JP2002293631A - 高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体及びその製造方法 - Google Patents

高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体及びその製造方法

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JP2002293631A
JP2002293631A JP2001102869A JP2001102869A JP2002293631A JP 2002293631 A JP2002293631 A JP 2002293631A JP 2001102869 A JP2001102869 A JP 2001102869A JP 2001102869 A JP2001102869 A JP 2001102869A JP 2002293631 A JP2002293631 A JP 2002293631A
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glassy carbon
thermosetting resin
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Chikara Ishii
主税 石井
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Nisshinbo Holdings Inc
Original Assignee
Nisshinbo Industries Inc
Nisshin Spinning Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い気孔率を有し、且つ強度特性に優れたガ
ラス状カーボン多孔体、及び該ガラス状カーボンを容易
且つ経済的に得られる製造方法を提供。 【解決手段】 長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹
脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なくとも5重
量%含有する固体状原料(A)と、熱硬化性樹脂(B)
との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化
焼成により得られることを特徴とするガラス状カーボン
多孔体、及びその製造方法を提供した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、機械的強度特性等
に優れた、高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体
及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、長短軸の長
さ比が5以上の熱硬化樹脂粒等と熱硬化性樹脂とを出発
原料とする高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ガラス状カーボンを含めてカ
ーボン多孔体を製造する方法は、種々知られている。例
えば、フェノール樹脂やフラン樹脂硬化物を用いる方
法、メラミン、ウレタン、フェノール等の樹脂発泡体を
焼成する方法、或いはC/C複合材料前駆体から製造す
る方法などが挙げられる。これらの内、特に、ガラス状
カーボン多孔体を製造する方法としては、炭素繊維やウ
レタンフォーム(発泡体)に、熱硬化性樹脂を含浸さ
せ、乾燥後、不活性ガス雰囲気中の高温で焼成して多孔
体を得る方法や、微小球状の熱硬化樹脂を、同種の液状
熱硬化性樹脂で混練、成形し、乾燥後、不活性ガス雰囲
気中の高温で焼成して多孔体を得る方法などが知られて
いる。
【0003】しかしながら、従来から提案されたガラス
状カーボン多孔体や多孔質ガラス状カーボンは、多孔質
であっても、微小球状の熱硬化樹脂等を原料としている
ために、球体の持つ充填性の良さから、隙間が少なくな
り易く、気孔率が低い値に留まってしまい、所望の気孔
率にまで高くならない。そのため、気孔率が高いことが
求められる用途、例えば各種フィルター用や触媒担持用
などには、不向きである。また、熱硬化性樹脂発泡体
は、気孔率が極めて高くなるが、気孔が独立になり易
い、すなわち連続気孔率が低いとの問題がある。さら
に、セルロース等の繊維を用いたものは、気孔率は高く
なるが、セルロースそのものの残炭率が低いことから、
成形体の強度等に問題がある。また、セルロースに樹脂
を混合するものは、積層体であることから平面方向に配
向が生じ、特に層間強度の低下が生じ易いとの問題があ
る。
【0004】上記の問題等のため、気孔特性などに優れ
たカーボン多孔体について、特開平6−32677号公
報では、ポリカルボジイミド樹脂が含浸したメラミン樹
脂発泡体、ウレタン樹脂発泡体等の樹脂発泡体を炭化し
て炭素多孔体を得る方法が開示されている。また、特開
平8−59360号公報では、セルロース繊維を原料と
して用いることにより、高い気孔率と高強度特性を有す
