JP2002275284A - 有機−無機複合傾斜膜、その製造方法およびその用途 - Google Patents

有機−無機複合傾斜膜、その製造方法およびその用途

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JP2002275284A
JP2002275284A JP2001078808A JP2001078808A JP2002275284A JP 2002275284 A JP2002275284 A JP 2002275284A JP 2001078808 A JP2001078808 A JP 2001078808A JP 2001078808 A JP2001078808 A JP 2001078808A JP 2002275284 A JP2002275284 A JP 2002275284A
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inorganic
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English (en)
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Kazuyuki Takami
和之 高見
Akira Nakajima
章 中島
Kazuhito Hashimoto
和仁 橋本
Toshiya Watabe
俊也 渡部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 無機成分の含有率が膜の厚み方向に連続的に
変化する成分傾斜構造を有すると共に、透明性に優れ、
かつ数十nm〜数百nmの範囲で傾斜構造の厚さを制御
できる有機−無機複合傾斜膜を提供する。 【解決手段】 無機高分子化合物の存在下に、有機高分
子鎖を形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の有機化
合物を重合させてなる有機−無機複合物に希釈溶媒を加
えて得た溶液を基材上に塗工して形成された薄膜からな
り、該薄膜中の無機成分の含有率が、薄膜の表面から深
さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−
無機複合傾斜膜である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機−無機複合傾
斜膜、その製造方法およびその用途に関する。さらに詳
しくは、本発明は、無機成分の含有率が膜の厚み方向に
連続的に変化する成分傾斜構造を有すると共に、透明性
に優れ、かつ数十nm〜数百nmの範囲で傾斜構造の厚
さを容易に制御することができ、機能性材料として各種
用途に有用な有機−無機複合傾斜膜、このものを効率よ
く製造する方法、該複合傾斜膜を形成するためのコーテ
ィング剤および該複合傾斜膜を有する構造体に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、有機高分子材料の性能、機能に関
する要求の多様化に伴い、単一の高分子化合物では満足
させることが困難となり、高分子化合物に異なる性質を
もつ異種材料を加え、複合化することが行われている。
【0003】例えば、強化材を有機高分子材料中に分散
させることによる物性改質が広く行われており、具体的
には、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、セラミックス
繊維、アラミド繊維などの有機や無機の繊維状物質、あ
るいは炭酸カルシウム、シリカ、アルミナなどの粉末状
の無機フィラーなどを添加し、均質に分散させることが
行われている。また、異種の高分子化合物を混合し、場
合により相溶化剤を介して相溶化させ、ポリマーアロイ
化することにより、新しい機能を発現させる研究も盛ん
に行われている。
【0004】一方、最近、材料の組成を少しずつ変化さ
せ、表と裏で性質が全く異なる複合材料である傾斜機能
材料が注目され、例えばセラミックスの耐熱性と金属の
強度を併せもつ金属−セラミックス複合傾斜機能材料が
超音速航空機の機体材料などとして開発されている。
【0005】このような傾斜機能材料は、無機傾斜材
料、有機傾斜材料および有機−無機複合傾斜材料に分類
され、そして、複数の材料、例えば複数の異種の無機材
料同士、複数の異種の有機材料同士、あるいは1種以上
の有機材料と1種以上の無機材料を混合し、場所によっ
て異なる分布密度、配向などを制御することで、複数の
成分材料の物性を発現させうることから、例えば宇宙・
航空分野、自動車分野、エレクトロニクス分野、医療分
野、エネルギー分野、さらには放射線や電磁波のシール
ド分野などにおける利用が期待される。
【0006】一方、有機基材上に無機薄膜を積層してな
る複合材料を作製するための有機基材に対する無機物質
のコーティング技術は、機能薄膜分野において注目され
ている技術の一つである。しかしながら、一般に有機基
材に対する無機コーティング層の形成は容易ではない。
その大きな原因の一つとして、有機基材に直接無機コー
ティング層を設けた場合、経時により薄膜が剥離した
り、薄膜にクラックが発生することを挙げることができ
る。これらの現象は、硬度、ヤング率、熱膨張率、熱収
縮率などの物理的特性が、有機基材との界面を介して、
突然変化することに起因する。したがって、有機基材へ
の無機コーティング層の形成においては、その物理的諸
物性が連続的に変化した無界面接合が好ましいと容易に
予想される。すなわち、有機成分と無機成分の成分比率
が基材表面の垂直方向に対して連続的に変化した成分傾
斜薄膜を介することにより、一般に困難と考えられてい
る有機基材上への無機コーティング層の形成を安定に行
い得ると期待される。また、下地となる有機基材上には
なんらかの意匠が施されている場合が多く、機能性無機
コーティング層と共にその成分傾斜層も高い透明性が要
求される。
【0007】この成分傾斜層の形成は、理論的には、有
機成分と無機成分の成分比率を次第に変化させながら積
層を繰り返すことによって得ることが可能である。しか
しながらこの場合、積層回数が多いほど理想的な傾斜構
造が形成されるものの、煩雑な工程を必要とし、逆に積
層回数を減らす程工程は簡略化されるものの、目的の傾
斜構造が得られ難くなる問題を有している。またその透
明性を考慮すると、傾斜構造の厚さが数十nm〜数百n
mであることが好ましく、したがって1回の成膜におい
て、数nm〜数十nm程度の均一で精巧な薄膜の形成を
必要とするという技術上の困難もある。
【0008】一方、これまでに、自発的に有機無機成分
傾斜構造を形成させる方法が幾つか提案されている。例
えば有機高分子成分と無機成分を混合し、両者の相分離
現象を上手く制御することによって一方を傾斜分布させ
目的の傾斜薄膜を得る方法が提案されている(特開平8
−283425号公報)。しかしながらこの方法では、
傾斜分布する成分が十nm以上の大きさを有し、傾斜分
布した層が成分傾斜層であるかのごとく近似されるため
には、全体の厚さが少くとも1μm以上であることが要
求される。このような厚膜の場合、膜自体の形状が不安
定になるばかりでなく、高い透明性が保持されにくい。
特に層中に分散した数十nm程度の分離相は、可視光の
散乱源となり、膜全体を白濁化させてしまうなどの問題
がある。
【0009】これに対し、本発明者らは、先に、新規な
機能性材料として種々の用途、例えば塗膜や、有機材料
と無機または金属材料との接着剤、有機基材と光触媒塗
膜との間に設けられ、有機基材の劣化を防止する中間膜
や、有機基材と無機系または金属系材料層との密着性を
向上させる中間膜などの用途に有用な、厚さ方向に組成
が連続的に変化する有機−無機複合傾斜材料を見出した
(特願平11−264592号)。
【0010】この有機−無機複合傾斜材料は、有機高分
子化合物と金属系化合物との化学結合物を含有する有機
−無機複合材料であって、該金属系化合物の含有率が材
料の厚み方向に連続的に変化する数十nmの厚さの成分
傾斜構造を有する薄膜であり、上記の各種用途に極めて
有用な新規な材料である。
【0011】この傾斜薄膜は、相分離の現象を利用せず
あくまでも一分子の配向現象を利用しているために、傾
斜構造内に可視光の散乱源が存在せず、高い透明性を保
持することができる。また成分傾斜構造を有することか
ら、有機基材に対する無機コーティング層の安定な結合
を可能にしている。しかしながらこの場合、その傾斜構
造の大きさは高分子化合物の大きさによって著しく制限
され、汎用な分子量の高分子化合物を利用した場合で
は、その大きさが精々20〜50nmに過ぎないことが
示唆されている。
【0012】有機基材への無機コーティング層の形成
は、これら有機−無機複合傾斜膜を介する両成分の無界
面接合が理想型の一つではあるが、この技術を広く応用
・展開せしめるためには、様々な膜厚の成分傾斜構造を
必要とする。しかしながら前者の技術では、傾斜構造が
