JP2002254809A - 可逆性感熱組成物及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体 - Google Patents

可逆性感熱組成物及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体

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JP2002254809A
JP2002254809A JP2001053768A JP2001053768A JP2002254809A JP 2002254809 A JP2002254809 A JP 2002254809A JP 2001053768 A JP2001053768 A JP 2001053768A JP 2001053768 A JP2001053768 A JP 2001053768A JP 2002254809 A JP2002254809 A JP 2002254809A
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Masashi Torii
昌史 鳥居
Hiromi Furuya
浩美 古屋
Takeshi Shibuya
毅 渋谷
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 発色性が高く、同時に消色性にも優れた可逆
性感熱発色組成物及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体
の提供。 【解決手段】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化
合物を用い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違
いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し
うる可逆性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色
組成物中に発色消色制御剤として下記一般式(1)〜
(3)で表わされる化合物の少なくとも1種を含有させ
ることを特徴とする可逆性感熱発色組成物、及びそれを
用いた可逆性感熱記録媒体。 (式中、mは2〜12の整数、nは5〜29の整数を表
す。) (式中、pは2〜12の整数、qは5〜21の整数を表
す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子供与性呈色性
化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した
可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御する
ことにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱組
成物及びそれを用いた可逆性感熱記録媒体に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、電子供与性呈色性化合物(以下、
発色剤又はロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物
(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した
感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワー
ドプロセッサー、科学計測機などのプリンターに使用さ
れている。しかし、これらの実用化されている従来の記
録媒体は何れも不可逆的な発色であり、一度記録した画
像を消去して繰り返し使用することはできない。一方、
特許公報によれば発色と消色を可逆的に行なうことがで
きる感熱記録媒体も提案されており、例えば顕色剤とし
て没食子酸とフロログルシノールの組み合わせを用いる
もの(特開昭60−193691号公報)、顕色剤にフ
ェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物
を用いるもの(特開昭61−237684号公報)、発
色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録
層に含有するもの(特開昭62−138556号公報、
特開昭62−138568号公報、特開昭62−140
881号公報等)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用
いたもの(特開昭63−173684号公報)、顕色剤
にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸又は没食子酸と高級
脂肪族アミンとの塩を用いるもの(特開平2−1882
93号公報、特開平2−188294号公報等)などが
挙げられる。
【0003】しかしながら、以上に示した従来の可逆性
感熱記録媒体は、発色濃度が高くて安定な画像のものは
消去性が低く、十分に消色する温度範囲が高温であった
り、消色温度範囲が低いものは、画像濃度が低かったり
画像部の安定性が低いなどの問題を有し、発色の安定性
と消色性の両立という点からみて実用的な記録媒体とし
て満足し得るものではない。更に、本発明者らは、先に
特開平5−124360号公報において顕色剤として長
鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カ
ルボン酸化合物又はフェノール化合物を用い、これと発
色剤であるロイコ染料と組み合わせることによって、発
色と消色を加熱冷却条件により容易に行わせることがで
き、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定
に保持させることが可能であり、更に発色と消色を安定
して繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物、及び
これを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。
この記録媒体は発色の安定性と消色性のバランスや発色
濃度の点で実用レベルの性能を持つものであるが、一層
広範囲な使用環境への対応や発色消色条件の適用範囲の
面で改良すべき余地があった。その後、長鎖脂肪族炭化
水素基をもつフェノール化合物についての特定の構造の
使用が提案されたが(特開平6−210954号公
報)、これも同様の問題を持っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、発色性が高
く、同時に消色性にも優れた可逆性感熱発色組成物及び
それを用いた可逆性感熱記録媒体の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点を解決するために鋭意検討を行なった結果、特定の
構造の発色消色制御剤(特定カルバミド酸エステル化合
物)を用いることにより、熱に対する発色状態の保存安
