御することが
できる。
【0062】図6は本態様にかかる細胞培養基体の更に
他の実施形態及びその製造方法の概略説明図である。こ
の方法は、例えば、細胞非接着物質42で凸部62を形
成する工程と細胞培養制御用物質12を含む液滴22を
当該凸部により囲われた部分に付与し、細胞培養制御用
物質12を凸部で囲われた部分に配置する工程を含む。
この方法を用いることで、例えば基体上に複数の細胞培
養制御用物質のパターンを、凸部によって互いに隔離す
ることができる。具体的には、例えば図6に示した様
に、ベース11上にフォトレジスト層61を形成し、該
フォトレジスト層に選択的な露光を施し、現像すること
で、細胞非接着性物質42からなる凸部62をベース1
1上に形成し、その凸部62で囲われた部分に液滴吐出
手段13によって細胞培養制御用物質12を付与するこ
とで、本態様にかかる細胞培養用の基体1を得ることが
できる。この方法により予め細胞非接着物質42により
細胞培養制御用物質を含む液滴22が吐出される領域が
規定されているので、正確に大きさを制御して細胞培養
制御用物質12を配置することができる。
【0063】また、例えば、図7に示すように、図6と
同様の方法で形成した細胞非接着物質からなる凸部62
を有するベース11に、細胞培養制御用物質12を少な
くとも含む液滴を吐出する前に、前記凸部の表面に撥水
処理71を施してもよい。この処理により細胞培養制御
用物質12を少なくとも含む液滴は、凸部上で弾かれ、
凸部により囲われた部分からはみ出すことなく配置する
ことができる。更に、必要に応じて微小液滴手段により
ベース11上の所望の位置に細胞培養制御用物質12を
配置した後、細胞非接着物質42をベース11上に固定
化してもよい。
【0064】次に前述した、本発明の第2の態様にかか
る細胞培養基体を用いて細胞を培養する方法について述
べる。細胞培養制御用物質12が配置されている各領域
の幅が培養される細胞の大きさと同等かそれ以下の基体
上で細胞を培養することにより、個々の細胞の接着性や
配向性を制御し、また増殖や分化などの少なくとも1つ
を制御しながら細胞を培養することができる。このこと
により組織培養する際に課題とされていた個々の細胞の
配向制御をした上で細胞の増殖や分化をさせることがで
き、生体内とほぼ同等の組織を形成することが可能とな
る。ここで培養される細胞は特に制限されるものはな
く、いずれの細胞をも培養することができる。細胞を培
養する前に必要に応じて培養制御用培養基体1上に紫外
線などを照射することにより殺菌処理してもよい。これ
により所望でない微生物などにより培養が阻害されない
ようにすることができる。なお、細胞の培養制御用基体
1全体を培養液に浸漬して細胞培養を行ってもよいが、
少なくとも細胞培養制御用物質が固定化されている領域
が培養液に浸漬されていれば、細胞の接着性や増殖、分
化の少なくとも1つを制御しながら培養することが可能
である。
【0065】また、細胞の培養制御用基体1上で細胞を
培養している際、あるいは一定期間の細胞培養後、培養
液中に所望の物質を添加してもよい。これにより細胞の
増殖・分化を変化させたり、基板上への接着性を変化さ
せたりすることができる。
【0066】また、細胞の培養制御用基板1上で細胞を
培養している際、あるいは一定期間の細胞培養後、培養
細胞群を基板上から取り外してもよい。こうすることで
培養細胞が取り除かれた基板を再度利用することがで
き、また、取り外した培養細胞群を人工的に作製した生
体組織あるいはその一部として利用することができる。
【0067】ところで、これまで述べてきた細胞培養用
基体の製造から、これを用いた培養までを一連の工程と
して結びつけることで、細胞培養システムを構築するこ
とが可能である。具体的には、例えば細胞培養基体の製
造から、細胞培養までを一連の工程として処理するシス
テムである。図9において、901は細胞培養用基体1
のベース11の収納室である。ベース11は、ここで必
要に応じて基体の殺菌処理などが行われ、細胞培養用基
体の製造室902に搬送される。ここでは例えば、上記
図2〜図7で説明した細胞培養用基体の製造方法や後述
の図8で説明する細胞培養用基体の製造方法の何れかの
方法により表面に細胞培養制御用物質が付着した細胞培
養基体が作成される。次いで、この基体は、培養室(9
03)に運ばれ、前記した方法で培養される。そして、
培養の結果物は、チャンバー904に搬送され、ここか
ら取り出すことができる。
【0068】図10は、収納室901から細胞培養用の
基体の製造室902の一例の詳細説明図である。ベース
11はストッカー1003にセットされており、搬送機
1005によりベルトコンベアー1007に送られ、ト
レー1009に送り出される。1011は、送りのため
の補助ローラである。トレー1009に送られたベース
11は、ポンプ1013での吸引によりトレー1009
上にしっかりと吸着固定される。トレー1009上のベ
ース11が第1の処理工程が行われる領域に送り込まれ
る。1015はUV/O3ランプであり、ベース11の
前処理を行う。1017の送りモータで第1の工程の領
域から基板が搬出されると、微小液滴吐出手段13によ
って、細胞培養制御用物質を含む液滴が付与される。細
胞培養制御用物質が付与されたベースは、第3の工程の
固定化処理が行われる領域に直ちに搬送され該物質はベ
ース上に固定化される。ここではUV照射ランプ101
