JP2002332569A - Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 - Google Patents
Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法Info
- Publication number
- JP2002332569A JP2002332569A JP2001140862A JP2001140862A JP2002332569A JP 2002332569 A JP2002332569 A JP 2002332569A JP 2001140862 A JP2001140862 A JP 2001140862A JP 2001140862 A JP2001140862 A JP 2001140862A JP 2002332569 A JP2002332569 A JP 2002332569A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fluorine
- plasma
- alloy
- substrate
- temperature oxidation
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Physical Vapour Deposition (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【課題】 Ti−Al系合金からなる基材の耐高温酸化
性を十分に向上させることができる表面改質処理方法を
提供することである。 【解決手段】 Ti−Al系合金からなる基材をフッ素
イオン含有プラズマ中においてプラズマベースイオン注
入法でフッ素イオンを注入する。
性を十分に向上させることができる表面改質処理方法を
提供することである。 【解決手段】 Ti−Al系合金からなる基材をフッ素
イオン含有プラズマ中においてプラズマベースイオン注
入法でフッ素イオンを注入する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Ti−Al系合金
の高温での耐酸化性を向上させるための表面改質方法に
関する。
の高温での耐酸化性を向上させるための表面改質方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】Ti−Al系合金は、軽量で且つ高温強
度、クリープ強度が高いため、航空機用タービンエンジ
ン、発電用ガスタービン、自動車エンジンのバルブやタ
ーボチャージ、高温ダイスや軸受け部品などの高温構造
材料として実用化が進められている。
度、クリープ強度が高いため、航空機用タービンエンジ
ン、発電用ガスタービン、自動車エンジンのバルブやタ
ーボチャージ、高温ダイスや軸受け部品などの高温構造
材料として実用化が進められている。
【0003】しかしながら、実用化するためには、Ti
−Al系合金の二つの課題を解決する必要がある。一つ
は、Ti−Al系合金の常温での延性を改善することで
ある。2元系のTi−Al系合金にCr(クロム), Mn
(マンガン)、V(バナジウム)等の第3元素を添加するこ
とにより、Ti−Al系合金の常温での延性が改善され
たことが既に報告されている。
−Al系合金の二つの課題を解決する必要がある。一つ
は、Ti−Al系合金の常温での延性を改善することで
ある。2元系のTi−Al系合金にCr(クロム), Mn
(マンガン)、V(バナジウム)等の第3元素を添加するこ
とにより、Ti−Al系合金の常温での延性が改善され
たことが既に報告されている。
【0004】もう一つはTi−Al系合金の800℃以上
の温度での耐酸化性を向上させることである。Ti−A
l系合金は、酸化雰囲気中において800℃以上の温度で
は、酸化が急速に進行するという問題を有する。特に、
常温延性を改善するためのCr,Mn,Vなどの添加で、
無添加材のTiAl合金に比べて高温での耐酸化性が著
しく劣化することがある。800℃以上の高温環境でTi
−Al系合金を実用するためにはTi−Al系合金の耐
酸化性を向上させる必要がある。
の温度での耐酸化性を向上させることである。Ti−A
l系合金は、酸化雰囲気中において800℃以上の温度で
は、酸化が急速に進行するという問題を有する。特に、
常温延性を改善するためのCr,Mn,Vなどの添加で、
無添加材のTiAl合金に比べて高温での耐酸化性が著
しく劣化することがある。800℃以上の高温環境でTi
−Al系合金を実用するためにはTi−Al系合金の耐
酸化性を向上させる必要がある。
【0005】従来より、Ti−Al系合金にMo、W、
Si、Nb、Taなどの元素を合金元素として添加する
方法や、アルミナイジング処理などの表面処理法などの
検討がなされている。W、Mo、Nbなど合金元素の添
加により、ある程度の耐酸化性の改善効果は得られる
が、実用上はまた十分ではない、特にCr、Mn、Vな
ど元素を含有する場合、耐酸化性改善の効果が小さいと
いうのは現状である。
Si、Nb、Taなどの元素を合金元素として添加する
