JP2002348611A - 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法Info
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Abstract
安定的に製造する。 【解決手段】 Alを所定量含有する一方向性電磁鋼板
用のスラブを、1200℃以上の温度で加熱した後熱間
圧延して熱延板とし、次いで、これに焼鈍を施すかもし
くは施さず、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷
間圧延をし、その後、脱炭焼鈍、次いで、焼鈍分離剤を
塗布し、仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法に
おいて、前記スラブの成分で硼素を窒素当量以上とし、
窒化アルミニウム,硫化マンガン,セレン化マンガン,
硫化銅の完全溶体化温度よりも高温でスラブ加熱を行
い、更に、脱炭焼鈍後、仕上焼鈍の二次再結晶開始まで
の間に、鋼板に窒化処理を施す。
Description
鉄芯として使用する一方向性電磁鋼板の製造方法に関す
るものである。
の磁束密度)が1.9Tを超える、優れた磁気特性を有
する一方向性電磁鋼板を安定的に生産する技術は種々提
案されているが、これらは、概ね次の三つに分類でき
る。第一の技術は、スラブを1350℃から最高では1
450℃の超高温度に加熱し、かつ、スラブ全体を通し
て一様に加熱(均熱)するために、十分な時間、スラブ
をその加熱温度に保持する方法である。この方法は、M
nS、AlN等のインヒビター能力を有する物質を完全
溶体化させて、二次再結晶に必要なインヒビターとして
機能させるためのものであり、この完全溶体化の処理
は、同時に、スラブ部位によるインヒビターの強度差を
解消する手段にもなっているから、この点で、上記方法
は、安定した生産を実現する上で理にかなっている。
ター能力を有する物質を完全溶体化するのに必要な加熱
温度、すなわち、完全溶体化温度は超高温度となり、実
生産においては、二次再結晶に必要なインヒビター量を
確保するため、完全溶体化温度(超高温度)以上の温度
で加熱することになるが故、実生産上様々な問題を包含
している。
延温度を確保することが困難となり、該温度を確保でき
ない場合には、インヒビター強度のスラブ内偏差が生
じ、そのため二次再結晶不良が発生する、2)熱延加熱
時に粗大粒が生成し、その粗大粒部分が二次再結晶でき
ず、線状の二次再結晶不良が発生する、3)スラブ表層
が溶融しノロとなり加熱炉のメンテナンスに多大の労力
が必要となる、4)熱延後の鋼帯に巨大なエッジクラッ
クが発生し歩留まりが低下する、等の問題が発生する。
68817号公報などに開示されているような、上記の
方法をベースにして、一次再結晶後に窒化処理を行い二
次再結晶を安定化させようとする方法が知られている
が、この方法によって解決され得る問題は、前記1)の
問題のみであり、依然として、実生産上での2)〜4)
の問題解決には困難性が残っている。
公報、特開平5−112827号公報、特開平9−11
8964号公報などに開示されているように、AlNを
インヒビターとして用い、スラブ加熱を1280℃未満
で行い、脱炭焼鈍後二次再結晶開始までに窒化処理する
方法を組み合わせるものである。このような方法におい
ては、例えば、特開平2−182866号公報に示され
るように、脱炭焼鈍後の一次再結晶粒の平均粒径を一定
範囲に、通常、18〜35μmの範囲に制御すること
が、二次再結晶を良好に行わせる上で非常に重要であ
る。
は、熱延加熱時の固溶窒素などの、インヒビター能力を
有する物質の鋼中固溶量が一次再結晶の粒成長性を決定
づけるため、スラブ内一次再結晶粒の大きさを均一にす
るよう、熱延加熱時の固溶窒素などを低く抑えるべく成
分調整などを行う方法が開示されている。しかしなが
ら、この方法では、いかに厳密に成分を調整しても、固
溶窒素量などのスラブ内における偏差は存在し、スラブ
内におけるインヒビター能力差、つまり、スラブ内にお
ける一次再結晶粒径の差を厳密に消失させることは不可
能である。そして、結果として、二次再結晶をスラブ内
で均一化することが困難となる場合があるという問題を
有しており、上記方法は工業的に極めて安定した製造法