5である。以上の3つの処理工程を経て細胞培養用の基
体が形成され、ベルトコンベアー1019と送りローラ
1021を介して次の培養室903に搬送される。
【0069】しかしながら、本願発明にかかる細胞スク
リーニング装置は、これら以外の態様であっても、前記
目的が達成されるものであれば特に限られるものではな
い。
【0070】
【実施例】(第1の態様) 実施例1 (マウス繊維芽細胞STOのインスリンによる増殖促進
基板)ソーダガラス基板上に0.5%の3−アミノプロ
ピルトリエトキシシランのエタノール溶液を塗布し、室
温で24時間乾燥した。
【0071】また、インスリンには、下記の方法に従っ
て、予めN−ヒドロキシスクシンイミド基を導入した。
即ち、脱イオン水中に溶解した60mmolのN−ヒドロキシ
スクシンイミド中に脱イオン水中に溶解した1-エチル-3
-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)カルボジイミド(WS
C)を滴下し、4℃で24時間攪拌した。続いて、リン酸
等張緩衝液中に溶解した60mmolのインスリン中に前記反
応液を滴下し、4℃で24時間攪拌し、反応生成物をリン
酸等張緩衝液により透析して未反応物を除去し、N−ヒ
ドロキシスクシンイミド基を導入したインスリンの溶液
を得た。
【0072】次に、サーマルインクジェット法によるイ
ンクジェットプリンターであるキヤノン製BJF870のイン
クカートリッジをリン酸等張緩衝液で十分に洗浄し、上
記で調製した、透析後のインスリン溶液を50%エタノー
ル水溶液で希釈し、50μg/mlに調製した。この溶液
をインクジェットプリンターのインクカートリッジに充
填し、吐出して基板上へ配置した。描画パターンはプリ
ンターを接続したパーソナルコンピューターにより制御
し、1ドロップレットのサイズは約4ピコリットルとし
た。基板上にインスリン溶液を吐出後、基板を室温で乾
燥した後、基板を35℃で1時間インキュベートして、基
板上への固定化反応を行った。固定化後の基板は、リン
酸等張緩衝液で洗浄し、未反応のインスリンを洗い流し
た。このようにしてインスリンによる増殖促進基板を作
製した。
【0073】この基板上でマウス繊維芽細胞STOを培養
した。培養液は10μg/ml Transferrin を添加したDMEM
(Dulbeccos Modified Eagles minimum essential medi
um)培地を用いた。ガラスシャーレに基板を入れ、5%
CO2を含む湿潤空気(95〜100%RH)中で37℃、24
時間培養した。基板上の細胞の形態を光学顕微鏡で観察
した。その結果、インスリンが固定化された領域では、
マウス繊維芽細胞が増殖して密集していることが確認さ
れた。 実施例2 (フィブロネクチンとインスリンを固定化した基板)実
施例1と同様にして、フィブロネクチンとインスリンを
基板上に固定化した基板を作製した。フィブロネクチン
は実施例1と同様の方法で基板上に固定化した。インス
リンは同人化学社製ビオチンラベル化キットを用いてビ
オチン化した。基板上でもビオチンラベル化キットを用
い、基板表面にもビオチン基を導入した。続いてアビジ
ンをピエゾジェット法によるインクジェットプリンター
であるセイコーエプソン社製インクジェットプリンター
PM900Cにより配置し、基板上のビオチンと生物学的
親和力により結合させた。さらにビオチンラベルされた
インスリンをインクジェットプリンターPM900Cにより配
置し、基板上に固定化されているアビジンと反応させて
固定化した。なお、基板上には、フィブロネクチンのみ
が固定化されている領域、インスリンのみが固定化され
ている領域、及びフィブロネクチンとインスリンとが固
定化されている領域の3種類を形成した。フィブロネク
チンとインスリンの双方が固定化されている領域は、各
々を含む液体の滴が基板上で重なるようにプリンタを制
御して形成した。
【0074】この基板上でマウス繊維芽細胞STOを、ト
ランスフェリンを含まないDMEM培地を用いた以外は実施
例1と同様の方法で培養した。培養後、細胞の個数の変
化を細胞核を染色し、その数を数えることで行った。培
養液から基板を取り出し、リン酸等張緩衝液で洗浄し
た。続いて、メタノールに30分間基板を浸漬し、基板上
に細胞を固定化した。Hoechst33258を1万倍に希釈し、
基板上に塗布後、5分間反応させた。その後、リン酸等
張緩衝液で洗浄し、蛍光顕微鏡で基板を観察し、染色さ
れた核の数を観察した。その結果、フィブロネクチンと
インスリンが近接して固定化されている領域では、細胞
の増殖が盛んに行われており、10000個/mm2であった。
また、インスリンだけが固定化されている領域では、細
胞が観察されなかった。さらにフィブロネクチンだけが
固定化されている領域では、細胞は10個/mm2程度で、増
殖はそれほどなされていなかった。
【0075】実施例3 (インスリンを場所により密度をかえて固定化した基
板)実施例1と同様にして、インスリンを場所により密
度をかえて固定化した基板を作製した。密度を変えるに
は、描画ソフトでドット密度の異なるハッチングパター
ンを作製し、パーソナルコンピューターからこのような
描画データをプリンターに送信して、基板上の場所によ
りドット密度が変わるパターンを作製した。具体的に
は、一定面積の中に50%のドットが形成される領域と、
30%のドットが形成される領域と、10%のドットが形成
