JP2002299062A - 有機電界発光装置 - Google Patents

有機電界発光装置

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JP2002299062A
JP2002299062A JP2001104297A JP2001104297A JP2002299062A JP 2002299062 A JP2002299062 A JP 2002299062A JP 2001104297 A JP2001104297 A JP 2001104297A JP 2001104297 A JP2001104297 A JP 2001104297A JP 2002299062 A JP2002299062 A JP 2002299062A
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JP
Japan
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electrode
light
light emitting
layer
electroluminescent device
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Application number
JP2001104297A
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English (en)
Inventor
Akiko Takano
明子 高野
Shigeo Fujimori
茂雄 藤森
Noboru Asahi
昇 朝日
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Toray Industries Inc
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】色純度を保ったまま発光効率を向上させるとと
もに、耐久性を改善された有機電界発光装置を供給する
ことを目的とする。 【解決手段】基板上に形成された第一電極上に、正孔輸
送層および少なくとも有機化合物からなる発光層を含む
薄膜層と、薄膜層上に形成された第二電極とを含む有機
電界発光装置において、発光層に用いられる発光材料の
希薄溶液中における蛍光スペクトルの半値幅が50nm
以下であって、かつ前記薄膜層の正孔輸送層/発光層界
面から発光層側にある電極までの光路長dが、λ/8≦
d≦3λ/8(λ:発光ピーク波長)にあることを特徴
とする有機電界発光装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気エネルギーを
光に変換できる装置であって、表示素子、フラットパネ
ルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標
識、看板、電子写真機、光信号発生器などの分野に利用
可能な有機電界発光装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】基板上に形成された第一電極(陽極)か
ら注入された正孔と第二電極(陰極)から注入された電
子が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光
する有機積層薄膜発光装置の研究が近年活発に行われて
いる。この装置は、薄型、低駆動電圧下での高輝度発
光、蛍光材料を選ぶことによる多色発光が特徴である。
【0003】有機電界発光装置が高輝度に発光すること
は、コダック社のC.W.Tangらによって初めて示
された(Appl.Phys.Lett.51(12)
21、p.913、1987)。コダック社の提示した
有機電界発光装置の代表的な構成は、ITOガラス基板
上に正孔輸送性のジアミン化合物、発光層であり、電子
輸送性も併せ持ったトリス(8−キノリノラト)アルミ
ニウム、そして陰極としてMg:Agを順次設けたもの
であり、10V程度の駆動電圧で1000カンデラ/平
方メートルの緑色発光が可能であった。現在の有機電界
発光装置は、基本的にはコダック社の構成を踏襲してお
り、基板上に第一電極、発光層を含む薄膜層および第二
電極が順次積層された構造をしている。薄膜層の構成
は、発光層のみの単層構造である場合もあるが、多くは
正孔輸送層や電子輸送層を設けた複数の積層構造であ
る。
【0004】有機電界発光装置における問題点の一つと
して、発光効率や耐久性、色純度の問題が挙げられる。
発光効率が低いと、高輝度を要する画像の出力ができな
くなり、また所望の輝度を出力するための消費電力量が
多くなる。消費電力量は耐久性とも関わりが大きく、発
光効率を高めて消費電力量を抑えることは、連続駆動時
の輝度の低下を抑えることにつながる。従来は主に発光
材料やその他の材料の改良によって発光効率を向上させ
てきたが、色純度が高くなおかつ発光効率の高い発光材
料は少なく、特に赤色や青色では課題の解決が困難であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の問題を解決し、色純度を保ったまま、簡便な方法
によって発光装置の発光効率を向上させることを目的と
するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、基板上に形成
された第一電極上に、正孔輸送層および少なくとも有機
化合物からなる発光層を含む薄膜層と、薄膜層上に形成
された第二電極とを含む有機電界発光装置において、発
光層に用いられる発光材料の希薄溶液中における蛍光ス
ペクトルの半値幅が50nm以下であって、かつ前記薄
膜層の正孔輸送層/発光層界面から発光層側にある電極
