JP2002255927A - 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法 - Google Patents

2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低コストで操作性良く2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタン酸を製造する。 【解決手段】 2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン
ニトリルを硫酸存在下に水和反応させる工程(A)、工
程(A)の反応液中に含まれる2−ヒドロキシ−4−メ
チルチオブタンアミドを硫酸存在下に加水分解反応させ
る工程(B)、および工程(B)の反応液を2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに分
離する工程(C)により、2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタン酸を製造する。ここで、工程(A)および
(B)における硫酸の合計使用量を2−ヒドロキシ−4
−メチルチオブタンニトリル1モルに対して0.55〜
0.85モルの範囲とし、工程(A)および(B)にお
ける水の合計使用量を2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタンニトリル100重量部に対して60〜120重量
部の範囲とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飼料添加物等とし
て有用な2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸の製
造方法に関する。詳しくは、2−ヒドロキシ−4−メチ
ルチオブタンニトリルを硫酸存在下に水和、加水分解反
応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタン酸を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタン酸の製造方法として、2−ヒドロキシ−4−メチ
ルチオブタンニトリルを水和反応させ、生成した2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを加水分解反応
させる方法が知られている。例えば、特公平5−178
7号公報には、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン
ニトリルを硫酸存在下に水和、加水分解反応させた後、
反応液から2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を
イソブチルメチルケトンのような有機溶媒で抽出する方
法が記載されている。また、米国特許第4912257
号明細書には、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン
ニトリルを硫酸存在下に水和、加水分解反応させた後、
反応液をアンモニアで中和することにより油水分離さ
せ、油層から2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸
を回収する方法が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
公平5−1787号公報の方法では、多量の有機溶媒を
用いるため、コストの増加や容積効率の低下を招くと共
に、製品や排水からの有機溶媒の除去操作を必要とす
る。また、上記米国特許第4912257号明細書に記
載の方法では、有機溶媒を用いる必要がないものの、油
水の分液性が悪く、回収効率が十分でない。さらに、上
記いずれの方法も、硫酸の使用量が比較的多く、また硫
酸の中和に用いるアンモニア等の塩基の使用量も多くな
るため、コストの増加を招く。本発明の目的は、上記問
題点を解決して、低コストで操作性良く2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタン酸を製造する方法を提供するこ
とにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
の結果、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ルを硫酸存在下に水和反応、加水分解反応させる際、硫
酸および水の使用量を特定の範囲とすることにより、得
られた反応液を、有機溶媒やアンモニアのような他の成
分と混合しなくとも、分液性良く2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに分離すること
ができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】すなわち、本発明は、(A):2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタンニトリルを硫酸存在下に水
和反応させる工程、 (B):工程(A)で得られた反応液中に含まれる2−
ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを硫酸存在下
に加水分解反応させる工程、および (C):工程(B)で得られた反応液を2−ヒドロキシ
−4−メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに分離す
る工程 を含み、工程(A)および(B)における硫酸の合計使
用量が2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル
1モルに対して0.55〜0.85モルの範囲であり、
工程(A)および(B)における水の合計使用量が2−
ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル100重量
部に対して60〜120重量部の範囲である、2−ヒド
ロキシ−4−メチルチオブタン酸の製造方法に係るもの
である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、原料として2−ヒドロキシ−4−メ
チルチオブタンニトリルを用い、これを硫酸存在下に水
和反応させることにより、2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタンアミドを含む反応液を得[工程(A)]、次
いで該反応液中の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタ
ンアミドを硫酸存在下に加水分解反応させることによ
り、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む反
応液を得る[工程(B)]。原料の2−ヒドロキシ−4
−メチルチオブタンニトリルは、例えば、アクロレイン
をメチルメルカプタンと反応させて、3−メチルチオプ