される領域と、2%のドットが形成される領域を作製し
た。
【0076】この基板上でマウス繊維芽細胞STOを実施
例1と同様の培養法で培養すると、インスリンの密度に
応じて細胞の密度が増加している様子が観察された。細
胞の密度を実施例2と同様の核染色法を用いて測定した
ところ、インスリンのパターンが50%ドット領域では、
細胞数が10000個/mm2、30%領域では3000個/mm2、10%
領域では、300個/mm2、2%領域では100個/mm2であっ
た。
【0077】実施例4 (インスリンを静電的に基板に固定化させた基板)基板
上にITO(インジウム錫酸化物)をスパッタリング法によ
り形成した。この基板上に何も処理をしていないインス
リンをインクジェットプリンターで配置した。実施例1
と同様の培養液をpH7.0に保ち、白金電極を対極として
基板上に形成されたITOとの間に電圧を印加し、基板表
面を正に帯電させた。インスリンは等電点がpH5.3程
度であるので、pH7.0付近では負に帯電するため基板
上に固定化された。
【0078】このような基板上でマウス繊維芽細胞STO
を培養すると、インスリンが固定化された領域で細胞増
殖が観察された。
【0079】実施例5 (固定化領域が窪んでいる基板)ガラス基板にフォトレ
ジストOFPR−800(東京応化工業社製)を塗布し、フォ
トリソグラフィ工程により、微細なレジストパターンを
形成した。この基板をフッ酸溶液中に浸漬し、レジスト
が除かれている部分のガラス表面をエッチングして基板
表面を窪ませた。窪みのパターンは培養液が混じり合わ
ないように、互いに連結させなかった。
【0080】上記基板表面の窪んだ領域に、実施例1と
同様のシランカップリング剤で処理した、実施例2で用
いた、リンカーを有するフィブロネクチンを含む液体を
インクジェットプリンターで吐出し、窪んだ領域の各々
にフィブロネクチンの固定化領域を形成した。
【0081】このようにして作製した基板を用いてマウ
ス繊維芽細胞STOを培養した。
【0082】窪みにより培養液を変え、牛胎児血清培
地、DMEM培地、10μg/mlのトランスフェリンを含
むDMEM培地、1%インスリン及び10μg/mlのトラ
ンスフェリンを含むDMEM培地を用いたところ、DMEM培地
並びにトランスフェリンを含むDMEM培地では細胞増殖は
起こらず、牛胎児血清培地、1%インスリンとトランス
フェリンとを含むDMEM培地で細胞増殖が観察された。
【0083】実施例6 (基板上の領域が壁状構造物で囲まれている基板)上皮
細胞成長因子(EGF)は以下の方法により、官能基を導
入した。50mmolのジシクロヘキシルカルボジイミド(DC
C)のテトラヒドロフラン(THF)溶液をN-ヒドロキシス
クシンイミド50mmolと4-アジドベンゼンカルボン酸45m
molのTHF溶液に滴下し、4℃で24時間攪拌しながら反応
させた。反応生成物を減圧乾燥後、イソプロパノール/
ジイソプロパノール溶液中で再結晶化し精製した。続い
てこの反応生成物をジメチルフォルムアミドで溶解し、
リン酸等張緩衝液(pH7.0)中に溶解してEGFを少量ず
つ滴下していった。4℃で、48時間攪拌し、EGFにアジド
基を導入した。
【0084】また、ポリスルホン基板上にフォトレジス
トOFPR−800(東京応化工業社製)を塗布し、フォトリ
ソグラフィ工程により、壁状構造物を形成した。
【0085】続いて基板上の壁状構造物により囲まれて
いる領域にインクジェットプリンターによりアジド基が
導入されたEGF溶液を吐出した。乾燥後、紫外線照射ラ
ンプを用いて200mJ/cm2照射し、EGFの固定化
領域を形成した。未反応のEGFをリン酸等張緩衝液によ
り洗い流して細胞培養用基体を作製した。
【0086】この基体上でPC12細胞を培養した。培養
液には実施例1と同様の培養液を用いた。この基板上で
培養するとPC12細胞は増殖せず、樹状突起を伸長して
分化した。
【0087】実施例7 (培養中に化合物を添加する培養法)実施例6と同様の
基板を用い、PC12細胞をDMEM培地中で培養した。培養開
始48時間後、固定化領域1には、EGFを添加し、固定化
領域2には神経成長因子(NGF)を添加した。また、固定
化領域3には何も添加しなかった。
【0088】その結果、固定化領域1ではPC12細胞が増
殖を開始した。また、固定化領域2では樹状突起を伸長
していった。さらに固定化領域3では変化が起こらなか
った。
【0089】実施例8 (細胞群を基板から取り外す工程を含む培養法)ポリス
チレン基板上にポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)
ゲルの層をキャスト法により形成した。この基板上に実
施例1の方法でアジド基を導入したインスリンを含む液
体を実施例6と同様にして吐出、固定化し、細胞培養用
の基体を作製した。この基体上でマウス筋細胞C2C12をD
MEM培地中で培養した。インスリンが固定化されたパタ
ーンに従ってC2C12細胞が増殖していった。48時間培
養の後、培養基板を30℃に冷やすことにより、アクリ
ルアミドゲル層の基板上への接着性が低下し、細胞群が
基板上から培養液中に浮遊してきた。この浮遊してきた
細胞群を取り出し、細胞群の両端にパルス電位を印加す
ると細胞群は収縮した。
【0090】また、細胞を取り外した基板上で例えば3
7℃程度の温度で再度細胞を培養したところ、インスリ