までの光路長dが、λ/8≦d≦3λ/8(λ:発光ピ
ーク波長)にあることを特徴とする有機電界発光装置で
ある。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明による有機電界発光
装置について説明する。
【0008】有機化合物を発光層に用いた有機電界発光
装置では、光の取り出し効率(発光効率)が膜厚に応じ
て変化する現象が知られている。これは第一電極が透明
な陽極であり、第二電極が陰極である場合には、薄膜層
の発光部分から直接第一電極側へ放出された光と、第二
電極界面で反射された光とが干渉することによって起こ
る。発光部分とは、発光を司る化合物を含む発光層中
で、電子と正孔が再結合する領域を指し、実際には発光
層中にある拡がりをもっており、その拡がりは薄膜層を
形成する材料や、駆動電圧・電流値によって変化する。
本発明では薄膜層の発光部分を正孔輸送層/発光層界面
と定義し、発光効率に関与する膜厚として正孔輸送層/
発光層界面から第二電極までの膜厚を規定するものであ
る。
【0009】干渉による光の取り出し強度と膜厚の関係
を以下に示す。直接第一電極側に放出される光の強度を
Ed、第二電極によって反射される光の強度をEr、元
の発光強度をE、正孔輸送層/発光層界面から第二電極
までの膜厚をL、第二電極の振幅反射率をγ(0<γ≦
1)、薄膜層中の屈折率をn、発光波長をλとおくと、
干渉光の強度Iは下式のようになる。この時第二電極界
面は固定端であり、反射光の位相はπずれるとして近似
している。
【0010】 I=|Ed+Er|2 =|E−γEcos(4πnL/λ)|2 =E2{1−γcos(4πnL/λ)}2 (1) この式から干渉光が少なくとも元の発光強度を弱めない
ためには、 (4m+1)π/2≦4πd/λ≦(4m+3)π/2 (2) (m=0,1,2,…) である必要がある。
【0011】ここでnLを光路長dで表した。正確には
d=Σdi=Σniiである。すなわち正孔輸送層/発
光層界面から第二電極までの薄膜層に複数の層が含まれ
ている場合、各層の光路長を算出し、足し合わせること
により全体の光路長とする。
【0012】反射光の強度は余弦曲線で振幅するとした
が、実際には膜厚が厚くなるにつれて振幅の値は減衰す
ることが知られている。また膜厚が厚いほど所望の電流
を流すために必要な駆動電圧が高くなり、実用に供しに
くくなる。従って、駆動電圧を低く保ち、発光強度を弱
めない膜厚条件は、式(2)の1次極大付近となるか
ら、m=0の場合であり、このときλ/8≦d≦3λ/
8が得られる。さらに好ましくは3λ/16≦d≦5λ
/16であり、最も好ましいのはd=λ/4である。
【0013】この光路長dは、正孔輸送層/発光層界面
に発光部分を有している場合であるが、前述のように、
発光部分は拡がりをもっており、その拡がりは薄膜層を
形成する材料や、駆動電圧・電流値によって変化する。
キャリアバランスによっては発光部分は正孔輸送層/発
光層界面だけでなく、発光層/電子輸送層もしくは第二
電極界面まで拡がっている場合もあり、この場合、定義
した光路長dと発光部分から反射面までの光路長が一致
しない。
【0014】そこで発光部分が正孔輸送層/発光層界面
から光路長にしてxnm発光層の内側であった場合、発
光部分から反射面(第二電極界面)までの光路長dreal
はd real=d−xである。なお、実際の発光部分は発光
層内部でおこっているものであるため、xは0≦x≦y
(y:発光層で生じる光路長)である。
【0015】よってdrealが発光強度を強める条件にな
る、すなわちdreal=λ/4であるためには、d−x=
λ/4である必要がある。ゆえにdはxの値に応じてλ
/4≦d≦y+(λ/4)の範囲内の値をとる必要があ
る。
【0016】また発光波長λは、発光ピーク波長で代表
して膜厚条件を決定しているが、実際には発光材料の種
類などによって発光スペクトルの形状が変化する。色相
に大きな影響を及ぼすのは発光ピーク波長および半値幅
である。半値幅が小さいほど単一光に近く、色純度が高
い。
【0017】上記の干渉条件は、ある一定の膜厚条件に
よって発光強度を最適にするものであり、その膜厚は対
応する一つの発光波長に対して得られる条件であること
から、発光成分はできるだけ単一光に近いことが望まし
い。すなわち発光スペクトルが幅広い場合、ある膜厚条
件では発光強度を部分的に強めたり弱めたりすることに
なり、発光強度をロスする部分が生じて、干渉の効果が
最大限に生かされない。またスペクトル自身が膜厚によ
って変化してしまい、色純度を保つことができない。
【0018】よって干渉効果を有効にするためには、ス
ペクトルの半値幅が小さいことが求められる。具体的に
は、発光層に用いられる材料の内、発光に直接起因する
材料の希薄溶液中における蛍光スペクトルが、半値幅5
0nm以下であることが好ましい。さらにこのスペクト
ルが有するピークが単一であるのが好ましい。単一ピー
クに対して複数ピークを有するスペクトルとは、複数の
ピークが明確に観測される場合だけでなく、複数ピーク
に分解可能な成分が観測される場合も含む。
【0019】本発明では色純度としては、CIE色度座
標において、赤色発光ではx≧0.60かつy≦0.4
0、緑色発光ではx≦0.33かつy≧0.58、青色
発光ではx≦0.203かつy≦0.25であることが
好ましい。赤・緑・青3色の発光領域を有する有機電界
発光装置では、各色すべてがこの条件を満たすことが最
も好ましい。
【0020】発光に直接起因する材料とは、発光層を構
成する材料のうち発光能があって、電界印加時に主に発
光するものを言う。複数の材料を含むドーピングを施し
た発光層である場合は、ホストまたはゲスト材料のうち
発光を支配する方の材料であり、一般的にはゲスト材料