とはいえないものである。
公報等に開示されているように、インヒビターとしてC
uxS(x=1.8、又は2)を用い、スラブ加熱温度
をCuxSの完全溶体化温度以上MnSの完全溶体化温
度以下とする方法である。この方法の特徴は、スラブ加
熱温度を低温化した上で、第二の技術で採用する窒化処
理などの付加的な工程を不要とすることにある。
度をMnSの完全溶体化温度以下とすることから、前記
の第二の技術が抱える問題と同様の問題を有しており、
やはり工業的に極めて安定した製造法ではない。また、
そもそも、CuxSは、二次再結晶を制御するためのイ
ンヒビターとして公知であるものの、特に、最終冷延率
が80%を超える高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造に
は適していない(「鉄と鋼」p.2049,N0.1
5,Vol.70,N0.1984)。
22号公報や特開昭51−145422号等において、
B添加による方法が開示されている。BのN親和力がA
lよりも強いので、AlNよりも高温まで安定なインヒ
ビターとしてBNを活用したものと考えられるが、二次
再結晶を工業的に安定化させる量の確保が困難であった
らしく、現在、この方法で工業生産は行われていない。
性を持つ二次再結晶を実現させ得るか否かは、主に、一
次再結晶粒径と、二次再結晶を制御する二次インヒビタ
ーとによって決定されるが、例えば、前記第一の技術に
おける一次再結晶粒径が約10μmであるのに対して、
前記第二の技術におけるそれは18〜35μmであると
いうように、それぞれの一次再結晶粒径が大きく異なる
にもかかわらず、何れの方法でも良好な二次再結晶を実
現せしめることが可能であることは、Goss方位
({110}<001>方位)の良く揃った二次再結晶
を実現させるために必要な一次再結晶粒径と二次インヒ
ビターの組み合わせが、必ずしも一意的でないことを示
している。
何なる値でも、二次インヒビターを調整することで、G
oss方位の良く揃った二次再結晶を実現することが可
能であるという発想のもとで、研究を重ねてきた。そし
て、本発明者らは、上記発想のもとで、安定した生産方
法を確立するという観点から、一方向性電磁鋼板の製造
に欠かせないインヒビターについて、その機能を発揮す
る段階によって、一次再結晶粒径を制御する一次インヒ
ビターと、二次再結晶粒径を制御する二次インヒビター
とに分類し、優れた磁気特性を持つ一方向性電磁鋼板の
製造に関して検討した。
再結晶を実現させるために必要な一次再結晶粒径と二次
インヒビターの組み合わせは一意的でないといえども、
例えば、一次結晶粒径がスラブ(コイル)全体に渡って
変動する場合、スラブ部位毎に二次インヒビター強度を
適正にコントロールしなければ、良好な二次再結晶方位
は得られない。それ故、一次再結晶粒径、二次再結晶粒
径ともに、スラブ全体に渡って変動がない製造法が、安
定的な製造法となる。
強度と一次再結晶を行う脱炭焼鈍の温度によって決定さ
れるため、一次インヒビター強度もスラブ全体に亘って
変動がないことが望まれる。すなわち、安定した生産方
法を確立するという観点からは、一次インヒビターと二
次インヒビターを、ともに、如何にスラブ全体に渡って
変動なく造り込むかということが最大の問題となる。
それぞれ以下の問題を抱えている。第一の技術では、イ
ンヒビターの完全溶体化温度以上で、かつ、二次再結晶
の不安定化を招く熱延加熱時の粗大粒形成温度以下とい
う、極めて狭い温度範囲でスラブを加熱する必要があ
り、二次再結晶に必要なインヒビター強度の確保と工業
的に安定した品質の確保の両立が非常に困難である。
二次再結晶までの間に窒化処理することで二次インヒビ
ター強度の確保は容易であるが、一次インヒビター強度
の均一性という点でみると、有限量の固溶窒素などがス
ラブ(コイル)内で偏在し、これが一次再結晶粒径の変
動をもたらす。また、この場合、一次インヒビターは、
二次インヒビターとしても作用するため、スラブ(コイ
ル)全体に亘る一次インヒビターの変動は、二次インヒ
ビターの変動にも繋がる。
化処理を施さず、また、熱延後にAlNを60%以上析
出させる製造法であることから、第二の技術と同様、一
次インヒビターのスラブ(コイル)内における均一化の
点で不利であり、途中工程でインヒビター強化処理を施
