JP2002309060A - 柔軟な熱可塑性重合体組成物 - Google Patents

柔軟な熱可塑性重合体組成物

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JP2002309060A JP2001117283A JP2001117283A JP2002309060A JP 2002309060 A JP2002309060 A JP 2002309060A JP 2001117283 A JP2001117283 A JP 2001117283A JP 2001117283 A JP2001117283 A JP 2001117283A JP 2002309060 A JP2002309060 A JP 2002309060A
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thermoplastic polymer
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Toyoaki Kurihara
豊明 栗原
Haruhisa Masuda
晴久 増田
Shigeru Sasaki
繁 佐々木
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多層構造重合体粒子の良好な透明性を維持し
つつ、さらに柔軟で、低温下での耐衝撃性および成形性
に優れた熱可塑性重合体組成物を提供すること、また、
該熱可塑性重合体組成物からなる成形品および積層構造
体を提供すること。 【解決手段】 アクリル酸エステル単位からなる架橋ゴ
ム成分層(I)と最外層にメタクリル酸エステル単位か
らなる数平均分子量30000以下の熱可塑性樹脂成分
層(II)とを少なくとも有する多層構造重合体粒子
(A)100質量部;炭素数26〜200の多価カルボ
ン酸アルキルエステルからなる可塑剤(B)1〜120
質量部;およびアクリル樹脂(C)100質量部以下;
を含有する熱可塑性重合体組成物、並びに該組成物から
なる成形品および該組成物からなる層を有する積層構造
体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂およ
び架橋ゴムからなる多層構造重合体粒子および特定の可
塑剤からなる熱可塑性重合体組成物に関するものであ
る。さらに詳細には、熱可塑性樹脂成分層と架橋ゴム成
分層とからなる多層構造重合体粒子に、特定の条件を満
たす可塑剤と所望によりアクリル樹脂とを添加すること
によって得られ、柔軟性、透明性に優れるのみならず、
低温下での耐衝撃性に極めて優れ、さらに射出成形性に
も優れるといった特長を有する熱可塑性樹脂組成物、並
びに該熱可塑性重合体組成物からなる成形品および該熱
可塑性重合体組成物からなる層を有する積層構造体に関
する。
【0002】
【従来の技術】多層構造重合体粒子は、コア−シェル
(core−shell)型重合体とも称され、内部に
ゴム成分からなる層を含有し、最外部に熱可塑性樹脂成
分からなる層を含有する構造を有しており、ポリ塩化ビ
ニル、ポリエステル、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂
の改質などに用いられている。中でも靭性付与の改質剤
として有用であることが知られている。
【0003】しかし、靭性付与を目的として使用される
これらの多層構造重合体粒子は、それを単独で成形した
場合、柔軟性に優れる成形品が得られるが、最外層を構
成する熱可塑性樹脂成分が少ないために成形性が悪く、
実用性に欠けたものとなる。また、該多層構造重合体粒
子の熱可塑性樹脂成分を多くすることで、成形性を良好
なものとした場合、柔軟性を犠牲にすることになり、弾
性回復性(低永久歪み特性)が低下する。さらに、多層
構造重合体粒子においては、透明性を良好なものとする
目的から、該多層構造重合体粒子を形成する各層の屈折
率を一致させるのが一般的であるが、犠牲となった柔軟
性を回復する目的でゴム成分層のガラス転移点を低くす
ると各層の屈折率を一致させるのが困難となり、透明性
の良好なものが得られなくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
した多層構造重合体粒子の良好な透明性を維持しつつ、
さらに柔軟で、低温下での耐衝撃性および成形性に優れ
る熱可塑性重合体組成物を提供することにある。また本
発明の他の目的は、該熱可塑性重合体組成物からなる成
形品および該熱可塑性重合体組成物からなる層を有する
積層構造体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために種々の検討を行い、多層構造重合体粒
子に、特定の条件を満たす可塑剤を添加することによ
り、優れた透明性を維持しつつ、低温下での耐衝撃性、
柔軟性、成形性、接着性が改良されることを見出し、本
発明を完成するに至った。
【0006】すなわち本発明は、 [A](1)少なくとも1つの下記ゴム成分層(I)を
内部に有し、かつ少なくとも1つの下記熱可塑性樹脂成
分層(II)を少なくとも最外部に有する、2以上の層か
らなる多層構造重合体粒子であって; (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜
99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能
な他の単官能性単量体49.99〜0質量%および多官
能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物
(i)の共重合によって形成される重合体層であり; (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エス
テル40〜100質量%および該メタクリル酸エステル
と共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量
体(ii)の重合によって形成される重合体層であり; (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置す
る層を構成する重合体について、GPC法で測定された
数平均分子量は30,000以下であり; (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層
(II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において
30/70〜90/10の範囲内であり; (6)平均粒子径が150nm以下である;多層構造重
合体粒子(A)100質量部; [B]炭素数26〜200の多価カルボン酸アルキルエ
ステルからなる可塑剤(B)1〜120質量部;並びに [C]GPC法で測定された数平均分子量が30,00
0〜200,000のアクリル樹脂(C)100質量部
以下;を含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成
物である。
【0007】さらに、本発明は、該熱可塑性重合体組成
物からなる成形品、および該熱可塑性重合体組成物から
なる層を有する積層構造体である。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。本発明に用いる多層構造重合体粒子(A)は、ゴ
ム成分層(I)を内部に少なくとも1層有し、かつ熱可
塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外層として有す
る。多層構造重合体粒子(A)を構成する層の数は、2
層以上であればよく、3層で構成されていても4層以上
で構成されていてもよい。2層構造の場合は、層(I)
(中心層)/層(II)(最外層)の構成であり、3層構
造の場合は、層(I)(最内層)/層(I)(中間層)
/層(II)(最外層)、層(I)(最内層)/層(II)
(中間層)/層(II)(最外層)または層(II)(最内
層)/層(I)(中間層)/層(II)(最外層)の構成
であり、4層構造の場合には、例えば、層(I)(最内
層)/層(II)(中間層)/層(I)(中間層)/層
(II)(最外層)の構成を有することができる。これら
の中でも、取扱い性に優れる点において、層(I)(中
心層)/層(II)(最外層)の2層構造;または層
(I)(最内層)/層(I)(中間層)/層(II)(最
外層)若しくは層(II)(最内層)/層(I)(中間
層)/層(II)(最外層)の3層構造が好ましい。
【0009】また、層(I)と層(II)の総質量比は、
(I)/(II)において30/70〜90/10の範囲
内である。層(I)の割合がこの範囲より小さいと、可
塑剤(B)をゴム成分層(1)に浸透させることが困難
になり、また得られる成形品における弾性回復性が不十
分となる。反対に層(I)の割合がこの範囲より大きい
と、層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流
動性が極端に低下してしまうため混練および成形が困難
となる。なお、層(I)の総質量とは、多層構造重合体
粒子(A)中の層(I)が1層のみの場合には該層の質
量であり、層(I)が2層以上の場合にはそれらの層の
質量の和である。同様に、層(II)の総質量とは、多層
構造重合体粒子(A)中の層(II)が1層のみの場合に
は該層の質量であり、層(II)が2層以上の場合にはそ
れらの層の質量の和である。層(I)と層(II)の総質
量比は、50/50〜90/10〜90/10であるの
が好ましく、60/40〜80/20であるのがより好
ましい。
【0010】多層構造重合体粒子(A)における層
(I)は、アクリル酸エステル50〜99.99質量
%、好ましくは55〜99.9質量%、該アクリル酸エ