定性を上げることができ、同時に消色性にも優れ、かつ
良好な高速消去特性が得られることを見出した。熱に対
する保存性が向上する理由としては、発色消色制御剤
が、発色状態において、主に染料と長鎖アルキルを有す
る顕色剤で構成される発色凝集構造中に入り込み、より
安定な構造を作ることにより高温での発色構造が安定に
保持されるためと考えられる。また、消色過程において
は、顕色剤同士のみの凝集力よりも強い凝集構造を取る
ために、消色状態への結晶化を促進させ消色時の消し残
りが少なくなると考えられる。
【0006】即ち、上記課題は、次の1)〜6)の発明
によって解決される。 1) 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用
い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより
相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆
性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色組成物中
に発色消色制御剤として下記一般式(1)〜(3)で表
わされる化合物の少なくとも1種を含有させることを特
徴とする可逆性感熱発色組成物。
【化4】 (式中、mは2〜12の整数、nは5〜29の整数を表
す。)
【化5】 (式中、pは2〜12の整数、qは5〜21の整数を表
す。)
【化6】 (式中、rは5〜29の整数を表す。) 2) 1)記載の可逆性感熱発色組成物を主成分として
含有する記録層を支持体上に設けたことを特徴とする可
逆性感熱記録媒体。 3) シート状又はカード状に加工されたものであるこ
とを特徴とする2)記載の可逆性感熱記録媒体。 4) 情報記憶部を有することを特徴とする3)記載の
可逆性感熱記録媒体。 5) 前記情報記憶部が、磁気記録層及び/又はICで
あることを特徴とする4)記載の可逆性感熱記録媒体。 6) 接着剤層又は粘着剤層を有する2)〜5)の何れ
かに記載の可逆性感熱記録媒体。
【0007】以下、上記本発明について詳しく説明す
る。本発明の可逆性感熱発色組成物は、基本的に前記の
顕色剤と発色剤を組み合わせることによって構成される
ものである。本発明で用いる発色剤は電子供与性を示す
ものであり、それ自体無色又は淡色の染料前駆体(ロイ
コ染料)であって特に限定されず、従来公知のもの、例
えばフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フルオ
ラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラ
ミン系化合物などから選択できる。発色剤の具体例とし
ては、例えば次の化合物が挙げられるが、これらに限定
されるものではない。2−アニリノ−3−メチル−6−
ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロルアニリ
ノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(N−メチ
ル−o−クロルアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオ
ラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロ
ピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−
6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラ
ン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラ
ン、2−(o−クロルアニリノ)−3−クロル−6−ジ
メチルアミノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−
2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチ
ルインド−3−イル)−4−アザフタリド等。
【0008】本発明で用いる顕色剤としては、既に特開
平5−124360号公報に長鎖炭化水素基をもつ有機
リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物、フェノール化
合物の代表例と共に開示されているように、分子内に発
色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と、分
子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物
が挙げられる。顕色能を持つ構造としては、一般の感熱
記録媒体と同様に、例えばフェノール性水酸基、カルボ
キシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、こ
れらに限らず発色剤を発色できる構造を持てばよく、例
えばチオ尿素基、カルボン酸金属塩などがある。分子間
の凝集力をコントロールする代表的な構造としては長鎖
アルキル基などの炭化水素基がある。この炭化水素基の
炭素数は、一般的には8以上であることが良好な発色・
消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基に
は不飽和結合や分枝状の炭化水素基が含まれていてもよ
い。この場合も、主鎖部分は炭素数8以上であることが
好ましい。また、この炭化水素基は、ハロゲン原子、水
酸基、アルコキシ基などの基で置換されていてもよい。
【0009】上記のように顕色剤は、顕色能を持つ構造
と炭化水素基で代表される凝集力を制御する構造が連結
した構造を持つ。この連結部分には、−O−、−SO
−、−S−、−NH−、−C(=O)−等で表されるヘ
テロ原子を含む2価の基を挟んで結合していてもよい。
また、フェニレン、ナフチレンなどの芳香環又は複素環
などを挟んで結合していてもよく、これら両方を挟んで
いてもよい。更に、炭化水素基は、その鎖状構造中に上
記と同様な2価の基、即ち芳香環やヘテロ原子を含む2
価の基を有するものであってもよい。顕色剤としては、
前記特開平5−124360号公報に開示されているも
のの他に、特開平9−193558号公報、特開平9−
193557号公報、特開平9−315009号公報、
特開平9−323479号公報、特開平9−29056
6号公報、特開平10−861号公報、特開平10−6
655号公報、特開平10−67177号公報、特開平
10−95175号公報、特開2000−33776号
公報等に開示されているものを用いることができる。な
お、本発明で用いる発色剤及び顕色剤は上記の例に限定
されるものではない。
【0010】次に、本発明で用いる発色消色制御剤の具
体例としては、前記一般式(1)〜(3)で表わされ、
下記表1に示したmとn、pとq、及びrを有する化合
物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、表1は、それぞれ一般式(1)〜(3)に対応す