である。
【0021】本発明における希薄溶液とは、蛍光スペク
トルが測定できる範囲内の低濃度になるように調製され
た試料溶液を言い、特に限定されるものではないが、1
mmol/l以下であることが好ましい。溶媒は必要濃
度の試料が溶解し、蛍光スペクトル測定に支障のない種
類のものであれば特に限定されない。
【0022】第一電極と第二電極は素子の発光のために
十分な電流を供給するための役割を有するものであり、
光を取り出すために少なくとも一方は透明であることが
望ましい。通常第一電極が透明な陽極であり、第二電極
が陰極であることが多いが、本発明は電極配置を規定す
るものではない。第一電極が陽極となる場合には、それ
に近い側に正孔輸送層が、第二電極が陽極となる場合に
はやはりそれに近い側に正孔輸送層が配置される。
【0023】透明電極材料として、具体的には、酸化
錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)など
の導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの
金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチ
オフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポ
リマなど特に限定されるものでないが、ITOガラスや
ネサガラスを用いることが特に望ましい。透明電極の抵
抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限
定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であ
ることが望ましい。例えば300Ω/□以下のITO基
板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω
/□程度の基板の供給も可能になっていることから、2
0Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に望ま
しい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事が
できるが、通常100〜300nmの間で用いられるこ
とが多い。ITO膜形成方法は、電子ビーム蒸着法、ス
パッタリング法、化学反応法など特に制限を受けるもの
ではない。
【0024】一方透明でない電極は、干渉に影響を及ぼ
す反射光の強度と、その反射率で深い関わりがある。前
記式(1)において取り出し発光強度I=E2{1−γ
cos(4πnL/λ)}2と表され、反射率γが大き
いほど干渉の影響は大きくなる。すなわち干渉光が強め
られる条件においては、反射率が大きいほど取り出し発
光強度が強められる。よって第二電極の反射率は20%
以上であることが好ましく、40%以上であればなお好
ましい。ここでの反射率とは、素子を形成した状態にお
いて、透明電極側から入射した光の正反射率を指す。入
射光の波長は発光波長付近で測定すればよい。具体的に
は白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウ
ムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリ
ウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕
事関数金属との合金など、一般に金属光沢を有する材料
が好ましい。
【0025】電極の作製法は、抵抗加熱法蒸着、電子ビ
ーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング
法などのドライプロセスが好ましい。電極表面の反射率
をより高くするためには、成膜速度を早くする、成膜雰
囲気の真空度を高くするといった方法が挙げられる。電
極作製方法にもよるが、成膜速度は0.5nm/s以上
であること、成膜雰囲気の真空度は5×10-4Pa以下
であることが好ましい。
【0026】ガラス基板はソーダライムガラス、無アル
カリガラスなどが用いられ、また厚みも機械的強度を保
つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あ
れば十分である。ガラスの材質については、ガラスから
の溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの
方が好ましいが、SiO2などのバリアコートを施した
ソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用で
きる。
【0027】薄膜層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子
ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティン
グ法などが挙げられ、特に限定されるものではないが、
通常は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着が特性面で好ま
しい。
【0028】発光材料はホスト材料のみでも、ホスト材
料とゲスト材料の組み合わせでも、いずれであってもよ
い。また、ゲスト材料はホスト材料の全体に含まれてい
ても、部分的に含まれていても、いずれであってもよ
い。ゲスト材料は積層されていても、分散されていて
も、いずれであってもよい。
【0029】正孔輸送材料としては、電界を与えられた
電極間において正極からの正孔を効率良く輸送すること
が必要で、正孔注入効率が高く、注入された正孔を効率
良く輸送することが望ましい。そのためには適切なイオ