ステルと共重合可能な他の単官能性単量体49.99〜
0質量%、好ましくは44.9〜0質量%および多官能
性単量体0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜2
質量%からなる単量体混合物(i)の共重合によって形
成されるゴム弾性を有する重合体層である。
【0011】層(I)を形成するために用いられるアク
リル酸エステルの具体例としては、メチルアクリレー
ト、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、
イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、
イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t
−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシ
ルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘ
キシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ド
デシルアクリレート、オクタデシルアクリレート等のア
クリル酸と飽和脂肪アルコールとのエステル;フェニル
アクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸と
芳香族アルコールとのエステルなどが挙げられる。アク
リル酸エステルは、層(I)(多層構造重合体粒子
(A)が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれ
の層(I))を形成するために用いられる単量体混合物
(i)に対して50〜99.99質量%の範囲におい
て、単独でまたは2種以上混合して用いられる。アクリ
ル酸エステルの量が50質量%より少ないと多層構造重
合体粒子(A)のゴム弾性が低下することになり、ま
た、99.99質量%を超えると多層構造重合体粒子
(A)の構造が形成されなくなるので、いずれも好まし
くない。
【0012】層(I)を形成するために用いられる多官
能性単量体は、分子内に炭素−炭素二重結合を2個以上
有する単量体であり、例えば、アクリル酸、メタクリル
酸、桂皮酸等の不飽和モノカルボン酸とアリルアルコー
ル、メタリルアルコール等の不飽和アルコールまたはエ
チレングリコール、ブタンジオール等のグリコールとの
エステル;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マ
レイン酸等のジカルボン酸と前記の不飽和アルコールと
のエステル等が包含され、具体的には、アクリル酸アリ
ル、アクリル酸メタリル、メタクリル酸アリル、メタク
リル酸メタリル、桂皮酸アリル、桂皮酸メタリル、マレ
イン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジア
リル、イソフタル酸ジアリル、ジビニルベンゼン、エチ
レングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオー
ルジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メ
タ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性単
量体の中でも、メタクリル酸アリルが特に好ましい。な
お、前記の「ジ(メタ)アクリレート」は、「ジアクリ
レート」と「ジメタクリレート」との総称を意味する。
多官能性単量体は、層(I)(多層構造重合体粒子
(A)が2以上の層(I)を有する場合には、それぞれ
の層(I))を形成するために用いられる単量体混合物
(i)に対して0.01〜10質量%の範囲において、
単独でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。多官
能性単量体の量が、10質量%より多いと、多層構造重
合体粒子(A)がゴム弾性を示さなくなり、弾性回復性
が不十分となるので好ましくない。また、多官能性単量
体の量が0.01質量%より少ないと、層(I)が粒子
構造として保持されなくなるので好ましくない。
【0013】層(I)を形成するためには、アクリル酸
エステルおよび多官能性単量体以外に、アクリル酸エス
テルと共重合可能な他の単官能性単量体を併用すること
ができる。該他の単官能性単量体としては、メチルメタ
クリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタ
クリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチル
メタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチル
メタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメ
タクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シ
クロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレー
ト、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレ
ート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレ
ート、オクタデシルメタクリレート等のメタクリル酸と
飽和脂肪アルコールとのエステル;フェニルメタクリレ
ート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸と芳香
族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステル
が代表的であるが、他にも、スチレン、α−メチルスチ
レン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4
−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4
−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレ
ン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチ
レン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メ
タクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;ブタジ
エン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、2−
メチル−3−エチルブタジエン、1,3−ペンタジエ
ン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2−エチル−
1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メ
チル−1,3−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,
3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、3−メチル
−1,3−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、シク
ロペンタジエン、クロロプレン、ミルセン等の共役ジエ
ン系単量体等が挙げられる。これらの単量体は、必要に
応じて、層(I)(多層構造重合体粒子(A)が2以上
の層(I)を有する場合には、それぞれの層(I))を
形成するために用いられる単量体混合物(i)に対して
49.99質量%以下の割合において、単独でまたは2
種以上を混合して用いることができる。上記の他の単官
能性単量体の割合が49.99質量%を超える場合は、
多層構造重合体粒子(A)の耐候性が不十分となるので
好ましくない。
【0014】多層構造重合体粒子(A)における層(I
I)は、メタクリル酸エステル40〜100質量%、好
ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは80〜9
9質量%およびそれと共重合可能な他の単量体60〜0
質量%、好ましくは40〜1質量%、さらに好ましくは
20〜1質量%からなる単量体(ii)の重合によって形
成される熱可塑性を有する重合体層である。メタクリル
酸エステルの量が40質量%未満であると多層構造重合
体粒子(A)の耐候性が不十分となる。
【0015】層(II)を形成するために用いられるメタ
クリル酸エステルの具体例としては、メチルメタクリレ
ート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレ
ート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタク
リレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタク
リレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリ
レート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘ
キシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリ
スチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ス
テアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、オ
クタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、
ベンジルメタクリレート等が挙げられ、好ましくはメチ
ルメタクリレートである。
【0016】層(II)を形成するために用いられる共重
合可能な他の単量体の具体例としては、メチルアクリレ
ート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレー
ト、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレー
ト、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレー
ト、t−ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、
ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エ
チルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレー
ト、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート
等のアクリル酸アルキルエステル;スチレン、α−メチ
ルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレ
ン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレ
ン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジル
スチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン
化スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリ
ル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;
マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイ
ミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレ
イミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニル
マレイミド、N−(p−ブロモフェニル)マレイミド、
N−(クロロフェニル)マレイミド等のマレイミド系単
量体;前記例で示した多官能性単量体等が挙げられる。
これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレ
ート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキル
エステルが好ましい。
【0017】層(I)はゴム弾性を有する重合体成分か
ら構成され、層(II)は熱可塑性を有する重合体成分か
ら構成されるように、それぞれ、上記した単量体の種類
および使用割合の範囲内で適宜条件を選択すればよい。
【0018】多層構造重合体粒子(A)においては、そ
の中に含有される層(II)のうち少なくとも粒子の最外
層を構成する共重合体の数平均分子量が、GPC(ゲル
パーミエーションクロマトグラフィー)法での測定に基
づいて30,000以下であることが必要である。数平
均分子量が30,000を超える場合、得られる成形品
における弾性回復性が不十分となり、さらに溶融流動性
が低下する場合もある。数平均分子量の下限について
は、必ずしも厳密な制限はないが、生産工程の通過性の
点からは、数平均分子量は1,000を下回らないこと
が好ましい。弾性回復性および生産工程の通過性の両立
の点からは、数平均分子量を3,000〜20,000
の範囲内とすることが特に好ましい。
【0019】多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径
は、150nm以下であり、好ましくは80〜120n
mである。150nmより大きいと弾性回復性が不十分
となる。また、溶融流動性が良くない場合もある。平均
粒子径の下限値については特に限定されるものではない
が、多層構造重合体粒子(A)の所定の層構造を形成さ
せやすい観点からは、平均粒子径は30nm以上である
ことが好ましい。
【0020】本発明に用いる多層構造重合体粒子(A)
は、ゴム成分層を形成させるための重合反応工程と熱可
塑性樹脂成分層を形成させるための重合反応工程とを所
定の順序で行うことによって、中心部から外部に向かっ
て順次層を形成させることからなる、少なくとも1つの
ゴム成分層を内部に有し、かつ少なくとも1つの熱可塑
性樹脂成分層を少なくとも最外部に有する、2つ以上の
層からなる多層構造重合体粒子(A)を製造するための
公知の製造方法に準じて、製造することができる。ただ
し、その際、以下の点に留意する必要がある。
【0021】(1)ゴム成分層(I)を形成させるため
の重合反応工程(a)において、アクリル酸エステル5
0〜99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合
可能な他の単官能性単量体49.99〜0質量%および
多官能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混
合物(i)を共重合させること。
【0022】(2)熱可塑性樹脂成分層(II)を形成さ
せるための重合反応工程(b)において、メタクリル酸
エステル40〜100質量%および該メタクリル酸エス
テルと共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる
単量体(ii)を重合させること。
【0023】(3)該重合反応工程(b)のうち、少な
くとも、最外部の熱可塑性樹脂成分層(II)を形成させ
るための重合反応工程において、分子量調節剤を単量体
(ii)に対して0.4〜10質量%の範囲内となる割合
で使用して重合反応を行うこと。
【0024】(4)全重合反応工程で使用する単量体混
合物(i)の総質量と単量体(ii)の総質量との比を、
単量体混合物(i)/単量体(ii)において30/70
〜90/10の範囲内とすること。
【0025】(5)全ての重合反応工程が終了した時点
における多層構造重合体粒子(A)の平均粒子径が15
0nm以下となるように制御すること。
【0026】本発明において、多層構造重合体粒子
(A)は、特に物性面および製造の簡便性の点から最内
部にゴム成分層(Ia)を有し、該最内部の外部表面を
覆う状態で位置する隣接部にゴム成分層(Ib)を有
し、かつ最外部に熱可塑性樹脂成分層(II)を有する3
層構造の多層構造重合体粒子であるのが好ましい。
【0027】層(Ia)および(Ib)を形成するため
に用いられるアクリル酸エステル、多官能性単量体およ
びその他のアクリル酸エステルと共重合可能な多の単官
能性単量体としては、前述の層(I)を形成するために
用いられる単量体を使用することができる。本発明の熱
可塑性重合体組成物を成形して得られる成形品におい
て、優れた柔軟性と他の機械的物性とを両立させるに
は、好ましい多層構造重合体粒子(A)の層(Ia)お
よび層(Ib)について、単量体混合物(ia)におけ
るアクリル酸エステルの含有率(質量%)と単量体混合
物(ib)におけるアクリル酸エステルの含有率(質量
%)との差〔(ia)−(ib)または(ib)−(i
a)(単位:質量%)〕が3質量%以上となることが好
ましく、〔(ia)−(ib)(単位:質量%)〕が3
質量%以上となることがより好ましい。
【0028】好ましい多層構造重合体粒子(A)におい
ては、層(Ia)および層(Ib)がゴム弾性を有する
重合体成分から構成され、層(II)が熱可塑性を有する
重合体成分から構成されるように、それぞれ上記したよ
うな単量体の種類および使用割合の範囲内で適宜条件を
選択すればよい。ただし、成形品について透明性がより
重視される場合には、多層構造重合体粒子(A)中の相
互に隣接する重合体層の間〔例えば、多層構造重合体粒
子(A)が3層構造である場合、層(Ia)と層(I
b)の間、および層(Ib)と層(II)の間〕における
屈折率の差が小さくなるように、各層を形成させるため
の単量体の種類および使用割合を適宜選択することが好
ましい。
【0029】すなわち、本発明に用いる好ましい多層構
造重合体粒子(A)においては、その中に含有される任
意の1つの層(I)を構成する共重合体の屈折率n
(I)と任意の1つの層(II)を構成する共重合体の
屈折率n(II)との差の絶対値が、層(I)と層(I
I)とのすべての組合せにおいて、いずれも0.005
未満となるよう各層を形成する単量体混合物を構成する
単量体の種類および質量分率を選択することが好まし
い。n(I)−n(II)の絶対値は、0.001以
下であるのがより好ましい。n(I)−n(II)の
絶対値が0.005未満である場合、得られる熱可塑性
重合体組成物における透明性がより優れたものとなる。
【0030】さらに、ゴム成分層(I)に包含される層
(Ia)および層(Ib)については、層(Ib)の屈
折率を、その内側に隣接する層(Ia)の屈折率とその
外側に隣接する熱可塑性樹脂成分層(II)の屈折率との
間の値となるように、形成する単量体の種類および量を
調整しておくことが、得られる熱可塑性重合体組成物の
透明性の点から好ましい。
【0031】各層の屈折率は、「POLYMER HANDBOOK 3rd
Edition」6/第453〜457頁(Wiley Interscien
ce社、1989年発行)から、20℃または23℃にお
けるホモポリマーの値(ポリメチルメタクリレート1.