るものである。
【表1】
【0011】本発明の可逆性感熱発色組成物は、加熱温
度及び/又は加熱後の冷却速度により相対的に発色した
状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本
的な発色・消色現像を説明する。図1はこの組成物の発
色濃度と温度との関係を示したものである。始め消色状
態(A)にある組成物を昇温していくと、溶融し始める
温度Tで発色が起こり溶融発色状態(B)となる。次
に、溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま
室温に下げることができ、固まった発色状態(C)とな
る。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態から
の降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消
色が起き、始めと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色
状態(C)より相対的に濃度の低い状態となる。一方、
急冷発色状態(C)を再び昇温していくと発色温度より
低い温度Tで消色が起き(DからE)、ここから降温
すると始めと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温
度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組み合わせに
より変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融
発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は必ずしも一
致するものではなく、異なる場合もある。
【0012】本発明の組成物では、溶融状態から急冷し
て得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子同士で接
触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体
状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発
色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構
造の形成により発色が安定化していると考えられる。一
方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態
は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを
形成したり結晶化した状態であり、凝集又は結晶化する
ことにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態で
あると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分
離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が
起きる。図1に示した溶融状態からの徐冷による消色及
び発色状態からの昇温による消色は、何れもこの温度で
凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きてい
ることによる。
【0013】本発明の組成物を可逆性感熱記録媒体とし
て用いる場合、発色記録の形成はサーマルヘッドなどに
より一旦溶融混合する温度に加熱したのち急冷すればよ
い。また、消色方法としては、加熱状態から徐冷する方
法と、発色温度よりやや低い温度に加熱する方法の二つ
がある。しかし、これらは顕色剤と発色剤が相分離した
り、少なくとも一方が結晶化する温度に一時的に保持す
るという意味で同じである。発色状態の形成で急冷する
のは、この相分離温度又は結晶化温度に保持しないよう
にするためである。ここにおける急冷と徐冷は一つの組
成物に対して相対的なものであり、その境界は発色剤と
顕色剤の組み合わせにより変化する。組成物中の発色剤
と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより
適切な範囲が変化するが、概ね発色剤1モルに対し顕色
剤が0.1〜20モルの範囲、好ましくは0.2〜10
モルの範囲であり、この範囲より顕色剤が多くても少な
くても発色状態の濃度が低下し問題となる。また、本発
明の発色消色制御剤の割合は、顕色剤に対し0.1〜3
00重量%が好ましく、より好ましくは3〜100重量
%である。
【0014】本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体上
に前記の組成物を主成分として含む記録層を設けたもの
である。支持体としては記録層を保持できるものであれ
ばよく、紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラス又
はこれらの複合体などが挙げられる。記録層は本発明の
組成物さえ含有していればどのようなものでもよいが、
一般的にはバインダー樹脂中に発色剤、顕色剤、発色消
色制御剤が溶解又は細かく均一に分散した状態のものが
用いられる。発色剤、顕色剤及び発色消色制御剤は、別
々に粒子を形成していてもよいが、複合された粒子とし
て分散された状態の方が好ましい。複合させるには、発
色剤、顕色剤、発色消色制御剤を一旦溶融したり溶解し
たりすればよい。このような記録層は、各材料を別々に
溶剤中で分散溶解したのち混合した液、又は、各材料を
混合したのち溶剤中で分散又は溶解した液を支持体上に
塗布し、乾燥することによって形成される。また、発色
剤と顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いてもよ
い。
【0015】本発明の可逆性感熱記録媒体には、必要に
応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善又は制御
するための添加剤を加えてもよく、その例として、分散
剤、界面活性剤、導電剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、
光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤
などが挙げられる。記録層の形成に用いられるバインダ
ー樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニ
ル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチルセルロー
ス、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹
脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタ
ン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリ
メタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイ
ン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニ
ルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキ
シメチルセルロース、デンプン類などがある。これらの
バインダー樹脂の役割は、組成物の各材料が記録消去の
熱印加によっても片寄ることなく均一に分散した状態を
保つことにある。従って、バインダー樹脂には耐熱性の
高い樹脂を用いることが好ましく、特に安定した発色消
去の繰り返し性を向上させる目的で、架橋状態にある樹
脂を記録層中に含有させることが好ましい。架橋は熱、
紫外線、電子線などで行うことができる。
【0016】本発明の可逆性感熱記録媒体は、基本的に
支持体上に上記の記録層を設けたものであるが、記録媒
体としての特性を向上するため、保護層、接着層、中間
層、アンダーコート層、バックコート層などを設けても
よい。サーマルヘッドを用いた印字では熱と圧力のため
記録層の表面が変形し、いわゆる打痕ができる場合があ
る。これを防止するため表面に保護層を設けることが好
ましい。保護層には、ポリビニルアルコール、スチレン
−無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレ
ン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムア
ルデヒド樹脂のほか、紫外線硬化樹脂、及び電子線硬化
樹脂などが使用できる。また、保護層中には紫外線吸収
剤などの添加剤を含有させてもよい。記録層と保護層の
接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保
護層中の添加剤の記録層への移行防止を目的として、両
者の間に中間層を設けることが好ましい。また、記録層
の上に設置される保護層や中間層には酸素透過性の低い
樹脂を用いることが好ましく、これにより記録層中の発
色剤及び顕色剤の酸化を防止又は低減することができ
る。
【0017】印加した熱を有効に利用するため支持体と
記録層の間に断熱性のアンダーコート層を設けてもよ
い。断熱層は有機又は無機の微小中空体粒子をバインダ
ー樹脂を用いて塗布することにより形成できる。支持体
と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透
防止を目的としたアンダーコート層を設けてもよい。中
間層やアンダーコート層には、前記の記録層用の樹脂と
同様の樹脂を用いることができる。また、保護層、中間
層、記録層及びアンダーコート層には炭酸カルシウム、
炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化ア
ルミニウム、カオリン、タルクなどのフィラーを含有さ
せてもよく、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを
含有させてもよい。支持体の滑性、搬送性を向上させ、
或いはカールを防止するために支持体の反対側にバック
コート層を設けてもよい。
【0018】本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて発色
画像を形成させるには、一旦発色温度以上に加熱したの
ち急冷するようにすればよい。具体的には、例えばサー
マルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局
部的に加熱されるので、直ちに熱が拡散して急激な冷却
が起こり、発色状態を固定できる。一方、消色するには
適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発
色温度よりやや低い消色温度に一時的に加熱すればよ
い。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、そ
の後の冷却は遅くなり徐冷となるので、その過程で消色
が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラ、熱スタ
ンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用
いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱
するには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス
幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よ
りやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマ
ルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーラ
イトが可能になる。もちろん、熱ローラ、熱スタンプ、
加熱バー等によって消色温度域に加熱して消去すること
もできる。
【0019】本発明の可逆性感熱記録媒体をシート状に
加工し、前記発色させ得る加熱手段を設けたプリンター
により、コンピューター等からの情報を出力した表示メ
ディア(ハードコピー)として使用することが可能であ
る。また、この表示情報は前記消色させ得る加熱手段に
より消去できるから、本発明の可逆性感熱記録媒体は何
度でも再利用できる。更に、前記消去加熱手段と発色加
熱手段を共に設けたプリンターを用いることにより、前
回の出力を消去しながら新たな情報の出力を同じメディ
アに表示することが可能である。更には、サーマルヘッ
ドが組み込まれたプリンターにより、全面に少なくとも
消去可能な印加エネルギーを与え、新たな情報を印字す
る部分に発色させ得る印加エネルギーを加える、いわゆ
るオーバーライトにより容易に情報の書換が可能とな
る。
【0020】本発明の可逆性感熱記録組成物からなる可
逆性感熱記録部と、情報記憶部の両方を同一のカードに
設けることができる。これにより、情報記憶部に記憶さ
れた情報の一部を可逆性感熱記録層に表示するようにす
れば、カード所有者等は特別な装置がなくてもカードを
見るだけで情報を確認することができるので、利便性が
向上する。情報記憶部としては、必要な情報を記憶でき
るものならば何でもよいが、磁気記録、IC、光メモリ
が好ましい。磁気記録層は、通常用いられる酸化鉄やバ
リウムフェライト等と、塩ビ系、ウレタン系、ナイロン
系等の樹脂を用い、支持体に塗工形成するか、蒸着、ス
パッタリング等の方法により形成する。磁気記憶部は支
持体の可逆性感熱記録層の反対面に設けてもよいし、支
持体と可逆性感熱記録層の間、可逆性感熱記録層上の一
部に設けてもよい。また、表示に用いる可逆性感熱材料
を、バーコード、2次元コード等により記憶部に用いて
もよい。これらの中では磁気記録、ICが特に好まし
い。
【0021】本発明の可逆性感熱記録媒体では、支持体
の可逆性感熱記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着