さないので、二次インヒビターは一次インヒビターから
変化しておらず、二次インヒビターがスラブ部位毎で変
動し、結局、工業的に安定した品質を確保することが困
難である。更に、前述したように、CuxSは二次再結
晶を制御するためのインヒビターとして公知であるもの
の、特に、最終冷延率80%を超える高磁束密度一方向
性電磁鋼板の製造には適していない。
発明されたもので、二次再結晶をより一層完全ならし
め、優れた磁気特性を持つ一方向性電磁鋼板を極めて安
定して製造することができる方法を提供することを目的
としている。
するためになされたもので、その要旨は以下のとおりで
ある。 (1) Alを含有する一方向性電磁鋼板用のスラブ
を、1200℃以上の温度で加熱した後熱間圧延して熱
延板とし、次いで、これに焼鈍を施すかもしくは施こさ
ず、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を
し、その後、脱炭焼鈍、次いで、焼鈍分離剤を塗布し、
仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法において、
前記スラブが、質量%で、C:0.025〜0.10
%、Si:2.5〜4.0%、酸可溶性Al(solA
l):0.01〜0.10%、N:0.0054%以
下、Mn:0.02〜0.20%、Seq=S+0.4
06×Se:0.003〜0.05%、B:0.000
5〜0.0070%を含有し、残部がFe及び不可避的
不純物からなり、[ ]が[ ]内の成分元素の質量%
を表すとして、 [B]≧0.771×[N] を満足する関係を満たし、かつ、該スラブの加熱を、下
記式、 T1=10062/(2.72−log([solA
l]×[N]))−273、 T2=14855/(6.82−log([Mn]×
[S]))−273、 及び、 T3=10733/(4.08−log([Mn]×
[Se]))−273、 で定義するT1(℃)、T2(℃)及びT3(℃)の中
の最大の温度よりも高いスラブ加熱温度Ts(℃)で行
い、更に、脱炭焼鈍後、仕上焼鈍の二次再結晶開始まで
の間に、鋼板に窒化処理を行うことを特徴とする磁気特
性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
Cu:0.01〜0.30%を含有し、かつ、該スラブ
の加熱を、下記式(式中[ ]は、[ ]内の成分元素
の質量%)、 T4=43091/(25.09−log([Cu]×
[Cu]×[S]))−273 で定義するT4(℃)及びT1(℃)、T2(℃)T3
(℃)の中の最大の温度よりも高いスラブ加熱温度Ts
(℃)で行うことを特徴とする(1)に記載の磁気特性
の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
以下の温度で行うことを特徴とする(1)または(2)
に記載の磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方
法。 (4) 前記脱炭焼鈍完了後の一次再結晶粒の平均粒径
を7μm以上18μm未満とすることを特徴とする、
(1)〜(3)のいずれかの項に記載の磁気特性に優れ
た一方向性電磁鋼板の製造方法。
ンヒビター能力を有する物質を完全溶体化することが、
スラブ(コイル)内で一次インヒビターを極限まで均一
化する最適の方法であるとの出発点に立ち、インヒビタ
ー能力を有する物質のスラブ内濃度を従来法より低くす
ると、完全溶体化温度が下がることに着目した。熱延加
熱時にインヒビターの完全溶体化を図る技術としては、
前記第一の技術があるが、この技術においてインヒビタ
ー能力を有する物質のスラブ内濃度を低くすると、イン
ヒビター強度低下のため、二次再結晶を不安定化するこ
とになり、安定的な工業生産技術として成立しなかっ
た。
までの間で窒化処理を施すことにより、前記の二次再結
晶不安定性を回避できるという信念の元、研究・実験を
重ねた結果、スラブ成分としてBをN当量以上含有する
ことによって、スラブ全体に渡る一次インヒビター強度
の均一化、AlN以上に高温までインヒビター効果を発
揮する二次インヒビターの導入が可能であることを見出
した。
上含有させることによって、まず、一次インヒビター強
