JP2002339883A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 二酸化炭素冷媒用のような高いスラスト荷重
が発生するスクロール型圧縮機において、スラスト支持
機構を簡素化して製造コストを低減する。 【解決手段】 スラスト支持機構は２段階から構成さ
れ、第１段階として、旋回スクロール６に作用するスラ
スト荷重を、偏心質量に対抗して設けられたバランサ１
０によって支持する。そのために、旋回スクロールの端
板部６ａとバランサの端板部１０ａとの間に第１のスラ
スト軸受１１を設けて、旋回スクロール６の中心軸線の
回りにおいてスラスト荷重を支持する。バランサ１０に
伝えられたスラスト荷重は、第２段階としてハウジング
１３或いは３によって支持する。そのために、バランサ
の端板部１０ａ（それと一体の他の部分でもよい）と、
ハウジング１３との間に第２のスラスト軸受１２を設け
て、シャフト１の中心軸線の回りにおいて、ハウジング
１３に対するバランサ１０の回転を許す構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明はスクロール型圧縮機
におけるスラスト支持機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】空調装置等の冷凍サイクルにおいて、例
えば二酸化炭素（ＣＯ₂ ）ガスのように高圧まで圧縮し
て冷却しても完全には液化しない所謂「超臨界圧流体」
を冷媒として使用して、それをスクロール型の圧縮機に
よって圧縮する場合には、容易に液化するフレオン類の
ような冷媒を使用する場合に比べて、スクロール型圧縮
機の旋回スクロールに作用する軸方向荷重（スラスト）
は７〜１０倍もの大きさになる。そこで、このような高
い軸方向荷重を支持することができる信頼性の高いスラ
スト支持機構を提供するために、本出願人等は先に特開
２０００−１８６６８０号公報によって開示された圧縮
機のスラスト支持機構を提案している。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スクロ
ール型圧縮機においてはシャフトが自転をするのに対し
て旋回スクロールが公転のみをするために、前述の従来
技術によるスラスト支持機構は、汎用のスラスト軸受等
とは異なる特殊な構造を備えている。即ち、このスラス
ト支持機構は、固定のハウジングの側面と旋回スクロー
ルの端板の側面の間において軸方向に重畳して支持され
た３枚の円板と、対向している円板の面の間にそれぞれ
配置されて、相互に直角な２つの半径方向に転動するよ
うに２つのグループに分かれて支持された多数のローラ
群と、それらのローラ群の位置と転動方向を保持するた
めに設けられた２枚の円板状の保持器と、それらの円板
及び保持器を軸方向に連結して支持するために設けられ
た多数の軸方向のピン等からなる複雑な構造を有する。
従って、この従来技術によるスラスト支持機構は、製造
に当たって多数の部材の加工にそれぞれ高い精度を要求
されるために、量産が難しくてコストが嵩むという問題
を有しており、それが圧縮機全体のコストを高める原因
になる。

【０００４】本発明は、従来技術における前述のような
問題に対処して、特殊な構造のスラスト支持機構を使用
することなく、高精度でありながら専用の部品に比べて
安価に市販されている汎用のスラスト軸受をスクロール
型圧縮機に使用することができるようにした、新規な構
成のスラスト支持機構を備えているスクロール型圧縮機
を提供し、ＣＯ₂ のような超臨界圧冷媒を使用すること
ができるスクロール型圧縮機を安価に、且つ容易に製造
可能として、高い性能を維持しながらも、そのコスト
を、従来技術によるスラスト支持機構を備えているスク
ロール型圧縮機のそれに比べて大幅に低減することを目
的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するための手段として、特許請求の範囲の請求項１
に記載されたスクロール型圧縮機を提供する。