1μm以上と厚い上、透明性に欠ける問題点を有してい
る。また後者の技術では、成分傾斜性、透明性とも問題
はないが、傾斜構造が概ね100nm未満に限定されて
しまう。すなわち、高い透明性を維持しながらも、数十
nm〜数百nmの膜厚を有する有機−無機複合傾斜膜が
強く望まれている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
事情のもとで、無機成分の含有率が膜の厚み方向に連続
的に変化する成分傾斜構造を有すると共に、透明性に優
れ、かつ数十nm〜数百nmの範囲で傾斜構造の厚さを
容易に制御することができ、機能性材料として各種用途
に有用な有機−無機複合傾斜膜、その製造方法およびそ
の用途を提供することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好
ましい性質を有する有機−無機複合傾斜膜を開発するた
めに、まず有機成分と無機成分を分子レベルで混合した
有機無機混合材料を利用するのではなく、分子鎖レベル
で混ぜ合わせた有機無機ハイブリッド材料の利用に着目
し[このような分子鎖レベルで混ざり合った2成分系高
分子複合材料を一般に狭義の意味での相互侵入網目構造
(IPN構造)と称す。]、鋭意研究を重ねた。その結
果、有機高分子化合物と無機高分子化合物が分子鎖レベ
ルで相互侵入網目構造を形成したハイブリッド材料は、
その構造中に可視光の散乱源を生じにくく、高い透明性
が保持されること、そしてこの材料を数百nm以下の薄
膜にするに際し、特定の操作を施すことにより、2成分
を膜厚方向に分離せしめ、2成分の分子鎖を傾斜分布さ
せ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づい
て完成したものである。
【0015】すなわち、本発明は、(1)無機高分子化
合物の存在下に、有機高分子鎖を形成し得る官能基をも
つ少なくとも1種の有機化合物を重合させてなる有機−
無機複合物に希釈溶媒を加えて得た溶液を基材上に塗工
して形成された薄膜からなり、該薄膜中の無機成分の含
有率が、薄膜の表面から深さ方向に連続的に変化する成
分傾斜構造を有することを特徴とする有機−無機複合傾
斜膜、(2)無機高分子化合物が、金属アルコキシドの
加水分解縮合物である第(1)項に記載の有機−無機複
合傾斜膜、(3)金属アルコキシドの加水分解縮合物が
直鎖状のものである第(2)項に記載の有機−無機複合
傾斜膜、
【0016】(4)希釈溶媒が、関係式(I) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s)<5.59 …(I) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
である。)を満たすものである第(1)項ないし第
(3)項のいずれか1項に記載の有機−無機複合傾斜
膜、(5)有機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ有機
化合物が、有機高分子鎖中に0.1〜3.0モル%の架
橋構造を形成し得る官能基をもつ有機化合物を含むもの
である第(1)項ないし第(3)項のいずれか1項に記
載の有機−無機複合傾斜膜、(6)有機高分子鎖を形成
し得る官能基をもつ有機化合物が、高分子鎖を形成し得
る官能基を少なくとも2つもつ有機化合物0.1〜3.
0モル%を含むものである第(5)項に記載の有機−無
機複合傾斜膜、
【0017】(7)希釈溶媒が、関係式(II) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s) …(II) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
である。)を満たすものである第(5)項または第
(6)項に記載の有機−無機複合傾斜膜、(8)成分傾
斜構造の厚さが30〜300nmである第(1)項ない
し第(7)項のいずれか1項に記載の有機−無機複合傾
斜膜、(9)有機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ有
機化合物が、ラジカル重合性二重結合をもつ有機化合物
である第(1)項ないし第(8)項のいずれか1項に記
載の有機−無機複合傾斜膜、
【0018】(10)無機高分子化合物の存在下に、有
機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の
有機化合物を重合させてなる有機−無機複合物に、希釈
溶媒を加えて塗工液を調製し、次いで該塗工液を基材上
に塗布して、無機成分の含有率が表面から深さ方向に連
続的に変化する成分傾斜構造を有する薄膜を得ることを
特徴とする有機−無機複合傾斜膜の製造方法、(11)
無機高分子化合物の存在下に、有機高分子鎖を形成し得
る官能基をもつ少なくとも1種の有機化合物を重合させ
てなる有機−無機複合物と、希釈溶媒とを含む塗工液か
らなることを特徴とするコーティング剤、(12)無機
成分の含有率が表面から深さ方向に連続的に変化する成
分傾斜構造を有する有機−無機複合傾斜膜を基材上に形
成させるために用いられる第(11)項に記載のコーテ
ィング剤、および(13)第(1)項ないし第(9)項
のいずれか1項に記載の有機−無機複合傾斜膜を有する
ことを特徴とする構造体、を提供するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の有機−無機成分傾斜膜
は、該薄膜中の無機成分の含有率が、薄膜の表面から深
さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するもので
あって、無機高分子化合物の存在下に、有機高分子鎖を
形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の有機化合物を
重合させてなる有機−無機複合物に、希釈溶媒を加えて
得た溶液を基材上に形成してなるものである。
【0020】このような成分傾斜構造の確認は、例えば
有機基材に設けた有機−無機複合傾斜膜表面に、スパッ
タリングを施して膜を削っていき、経時的に膜表面の炭
素原子と金属原子の含有率を、X線光電子分光法などに
より測定することによって、行うことができる。
【0021】高分子化合物は溶液中に溶解させた場合で
も、一分子に注目するとその分子構造に応じた凝集形態
を形成していると考えられている。この状態と他の成分
を混合せしめても、両者に強い相互作用が生じない限
り、この凝集形態がほぐれ2成分が混じり合うことはな
い。この状態のまま2成分を傾斜分布せしめる場合、そ
の構造形成因子の最小単位は高分子凝集体として少なく
とも十nm程度の大きさとなる。これが先に述べた、薄
膜化への困難や白濁化の起因となっている。一方この凝
集形態をほぐしながら混じり合うような2成分混合系の
場合、高分子化合物単位は分子鎖の厚さ(数オングスト
ローム)程度になるが、強い相互作用が存在するため、
2成分の自発的な傾斜分布構造を得ることが至難であ
る。
【0022】そこで本発明者らは、強い相互作用を必要
とせずに有機無機の相互侵入網目構造を形成させる方法
として、あらかじめ伸長した直鎖な無機高分子化合物の
濃厚溶液中で有機モノマーを重合させて有機高分子化合
物を形成する方法を選択した。この系では相互作用の有
無にかかわらず2成分の相互侵入網目構造を構築するこ
とが可能となる。
【0023】本発明においては、このように、無機高分
子化合物の存在下に、有機高分子鎖を形成し得る官能基
をもつ少なくとも1種の有機化合物(有機モノマーと称
すことがある)を重合させることが必要である。この
際、無機高分子化合物の形成は、一般に、上記有機モノ
マーを重合させる前に、予め行われるが、無機高分子化
合物形成用物質(無機モノマーと称すことがある)の重
合反応速度が、該有機モノマーの重合反応速度よりも著
しく速い場合には、該有機モノマーと無機モノマーを混
合した系で行うことができる。前記無機高分子化合物
は、直鎖状のものであることが肝要であり、その種類と
しては特に制限はないが、例えば金属アルコキシドの加
水分解縮合物などを好ましく挙げることができる。
【0024】上記金属アルコキシドとしては、例えば一
般式(III) R1 m-nM(OR2n …(III) (式中、R1は非加水分解性基、R2は炭素数1〜4のア
ルキル基、Mは金属原子、mは金属原子Mの価数であ
り、nは0<n≦mの関係を満たす整数である。)で表
される化合物またはその縮合オリゴマーを挙げることが
できる。
【0025】上記一般式(III)において、R1が複数あ
る場合は、複数のR1は同一であっても異なっていても
よく、OR2が複数ある場合、複数のOR2は同一であっ
ても異なっていてもよい。R1で示される非加水分解性
基としては、例えばアルキル基、アリール基、アルケニ
ル基などが好ましく挙げられ、R2で示される炭素数1
〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル
基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、
イソブチル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−
ブチル基などが挙げられる。Mで示される金属原子とし
ては、例えばケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニ
ウムなどが挙げられる。
【0026】この一般式(III)で表される化合物又は
その縮合オリゴマーとしては、例えばテトラメトキシシ
ラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシ
シラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブ
トキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−se
c−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランな
ど、並びにこれらに対応するテトラアルコキシチタンお
よびテトラアルコキシジルコニウム、さらにはトリメト
キシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−
n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアル
ミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソ
ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニ
ウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウムなどの金属ア
ルコキシド、あるいは金属アルコキシドオリゴマー、例
えば市販品のアルコキシシランオリゴマーである「メチ
ルシリケート51」、「エチルシリケート40」(いず
れもコルコート社製商品名)などが挙げられる。本発明
においては、これらの金属アルコキシドは1種を単独で
用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい
が、これらの中で、アルコキシル基の炭素数が1〜4の
テトラアルコキシシランが好適である。
【0027】前記金属アルコキシドを加水分解、縮合さ
せて直鎖状の無機高分子化合物を形成させるには、例え
ばアルコール、ケトン、エーテルなどの適当な極性溶剤
中において、該金属アルコキシドを塩酸、硫酸、硝酸な
どの酸、あるいは固体酸としてのカチオン交換樹脂を用
い、通常−10〜70℃、好ましくは10〜40℃の温
度にて加水分解処理し、固体酸を用いた場合には、それ
を除去する方法などを用いることができる。
【0028】本発明においては、このようにして形成し
た無機高分子化合物の存在下に、有機高分子鎖を形成し
得る官能基をもつ少なくとも1種の有機化合物(有機モ
ノマー)を重合させることにより、相互侵入網目構造の
有機−無機複合体を形成させる。
【0029】この相互侵入網目構造は密な網目構造で
は、後の傾斜構造発現の際に支障をきたすおそれがある
ので、少なくとも一方の成分は、架橋構造が密に存在す
ることは好ましくない。したがって本発明では分子構造
を容易に制御しやすい有機高分子化合物の分子設計を中
心に、最適な相互侵入網目構造を制御した。有機高分子
化合物中に全く架橋を生じないように設計しても構わな
いが[セミ(semi)−IPN構造]、0.1〜3.0モ
ル%程度の架橋構造を含む有機高分子化合物が好まし
く、さらには0.3〜1.5モル%程度の架橋構造を含
むものが好ましい。
【0030】本発明においては、前記有機モノマーとし
ては、ラジカル重合性二重結合を有する化合物、例えば
一般式(IV)
【0031】
【化1】
【0032】(式中、R3は水素原子またはメチル基、
Xは一価の有機基である。)で表されるエチレン性不飽
和単量体、好ましくは一般式(IV−a)
【0033】
【化2】
【0034】(式中、R3は前記と同じであり、R4は炭
化水素基を示す。)で表されるエチレン性不飽和単量体
を挙げることができる。
【0035】上記一般式(IV−a)で表されるエチレン
性不飽和単量体において、R4で示される炭化水素基と
しては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアル
キル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6
〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を
好ましく挙げることができる。炭素数1〜10のアルキ
ル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基、および各種のブチル基、ペンチル
基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられ
る。炭素数3〜10のシクロアルキル基の例としては、
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘ
キシル基、シクロオクチル基などが、炭素数6〜10の
アリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシ
リル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが、炭素数
7〜10のアラルキル基の例としては、ベンジル基、メ
チルベンジル基、フェネチチル基、ナフチルメチル基な
どが挙げられる。
【0036】この一般式(IV−a)で表されるエチレン
性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレ
ート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)
アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル
(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フ
ェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリ
レートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよい
し、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】また、必要に応じ、密着性向上剤として、
一般式(IV−b)
【0038】
【化3】
【0039】(式中、R3は前記と同じであり、R5はエ
ポキシ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン
原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示
す。)で表されるエチレン性不飽和単量体を、前記の一
般式(IV−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と併
用することができる。
【0040】前記一般式(IV−b)で表されるエチレン
性不飽和単量体において、R5で示されるエポキシ基、
水酸基、メルカプト基、アミノ基、ハロゲン原子若しく
はエーテル結合を有する炭化水素基としては、炭素数1
〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3
〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール
基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げるこ
とができる。上記置換基のハロゲン原子としては、塩素
原子および臭素原子が好ましく、またアミノ基は遊離の
アミノ基、モノアルキル置換アミノ基、ジアルキル置換
アミノ基のいずれであってもよい。上記炭化水素基の具
体例としては、前述の一般式(IV−a)におけるR4
説明において例示した基と同じものを挙げることができ
る。
【0041】前記一般式(IV−b)で表されるエチレン
性不飽和単量体の例としては、具体的にはグリシジル
(メタ)アクリレート、3−グリシドキシプロピル(メ
タ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキ
シル)エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メ
タ)アクリレート、2−メルカプトエチル(メタ)アク
リレート、3−メルカプトプロピル(メタ)アクリレー
