JP2002285253A - 亜鉛精鉱の浸出法 - Google Patents

亜鉛精鉱の浸出法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 亜鉛精鉱を浸出する従来の方法は、亜鉛の浸
出に長時間を要し、また、酸化反応を促進させるために
オートクレーブ等の圧力容器を要し建設費が高いため、
浸出時間の短縮、建設費の削減が求められる。 【解決手段】 ボールミル等の粉砕機を使用し、亜鉛精
鉱の粒子表面に生成する単体硫黄等を剥離しながら浸出
を行う。浸出により消費される三価の鉄イオンは、送液
配管内の浸出後液に酸素を導入して再生し、繰り返し使
用することができる。この浸出法により、浸出時間を大
幅に短縮することが可能になり、オートクレーブ等の圧
力容器が不要となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛、更には鉛、
金、銀等の有価金属元素を含有する硫化物である亜鉛精
鉱(単に、亜鉛精鉱という。)から亜鉛、更には鉛、
金、銀等の有価金属元素および単体硫黄を回収する湿式
亜鉛製錬における亜鉛精鉱の浸出法に関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛精鉱の浸出等に関する従来の技術と
しては、特許公報第2856933号および特公平6−
43619に開示された方法がある。まず、特許公報第
2856933号によれば、次に述べるような方法を用
いて亜鉛精鉱が処理される。すなわち、亜鉛精鉱の浸出
は二段階で行われるものであって、亜鉛精鉱を焙焼して
亜鉛▲か▼焼物を生成後、中性浸出を行う。次いで電解
処理工程において得られた戻し酸を用いて強酸浸出を行
い、未浸出亜鉛精鉱及び焙焼により生成した難溶性のジ
ンクフェライトを分解する。亜鉛の浸出に必要な三価の
鉄イオンはジンクフェライト分解によって生じる鉄量だ
けでは不十分のため、浸出後液中の二価の鉄イオンを酸
化して再利用するという方法により浸出を行っている。
この結果90〜95℃において6〜10時間かけて99
%の亜鉛回収率を達成している。また、浸出時に生成す
る残渣は、溶鉱炉を用いて乾式冶金処理して有価金属を
回収するか、若しくは浸出残渣を浮選にかけて有価金属
を濃縮し回収している。
【0003】一方、特公平6−43619に記載されて
いる亜鉛精鉱の処理方法は、亜鉛精鉱を少なくとも2段
階以上にわたって浸出する方法であり、鉱石を粉砕して
微粒化した後、第1段階浸出では、温度125〜160
℃、最終遊離硫酸濃度20〜60g/L、三価の鉄イオ
ン濃度1〜5g/Lとなるように酸素圧をかけた状態で
加圧浸出を行い、亜鉛を不完全溶解する。その後の第2
段階浸出では、大気圧下において、電解処理工程で発生
する戻り酸を過剰に用い、遊離硫酸濃度60〜160g
/L、三価の鉄イオン濃度2〜3g/Lとなるように酸素
を供給した状態で浸出を行い、硫酸亜鉛溶液と浸出残渣
を形成させる。この際形成される残渣には残留亜鉛、
銅、鉄、大部分の鉛及び貴金属が含まれているので、浮
選により分離回収を実施する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上に述べた従来の方法
は、既存の焙焼−浸出−電解工程への組み込みが可能で
あり、かつ既存の設備への増強が少なくて良いという利
点があった。また、投入する亜鉛精鉱中の亜鉛の回収率
も高く、かつ銅、鉛、および他の貴金属の回収も同時に
行うことが可能であるという優れた点がある。しかし、
亜鉛を溶液中へ完全に溶解するのに要する時間が長いこ
とや、酸化反応を促進させるためにオートクレーブ等の
圧力容器や規模の大きい反応槽等を必要とするため、建
設費が高いという問題を抱えていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】このような従来技術の問
題を解決するために本発明者らは種々の検討を重ねた結
果、亜鉛精鉱を磨鉱しながら浸出することにより、又は
磨鉱と浸出を別個に行うことによっても、該亜鉛精鉱の
表面にある浸出反応を阻害する成分を剥離または分離除
去することで、亜鉛の浸出速度が飛躍的に向上すること
を発見した。また、亜鉛精鉱を浸出する際にポンプで液
を循環させている間に酸素を配管内に供給し、配管内を
加圧状態にすることで、反応により消費されて二価の鉄
イオンに変化した鉄イオンを三価の鉄イオンに再生して
浸出に再利用することができ、大規模な圧力容器を用い