【０００６】本発明のスクロール型圧縮機の特徴は、２
つの段階からなるスラスト支持機構の構成にある。即
ち、このスラスト支持機構においては、第１段階とし
て、旋回スクロールに作用するスラスト荷重を、旋回ス
クロール等の偏心質量に対抗して設けられたバランサに
よって支持しており、そのために、旋回スクロールの端
板部とバランサとの間に第１のスラスト軸受を装着し
て、旋回スクロールの中心軸線の回りにおいて旋回スク
ロールに対するバランサの回転を許す構成をとってい
る。次に、第２段階として、バランサに伝えられたスラ
スト荷重をハウジングによって支持しており、そのため
に、バランサと一体の部分に形成された面と、ハウジン
グと一体の部分に形成された面との間に第２のスラスト
軸受を装着して、シャフトの中心軸線の回りにおいて、
ハウジングと一体の部分に対するバランサと一体の部分
の回転を許す構成としている。

【０００７】本発明のスクロール型圧縮機においては、
このように、旋回スクロールのためのスラスト支持機構
を、駆動用のシャフトの中心軸線に対して偏心している
部分と、偏心していない部分との２段階に分けて、それ
ぞれの部分にスラスト軸受を適用するという、きわめて
合理的な構成をとっている。従って、それぞれのスラス
ト軸受は、軸方向の荷重を支持している状態で、単なる
相対回転を許すものであればよいから、簡単な構造のも
のでよいため、高精度であっても安価に入手可能な市販
の既製品を使用することができる。また、既製品のよう
に外部で組み立てられたスラスト軸受を圧縮機に組み込
む作業はきわめて容易であって、高度の技術や熟練を必
要としないから、組み立ての工程におけるコストも低減
される。

【０００８】具体的に、第１のスラスト軸受は、旋回ス
クロールの端板部の背面と、バランサの一部に形成され
た端板部の一方の面との間に装着することができるし、
旋回スクロールの端板部の背面のうちでも、特に旋回ス
クロールのボス部の内部にある部分と、バランサのブッ
シュ部の端面との間に装着してもよい。

【０００９】また、第２のスラスト軸受は、バランサに
形成された端板部の他方の面と、ハウジングの内部に形
成された面との間に装着することができるほか、シャフ
トと一体にスラストプレートを設けて、その面と、その
面に対向する位置のハウジングの内部に形成された面と
の間に装着することもできる。

【００１０】本発明のスクロール型圧縮機は、そのスラ
スト支持機構の構造が簡単で、きわめて堅牢であるため
に高いスラスト荷重に耐えるから、例えば二酸化炭素の
ような超臨界圧流体を冷媒として使用する冷凍サイクル
における冷媒圧縮機として使用した場合のように、非常
に大きな軸方向荷重が作用する用途に使用するのに好適
である。また、本発明のスクロール型圧縮機において
は、共通のハウジング内に電動モータを装着して圧縮機
の部分とシャフトを共通にすることにより、圧縮機の部
分が電動モータによって直接に回転駆動されるように構
成することができる。それによって、駆動機構を簡素化
することができるし、冷媒のような被圧縮流体を外部に
対して密封することが容易になる。

【００１１】

【発明の実施の形態】図１に、本発明の第１実施例とし
てのスクロール型圧縮機Ｃ１の全体構造を示す。図２は
圧縮機Ｃ１の中で特徴のある部分を拡大して示す分解斜
視図である。これらの図において１は圧縮機Ｃ１の中心
を通るシャフトであって、所定量だけ偏心した偏心軸部
としてのクランク部１ａを有する。２は圧縮機Ｃ１と一
体的に結合された密閉型の電動モータであって、モータ
ハウジング３内に構成されており、圧縮機Ｃ１のシャフ
ト１を直接に回転駆動する。４はシャフト１の一端側に
設けられたフロントラジアル軸受であって、モータハウ
ジング３によって支持されており、ミドルハウジング１
３によって支持されているリアラジアル軸受５と共にシ
ャフト１を回転可能に支持している。