ンが固定化されているアクリルアミドゲルの層がベース
に再び形成され、マウス筋細胞の増殖が確認された。こ
のことは、細胞培養基板が再利用できる可能性を有して
いることを示唆するものである。
【0091】(第2の態様) 実施例9 (インスリン基板)図2に示すようにポリエチレンテレ
フタレート(PET)フィルム11上に、サーマルインク
ジェットプリンター(商品名BJF870;キヤノン(株)社
製)を用いて、そのインクジェットヘッド13から細胞
培養制御用物質12であるインスリンを吐出し、培養制
御用培養基板1であるインスリン基板を作製した。
【0092】先ず、リン酸等張緩衝液(pH7.0)で、当
該インクジェットプリンターのインクカートリッジを十
分洗浄した後、インスリンを含有するリン酸等張緩衝液
(pH7.0)を50%エタノール水溶液で希釈し、50μg
/mlとした溶液をインクカートリッジに充填した。プ
リンターをコンピューターに接続し、プリンタードライ
バ付属のノズルチェックパターン印刷を行うことで、1
ノズルにより描画される極細線パターンをPETフィルム
11上に描画し、インスリンのパターンをフィルム11
上に作製した。
【0093】今回プリンターで吐出した液滴の体積は、
下記のようにして測定した。インスリン溶液を充填した
インクカートリッジを秤量し、100万ドット吐出した時
のカートリッジ重量から吐出された溶液重量を求めた。
また、インクの比重を求め、インク一滴あたりの体積を
計算したところ3.5plであった。
【0094】作製したインスリン基板は、インスリンが
幅10μmの細線パターンが形成されていた。次いで、
該インスリン基板を、殺菌灯を用いて殺菌した後、この
インスリン基板をガラスシャーレ中に浸漬して、マウス
筋細胞C2C12を培養した。培養液は10μg/ml Transferri
n を添加したDMEM(Dulbecco's Modified Eagle's mini
mum essential medium)培地を用いた。そして、マウス
筋細胞C2C12を播種し、5%CO2を含む湿潤空気(95〜
100%RH)中で37℃、24時間培養した。そし
て、細胞の形態変化を観察したところインスリンの細線
パターンに沿って細胞が1列に並んで増殖している様子
が観察され、インスリン基板によりマウス筋細胞C2C12
の増殖と配向を制御できた。この時細胞の幅は9μmで
あった。
【0095】実施例10 (ポリ−L−リジン基板)図4に示すようにガラス基板
11上に細胞培養制御用物質12であるポリ−L−リジ
ンの1%水溶液をスピンコート法により塗布し、基板1
1上に膜厚10nmのポリ−L−リジン皮膜を形成した。な
お、ポリ−L−リジンは細胞の接着性を高める物質であ
る。
【0096】続いて、ピエゾインクジェットプリンター
(商品名:PM900C;セイコーエプソン社製)のインクカ
ートリッジを精製水を用いて洗浄し、細胞非接着物質4
2のポリアクリル酸を含む下記溶液を充填した。
【0097】
【表1】
【0098】前記ガラス基板をCD-Rプリントキット(セ
イコーエプソン社製)上に配置し、インクジェットプリ
ンターをコンピューターと接続し、カートリッジ内の溶
液をコンピューターの画像描画ソフトを用いて細胞非接
着物質42のポリアクリル酸のパターンが描画されるよ
うにインクジェットヘッド13から吐出した。
【0099】基板上には、ポリ−L−リジン層の上にポ
リアクリル酸のパターンが形成され、ポリ−L−リジン
が表出している領域がそれぞれ幅7μm以下となってい
た。
【0100】このような基板上で細胞培養を行った。作
製したポリ−L−リジン基板をガラスシャーレ内で神経
成長因子を添加した実施例1と同様の培養液で培養神経
細胞であるマウスDRG細胞を播種した。5%CO2を含む湿
潤空気(95〜100%RH)中で37℃で48時間培
養したところ、ポリ−L−リジンが表出した領域に沿っ
てマウスDRG細胞が樹状突起を伸長させている様子が観
察された。なお、細胞の大きさは8μmであった。
【0101】実施例11 (インスリン基板)図8に示すようにPETフィルムのベ
ース11上に細胞培養制御用物質12であるインスリン
が配置された培養制御用培養基体1を作製した。インク
ジェットプリンターのインクカートリッジを精製水で洗
浄後、細胞非接着物質42である撥水処理剤ユニダイン
TG991(ダイキン工業社製)を30wt%に精製水で
希釈した溶液を充填した。インクジェットプリンターか
ら、インクカートリッジと接続されたインクジェットヘ
ッド13と制御基板を取り出し、コンピューター制御で
インクジェットヘッドのノズルから吐出する液滴を制御
し、更に、ベース11上で所望の位置にインクジェット
ヘッドを配置できるようにした。PETフィルムはステー
ジ上に固定し、インクジェットヘッドの吐出口下部に配
置した。このようにしてPETフィルム上に細胞非接着物
質42のパターンを形成した。
【0102】続いてインスリンはベース11上に固定化
するため、以下の方法により、官能基を導入した。50mm
olのジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のテトラ
ヒドロフラン(THF)溶液をN-ヒドロキシスクシンイミ
ド50mmolと4-アジドベンゼンカルボン酸45mmolのTHF溶
液に滴下し、4℃で24時間攪拌しながら反応させた。反
応生成物を減圧乾燥後、イソプロパノール/ジイソプロ