度のスラブ(コイル)内変動に関しては、熱間圧延時A
lNが不均一に析出することが原因であったが、Alよ
りもN親和力の強いBをN当量以上に含有させること
で、AlNになりうる固溶Nを最小限に抑えることが可
能となる。更に、上工程(熱延)から存在するBNは、
AlNより高温まで安定なので、二次インヒビターとし
て高温まで強力に機能させることが出来ることを突き止
めたのである。
ーについては、熱延工程におけるインヒビターの均一化
において、窒化物インヒビターほどの影響を与えないこ
とも判明し、一次インヒビターとして、主に硫化物や、
セレン化物のインヒビターを用いることが有効であるこ
とも判った。この窒化物インヒビターと、硫化物や、セ
レン化物のインヒビターの作用効果における相違の原因
は定かでないが、AlNの溶解度が、α相とγ相で大き
く異なることに起因し、熱間圧延中に、母相がAlNの
溶解し易いγ相から、溶解し難いα相へ転移する際、A
lNが不均一に析出することが原因と考えられる。BN
に関してもAlNと同様、α相γ相での溶解度差が存在
すると考えられるが、BのN親和力がAlよりも大きい
ことに起因してBNの析出はAlNより高温から始まる
ために、特に部位による温度差が大きくなる熱延後期に
達する前に析出してしまい、部位による析出均一性に関
してAlN程の悪影響を及ぼさないと考えている。
の低減)によって、スラブ(コイル)部位間における一
次インヒビター能力(強度)の差を、極めて低減するこ
とができるが、一方、二次再結晶において優れた磁気特
性を持つ先鋭化されたGoss方位を得るためには、硫
化物や、セレン化物に加えて、高温まで安定なインヒビ
ターが必要であり、本発明では、BNに加え、窒化処理
によりAlNを形成することで確保する。
ヒビター能力を有する物質の濃度を従来法より低くする
ことで、インヒビターの完全溶体化温度を下げ、かつ、
スラブ加熱温度をその温度より高くすることで、スラブ
部位によらずに一次インヒビター強度を均一化せしめ、
インヒビター成分濃度を下げたことに起因する二次イン
ヒビターの強度不足を、脱炭焼鈍後、仕上焼鈍中二次再
結晶開始までの間に窒化処理を施すことにより、窒化物
(AlN、Si3N4、MnN等の単独または複合析出
物)を形成し、インヒビターとして機能させて補償する
ことで、磁気特性の良好な一方向性電磁鋼板の安定的な
製造を可能にするものである。
板の製造において大きな役割を有するインヒビターにつ
いて、その機能発揮段階を冶金的に分離し、機能発揮段
階毎に、それぞれ異なる物質を用いてその機能を発現さ
せることにより極めて安定な製造法を提供することにあ
る。また、一方向性電磁鋼板の製造において一次再結晶
が行われる脱炭焼鈍の温度は、一般に、930℃以下と
低いので、この段階では、従来法の高温熱間圧延で形成
するような強力なインヒビターは必要がない。本発明で
は、この一次インヒビターとして、主に硫化物や、セレ
ン化物を用いるので、一次再結晶粒成長の温度依存性が
極めて小さく、一次再結晶焼鈍(実際には脱炭焼鈍)温
度を大きく変える必要がない。この結果、一次酸化層の
構成組成及び引き続く窒化処理における窒化量が著しく
安定し、一次皮膜欠陥を激減させる効果も得られる。
限定理由について述べる。Cは、0.025%より少な
いと一次再結晶集合組織が適切でなくなり、0.10%
を超えると、脱炭が困難になり工業生産に適さない。S
iは、2.5%より少ないと良好な鉄損が得られず、
4.0%を超えると冷間圧延が極めて困難となり工業生
産に適さない。
てAlNを形成し、主に二次インヒビターとして機能す
る。このAlNは、窒化前に形成されるものと、窒化後
高温焼鈍時に形成されるものの両方があり、この両方の
AlN量を確保するため、0.01〜0.10%必要で
ある。0.01%未満の場合は、二次インヒビターとし
ての働きが不充分となり、良好なGoss方位を持つ二
次再結晶粒を安定的に得ることができず、また、0.1
0%を超える場合には、後工程で必要とする窒化量が増
大し、被膜に甚大なダメージを与える。
の不均一析出の原因となるので、上限を0.0054%
とした。より好ましくは、0.0030%以下である。
S及びSeは、Mn、Cuと結合して、主に、一次イン
ヒビターとして作用する。S及びSeの含有量は、Se
q=S+0.406×Seで限定するが、Seqが0.