【００１２】圧縮機Ｃ１は高圧冷媒用のものであるが、
その基本的な構成は良く知られている一般的なスクロー
ル型圧縮機と概ね同様である。即ち、６は旋回スクロー
ルであって、概ね円板形の端板部６ａと、渦巻き形の羽
根部６ｂと、円筒形のボス部６ｃとからなっている。こ
の旋回スクロール６は、ボス部６ｃとシャフト１のクラ
ンク部１ａとの間に圧入されている旋回スクロール軸受
１６を介して、クランク部１ａによって回転自在に支持
されており、シャフト１が回転するときに自転を含まな
い公転をする。７は旋回スクロール６の自転を阻止する
ために固定スクロール８の端板部８ａに植設された自転
防止ピンであって、端板部６ａに形成された半径が２倍
程度ある円形の穴６ｄに係合している。

【００１３】旋回スクロール６の渦巻き形の羽根部６ｂ
と噛み合うように、固定スクロール８の端板部８ａにも
渦巻き形の羽根部８ｂが設けられていて、それら２つの
羽根部６ｂ及び８ｂの間に、シャフト１の方向に見た時
に三日月形に見える偶数個の作動室９がそれぞれ対にな
ってシャフト１に関して対称的な位置に形成される。そ
して、旋回スクロール６が公転をすることにより、作動
室９が外周部の吸入室１４に向かって開いた時に低圧の
冷媒が作動室９内へ取り込まれ、次に作動室９が閉じて
密閉空間となって固定スクロール８の中心部に向かって
移動する間に、作動室９の容積が連続的に縮小するため
に内部の冷媒が圧縮される。固定スクロール８の中心部
に達して吐出圧まで昇圧した冷媒は、作動室９が中心部
において開いた時に、端板部８ａとリアプレート１７の
間に形成された吐出室１５へ、吐出弁２２を押し開いて
吐出される。

【００１４】１０はシャフト１のクランク部１ａに対し
て一体的に回転するように取り付けられたバランサであ
る。シャフト１の中心軸線Ａに対して偏心している中心
軸線を有するクランク部１ａと、それによって移動する
中心軸線Ｂの回りに軸承されている旋回スクロール６は
アンバランスな質量（偏心質量）となっているので、シ
ャフト１が回転して旋回スクロール６が公転をする時に
振動を発生する恐れがあるから、これらに対して釣り合
い錘としてのバランサを設けることは従来のスクロール
型圧縮機においても行われている。即ち、偏心質量であ
る旋回スクロール６とクランク部１ａに釣り合う別の偏
心質量を、中心軸線Ａに関して対称的な位置にバランサ
として取り付けることは一般的に行われている。しかし
ながら、本発明の各実施例のスクロール型圧縮機におい
てはこのバランサに、釣り合い錘としての役割のみなら
ず、更に別の役割をも持たせている。

【００１５】そのために、第１実施例のスクロール型圧
縮機Ｃ１におけるバランサ１０は、円板状の端板部１０
ａと、圧入等の方法によってクランク部１ａと一体化さ
れる円筒形のブッシュ部１０ｂと、この実施例の場合は
それらの部分１０ａと１０ｂを接続している周方向に厚
さが異なる偏心重錘部１０ｃとからなっている。もっと
も、この場合は、円板状の端板部１０ａ自体もシャフト
１の中心軸線Ａに対して偏心しているので、端板部１０
ａの一部は偏心重錘部１０ｃと共に、釣り合い用の偏心
質量の一部となっている。なお、端板部１０ａは必ずし
も円板状である必要はなく、それに接触する後述のスラ
スト軸受のレースを確実に支持し得る限り、例えば楕円
形とか瓢箪形等の形状であってもよい。

【００１６】そして、バランサ１０の端板部１０ａのリ
ア側（図１において下側）の面と、旋回スクロール６の
端板部６ａのフロント側（図１において上側）の面との
間には、それらの面の間に、中心軸線Ｂ（旋回スクロー
ル６の中心軸線）の回りの相対回転を許すために、第１
のスラスト軸受としてのリアスラスト軸受１１が装着さ
れている。また、バランサ１０の端板部１０ａのフロン
ト側（図１において上側）の面とミドルハウジング１３
の端面との間には、それらの面の間に中心軸線Ａ（シャ
フト１の中心軸線）の回りの相対回転を許すために、第
２のスラスト軸受としてのフロントスラスト軸受１２が
装着されている。