ト、2−メルカプトプロピル(メタ)アクリレート、2
−アミノエチル(メタ)アクリレート、3−アミノプロ
ピル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メ
タ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)
アクリレート、4−ジメチルアミノベンジル(メタ)ア
クリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、
2−ブロモエチル(メタ)アクリレートなどを好ましく
挙げることができる。
【0042】本発明においては、前記一般式(IV)で表
されるエチレン性不飽和単量体として、これらの化合物
以外に、スチレン、α−メチルスチレン、α−アセトキ
シスチレン、m−、o−またはp−ブロモスチレン、m
−、o−またはp−クロロスチレン、m−、o−または
p−ビニルフェノール、1−または2−ビニルナフタレ
ンなども用いることができる。
【0043】本発明においては、形成される有機高分子
化合物に、好ましくは0.1〜3.0モル%、より好ま
しくは0.3〜1.5モル%程度の架橋構造を含ませる
ために、有機モノマー中に架橋性有機モノマーを、好ま
しくは0.1〜3.0モル%、より好ましくは0.3〜
1.5モル%の割合で含有させることができる。
【0044】前記架橋性モノマーとしては、例えば高分
子鎖を形成し得る官能基を少なくとも2つもつ有機化合
物を好ましく挙げることができる。またアクリル酸やメ
タクリル酸などのラジカル重合性不飽和カルボン酸も用
いることができる。
【0045】前記の高分子鎖を形成し得る官能基を少な
くとも2つもつ有機化合物としては、例えばエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ
(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ
(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ
(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ
(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)ア
クリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリ
レート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレー
トなどが挙げられる。本発明においては、前記架橋性有
機モノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を
組み合わせて用いてもよい。
【0046】本発明においては、前記各種の有機モノマ
ーを、前述の無機高分子化合物の存在下に、ラジカル開
始剤を用いてラジカル重合させて、相互侵入網目構造を
有する有機−無機複合体を形成させたのち、これに希釈
溶媒を加えて塗工液を調製し、次いで基材上に該塗工液
からなる塗膜を形成させて乾燥処理することにより、本
発明の有機−無機複合傾斜膜が得られる。
【0047】上記塗工液を有機基材上に、例えば数百n
m程度の厚さで成膜した際に、この膜には自然現象によ
る様々な物理的相互作用が発生する。例えば、有機高分
子成分の有機基材への吸着、基材の表面エネルギーと空
気の表面エネルギーの差から生じる、膜厚方向への2成
分の相分離等がそれに当たる。本発明においては、有機
高分子成分が基材側に、無機高分子成分が表面側に分離
する力を受ける。一方両者は分子鎖レベルで混じり合っ
た構造をしているため、各成分が単独で挙動を生じるの
でなく、互いを干渉しながら最も安定な状態に移行す
る。この結果、2成分の傾斜分布構造が形成される。
【0048】この挙動の緩衝効果は、分子鎖の絡み合い
構造の他に、溶媒の乾燥速度によっても制御することが
できる。例えば、両者が架橋構造を有した相互侵入網目
構造[フル(full)−IPN構造]では、構造の自発的
形成に十分な時間が与えられれば、溶媒の乾燥速度に関
係なく一定の傾斜構造を形成する。ところが少なくとも
一方が架橋構造を有しないような相互侵入網目構造[セ
ミ(semi)−IPN構造]の場合では、溶媒によって
は、一時的に傾斜分布構造を形成しても、最終的には完
全に2層に相分離される。この場合は、相分離が完了す
る前の状態で薄膜が乾固し得る溶媒を選択することによ
って、目的の成分傾斜構造を得ることができる。
【0049】いいかえれば、これらの傾斜構造を自発的
に形成させるためには特定の時間を必要とする。その時
間をここで具体的に挙げることは事実上困難であるが、
適・不適の溶媒の選定は、その乾燥速度を決める因子で
ある溶媒の蒸気圧と、高分子鎖の拡散速度に影響を与え
る因子である溶媒の粘度とによって行うことができる。
【0050】すなわち、本発明においては、塗工液中に
多量を占める希釈溶媒は、複合体を形成する有機高分子
成分と無機高分子成分の両方を溶解し得ると共に、前記
セミ(semi)−IPN構造の場合には、関係式(I) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s)<5.59 …(I) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
である。)を満たし、前記フル(full)−IPN構造の
場合には、関係式(II) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s) …(II) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
である。)を満たすものであることが肝要である。
【0051】例えば有機成分としてポリメタクリル酸メ
チル系共重合体を選択した場合、このような溶媒の代表
例としては、炭素数5〜10の脂肪族ケトン化合物が好
ましく、セミ(semi)−IPN構造を得る場合には、3
−メチル−2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタ
ノンなどを好ましく用いることができ、またフル(ful
l)−IPN構造ではこれらと共に、3−メチル−2−
ペンタノンなどを好ましく用いることができる。この希
釈溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせ
て用いてもよい。本発明の有機−無機複合傾斜膜を形成
するための塗工液中の固形分濃度は、通常0.1〜20
重量%、好ましくは1〜10重量%の範囲で選定され
る。
【0052】この塗工液を有機基材上に、乾燥塗膜の厚
さが、通常1000nm以下、好ましくは10〜500
nm、より好ましくは30〜300nmの範囲になるよ
うに、ディップコート法、スプレーコート法、バーコー
ト法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコー
ト法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手
段により塗膜を形成し、公知の乾燥処理、例えば40〜
150℃程度の温度で加熱乾燥処理することにより、本
発明有機−無機複合傾斜膜が得られる。この複合傾斜膜
の傾斜構造の厚さは、一般に30〜300nmの範囲で
ある。
【0053】上記有機基材としては、例えばポリメチル
メタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレンやA
BS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプ
ロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフ
タレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステ
ル系樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリ
アミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネー
ト系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフ
ェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロー
スアセテートなどのセルロース系樹脂などからなる基材
を挙げることができる。
【0054】これらの有機基材は、本発明の傾斜膜との
密着性をさらに向上させるために、所望により、酸化法
や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上
記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処
