JP2002265257A - シリカ原料の製造方法 - Google Patents

シリカ原料の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 各種ケイ素化合物、特に含ケイ素セラミック
スの製造用原料として適したシリカ原料をもみ殻から製
造するための新規な方法を提供する。 【解決手段】 もみ殻粉末を150〜450℃の加圧熱
水で少なくとも30秒間処理し、反応温度及び反応時間
を制御することにより、生成するシリカ原料中のシリカ
成分と有機質分の含有割合を調整してシリカ原料を製造
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種ケイ素化合
物、例えば含ケイ素セラミックスの製造用原料として好
適なシリカ原料をもみ殻から製造するための新規な方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】農産廃棄物であるもみ殻中には、リグニ
ン、ヘミセルロース、セルロースなどの有機質分と、1
7〜22質量%程度の大部分がアモルファスシリカから
なる無機質分(灰分)が含まれ、さらにカリウムのよう
なアルカリ金属類が微量含まれていることが知られてい
る。
【0003】このため、有機質の炭素によるSiO2
熱還元反応を応用して、炭化ケイ素系セラミックスや窒
化ケイ素系セラミックスを製造することが試みられてい
るが、もみ殻をそのまま炭化すると、シリカに対する有
機炭素の量が多いため、SiC生成物中に過剰の炭素が
残留することになるし、また有機質分の一部は、炭化時
に揮発して、製品を多孔質化するなどの問題を生じる。
したがって、もみ殻からシリカ原料を製造する場合に
は、原料中の有機質分とシリカの含有割合を調整するこ
とが極めて重要になる。
【0004】ところで、これまで、もみ殻中のシリカ成
分を濃縮する方法としては、硝酸や微生物、あるいは蒸
著・爆砕法により有機質分を分解する方法や、もみ殻を
粉砕する際に、シリカ成分の割合の多い外皮部分が先に
微粒化されることを利用した分級分離法(特公平7−1
2446号公報)などが知られている。
【0005】しかしながら、前記硝酸分解法において
は、廃液処理の問題があるし、微生物法では処理時間が
長すぎて実用的でない。一方、蒸著・爆砕法では操作が
煩雑である上、エネルギーロスが多く、また分級分離法
においては、粗粒中のシリカが回収できないなどの欠点
があり、もみ殻中のシリカ成分を調整するには、必ずし
も適切な方法ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、各種ケイ素
化合物、特に含ケイ素セラミックスの製造用原料として
適したシリカ原料をもみ殻から製造するための新規な方
法を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、もみ殻か
らシリカ原料を製造する方法について種々研究を重ねた
結果、反応温度と反応時間を制御することにより、もみ
殻中のシリカと有機質分との含有割合を適正な範囲に調
整しうること、したがってこれを利用すれば使用目的に
応じた品質のシリカ原料を製造しうることを見出し、こ
の知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、もみ殻粉末を150
〜450℃の加圧熱水で少なくとも30秒間処理するこ
とを特徴とするシリカ原料の製造方法、及び反応温度及
び反応時間を制御することにより、生成するシリカ原料
中のシリカ成分と有機質分の含有割合を調整する前記記
載のシリカ原料の製造方法を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明方法においては、原料とし
てもみ殻を粉砕処理して得られたもみ殻粉末が用いられ
る。このもみ殻粉末の粒度については特に制限はない
が、32メッシュ篩目を通過する程度の粒度を有するも
のが好ましい。
【0010】本発明方法においては、上記もみ殻粉末を
150〜450℃の加圧熱水と接触させ、もみ殻中の有
機質分を抽出除去すると共に、分解させて、もみ殻中の
シリカ成分と有機質分との含有割合を調整する。このシ
リカ成分と有機質分との含有割合は、シリカの用途に応