【００１７】本発明においては、これらのリアスラスト
軸受１１（第１のスラスト軸受）とフロントスラスト軸
受１２（第２のスラスト軸受）として、一般に既製品と
して市販されているニードルローラ型のような、普通の
スラスト軸受をそのまま使用することができるようにし
た点に特徴がある。普通のスラスト軸受は大量に生産さ
れる既製品であるために安価であるが、その精度は十分
に高い。

【００１８】具体的に説明すると、リアスラスト軸受１
１は例えば図２に示すように、一対の円環状のレース１
１ａ，１１ｂと、それらの間に設けられた図示しないリ
テーナによって放射状に均等に位置決めされている多数
のニードル状のローラ１１ｃとから構成されている。フ
ロントスラスト軸受１２も同様であって、一対の円環状
のレース１２ａ，１２ｂと、それらの間に放射状に位置
決めされた多数のニードル状のローラ１２ｃとから構成
されている。このように、バランサ１０に円板状等の端
板部１０ａが設けられて、その端板部１０ａの両面に、
ごく普通の構造のスラスト軸受１１及び１２が取り付け
られている。

【００１９】本発明のスラスト支持機構においては、噛
み合っている２つの羽根部６ｂ及び８ｂの間に形成され
る三日月形の作動室９の両端の、２つの羽根部６ｂ，８
ｂの接触部分を密封するために、旋回スクロール６の公
転による遠心力によって適度な大きさの押しつけ力を発
生させて２つの羽根部の接触部分に作用させるというよ
うな目的において、バランサ１０と旋回スクロール６を
一体としてクランク部１ａに対して半径方向に僅かに移
動可能とする所謂「従動クランク機構」を簡単に構成す
ることができる。

【００２０】即ち、第１実施例の圧縮機Ｃ１のスラスト
支持機構においては、従来の従動クランク機構に使用さ
れている二重偏心機構や二面幅機構等のような特別の機
構を設ける必要もなく、例えば、スラスト軸受１１又は
１２のレースの面と、それに接触しているバランサ１０
の端板部１０ａの面との間を、半径方向に僅かに摺動可
能とするだけで従動クランク機構としての作用が得られ
る。同様な作用はスラスト軸受１１又は１２のレースの
面と、旋回スクロール６の端板部６ａ又はミドルハウジ
ング１３の面との間を僅かに摺動可能とするとか、スラ
スト軸受１１又は１２のそれぞれ２つのレースの間に、
半径方向に僅かなずれを許す構成とすることによっても
得られる。

【００２１】従って、第１実施例のスクロール型圧縮機
Ｃ１におけるスラスト支持機構の主要な構成要素である
２個のスラスト軸受１１，１２においては、それらのレ
ースを、それらのレースに接触している他の部材、即ち
バランサ１０の端板部１０ａとか、旋回スクロール６の
端板部６ａ或いはミドルハウジング１３の面に対して固
定することができることは勿論であるが、固定しないで
半径方向に僅かに移動可能とすることもできる。後者の
場合にはスラスト支持機構が従動クランク機構としての
作用をも同時にすることになる。

【００２２】第１実施例のスクロール型圧縮機Ｃ１はこ
のような構成となっているので、そのスラスト支持機構
の組み立てに当たっては、２個の既製のスラスト軸受１
１，１２を用意し、それらにそれぞれ旋回スクロール６
のボス部６ｃ或いはバランサ１０の偏心重錘部１０ｃを
挿通した後に、バランサ１０のブッシュ部１０ｂと旋回
スクロール６のボス部６ｃとの間に旋回スクロール軸受
１６を挿入して、バランサ１０と旋回スクロール６とを
結合し、そのバランサ１０のブッシュ部１０ｂをシャフ
ト１のクランク部１ａに図示しないキー等を介して固定
するという簡単な作業によって組み立てが完了する。従
って、組み立てに当たって高度の技術は不要であり、複
雑な組み立て工程を設ける必要もなく、頑丈で精度の高
いスラスト支持機構が容易に完成する。