4893、ポリn−ブチルアクリレート1.466、ポ
リスチレン1.59、ポリメチルアクリレート1.47
2)を引用し、共重合組成割合に応じて加成則により計
算することができる。
【0032】本発明に用いる好ましい多層構造重合体粒
子(A)においては、ゴム成分層(Ia)および(I
b)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との
比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50
/50〜90/10の範囲内である。層(Ia)および
層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より小さいと多
層構造重合体粒子(A)単独またはそれと合成樹脂との
樹脂組成物を成形して得られる成形品における弾性回復
性および柔軟性が不十分となり、反対に層(Ia)およ
び層(Ib)の質量の和の割合がこの範囲より大きいと
層構造を完全な形態では形成しにくくなり、溶融流動性
が極端に低下してしまうため成形および他の合成樹脂と
の混練が困難となる。本発明の効果をより顕著なものと
する目的においては、ゴム成分層(Ia)および(I
b)の質量の和と熱可塑性樹脂成分層(II)の質量との
比は、〔(Ia)+(Ib)〕/(II)において、50
/50〜90/10の範囲内であることが好ましい。
【0033】本発明に用いる好ましい多層構造重合体粒
子(A)においては、その中に含有されるゴム成分層
(I)に包含されるすべての層について、n層目の単量
体混合物の水に対する溶解度Aおよびこれと隣接する
n+1層目の単量体混合物の水に対する溶解度An+1
の差の絶対値が、0.36以下となるよう単量体混合物
を構成する単量体の種類および質量分率を選択すること
が好ましい。但し、Aはn番目の層を形成する単量体
混合物を構成する各単量体における質量分率と該単量体
の20℃での水に対する溶解度(g/100gHO)
との積の総和を表し、An+1はn+1番目の層を形成
する単量体混合物を構成する各単量体における質量分率
と該単量体の20℃での水に対する溶解度(g/100
gHO)との積の総和を表す。A−An+1の絶対
値が0.36以下である場合、得られる熱可塑性重合体
組成物の透明性がより優れたものとなる。
【0034】ゴム成分層(I)を形成する単量体として
好ましく用いられる単量体の20℃における水に対する
溶解度としては、メチルメタクリレート1.6g/10
0gHO、n−ブチルアクリレート0.08g/10
0gHO、スチレン0.04g/100gHOを使
用することができる。
【0035】本発明の熱可塑性重合体組成物で用いる可
塑剤(B)は、炭素数26〜200の多価カルボン酸ア
ルキルエステルからなるものである。ここでいう炭素数
とは、多価カルボン酸アルキルエステルを構成する多価
カルボン酸の炭素数と、アルキル基の炭素数との合計を
意味する。多価カルボン酸アルキルエステルの炭素数が
25以下であると、可塑剤が環境ホルモンとして人体に
影響を及ぼす恐れがあり、200を超えると、多層構造
重合体粒子(A)内部への浸透が減少し、添加量に対し
て低温下での耐衝撃性の改善効果が少なくなる。多価カ
ルボン酸アルキルエステルを構成する多価カルボン酸
は、芳香族多価カルボン酸または脂肪族多価カルボン酸
のいずれであってもよく、炭素数は8以上であるのが好
ましく、8〜50であるのがより好ましい。多価カルボ
ン酸のカルボキシル基の数は2価であるのが好ましい
が、脂肪族多価カルボン酸の場合、不飽和脂肪族カルボ
ン酸オリゴマーのようなカルボキシル基の数の互いに異
なる構造の混合物であってもよく、またカルボキシル基
はその全てがアルキル基とのエステルを形成しているの
が好ましい。多価カルボン酸アルキルエステルを構成す
るアルキル基の炭素数は、4以上であるのが好ましく、
4〜18であるのがより好ましい。
【0036】本発明の熱可塑性重合体における可塑剤
(B)の含有量は、多層構造重合体粒子(A)100質
量部に対し1〜120質量部である。120質量部を超
えて含有すると、得られる成形品の引張り強さ、引き裂
き強度等の力学強度が低下し、可塑剤のブリードアウト
が生じ易くなる。また、透明性も低下することから、目
的とする熱可塑性重合体組成物が得られなくなる。一
方、1質量部未満であると、低温における耐衝撃性の改
善効果が発揮されない。低温における耐衝撃性の改善効
果と引張り強さなどの力学強度の低下とのバランスか
ら、可塑剤量(B)の含有量は、1〜70質量部である
のが好ましく、1〜40質量部であるのがより好まし
い。
【0037】本発明においては、使用する可塑剤(B)
の種類を選択するにあたり、熱可塑性重合体組成物にお
ける多層構造重合体粒子(A)の屈折率[n(A)]
と可塑剤(B)の屈折率[n(B)]との差の絶対値
を、0.01未満とするように可塑剤(B)の種類を選
択することにより、可塑剤(B)の含有量を多くして柔
軟性を向上させても得られる熱可塑性重合体組成物の透
明性を極めて優れたものとすることができる。なお、多
層構造重合体粒子(A)の粒子全体の屈折率は、好まし
い該粒子(A)の各層を構成する(共)重合体の屈折率
として前記した方法により求めた値を、各層の質量割合
に応じて加重平均した値を用いることができる。また、
可塑剤(B)の屈折率も、多層構造重合体粒子(A)の
屈折率と同様に、20℃または23℃における値を用い
るものとする。本発明における好適な多層構造重合体
(A)との間で、上記の屈折率差の絶対値が0.01未
満となるような可塑剤(B−1)の具体例としては、フ
タル酸ジイソノニル、フタル酸ジn−ノニル、フタル酸
ジイソドデシル、フタル酸ジn−ドデシル、フタル酸ジ
ラウリル等の全炭素数が26〜200であるフタル酸ジ
アルキルエステルを挙げることができ、これらの中でも
フタル酸ジイソノニルが好ましい。
【0038】また一方で、使用する可塑剤(B)の種類
を選択するにあたり、多層構造重合体粒子(A)におけ
るゴム成分層(I)を構成する共重合体の溶解度パラメ
ーターが、熱可塑性樹脂成分層(II)を構成する重合体
の溶解度パラメーターと可塑剤(B)の溶解度パラメー
ターとの間にある値となるように、可塑剤(B)の種類
を選択することにより、低温における耐衝撃性の改良効
果が一層顕著にすることができる。熱可塑性樹脂成分層
(II)を構成する重合体の溶解度パラメーターと可塑剤
(B)の溶解度パラメーターとは、どちらが大きい値で
あってもよい。なお、ゴム成分層(I)または熱可塑性
樹脂成分層(II)がそれぞれ2以上の層を包含する場
合、ゴム成分層(I)に包含される全ての層を構成する
共重合体の溶解度パラメーターのいずれもが、熱可塑性
樹脂成分層(II)に包含される全ての層を構成する重合
体の内で溶解度パラメーターが最も可塑剤(B)の溶解
度パラメーターに近い重合体の溶解度パラメーターと、
可塑剤(B)の溶解度パラメーターとの間にある値とな
るように、可塑剤(B)の種類を選択することが好まし
い。
【0039】本発明でいう溶解度パラメーター(以下、
「SP値」ということがある。)は、下記式: δ=ΣG/ΣV 但し、 δ=SP値[(MPa)1/2] G=特定の原子および原子団の凝集エネルギー[(MP
a)1/2・cm/mol] V=特定の原子および原子団のモル容積[cm/mo
l] [「POLYMER HANDBOOK 3rd Edition」第524頁(Wile
y Interscience社、1989年発行)、「高分子の基礎
物性と応用」第12頁(シーエムシー社、1984年発
行)参照]。により、原料の単量体または可塑剤のSP
値:δ(25℃)として求めることがでる。なお、
(共)重合体の場合、単量体のSP値を共重合組成比
(質量分率)に応じて加重平均することにより得られた
値を(共)重合体のSP値とみなして使用するものとす
る。
【0040】本発明において好ましく用いられる主な原
料単量体のSP値:δの例[( )内にSP値を示
す。]を上記の式により求めると、メタクリル酸メチル
(18.82)、メタクリル酸n−ブチル(17.7
5)、メタクリル酸イソブチル(17.51)、アクリ
ル酸メチル(19.70)、アクリル酸エチル(19.
