JP2006131452A - ガラス状カーボン粉末の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料などとして有用な微細なガラス状カーボン粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】 太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を、焼成炭化処理および賦活化処理を順次に施し、あるいは、焼成炭化処理と賦活化処理を同時に施し、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕することを特徴とするガラス状カーボン粉末の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料などをはじめ各種フィラーなどとして有用なガラス状カーボン粉末の製造方法に関する。
ガラス状カーボンは、一般にフェノール樹脂やフラン樹脂などの熱硬化性樹脂を所定の形状に成形硬化したのち非酸化性雰囲気下で600〜2000℃に加熱して焼成炭化することにより得られ、均質なガラス質の組織構造を備えた特異な炭素材料である。そして、その耐食性、導電性、気密性などの特性に着目して電気化学分野をはじめ広い用途分野で実用化が進められている。
このガラス状カーボンを粉状化したものは、ガラス状カーボン成形体を粉砕することにより得られるが、ガラス状カーボンが極めて硬質なため均一に粉砕したり、微粉砕することは非常に困難である。
そこで、特許文献1には平均粒径が1μm以上であって、比表面積が200m2 /g以上のガラス状カーボン粉末、および、熱硬化性樹脂の硬化発泡体を非酸化性雰囲気で焼成し粉砕するか、または該発泡体を粉砕した後焼成することを特徴とする比表面積が200m2 /g以上のガラス状カーボン粉末の製造方法が提案されている。しかし、特許文献1では平均粒子径が1μmを下回るガラス状カーボン粉末は得られていない。
また、本出願人は、真比重が1.0以上で、平均粒径0.1〜100μmおよび真球度1.2以下の性状を備える球体ガラス状カーボン粉末、と残炭率45%以上の熱硬化性樹脂初期縮合物を平均粒径0.2〜120μm、真球度1.2以下の微小球粉末に調整し、10〜50℃の酸性液に30分間以上浸漬する第1硬化処理および大気中150〜300℃に30分間以上保持する第2硬化処理を施したのち、非酸化性雰囲気中で焼成炭化処理するその製造方法(特許文献2)を開発提案した。
しかし、特許文献2では転流動性に優れ、ハンドリング性の高い球体ガラス状カーボン粉末を対象としているので相対的に比表面積が小さく、燃料電池の触媒電極や触媒担体などの用途には適しておらず、また、真球状に近いので粉砕し難く、微粉化はより困難になる。
更に、特許文献3には熱硬化性樹脂に、150〜400℃の温度領域でガスを発生する加熱揮散物質および発泡剤を加え、発泡させ、得られた発泡体を非酸化性雰囲気で焼成し粉砕するか、または該発泡体を粉砕後非酸化性雰囲気で焼成するカーボン粉末の製造法が提案されている。そして、この製造法により平均粒径が2〜20μm、比表面積が200〜800m2 /gのカーボン粉末が製造されることが示されている。
特許文献3の方法は、発泡体が焼成炭化する過程で発泡体内部でポリエチレンなどの加熱揮散物質から発生するガスにより細孔形成および比表面積の増大を図るものであるが、均一な細孔を形成することが難しく微粉砕化も困難であり、また比表面積も800m2 /g以上のものを得ることができず、粒子径、比表面積とも燃料電池の触媒電極や触媒担持体などとして用いるには十分でない。
特開平03−164416号公報 特開平05−163007号公報 特開2000−103610号公報
比表面積の増大を図るためにはガラス状カーボン粉末を賦活化処理することも考えられるが、一般的にガラス状カーボン粉末のような粉末を、賦活化ガス中で均一に、効率よく賦活化処理することは困難である。
そこで、発明者らはこれらの問題点の解消を図るために鋭意研究を重ねた結果、特定の太さの熱硬化性樹脂繊維を焼成炭化して得たガラス状カーボン繊維は強度が小さく、微粉砕が可能であり、更に賦活化処理して粉砕すると、効率よく高比表面積で粒子径の小さいガラス状カーボン粉末が得られることを確認した。