る多孔質カーボン材の製造方法が開示されている。さら
に、特開平11−139871号公報では、コークス粒
とピッチの炭化物を結合材とする多孔質炭素基材と熱硬
化性樹脂を原料とした、気孔特性と強度特性に優れた多
孔質炭素材が開示されている。
【0005】しかしながら、これらの提案にも拘わら
ず、未だ充分な、高い気孔率と、優れた強度特性を満足
するものは少なかった。したがって、フィルター用や触
媒担持用などに用いることができる、気孔率が高く、強
度特性にも優れたガラス状カーボン多孔体が強く望まれ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来のガラス状カーボン多孔体やその製造方法が持つ問
題点を解消し、高い気孔率を有し、且つ強度特性に優れ
たガラス状カーボン多孔体、及び該ガラス状カーボンを
容易且つ経済的に得られる製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
鑑み、高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体やそ
の製造方法について鋭意検討を行った結果、長短軸の長
さ比が5以上である熱硬化樹脂粒と液状熱硬化性樹脂と
の混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下で焼成した
ところ、高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体が
容易かつ経済的に得られることを見出した。本発明は、
これらの知見に基づいて完成に至ったものである。
【0008】すなわち、本発明の第1の発明によれば、
長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹脂粒(a)及び
/又は炭素質粒(b)を少なくとも5重量%含有する固
体状原料(A)と、熱硬化性樹脂(B)との混合物を加
熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化焼成により得ら
れることを特徴とするガラス状カーボン多孔体が提供さ
れる。
【0009】また、本発明の第2の発明によれば、第1
の発明において、固体状原料(A)の他の成分として、
球状である熱硬化樹脂粒(c)及び/又は炭素質粒
(d)を用いることを特徴とするガラス状カーボン多孔
体が提供される。さらに、本発明の第3の発明によれ
ば、第1又は2の発明において、原料の熱硬化樹脂粒
(a)、(c)及び熱硬化性樹脂(B)は、独立してフ
ェノール樹脂、フラン樹脂、又はフルフラール−フェノ
ール共重合体から選ばれる一種の樹脂であることを特徴
とするガラス状カーボン多孔体が提供される。
【0010】さらにまた、本発明の第4の発明によれ
ば、第1〜3のいずれかの発明において、原料の混合割
合は、固体状原料(A)100重量部に対して、熱硬化
性樹脂(B)5〜50重量部であることを特徴とするガ
ラス状カーボン多孔体が提供される。また、本発明の第
5の発明によれば、第2〜4のいずれかの発明におい
て、球状である熱硬化性樹脂粒(c)及び炭素質粒
(d)の平均粒子径は、それぞれ熱硬化性樹脂粒(a)
及び炭素質粒(b)の平均短軸長さ以上、且つ平均長軸
長さ以下であることを特徴とするガラス状カーボン多孔
体が提供される。
【0011】一方、本発明の第6の発明によれば、
(I)長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹脂粒
(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なくとも5重量%
含有する固体状原料(A)と熱硬化性樹脂(B)とを、
又は更に溶剤とを混合する工程と、(II)工程Iで得
られた樹脂混合物を、所望形状の成形容器に入れ予備成
形する工程と、(III)工程IIの成形容器に入った
樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状
の多孔性熱硬化物を得る工程と、(IV)工程IIIで
得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガス雰囲気中にて、
800℃以上の温度で焼成する工程と、からなることを
特徴とする第1の発明に係わるガラス状カーボン多孔体
の製造方法が提供される。
【0012】また、本発明の第7の発明によれば、第6
の発明において、更に、(V)所定の形状に成形加工す
る工程を備えることを特徴とするガラス状カーボン多孔
体の製造方法が提供される。
【0013】本発明は、上記した如く、長短軸の長さ比
が5以上である熱硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒
(b)を少なくとも5重量%含有する固体状原料(A)
と、熱硬化性樹脂(B)との混合物を加熱硬化させ、非
酸化性雰囲気下での炭化焼成により得られることを特徴
とするガラス状カーボン多孔体、及びその製造方法に係
わるものであるが、その好ましい態様としては、次のも
のが包含される。