【００２３】圧縮機Ｃ１の作動状態において、作動室９
内に取り込まれた冷媒のような流体が圧縮されることに
より、旋回スクロール６の端板部６ａには図１及び図２
において上方向にスラスト荷重ＦＴが発生する。バラン
サ１０の端板部１０ａはモータ２の回転駆動によってシ
ャフト１の中心軸線Ａの回りに回転運動をする。しか
し、旋回スクロール６は、シャフト１の中心軸線Ａに対
して偏心しているクランク部１ａが回転することにより
公転運動をするものの、自転防止ピン７が旋回スクロー
ル６の端板部６ａに形成された円形の穴６ｄに係合して
いるために自転をすることができないので、バランサ１
０の端板部１０ａは、シャフト１の中心軸線Ａに対して
偏心している中心軸線Ｂの回りにおいて、旋回スクロー
ル６に対して相対的に回転運動をする。

【００２４】圧縮機Ｃ１のスラスト支持機構において
は、まずバランサ１０の端板部１０ａが、フロントスラ
スト軸受１２を介してミドルハウジング１３によって回
転可能に支持されているために、シャフト１の中心軸線
Ａの回りに自由に回転をすることが許される。また、リ
アスラスト軸受１１がクランク部１ａと共に移動する中
心軸線Ｂの回りに設けられているので、リアスラスト軸
受１１及び旋回スクロール軸受１６によって、クランク
部１ａが旋回スクロール６に対して中心軸線Ｂの回りに
相対的に自由に回転運動をすることが許されると共に、
フロントスラスト軸受１２によって回転可能に支持され
ているバランサ１０の端板部１０ａが、旋回スクロール
６の端板部６ａに作用するスラスト荷重ＦＴをリアスラ
スト軸受１１を介して強力に支持することが可能にな
る。

【００２５】従って、リアスラスト軸受１１を介してバ
ランサ１０の端板部１０ａが支持したスラスト荷重ＦＴ
は、シャフト１の中心軸線Ａの回りに配置されたフロン
トスラスト軸受１２を介して、ミドルハウジング１３に
よって確実に支持される。また、旋回スクロール６に作
用するスラスト荷重ＦＴを２個の安価なスラスト軸受１
１，１２によって簡単に支持することができるので、前
述の従来技術に比べてスラスト支持機構の製造コストを
大幅に低減することが可能になる。

【００２６】図３に本発明の第２実施例としてのスクロ
ール型圧縮機Ｃ２を示す。第２実施例以下の圧縮機の説
明においては、それらの圧縮機と、先に図１及び図２に
よって説明した第１実施例のスクロール型圧縮機Ｃ１が
実質的に同じ形状、構造を有する構成部分については、
同じ参照符号を付すことによって重複する説明を省略す
る。

【００２７】第１実施例のスクロール型圧縮機Ｃ１と比
べて、第２実施例の圧縮機Ｃ２の特徴は、フロントスラ
スト軸受１２をシャフト１の前端側（図において上端
側）の位置へ移したことである。そのために、シャフト
１の前端の近くに円板形のスラストプレート１８を取り
付けて、それとモータハウジング３の前端部内面との間
でフロントスラスト軸受１２を挟む構成となっており、
シャフト１に作用するスラスト荷重ＦＴをこの部分にお
いて、フロントスラスト軸受１２を介してモータハウジ
ング３によって支持している。