すなわち、本発明はこの知見に基づいて完成したもので、その目的は燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料をはじめ各種フィラーなどとして有用であり、例えば平均粒子径が1μm以下で比表面積が1000m2 /g以上の微粉状のガラス状カーボン粉末の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明によるガラス状カーボン粉末の第1の製造方法は、太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を非酸化性雰囲気下で加熱して焼成炭化処理し、次いで賦活化ガス雰囲気下600〜1500℃の温度に加熱して賦活化処理し、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕することを構成上の特徴とする。
また、第2の製造方法は、太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を賦活化ガス雰囲気下600〜1500℃の温度に加熱して焼成炭化処理と賦活化処理を同時に行い、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕することを構成上の特徴とする。
本発明のガラス状カーボン粉末の製造方法によれば燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料など各種フィラーなどとして有用である、例えば、平均粒子径が1μm以下、比表面積が1000m2 /g以上のガラス状カーボン粉末を効率よく製造することが可能となる。
本発明のガラス状カーボン粉末を製造する原料には、太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維が用いられる。熱硬化性樹脂繊維としては、例えばフェノール樹脂繊維、フラン樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、尿素樹脂繊維、メラミン樹脂繊維、不飽和ポリエステル樹脂繊維などが例示され、好ましくは残炭率40%以上の熱硬化性樹脂からなる繊維が用いられる。なお、残炭率とは樹脂を非酸化性雰囲気中で1000℃の温度で熱処理した時に残留する炭素分の重量割合を指し、これが40%未満の場合には生産性が低く、実用的でなくなる。
使用する熱硬化性樹脂繊維の太さを1〜20デシテックスとするのは、1デシテックス未満では繊維径が細いため賦活化処理を円滑に行うことが困難であり、効率的に賦活化できないので生産性が低下するためである。一方、20デシテックスを越える場合は繊維径が太くなり強度も増すので、焼成炭化処理および賦活化処理して得たガラス状カーボン繊維を均一に微粉砕することが難しく、製造されるガラス状カーボン粉末の粒子性状を微細かつ均一にすることが困難となる。
また、熱硬化性樹脂繊維の長さは0.1mm以上、好ましくは0.2〜10mm程度のものが使用される。長さが0.1mm未満では賦活化処理時に充填密度が高くなるため、賦活化ガスが均一に拡散し難く賦活化処理を円滑、均一に行うことが困難となるためである。なお、長さが10mmを越える場合は適宜な手段で破砕、切断して10mm以下の長さに調整して使用することができる。
この熱硬化性樹脂繊維を加熱炉に装入して、常法により窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気下で加熱処理して焼成炭化する。この焼成炭化処理により熱硬化性樹脂繊維はガラス状カーボン繊維に転化する。
次いで、ガラス状カーボン繊維は水蒸気、炭酸ガスなどの賦活化ガス雰囲気下で600〜1500℃の温度に加熱して、賦活化処理される。
このようにして、熱硬化性樹脂繊維を焼成炭化処理および賦活化処理して得られたガラス状カーボン繊維は、組織が多孔質化するために強度が低下し、粉砕が容易になる。したがって、ボールミルなどの適宜な粉砕機により均一に微粉砕することができ、例えば、平均粒子径が1μm以下、比表面積が1000m2 /g以上のガラス状カーボン粉末を製造することが可能となる。
また、本発明によるガラス状カーボン粉末の第2の製造方法は、太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を賦活化ガス雰囲気下600〜1500℃の温度に加熱して焼成炭化処理と賦活化処理を同時に行い、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕するものである。
すなわち、第2の製造方法は、上記説明した第1の製造方法においては焼成炭化処理と賦活化処理とを順次に別個の工程で行うのに対して、焼成炭化処理と賦活化処理とを同時に行うものであり、製造工程の簡素化を図ることができる。