【0014】(1)本発明の第1の発明において、固体
状原料(A)中の長短軸の長さ比が5以上である熱硬化
樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)の含有割合は、
10〜40重量%であることを特徴とするガラス状カー
ボン多孔体。 (2)本発明の第6の発明において、工程IIIの熱硬
化させる温度が100〜250℃であることを特徴とす
る多孔質ガラス状カーボンの製造方法。 (3)本発明の第6の発明において、焼成温度が100
0〜2500℃であることを特徴とする多孔質ガラス状
カーボンの製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明の高い気孔率を有するガラス状カーボン多
孔体は、下記の製造方法により得ることができる。その
高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体の製造方法
は、図1に示すように次の4(I〜IV)又は5(I〜
V)工程からなることを特徴とし、中でも最大の特徴
は、原料の一つとして、長短軸の長さ比が5以上である
熱硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なく
とも5重量%含有する固体状原料(A)を用いることで
ある。 (I)混合(又は混練)工程:長短軸の長さ比が5以上
である熱硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を
少なくとも5重量%含有する固体状原料(A)と熱硬化
性樹脂(B)とを、更に、所望により溶剤とを混合又は
混練する工程 (II)予備成形工程:工程Iで得られた樹脂混合物
を、所望形状の成形容器に入れ、予備成形する工程 (III)成形(熱硬化)工程:工程IIの成形容器に
入った樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所
望形状の多孔性熱硬化物を得る工程 (IV)焼成工程:工程IIIで得られた多孔性熱硬化
物を、不活性ガス雰囲気中にて、800℃以上の温度で
焼成する工程 (V)成形加工工程:工程IVで得られたガラス状カー
ボン多孔体を、所定の形状に成形加工する工程
【0016】1.混合(又は混練)工程(I) 本発明の高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体の
製造方法では、先ず、長短軸の長さ比が5以上である熱
硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なくと
も5重量%含有する固体状原料(A)と、熱硬化性樹脂
(B)とを、更に、所望により溶剤とを混合又は混練す
る工程、すなわち混合(又は混練)工程が行われる。
【0017】(1)固体状原料(A) 高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体の原料の一
つとして用いられる固体状原料(A)は、長短軸の長さ
比が5以上である熱硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質
粒(b)を少なくとも5重量%含有したものである。本
発明においては、この長短軸の長さ比が5以上である熱
硬化樹脂粒(a)や炭素質粒(b)を原料として用いる
ことにより、高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔
体が得られることに特徴がある。長短軸の長さ比が5未
満や、球状のものでは、高い気孔率を有するガラス状カ
ーボン多孔体が得られない。
【0018】長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹脂
粒(a)としては、通常ガラス状カーボンの原料として
用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、フ
ェノール樹脂、フラン樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、
フルフラール−フェノール共重合体などの熱硬化性樹脂
の硬化物の、長短軸の長さ比が5以上である粒子が挙げ
られる。熱硬化性樹脂の硬化物は、例えば、フェノール
樹脂やフラン樹脂液などを熱硬化させたものであり、熱
硬化の方法は、特に限定されずに、通常の熱硬化方法を
用いることができる。また、本発明で使用できる熱硬化
樹脂粒(a)や炭素質粒(b)としては、平均長軸長さ
が、例えば300μm〜1mmの範囲のものである。一
般に入手容易なものとして、各種熱硬化性樹脂及びカー
ボンの短繊維を挙げることができる。
【0019】本発明のガラス状カーボンの気孔率、特に
連続気孔率は、この熱硬化樹脂粒や炭素質粒の長短軸の
長さ比に非常に影響を受ける。前記したように、例え
ば、長短軸の長さ比が5以上であれば、気孔率が40〜
80%、連続気孔率が35〜80%のものが得られる。
一方、熱硬化樹脂粒や炭素質粒の長短軸の長さ比が5以
上のものを用いずに、長短軸の長さ比が5未満、又は球