パノール溶液中で再結晶化し精製した。続いてこの反応
生成物をジメチルフォルムアミドで溶解し、リン酸等張
緩衝液(pH7.0)中に溶解してインスリンを少量ずつ滴
下していった。4℃で、48時間攪拌し、インスリンに
アジド基を導入した。
【0103】インクカートリッジを精製水で洗浄した
後、1%官能基が導入されたインスリンを含む下記リン
酸等張緩衝液(pH7.0)を充填した。
【0104】
【表2】
【0105】前記方法と同様にして、細胞非接着物質4
2のパターンが形成されたPETフィルムの基板11上に
細胞培養制御用物質12であるインスリン溶液をインク
ジェットヘッド13から吐出した。基板を乾燥後、紫外
線照射ランプにより紫外線を照射し、PETフィルム上に
インスリンを固定化した。
【0106】作製した基板を観察したところ、撥水処理
剤のパターンに近接するようにインスリンのパターンが
形成され、そのパターン幅は7μmであった。
【0107】このような基板上で細胞培養を行った。作
製したインスリン基板をガラスシャーレ内で実施例1と
同様の培養液中に浸漬し、チャイニーズハムスター卵母
(CHO)細胞を播種した。5%CO2を含む湿潤空気(95
〜100%RH)中で37℃、48時間培養したとこ
ろ、インスリンパターンに沿って1列に並んだCHO細胞が
増殖している様子が観察された。なお、細胞の大きさは
8μmであった。
【0108】実施例12 (インターロイキン-1−フィブロネクチン基板)図5に
示すようにPETフィルムの基板11上にインターロイキ
ン-1、フィブロネクチンが固定化された培養制御用培養
基板1を作製した。
【0109】まず、細胞培養制御用物質12であるイン
ターロイキン-1、フィブロネクチンそれぞれに実施例1
1と同様の方法で固定化のための官能基を導入した。官
能基導入後のインターロイキン-1、フィブロネクチンを
実施例11と同様に50%エタノール水溶液で50μg/ml
に希釈して、それぞれ、予めリン酸等張緩衝液で洗浄
し、別々のインクカートリッジに充填して、インクジェ
ットプリンターを用いてベース11上にインクジェット
ヘッド13から吐出した(図5では、簡略化のため細胞
培養制御用物質12であるインターロイキン-1とフィブ
ロネクチンを同じ記号を用いて表示している)。PETフ
ィルムの基板11上で液滴乾燥後、実施例11と同様に
して紫外線を照射し、ベース11上に細胞培養制御用物
質12であるインターロイキン-1、フィブロネクチンを
固定化した。続いて、インクジェットプリンターのイン
クカートリッジに実施例10で用いた、細胞非接着物質
42であるポリアクリル酸溶液を充填し、すでに形成さ
れているインターロイキン-1、フィブロネクチンパター
ンの表出する領域の幅が8μmとなるように、ポリアクリ
ル酸溶液を吐出した。以上のようにして培養制御用培養
基板1のインターロイキン-1、フィブロネクチン基板を
作製した。この基板では、インターロイキン-1、フィブ
ロネクチンが固定化されている領域の一部を覆うように
してポリアクリル酸の皮膜が形成されている。
【0110】このような培養制御用培養基板1上で細胞
培養を行った。作製したインターロイキン-1−フィブロ
ネクチン基板をガラスシャーレ内で実施例9と同様の培
養液中に浸漬し、マウス血管内皮細胞を播種した。5%
CO2を含む湿潤空気(95〜100%RH)中で37℃、
48時間培養したところ、インターロイキン-1−フィブ
ロネクチンパターンに沿って1列に並んでマウス血管内
皮細胞が増殖している様子が観察された。なお、細胞の
大きさは8μmであった。
【0111】実施例13 (基板上の領域が壁状構造物で囲まれている基板)図6
に示すようにして、細胞の培養制御用基板1を作製し
た。
【0112】上皮細胞成長因子(EGF)には実施例6と
同様の方法により官能基を導入した。
【0113】また、ポリスルホンの基板11上にフォト
レジストOFPR−800(東京応化工業社製)を塗布し、フ
ォトリソグラフィ工程により、細胞非接着物質42から
なる壁状構造物を形成した。この時壁状構造物の高さを
1ミクロンとし、壁状構造物で囲まれた領域の幅を10ミ
クロンとした。
【0114】続いて基板11上の壁状構造物により囲ま
れている領域に、アジド基が導入されたEGF溶液をイン
クジェットプリンターを用いてインクジェットヘッド13
から吐出した。乾燥後、紫外線照射ランプを用いて20
0mJ/cm2照射した。未反応のEGFをリン酸等張緩衝液
により洗い流して細胞の培養制御用基板1を作製した。
【0115】この培養制御用基板1上でPC12細胞を培
養した。培養液には実施例9の培養液を用いた。この培
養制御用基板1上で培養するとPC12細胞は増殖せず、
パターンに沿って樹状突起を伸長して分化した。
【0116】実施例14 (基板上の領域が壁状構造物で囲まれている基板2)培
養制御用の基板1を図7に示す方法により作製した。上
皮細胞成長因子(EGF)には実施例6と同様の方法によ
り官能基を導入した。また、実施例13同様の方法でポ
リスルホン基板1上に細胞非接着物質14からなる壁状
構造物を形成した。続いてこの基板を反応槽中に入れ、
真空ポンプで槽内の圧力を10mPaとし、フッ素化炭化
水素ガスを導入し、壁状構造物の表面を撥水処理した。
【0117】続いて基板11上の壁状構造物により囲ま
れている領域に、細胞培養制御用物質12であるアジド