方法や、アルミナイジング処理などの表面処理法などの
検討がなされている。W、Mo、Nbなど合金元素の添
加により、ある程度の耐酸化性の改善効果は得られる
が、実用上はまた十分ではない、特にCr、Mn、Vな
ど元素を含有する場合、耐酸化性改善の効果が小さいと
いうのは現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】最近、Ti−Al系合
金にNb、Siなどの元素を注入することにより、Ti
Al合金の上に保護性のAl2O3酸化皮膜の形成が促進
され、耐酸化性が改善されることが報告されている。
金にNb、Siなどの元素を注入することにより、Ti
Al合金の上に保護性のAl2O3酸化皮膜の形成が促進
され、耐酸化性が改善されることが報告されている。
【0007】しかしながら、通常のイオン注入法は電場
により加速したイオンビームには指向性があるため、平
面に対して表面改質はできるが、複雑な形状物の表面改
質への応用は困難で、さらに、コストが高い。
により加速したイオンビームには指向性があるため、平
面に対して表面改質はできるが、複雑な形状物の表面改
質への応用は困難で、さらに、コストが高い。
【0008】そこで、Ti−Al系を高温構造材料とし
て実用化するために、Ti−Al系合金の耐高温酸化性
を十分に向上させることができる表面改質方法が望めら
れる。
て実用化するために、Ti−Al系合金の耐高温酸化性
を十分に向上させることができる表面改質方法が望めら
れる。
【0009】本発明の目的は、Ti−Al系合金からな
る基材の耐高温酸化性を十分に向上させることができる
表面改質方法を提供することである。
る基材の耐高温酸化性を十分に向上させることができる
表面改質方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明に係るTi−Al
系合金の表面改質法は、Ti−Al系合金からなる基材
をフッ素イオン含有プラズマ中においてプラズマベース
イオン注入法によりフッ素イオンを注入するものであ
る。
系合金の表面改質法は、Ti−Al系合金からなる基材
をフッ素イオン含有プラズマ中においてプラズマベース
イオン注入法によりフッ素イオンを注入するものであ
る。
【0011】プラズマベースイオン注入法とは、プラズ
マ中に配置された対象物に負のパルス電圧を印加するこ
とにより、プラズマ中のイオンを引き出し、全方向から
イオン注入することで、複雑な形状を有する対象物の表
面を均一に改質できる方法である。このプラズマベース
イオン注入(Plasma Based Ion Implantation(PBI
I)法は、例えば、Conrad J. R., “Sheath Thickness
and Potential Profilesof Ion Matrix Sheaths for Cy
clindrical and Spherical Electrods”, Journal of A
pplied Physics, Vol 62( 1987) 777 に報告されてい
る。
マ中に配置された対象物に負のパルス電圧を印加するこ
とにより、プラズマ中のイオンを引き出し、全方向から
イオン注入することで、複雑な形状を有する対象物の表
面を均一に改質できる方法である。このプラズマベース
イオン注入(Plasma Based Ion Implantation(PBI
I)法は、例えば、Conrad J. R., “Sheath Thickness
and Potential Profilesof Ion Matrix Sheaths for Cy
clindrical and Spherical Electrods”, Journal of A
pplied Physics, Vol 62( 1987) 777 に報告されてい
る。
【0012】本発明に係る耐高温酸化表面改質法におい
ては、Ti−Al系合金からなる基材がフッ素イオン含
有プラズマに配置され、基材の全面にフッ素イオンを均
一に注入する。高温酸化性雰囲気に暴露される時、フッ
素イオンが基材中のチタンと反応して揮発性の高い弗化
チタンを形成する。高温において、弗化チタンが揮発で
基材から蒸発するため、基材の表層部に高濃度のアルミ
が形成される。それにより、保護性を有する緻密で且つ
連続なAl2O3(アルミナ)皮膜が形成されるとともに、
保護性のないTiO2の成長が抑制される。その結果、
Ti−Al系合金からなる基材の高温での耐酸化性が大
きく向上する。
ては、Ti−Al系合金からなる基材がフッ素イオン含
有プラズマに配置され、基材の全面にフッ素イオンを均
一に注入する。高温酸化性雰囲気に暴露される時、フッ
素イオンが基材中のチタンと反応して揮発性の高い弗化
チタンを形成する。高温において、弗化チタンが揮発で
基材から蒸発するため、基材の表層部に高濃度のアルミ
が形成される。それにより、保護性を有する緻密で且つ
連続なAl2O3(アルミナ)皮膜が形成されるとともに、
保護性のないTiO2の成長が抑制される。その結果、
Ti−Al系合金からなる基材の高温での耐酸化性が大