状の熱硬化樹脂粒や炭素質粒を用いたものや、或いは、
固体状原料(A)を用いずに、通常の熱硬化性樹脂
(B)のみで製造したガラス状カーボン又はガラス状カ
ーボン多孔体は、緻密であり、その気孔率が非常に小さ
くなる。
【0020】本発明では、前記したように、固体状原料
は、長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹脂粒や炭素
質粒を少なくとも5重量%含有したものであり、好まし
くは5〜40重量%であり、より好ましくは10〜40
重量%である。長短軸の長さ比が5以上のものの含有量
が多いと、特に長短軸の長さ比が大なもの程、強度的な
問題が生じる恐れがある。また、固体状原料の他の成分
としては、長短軸の長さ比が5未満の、又は球状の熱硬
化樹脂粒や炭素質粒が挙げられるが、得られるガラス状
カーボン多孔体の強度を保つためには、充填性のよい球
状の熱硬化樹脂粒(c)や炭素質粒(d)を用いるとよ
い。これら球状の熱硬化性樹脂粒(c)や炭素質粒
(d)の平均粒子径の範囲は、熱硬化性樹脂粒(a)や
炭素質粒(b)の平均短軸長さ以上で、平均長軸長さ以
下であること、すなわち2μm〜1mm、さらには10
μm〜1mmが好ましい。球状の粒の平均粒子径が熱硬
化性樹脂粒(a)や炭素質粒(b)の平均短軸長さより
も小さいと、球状の粒子が凝集を起こしやすくなり、均
一な多孔体が得られない恐れや、熱硬化性樹脂粒(a)
や炭素質粒(b)で形成される空隙が球状の粒で必要以
上に充填されてしまい、ガラス状カーボン多孔体の気孔
率が低くなる恐れがある。また、平均長軸長さよりも大
きくても、樹脂粒、炭素質粒の接点部の熱硬化性樹脂
(B)が相対的に少なくなるので多孔体の強度が低下す
る恐れや、球状の粒で形成される空隙を熱硬化性樹脂粒
(a)や炭素質粒(b)が埋める形になり、熱硬化性樹
脂粒(a)や炭素質粒(b)で形成される空隙が減少し
てしまい、ガラス状カーボン多孔体の気孔率が低くなる
恐れがある。
【0021】(2)熱硬化性樹脂(B) 本発明で得られるガラス状カーボン多孔体において、熱
硬化性樹脂(B)は、焼成炭化処理によりガラス状カー
ボンに転化する炭素源となるものであり、バインダーと
しても機能するものであって、前記した固体状原料
(A)とこの熱硬化性(バインダー)樹脂(B)の構成
(種類、量)などを調整することにより、機械的強度が
強く、一定の形状を有する高性能のガラス状カーボン多
孔体を得ることができる。
【0022】熱硬化性樹脂(B)としては、ポリカルボ
ジイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン
樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイ
ミド樹脂、メラミン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、
不飽和ポリエステル樹脂などやこれらの混合物或いは可
能な共重合体が挙げられ、通常ガラス状カーボンの原料
として用いられるフェノール樹脂やフラン樹脂或いはフ
ルフラール−フェノール共重合体などが好ましい。ま
た、熱可塑性樹脂に硬化剤を配合して熱硬化性樹脂の機
能をもつものも用いることができ、例えば、ノボラック
型フェノール樹脂に硬化剤としてヘキサメチレンテトラ
ミンを配合したものなども用いることができる。さら
に、前記した熱硬化樹脂粒(a)や(c)と同じ樹脂で
も、異なってもよい。
【0023】また、固体状原料(A)と熱硬化性樹脂
(B)に、更に、所望により溶剤を加えて、混合又は混
練してもよい。溶剤としては、固体状原料(A)を分散
し熱硬化性樹脂(B)を溶解又は分散させ、次工程の成
形工程や焼成工程で揮発消失するものであれば、特に限
定されず、例えば、メタノールやエタノール、或いはテ
トラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルアセトアミド
などが挙げられる。
【0024】混合機としては、固体状原料(A)、熱硬
化性樹脂(B)、及び更に溶剤を均一に分散、混合でき
るものであれば、特に限定されない。そのような混合機
としては、ボールミル、ペブルミル、リボンミキサー、
スーパーミキサーなどが挙げられる。また、固体状原料
(A)、熱硬化性樹脂(B)、及び更に溶剤を均一に分
散、混合できるものであれば、混練機を用いてもよく、
混練機としては、ミキシングロール、バンバリミキサ
ー、インターナルミキサー、ニ軸連続ミキサーなどが挙
げられる。
【0025】固体状原料(A)と熱硬化性樹脂(B)と
の混合時の配合割合は、固体状原料(A)100重量部
に対して、熱硬化性樹脂(B)5〜50重量部、好まし
くは10〜30重量部である。また、所望により配合さ
れる溶剤の配合割合は、固体状原料(A)と熱硬化性樹
脂(B)とを、うまく混合又は混練させる量が適宜選択
され、配合される。
【0026】2.予備成形工程(II) 次に、前工程(I)で得られた樹脂混合物を所望形状の
成形容器に入れ、予備成形する工程、すなわち予備成形
工程が行われる。本発明においては、得られたガラス状