基が導入されたEGFを含む溶液をインクジェットプリン
ターにより吐出した。乾燥後、紫外線照射ランプを用い
て200mJ/cm2照射した。未反応のEGFをリン酸等張
緩衝液により洗い流して細胞の培養制御用基板1を作製
した。
【0118】本実施例では撥水処理を行うことにより、
確実にインクジェットプリンターにより吐出された液滴
が壁状構造物により囲まれている領域に配置されるよう
になった。
【0119】この培養制御用基体1上でPC12細胞を培
養した。培養液には実施例1の培養液を用いた。この基
体上で培養するとPC12細胞は増殖せず、パターンに沿
って樹状突起を伸長して分化した。
【0120】実施例15 (培養中に化合物を添加する培養法)実施例10と同様
の基板を用い、PC12細胞を実施例9と同様の培養液中で
2つのシャーレ中で培養した。培養開始48時間後、一
方のシャーレAの培養液に神経成長因子(NGF)を添加
し、もう一方のシャーレBの培養液にはEGFを添加した。
その結果、シャーレAではパターンに沿って樹状突起を
伸長していった。また、シャーレBではパターン沿ってP
C12細胞が増殖を開始した。
【0121】実施例16 (細胞群を基板から取り外す工程を含む培養法)ポリス
チレン基板上にポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)
ゲルの層をキャスト法により形成した。この基板上に実
施例11の方法でアジド基を導入したインスリンを固定
化し、培養基板を作製した。この基板上でマウス筋細胞
C2C12を実施例9と同様の培地中で培養した。インスリ
ンが固定化されたパターンに従ってC2C12細胞が増殖し
ていった。48時間培養の後、培養基板を30℃に冷やす
ことにより、アクリルアミドゲル層の基板上への接着性
が低下し、1列に並んだ細胞群が基板上から培養液中に
浮遊してきた。この浮遊してきた細胞群を取り出し、細
胞群の両端からパルス電位を印加すると細胞群は収縮し
た。
【0122】また、細胞を取り外した基板上で例えば3
7℃程度の温度で再度細胞を培養したところ、インスリ
ンが固定化されているアクリルアミドゲルの層がベース
に再び形成され、マウス筋細胞の増殖が確認された。
【0123】
【発明の効果】本発明にかかる細胞培養用基体は、細胞
培養制御用物質を簡易な工程で確実に所望の位置に固定
化でき、細胞の接着、増殖及び分化の少なくとも一つを
制御しながら細胞を培養することができる。また、本発
明にかかる細胞培養法によれば、1枚の基体上で種々の
細胞を培養することや、様々な物質による環境下で細胞
を培養することが可能となる。また、本発明にかかる細
胞の培養制御用の基体は、ベース上に配置された細胞培
養制御用物質により、ここの細胞の接着性や配向を制御
しながら、細胞の増殖、分化させることができ、生体内
と近い環境下での細胞培養が可能で、特に生体内組織と
ほぼ同等の機能を有する組織を生体外で作製する際に有
効である。
【0124】更に、本発明にかかる細胞培養法により、
1枚の基板で種々の細胞を培養することや、様々な物質
による環境の元で種々の細胞を培養することが可能であ
る。更にまた、細胞培養制御用物質をベースに固定化す
ることで、細胞に対して刺激を継続的に与えることがで
きる為、細胞の増殖や分化を促進することができ、生体
が有する細胞の組織と同様の構造を有する細胞の構造体
を基板上にて形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る細胞培養用基体
の1例の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施態様に係る細胞培養用基体
の製造方法の一具体例を示す工程図である。
【図3】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養用基体
の製造方法の一具体例を示す工程図である。
【図4】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養基体の
製造方法の他の具体例を示す工程図である。
【図5】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養基体の
製造方法の他の具体例を示す工程図である。
【図6】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養基体の
製造方法の他の具体例を示す工程図である。
【図7】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養基体の
製造方法の他の具体例を示す工程図である。
【図8】本発明の第2の実施態様に係る細胞培養基体の
製造方法の更に他の具体例を示す工程図である。
【図9】本発明に係る細胞培養装置の概略図である。
【図10】図9に記載の細胞培養装置内の細胞培養用基
体の収納室及び製造室の内部の一例を示す断面図であ
る。
【符号の説明】
1 細胞培養用基体 11 ベース 12 細胞培養制御用物質 13 微小液滴吐出手段 15 紫外線(UV)照射ランプ 22、41 液滴 42 細胞非接着物質 61 フォトレジスト層 62 凸部 71 撥水処理部 901 収納室 902 製造室 903 培養室 904 チャンバー 1003 ストッカー 1005 搬送機 1007、1019 ベルトコンベアー 1009 トレー 1011 補助ローラ 1013 ポンプ 1015 UV/O3ランプ 1017 送りモータ 1021 送りローラ1021
