JP2002322085A - 知的機能障害治療剤 - Google Patents

知的機能障害治療剤

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JP2002322085A
JP2002322085A JP2001129759A JP2001129759A JP2002322085A JP 2002322085 A JP2002322085 A JP 2002322085A JP 2001129759 A JP2001129759 A JP 2001129759A JP 2001129759 A JP2001129759 A JP 2001129759A JP 2002322085 A JP2002322085 A JP 2002322085A
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Japan
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oxytocin
therapeutic agent
intelligent
dysfunction
disease
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Kazuhito Tomizawa
一仁 富澤
Hideki Matsui
秀樹 松井
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 副作用が少なく、様々な疾患に有効な知的機
能障害治療剤を提供する。 【解決手段】 オキシトシンまたはオキシトシン類似体
を有効成分とする知的機能障害治療剤。オキシトシン
は、9個のアミノ酸からなる環状ペプチドホルモンであ
り、子宮収縮、乳汁分泌促進作用があることは知られて
いる。オキシトシン類似体とは、オキシトシンのアミノ
末端側から6番目のGlnがThrに置換され、3番目
のProがGlyに置換されているペプチドを特にい
う。知的機能障害とは、記憶、見当識、言語、判断力な
どの障害をいう。その具体的疾患としては、アルツハイ
マー病、パーキンソン病、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外
傷後遺症、水頭症、脳炎、髄膜炎など。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オキシトシンまた
はオキシトシン類似体を有効成分とする知的機能障害治
療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】知的機能障害の治療方法としては、唯一
アルツハイマー型痴呆における痴呆症状の進行抑制に対
するアセチルコリンエステラーゼ阻害剤の有効性(ロジ
ャーズエスエルら、Neurology、50巻、136頁、1
988年、およびロジャーズエスエルら、Neuropsychop
harmacol.、8巻、67頁、1988年)が報告されて
いる。具体的にはアセチルコリンエステラーゼ阻害剤と
して塩酸ドネペジルがすでに商品化されている(商品
名:アリセプト錠、エーザイ株式会社製)。
【0003】アセチルコリンエステラーゼ阻害剤の作用
機構は、脳内伝達物質の1種であるアセチルコリンの加
水分解酵素であるアセチルコリンエステラーゼを阻害す
ることにより、脳内でのアセチルコリン濃度を高め、コ
リン作動性神経の神経伝達を促進することによる。
【0004】このような作用機構から、アセチルコリン
エステラーゼ阻害剤は、脳内のコリン作動性神経系の顕
著な障害が原因である症状、たとえばアルツハイマー型
痴呆症状の進行には有効であるが、ほかの疾患の痴呆症
状に対してはその効果が期待できない。つまり、用途が
非常に限られているという欠点がある。また、前述の塩
酸ドネペジルを有効成分とする薬剤では、全体の10.
5%に副作用が認められている。主な副作用は、嘔気・
食欲不振、嘔吐、振戦、興奮、不眠などである。
【0005】一方、オキシトシンはアミノ酸配列
【0006】
【外1】
【0007】を有するペプチドであり、一般に出産時に
おける子宮収縮、授乳時の乳汁分泌促進作用があること
が知られている。
【0008】現在は、前記作用にもとづき(1)分娩誘
発、微弱陣痛、(2)弛緩出血、胎盤娩出前後、子宮復
古不全、流産、人工妊娠中絶、および(3)帝王切開術
の場合の子宮収縮の誘発、促進ならびに子宮出血の治療
目的に臨床使用されている。
【0009】オキシトシンレセプターについては、脳
内、とくに空間認識、見当識などに最も重要な部分であ
る海馬に、豊富に存在することは知られていたが、その
作用については報告されていない。また、オキシトシン
が知的機能障害に有効であるといった報告もまったくな
されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる従来の