ロピオンアルデヒドとし、これをシアン化水素と反応さ
せることにより、調製することができる。
【0007】工程(A)および(B)における硫酸の合
計使用量は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニ
トリル1モルに対して、0.55モル以上、好ましくは
0.6モル以上であり、また、0.85モル以下、好ま
しくは0.8モル以下である。該使用量が0.55モル
未満であると、工程(A)および(B)の反応速度が十
分でない。一方、該使用量が0.85モルを越えると、
工程(B)の反応液の油水分離性が低下すると共に、コ
スト高となる。
【0008】上記工程(A)および(B)における硫酸
の合計使用量とは、工程(A)において反応系内に加え
る硫酸の量と、工程(B)において工程(A)で得られ
た反応液に含まれる硫酸の追加分として反応系内に加え
る硫酸の量との和に相当するものであるが、前者が上記
所定の範囲内にあれば、後者は0であってもよい。好ま
しくは、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ル1モルに対して、前者が0.55〜0.85モルの範
囲であり、また後者が0〜0.3モルの範囲である。
【0009】工程(A)および(B)における水の合計
使用量は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニト
リル100重量部に対して、60重量部以上、好ましく
は65重量部以上であり、また、120重量部以下、好
ましくは100重量部以下である。該使用量が60重量
部未満であると、工程(B)の反応速度が十分でないと
共に、工程(B)の反応液中の塩の析出量が多くなり操
作性が十分でない。一方、該使用量が120重量部を越
えると、工程(B)の反応液の油水分離性が低下する。
【0010】上記工程(A)および(B)における水の
合計使用量とは、工程(A)において反応系内に加える
水の量と、工程(B)において工程(A)で得られた反
応液に含まれる水の追加分として反応系内に加える水の
量との和に相当するものであるが、前者が上記所定の範
囲内にあれば、後者は0であってもよい。好ましくは、
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル100
重量部に対して、前者が15〜80重量部の範囲であ
り、また後者が40〜105重量部の範囲である。
【0011】工程(A)の反応は、反応速度の観点か
ら、硫酸の中に2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン
ニトリルを供給することにより行うのが好ましく、この
とき、水は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニ
トリルを供給する前に硫酸と混合しておいてもよいし、
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリルと共に
硫酸の中に供給してもよいし、一部を2−ヒドロキシ−
4−メチルチオブタンニトリルを供給する前に硫酸と混
合しておき、一部を2−ヒドロキシ−4−メチルチオブ
タンニトリルと共に硫酸の中に供給してもよい。工程
(A)の反応温度は、通常40〜70℃の範囲であり、
反応時間は、通常1〜3時間の範囲である。工程(A)
の反応は、通常、常圧付近で行われるが、必要に応じて
加圧または減圧条件下に行ってもよい。
【0012】工程(B)の反応は、通常、工程(A)で
得られた反応液を、必要に応じて、水および/または硫
酸と混合した後、工程(A)より高い温度で処理するこ
とにより行われる。工程(B)の反応温度は、通常90
〜130℃の範囲であり、反応時間は、通常2〜6時間
の範囲である。工程(B)の反応も、通常、常圧付近で
行われるが、必要に応じて、加圧または減圧条件下に行
ってもよい。
【0013】工程(B)で得られた反応液を、2−ヒド
ロキシ−4−メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに
分離することにより、油層として2−ヒドロキシ−4−
メチルチオブタン酸を取り出すことができる[工程
(C)]。該反応液中に、重硫酸アンモニウムや硫酸ア
ンモニウムが析出している場合、そのまま油水分離させ
てもよいが、分液性の観点から、加温してこれらの析出
物を溶解させるのが好ましく、また、析出物が存在しな
い場合でも、加温することにより分液性を高めることが
できる。油水分離の際の温度は、通常30〜120℃、
好ましくは70〜110℃の範囲である。
【0014】工程(C)で分離された油層中には、工程
(A)〜(C)の条件により異なるが、通常、2−ヒド
ロキシ−4−メチルチオブタン酸の他に、水、硫酸アン
モニウム、重硫酸アンモニウム等が含まれる。該油層か
らさらに高濃度の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタ
ン酸を得る操作としては、油層をアンモニアと混合して
重硫酸アンモニウムを硫酸アンモニウムに中和した後、
得られた混合液から析出した硫酸アンモニウム等の不溶
物を濾過やデカンテーション等により除去するのが好ま
しい[工程(D)]。不溶物を除去する前に、該混合液
を濃縮して水分を除去することにより、より多くの不溶
物を析出させることができ、水分および硫酸アンモニウ
ムの含量が低減された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタン酸を得ることができる。
【0015】不溶物の除去を濾過により行う場合は、濾
過性の観点から加温するのが好ましく、濾過温度は通常
50〜90℃の範囲である。また、不溶物の除去をデカ
ンテーションにより行う場合、静置や遠心分離により十
分に不溶物を沈降させるのが好ましい。
【0016】濾過やデカンテーション等により除去され
た不溶物には、通常、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
ブタン酸が表面に付着していたり、内部に含まれている
ので、この2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を
回収するために、該不溶物の少なくとも一部を、工程
(D)に循環するのが好ましい。この場合、不溶物を水
で洗浄して2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を
溶出させ、得られる洗液を循環させてもよい。
【0017】
【実施例】以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこ
れに限定されるものではない。なお、硫酸イオンの分析
は、イオンクロマトグラフィーにより行い、2−ヒドロ
キシ−4−メチルチオブタン酸の分析は、液体クロマト
グラフィーにより行い、水分の分析は、カールフィッシ
ャー法により行った。
【0018】実施例1 2重量%の水を含む硫酸60g[硫酸58.8g(0.