カーボン多孔体の用途に応じて、所望形状、例えば円形
や角形などの成形容器が用いられる。成形容器として
は、特に限定されないが、次の工程を考慮すれば耐熱性
のものが好ましい。プラスチック製、例えばポリプロピ
レン製の成形容器でもよいし、金属製、例えばステンレ
ス製の成形容器でもよいし、また、圧縮成形などに用い
られる金型でもよい。本工程では、成形条件を特に規定
せず、熱と圧力をかけて流動化させ、金型や成形容器を
用いて所定の形状に賦形すればよい。成形容器などに、
樹脂混合物を流し込む時には、泡を巻き込まないように
注意する必要がある。
【0027】3.成形(熱硬化)工程(III) 続いて、前工程(II)の成形容器に入った樹脂混合物
を、離型可能な硬さまで熱硬化し、所望形状の多孔性熱
硬化物を得る工程、すなわち成形(熱硬化)工程が行わ
れる。成形(熱硬化)条件としては、樹脂混合物中の熱
硬化性樹脂(B)成分を硬化させるのであるが、樹脂混
合物を成形容器から離型可能な硬さまで熱硬化するので
あれば、特に限定されない。熱硬化の温度としては、最
大10〜250℃である。通常、プラスチック製の成形
容器であれば、例えば70〜90℃の温度で1〜2日か
けて熱硬化させ、多孔性の熱硬化物を得る。また、熱硬
化物を成形容器から取り外し、すなわち離型し、所望の
形状に加工してもよい。
【0028】4.焼成工程(IV) 次に、前工程(III)で得られた多孔性熱硬化物を、
非酸化性雰囲気下、例えば不活性ガス雰囲気中にて、8
00℃以上の温度で焼成する工程、すなわち焼成工程が
行われる。不活性ガスとしては、通常窒素やアルゴンガ
スが用いられ、非酸化性雰囲気下で焼成される。また、
不活性ガス雰囲気に変えて、真空中で焼成してもよい。
焼成温度としては、800℃以上の温度が必要で、好ま
しくは1000〜2500℃である。この時の昇温速度
は、特に限定されないが、品質のよいガラス状カーボン
多孔体を得るために、10℃/分以下、特に5℃/分以
下が望ましい。こうして、固体状原料(A)と熱硬化性
樹脂(B)との樹脂混合物が焼成され、その結果、高い
気孔率を有するガラス状カーボン多孔体が得られる。
【0029】5.成形加工工程(V) また、焼成後、得られた高い気孔率を有するガラス状カ
ーボン多孔体を、必要に応じて、更に、全体の形状を所
定の形状に成形したり、溝やくぼみ、貫通孔を設ける工
程、すなわち成形加工工程が行われることもある。特
に、粒や薄板などの形状に加工することで、連続気孔率
などを更に調整することができる。
【0030】本発明のガラス状カーボン多孔体の製造方
法により、得られたガラス状カーボン多孔体は、気孔率
が40〜80%であり、連続気孔率が35〜80%と高
く、また、800℃以上の温度で焼成しているために、
純度的に高品質であり、すなわち、耐熱性や耐薬品性に
優れており、機械的強度にも優れている。得られたガラ
ス状カーボン多孔体の他の物性としては、種々の製造条
件、例えば原料としての固体状原料(A)や熱硬化性樹
脂(B)の配合割合等により異なるが、例えば、かさ密
度が270〜1030kg/m、曲げ強度が40〜1
60MPa、固有抵抗が70〜350μΩ・mである。
本発明のガラス状カーボン多孔体は、一般的な多孔質ガ
ラス状カーボンなどに比較して、高い気孔率を有するた
めに、各種フィルター、触媒担体、軽量構造材、面状発
熱体、吸着材(剤)、電磁波シールド材、電磁波吸収
材、電気二重層コンデンサの電極、濾過材、断熱材、還
元材、燃料電池の燃料供給板等などに好適に用いること
ができる。さらに、ガラス状カーボン多孔体の製造方法
自体も、上述したように、複雑な工程がなく、容易かつ
経済的である。
【0031】
【実施例】以下に、本発明について実施例及び比較例を
挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施
例に特に限定されるものではない。
【0032】[実施例1]固体状原料(A)として、長
軸300μm、短軸33μm、長短軸の長さ比が9.1
のフェノール樹脂の固形樹脂粒(日本カイノール製KF
−10BT)20重量部と、平均粒径60μmの真球状
のフェノール樹脂の固形樹脂粒60重量部と、熱硬化性
樹脂(B)として、樹脂分が65重量%のフェノール樹
脂液10重量部と、溶剤としてメタノール40重量部と
を撹拌混合して、ポリプロピレン製の容器に流し込み、
熱硬化を行なった。熱硬化は、80℃,24時間、
85℃,10時間、90℃,10時間、150℃,
10時間の条件で順次実施した。熱硬化後、所定の形に
加工した板を、窒素雰囲気下、昇温速度0.7℃/mi
n、到達温度1000℃で炭化焼成すると、気孔率の高
いガラス状カーボン多孔体が得られた。得られたガラス
状カーボン多孔体の物性等を測定評価した。気孔率は、
51%、連続気孔率は、48%であった。尚、実施例及
び比較例での連続気孔率は、水銀圧入法、により測定
し、その測定条件は、水銀の前進接触角と後退接触角が
140℃、水銀の表面張力480dynes/cm、水
銀の密度が13.53g/mlである。樹脂混合物の組
成とガラス状カーボン多孔体の物性評価結果を表1に示
す。