理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射
処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えば
サンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これ
らの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれる。
【0055】なお、本発明における有機基材は、有機系
材料以外の材料、例えば金属系材料、ガラスやセラミッ
クス系材料、その他各種無機系または金属系材料からな
る基材の表面に、有機系塗膜を有するものも包含する。
【0056】このようにして得られた本発明の有機−無
機複合傾斜膜は、透明性に優れており、そして表面層は
膜中の無機成分の含有率が約70%以上であるが、基材
方向に逐次減少していき、基材近傍ではほぼ0%にな
る。
【0057】本発明はまた、該有機−無機複合傾斜膜か
らなる被膜を基材上に形成させるコーティング剤をも提
供するものである。このコーティング剤としては、前述
の無機高分子化合物の存在下に、有機高分子鎖を形成し
得る官能基をもつ少なくとも1種の有機化合物を重合さ
せてなる有機−無機複合物と、希釈溶媒を含む塗工液か
らなるものが用いられる。
【0058】このコーティング剤は下記の用途に用いる
ことができる。まず、塗膜としての用途に用いられる。
該有機−無機複合傾斜膜は、有機基材に対する接着性に
優れており、かつ塗膜表面は無機化合物に近い性質を有
することから、例えば各種プラスチックフィルム上に該
材料からなるコート層を設けることにより、耐擦傷性や
耐熱性などに優れると共に、密着性の良好なハードコー
トフィルムを得ることができる。
【0059】次に、接着剤としての用途に用いられる。
本発明の傾斜膜は、前記したように有機基材との密着性
に優れるとともに、表面は無機化合物に近い性質を有す
るので、無機または金属材料との密着性に優れている。
したがって、有機材料と無機または金属材料との接着剤
として好適である。
【0060】さらに、有機基材と、少なくとも無機系ま
たは金属系材料を含むコート層との間に介在させる中間
膜としての用途に用いられる。有機基材上に無機系また
は金属系材料を含むコート層を形成する場合、一般に有
機基材と該コート層との密着性が不十分であって、耐久
性に劣り、経時により剥離したり、あるいは熱や湿気な
どにより剥離しやすくなるという問題が生じる。
【0061】本発明の傾斜膜を中間膜として、上記有機
基材と無機系または金属系材料を含むコート層との間に
介在させることにより、該中間膜は前記したように傾斜
性を有することから、有機基材との密着性に優れると共
に、その上に設けられる無機系または金属系材料を含む
コート層との密着性にも優れ、その結果、有機基材上に
無機系または金属系材料を含むコート層を極めて密着性
よく、形成させることができる。
【0062】前記無機系または金属系材料を含むコート
層としては特に制限はなく、様々なコート層を形成する
ことができるが、例えば(1)光触媒活性材料層、
(2)無機系または金属系導電性材料層、(3)無機系
または金属系材料を含むハードコート層、(4)無機系
または金属系光記録材料層または無機系または金属系誘
電体層などを好ましく挙げることができる。
【0063】次に、各無機系または金属系材料を含むコ
ート層について説明する。 (1)光触媒活性材料層:有機基材表面に、二酸化チタ
ンなどの光触媒活性材料のコート層を設けた場合、その
光触媒作用により、有機基材が短時間で劣化するという
問題が生じる。したがって、光触媒作用により、劣化し
にくい無機バインダーを介して有機基材上に二酸化チタ
ンなどの光触媒活性材料のコート層を設けることが試み
られている。しかしながら、無機バインダーは、有機基
材との接着力が不十分であり、耐久性に劣るという問題
がある。
【0064】本発明の傾斜膜を中間膜として、有機基材
と光触媒活性材料のコート層との間に介在させた場合、
有機基材との密着性に優れ、しかも表面はほぼ無機化合
物であるため、光触媒活性材料のコート層との密着性が
良い上、中間膜が光触媒作用により劣化しにくく、有機
基材を十分に保護することができる。
【0065】また、表面に有機系塗膜を有する金属系基
材と光触媒活性材料層との間に、本発明の傾斜膜を中間
膜として介在させることができる。この中間膜は、上記
有機基材の場合と同様に、有機系塗膜との密着性に優
れ、しかも光触媒活性材料のコート層との密着性が良い
上、光触媒作用により劣化しにくく、有機系塗膜を十分
に保護することができる。このような用途としては、特
に表面に有機系塗膜を有する自動車用鋼板上に光触媒活
性材料層を設ける場合に有用である。
【0066】表面に有機系塗膜を有する金属系基材とし
ては、例えば冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム
/亜鉛合金めっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム
板、アルミニウム合金板などの金属系基材に有機系塗膜
を形成したものを挙げることができる。本発明の傾斜膜
を、このような中間膜として用いる場合、その上に設け
られる光触媒活性材料のコート層が光触媒能の高い二酸
化チタンである場合に、特に有効である。 (2)無機系または金属系導電性材料層:表面に導電性
材料層を有する有機基材、特にプラスチックフィルム
は、エレクトロルミネッセンス素子(EL素子)、液晶
表示素子(LCD素子)、太陽電池などに用いられ、さ
らに電磁波遮蔽フィルムや帯電防止性フィルムなどとし
て用いられている。このような用途に用いられる導電性
材料としては、例えば酸化インジウム、酸化錫、酸化亜
鉛、酸化カドミウム、ITO(錫ドープ酸化インジウ
ム)などの金属酸化物や、金、白金、銀、ニッケル、ア
ルミニウム、銅のような金属などの無機系または金属系
導電性材料が用いられる。そして、これらの無機系また
は金属系導電性材料は、通常真空蒸着法、スパッタリン
グ法、イオンプレーティング法などの公知の手段によ
り、プラスチックフィルムなどの有機基材上に、厚さ5
〜200nm程度の薄膜として形成される。
【0067】このようにして形成された無機系または金
属系導電性材料層は、有機基材との密着性が不十分であ
るので、本発明の傾斜膜を中間膜として、有機基材と該
無機系または金属系導電性材料層との間に介在させるこ
とにより、有機基材と無機系または金属系導電性材料層
との密着性を向上させることができる。また、透明導電
性フィルムが要求される場合においても、本発明の傾斜
膜からなる中間膜を介在させることにより、透明性が損
なわれることはほとんどない。
【0068】(3)無機系または金属系材料を含むハー
ドコート層:表面硬度が良好で、優れた耐擦傷性や耐摩
耗性を有するハードコートフィルムは、例えば、車両、
建物などの窓ガラスや窓用プラスチックボードなどの表
面貼付用として、あるいはCRTディスプレイやフラッ
トパネルディスプレイなどの保護用などとして広く用い
られている。
【0069】一方、プラスチックレンズは、ガラスレン
ズに比べて、軽量でかつ安全性、加工性、ファッション
性などに優れていることから、近年急速に普及してきて
いる。しかしながら、このプラスチックレンズは、ガラ
スレンズに比べて傷が付きやすいという欠点を有してお
り、したがって、その表面をハードコート層で被覆する
ことが行われている。
【0070】このようなハードコートフィルムやプラス
チックレンズに設けられるハードコート層の材料として
は、例えばアルキルトリヒドロキシシランおよびその部
分縮合物とコロイダルシリカとシリコン変性アクリル樹
脂とからなる混合物、オルガノトリアルコキシシラン加
水分解縮合物、アルコキシシラン加水分解縮合物とコロ
イダルシリカとの混合物、ジルコニウム、アルミニウム
およびチタニウムの中から選ばれる金属とキレート化合
物とシリコン変性アクリル樹脂とからなる混合物などの
無機系または金属系材料を含むハードコート剤が多用さ
れている。
【0071】プラスチックフィルムやプラスチックレン
ズなどの有機基材上にハードコート層を形成するには、
前記の無機系または金属系材料を含むハードコート剤
を、公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート
法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート
法、グラビアコート法、スプレーコート法などを用い
て、乾燥膜厚が1〜30μm程度になるように有機基材
上に塗布し、乾燥処理する方法が、通常用いられる。
【0072】このようにして形成された無機系または金
属系材料を含むハードコート層は、有機基材との密着性
が不十分であるので、本発明の傾斜膜を中間膜として、
有機基材と該ハードコート層との間に介在させることに