【００２８】第２実施例においては、フロントスラスト
軸受１２の設置位置を、第１実施例の場合とは異なる位
置へ変更しているので、バランサ１０の端板部１０ａの
前面にはスラスト軸受を設けない。従って、バランサ１
０、或いはそれと一体のシャフト１側からハウジング側
へスラスト荷重ＦＴを伝達する位置が異なるが、他の構
成は同じであるから、第２実施例のスクロール型圧縮機
Ｃ２は、実質的に第１実施例の圧縮機Ｃ１と同様な作動
をして、同様な効果を奏する。但し、第２実施例の圧縮
機Ｃ２のシャフト１には回転トルクの他に軸方向荷重と
してのスラスト荷重ＦＴが作用するから、シャフト１が
座屈や軸振れを起こさないように、或る程度以上の最小
太さが必要になる。

【００２９】図４に本発明の第３実施例としてのスクロ
ール型圧縮機Ｃ３を示す。前述の第１実施例等の圧縮機
と比べて第３実施例の圧縮機Ｃ３の特徴は、２個のスラ
スト軸受１１及び１２の取り付け位置がいずれも異なっ
ていることと、それに応じてバランサ１０や旋回スクロ
ール６のボス部６ｃの形状が多少異なっていることであ
る。第３実施例の圧縮機Ｃ３においては、リアスラスト
軸受１１が、旋回スクロール６のボス部６ｃの内部に設
けられていて、バランサ１０の厚肉とされたブッシュ部
１０ｂの端面と、旋回スクロール６の端板部６ａとの間
に装着されている。言うまでもなく、リアスラスト軸受
１１はシャフト１の中心軸線Ａに対して偏心している旋
回スクロール６の中心軸線Ｂ（実質的にクランク部１ａ
の中心軸線でもある）の回りに設けられる。

【００３０】その結果として、第１実施例においてリア
スラスト軸受１１が設けられている位置が空間となるの
で、その空間において回転するようにバランサ１０の偏
心重錘部１０ｃの位置を移動させている。更に、第３実
施例においてはバランサ１０の端板部１０ａが形成され
る位置も偏心重錘部１０ｃとブッシュ部１０ｂとの間に
変わるので、ミドルハウジング１３によって端板部１０
ａを回転可能に支持するフロントスラスト軸受１２の位
置も多少移動しているが、それによって、旋回スクロー
ル６の端板部６ａに作用するスラスト荷重ＦＴが回転可
能な状態で支持されていること等、第３実施例の作用効
果は第１実施例のそれと同じである。

【００３１】図５に本発明の第４実施例としてのスクロ
ール型圧縮機Ｃ４を示す。第４実施例の圧縮機Ｃ４の特
徴は、フロントスラスト軸受１２の取り付け位置が、図
３に示した第２実施例の圧縮機Ｃ２と同様に、シャフト
１の前端側になっていて、スラストプレート１８が設け
られていることと、リアスラスト軸受１１の取り付け位
置が、図４に示した第３実施例の圧縮機Ｃ３と同様に、
旋回スクロール６のボス部６ｃの内部となっていること
である。それに伴って、バランサ１０の形状も第３実施
例に近いものとなっているが、バランサ１０の端板部１
０ａにフロントスラスト軸受１２が設けられていない点
において異なっている。この構成から明らかなように、
第４実施例のスクロール型圧縮機Ｃ４は、実質的に第２
実施例の圧縮機Ｃ２と同様な作用効果を奏する。

【００３２】図６に本発明の第５実施例としての圧縮機
Ｃ５の断面構造を示す。前述の各実施例においては、内
部にモータ２を密閉状態で収容しているモータハウジン
グ３が、ミドルハウジング１３や固定スクロール８と一
体化されているのに対して、第５実施例においては、ス
ラスト支持機構等を収容しているハウジング２０が固定
スクロール８等と一体化されているものの、ハウジング
２０が動力源とは別体になっていて、図６には動力源が
示されていないことである。例えば、図示しない自動車
用のエンジンのような動力源が、必要に応じて電磁クラ
ッチ等を介してシャフト１に連結される。旋回スクロー
ル６がクランク部１ａによって駆動されて公転をするこ
とは前述の各実施例の場合と同様であって、スラスト荷
重ＦＴを支持するために、２個のスラスト軸受１１，１
２からなるスラスト支持機構が設けられている。