きく向上する。
【0013】フッ素イオン含有プラズマは純フッ素ガス
またはフッ素ガスと不活性ガスの混合ガスから形成され
てもよい。純フッ素ガスの場合、プラズマ中のフッ素イ
オンの密度が高いため、所定のフッ素イオン注入量まで
のイオン注入時間は短縮できる。一方、フッ素ガスと不
活性ガスの混合ガスの場合、フッ素イオンによる真空容
器へのアタックが軽減される。
またはフッ素ガスと不活性ガスの混合ガスから形成され
てもよい。純フッ素ガスの場合、プラズマ中のフッ素イ
オンの密度が高いため、所定のフッ素イオン注入量まで
のイオン注入時間は短縮できる。一方、フッ素ガスと不
活性ガスの混合ガスの場合、フッ素イオンによる真空容
器へのアタックが軽減される。
【0014】フッ素イオン含有イオンベースイオン注入
では、基材に印加する負のパルスバイアス電圧が5kV
以上であることが望ましい。この場合、フッ素イオンが
基材により深く注入される。それにより、保護性のある
緻密で連続なAl2O3皮膜がTi−Al系合金の表層部
に形成されやすくなり、保護性のないTiO2の形成が
十分に抑制される。その結果、Ti−Al系合金からな
る基材の耐高温酸化性が著しく向上する。
では、基材に印加する負のパルスバイアス電圧が5kV
以上であることが望ましい。この場合、フッ素イオンが
基材により深く注入される。それにより、保護性のある
緻密で連続なAl2O3皮膜がTi−Al系合金の表層部
に形成されやすくなり、保護性のないTiO2の形成が
十分に抑制される。その結果、Ti−Al系合金からな
る基材の耐高温酸化性が著しく向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態におけ
るTi−Al系合金の耐高温酸化表面改質方法を説明す
る。
るTi−Al系合金の耐高温酸化表面改質方法を説明す
る。
【0016】Ti−Al系合金からなる基材を真空容器
にセットし、真空引きを行った後、純フッ素ガスまたは
フッ素ガスと不活性ガスの混合ガスを真空容器に導入す
る。高周波電源によるグロー放電でフッ素イオン含有プ
ラズマを発生させる。フッ素イオン含有プラズマ中に浸
せきされたTi−Al系合金基材に負のパルスバイアス
電圧を印加することにより、フッ素イオンが全方向から
均一にTi−Al系合金基材に注入されることになる。
注入したフッ素イオンの働きにより、Ti−Al系合金
の表面に保護性のある連続なAl2O3皮膜の形成が促進
されるとともに、保護性のないTiO2の成長が抑えら
れる。それにより、Ti−Al系合金からなる基材の耐
高温酸化性が著しく向上する。
にセットし、真空引きを行った後、純フッ素ガスまたは
フッ素ガスと不活性ガスの混合ガスを真空容器に導入す
る。高周波電源によるグロー放電でフッ素イオン含有プ
ラズマを発生させる。フッ素イオン含有プラズマ中に浸
せきされたTi−Al系合金基材に負のパルスバイアス
電圧を印加することにより、フッ素イオンが全方向から
均一にTi−Al系合金基材に注入されることになる。
注入したフッ素イオンの働きにより、Ti−Al系合金
の表面に保護性のある連続なAl2O3皮膜の形成が促進
されるとともに、保護性のないTiO2の成長が抑えら
れる。それにより、Ti−Al系合金からなる基材の耐
高温酸化性が著しく向上する。
【0017】純フッ素ガスからプラズマを発生させても
よい。その場合、プラズマ中のフッ素イオン密度が高い
ため、所定のフッ素イオン注入量までの注入処理時間は
短縮される。
よい。その場合、プラズマ中のフッ素イオン密度が高い
ため、所定のフッ素イオン注入量までの注入処理時間は
短縮される。
【0018】また、フッ素ガスと不活性ガスの混合ガス
からプラズマを発生させてもよい。それにより、フッ素
イオンによる真空容器へのアタックは軽減され、排気ガ
ス処理も容易に行うことができる。
からプラズマを発生させてもよい。それにより、フッ素
イオンによる真空容器へのアタックは軽減され、排気ガ
ス処理も容易に行うことができる。
【0019】Ti−Al系合金基材に印加する負のパル
スバイアス電圧が5kV以上であることが好ましい。それ
により、フッ素イオンはTi−Al系合金基材により深
く注入され、高温酸化初期段階において保護性を有する
緻密で連続なAl2O3皮膜が形成されやすくなり、保護
性のないTiO2の形成が十分に抑制される。その結
果、Ti−Al系合金からなる基材の耐高温酸化性が著
しく向上する。
スバイアス電圧が5kV以上であることが好ましい。それ
により、フッ素イオンはTi−Al系合金基材により深
く注入され、高温酸化初期段階において保護性を有する
緻密で連続なAl2O3皮膜が形成されやすくなり、保護
性のないTiO2の形成が十分に抑制される。その結
果、Ti−Al系合金からなる基材の耐高温酸化性が著
しく向上する。
【0020】図1はフッ素イオン含有プラズマベースイ
オン注入処理の模式図である。
オン注入処理の模式図である。
【0021】図1に示すように、基材1はTi−Al系
合金からなる。フッ素イオン含有プラズマ3は真空容器
6の中に発生させられる。基材1にパルスのバイアス電