6モル)、水1.2g]の中に、攪拌下、24重量%の
水を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ル172.6g[2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタ
ンニトリル131.2g(1モル)、水41.4g]
を、50℃にて30分かけて滴下した後、50℃にて3
時間保持した。この水和反応液に水79.6gを加え
(水の合計使用量は122.2gとなる)、115℃に
て6時間攪拌した。得られた加水分解反応液を放冷し、
90℃にて油層と水層とに分離した。油層は含水2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタン酸であった。油層中の
硫酸イオン濃度、水層中の2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタン酸濃度、および水層から塩が析出した温度を
表1に示す。
【0019】参考例1 実施例1で得られた油層および水層を混合して加水分解
反応液を再調製し、水を添加した。この液を115℃に
て攪拌した後、放冷し、90℃にて油層と水層とに再分
離した。さらに、得られた油層および水層に対し、上記
操作を繰り返して行った。それぞれの操作における、水
の添加量(通算)、油層中の硫酸イオン濃度、水層中の
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸濃度、および
水層から塩が析出した温度を表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】実施例2 2重量%の水を含む硫酸70g[硫酸68.6g(0.
7モル)、水1.4g]の中に、攪拌下、24重量%の
水を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ル172.6g[2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタ
ンニトリル131.2g(1モル)、水41.4g]
を、50℃にて30分かけて滴下した後、50℃にて2
時間保持した。この水和反応液に水67.3gを加え
(水の合計使用量は110.1gとなる)、115℃に
て4時間攪拌した。得られた加水分解反応液を放冷し、
90℃にて油層と水層とに分離した。油層は含水2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタン酸であった。油層中の
硫酸イオン濃度、水層中の2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタン酸濃度、および水層から塩が析出した温度を
表2に示す。
【0022】参考例2 参考例1において、実施例1で得られた油層および水層
の代わりに、実施例2で得られた油層および水層を用い
た以外は、参考例1と同様の操作を行った。結果を表2
に示す。
【0023】
【表2】
【0024】実施例3 2重量%の水を含む硫酸80g[硫酸78.4g(0.
8モル)、水1.6g]の中に、攪拌下、24重量%の
水を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ル172.6g[2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタ
ンニトリル131.2g(1モル)、水41.4g]
を、50℃にて30分かけて滴下した後、50℃にて1
時間保持した。この水和反応液に水59.9gを加え
(水の合計使用量は102.9gとなる)、115℃に
て3時間攪拌した。得られた加水分解反応液を放冷し、
90℃にて油層と水層とに分離した。油層は含水2−ヒ
ドロキシ−4−メチルチオブタン酸であった。油層中の
硫酸イオン濃度、水層中の2−ヒドロキシ−4−メチル
チオブタン酸濃度、および水層から塩が析出した温度を
表3に示す。
【0025】参考例3 参考例1において、実施例1で得られた油層および水層
の代わりに、実施例3で得られた油層および水層を用い
た以外は、参考例1と同様の操作を行った。結果を表2
に示す。
【0026】
【表3】
【0027】実施例4 2重量%の水を含む硫酸70g[硫酸68.6g(0.
6モル)、水1.4g]の中に、攪拌下、20重量%の
水を含む2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリ
ル164g[2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニ
トリル131.2g(1モル)、水32.8g]を、5
0℃にて30分かけて滴下した後、50℃にて2時間保
持した。この水和反応液に水90gを加え(水の合計使
用量は124.2gとなる)、115℃にて6時間攪拌
した。得られた加水分解反応液を放冷し、70℃にて油
層と水層とに分離した。油層を25重量%アンモニア水
溶液6.8gと混合し、水分が1重量%以下になるまで
減圧濃縮した後、グラスフィルターで濾過した。濾液に
2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸濃度が89重
量%(電位差滴定基準)となるように水を添加し、製品
とした。また、濾過残渣については、水10gで洗浄
し、得られた洗浄液を次回の操作に使用した。
【0028】次に上の操作を繰り返すが、油層を25重
量%アンモニア水溶液6.8gと混合した後、さらに前
回得られた洗浄液と混合し、その他は上と同様にして製
品を得た。さらにもう一度、2回目の操作を繰り返し
て、製品を得た。1回目、2回目、3回目で得られた製
品中の硫酸イオン濃度および水分を表4に示す。
【0029】
【表4】
【0030】
【発明の効果】本発明によれば、低コストで操作性の良
い方法で、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸を
製造することができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A):2−ヒドロキシ−4−メチルチオ
    ブタンニトリルを硫酸存在下に水和反応させる工程、 (B):工程(A)で得られた反応液中に含まれる2−
    ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミドを硫酸存在下
    に加水分解反応させる工程、および (C):工程(B)で得られた反応液を2−ヒドロキシ
    −4−メチルチオブタン酸を含む油層と水層とに分離す
    る工程を含み、工程(A)および(B)における硫酸の
    合計使用量が2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニ
    トリル1モルに対して0.55〜0.85モルの範囲で
    あり、工程(A)および(B)における水の合計使用量
    が2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル10
    0重量部に対して60〜120重量部の範囲であること
    を特徴とする2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタン酸
    の製造方法。
  2. 【請求項2】(D):工程(C)で分離された油層をア
    ンモニアと混合し、得られた混合液から不溶物を除去す
    る工程を含む請求項1記載の製造方法。
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