JP2002341155A - 中空光ファイバ及びその製造方法 - Google Patents

中空光ファイバ及びその製造方法

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祐一 小町
Katsuo Aizawa
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属層の金属がフッ化カルシウムからなる誘
電体層に拡散するのを阻止でき、可変波長レーザの伝送
に対応でき、分光用プローブとして使用可能な中空光フ
ァイバを提供する。 【解決手段】 中空光ファイバ10は、中空コア部10
aに面する内周側誘電体層11と金属層13との間に中
間誘電体層12が介在されている。内周側誘電体層11
は、フッ化カルシウムで形成され、中間誘電体層12
は、フッ化イットリウムで形成されている。中空光ファ
イバ10は、酸溶解性のガラス管20(母材)の外周面
にフッ化カルシウムを蒸着し、その外周面にフッ化イッ
トリウムを蒸着し、更にその外周面に銀や金などの金属
層を蒸着し、その後上記ガラス管20を酸で溶解するこ
とによって形成される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、中空光ファイバ及
びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】医療や工業の分野で有用な波長2μm〜
十数μmの赤外光線を伝送する光ファイバとして、中空
光ファイバが注目されている。この種光ファイバは、コ
アが中空になり、クラッドが銀などの金属層で形成され
ている。金属層の内周には、伝送率を向上させるための
誘電体層が設けられる。誘電体として実用化されている
ものにヨウ化銀がある。研究が進められているものにゲ
ルマニウムや環状オレフィンポリマーがある。しかしな
がら、図3(a)〜(c)に示すように、これら列記し
た誘電体材料には、上記の赤外波長2μm〜十数μmの
範囲内に光の吸収(伝送損失)が極端に大きくなる吸収
ピークPが存在する。そのため、適用可能な波長が限定
され、可変波長レーザを使う分光分析などには不向きで
ある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、誘電体としてフ
ッ化カルシウムを用いれば、上記のような吸収ピークが
ほとんど現われないことが判明した。しかし、その実用
化には製造上次のような問題があった。すなわち、酸溶
解性のガラス管(母材)の外周にフッ化カルシウムを蒸
着して被膜し、更にその外周に例えば銀を蒸着して被膜
し、その後上記ガラス管を酸で溶解して中空コア部を形
成することになるが、銀蒸着時にフッ化カルシウム内に
銀が拡散する。そのため、銀の外周にメッキをしづらく
なるだけでなく、誘電体層で光の吸収が起きて伝送損失
が大きくなってしまう。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
め、本発明は、誘電体層と、その外周に設けられた金属
層とを有する中空光ファイバに係り、主に、酸溶解性母
材の外周に誘電体層を蒸着して被膜し、この誘電体層の
外周に金属層を蒸着して被膜し、その後上記母材を酸で
溶解することにより中空コア部を形成してなる中空光フ
ァイバに係る。そして、上記誘電体層を、中空コア部に
面する内周側誘電体層と、この内周側誘電体層と上記金
属層との間に介在された中間誘電体層とで構成する。
【0005】内周側誘電体層は、なるべく広い波長範囲
にわたって伝送損失を低くすることができる物質で形成
する。蒸着による成膜が可能で、酸に溶けにくい物質で
あればなお望ましい。そのような物質としてフッ化カル
シウムが挙げられる。
【0006】中間誘電体層は、屈折率が内周側誘電体層
と近く、なるべく広い波長範囲にわたって伝送損失を低
くでき、かつ、内周側誘電体とも金属層とも付着性がよ
く、しかも上記金属が拡散しない物質で形成する。蒸着
による成膜が可能であればなお望ましい。耐酸性は要求
されない。そのような物質としてフッ化イットリウムが
挙げられる。
【0007】この中空光ファイバを製造するには、酸溶
解性のガラス管などの母材の外周面にフッ化カルシウム
などからなる内周側誘電体層を蒸着して被膜し、その外
周面にフッ化イットリウム(中間誘電体層)を蒸着して
被膜し、更にその外周面に銀や金などの金属層を蒸着し
て被膜し、その後上記母材を酸で溶解して中空コア部を
形成するのが望ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図
面を参照して説明する。図1に示すように、中空光ファ
イバ10は、中空のコア部10aを有し、この中空コア
部10aに面する内周側から、内周側誘電体層11、中
間誘電体層12、金属層13、メッキ層14、及び外皮
チューブ15が、順次径方向に積層されている。なお、
図において層11〜14の厚さは誇張して描いてある。
【0009】内周側誘電体層11は、フッ化カルシウム
で形成されている。中間誘電体層12は、本発明の要旨
に係るものであり、フッ化イットリウムで形成されてい
る。金属層13は、銀で形成されているが、金などの他
の金属で形成してもよい。メッキ層14は、金属層13
及び誘電体層11,12を補強するためのものであり、
例えばニッケルで形成されている。外皮チューブ15
は、例えば熱収縮性樹脂で形成されている。