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 耕平 東京都調布市深大寺元町4−14−3 Fターム(参考) 4B029 AA08 AA21 BB11 CC03 CC08 GA01 GA03 GB10 4B065 AA91X BB34 BC41

Claims (41)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞の接着、増殖、分化、生存、未分化
    状態の維持及び細胞死の少なくとも一つの機能に関与し
    ている細胞培養制御用物質を含む液体を微小液滴吐出手
    段によって該基体に付与し、該基体に該細胞制御用物質
    を固定化せしめることによって形成されてなる該細胞培
    養制御用物質の固定化領域を有することを特徴とする細
    胞培養用の基体。
  2. 【請求項2】 2種類以上の細胞培養制御用物質が前記
    固定化領域に含まれている請求項1記載の基体。
  3. 【請求項3】 前記基体が、第1の固定化領域と、該第
    1の固定領域とは離間した第2の固定化領域とを有して
    いる請求項1または2に記載の基体。
  4. 【請求項4】 前記第1の固定化領域と第2の固定化領
    域とが、各々異なる細胞培養制御用物質を有している請
    求項3記載の基体。
  5. 【請求項5】 前記第1の固定化領域が複数の細胞培養
    制御物質を含み、前記第2の固定化領域が、複数の細胞
    培養制御物質を含み、該第1及び第2の固定化領域が含
    んでいる複数の細胞培養制御物質の組合せが異なってい
    る請求項3記載の基体。
  6. 【請求項6】 前記第1及び第2の固定化領域が、異な
    る密度で細胞培養制御用物質を含んでいる請求項3記載
    の基体。
  7. 【請求項7】 前記固定領域が前記基板の表面に形成さ
    れた凹部内に形成されている請求項1〜6のいずれかに
    記載の基体。
  8. 【請求項8】 前記固定領域が壁状構造物により囲まれ
    ている請求項1〜7のいずれかに記載の基体。
  9. 【請求項9】 前記細胞培養制御用物質が前記基体表面
    に共有結合により結合して固定されている請求項1〜8
    のいずれかに記載の基体。
  10. 【請求項10】 前記細胞培養制御用物質が前記基体表
    面に静電的に結合して固定されている請求項1〜8のい
    ずれかに記載の基体。
  11. 【請求項11】 前記細胞培養制御用物質が、前記基体
    表面に生物学的親和力を介して結合して固定されている
    請求項1〜8のいずれかに記載の基体。
  12. 【請求項12】 前記固定化領域が、帯状もしくはドッ
    ト状のパターンであり、該パターの幅が、培養しようと
    する細胞の幅と同等もしくは小さいことを特徴とする請
    求項1〜11の何れかに記載の基体。
  13. 【請求項13】 前記固定化領域が含む細胞培養制御用
    物質が、細胞の増殖及び分化の少なくとも一つの機能に
    影響を与えるものである請求項12に記載の基体。
  14. 【請求項14】 (i)細胞の接着、増殖、分化、生
    存、未分化状態の維持及び細胞死の少なくとも一つの機
    能に関与している細胞培養制御用物質を含む液体を微小
    液滴吐出手段により基体上の所定領域に付与する工程
    と、(ii)前記工程(i)で基体上に付与された該液
    体中の細胞培養制御用物質を該基体に固定する工程と、
    を有することを特徴とする細胞培養用の基体の製造方
    法。
  15. 【請求項15】 前記工程(i)が、サーマルインクジ
    ェット法によって該液体を基体に付与する工程を含む請
    求項14に記載の製造方法。
  16. 【請求項16】 前記工程(i)が、ピエゾインクジェ
    ット法によって該液体を基体に付与する工程を含む請求
    項14に記載の製造方法。
  17. 【請求項17】 前記細胞培養制御用物質及び前記基体
    の少なくも一方が、固定用の官能基あるいは化合物を有
    している請求項13〜15のいずれかに記載の製造方
    法。
  18. 【請求項18】 前記工程(ii)が、該基体に対して
    エネルギーを付与する工程を含む請求項13〜16のい
    ずれかに記載の製造方法。
  19. 【請求項19】 微小液滴吐出手段によって、細胞の接
    着、増殖、分化、生存、未分化状態の維持及び細胞死の
    少なくとも一つの機能に関与している細胞培養制御用物
    質が、基体上に帯状又はドット状のパターンに配置され
    ている細胞培養用の基体であって、該細胞培養制御用物
    質の該パターンの幅が、培養しようとする細胞の大きさ
    と同等かそれ以下であることを特徴とする細胞培養制御
    用の基体。
  20. 【請求項20】 前記パターンが、基体上に形成されて
    なる細胞培養制御用物質の上に細胞非接着物質を配置し
    て形成されているものである請求項19に記載の基体。
  21. 【請求項21】 前記パターンに近接して、細胞非接着
    物質が配置されている請求項19に記載の基体。