【００３３】なお、図６において、１９はハウジング２
０内の空間を外部から密封するための軸シール、２１は
ハウジング２０によって支持されてシャフト１を軸承す
るメインラジアル軸受、２２は固定スクロール８の端板
部８ａの中心部に形成された吐出口８ｃを吐出室１５側
から閉塞する逆止弁形の吐出弁、２３は吐出室１５を形
成するためのリアハウジング、２４はリアハウジング２
３に設けられた吐出ポート、２５は吐出弁２２の過度の
開弁を防止する吐出弁ストッパをそれぞれ示している。
簡略化のために前述の各実施例においては図示説明を省
略しているが、図６に示した詳細な構造部分の中には、
前述の各実施例においても使用され得るものが含まれて
いる。

【００３４】第５実施例の圧縮機Ｃ５の構造と、前述の
第１実施例の圧縮機Ｃ１（図１）とを比較すると明らか
であるが、圧縮機全体の大きさの中で旋回スクロール６
と固定スクロール８が占める容積の割合が、圧縮機Ｃ１
に対して圧縮機Ｃ５では大きくなっているように、第５
実施例の圧縮機Ｃ５は、例えばフレオン類のような、比
較的低い圧縮圧力において液化する通常の冷媒を使用す
る場合の冷媒用圧縮機を想定している。スラスト支持機
構の構成において両者は概ね類似しているが、圧縮機Ｃ
５においては、２個のスラスト軸受１１，１２によって
挟まれるように設けられているバランサ１０の端板部１
０ａの外周の一部に偏心重錘部１０ｃが形成されてい
る。この場合も、スラスト軸受１１，１２は前述のよう
に、旋回スクロール６の半径方向への僅かな移動を許す
ことによって、シャフト１の中心軸線Ａと旋回スクロー
ル６の中心軸線Ｂとの間の距離、即ち旋回スクロール６
の偏心量が変化するようになっている。

【００３５】第５実施例のスクロール型圧縮機Ｃ５の作
動状態においては、それが圧縮する冷媒の種類が異なる
ことによって圧縮圧力等が第１実施例のスクロール型圧
縮機Ｃ１等とは異なる場合もあるが、定性的な作用効果
は第１実施例のそれと概ね同様であって、旋回スクロー
ル６に作用するスラスト荷重ＦＴが、２個のスラスト軸
受１１，１２を介してハウジング２０によって確実に支
持される。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例としてのスクロール型圧縮
機を示す縦断面図である。

【図２】第１実施例のスクロール型圧縮機の要部を拡大
して示す分解斜視図である。

【図３】本発明の第２実施例としてのスクロール型圧縮
機を示す縦断面図である。

【図４】本発明の第３実施例としてのスクロール型圧縮
機を示す縦断面図である。

【図５】本発明の第４実施例としてのスクロール型圧縮
機を示す縦断面図である。

【図６】本発明の第５実施例としてのスクロール型圧縮
機を示す縦断面図である。

【符号の説明】

１…シャフト １ａ…クランク部 ２…モータ ３…モータハウジング ６…旋回スクロール ６ａ…端板部 ６ｂ…渦巻き形の羽根部 ６ｃ…ボス部 ８…固定スクロール ８ａ…端板部 ８ｂ…渦巻き形の羽根部 １０…バランサ １０ａ…端板部 １０ｂ…ブッシュ部 １０ｃ…偏心重錘部 １１…リアスラスト軸受 １２…フロントスラスト軸受 １３…ミドルハウジング １６…旋回スクロール軸受 １８…スラストプレート ２０…ハウジング ２３…リアハウジング