ン化ポテンシャルを持ち、しかも正孔移動度が大きく、
さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時お
よび使用時に発生しにくい物質であることが要求され
る。このような条件を満たす物質として、特に限定され
るものではないが、TPD、m−MTDATA、α−N
PDなどのトリフェニルアミン誘導体、ビスカルバゾリ
ル誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒ
ドラゾン系化合物やフタロシアニン誘導体に代表される
複素環化合物、ポリビニルカルバゾール、ポリシランな
どの既知の正孔輸送材料を使用できる。これらの正孔輸
送材料は単独でも用いられるが、異なる正孔輸送材料と
積層または混合して使用しても構わない。
【0030】発光材料は、具体的には、以前から発光体
として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環
誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウムを始
めとする金属キレート化オキシノイド化合物、ビススチ
リルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体な
どのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘
導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロ
ロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエ
ン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリ
ジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン
誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオ
フェン誘導体などが使用できるが特に限定されるもので
はない。
【0031】発光材料に添加するドーパント材料は特に
限定されるものではないが、既知のドーパント材料を用
いることができる。具体的には従来から知られている、
ペリレン、ルブレンなどの縮合環誘導体、キナクリドン
誘導体、フェノキサゾン660、DCM1、ペリノン、
クマリン誘導体、ピロメテン(ジアザインダセン)誘導
体、シアニン色素などがそのまま使用できる。
【0032】本発明は、発光波長に対応した最適な膜厚
条件を選択でき、より好ましい発光効率を有する発光装
置を得ることができる。選択された正孔輸送層/発光層
界面から第二電極までの膜厚が50〜100nm以上で
ある場合、(1)膜層膜厚の増加による駆動電圧の上
昇、(2)複数の発光色からなる発光装置においては、
発光波長が長波長であるほど膜厚が厚くなり、発光色毎
に駆動電圧の大幅な差が発生する等の現象が生じること
がある。膜厚が厚いことで、上記のような現象が生じた
ときは、駆動電圧の増大しにくいような方法として電極
注入効率が高い電極材料を用いる、発光層・電子輸送層
に用いる材料を導電性の高いものにする、導電性を大き
くするため電子輸送層に低仕事関数金属をドーピングす
るという方法が挙げられるドーピングで用いられる金属
は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セ
シウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシ
ウム、ストロンチウム、バリウムといったアルカリ土類
金属が好ましく、仕事関数が小さい点でセシウムがより
好ましい。
【0033】電子輸送性材料としては、陰極からの電子
を効率良く輸送することが必要で、電子注入効率が高
く、注入された電子を効率良く輸送することが望まし
い。そのためには電子親和力が大きく、しかも電子移動
度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純
物が製造時および使用時に発生しにくい物質であること
が要求される。このような条件を満たす物質として、ト
リス(8−キノリノラト)アルミニウムに代表されるキ
ノリノール誘導体金属錯体、トロポロン金属錯体、フラ
ボノール金属錯体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、
ナフタレン、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導
体、アルダジン誘導体、ビススチリル誘導体、ピラジン
誘導体、フェナントロリン誘導体、ベンゾキノリン誘導
体、シロール誘導体などがあるが特に限定されるもので
はない。これらの電子輸送材料は単独でも用いられる
が、異なる電子輸送材料と積層または混合して使用して
も構わない。
【0034】以上の正孔輸送層、発光層、電子輸送層に
用いられる材料は単独で各層を形成することができる
が、高分子結着剤としてポリ塩化ビニル、ポリカーボネ
ート、ポリスチレン、ポリ(N−ビニルカルバゾー
ル)、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリ
レート、ポリエステル、ポリスルフォン、ポリフェニレ
ンオキサイド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン
樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロー
ス、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン樹脂などの