ずに鉄イオンを酸化させることに成功した。
【0006】すなわち本発明は、第1に、遊離硫酸と三
価の鉄イオンとを含有する水溶液中において亜鉛精鉱を
磨鉱することによって該亜鉛精鉱中の亜鉛を浸出するこ
とを特徴とする亜鉛精鉱の浸出法;第2に、前記磨鉱を
大気圧下で行う、第1記載の浸出法;第3に、前記浸出
に伴って前記亜鉛精鉱の粒子表面に生成される副生物を
前記磨鉱により剥離して該浸出時間を短縮する、第1ま
たは2記載の浸出法;第4に、前記浸出により前記三価
の鉄イオンが還元されて生じた二価の鉄イオンを含有す
る浸出後液中に酸素を供給することによって該二価の鉄
イオンを三価の鉄イオンに酸化した液を前記磨鉱の工程
に繰り返す、第1〜3のいずれかに記載の浸出法;第5
に、前記磨鉱の工程へ供給または繰り返される前記水溶
液または前記浸出後液の送液配管内に酸素を供給して該
管内を加圧状態にする、第1〜4のいずれかに記載の浸
出法;第6に、前記水溶液中の遊離硫酸濃度を浸出終了
時点で40g/L以上としてジャロサイトの生成を抑制
する、第1〜5のいずれかに記載の浸出法;第7に、前
記水溶液中の三価の鉄イオン濃度を5〜60g/Lの範
囲とする、第1〜6のいずれかに記載の浸出法;第8
に、鉛、金および銀のうちの少なくとも1種の金属元素
を含有する前記亜鉛精鉱中の該金属元素が濃縮された前
記浸出後の残渣を浮選し該金属元素を回収する、第1〜
7のいずれかに記載の浸出法;第9に、前記浮選によっ
て得られた浮鉱を硫黄の融点以上の温度に加熱して該浮
鉱中の単体硫黄を揮発回収する、第8記載の浸出法、を
提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】亜鉛精鉱を電解処理により発生し
た遊離硫酸濃度150〜200g/L程度の電解工程の
戻り酸および鉄を除去した後に発生する后液を用いて8
0〜95℃まで昇温させ亜鉛の浸出反応を起こす。この
際の反応は以下の通りである。 ZnS + Fe2(SO4)3 → ZnSO4 + 2FeSO4 + S ・・・A式 A式の反応を促進するために必要な三価の鉄は、処理す
る亜鉛精鉱中の鉄を用いることとする。その場合、浸出
時の三価の鉄イオン濃度は好ましくは5〜60g/Lの
範囲、さらに好ましくは5〜15g/Lとする。三価の
鉄イオン濃度が5g/L未満ではA式の反応速度が不十
分であり、60g/L以上では効果が飽和してくる。こ
の反応は、時間と共に進行するものの、反応により生成
した単体硫黄等の副生物が亜鉛精鉱の粒子表面に生成、
付着するために反応界面が減少し、その結果その後の反
応速度が低下し、全ての亜鉛を浸出させるためには多大
の時間を要していた。本発明の方法では、A式の反応で
生成し、粒子表面に生成、付着した単体硫黄等の副生物
を剥離または分離させるためにボールミル等の粉砕機を
用いて、亜鉛精鉱を磨鉱しながら浸出を行った。また、
磨鉱工程と浸出工程を別個に行うこともできる。すなわ
ち、亜鉛精鉱を一旦浸出した後に、磨鉱して粒子表面に
生成、付着した副生物を剥離、分離してから、再度浸出
し、引き続き磨鉱を行うというように交互に各工程を繰
り返すことによっても目的を達成することができる。な
お、磨鉱に使用する粉砕機は、亜鉛精鉱の粒子表面の単
体硫黄等副生物を剥離または分離する目的に適する装置
であれば、ボールミルに限定されない。このような粉砕
機には、例えばロッドミル、タワーミル、振動ミル、ア
トリションミル等がある。また、磨鉱により亜鉛精鉱が
より微細化され比表面積が増えるためより浸出を促して
いる。磨鉱前の亜鉛精鉱の粒度は、特に問わないが、よ
り浸出時間を短縮するためには小さい方が望ましく、好
ましくはメジアン径が1〜100μm、90%粒子径が
50〜1000μmである。メジアン径が1μmより細
かいと鉱石の移送時に飛散しやすくなり原料歩留まりの
低下を招く、100μmより大きいと効果が十分に得ら
れない。また、磨鉱条件としては磨鉱時のスラリー濃度
は高い方が良く、好ましくは30g/L以上が良い。
【0008】この浸出反応により浸出残渣が発生する
が、浸出条件によっては、反応時に鉛ジャロサイトが生
成する。この鉛ジャロサイトが存在すると、生成する浸
出残渣量が増大するために、残渣処理にかかるコストの
増大に繋がる。従って、浸出反応時にはジャロサイト生
成を抑制するために浸出終了時点での遊離硫酸濃度を4
0g/L以上にする必要がある。次にA式の反応を見れ
ば明らかなように、亜鉛精鉱の浸出が進行するに伴い、