  22. 【請求項22】 前記細胞培養制御用物質の配置領域の
    一部を覆うように細胞非接着物質の配置領域が形成され
    該培養培養制御用物質の表出している部分が前記パター
    ンを成している請求項19に記載の基体。
  23. 【請求項23】 前記パターンを複数有する請求項19
    〜22のいずれかに記載の基体。
  24. 【請求項24】 前記複数のパターンが細胞非接着物質
    で形成された凸部によって離間されている請求項23に
    記載の基体。
  25. 【請求項25】 前記パターンが2種以上の細胞培養制
    御用物質を含んでいる請求項19に記載の基体。
  26. 【請求項26】 前記複数のパターンが、異なる細胞培
    養制御物質、または異なる細胞培養制御物質の組合せを
    含む請求項23に記載の基体。
  27. 【請求項27】 細胞の接着、増殖、分化、生存、未分
    化状態の維持及び細胞死から選ばれる少なくとも1つの
    機能に関与している細胞培養制御用物質を含む液体を基
    体に付与し、帯状もしくはドット状のパターンに該細胞
    培養制御用物質を配置する工程を有する細胞培養用の基
    体の製造方法であって、該パターンが該細胞の幅と同等
    もしくはそれ以下であることを特徴とする細胞培養用の
    基体の製造方法。
  28. 【請求項28】 (i)細胞の接着、増殖、分化、生
    存、未分化状態の維持及び細胞死から選ばれる少なくと
    も一つの機能に関与している細胞培養制御用物質を基体
    に配置する工程と、(ii)該細胞培養制御用物質の配
    置領域上の所定部に細胞非接着物質を微小液滴吐出手段
    により付与して、該細胞非接着物質が配置されてない部
    分により前記パターンを形成する工程と、を有すること
    を特徴とする細胞培養制御用の基体の製造方法。
  29. 【請求項29】 前記工程(i)において、該細胞培養
    制御用物質を基体全体に付与する工程を含む請求項28
    に記載の細胞培養制御用の基体の製造方法。
  30. 【請求項30】 細胞非接着物質で基体上に凸部を形成
    する工程と、該細胞培養制御用物質を該凸部により囲わ
    れた部分に配置する工程とを含む請求項27に記載の製
    造方法。
  31. 【請求項31】 前記凸部に撥水処理を施した後、前記
    細胞培養制御用物質を該凸部により囲われた部分に配置
    する工程を含む請求項30記載の細胞の培養制御用の基
    板の製造方法。
  32. 【請求項32】 請求項1〜13及び19〜26の何れ
    かに記載の細胞培養用基体が担持している細胞培養制御
    用物質が培養液と接触するようにして細胞培養を行う工
    程を有することを特徴とする細胞培養方法。
  33. 【請求項33】 該工程が、前記培養液中に前記細胞の
    培養に必要な物質を補充する工程を含む請求項32に記
    載の細胞培養方法。
  34. 【請求項34】 前記基体の少なくとも細胞培養制御用
    物質が固定された領域が、前記培養液の所定の流れに中
    に位置している請求項32又は33に記載の細胞培養方
    法。
  35. 【請求項35】 更に、細胞培養の結果として該基体
    の、細胞培養制御用物質が固定された領域に付着した細
    胞を基体から回収する工程を有する請求項32〜34の
    何れかに記載の細胞培養方法。
  36. 【請求項36】 細胞の接着、増殖、分化、生存及び未
    分化状態の維持の少なくとも1つの機能に関与している
    細胞培養制御用物質が、微小液滴吐出手段により、互い
    に離間した複数のスポットとして基体表面に付与され、
    固定化されている細胞培養用の基体の、該細胞培養制御
    用物質を含んでいる複数のスポットのうちの少なくとも
    1つにおいて細胞が付着していることを特徴とする細胞
    培養用の基体。
  37. 【請求項37】 制御された細胞の増殖もしくは分化に
    用いられる細胞培養用の基体であって、を制御細胞の増
    殖及び分化の少なくとも一方の機能に関与している細胞
    培養制御用物質が、微小液滴吐出手段により、互いに離
    間した帯状もしくはドット状のパターンとして付与され
    てなり、該パターンの幅は、該細胞のそれと同等もしく
    はそれ以下であることを特徴とする細胞培養用の基体。
  38. 【請求項38】 請求項1〜13及び19〜26の何れ
    かに記載の細胞培養用基体が担持している細胞培養制御
    用物質に培養液が接触する状態で細胞を培養する手段を
    具備していることを特徴とする細胞培養装置。
  39. 【請求項39】 更に該細胞培養用基体の製造手段を具
    備している請求項38に記載の細胞培養装置。
  40. 【請求項40】 該細胞培養用基体の製造手段が、基体
    収納部と該細胞培養制御用物質を含む液体を吐出する微
    小液滴吐出装置とを備えている請求項39に記載の細胞
    培養装置。
  41. 【請求項41】 該細胞培養用基体の製造手段が、基体
    に付与された細胞制御用物質を基体に固定化する手段を
    更に備えている請求項40に記載の細胞培養装置。
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