圧5を印加することにより、基材1の形状に沿ってプラ
ズマシース4が形成され、フッ素イオン2はプラズマシ
ース4の中で全方向から基材1に均一に注入される。
合金からなる。フッ素イオン含有プラズマ3は真空容器
6の中に発生させられる。基材1にパルスのバイアス電
圧5を印加することにより、基材1の形状に沿ってプラ
ズマシース4が形成され、フッ素イオン2はプラズマシ
ース4の中で全方向から基材1に均一に注入される。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。
明する。
【0023】(実施例1) (1)フッ素イオン含有プラズマベースイオン注入 Ti−Al系合金からなる基材を真空容器内にセット
し、1.0x10‐ 4Pa以下の真空度に排気した後、真空容器
にフッ素−アルゴン混合ガスを導入し、高周波電源によ
りフッ素イオン含有プラズマを発生させた。基材に30k
Vの負のパルスバイアス電圧を印加することによりフッ
素イオン含有プラズマベースイオン注入を行った。パル
スバイアス電圧の繰り返し周波数を1000Hz、パルス巾
を10μsとした。イオン注入処理時間は約60分とし
た。
し、1.0x10‐ 4Pa以下の真空度に排気した後、真空容器
にフッ素−アルゴン混合ガスを導入し、高周波電源によ
りフッ素イオン含有プラズマを発生させた。基材に30k
Vの負のパルスバイアス電圧を印加することによりフッ
素イオン含有プラズマベースイオン注入を行った。パル
スバイアス電圧の繰り返し周波数を1000Hz、パルス巾
を10μsとした。イオン注入処理時間は約60分とし
た。
【0024】図2にX線光電子分光法によるフッ素イオ
ンの深さ方向分布の分析結果を示す。フッ素イオンは深
さ60nmまで分布し、約20nmで分布のピークを示す。
ピークにおけるフッ素イオン濃度は50at%に達してい
ることがわかる。
ンの深さ方向分布の分析結果を示す。フッ素イオンは深
さ60nmまで分布し、約20nmで分布のピークを示す。
ピークにおけるフッ素イオン濃度は50at%に達してい
ることがわかる。
【0025】(2)高温酸化試験 フッ素イオン含有プラズマベースイオン注入処理を行っ
た基材を高温酸化試験炉に導入し、大気中で850℃に
おける300時間の繰り返し酸化試験を行った。1サイ
クルの繰り返し酸化試験としては、850℃に昇温した
酸化試験炉に基材を15分かけて導入し、高温酸化試験
炉内で20時間保持して酸化させた後、15分かけて酸
化試験炉から基材を取り出した。1サイクルの繰り返し
酸化ごとに、酸化による基材の重量変化を測定した。測
定した重量変化により基材の耐高温酸化性を評価した。
た基材を高温酸化試験炉に導入し、大気中で850℃に
おける300時間の繰り返し酸化試験を行った。1サイ
クルの繰り返し酸化試験としては、850℃に昇温した
酸化試験炉に基材を15分かけて導入し、高温酸化試験
炉内で20時間保持して酸化させた後、15分かけて酸
化試験炉から基材を取り出した。1サイクルの繰り返し
酸化ごとに、酸化による基材の重量変化を測定した。測
定した重量変化により基材の耐高温酸化性を評価した。
【0026】(実施例2)実施例2では、実施例1と同
じTi−Al系合金からなる基材を用いた。実施例1と
同じようにフッ素イオン含有プラズマベースイオン注入
処理を行った。ただし、負のバイアス電圧を10kVと
した。そして、実施例1と同じ条件で基材に対して高温
酸化試験を行った。
じTi−Al系合金からなる基材を用いた。実施例1と
同じようにフッ素イオン含有プラズマベースイオン注入
処理を行った。ただし、負のバイアス電圧を10kVと
した。そして、実施例1と同じ条件で基材に対して高温
酸化試験を行った。
【0027】(比較例1)比較例1では、実施例1と同
じTi−Al系合金からなる基材を用い、フッ素イオン
含有プラズマベースイオン注入処理を行わずに、実施例
1と同じ条件で基材に対して直接高温酸化試験を行っ
た。
じTi−Al系合金からなる基材を用い、フッ素イオン
含有プラズマベースイオン注入処理を行わずに、実施例
1と同じ条件で基材に対して直接高温酸化試験を行っ
た。
【0028】(繰り返し酸化試験の評価結果)繰り返し
酸化試験の評価結果を表1に示す。
酸化試験の評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1からわかるように、フッ素イオン含有
プラズマベースイオン注入処理を行わなかった比較例1
では、50時間までの酸化初期では、酸化による重量増加
が急速に増大した。その後は、重量減少が観察された。
その重量の減少は高温酸化時間の増加につれて大きく増
大した。このような酸化挙動は次の理由によるものと考
えられる。
プラズマベースイオン注入処理を行わなかった比較例1
では、50時間までの酸化初期では、酸化による重量増加
が急速に増大した。その後は、重量減少が観察された。
その重量の減少は高温酸化時間の増加につれて大きく増
大した。このような酸化挙動は次の理由によるものと考
えられる。
【0031】高温酸化反応により基材の表面に保護性の