より、有機基材と無機系または金属系材料を含むハード
コート層との密着性を向上させることができる。またプ
ラスチックレンズにおいて、本発明の傾斜膜からなる中
間膜を介在させても、該プラスチックレンズの透明性の
低下や干渉縞の発生などをもたらすことはほとんどな
い。
【0073】(4)無機系または金属系光記録材料層ま
たは無機系または金属系誘電体層:近年、書き換え可
能、高密度、大容量の記憶容量、記録再生ヘッドと非接
触等という特徴を有する光記録媒体として、半導体レー
ザー光等の熱エネルギーを用いて磁性膜の磁化反転を利
用して情報を記録し磁気光学効果を利用して読み出す光
磁気ディスクや結晶から、アモルファスへの相変化を利
用した相変化ディスクが開発され、実用化に至ってい
る。
【0074】このような光記録媒体は、一般に、透光性
樹脂基板(有機基材)、例えばポリカーボネートやポリ
メチルメタクリレートなどの基板上に光記録材料層、誘
電体層、金属反射層、有機保護層などが順次積層された
構造を有しており、また基板と光記録材料層との間に誘
電体下地層を設ける場合もある。
【0075】基板上に設けられる光記録材料層には、例
えばTb−Fe、Tb−Fe−Co、Dy−Fe−C
o、Tb−Dy−Fe−Coなどの無機系の光磁気型記
録材料、あるいはTeOx、Te−Ge、Sn−Te−
Ge、Bi−Te−Ge、Sb−Te−Ge、Pb−S
n−Te、Tl−In−Seなどの無機系の相変化型記
録材料が用いられる。また、所望により、基板と光記録
材料層との間に設けられる誘電体下地層には、例えばS
iN、SiO、SiO2、Ta25などの無機系材料が
用いられる。
【0076】前記無機系の光記録材料層や誘電体下地層
は、通常真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレー
ティング法などの公知の手段によって形成される。この
ようにして形成された無機系または金属系光記録材料層
または無機系誘電体下地層は、透光性樹脂基板との密着
性が不十分であるので、本発明の傾斜膜を中間膜とし
て、透光性樹脂基板と該光記録材料層または該誘電体下
地層との間に介在させることにより、基板と光記録材料
層または誘電体下地層との密着性を向上させることがで
きる。
【0077】その他無機系または金属系材料を含むコー
ト層としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウ
ム、酸化錫、硫化亜鉛、アンチモンドープ酸化錫(AT
O)、錫ドープ酸化インジウム(ITO)などの無機系
赤外線吸収剤層、メタル蒸着された磁性層などが挙げら
れる。
【0078】本発明は、さらに、上記有機−無機複合傾
斜膜を有する構造体をも提供する。このような構造体と
しては、例えば本発明の有機−無機複合傾斜膜を中間膜
として介在させ、かつ少なくとも無機系または金属系材
料を含むコート層を有する有機基材、あるいは、本発明
の有機−無機複合傾斜膜を中間膜として介在させ、かつ
光触媒活性材料層を有する、表面に有機系塗膜が設けら
れた金属系基材など、さらには該複合傾斜膜を中間膜と
して介在させ、かつ少なくとも無機系または金属系材料
を含むコート層を有する物品などを挙げることができ
る。
【0079】上記物品の具体例としては、少なくとも無
機系または金属系材料を含むコート層が、(1)光触媒活
性材料層、(2)無機系または金属系導電性材料層、(3)
無機系または金属系材料を含むハードコート層、および
(4)無機系または金属系光記録材料層または無機系また
は金属系誘電体層であるものなどを好ましく挙げること
ができる。
【0080】
【実施例】次に、本発明を実施例により、さらに詳細に
説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定
されるものではない。
【0081】なお、各例で形成した膜の諸特性は、以下
に示す方法に従って求めた。 (1)傾斜構造 XPS装置「PHI−5600」[アルバック・ファイ
(株)製]を用い、アルゴンスパッタリング(3.0k
V)を3分間隔で施して膜を削り、膜表面のケイ素原子
の含有率を、X線光電子分光法により測定し、傾斜構造
を調べた。
【0082】(2)傾斜性 上記(1)で得られたスパッタリング時間とケイ素原子
の含有率との関係を示すグラフから、傾斜構造を示す部
分のスパッタリングに要する時間[St(分)]を求
め、その傾斜性を次式 傾斜性(%/分)=100/St(分) に従って算出した。
【0083】(3)傾斜構造の評価 スパッタリング速度が平均2nm/分であるので、傾斜
構造の厚さを、次式傾斜構造の厚さ(nm)=200/
傾斜性(%/分)に従って算出し、その値が30nm以
上を○(良好な傾斜構造)、30nm未満を△(傾斜性
不十分)とし、また、傾斜構造が確認されなかった場合
を×として評価した。
【0084】実施例1 テトラエトキシシラン(和光純薬工業社製)10mlと
2−ブタノン(和光純薬工業社製)5mlを混合した溶
液Aに、2−ブタノン5mlに濃塩酸(和光純薬工業社
製)0.25g、水1.30gを加えた溶液Bをゆっく
り滴下し、室温にて2時間30分攪拌を行った。その溶
液Cに、メチルメタクリレート(和光純薬工業社製)
9.2gとアゾビスイソブチロニトリル0.5gを混合
した溶液を加え30分間攪拌した後、70℃にて15分
間加熱した。得られた溶液を、3−メチル−2−ブタノ
ン160mlにて希釈して塗工液を調整した。この塗工
液を用いて、スピンコーティング法(1500rpm×
10秒)にてポリエチレンテレフタレート(PET)基
板上に薄膜を形成し、70℃にて10時間乾燥させた。
得られた薄膜の厚さは150nmであった。
【0085】この薄膜の傾斜構造については、図1にス
パッタリング時間とケイ素原子の含有率との関係をグラ
フで示すと共に、表1に傾斜性および傾斜構造の評価を
示す。この薄膜は、優れた透明性と良好な傾斜構造を有
することが確認できた。
【0086】実施例2 実施例1において、塗工液の調製に用いる希釈溶媒とし
て、3−メチル−2−ブタノン160mlの代わりに2
−ペンタノン120mlを用いた以外は、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の
傾斜構造については、図2にスパッタリング時間とケイ
素原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に
傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れ
た透明性と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0087】実施例3 実施例1において、塗工液の調製に用いる希釈溶媒とし
て、3−メチル−2−ブタノン160mlの代わりに3
−ペンタノン120mlを用いた以外は、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の
傾斜構造については、図3にスパッタリング時間とケイ
素原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に
傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れ
た透明性と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0088】実施例4 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9.17gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.06gとアゾビスイソブチロ
ニトリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加
熱した。得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン
160mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の
傾斜構造については、図4にスパッタリング時間とケイ
素原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に
傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れ
た透明性と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0089】実施例5 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9.13gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.14g、アゾビスイソブチロ
ニトリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加
熱した。得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン
160mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。表1にこの
薄膜の傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜
は、優れた透明性と実施例4と同様の良好な傾斜構造を
有することが確認できた。
【0090】実施例6 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9.1gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.2g、アゾビスイソブチロニ
トリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加熱
した。得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン1
60mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同様
にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の傾
斜構造については、図4にスパッタリング時間とケイ素
原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に傾
斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れた
透明性と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0091】実施例7 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9.05gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.3g、アゾビスイソブチロニ
トリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加熱
した。得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン1
60mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同様
にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の傾
斜構造については、図5にスパッタリング時間とケイ素
原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に傾
斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れた
透明性と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0092】実施例8 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9gとエチレングリコールジメタクリレート(和光
純薬工業社製)0.4g、アゾビスイソブチロニトリル
0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加熱した。
得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン160m
lにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同様にして
厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の傾斜構造
については、図5にスパッタリング時間とケイ素原子の
含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に傾斜性お
よび傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、優れた透明性
と良好な傾斜構造を有することが確認できた。
【0093】比較例1 実施例1において、塗工液の調製に用いる希釈溶媒とし
て、3−メチル−2−ブタノン160mlの代わりに、
アセトン120mlを用いた以外は、実施例1と同様に
して厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の傾斜
構造については、図6にスパッタリング時間とケイ素原
子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に傾斜
性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜構造
を有していないことが分かった。
【0094】比較例2 実施例1において、塗工液の調製に用いる希釈溶媒とし
て、3−メチル−2−ブタノン160mlの代わりに、
2−ブタノン120mlを用いた以外は、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の
傾斜構造については、図7にスパッタリング時間とケイ
素原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に
傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜
構造を有していないことが分かった。
【0095】比較例3 実施例1において、塗工液の調製に用いる希釈溶媒とし
て、3−メチル−2−ブタノン160mlの代わりに、
3−メチル−2−ペンタノン120mlを用いた以外
は、実施例1と同様にして厚さ150nmの薄膜を形成
した。この薄膜の傾斜構造については、図8にスパッタ
リング時間とケイ素原子の含有率との関係をグラフで示
すと共に、表1に傾斜性および傾斜構造の評価を示す。
この薄膜の傾斜構造は不十分であることが分かった。
【0096】比較例4 テトラエトキシシラン(和光純薬工業社製)10mlと
2−ブタノン(和光純薬工業社製)5mlを混合した溶
液Aに、2−ブタノン5mlに濃HCL(和光純薬工業
社製)0.25g、水1.30gを加えた溶液Bをゆっ
くり滴下し、室温にて2時間30分攪拌を行った(溶液
C)。一方、メチルメタクリレート(和光純薬工業社
製)9.2gとアゾビスイソブチロニトリル0.5g、
2−ブタノン20mlを混合した溶液を30分攪拌した
後、70℃にて15分間加熱した(溶液D)。次いで溶
液Cと溶液Dおよび2−ブタノン100mlを混合して
塗工液を得た後、実施例1と同様にして厚さ150nm
の薄膜を形成した。表1にこの薄膜の傾斜性および傾斜
構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜構造を有していな
いことが分かった。
【0097】比較例5 メチルメタクリレート(和光純薬工業社製)9.2gと
アゾビスイソブチロニトリル0.5g、2−ペンタノン
20mlを混合した溶液を30分攪拌した後、70℃に
て15分間加熱した(溶液E)。次いで比較例4と同じ
方法で得た溶液Cと溶液Eおよび2−ペンタノン100
mlを混合して塗工液を得た後、実施例1と同様にして
厚さ150nmの薄膜を形成した。表1にこの薄膜の傾
斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜構
造を有していないことが分かった。
【0098】比較例6 メチルメタクリレート(和光純薬工業社製)9.2gと
アゾビスイソブチロニトリル0.5g、3−メチル−2
−ペンタノン20mlを混合した溶液を30分間攪拌し
た後、70℃にて15分間加熱した(溶液F)。次いで
比較例4と同じ方法で得た溶液Cと溶液Fおよび3−メ
チル−2−ペンタノン100mlを混合して塗工液を得
た後、実施例1と同様にして厚さ150nmの薄膜を形
成した。表1にこの薄膜の傾斜性および傾斜構造の評価
を示す。この薄膜は、傾斜構造を有していないことが分
かった。
【0099】比較例7 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート9.18gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.02g、アゾビスイソブチロ
ニトリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加
熱した。得られた溶液を、3−メチル−2−ペンタノン
160mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同
様にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の