17)、アクリル酸ブチル(18.78)、スチレン
(18.84)となる。
【0041】多層構造重合体粒子(A)の層(I)およ
び層(II)を構成する(共)重合体のSP値と可塑剤
(B)のSP値とが上記の関係を満たすことにより、ゴ
ム成分層(1)に、選択的に可塑剤(B)が浸透し、効
率よく低温耐衝撃性が改良される。また、熱可塑性樹脂
成分層(II)が可塑化されにくくなるので、高温での使
用時に、形状安定性が向上し、可塑剤(B)のブリード
アウトも減少する。また、熱可塑性重合体組成物から成
形品を製造するために各々の成分をドライブレンドした
際の取扱性も向上する。
【0042】本発明における多層構造重合体(A)の層
(I)を構成する好適な共重合体と層(II)を構成する
好適な重合体との間でSP値が上記した関係となるよう
な可塑剤(B−2)の具体例としては、スベリン酸ジイ
ソノニル、スベリン酸ジイソドデシル等のスベリン酸ジ
アルキルエステル;セバシン酸ジイソオクチル、セバシ
ン酸ジイソノニル等のセバシン酸ジアルキルエステルな
どの脂肪族ジカルボン酸ジアルキルエステル;アクリル
酸ブチルオリゴマー等の(メタ)アクリル酸アルキルエ
ステル系オリゴマーなどのうち、全炭素数が26〜20
0であるものを挙げることができ、これらの中でも、セ
バシン酸ジイソオクチル等のセバシン酸ジアルキルエス
テルまたはアクリル酸ブチルオリゴマー等のアクリル酸
アルキルエステル系オリゴマーが好ましい。
【0043】これらの中で、可塑剤(B)が、多価カル
ボン酸アルキルエステルがオリゴマーからなる場合は、
平均炭素数が26〜200であればよく、平均炭素数
は、GPC法で測定された数平均分子量から求めること
ができる。該オリゴマーは、不飽和脂肪族カルボン酸ア
ルキルエステル単位から主として構成されていれば、分
子鎖中に分岐、官能基等を有していてもよい。
【0044】上記した可塑剤(B)は、単独で用いるだ
けでなく、本発明の効果を損なわない範囲内で複数の可
塑剤を混合して添加することも可能である。
【0045】本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記し
た多層構造重合体粒子(A)および可塑剤(B)の他
に、硬度調節や引張り強さの向上のために、アクリル樹
脂(C)を含有させてもよい。アクリル樹脂(C)の数
平均分子量は、GPC法で測定された値で30,000
〜200,000であり、40,000〜150,00
0であるのが好ましい。数平均分子量が30,000〜
200,000であると、熱可塑性重合体組成物が射出
成形性に優れたものとなる。アクリル樹脂(C)の含有
量は、多層構造重合体粒子(A)100質量部に対し
て、100質量部以下であり、5〜50質量部であるの
が好ましい。アクリル樹脂(C)の含有量が100質量
部を超えると、熱可塑性重合体組成物が柔軟性に劣った
ものとなる。
【0046】アクリル樹脂(C)としては、メタクリル
酸メチル単位40〜100質量%、好ましくは70〜1
00質量%およびそれと共重合可能な他の単量体単位6
0〜0質量%、好ましくは30〜0質量%からなる樹脂
を用いることができる。
【0047】メタクリル酸メチルに共重合可能な他の単
量体の具体例としては、メチルアクリレート、エチル
(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレ
ート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル
(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレー
ト、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メ
タ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘ
キシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリ
レート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シ
クロヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)
アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート等の
メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸アルキル
エステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニル
ナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレ
ン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレ
ン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニ
ルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビ
ニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル
等のシアン化ビニル系単量体;マレイミド、N−メチル
マレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレ
イミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキ
シルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(p−
ブロモフェニル)マレイミド、N−(クロロフェニル)
マレイミド等のマレイミド系単量体などが挙げられる。
これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレ
ート、n−ブチルアクリレート等のアクリル酸アルキル
エステルが好ましい。
【0048】本発明の熱可塑性重合体組成物には、本発
明の効果を損なわない範囲内で、合成樹脂を添加するこ
とが可能である。合成樹脂としては特に制限されず、熱
可塑性樹脂を好ましく使用することができる。熱可塑性
樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、
ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系ア
イオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸
共重合体、ハイインパクトポリスチレン、ABS、AE
S、AAS、ACS、MBS等のスチレン系樹脂;メチ
ルメタクリレート−スチレン共重合体、他のアクリル系
多層構造重合体粒子等の本発明で規定する以外のアクリ
ル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテ
レフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイ
ロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド類;
ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデ
ン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコー
ル共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;
ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェ
ニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂等が挙げら
れる。
【0049】本発明の熱可塑性重合体組成物には、本発
明の効果を損なわない範囲内で、公知の各種添加剤(例
えば、ゴム、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、帯
電防止剤、難燃剤など)、フィラー(ガラス繊維等の繊
維補強剤、無機充填剤等)等を含有させてもよい。ゴム
としては、例えばアクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;
SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系TPE(熱
可塑性エラストマー);IR、EPR、EPDM等のオ
レフィン系ゴム等を使用することができる。滑剤として
は、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミ
ド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステア
リン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワ
ックス、オクチルアルコール、硬化油等を使用すること
ができる。酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t
−ブチル−4−メチルフェノール、ステアリル−β−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス−3−
(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニ
ル)プロピオネート等のフェノール系化合物;N,N−
ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のアミン
系化合物等を使用をすることができる。光安定剤として
は、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシレート、
2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノ
ン、2−(2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシフェニ
ル)ベンゾトリアゾール等を使用することができる。着
色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラッ
ク、その他の無機、有機顔料等を使用することができ
る。帯電防止剤としては、例えば、ステアロアミドプロ
ピルジメチル−β−ヒドロキシエチルアンモニウムニト
レート等を用いることができる。難燃剤としては、例え
ば、テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェ
ニルオキシド、臭素化ポリカーボネート等の有機ハロゲ
ン系難燃剤;酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、ホ
ウ酸亜鉛、トリクレジルホスフェート等の非ハロゲン系
難燃剤などを使用することができる。
【0050】本発明の熱可塑性重合体組成物は、溶融流
動性に極めて優れるために、熱的な成形に付することに
適し、例えば、160〜280℃での押出成形、射出成
形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発
泡成形等の成形法により、粉末状、ペレット状、板状、
フィルムまたはシート状、パイプ状、中空状、箱状等の
任意の形状の成形品に成形することができる。成形品は
弾性回復性、透明性、低温耐衝撃性に優れるため、自動
車内装用の軟質部材、包装用フィルム、デスクマット等
の用途に好適に使用される。
【0051】さらに、本発明の熱可塑性重合体組成物は
溶融接着性に極めて優れていて、各種の他の材料と溶融
下に強固に接着するので、本発明の熱可塑性重合体組成
物からなる少なくとも1つの層および他の材料からなる
少なくとも1つの層を有する積層構造体の製造に特に有
効に使用することができ、したがって、本発明は本発明
の熱可塑性重合体組成物の層および他の材料の層を有す
る積層構造体をも本発明の範囲に包含する。本発明の熱
可塑性重合体組成物を溶融接着させる他の材料の種類は
特に制限されず、いずれであってもよいが、本発明の熱
可塑性重合体組成物は、特に極性を有する材料に対する
溶融接着性に優れている。
【0052】上記の積層構造体に使用する極性を有する
他の材料の具体例としては、ポリウレタン、ポリアミ
ド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレン
スルフィド、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレ
ート、ポリエーテル、ポリスルフォン、アクリロニトリ
ル/スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン/無水マ
レイン酸共重合体(SMA樹脂)、ゴム強化ポリスチレ
ン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−
スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル/
エチレンプロピレンゴム/スチレン共重合体(AES樹
脂)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS樹
脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重
合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル/スチレン/ブ
タジエン系共重合体、塩化ビニル系重合体、塩化ビニリ
デン系重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ
フッ化ビニリデンフェノール樹脂、エポキシ樹脂などの
各種の合成樹脂;イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブ
タジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリ
ルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴ
ム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリロニトリルゴ
ムなどの各種の合成ゴムなどを挙げることができ、中で
も、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂ま
たはABS樹脂、AES樹脂などのスチレン系樹脂が好
ましい。また、積層構造体の構成は特に制限されない
が、2種2層、2種3層、3種3層、3種5層などを挙
げることができ、本発明の熱可塑性重合体組成物からな
る層が他の材料からなる層の被覆用に好適であることか
ら、本発明の熱可塑性重合体組成物からなる層を片面に
または両面に有する2種2層または2種3層の構成であ
るのが好ましい。
【0053】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下
の製造例において、多層構造重合体粒子(A)の屈折率
は、前記した計算方法によって求めた。可塑剤(B−
1)の屈折率は、アッベ屈折率計により23℃にて測定
した。多層構造重合体粒子(A)の各層を構成する共重
合体および可塑剤(B−2)のSP値は前記した計算方
法によって求めた。なお、共重合体の屈折率およびSP
値の計算の際に各層の形成に用いる多官能性単量体は、
低割合のため除外して計算した。実施例および比較例で
は、成形品の製造に用いた熱可塑性重合体組成物(ペレ
ット)を以下のようにして製造した。また、それにより
得られた熱可塑性重合体組成物(ペレット)を用いて、
以下のようにして成形品(試験片)をつくり、実施例の
中の各測定値は以下の評価法に従った。
【0054】(1)熱可塑性重合体組成物からなるペレ
ットの製造:以下の実施例および比較例で用いた各材料
のうち、可塑剤以外の成分をドライブレンドし、これに
可塑剤を添加して含浸させた混合物を得、二軸押出機
(KRUPP WERNWER&PFLEIDERER
製「ZSK−25」)を使用して、シリンダー温度19
0℃およびスクリュー回転数200rpmで溶融混練し
た後、ストランド状に押し出し、切断して、熱可塑性重
合体組成物のペレットを製造した。
【0055】(2)成形品の製造:上記(1)で製造し
た熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、圧縮成形
機を使用して、各種試験の大きさに合わせた試験片を作
製した。
【0056】(3)積層構造体の製造:金型内に、本発
明の熱可塑性重合体組成物を溶融接着させる他の材料の
板(寸法:縦×横×厚み=100mm×40mm×1m
m)を予め配置して置き、そこに上記の(1)で製造し
た熱可塑性重合体組成物のペレットまたは単独の重合体
材料を用いて、射出成形機(住友重機械工業株式会社
製;SG−100)を使用して、シリンダー温度190
℃および金型温度40℃の条件下にて射出成形を行い、
他の材料の板の一方の表面に熱可塑性重合体組成物また
は単独の重合体の層が積層した積層構造体(寸法:縦×
横×厚み=100mm×40mm×2mm)を製造し
た。
【0057】(4)力学物性測定:引張破断強さ、引張
破断伸度、および100%伸長時の応力(100%モジ
ュラス)は、オートグラフAG−5000D(島津製作
所製)を用いて、JISK 6301に準じて測定し
た。
【0058】(5)硬度測定:硬度は、A型硬度計(オ
スカー製)を用いて、JIS K 6301に準じて測
定した。
【0059】(6)分子量測定:最外層を構成する重合
体成分の数平均分子量は、多層構造重合体粒子(A)の
試料を室温下にトルエン中で十分に攪拌した後、遠心分
離して得られた溶液を用いてGPC法により測定し、得
られた値を、本発明における最外層を構成する重合体成
分の数平均分子量とみなした。
【0060】(7)ヘイズ:直読ヘイズコンピューター
(スガ試験機製)を用いてを用いて、JIS K710
5に準じて測定した。
【0061】(8)フィード難易度(取扱性) 上記の(1)でペレットを作成する時に、可塑剤以外の
重合体材料をドライブレンドし、これに可塑剤を添加し
て含浸させた混合物を押出機にフィードする際の難易度
を以下のように評価した。 ○:特に問題無し △:可塑剤添加により膠着、フィーダー内でブリッジを
生じフィード困難。 ×:可塑剤添加により塊を形成、フィード不可。
【0062】(9)低温耐衝撃性:上記の(2)の方法
で作製した試験片(寸法:縦×横×厚み=63mm×1
0mm×3mm)を、−40〜+10℃で10℃間隔の
温度の恒温槽に1晩放置し、恒温槽から出した直後にIZ
OD衝撃試験機(ハンマー:11J)にて試験を行なっ
た。各温度における試験片数は6とし、全ての試験片が
破断した上限温度(一部片破断の場合は「一部片破断温