05%を超えると、最終仕上焼鈍で純化するのに要する
時間が長くなりすぎて好ましくない。また、0.003
%未満とすると、一次インヒビターとしての効果が弱く
なるので、下限を0.003%とする必要がある。
帯で割れが発生しやすく、歩留まりが低下する。一方、
0.20%を超えると、MnS、MnSeが多くなりす
ぎて、固溶の程度が場所により不均一となり、安定的な
生産が困難になるので、上限を0.2%とする。Bは、
0.0005%より少ない場合、BNとしてのインヒビ
ター効果が発揮されず、0.007%を越えると、窒化
によってインヒビターを形成させる際、必要とする窒化
量が多くなり過ぎ、このことに起因して、地鉄が露出し
た一次皮膜欠陥が多発する。更に、BをN当量(=0.
771×Nの質量%)以上にすることが本発明の主要な
ポイントの一つである。BはN親和力がAlよりも強
く、BをN当量以上含有させることで、特に熱延段階で
コイル位置による析出差を生ずるAlNの析出を一次再
結晶完了までの間、極限まで小さくすることが可能とな
る。更に、熱延に先立つスラブ加熱時にBNを完全固溶
させるべく、スラブ成分のB,N及びスラブ加熱温度を
調整することは、一次インヒビターの均一性を増すので
より有効に働く。
る本発明の条件で熱延すると、SやSeとともに微細な
析出物を形成し、一次インヒビター効果を発揮する。ま
た、この析出物はAlNの分散をより均一にする析出核
ともなり、二次インヒビターの役割も演じ、この効果が
二次再結晶を良好ならしめる。0.01%より少ないと
上記効果が減じ安定生産が難しくなり、0.30%を超
えると上記効果が飽和するとともに、熱延時に「カッパ
ーヘゲ」なる表面疵の原因になる。
各含有量については、それらのスラブ中成分濃度から求
められる、下記式で定義するT1(℃)〜T4(℃)の
うち一つでも1400℃以上になる場合は、これら成分
を完全固溶させるために、スラブ加熱温度Ts(℃)を
非常に高くする必要が生じ、好ましくないので、この観
点から、これら含有量相互の調整を図る必要がある。
([solAl]×[N]))−273 T2=14855/(6.82−log([Mn]×
[S]))−273 T3=10733/(4.08−log([Mn]×
[Se]))−273 T4=43091/(25.09−log([Cu]×
[Cu]×[S]))−273 ここで、式中[ ]は、[ ]内の成分元素の質量%を
表す。
ーとして、主に、硫化物や、セレン化物を用い、一次再
結晶粒を制御しており、スラブ成分におけるNは極力少
なくする必要があり、0.0050%以下が望ましい。
ただし、これだけでは、二次再結晶を制御するのに不充
分であるから、後で述べる窒化処理が必要となる。な
お、インヒビター形成成分としては、上記したAl、
N、S、Se、Mn、Cu、Bの他、Sn、Sb、P、
Cr、Mo、Cd、Ge、Te及びBiなども有利に適
合し、また、Niは、一次及び二次インヒビターとして
の析出物の均一分散に著しい効果があるので、それぞれ
を少量併せて含有させることもできる。
n、Sb、P及びCr:0.02〜0.3%、Mo及び
Cd:0.008〜0.3%、Ge、Te及びBi:
0.005〜0.1%、そして、Ni:0.03〜0.