溶剤可溶性樹脂や、フェノール樹脂、キシレン樹脂、石
油樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステ
ル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂
などの硬化性樹脂などに分散させて用いることも可能で
ある。
【0035】以上の技術は、複数の発光色からなるフル
カラーまたはマルチカラー表示が可能なディスプレイの
場合にも応用することができ、各色それぞれについて膜
厚の最適条件を適用すれば、全体的に取り出し発光効率
を向上させることができる。また各色の発光材料選択に
際して、発光効率がカラーバランス的に釣り合いがとれ
ていない場合、そのバランスを適正にするために発光効
率の劣る材料について膜厚条件を調整することもでき
る。フルカラーディスプレイの場合には赤・緑・青色の
波長領域に発光ピークをもつ発光領域が形成される。
【0036】特に比視感度が0.7以下である赤色や青
色などの発光色の場合、1に近い緑色などの発光色に比
べて発光効率の高い材料に乏しく、膜厚を調整して発光
効率を向上させ、緑色と釣り合いをとる必要がある。す
なわち、赤色や青色、特に赤色において|d−λ/4|
が最小となるように調整することが好ましい。
【0037】
【実施例】以下、実施例および比較例をあげて本発明を
説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるも
のではない。
【0038】実施例1〜3、比較例1〜3 スパッタリング法によりITO透明導電膜を120nm
堆積させたガラス基板を38×46mmに切断した後、
ITOの不要部分をエッチング除去した。得られた基板
をアルカリ洗浄液で10分間超音波洗浄してから、超純
水で洗浄した。この基板を素子を作製する直前に1時間
UV/オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置
内の真空度が5×10-4Pa以下になるまで排気した。
抵抗加熱法によって、まず正孔輸送材料としてN,N’
−ジ−(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニ
ル−ベンジジン(NPD)を60nm蒸着し、続いて発
光層としてゲスト材料1,3,5,7,8−ペンタメチ
ル−4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a,4a−ジア
ザ−s−インダセン(PM546)とホスト材料トリス
(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)の混合
物を25nmの厚さに積層した。ゲストはホストに対し
て0.3重量%とした。次に電子輸送層として、下表に
示す各膜厚でAlq3を積層した。第二電極用マスクを
装着し、リチウムの蒸気にさらしてドーピングした後、
アルミニウムを150nm蒸着して陰極とした。
【0039】発光に主に寄与する発光材料はゲスト材料
であるPM546であり、この材料の希薄ジメチルホル
ムアミド(DMF)溶液中の蛍光スペクトルはピーク波
長524nm、半値幅40nmであった。
【0040】陰極として蒸着したアルミニウムの反射率
は発光ピーク波長517nm付近において33.3%で
あった。反射率の測定には分光光度計U−3410(日
立製作所(株)製)を用い、素子のガラス基板側からI
TO透明電極と有機薄膜層を通じて入射角6°で入射し
た光を出射角6°で検出した値を反射率とした。電子輸
送層であるAlq3の屈折率は約1.7であった。屈折
率の算出には、オプティカルフラットなガラス基板上に
形成したAlq3の単層膜を用い、原子間力顕微鏡(A
FM)で膜厚をあらかじめ測定し、分光エリプソメトリ
ー法で測定した結果を用いた。この屈折率と膜厚を元に
して光路長を算出した。
【0041】このようにして作製した発光素子を40m
A/cm2の電流密度で発光させたところ、下表のよう
な効率で発光した。正孔輸送層/発光層界面から第二電
極までの光路長がλ/8(0.125λ)から3λ/8
(0.375λ)の範囲内で発光効率が高く、λ/4
(0.25λ)付近が最も高効率を示すが、発光層膜厚
25nmを越えない範囲で0.25λより厚くても遜色
ない効率を示した。発光スペクトルは電子輸送層25〜
75nmの範囲ではいずれも大幅な変化はなく、色度は
(0.26,0.66)を保っていた。
【0042】
【表1】
【0043】比較例4 発光層としてAlq3(希薄DMF溶液中の発光スペク
トル:ピーク波長523nm、半値幅100nm)を単
独で用いた他は実施例1と同様にして素子を作製したと
ころ、発光効率の変化には同様の効果が見られたが、発
光色が電子輸送層25nmではCIE色度座標(x,
y)=(0.32,0.55)、50nmでは(0.3
4,0.55)、75nmでは(0.36,0.55)
と変化し、発光スペクトルの半値幅は90から130n
mまで変化した。
【0044】実施例4 電子輸送層を25nmとし、第二電極としてクロム40
nm、アルミニウム60nmをこの順に積層した他は実
施例1と同様にして素子を作製した。この時第二電極の
反射率は15.3%であった。また正孔輸送層/発光層
界面から第二電極までの光路長(λ=517nm)は
0.16λであった。このようにして作製した発光素子
を40mA/cm2の電流密度で発光させたところ、発
光効率2.9cd/Aで発光した。
【0045】実施例5 発光層として、ホスト材料Alq3とゲスト材料ジメチ
ルキナクリドンを共蒸着して積層した他は実施例1と同
様にして素子を作製した。ゲストはホストに対して0.