度〜全片破断温度」として記載)を、脆化温度(℃)と
して低温における耐衝撃性の有無の指標として評価し
た。
【0063】(10)流動性:フローテスタ(島津製作
所製:CFT−500)を用いて、200℃で5分間溶
融の後、50kg荷重下における溶融粘度(Pa・s)
を測定し、流動性の指標とした。
【0064】(11)積層構造体における剥離強度の測
定:上記の(3)で作製した積層構造体から剥離強度測
定用の試験片(寸法:縦×横×厚み=80mm×25m
m×2mm)を切り出し、それを用いてJIS K68
54に記載の「180度剥離試験」に準じて剥離強度を
測定した。
【0065】また、以下の実施例および比較例で用い
た、可塑剤(B)、アクリル樹脂(C)の略号と内容は
以下の通りである。[可塑剤(B)]○ DINP(フタ
ル酸ジイソノニル): 「ビニサイザー90」株式会社花王製 ○ DOS(セバシン酸ジイソオクチル): 三建化工株式会社製 ○ TCP(トリクレジルホスフェート): 大八化学工業株式会社製 ○ TOP(トリス[2−エチルヘキシル]ホスフェー
ト): 大八化学工業株式会社製 ○ アクリル酸ブチル(BA)オリゴマー: 「アクトフローUMB−1001」(平均炭素数80)
株式会社綜研化学製[アクリル樹脂(C)] ○ PMMA: 「パラペットLW1000−P」(数平均分子量50,
000)株式会社クラレ製
【0066】積層構造体の製造に用いた合成樹脂板は以
下の通りである。 ○ ABS: 「サイコラックEX111」宇部サイコン株式会社製 ○ AES: 「テクノAES W240」テクノポリマー株式会社製 ○ PMMA: 「パラペットGF」株式会社クラレ製
【0067】《製造例1》(多層構造重合体粒子[A−
1]の製造例) 窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管および滴下ロートを装着
した重合器に、蒸留水200質量部、乳化剤としてのネ
オペレックスF−25(花王製)0.6質量部、および
炭酸ナトリウム0.1質量部を加え、80℃に加熱して
均一に溶解させた。次いで、同温度において、ペルオキ
ソ二硫酸カリウム0.05質量部を加えた後、アクリル
酸n−ブチル30質量部、メタクリル酸メチル13.5
質量部、スチレン6.5質量部、メタクリル酸アリル
0.2質量部、および乳化剤としてのアデカコールCS
−141E(旭電化製)0.25質量部からなる混合物
を滴下ロートより1時間かけて滴下し、1層目を形成し
た。滴下終了後、同温度でさらに1時間反応を続け、ガ
スクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたこ
とを確認した。
【0068】次いで、得られた共重合体ラテックスにペ
ルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、
アクリル酸n−ブチル20質量部、メタクリル酸メチル
0.5質量部、スチレン4.5質量部、メタクリル酸ア
リル0.1質量部、および乳化剤としてのアデカコール
CS−141E(旭電化製)0.125質量部からなる
混合物を滴下ロートより30分間かけて滴下し、2層目
を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続
け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費さ
れたことを確認した。
【0069】さらに、得られた共重合体ラテックスにペ
ルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、
メタクリル酸メチル23.75質量部、アクリル酸メチ
ル1.25質量部、n−オクチルメルカプタン0.25
質量部、および乳化剤としてのアデカコールCS−14
1E(旭電化製)0.125質量部からなる混合物を滴
下ロートより30分間かけて滴下し、3層目を形成し
た。滴下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガス
クロマトグラフィーで各単量体がすべて消費されたこと
を確認し、重合を終了した。得られたラテックスにおけ
る多層構造重合体粒子の平均粒子径は104nmであっ
た。
【0070】このラテックスを−20℃に24時間冷却
して凝集させた後、凝集物を取り出し、40℃の熱水で
3回洗浄した。60℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末
状の3層型多層構造重合体粒子[A−1]を得た。な
お、最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、1
8,000であった。
【0071】《製造例2》(多層構造重合体粒子[A−
2]の製造例) 窒素雰囲気下、攪拌翼、冷却管および滴下ロートを装着
した重合器に、蒸留水150質量部、乳化剤としてのネ
オペレックスF−25(花王製)0.7質量部、および
分散安定剤としてのポイズ520(花王製)0.8質量
部を加え、80℃に加熱して均一に溶解させた。次い
で、同温度において、ペルオキソ二硫酸カリウム0.0
45質量部を加えた後、アクリル酸n−ブチル39.1
5質量部、スチレン5.85質量部、メタクリル酸アリ
ル0.23質量部、および乳化剤としてのアデカコール
CS−141E(旭電化製)0.225質量部からなる
混合物を滴下ロートより90分間かけて滴下し、1層目
を形成した。滴下終了後、同温度でさらに1時間反応を
続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて消費
されたことを確認した。
【0072】次いで、得られた共重合体ラテックスにペ
ルオキソ二硫酸カリウム0.025質量部を加えた後、
アクリル酸n−ブチル20.5質量部、スチレン3.5
質量部、メタクリル酸メチル1.0質量部、メタクリル
酸アリル0.13質量部、および乳化剤としてのアデカ
コールCS−141E(旭電化製)0.125質量部か
らなる混合物を滴下ロートより50分間かけて滴下し、
2層目を形成した。滴下終了後さらに80℃で1時間反
応を続け、ガスクロマトグラフィーで各単量体がすべて
消費されたことを確認した。
【0073】さらに、得られた共重合体ラテックスにペ
ルオキソ二硫酸カリウム0.030質量部を加えた後、
メタクリル酸メチル26.1質量部、アクリル酸ブチル
3.9質量部、n−オクチルメルカプタン0.30質量
部、および乳化剤としてのアデカコールCS−141E
(旭電化製)0.150質量部からなる混合物を滴下ロ
ートより40分間かけて滴下し、3層目を形成した。滴
下終了後さらに80℃で1時間反応を続け、ガスクロマ
トグラフィーで各単量体がすべて消費されたことを確認
し、重合を終了した。得られたラテックスにおける多層
構造重合体粒子の平均粒子径は100nmであった。
【0074】このラテックスを−20℃に24時間冷却
して凝集させた後、凝集物を取り出し、40℃の熱水で
3回洗浄した。60℃で2日間減圧乾燥して、凝集粉末
状の3層型多層構造重合体粒子[A−2]を得た。な
お、最外層を構成する重合体成分の数平均分子量は、1
6,000であった。
【0075】《実施例1〜3》、《比較例1〜4》 多層構造重合体粒子(A−1)、多層構造重合体粒子
(A−2)、可塑剤(B−1)、アクリル樹脂(C)を
下記の表1に示す割合で用いて、上記(1)の方法で熱
可塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した後、
それぞれのペレットを用いて、上記(2)の方法で成形
品(試験片)を製造し、その結果得られた成形品の硬
度、引張破断強度、引張破断伸び100%モジュラス
(M100)、ヘイズ、流動性、取扱性、脆化温度を評
価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0076】
【表1】
【0077】《実施例4、5》、《比較例5》 多層構造重合体粒子(A−1)、可塑剤(B−2)、ア
クリル樹脂(C)を下記の表2に示す割合で用いて、上
記(1)の方法で熱可塑性重合体組成物のペレットをそ
れぞれ製造した後、それぞれのペレットを用いて、上記
(2)の方法で成形品(試験片)を製造し、その結果得
られた成形品の硬度、引張破断強度、100%モジュラ
ス(M100)、ヘイズ、脆化温度、取扱性を評価した
ところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0078】
【表2】
【0079】《実施例6》、《比較例1、5》 多層構造重合体粒子(A−1)、可塑剤(B−1)を下
記の表3に示す割合で用いて、上記(1)の方法で熱可
塑性重合体組成物のペレットをそれぞれ製造した後、そ
れぞれのペレットを用いて、上記(3)の方法で積層構
造体(試験片)を製造し、得られた積層構造体における
剥離強度を測定評価したところ、下記の表3に示すとお
りであった。
【0080】
【表3】
【0081】上記の表1の結果から、多層構造重合体粒
子(A−1)もしくは多層構造重合体粒子(A−2)1
00質量部に対して、可塑剤(B−1)1〜120質量
部、GPC法で測定された数平均分子量が30,000
〜200,000のアクリル樹脂(C)0〜100質量
部の範囲内で含有し、多層構造重合体粒子(A)の屈折
率と可塑剤(B)の屈折率の差の絶対値が0.01より
小さくなるような、実施例1〜3の熱可塑性重合体組成
物を用いると、硬度、引張破断強さ、引張破断伸び、お
よび100%モジュラスをバランス良く備え、透明性を
保持しながら、流動性と低温耐衝撃性の改良された高品