問題点を解決し、副作用が少なく、様々な疾患に有効な
知的機能障害治療剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に鋭意検討を重ねた結果、ヒトのホルモンの1種である
オキシトシンが、知的機能障害の治療薬として有用であ
り、知的機能を向上させることをみいだした。
【0012】すなわち本発明は、オキシトシンまたはオ
キシトシン類似体を有効成分とする知的機能障害治療剤
に関する。
【0013】前記治療剤を記憶学習能力を向上させるた
めに用いるのが好ましい。
【0014】前記治療剤を痴呆性疾患を改善させるため
に用いるのが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】オキシトシンは前述したように、
アミノ酸配列
【0016】
【外2】
【0017】を有するペプチドである。
【0018】またオキシトシンは生理活性物質であり、
その安全性は非生理薬剤より高い。
【0019】本発明によれば、オキシトシンは神経細胞
のオキシトシンレセプターに作用し、そののちGタンパ
ク質の活性化、MAPキナーゼの活性化を経て最終的に
転写調節因子CREBを活性化することにより、知的機
能を向上させる。
【0020】本発明において、「オキシトシン類似体」
とは、9個のアミノ酸からなるペプチドで、オキシトシ
ンレセプターに親和性があり、同レセプターに結合しオ
キシトシンと同様の作用を有するものをいう。そのよう
なオキシトシン類似体としては、とくにオキシトシンの
アミノ末端側から6番目のGlnがThrに置換され、
3番目のProがGlyに置換されている[Gly3
Thr6]−オキシトシン
【0021】
【外3】
【0022】などがあげられる。これらのオキシトシン
類似体は、当業者に既知の方法、たとえばペプチドの固
相法などを用いて製造することができる。
【0023】「知的機能障害」とは、記憶、見当識、言
語、判断力などの知的機能に障害をきたすことを指す。
具体的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソ
ン病、脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷後遺症、水頭症、
各種脳炎・髄膜炎などがあげられる。これらの疾患にお
いてオキシトシンレセプターの異常は認められないた
め、これらすべての疾患においてオキシトシンを知的機
能障害治療剤として適用できる。
【0024】本発明の治療剤の投与経路としては、経
皮、静脈内、筋肉内、皮下、局所投与、腸吸収性剤の内
服があげられる。急激な血中濃度の上昇を起させないよ
うに、皮下および筋肉内投与がより好ましい。
【0025】治療剤の剤形は投与方法によって適宜設定
することができる。具体的には、液剤、たとえば、水溶
液、乳剤、懸濁液などがあげられる。通常は、皮下、筋
肉内投与が好ましいため、水溶液が好ましい。
【0026】投与量は、投与方法、適用する患者の年
齢、体重、病状などによって適宜設定することができる
が、有効成分に換算して1日に0.005〜10mg/
kgが好ましい。0.005mg/kgより少ないと知
的機能障害治療薬としての効果が得られなくなる恐れが
あり、10mg/kgより多いと副作用がでる恐れがあ
る。投与量の下限は0.005mg/kgであるが0.
01mg/kgがより好ましい。投与量の上限は10m
g/kgであるが1mg/kgがより好ましい。
【0027】本発明の治療剤の製剤化には、その剤形に
合わせて通常当業者により使用される様々な添加物を使
用することができる。たとえば、希釈剤、等張化剤、担
体、pH安定剤などがあげられる。
【0028】投与方法の具体例としては、点滴静注する
場合、1日につき有効成分0.01〜1mg/kgをブ
ドウ糖液または生理食塩水に溶解し0.01〜1μMと
し投与することができる。筋肉注射の場合、1日につき
有効成分0.01〜1mg/kgを生理食塩水に溶解し
て投与することができる。皮下注射の場合も、1日につ
き有効成分0.01〜1mg/kgを生理食塩水に溶解
して投与することができる。投与は単回または複数回の
どちらで行なっても良い。
【0029】これらの投与法は、すでに子宮収縮の誘
発、促進ならびに子宮出血の治療目的に臨床使用されて
いる投与量、投与方法、剤形であり、安全性は確立され
ている。
【0030】オキシトシンまたはオキシトシン類似体の
知的機能向上作用は、海馬における電気的刺激に対する
応答を観察することによって評価することができる。超
長期増強(以下、L−LTPと略称する)誘導が促進さ
れると、記憶・学習などの高次機能に最も重要な役割を
している海馬に可逆的変化が起こり、そして神経伝達効
率が長期に上昇するため知的機能が改善する。
【0031】また、知的機能向上作用の1つとして空間