5重量%とした。
【0046】発光に主に寄与する発光材料はゲスト材料
であるジメチルキナクリドンであり、この材料の希薄D
MF溶液中の発光スペクトルは発光ピーク波長540お
よび570nmの2成分であり、半値幅はそれぞれの成
分に対して30,40nmであった。
【0047】このようにして作製した発光素子を40m
A/cm2の電流密度で発光させたところ、発光効率の
変化には同様の効果が見られたが、発光スペクトルの2
成分の強度比および色度が電子輸送層膜厚によって変化
し、25nmでは(0.36,0.62)、50nmで
は(0.38,0.61)、75nmでは(0.40,
0.60)であった。
【0048】実施例6、比較例5 発光層として下記に示すホスト材料(H−1)とゲスト
材料(G−1)を共蒸着することにより積層した他は実
施例1と同様にして素子を作製した。ゲストはホストに
対して0.5重量%とした。電子輸送層の膜厚は下表の
2通りとした。
【0049】
【化1】
【0050】発光に主に寄与する発光材料はゲスト材料
である(G−1)であり、この材料の希薄DMF溶液中
の蛍光スペクトルはピーク波長613nmであり、半値
幅は42nmであった。
【0051】このようにして作製した発光素子を40m
A/cm2の電流密度で発光させたところ、下表のよう
な効率で発光した。発光スペクトルはいずれも大幅な変
化はなく、発光ピーク波長は618nm、色度は(0.
62,0.37)を保っていた。
【0052】
【表2】
【0053】実施例7 厚さ1.1mmの無アルカリガラス表面にスパッタリン
グ蒸着法によって厚さ130nmのITO透明電極膜が
形成されたITOガラス基板を120×100mmの大
きさに切断した。基板上にフォトレジストを塗布して、
通常のフォトリソグラフィ法によってITOを長さ90
mm、幅70μmのストライプ状にパターニングした。
このストライプ状第一電極は100μmピッチで816
本配置されている。
【0054】この基板をアルカリ洗浄液および超純水で
洗浄した後、素子を作製する直前に1時間UV/オゾン
処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が
5×10-4Pa以下になるまで排気した。本蒸着機で
は、真空中でそれぞれ10μm程度の精度で基板とシャ
ドーマスクの位置合わせができ、シャドーマスクを交換
することができる。
【0055】抵抗加熱法によって、まず基板全面に銅フ
タロシアニンを15nm、続いてNPDを60nm蒸着
し、正孔輸送層を形成した。次に、発光層用シャドーマ
スクを基板前方に配置して両者を密着させ、基板後方に
はフェライト系板磁石を配置した。この時ストライプ状
第一電極がシャドーマスクのストライプ状開口部の中心
に位置するように配置した。この状態で0.3重量%の
PM546を混合したAlq3を25nm蒸着し、緑色
発光層をパターニングした。
【0056】次に、シャドーマスクを1ピッチ分ずらし
た位置の第一電極パターンに位置合わせして、実施例6
で用いたホストおよびゲスト材料を25nmに共蒸着し
て、赤色発光層をパターニングした。さらにシャドーマ
スクを1ピッチ分ずらした位置の第一電極パターンに位
置合わせして、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニル
ビニル)ジフェニル(DPVBi)を25nm蒸着し
て、青色発光層をパターニングした。緑色、赤色、青色
それぞれの発光層は、ストライプ状第一電極の3本毎に
配置され、第一電極の露出部分を完全に覆っている。
【0057】次に電子輸送層としてAlq3を基板全面
に70nm蒸着した後、リチウムの蒸気にさらしてドー
ピングした。この場合、正孔輸送層/発光層界面から第
二電極までの光路長は、赤色発光に対して最適であり、
緑色発光に対しては0.31λ、青色発光(発光ピーク
波長478nm)に対しては0.34λとなる。
【0058】第二電極は、抵抗線加熱方式による真空蒸