質の成形品が得られることがわかる。
【0082】さらに、表1の比較例1の結果から明らか
なように、多層構造重合体粒子(A−1)を単独で用い
て得られる成形品は、力学的特性に優れ、透明性に極め
て優れるが、低温耐衝撃性に劣っていることから、耐寒
性を必要とする用途には適さないことがわかる。
【0083】また、上記の表1に示すように比較例2、
3の熱可塑性重合体組成物は、多層構造重合体粒子
(A)、可塑剤(B)、アクリル樹脂(C)の含有量が
本発明で規定する範囲を超えているため、比較例2で
は、引張強さ、引張破断伸び、100%モジュラスが著
しく低下し、透明性が劣るものとなっており、可塑剤を
含浸させた混合物に膠着が生じることから、押出機への
フィードが困難になる。また、比較例3では、引張破断
伸びと透明性が著しく劣るものとなる。
【0084】表1の実施例1〜3に示すように、多層構
造重合体粒子(A−1)、多層構造重合体粒子(A−
2)可塑剤(B−1)、アクリル樹脂(C)の含有量が
本発明で規定する範囲内であり、可塑剤(B−1)とし
て、多層構造重合体粒子(A)の屈折率と可塑剤(B−
1)の屈折率の差の絶対値が0.01より小さいDIN
P(フタル酸イソノニル)を用いた熱可塑性重合体組成
物は力学的性質のバランスが良く、特に透明性に優れた
ものとなる。
【0085】表1の比較例4に示すように、多層構造重
合体粒子(A)、可塑剤、アクリル樹脂(C)の含有量
が本発明で規定する範囲内であっても、可塑剤として、
多価カルボン酸アルキルエステルではなく、かつ多層構
造重合体粒子(A)の屈折率と可塑剤の屈折率の差の絶
対値が0.01以上であるTOP〔トリス(2−エチル
ヘキシル)ホスフェート〕を用いた熱可塑性重合体組成
物は力学的性質のバランスは優れるが、透明性に劣り、
取扱性の悪いものとなる。
【0086】表2の実施例4に示すように、多層構造重
合体粒子(A)、可塑剤(B−2)、アクリル樹脂
(C)の含有量が本発明で規定する範囲内であり、可塑
剤(B−2)の溶解度パラメーターが、多層構造重合体
粒子(A)内の熱可塑性樹脂成分層(II)の溶解度パラ
メーターよりも、ゴム成分層(1)の溶解度パラメータ
ーに近い、DOS〔セバシン酸(2−エチルヘキシ
ル)〕を用いた熱可塑性重合体組成物は、ゴム成分層
(1)が選択的に可塑化され、力学的性質のバランスに
優れ、透明性を保持できる添加量でも、低温における耐
衝撃性に優れたものとなる。
【0087】また、表2の実施例5に示すように、多層
構造重合体粒子(A)、可塑剤(B−2)、アクリル樹
脂(C)の含有量が本発明で規定する範囲内であり、可
塑剤(B−2)の溶解度パラメーターが、多層構造重合
体粒子(A)内の熱可塑性樹脂成分層(II)の溶解度パ
ラメーターよりも、ゴム成分層(1)の溶解度パラメー
ターに近い、ブチルアクリレート系オリゴマーを用いた
熱可塑性重合体組成物でも、ゴム成分層(1)が選択的
に可塑化され、力学的性質のバランスに優れ、低温耐衝
撃性に優れたものとなり、さらに、可塑剤の炭素数がよ
り大きいことから、表面への移行が少ないものとなる。
【0088】表2の比較例5に示すように、多層構造重
合体粒子(A)、可塑剤、アクリル樹脂(C)の含有量
が本発明で規定する範囲内であり、可塑剤が、多価カル
ボン酸アルキルエステルではなく、かつ多層構造重合体
粒子(A)内のゴム成分層(1)の溶解度パラメーター
よりも、熱可塑性樹脂成分層(II)の溶解度パラメータ
ーに近いものであるTCP(トリクレジルホスフェー
ト)を用いた熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性樹脂成
分層(II)が選択的に可塑化され、低温耐衝撃性の改良
効果が小さいだけでなく、耐熱性が低下してしまうとい
う欠点がある。
【0089】表3の比較例1および6に示すように、可
塑剤(B)を含まない熱可塑性重合体組成物は、極性樹
脂であるAES、ABS、PMMAに対して接着をして
いることが確認できるが、実施例6に示すように多層構
造重合体粒子(A)、可塑剤(B)、アクリル樹脂
(C)の含有量が本発明で規定する範囲内である熱可塑
性重合体組成物を用いると、極性樹脂であるAES、A
BS、PMMAに対する接着力が、比較例よりも大きく
向上し、可塑剤(B)を添加することにより、優れた効
果を発揮していることがわかる。
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、機械的物性のバランス
に優れ、透明性を損なうことなく、流動性、低温耐衝撃
性に優れる柔軟な熱可塑性重合体組成物が提供される。
該熱可塑性重合体組成物は容易に成形でき、他の合成樹
脂との溶融接着性にも優れることから、該熱可塑性重合
体組成物から得られる成形体、および積層構造体は、柔
軟性に富み、透明で、流動性、低温耐衝撃性等の優れた
特性を活かす用途に好適に用いることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 5/10 C08K 5/10 //(C08L 51/00 C08L 33:12 33:12) Fターム(参考) 4F071 AA33 AA77 AA81 AC10 AE04 AF23 AF26 AF30 AH11 BA01 BB03 BB05 BB06 BC01 BC02 BC04 CA01 CC02 4F100 AK25A AK25B AL01A AL01B AL05A AL05B AN02A AN02B BA02 BA13 CA04A CA04B DE04A DE04B JA07A JA07B JB16A JB16B JK10 JL01 JN01 JN18A JN18B 4J002 BG022 BG052 BN121 EH086 EH136 EH146 FD019 FD026 FD049 FD079 FD099 FD109 FD139 FD179 GJ01 GN00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 [A](1)少なくとも1つの下記ゴム
    成分層(I)を内部に有し、かつ少なくとも1つの下記
    熱可塑性樹脂成分層(II)を少なくとも最外部に有す
    る、2以上の層からなる多層構造重合体粒子であって; (2)ゴム成分層(I)は、アクリル酸エステル50〜
    99.99質量%、該アクリル酸エステルと共重合可能
    な他の単官能性単量体49.99〜0質量%および多官
    能性単量体0.01〜10質量%からなる単量体混合物
    (i)の共重合によって形成される重合体層であり; (3)熱可塑性樹脂成分層(II)は、メタクリル酸エス
    テル40〜100質量%および該メタクリル酸エステル
    と共重合可能な他の単量体60〜0質量%からなる単量
    体(ii)の重合によって形成される重合体層であり; (4)熱可塑性樹脂成分層(II)のうち最外部に位置す
    る層を構成する重合体について、GPC法で測定された
    数平均分子量は30,000以下であり; (5)ゴム成分層(I)の総質量と熱可塑性樹脂成分層
    (II)の総質量との比は、層(I)/層(II)において
    30/70〜90/10の範囲内であり; (6)平均粒子径が150nm以下である;多層構造重
    合体粒子(A)100質量部; [B]炭素数26〜200の多価カルボン酸アルキルエ
    ステルからなる可塑剤(B)1〜120質量部;並びに
    [C]GPC法で測定された数平均分子量が30,00
    0〜200,000のアクリル樹脂(C)100質量部
    以下;を含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成
    物。
  2. 【請求項2】 多層構造重合体粒子(A)の屈折率と可
    塑剤(B)の屈折率との差の絶対値が、0.01未満で
    ある請求項1に記載の熱可塑性重合体組成物。
  3. 【請求項3】 可塑剤(B)が、フタル酸ジアルキルエ
    ステルである請求項2に記載の熱可塑性重合体組成物。
  4. 【請求項4】 ゴム成分層(I)を構成する共重合体の
    溶解度パラメーターが、熱可塑性樹脂成分層(II)を構
    成する重合体の溶解度パラメーターと可塑剤(B)の溶
    解度パラメーターとの間にある値である請求項1に記載
    の熱可塑性重合体組成物。
  5. 【請求項5】 可塑剤(B)が、セバシン酸ジアルキル
    エステルまたはアクリル酸アルキルエステル系オリゴマ
    ーである請求項4に記載の熱可塑性重合体組成物。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱
    可塑性重合体組成物からなる成形品。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱
    可塑性重合体組成物からなる層を有する積層構造体。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003026891A (ja) * 2001-07-12 2003-01-29 Ube Cycon Ltd 熱可塑性樹脂組成物
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JP2011012247A (ja) * 2009-06-05 2011-01-20 Kaneka Corp 漆黒性に優れたゴム変性アクリル系樹脂組成物、及びその成形体

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