傾斜構造については、図4にスパッタリング時間とケイ
素原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に
傾斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜
構造が不十分であることが分かった。
【0100】比較例8 実施例1と同じ方法で得た溶液Cに、メチルメタクリレ
ート8.9gとエチレングリコールジメタクリレート
(和光純薬工業社製)0.6g、アゾビスイソブチロニ
トリル0.5gを加えた溶液を70℃にて15分間加熱
した。得られた溶液に、3−メチル−2−ペンタノン1
60mlにて希釈して塗工液を得た後、実施例1と同様
にして厚さ150nmの薄膜を形成した。この薄膜の傾
斜構造については、図5にスパッタリング時間とケイ素
原子の含有率との関係をグラフで示すと共に、表1に傾
斜性および傾斜構造の評価を示す。この薄膜は、傾斜構
造が不十分であることが分かった。
【0101】
【表1】
【0102】[注] EGDM:エチレングリコールジメタクリレート 3−メチル−2−ブタノン:蒸気圧1.1kPa(20
℃)、粘度0.530mPa・s(20℃) 2−ペンタノン:蒸気圧2.0kPa(20℃)、粘度
0.499mPa・s(20℃) 3−ペンタノン:蒸気圧2.0kPa(20℃)、粘度
0.496mPa・s(20℃) 3−メチル−2−ペンタノン:蒸気圧3.3kPa(2
0℃)、粘度0.590mPa・s(20℃) アセトン:蒸気圧2.9kPa(20℃)、粘度0.3
22mPa・s(20℃) 2−ブタノン:蒸気圧0.2kPa(20℃)、粘度
0.499mPa・s(20℃)
【0103】
【発明の効果】本発明の有機−無機複合傾斜膜は、無機
成分含有率が膜の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜
構造を有すると共に、透明性に優れ、かつ数十nm〜数
百nmの範囲で傾斜構造の厚さを容易に制御することが
でき、機能性材料として各種用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
【図2】実施例2で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
【図3】実施例3で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
【図4】実施例4、6および比較例7で得られた薄膜に
おけるスパッタリング時間とケイ素原子の含有率との関
係を示すグラフである。
【図5】実施例7、8および比較例8で得られた薄膜に
おけるスパッタリング時間とケイ素原子の含有率との関
係を示すグラフである。
【図6】比較例1で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
【図7】比較例2で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
【図8】比較例3で得られた薄膜におけるスパッタリン
グ時間とケイ素原子の含有率との関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 151/10 C09D 151/10 157/00 157/00 185/00 185/00 201/00 201/00 // C08L 33:00 C08L 33:00 (72)発明者 高見 和之 岐阜県岐阜市藪田西2丁目1番1号 宇部 日東化成株式会社内 (72)発明者 中島 章 埼玉県浦和市白幡4丁目20番1号 白幡西 住宅4−102 (72)発明者 橋本 和仁 神奈川県横浜市栄区飯島町2073番地2 ニ ューシティ本郷台 D棟 213号 (72)発明者 渡部 俊也 神奈川県藤沢市鵠沼海岸6−15−7 Fターム(参考) 4F071 AA22 AA31 AA33 AB18 AC05 AH19 BA02 BB02 BC02 4G069 AA03 AA08 BA04B BA48A DA05 FA03 FB23 4J011 PA13 PA16 PA25 PB40 PC02 4J026 AB44 AC36 BA05 BA06 BA08 BA27 BA28 BA30 DB12 FA05 GA10 4J038 CC011 CC012 CC031 CC032 CC081 CC082 CC091 CC092 CC101 CC102 CG141 CG142 CP091 CP092 DL021 DL022 DM021 DM022 GA01 GA06 KA06 MA09 NA01

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機高分子化合物の存在下に、有機高分
    子鎖を形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の有機化
    合物を重合させてなる有機−無機複合物に希釈溶媒を加
    えて得た溶液を基材上に塗工して形成された薄膜からな
    り、該薄膜中の無機成分の含有率が、薄膜の表面から深
    さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有することを
    特徴とする有機−無機複合傾斜膜。
  2. 【請求項2】 無機高分子化合物が、金属アルコキシド
    の加水分解縮合物である請求項1に記載の有機−無機複
    合傾斜膜。
  3. 【請求項3】 金属アルコキシドの加水分解縮合物が直
    鎖状のものである請求項2に記載の有機−無機複合傾斜
    膜。
  4. 【請求項4】 希釈溶媒が、関係式(I) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s)<5.59 …(I) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
    である。)を満たすものである請求項1から3のいずれ
    か1項に記載の有機−無機複合傾斜膜。
  5. 【請求項5】 有機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ
    有機化合物が、有機高分子鎖中に0.1〜3.0モル%
    の架橋構造を形成し得る官能基をもつ有機化合物を含む
    ものである請求項1から3のいずれか1項に記載の有機
    −無機複合傾斜膜。
  6. 【請求項6】 有機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ
    有機化合物が、高分子鎖を形成し得る官能基を少なくと
    も2つもつ有機化合物0.1〜3.0モル%を含むもの
    である請求項5に記載の有機−無機複合傾斜膜。
  7. 【請求項7】 希釈溶媒が、関係式(II) −0.4<蒸気圧(kPa)/粘度(mPa・s) …(II) (ただし、蒸気圧および粘度は、温度20℃における値
    である。)を満たすものである請求項5または6に記載
    の有機−無機複合傾斜膜。
  8. 【請求項8】 成分傾斜構造の厚さが30〜300nm
    である請求項1から7のいずれか1項に記載の有機−無
    機複合傾斜膜。
  9. 【請求項9】 有機高分子鎖を形成し得る官能基をもつ
    有機化合物が、ラジカル重合性二重結合をもつ有機化合
    物である請求項1から8のいずれか1項に記載の有機−
    無機複合傾斜膜。
  10. 【請求項10】 無機高分子化合物の存在下に、有機高
    分子鎖を形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の有機
    化合物を重合させてなる有機−無機複合物に、希釈溶媒
    を加えて塗工液を調製し、次いで該塗工液を基材上に塗
    布して、無機成分の含有率が表面から深さ方向に連続的
    に変化する成分傾斜構造を有する薄膜を得ることを特徴
    とする有機−無機複合傾斜膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 無機高分子化合物の存在下に、有機高
    分子鎖を形成し得る官能基をもつ少なくとも1種の有機
    化合物を重合させてなる有機−無機複合物と、希釈溶媒
    とを含む塗工液からなることを特徴とするコーティング
    剤。
  12. 【請求項12】 無機成分の含有率が表面から深さ方向
    に連続的に変化する成分傾斜構造を有する有機−無機複
    合傾斜膜を基材上に形成させるために用いられる請求項
    11に記載のコーティング剤。
  13. 【請求項13】 請求項1から9のいずれか1項に記載
    の有機−無機複合傾斜膜を有することを特徴とする構造
    体。
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