3%であり、これらの各成分についても、単独使用及び
複合使用のいずれもが可能である。次に本発明における
製造工程に係る条件の限定理由について述べる。
については、例えば、特開平7−252532号公報で
は一次再結晶粒の平均粒径を18〜35μmとしている
が、本発明では、一次再結晶粒の平均粒径を7μm以上
18μm未満とすることで、磁気特性(特に鉄損)を更
に良好ならしめることができる。すなわち、一次再結晶
粒の粒径が小さければ、単位体積内に存在する一次再結
晶粒の数が増えることを意味する。更に、一次再結晶粒
の粒径が小さい場合、粒成長の観点から、一次再結晶の
段階で二次再結晶の核となるGoss方位粒の体積分率
が多くなる(“Materials Science Forum”Vol.204-20
6,Part2:pp:631)。
数は、例えば、一次再結晶粒の平均粒径が18〜35μ
mの場合に比べて、5倍程度も多くなるので、二次再結
晶粒径も相対的に小さくなり、この結果、著しい鉄損の
向上が得られる。また、一次再結晶粒の平均粒径が小さ
いと、二次再結晶の駆動力が大きくなり、最終仕上焼鈍
中、昇温段階の早い時期に(より低温で)二次再結晶を
開始させることができる。最終仕上焼鈍をコイル状で行
っている現状では、高温ほどコイル各点での温度差(温
度履歴差)が広がるので、上述の二次再結晶温度の低温
化によって、コイル各点での温度履歴がより均一な(コ
イル各点での昇温速度が一定な)温度領域で二次再結晶
させることができ、コイル部位間での不均一性が著しく
減少して磁気特性が極めて安定する。
満になると、その大きな粒成長駆動力のため、二次再結
晶温度が低くなりすぎるためと考えられるが、二次再結
晶粒方位のGoss方位からの分散が大きくなり、磁束
密度の低下を招く。脱炭焼鈍後二次再結晶開始前に鋼板
に窒化処理を施すことは、本発明では必須である。その
方法は、仕上焼鈍時の焼鈍分離剤に窒化物(CrN、M
nN等)を混合する方法や、脱炭焼鈍後にストリップを
走行させた状態下でアンモニアを含んだ雰囲気で窒化処
理する方法がある。どちらの方法を採用してもよいが、
後者の方法が工業的に安定している。
量)は、0.001〜0.03質量%に限定するが、
0.001%未満では二次再結晶が不安定となり、一
方、0.03%を超えると、地鉄が露出した一次皮膜欠
陥が多発する。好ましい窒素増量は、0.003〜0.
025%である。熱間圧延に先立つスラブ加熱温度は本
発明の重要な点である。スラブ加熱温度が1200℃未
満では本発明のキーポイントである一次インヒビターの
生成が十分に行われず、脱炭焼鈍温度に対する一次再結
晶粒径の変動が大きくなるなどの問題を引き起こす。
力を有する物質の完全溶体化温度よりも高くすることに
よって、スラブ部位毎での一次インヒビターの強度差を
極端に小さくすることができる。但し、スラブ加熱温度
を、インヒビターの完全溶体化温度の直上に設定する場
合は、インヒビターの溶体化のため、加熱温度に保定す
る必要時間が長くなるので、生産性の観点より、少なく
とも20℃程度以上は高く設定することが好ましい。な
お、1400℃を超える超高温度で加熱することは、工
業生産において非常な困難を伴うので避けるべきであ
る。
延が容易で熱延鋼帯の形状(クラウン)が優れ、スラブ
表層部の溶解、鉱滓化発生に係る実害が伴わない、12
00〜1350℃が好ましい。本発明の方法では、第一
に、公知の連続鋳造法により、初期の厚みが150mm
から300mm、好ましくは、200mmから250m
mのスラブを製造する。このスラブに替りに、初期の厚
みが約30mmから70mmのいわゆる薄いスラブであ
ってもよく、この場合は、熱間圧延鋼帯を製造する際、
中間厚みに粗加工をする必要がないという利点がある。
また、鋼帯鋳造により製造した、一層薄い初期厚みのス
ラブ又は鋼帯を用いて、本発明方法により一方向性電磁
鋼板を製造することも可能である。
熱方法には通常のガス加熱方法を用いてよいが、この方
法に加え、誘導加熱、直接通電加熱を用いることは、均
一に焼鈍する点で望ましく、これらの特別な加熱方法に
おいて、所要の形状を確保するため、分塊圧延を鋳込み
スラブに施しても何ら問題はない。また、加熱温度が1
300℃以上になる場合は、この分塊圧延により集合組
織の改善を施しC量を減じてもよい。これらは、従来技
術の範囲である。
%未満であると、一次再結晶集合組織中のGoss方位
粒において所望の方位集積度が得難いので、高磁束密度
の確保が難しくなる。一方、最終の冷延圧下率が95%
を超えると、一次再結晶集合組織中のGoss方位粒の