このようにして本発明の製造方法によれば、平均粒子径が小さく、比表面積の大きなガラス状カーボン粉末、例えば、燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料などとして有用される平均粒子径1μm以下、比表面積1000m2 /g以上のガラス状カーボン粉末を効率よく製造することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
実施例1
太さ2.2デシテックス、長さ6mmのフェノール樹脂繊維(日本カイノール社製、カイノール繊維 KF−0206)を窒素ガス雰囲気に保持された加熱炉に入れ、1000℃の温度で焼成炭化処理してガラス状カーボン繊維に転化した。次いで、賦活炉に移し、炭酸ガス雰囲気下で950℃の温度に加熱して賦活化処理し、多孔質ガラス状カーボン繊維を作製した。得られた多孔質ガラス状カーボン繊維をボールミルにより12時間微粉砕して、ガラス状カーボン粉末を製造した。
実施例2
太さ11.1デシテックス、長さ0.3mmのフェノール樹脂繊維(日本カイノール社製、カイノール繊維 KF−10BT)を賦活炉に入れ、炭酸ガス雰囲気下で950℃の温度に加熱して焼成炭化処理と賦活化処理を同時に施して、多孔質ガラス状カーボン繊維を作製した。得られた多孔質ガラス状カーボン繊維をボールミルにより12時間微粉砕して、ガラス状カーボン粉末を製造した。
比較例1
ノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸法により繊維化し、続いて不溶不融化処理を行って製造した太さ0.5デシテックス、長さ2mmのフェノール樹脂繊維を用いて実施例1と同じ方法により多孔質ガラス状カーボン繊維を作製したが賦活化処理過程で消失した。
比較例2
ノボラック型フェノール樹脂を溶融紡糸法により繊維化し、続いて不溶不融化処理を行って製造した太さ25デシテックス、長さ6mmのフェノール樹脂繊維を用いた他は、実施例2と同じ方法によりガラス状カーボン粉末を製造した。
比較例3
フェノール樹脂(住友デュレズ社製、スミライトレジンPR940)を、ポリビニルアルコールを1%添加した1N塩酸水溶液中で3時間攪拌しながら懸濁重合を行い、樹脂粉末を作製した。得られた樹脂粉末を12N塩酸水溶液に浸漬して第1硬化処理を行い、引き続き大気中で加熱して第2硬化処理を行った。次いで、硬化処理後の硬化樹脂粉末を窒素ガス雰囲気に保持された加熱炉に入れて、1000℃の温度に加熱して焼成炭化処理を行ってガラス状カーボン粉末を製造した。
比較例4
フェノール樹脂(住友デュレズ社製、スミライトレジンPR940)を型に流し込み、加熱硬化して得られた成形体を窒素ガス雰囲気に保持された加熱炉に入れて1000℃の温度で焼成炭化処理した。得られた板状ガラス状カーボン材から1辺約10mmの立方体状に切断し、奈良式粉砕機で粗粉砕した。粗粉砕したガラス状カーボンを、さらにボールミルで12時間微粉砕して、ガラス状カーボン粉末を製造した。
比較例5
比較例3のガラス状カーボン粉末を賦活炉に入れて、炭酸ガス雰囲気下950℃の温度に加熱して賦活化処理した。
このようにして製造したガラス状カーボン粉末について、レーザー回折法により平均粒子径を、BET法により比表面積を測定して、その結果を製造条件と対比して表1に示した。
Figure 2006131452
表1の結果から、本発明の製造条件を適用した実施例1、2では、燃料電池の触媒電極や触媒担持体、電気二重層キャパシタ用の電極材料などとして有用な平均粒子径が1μm以下と小さく、比表面積は1000m2 /g以上と大きなガラス状カーボン粉末が製造できることが分かる。これに対して、比較例では平均粒子径が大きく、また比表面積の小さなガラス状カーボン粉末しか製造できない。

Claims (2)

  1. 太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を非酸化性雰囲気下で加熱して焼成炭化処理し、次いで賦活化ガス雰囲気下600〜1500℃の温度に加熱して賦活化処理し、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕することを特徴とするガラス状カーボン粉末の製造方法。
  2. 太さ1〜20デシテックスの熱硬化性樹脂繊維を賦活化ガス雰囲気下600〜1500℃の温度に加熱して焼成炭化処理と賦活化処理を同時に行い、得られたガラス状カーボン繊維を微粉砕することを特徴とするガラス状カーボン粉末の製造方法。
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