じて選定され、例えば炭化ケイ素(SiC)系セラミッ
クスを製造する場合には、もみ殻中の有機質分の炭素原
子とシリカ成分のケイ素原子との比が、化学量論的比の
近傍になるように調整するのが有利である。この加圧熱
水との接触に際しては、不活性ガス雰囲気、例えば窒素
やアルゴン中で行うのが好ましい。
【0011】上記加圧熱水の温度が150℃未満では、
もみ殻中の有機質分の抽出除去及び分解の速度が遅すぎ
て、もみ殻中のシリカ成分と有機質分との含有割合が所
望の値になるまでに長時間を要し、実用的でない。一
方、加圧熱水が450℃を超えると系の圧力が高くなり
すぎ、それに耐える高圧装置を必要とし、設備費の点で
経済的に不利となる。シリカ成分の濃縮速度及び設備費
などを考慮すると、この加圧熱水の好ましい温度は20
0〜400℃の範囲であり、特に250〜350℃の範
囲が好適である。
【0012】また、もみ殻粉末と加圧熱水の接触時間
は、シリカ成分の所望の含有割合及び加圧熱水の温度な
どによって左右されるが、少なくとも30秒間、通常は
30〜120秒間程度である。さらに、もみ殻粉末と加
圧熱水の量的な割合については特に制限はないが、シリ
カ成分の濃縮効率及び装置の容積効率などを考慮する
と、もみ殻粉末1質量部に対し、加圧熱水を3〜15質
量部の割合、特に4〜10質量部の割合で用いるのが好
ましい。
【0013】このように、もみ殻粉末を加圧熱水と接触
させることにより、もみ殻中の有機質分は、一部水可溶
分となって抽出除去されると共に、一部分解してガス化
される。上記水可溶分は、250℃近傍の加圧熱水を用
いる場合は、キシロース及びキシロオリゴ糖が主体であ
り、またそれより高い温度の加圧熱水を用いる場合は、
グルコース及びセロオリゴ糖が主体となる。したがっ
て、この水可溶分は、食品添加剤として有用なオリゴ糖
として利用可能である。
【0014】この加圧熱水による接触処理において、例
えば灰分17質量%、灰分中のSi89質量%のもみ殻
粉末を用いた場合、温度250〜350℃、時間0〜9
0秒の処理条件で、水不溶分中の灰分含有量は、17〜
39質量%の範囲に濃縮される。したがって、加圧熱水
の温度及び処理時間を適当に選択することにより、灰分
含有量を17〜39質量%の範囲で、シリカ成分と有機
質分との含有割合を所望の値に調整することができる。
【0015】本発明方法によれば、灰分中の全金属成分
量に基づくSi濃度は、未処理もみ殻灰分中のSi濃度
が約89質量%であるのに対し、96.5〜99.5質
量%という高純度シリカを含む灰分が得られる。これは
灰分中のアルカリ金属類が加圧熱水処理により除去され
るためである。
【0016】
【実施例】次に実施例により、本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定さ
れるものではない。
【0017】実施例1 32メッシュ以下に粉砕し、乾燥したもみ殻粉末(灰分
17.4質量%、灰分中の全金属成分量に基づくSi濃
度89.1質量%)0.5gと蒸留水3.0gを内容積
5.6mlのバルブ付ステンレス製鋼反応容器に仕込
み、空気を窒素ガスで置換したのち、バルブを閉じて系
内を密閉した。この反応器を予め所定温度に加熱してお
いた塩浴中に投入し、所定時間振とうして反応させたの
ち、水浴中にて急冷して反応を終結させた。反応器内の
ガスを排出したのち、内容物をG4ガラスフィルター上
に取り出し、ろ過してろ液と残さを採取し、それぞれ減
圧蒸留及び真空乾燥して水分を除去し、水可溶分(W
S)と水不溶分(WI)を得た。それぞれの仕込み原料
基準の収率(質量%)を求め、また質量損失量からガス
及び揮発分収率(G)も求めた。反応温度が250℃に
なるように塩浴温度を設定し、この中で所定の時間反応
させた際の各反応生成物の収率及び水不溶分(WI)中
の灰分濃度と反応時間の関係を図1に示す。図1から分
るように、もみ殻は反応時間の経過と共に水可溶化さ
れ、水可溶分(WS)収率は60秒で約25質量%に達
した。しかし、それ以降はガス化が進み、ガス及び揮発
分収率(G)が増える傾向を示した。水可溶化と共にも
み殻[水不溶分(WI)]の収率は減少を続け、90秒
後には67質量%となり、それに伴い、水不溶分(W
I)中のシリカを含む灰分は17.4質量%から21.