ない厚いTiO2とAl2O3からなる酸化皮膜が形成さ
れ、そのため、酸化初期における急速な重量増加が見ら
れた。高温酸化時間の増加につれて保護性のない酸化皮
膜が急速に成長し、高温から室温への冷却過程で熱応力
が発生し、これにより厚いTiO2とAl2O3混合物の
酸化皮膜が基材から剥離する。このように、保護性のな
い酸化皮膜の急速成長と剥離の繰り返しで、基材の重量
は高温酸化時間の増加につれて大きく減少することが観
察された。
ない厚いTiO2とAl2O3からなる酸化皮膜が形成さ
れ、そのため、酸化初期における急速な重量増加が見ら
れた。高温酸化時間の増加につれて保護性のない酸化皮
膜が急速に成長し、高温から室温への冷却過程で熱応力
が発生し、これにより厚いTiO2とAl2O3混合物の
酸化皮膜が基材から剥離する。このように、保護性のな
い酸化皮膜の急速成長と剥離の繰り返しで、基材の重量
は高温酸化時間の増加につれて大きく減少することが観
察された。
【0032】これに対して、フッ素含有プラズマベース
イオン注入処理を行った実施例1と実施例2の基材で
は、重量がわずか増加した。特に実施例1の基材は85
0℃で300時間の繰り返し酸化試験を行った後にも、
重量増加は0.31mg/cm2と非常に少なく、優れた耐高温酸
化性を示した。
イオン注入処理を行った実施例1と実施例2の基材で
は、重量がわずか増加した。特に実施例1の基材は85
0℃で300時間の繰り返し酸化試験を行った後にも、
重量増加は0.31mg/cm2と非常に少なく、優れた耐高温酸
化性を示した。
【0033】これは、均一に注入されたフッ素イオンの
働きによりTi−Al系合金の表面に緻密で連続なAl
2O3皮膜が形成されることによって基材の酸化が抑制さ
れるためであると考えられる。
働きによりTi−Al系合金の表面に緻密で連続なAl
2O3皮膜が形成されることによって基材の酸化が抑制さ
れるためであると考えられる。
【0034】
【発明の効果】本発明の表面改質法により処理されたT
i−Al系合金は、自動車エンジンのバルブやターボチ
ャージャ、航空機用タービンエンジン、発電用ガスター
ビン、高温ダイス、軸受け部品等の高温構造材料への応
用が可能となる。
i−Al系合金は、自動車エンジンのバルブやターボチ
ャージャ、航空機用タービンエンジン、発電用ガスター
ビン、高温ダイス、軸受け部品等の高温構造材料への応
用が可能となる。
【図1】フッ素イオン含有プラズマベースイオン注入処
理の模式図である。
理の模式図である。
【図2】実施例1の基材のX線光電子分光法による分析結
果を示す図である。
果を示す図である。
1 基材 2 フッ素イオン 3 フッ素イオン含有プラズマ 4 プラズマシース 5 パルスバイアス電圧 6 真空容器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 和久 大阪府枚方市津田山手2−8−1 株式会 社イオン工学研究所内 (72)発明者 岩本 信也 大阪府枚方市津田山手2−8−1 株式会 社イオン工学研究所内 (72)発明者 谷口 滋次 大阪吹田市山田丘2番1号 大阪大学内 (72)発明者 松永 康夫 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基板技術研究所内 (72)発明者 中川 精和 東京都江東区豊洲三丁目1番15号 石川島 播磨重工業株式会社東京エンジニアリング センター基板技術研究所内 Fターム(参考) 4K029 AA02 BA32 BC01 CA10 CA13
Claims (3)
- 【請求項1】 Ti−Al系合金からなる基材をフッ素
イオン含有プラズマ中においてプラズマベースイオン注
入法によりフッ素イオンを注入することを特徴とするT
i−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 - 【請求項2】 前記フッ素イオン含有プラズマはフッ素
ガスまたフッ素ガスと不活性ガスの混合ガスから形成さ
れることを特徴とする請求項1記載のTi−Al系合金
の耐高温酸化表面改質法。 - 【請求項3】 前記フッ素イオン含有プラズマベースイ
オン注入では、前記基材に5kV以上の負のパルスバイ
アス電圧を印加することを特徴とする請求項1または請
求項2記載のTi−Al系合金の耐高温酸化表面改質
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001140862A JP2002332569A (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001140862A JP2002332569A (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002332569A true JP2002332569A (ja) | 2002-11-22 |
Family
ID=18987392