粒数が極端に少なくなり、二次再結晶が不安定になる。
鋼帯内の組織・インヒビター分散の不均一性を除去する
ために行われる。熱延鋼帯での焼鈍でもよいし、最終の
冷間圧延の前の焼鈍でもよい。すなわち、最終の冷間圧
延の前に、熱延時の温度履歴の差による不均一性を解消
するために、1回以上の焼鈍を行うことが望ましい。最
終の冷間圧延は常温で実施してもよいが、少なくとも1
パスを100〜300℃の温度で1分以上保つと、一次
再結晶集合組織が改善され磁気特性が極めて良好にな
る。
鋼成分と製造条件及び製品特性の結果を示す。熱延板焼
鈍は1100℃に50秒保持して冷却した。この板に、
酸洗、冷延を施した後、850℃で90〜150秒間脱
炭焼鈍した。この後、水素、窒素、アンモニアの混合ガ
ス中で、750℃30秒間保持する窒化焼鈍を行い、窒
化後の鋼板の全窒素量を200ppm前後に調整した。
次いで、MgO、TiO2を主成分とする焼鈍分離剤を
塗布し、1200℃まで15℃/時の昇温速度で加熱し
た後、1200℃で20時間の仕上焼鈍を行った。その
後、通常用いられる絶縁張力コーティングの塗布と平坦
化処理を行った。その結果を表2に示す。
インヒビター完全溶体化温度(T1〜T4の最大値)の
差、及び、BからN当量差し引いた量(=B−0.77
1×N)に対する、コイル内磁気特性の関係を抽出した
ものを図1に示す。本発明の成分組成に属するスラブか
ら、本発明の工程条件に従って製造した場合、製品コイ
ル全長に亘って優れた磁気特性が安定して得られている
ことが判る。
解消して、優れた磁気特性を有する一方向性電磁鋼板
を、工業的に生産することが可能となる。
温度の差、及び、BからN当量差し引いた量(=B−
0.771×N)に対する、磁気特性の関係を示す図。
Claims (4)
- 【請求項1】 Alを含有する一方向性電磁鋼板用のス
ラブを、1200℃以上の温度で加熱した後熱間圧延し
て熱延板とし、次いで、これに焼鈍を施すかもしくは施
こさず、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧
延をし、その後、脱炭焼鈍、次いで、焼鈍分離剤を塗布
し、仕上焼鈍を施す一方向性電磁鋼板の製造方法におい
て、前記スラブが、質量%で、 C:0.025〜0.10%、 Si:2.5〜4.0%、 酸可溶性Al(solAl):0.01〜0.10%、 N:0.0075%以下、 Mn:0.02〜0.20%、 Seq=S+0.406×Se:0.003〜0.05
%、 B:0.0005〜0.0100% を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
[ ]が[ ]内の成分元素の質量%を表すとして、 [B]≧0.771×[N] を満足する関係を満たし、かつ、該スラブの加熱を、下
記式(式中[ ]は、[]内の成分元素の質量%)、 T1=10062/(2.72−log([solA
l]×[N]))−273、 T2=14855/(6.82−log([Mn]×
[S]))−273、 及び、 T3=10733/(4.08−log([Mn]×
[Se]))−273、 で定義するT1(℃)、T2(℃)及びT3(℃)の中
で最大の温度よりも高いスラブ加熱温度Ts(℃)で行
い、更に、脱炭焼鈍後、仕上焼鈍の二次再結晶開始まで
の間に、鋼板に窒化処理を行うことを特徴とする磁気特
性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1に記載のスラブが、更に、質量
%で、Cu:0.01〜0.30%を含有し、かつ、該
スラブの加熱を、下記式(式中[ ]は、[]内の成分
元素の質量%)、 T4=43091/(25.09−log([Cu]×
[Cu]×[S]))−273 で定義するT4(℃)及びT1(℃)、T2(℃)T3
(℃)の中で最大の温度よりも高いスラブ加熱温度Ts
(℃)で行うことを特徴とする請求項1に記載の磁気特
性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 前記スラブの加熱を、1350℃以下の
温度で行うことを特徴とする請求項1または2に記載の
磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記脱炭焼鈍完了後の一次再結晶粒の平
均粒径を7μm以上18μm未満とすることを特徴とす
る、請求項1〜3項のいずれかの項に記載の磁気特性に
優れた一方向性電磁鋼板の製造方法。
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