学習向上効果を、マウスにより図3に示す8方向放射迷
路を用いて評価することができる(ナカムラら(Nakamu
ra et al.)、Acta Neurochir、141巻、407〜4
13頁、1999年)。この8方向放射迷路は中央の8
角形の部屋と8つのアームからなっており、壁の高さは
6cmである。アームは透明な素材でできており、側面
から内部を見ることができ、さらに、マウスが空間を認
識できるように8方向放射迷路を置く部屋には四方に目
印が付してあり、実験時には常に同じ方向になるように
迷路を設置する。アームの内部と中央の8角形の部屋の
間は扉bで仕切られており、中央の8角形の部屋からは
餌aを見たり、臭いをかいだりすることはできない。マ
ウスがアーム中に入ろうとして扉bを押すと扉bがアー
ム内部に持ち上がりマウスが通過できるようになる。
【0032】実験は、ランダムに選択したアームの端に
小片の餌aを置き、マウスを中央の8角形の部屋に入れ
て行ない、マウスが餌を置いていないアームに入った場
合、あるいは一度すでに餌の置いてあるアームに入り餌
を食べたのち、再度同じ餌のアームに入った場合をエラ
ー数として数えて評価することができる。空間学習の向
上に伴ってエラー数は減少する。
【0033】
【実施例】ここで、本発明の知的機能障害治療剤の効果
を実施例にもとづいて更に、詳細に説明するが、本発明
はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0034】実施例1 L−LTP誘導促進作用 ル ワイ エフ(Lu Y. F.)らの文献(Eur. J. Neuros
ci.、第11巻、75〜82頁、1999年)にしたが
い、10週のウイスターラットより海馬スライスを作製
した。すなわち、ラットをエーテル麻酔下で断頭屠殺
し、頭蓋骨を素早く取り除き、脳を摘出した。取り出し
た脳を、95%O2および5%CO2の混合ガスで飽和さ
せて氷冷した人工脳脊髄液(124mM 塩化ナトリウ
ム、4.4mM 塩化カリウム、2.5mM 塩化カル
シウム、1.3mM 硫酸マグネシウム、1mM リン
酸二水素一ナトリウム、26mM 炭酸水素ナトリウ
ム、10mM グルコース)(以下、ACSFと略称す
る)中にて1分間放置した。ついで、95%O2および
5%CO2で飽和させたACSF(以下、95%O2+5
%CO2+ACSFと略称する)を満たしたシャーレに脳
を移し、脳べラを用いて海馬を摘出した。取り出した海
馬はマキルウェイン組織チョッパー(McILwain tissue
chopper)を用いて厚さ400μmのスライスにした。
該スライスを、95%O2+5%CO2+ACSFを満たし
た器に入れ、酸素を充分に供給しながら、室温で40分
間インキュンベーションした。
【0035】前記海馬スライスのシェファー側枝に、電
気刺激装置(SEN3301、日本光電社製)を用いて
0.017 Hzのテスト刺激を行なった。そして、同
刺激に対する興奮性シナプス後電位(以下EPSPと略
称する)をガラス電極で記録し、電気信号増幅器(Axop
atch-1D、アキソン インスツルメント 社製)で増幅
後、マッキントッシュ解析ソフトMacLAB(アップ
ルコンピューター社製)で解析した。テスト刺激の強さ
は、最大EPSPが得られる刺激の50%に設定した
(このときのEPSPスロープを約100%とした)。
EPSPスロープが約100%で安定したのち、5μM
オキシトシン(カタログNo.O6379、シグマ社
製)を含有した95%O2+5%CO2+ACSFを30
分環流した。コントロールでは、オキシトシンを含有し
ない95%O2+5%CO2+ACSFを30分間環流し
た。30分間の環流のうち20分間環流したところで、
前記電気刺激装置を用いて、海馬スライスに100 H
z、1秒の刺激を1回与えた(図1に矢印で示す)。刺
激によるEPSPの変化を図1に示す。
【0036】コントロール群では、刺激後EPSPの上
昇が認められるがそののち徐々にEPSPは減少し、刺
激2時間後では、刺激前と同じレベルにまで減少した。
一方、オキシトシン含有ACSFを環流したスライスで
は、刺激後3時間を経過した後においても100%以上
のEPSPが認められた。これはオキシトシンを環流す
ることにより、100 Hz、1秒1回の刺激で、L−
LTPを誘導することが可能であることを示す。
【0037】図2は図1における刺激1時間後と刺激3
時間後の結果をグラフで表したものである。刺激1時間
後では、オキシトシン環流スライスもコントロールスラ
イスも同レベルのEPSPの上昇が認められた。しか
し、刺激3時間後では、コントロール群ではEPSPは
刺激前のレベル(100%)まで減少したが、オキシト
シン環流群では、142%のEPSPの上昇が認めら
れ、両群に有意な差が認められた。図中の*はコントロ
ールと比較してP<0.01であることを示す。