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001140862A Pending JP2002332569A (ja) | 2001-05-11 | 2001-05-11 | Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2002332569A (ja) |
Cited By (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102006024886A1 (de) * | 2006-05-24 | 2007-11-29 | Dechema Gesellschaft Für Chemische Technik Und Biotechnologie E.V. | Erhöhung der Oxidationsbeständigkeit von TiAl-Legierungen durch die Behandlung mit Fluor |
WO2009054536A1 (ja) | 2007-10-24 | 2009-04-30 | Air Water Inc. | Ti-Al系合金の表面処理方法およびそれによって得られたTi-Al系合金 |
WO2013117316A1 (de) * | 2012-02-06 | 2013-08-15 | Audi Ag | Verfahren zum herstellen eines turbinenrotors eines abgasturboladers sowie verwendung eines turbinenrotors |
WO2013117315A1 (de) * | 2012-02-06 | 2013-08-15 | Audi Ag | Verfahren zum herstellen eines turbinenrotors eines abgasturboladers |
CN109161865A (zh) * | 2018-09-11 | 2019-01-08 | 南京航空航天大学 | 一种提高Si3N4陶瓷与γ-TiAl合金焊接性能的表面处理方法 |
WO2019230871A1 (ja) * | 2018-06-01 | 2019-12-05 | 京セラ株式会社 | 複合材料および生体インプラント |
CN114657501A (zh) * | 2022-02-28 | 2022-06-24 | 太原理工大学 | 一种改善高Nb-TiAl合金高温抗氧化性能的方法 |
-
2001
- 2001-05-11 JP JP2001140862A patent/JP2002332569A/ja active Pending
Cited By (13)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE102006024886A1 (de) * | 2006-05-24 | 2007-11-29 | Dechema Gesellschaft Für Chemische Technik Und Biotechnologie E.V. | Erhöhung der Oxidationsbeständigkeit von TiAl-Legierungen durch die Behandlung mit Fluor |
WO2009054536A1 (ja) | 2007-10-24 | 2009-04-30 | Air Water Inc. | Ti-Al系合金の表面処理方法およびそれによって得られたTi-Al系合金 |
JP2009102696A (ja) * | 2007-10-24 | 2009-05-14 | Air Water Inc | Ti−Al系合金の表面処理方法およびそれによって得られたTi−Al系合金 |
WO2013117316A1 (de) * | 2012-02-06 | 2013-08-15 | Audi Ag | Verfahren zum herstellen eines turbinenrotors eines abgasturboladers sowie verwendung eines turbinenrotors |
WO2013117315A1 (de) * | 2012-02-06 | 2013-08-15 | Audi Ag | Verfahren zum herstellen eines turbinenrotors eines abgasturboladers |
US9186758B2 (en) | 2012-02-06 | 2015-11-17 | Audi Ag | Method for producing a turbine rotor of an exhaust gas turbocharger, and use of a turbine rotor |
JPWO2019230871A1 (ja) * | 2018-06-01 | 2021-06-17 | 京セラ株式会社 | 複合材料および生体インプラント |
WO2019230871A1 (ja) * | 2018-06-01 | 2019-12-05 | 京セラ株式会社 | 複合材料および生体インプラント |