3質量%まで濃縮された。
【0018】実施例2 反応温度が300℃になるように塩浴温度を設定し、そ
れ以外は実施例1と同じ条件で反応を行った際の反応生
成物収率及び水不溶分(WI)中のシリカを含む灰分の
濃度と反応時間の関係を図2に示す。図2から分るよう
に、各生成物の収率は実施例1と同様の変化を示した
が、反応時間90秒で水不溶分(WI)収率は57質量
%にまで減少し、それに伴い、水不溶分(WI)中の灰
分は17質量%から29質量%にまで濃縮できた。
【0019】実施例3 反応温度が350℃になるように塩浴温度を設定し、そ
れ以外は実施例1と同じ条件で反応を行った際の反応生
成物の収率及び水不溶分(WI)中のシリカを含む灰分
の濃度と反応時間の関係を図3に示す。図3から分るよ
うに、各生成物の収率は実施例1及び2と同様の変化を
示したが、反応時間90秒で水不溶分(WI)収率は4
1質量%にまで減少し、それに伴い、そのシリカを含む
灰分の濃度は39質量%にまで濃縮できた。また水不溶
分(WI)中のシリカを含む灰分の濃度と反応温度の関
係を調べるため、実施例1〜3のデータ中で、反応時間
を30秒あるいは90秒とした際の水不溶分(WI)中
のシリカを含む灰分の濃度と反応温度の関係を図4にプ
ロットした。図4から分るように、シリカを含む灰分の
濃度は反応温度及び反応時間の上昇と共に増加してお
り、反応温度及び反応時間を250〜350℃、0〜9
0秒の間で適当に選定することにより、水不溶分(W
I)中のシリカを含む灰分の濃度を17〜39質量%の
間で任意に制御できることが確認できた。
【0020】次に、反応時間30秒の処理で得られた水
不溶分中の灰分の元素分析をエネルギー分散型ケイ光X
線分析装置を用いて行った結果、未処理もみ殻中の灰分
の全金属成分量に基づくSi濃度が89.1質量%に対
し、250℃処理のそれは96.7質量%、300℃処
理のそれは97.6質量%、そして350℃処理のそれ
は99.3質量%にまで向上しており、本法で濃縮され
た無機質分は極めて純度の高いシリカから成ることが分
った。
【0021】さらに、本処理によって得られる水可溶分
(WS)については、その組成を糖分析用イオンクロマ
トグラフィーによって分析した結果、250℃付近で得
られる水可溶分はキシロース及びキシロオリゴ糖が主体
であり、またそれ以上の温度で得られる水可溶分は、グ
ルコース及びセロオリゴ糖が主体であることが分った。
すなわち、本処理で得られる水可溶分は、食品添加剤と
して有用なオリゴ糖として利用可能である。
【0022】
【発明の効果】本発明方法によれば、短時間で効率よ
く、もみ殻中のシリカ成分と有機質分との含有割合を容
易に制御することができ、使用目的に応じた高品質のシ
リカ原料、例えば炭化ケイ素系セラミックス製造用のシ
リカ原料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 反応温度250℃の場合の各反応生成物の収
率及び水不溶分(WI)中の灰分濃度と反応時間の関係
を示すグラフ。
【図2】 反応温度300℃の場合の各反応生成物の収
率及び水不溶分(WI)中の灰分濃度と反応時間の関係
を示すグラフ。
【図3】 反応温度350℃の場合の各反応生成物の収
率及び水不溶分(WI)中の灰分濃度と反応時間の関係
を示すグラフ。
【図4】 反応時間30秒若しくは90秒とした場合の
水不溶分(WI)中の灰分濃度と反応温度の関係を示す
グラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 熊谷 聡 福岡県久留米市国分町985−8 (72)発明者 林 信行 福岡県久留米市長門石2丁目2−61−906 Fターム(参考) 4G030 AA37 GA01 4G072 AA25 BB13 GG03 HH39 LL06 MM01

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 もみ殻粉末を150〜450℃の加圧熱
    水で少なくとも30秒間処理することを特徴とするシリ
    カ原料の製造方法。
  2. 【請求項2】 反応温度及び反応時間を制御することに
    より、生成するシリカ原料中のシリカ成分と有機質分の
    含有割合を調整する請求項1記載のシリカ原料の製造方
    法。
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