フロントページの続き (72)発明者 木村 成秀 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式会 社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 稲垣 光夫 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式会 社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 酒井 猛 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 株式会 社デンソー内 Ｆターム(参考） 3H029 AA02 AA13 AA16 AB03 BB32 BB44 CC05 CC07 CC08 CC16 CC17 CC30 3H039 AA03 AA12 BB05 BB08 CC02 CC10 CC12 CC19 CC20 CC22 CC32

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 端板部と、その一方の面から軸方向に突
   出するように設けられた渦巻き形の羽根とを備えている
   と共に、固定されたハウジング側に連結されている固定
   スクロールと、 前記固定スクロールに対して偏心した位置においてそれ
   と噛み合って、それらの間に閉じた作動室を形成するよ
   うに、端板部とその一面から軸方向に突出するように設
   けられた渦巻き形の羽根とを備えている旋回スクロール
   と、 前記ハウジング内において前記固定スクロールの中心と
   一致する中心軸線の回りに回転可能に軸承されていて、
   動力源によって回転駆動されると共に、その中心軸線に
   対して偏心していて前記旋回スクロールを公転させるク
   ランク部を備えているシャフトと、 前記旋回スクロールに係合していて、前記旋回スクロー
   ルの公転を許すと共に自転を阻止する自転防止機構と、 前記シャフトの前記クランク部に取り付けられ、前記旋
   回スクロールを含む偏心質量に対抗するために、前記シ
   ャフトの中心軸線に関して前記偏心質量とは反対側の位
   置に置かれる偏心重錘部を備えているバランサと、 前記旋回スクロールに作用するスラスト荷重を前記バラ
   ンサによって支持するために、前記旋回スクロールの端
   板部と前記バランサとの間に装着されていると共に、前
   記旋回スクロールの中心軸線の回りにおいて前記旋回ス
   クロールに対する前記バランサの回転を許す第１のスラ
   スト軸受と、 前記第１のスラスト軸受を介して前記バランサに伝えら
   れるスラスト荷重を前記ハウジングによって支持するた
   めに、前記バランサと一体の部分に形成された面と、前
   記ハウジングと一体の部分に形成された面との間に装着
   されていると共に、前記シャフトの中心軸線の回りにお
   いて、前記ハウジングと一体の部分に対する前記バラン
   サと一体の部分の回転を許す第２のスラスト軸受と、 を備えていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
2. 【請求項２】 請求項１において、前記第１のスラスト
   軸受が、前記旋回スクロールの端板部の背面と、前記バ
   ランサの一部に形成された端板部の一方の面との間に装
   着されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
3. 【請求項３】 請求項１において、前記第１のスラスト
   軸受が、前記旋回スクロールの端板部の背面のうちで前
   記旋回スクロールのボス部の内部にある部分と、前記バ
   ランサのブッシュ部の端面との間に装着されていること
   を特徴とするスクロール型圧縮機。
4. 【請求項４】 請求項１において、前記第２のスラスト
   軸受が、前記バランサに形成された端板部の他方の面
   と、前記ハウジングの内部に形成された面との間に装着
   されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
5. 【請求項５】 請求項１において、前記第２のスラスト
   軸受が、前記シャフトと一体化されたスラストプレート
   の面と、前記ハウジングの内部に形成された面との間に
   装着されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
6. 【請求項６】 請求項１ないし５のいずれかにおいて、
   前記第１のスラスト軸受及び前記第２のスラスト軸受の
   少なくとも一方が、外部において単一の組立体として組
   み立てられた後に、それが接触する２つの面の間に装着
   されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
7. 【請求項７】 請求項１ないし６のいずれかにおいて、
   超臨界圧流体を圧縮するために使用されることを特徴と
   するスクロール型圧縮機。
8. 【請求項８】 請求項１ないし７のいずれかにおいて、
   前記シャフトが、圧縮機部と共に前記ハウジング内に共
   に装着された電動モータによって回転駆動されるように
   構成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。