JP7155259B2 (ja) | 2018-06-01 | 2022-10-18 | 京セラ株式会社 | 複合材料および生体インプラント |
CN109161865B (zh) * | 2018-09-11 | 2019-08-13 | 南京航空航天大学 | 一种提高Si3N4陶瓷与γ-TiAl合金焊接性能的表面处理方法 |
CN109161865A (zh) * | 2018-09-11 | 2019-01-08 | 南京航空航天大学 | 一种提高Si3N4陶瓷与γ-TiAl合金焊接性能的表面处理方法 |
CN114657501A (zh) * | 2022-02-28 | 2022-06-24 | 太原理工大学 | 一种改善高Nb-TiAl合金高温抗氧化性能的方法 |
CN114657501B (zh) * | 2022-02-28 | 2023-10-27 | 太原理工大学 | 一种改善高Nb-TiAl合金高温抗氧化性能的方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2695835B2 (ja) | セラミック被覆耐熱部材 | |
JPS5948873B2 (ja) | 耐食性被覆を設けた電極基体又は電極の製造方法 | |
US5556713A (en) | Diffusion barrier for protective coatings | |
JP2002332569A (ja) | Ti−Al系合金の耐高温酸化表面改質法 | |
Yankov et al. | Surface protection of titanium and titanium–aluminum alloys against environmental degradation at elevated temperatures | |
CN100335672C (zh) | 具有良好耐高温腐蚀性和耐氧化性的耐热性钛合金材料及其制造方法 | |
JP5139768B2 (ja) | Ti−Al系合金の表面処理方法およびそれによって得られたTi−Al系合金 | |
Afshar et al. | Evaluation of electrical breakdown of anodic films on titanium in phosphate-base solutions | |
KR20130074647A (ko) | 도금강판 및 이의 제조방법 | |
EP1184479A1 (fr) | Formation d'un revêtement aluminiure incorporant un élément réactif sur un substrat métallique | |
Fujita | Research and development of oxidation, wear and corrosion resistant materials at high temperature by surface modification using ion processing | |
CN105829584A (zh) | 制造涂覆有保护涂层的部件的方法 | |
CN113825857B (zh) | 在金属基材表面形成氧化铝层的方法 | |
EP0067098B1 (fr) | Méthode de nitruration ionique d'une pièce en acier déformée plastiquement au préalable | |
JP2005082824A (ja) | TiAl系合金の耐高温酸化表面改質法およびその製品 | |
Javidi et al. | In vitro electrochemical evaluation and phase purity of natural hydroxyapatite coating on medical grade 316L stainless steel | |
JP4776837B2 (ja) | TiAl系合金の表面処理方法及びTiAl系合金 | |
JP2016199795A (ja) | チタン部材およびその製造方法 | |
JP2008240024A (ja) | 複合体およびその製造方法 | |
JPH05320863A (ja) | 耐熱・耐食合金部材及び耐熱・耐食合金部材の製造方法 | |
JP2001271165A (ja) | Ti−Al系合金の耐高温酸化性の表面改質方法 | |
Peng et al. | Role of chromium ion implantation on the corrosion behavior of zircaloy-4 in 0.5 M H2SO4 | |
JP4641091B2 (ja) | 金属材料表面に対する炭窒化物層形成方法及び表面に炭窒化物層を備えるチタン系金属材料 | |
JP2001226761A (ja) | ニオブ系耐熱材料の耐酸化被膜構造およびその形成方法 | |
Chen et al. | Oxidation behavior of niobized TiAl by plasma surface alloying |