浸出に必要な三価の鉄イオンが消費され減少してくる。
三価の鉄イオンがなくなればA式の反応は進行せず、浸
出反応が停止する。これを防ぐための方法として、亜鉛
精鉱中の亜鉛量に相当する量の三価の鉄イオンを繰り返
すか、反応により発生した二価の鉄イオンを酸化するこ
とで三価の鉄イオンを再生させ、再利用する方法があ
る。この酸化反応は次のB式に示す通りである。 2FeSO4 + 1/2O2 + H2SO4 → Fe(SO4 )+H2O・・・B式 鉄イオンの酸化反応を大気圧下で行うと、この酸化反応
は非常に速度が遅い。そこで、オートクレーブなどの圧
力容器を使用して加圧状態とし、反応速度を速めて酸化
するのが一般的である。しかし、オートクレーブ等の圧
力容器は扱いにくく、かつ高価な設備であるために、本
発明では加圧状態を配管内で作り出し、配管内を液が流
れる間に二価の鉄イオンの酸化を行うことで三価の鉄イ
オンを再生し、浸出工程へ戻して再利用する。
【0009】以上のような浸出、鉄イオンの酸化を段階
的に実施することにより約30分で亜鉛精鉱中の亜鉛分
の約95%を浸出させることが可能となり、従来の方法
での反応時間を大幅に短縮することが可能となった。ま
た、浸出用の水溶液中において磨鉱することによってこ
の効果が得られるが、前述のように磨鉱と浸出とを交互
に行うことによってもこの効果を得ることができる。浸
出により得られた浸出後の液は浄液工程を経て、電解処
理工程へと送液されて液中から亜鉛が電気亜鉛として回
収される。また、浸出残渣中には鉛、銀、単体硫黄及び
その他の貴金属が混入しているためにこれらを分離除去
する必要がある。そのため、浸出残渣を浮選工程へと送
り、硫化物及び単体硫黄とその他の金属を分離し処理す
る必要がある。この場合、浸出後に固液分離操作を行っ
て浸出残渣を濃縮スラリーとした後、空気を吹き込みな
がら実液のまま浮選を行う。これにより、硫黄及び硫化
物は浮鉱側へ、鉛、珪酸および貴金属は尾鉱側へと移行
する。得られた浮鉱中の単体硫黄は融点以上の温度で揮
発させて気体とさせて、冷却回収する。尾鉱には鉛およ
び貴金属が含まれているので、乾式冶金処理によりこれ
らの鉛、貴金属を回収する。
【0010】
【実施例】[実施例1] 粉砕機として、市販の試験用
アトリションミル型粉砕機アトライター(商品名)を使
用した。アトライターの容量は5.4L(200mmφ
×176mmH)、材質はSUS304、モーター回転
数は170rpm以上、使用ボールはアルミナボール
(9mmφ、約3kg投入)である。浸出用水溶液とし
て、亜鉛濃度を100g/L、三価の鉄イオン濃度を3
0g/L、遊離硫酸濃度を40g/Lに調整した水溶液を
用意した。亜鉛精鉱は、表1の組成を有する亜鉛精鉱を
使用した。Zn、Fe、Pb、Cd、Cu等の金属元素
は、硫化物の形で亜鉛精鉱中に含有されている。亜鉛精
鉱の粒度は、メジアン径が25μm、90%粒子径が7
0μmである。
【0011】
【表1】
【0012】上記の浸出用水溶液2.0Lを上記の粉砕
機の中に入れ、90℃まで昇温した。昇温した上記水溶
液に上記の亜鉛精鉱60gを添加して、粉砕機を運転さ
せて磨鉱、浸出を開始した。5分毎に粉砕機中のスラリ
ーをサンプリングしながら30分間粉砕機の運転を続
け、粉砕機内で亜鉛精鉱と上記水溶液とを反応させた。
採取した各サンプルを濾過し、ケーキ(残渣)を十分水
洗した後、残渣品位を測定し、亜鉛精鉱品位と残渣品位
から亜鉛浸出率を求めた。上記の条件で試験を実施した
結果、表2に示すような亜鉛浸出率が得られ、僅か30
分の浸出で95%の亜鉛浸出率を達成できることが確認
された。
【0013】
【表2】
【0014】[実施例2] 実施例1に示したアトライタ
ーを用いて磨鉱、浸出試験を行った。試験は亜鉛濃度
100g/L、三価の鉄イオン濃度 15g/L、遊離硫酸濃
度 40g/Lの母液を作成し、この母液の中に亜鉛精鉱を
前記母液に対して30g/Lとなるように添加し、10分
間浸出を行った。浸出後、スラリーを200 g/Lに調整
し、アトライターで1分間粉砕を行った。粉砕後、スラ
リーを濾過し、残渣を得た。ここまでの手順を1回の試
験とし、その後残渣を母液に入れ、再度繰り返し試験を
行った。この繰り返し操作回数と亜鉛浸出率の関係を調
査した。この際の亜鉛精鉱は実施例1と同一組成のもの
を用いた。その結果を以下の表3に示す。
【0015】
【表3】
【0016】このように上述の操作を2回繰り返し、最
後に10分間浸出をすることで、亜鉛の浸出率は96.