着法によって形成した。なお、蒸着時の真空度は5×1
-4Pa以下であった。発光層のパターニングと同様
に、第二電極用シャドーマスクを基板前方に配置して両
者を密着させ、基板後方には磁石を配置した。この際、
マスク部分が第一電極と直交するように両者を配置す
る。この状態でアルミニウムを200nmの厚さに蒸着
して、第二電極をパターニングした。第二電極は、第一
電極と直交する配置で、間隔をあけて配置されたストラ
イプ状にパターニングされている。
【0059】このようにして作製した単純マトリクス型
カラー有機電界発光装置は、所望の輝度で発光させる際
に要する電流値が、赤色、緑色、青色で大差なく、駆動
回路にかかる負担が少なく、良好な表示特性が得られ
た。またその結果、各色ごとの耐久性にも差が少ないた
め、連続駆動試験における保存安定性も良好であった。
【0060】実施例8 電子輸送層としてAlq3を基板全面に50nm蒸着し
た他は実施例7と同様にして有機電界発光装置を作製し
た。この場合、正孔輸送層/発光層界面から第二電極ま
での光路長は、緑色発光に対して最適であり、赤色発光
に対しては0.21λ、青色発光に対しては0.27λ
となった。このようにして作製した電界発光装置は、所
望の輝度で発光させる際に要する電流値が赤色で大きく
なったため、駆動回路に負担がかかり、表示特性が低下
した。またその結果赤色の耐久性が低下し、連続駆動試
験で表示色度の変化が著しかった。
【0061】
【発明の効果】本発明により、色純度を保ったまま、簡
便な方法によって有機電界発光装置の発光効率を向上さ
せることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3K007 AB03 AB04 BA06 CA01 CB01 DA01 DB03 EB00

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板上に、発光取り出し可能な透明の第一
    電極と、第二電極との間に挟持された、正孔輸送層およ
    び少なくとも有機化合物からなる発光層を含む薄膜層が
    形成された有機電界発光装置において、発光層に用いら
    れる発光材料の希薄溶液中における蛍光スペクトルの半
    値幅が50nm以下であって、かつ前記薄膜層の正孔輸
    送層/発光層界面から第二電極までの光路長dが、λ/
    8≦d≦3λ/8(λ:発光ピーク波長)にあることを
    特徴とする有機電界発光装置。
  2. 【請求項2】基板上に、発光取り出し可能な透明の第一
    電極と、第二電極との間に挟持された、正孔輸送層、電
    子輸送層および少なくとも有機化合物からなる発光層を
    含む薄膜層が形成された有機電界発光装置において、発
    光層に用いられる発光材料の希薄溶液中における蛍光ス
    ペクトルの半値幅が50nm以下であり、電子輸送層が
    発光層と第二電極の間にあって、正孔輸送層/発光層界
    面から第二電極までの光路長dが、λ/4≦d≦y+λ
    /4(y:発光層で生じる光路長)であることを特徴と
    する有機電界発光装置。
  3. 【請求項3】発光層に用いられる発光材料の希薄溶液中
    における蛍光スペクトルが単一ピークを有することを特
    徴とする請求項1または2記載の有機電界発光装置。
  4. 【請求項4】前記第一電極は発光取り出し可能な透明電
    極であり、かつ前記第二電極は20%以上の反射率を有
    することを特徴とする請求項1または2記載の有機電界
    発光装置。
  5. 【請求項5】異なる色で発光する発光領域を有する有機
    電界発光装置の、発光ピーク波長における比視感度が
    0.7以下である発光色において、|d−λ/4|が最
    小となることを特徴とする請求項1または2記載の有機
    電界発光装置。
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