【0038】実施例2 オキシトシンにかえて[Gly3、Thr6]−オキシト
シン(カタログNo.O6380、シグマ社製)を使用
したほかは実施例1と同様の方法でL−LTP誘導促進
作用を検討した。
【0039】刺激1時間後では、EPSPの値はコント
ロールで140±12、[Gly3、Thr6]−オキシ
トシンで136±7と、有意な差は認められなかった
が、3時間後ではコントロール96±7.3、[Gly
3、Thr6]−オキシトシン128±4.9で有意な差
(P<0.01)が認められた。
【0040】実施例3 空間学習促進効果 10週齢C57BL6マウスに、1mg/kg量のオキ
シトシン(カタログNo.O6379、シグマ社製)を
1mg/mlの濃度になるよう生理食塩水にて希釈し、
1日1回5日間皮下投与を行なった。コントロールは、
同量の生理食塩水のみを同じく1日1回5日間皮下投与
した。そののち、図3で示す8方向放射迷路を使用して
空間学習実験を1日1回行ない、マウスがすべての餌を
食べ終わった時点で終了とした。空間学習実験中は、体
重を実験前の85%に維持するよう餌を与えた。実験で
は、8方向放射状アームのうち5つのアームの隅に固形
餌の小片を置いた。そののち、マウスを中央の8角形の
部屋の中央に置き、マウスの行動を観察した。
【0041】マウスが餌を置いていないアームに入った
場合、あるいは一度すでに餌の置いてあるアームに入り
餌を食べたのち、再度同じ餌のアームに入った場合をエ
ラー数として数えた。
【0042】空間学習実験開始1日、2日後ではエラー
数に有意な差は認められないが、3日後、オキシトシン
投与群において、コントロール群と比較して有意にエラ
ー数が減少した(図4参照)。図中*は、P<0.05
を示す。
【0043】この結果は、オキシトシン投与により、学
習能力が向上することを意味するものである。
【0044】
【発明の効果】本発明による、オキシトシンまたはオキ
シトシン類似体を有効成分とする知的機能障害治療剤
は、副作用が少なく、様々な疾患の知的機能障害に有効
であり、記憶学習能力を向上させる。
【0045】
【配列表フリーテキスト】配列番号2:合成ペプチド
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Tomizawa, Kazuhito <110> Matsui, Hideki <120> A agent for treating intellectual disorder comprising oxytocin or oxytocin derivative <130> JP-12719 <140> <141> <160> 2 <170> PatentIn Ver. 2.0 <210> 1 <211> 9 <212> PRT <213> human <220> <221> DISULFID <222> (4)..(9) <400> 1 Gly Leu Pro Cys Asn Gln Ile Tyr Cys 1 5 <210> 2 <211> 9 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <221> DISULFID <222> (4)..(9) <223> synthetic peptide <400> 2 Gly Leu Gly Cys Asn Thr Ile Tyr Cys 1 5
【図面の簡単な説明】
【図1】海馬スライスの電気生理学的変化を示す図であ
り、矢印は100Hz1秒の刺激を示す。
【図2】刺激を与えたのち1時間後または3時間後のE
PSPスロープを示すグラフである。
【図3】8方向放射迷路を上部から見た平面図である。
【図4】空間学習実験におけるエラー数と実験開始から
の日数との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C084 AA02 BA17 BA24 DB28 MA17 MA22 MA23 MA52 MA63 MA65 MA66 NA14 ZA15 ZA16 ZC54

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オキシトシンまたはオキシトシン類似体
    を有効成分とする知的機能障害治療剤。
  2. 【請求項2】 記憶学習能力を向上させるための請求項
    1記載の治療剤。
  3. 【請求項3】 痴呆性疾患を改善させるための請求項1
    記載の治療剤。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2011073984A1 (en) * 2009-12-17 2011-06-23 Liora Emanuel Methods for the treatment of speech impediments
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