5%を達成した。この操作に係る時間は磨鉱時間を加味
しても32分程度であり、実施例1と同様に短時間で高
浸出率を達成することができた。
【0017】
【発明の効果】ボールミル等の粉砕機を使用し、亜鉛精
鉱の粒子表面に生成する単体硫黄等の副生物を剥離、分
離しながら浸出を行うことにより、従来6〜10時間程
度必要であった浸出時間をその10分の1以下である3
0分程度まで短縮することが可能になった。浸出により
消費される三価の鉄イオンは、配管内に酸素を導入しな
がら再生することが可能であり、オートクレーブ等の圧
力容器が不要となった。従って、従来法に比べて浸出時
間を大幅に短縮することができ、また酸化に必要な設備
が不要となるため、これらの方法を組み合わせて利用す
ることによって建設費、操業コストの大幅な削減が可能
となった。また、本発明の方法は、既存の設備への組み
込みが可能であり、小規模の建設によって亜鉛生産量の
増産を行うことが可能になった等の効果を奏するもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鳴海 明 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 Fターム(参考) 4K001 AA30 BA06 DB03 DB25

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遊離硫酸と三価の鉄イオンとを含有する
    水溶液中において亜鉛精鉱を磨鉱することによって該亜
    鉛精鉱中の亜鉛を浸出することを特徴とする亜鉛精鉱の
    浸出法。
  2. 【請求項2】 前記磨鉱を大気圧下で行う、請求項1記
    載の浸出法。
  3. 【請求項3】 前記浸出に伴って前記亜鉛精鉱の粒子表
    面に生成される副生物を前記磨鉱により剥離して該浸出
    時間を短縮する、請求項1または2記載の浸出法。
  4. 【請求項4】 前記浸出により前記三価の鉄イオンが還
    元されて生じた二価の鉄イオンを含有する浸出後液中に
    酸素を供給することによって該二価の鉄イオンを三価の
    鉄イオンに酸化した液を前記磨鉱の工程に繰り返す、請
    求項1〜3のいずれかに記載の浸出法。
  5. 【請求項5】 前記磨鉱の工程へ供給または繰り返され
    る前記水溶液または前記浸出後液の送液配管内に酸素を
    供給して該管内を加圧状態にする、請求項1〜4のいず
    れかに記載の浸出法。
  6. 【請求項6】 前記水溶液中の遊離硫酸濃度を浸出終了
    時点で40g/L以上としてジャロサイトの生成を抑制
    する、請求項1〜5のいずれかに記載の浸出法。
  7. 【請求項7】 前記水溶液中の三価の鉄イオン濃度を5
    〜60g/Lの範囲とする、請求項1〜6のいずれかに
    記載の浸出法。
  8. 【請求項8】 鉛、金および銀のうちの少なくとも1種
    の金属元素を含有する前記亜鉛精鉱中の該金属元素が濃
    縮された前記浸出後の残渣を浮選し該金属元素を回収す
    る、請求項1〜7のいずれかに記載の浸出法。
  9. 【請求項9】 前記浮選によって得られた浮鉱を硫黄の
    融点以上の温度に加熱して該浮鉱中の単体硫黄を揮発回
    収する、請求項8記載の浸出法。
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