【0010】中空ファイバ10の製造方法を説明する。
まず、図1の仮想線で示す酸溶解性のガラス管20(母
材)の外周面にフッ化カルシウムを蒸着し、内周側誘電
体層11を形成する。次に、この内周側誘電体層11の
外周面にフッ化イットリウムを蒸着し、中間誘電体層1
2を形成する。次に、この中間誘電体層12の外周面に
銀を蒸着し、金属層13を形成する。発明者の実験によ
れば、この銀蒸着時に、銀がフッ化イットリウムからな
る中間誘電体層に拡散されることはなかった。したがっ
て、3つの層11〜13の成膜状態をきれいに維持する
ことができ、ひいては光の吸収を確実に防止でき、伝送
損失を確実に低減することができる。
【0011】次に、金属層13の外周にニッケルをメッ
キし、メッキ層14を形成する。金属層13がきれいに
成膜されているので、上記メッキも容易に行うことがで
きる。次に、上記ガラス管20を酸で溶解することによ
り中空コア部10aを形成する。この時、内周側誘電体
層11は、大きな耐酸性を有するフッ化カルシウムで形
成されているので、上記の酸で溶けることはない。そし
て、外皮チューブ15を外挿し、熱収縮させてメッキ層
14の外周を被覆する。なお、熱収縮性樹脂からなる外
皮チューブ15に代えて、液状樹脂をメッキ層15の外
周に塗布した後乾燥固化させることにより、外皮を形成
してもよい。
【0012】図2は、本発明を適用した中空光ファイバ
によって赤外光線を伝送した時の伝送損失の実験結果で
ある。同図に示すように、伝送損失は、Er−YAG2
レーザの波長2.94μmにおいて約2.5dBであ
り、COレーザの波長5μmにおいて約2.5dBであ
り、CO2レーザの波長10.6μmにおいて約4.8
dBであった。したがって、当該中空光ファイバは、こ
れらレーザの何れをも確実に伝送することができ、レー
ザの種類ごとに別の光ファイバを用いる必要がない。し
かも、赤外波長2μm〜十数μmの範囲内には、吸収が
極端に大きくなる吸収ピークは現われなかった。したが
って、自由電子レーザなどの波長が変化するレーザであ
っても、全波長を欠くことなく伝送することができ、分
光用プローブとしての使用が可能となる。
【0013】本発明は、上記実施形態に限定されるもの
ではなく、種々の改変を行うことができる。
【0014】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
フッ化イットリウムからなる中間誘電体層によって金属
層の金属が誘電体層に拡散するのを阻止でき、誘電体層
内において光が吸収されるのを防止できる。そして、1
つのファイバで波長の異なる複数のレーザの伝送に対応
できるだけでなく、可変波長レーザの伝送にも対応で
き、分光用プローブとしての使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示し、中空光ファイバの
一部切欠斜視図である。
【図2】本発明の実施品による伝送損失の実験結果を示
すグラフである。
【図3】(a)銀を金属膜としヨウ化銀を誘電体膜とす
る中空光ファイバにおける波長に対する伝送損失を示す
グラフである。 (b)銀を金属膜としゲルマニウムを誘電体膜とする中
空光ファイバにおける波長に対する伝送損失を示すグラ
フである。 (c)銀を金属膜とし環状オレフィンポリマーを誘電体
膜とする中空光ファイバにおける波長に対する伝送損失
を示すグラフである。
【符号の説明】
10 中空光ファイバ 10a 中空コア部 11 内周側誘電体層 12 中間誘電体層 13 金属層 14 メッキ層 15 外皮チューブ 20 ガラス管(母材)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年4月25日(2002.4.2
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中空コア部に面する内周側誘電体層と、
    この誘電体層の外周に設けられた金属層とを有する中空
    光ファイバにおいて、上記内周側誘電体層と上記金属層
    との間に中間誘電体層が介在され、上記内周側誘電体層
    がフッ化カルシウムで形成され、上記中間誘電体層がフ
    ッ化イットリウムで形成されていることを特徴とする中
    空光ファイバ。
  2. 【請求項2】 酸溶解性母材の外周に誘電体層を蒸着し
    て被膜し、この誘電体層の外周に金属層を蒸着して被膜
    し、その後上記母材を酸で溶解することにより中空コア
    部を形成してなる中空光ファイバにおいて、上記誘電体
    層が、上記中空コア部に面する内周側誘電体層と、この
    内周側誘電体層と上記金属層との間に介在された中間誘
    電体層とからなり、上記内周側誘電体層がフッ化カルシ
    ウムで形成され、上記中間誘電体層がフッ化イットリウ
    ムで形成されていることを特徴とする中空光ファイバ。
  3. 【請求項3】 酸溶解性母材の外周面にフッ化カルシウ
    ムからなる内周側誘電体層を蒸着して被膜し、この内周
    側誘電体層の外周面にフッ化イットリウムからなる中間
    誘電体層を蒸着して被膜し、この中間誘電体層の外周面
    に金属層を蒸着して被膜し、その後上記母材を酸で溶解
    することにより中空コア部を形成することを特徴とする
    中空光ファイバの製造方法。
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