【0033】[実施例2〜7]実施例1と同様の方法に
て、表1に示す樹脂混合物の組成で、気孔率の高いガラ
ス状カーボン多孔体を得た。実施例2で得られたガラス
状カーボン多孔体の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)
にて写真撮影し、そのSEM写真を図2に示す。また、
ガラス状カーボン多孔体の物性評価結果を表1に示す。
【0034】[比較例1]固体状原料(A)として、長
短軸の長さ比が5以上のものを用いずに、球状の熱硬化
性樹脂粒(平均粒径60μm)80重量部を用いた以外
は、実施例1と同様にして、ガラス状カーボン多孔体を
得た。そのガラス状カーボン多孔体の物性評価結果を表
1に示す。気孔率は24%であった。
【0035】
【表1】
【0036】上記の表1と図2から明らかなように、実
施例1〜6で得られたガラス状カーボン多孔体は、気孔
率が高く、曲げ強度も優れている。一方、長短軸の長さ
比が5以上のものを用いない固体状原料を用いている比
較例1のガラス状カーボン多孔体は、気孔率が24%と
低い。
【0037】
【発明の効果】本発明のガラス状カーボン多孔体は、高
い気孔率を有し、純度的に高品質であり、すなわち、耐
熱性や耐薬品性に優れており、機械的強度にも優れてい
る。また、一般的な多孔質ガラス状カーボンに比較し
て、高い気孔率を有するために、各種フィルター、触媒
担体、軽量構造材、面状発熱体、吸着材(剤)、電磁波
シールド材、電磁波吸収材、電気二重層コンデンサの電
極、濾過材、断熱材、還元材、燃料電池の燃料供給板な
ど多様な用途に好適に用いることができる。さらに、ガ
ラス状カーボン多孔体の製造方法自体も、複雑な工程が
なく、容易かつ経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】高い気孔率を有するガラス状カーボン多孔体の
製造工程を示す図である。
【図2】ガラス状カーボン多孔体のSEM写真を表す図
である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4G019 LA09 LB04 LD02 4G032 AA13 AA14 BA01 BA04 BA05 GA01 GA06 GA12 4G046 CA04 CB05 CB06 CB08 CC02

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長短軸の長さ比が5以上である熱硬化樹
    脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なくとも5重
    量%含有する固体状原料(A)と、熱硬化性樹脂(B)
    との混合物を加熱硬化させ、非酸化性雰囲気下での炭化
    焼成により得られることを特徴とするガラス状カーボン
    多孔体。
  2. 【請求項2】 固体状原料(A)の他の成分として、球
    状である熱硬化樹脂粒(c)及び/又は炭素質粒(d)
    を用いることを特徴とする請求項1記載のガラス状カー
    ボン多孔体。
  3. 【請求項3】 原料の熱硬化樹脂粒(a)、(c)及び
    熱硬化性樹脂(B)は、独立してフェノール樹脂、フラ
    ン樹脂、又はフルフラール−フェノール共重合体から選
    ばれる一種の樹脂であることを特徴とする請求項1又は
    2記載のガラス状カーボン多孔体。
  4. 【請求項4】 原料の混合割合は、固体状原料(A)1
    00重量部に対して、熱硬化性樹脂(B)5〜50重量
    部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項
    に記載のガラス状カーボン多孔体。
  5. 【請求項5】 球状である熱硬化性樹脂粒(c)及び炭
    素質粒(d)の平均粒子径は、それぞれ熱硬化性樹脂粒
    (a)及び炭素質粒(b)の平均短軸長さ以上、且つ平
    均長軸長さ以下であることを特徴とする請求項2〜4の
    いずれか1項に記載のガラス状カーボン多孔体。
  6. 【請求項6】 (I)長短軸の長さ比が5以上である熱
    硬化樹脂粒(a)及び/又は炭素質粒(b)を少なくと
    も5重量%含有する固体状原料(A)と熱硬化性樹脂
    (B)とを、又は更に溶剤とを混合する工程と、(I
    I)工程Iで得られた樹脂混合物を、所望形状の成形容
    器に入れ予備成形する工程と、(III)工程IIの成
    形容器に入った樹脂混合物を、離型可能な硬さまで熱硬
    化し、所望形状の多孔性熱硬化物を得る工程と、(I
    V)工程IIIで得られた多孔性熱硬化物を、不活性ガ
    ス雰囲気中にて、800℃以上の温度で焼成する工程
    と、からなることを特徴とする請求項1記載のガラス状
    カーボン多孔体の製造方法。
  7. 【請求項7】 更に、(V)所定の形状に成形加工する
    工程を備えることを特徴とする請求項4記載のガラス状
    カーボン多孔体の製造方法。
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