剤層を設けて可逆性感熱記録ラベルとすることができ
る。接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われてい
るものが使用可能である。具体例としてはユリア樹脂、
メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系
樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢
酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテ
ル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリス
チレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹
脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、
ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共
重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、
シアノアクリレート系樹脂、シリコン系樹脂等が挙げら
れるが、これらに限定されるものではない。接着剤層又
は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよく、剥離
紙を用いても無剥離紙タイプでもよい。このように接着
剤層又は粘着剤層を設けることにより、可逆性感熱層の
塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の
基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これによ
り磁気に記憶された情報の一部を表示することができる
など、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤
層又は粘着剤層を設けた可逆性感熱記録ラベルは、前述
の磁気付塩ビカードだけでなく、ICカードや光カード
等の厚手カードにも適用できる。
【0022】
【実施例】以下、実施例及び比較例によって本発明を更
に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって
限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は、
何れも「重量部」である。
【0023】実施例1 下記組成物を乳鉢で粉砕混合した。 ・2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部 ・下記構造の顕色剤 3部
【化7】 ・表2記載の16個の発色消色制御剤の何れか1個づつ 1部 (表2に記載の番号は、表1に記載の化合物番号である。) これらの組成物の適当量を厚さ1.2mmのガラス板上
に載せて、ホットプレート上で200℃に加熱し混融し
た。続いて、これらの混融混合物の上からカバーグラス
をかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ご
と全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温
後、すぐに取り出して付着した水を除き、薄膜状の黒色
に発色した本発明の16種の組成物を得た。次に、上記
の発色状態の組成物試料を110℃に加熱したホットプ
レート上に置くと瞬時に消色した。この消色した組成物
試料を再び200℃に加熱すると黒色を呈した。以上の
ことから、本発明の16種の組成物は発色、消色の繰り
返し特性を有することが確認された。
【0024】 実施例2 ≪記録層の作製≫ ・2−アリニノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部 ・下記構造の顕色剤 8部
【化8】 ・表2記載の16個の発色消色制御剤の何れか1個づつ 3部 (表2に記載の番号は、表1に記載の化合物番号である。) ・アクリルポリオール樹脂の15%テトラヒドロフラン溶液 150部 これらの組成物をボールミルで平均粒径約1μmまで粉
砕分散し、得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロ
ネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネー
トの75%酢酸エチル溶液)20部を加え、よく攪拌し
て16種の記録層塗布液を調製した。この記録層塗布液
を、厚さ188μmのポリエステル(PET)フィルム
上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃で2分間乾燥
したのち、60℃で24時間加熱して、膜厚約8μmの
記録層を設けた。 ≪保護層の作製≫ ・ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂 15部 (大日本インキ社製C7−157) ・酢酸エチル 85部 上記組成物をよく攪拌し保護層塗布液を調製した。この
塗布液を、上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗工し
90℃で1分間乾燥させたのち、照射エネルギー80W
/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して
硬化し、膜厚約3μmの保護層を設けて、本発明の可逆
性感熱記録媒体を作製した。
【0025】比較例1 発色消色制御剤を用いなかった点以外は、実施例2と同
様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0026】比較例2 実施例2における発色消色制御剤に代えて、下記構造の
化合物を用いた点以外は実施例2と同様にして可逆性感
熱記録媒体を作製した。
【化9】
【0027】[試験1]発色濃度 実施例2及び比較例1、2で作製した記録媒体を、大倉
電機社製の感熱印字装置を用いて、電圧13.3V、パ
ルス幅1.2msecで印字し、得られた画像をマクベ
ス濃度計RD−914で測定した。 [試験2]消し残り濃度 上記試験1で得られた発色画像を、東洋精機社製の熱傾
斜試験機を用いて、120℃1秒間の条件で消色し、消
色後の画像濃度と地肌濃度を試験1と同様にして測定し
た。次いで次の式により消し残り濃度を算出した。結果
を表2に示す。 消し残り濃度 =(消去後の画像濃度)−(地肌濃度)
【0028】
【表2】
【0029】実施例3 [情報記録部を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]実
施例2−1の組成物を用いて調製した記録層塗布液を大
日本インキ工業製磁気原反(メモディックスDS−17
11−1040:188μm厚の白色PETフィルム上
に磁気記録層を塗工したもの)に塗布した点以外は実施
例2と同様にして、情報記憶部を有する可逆性感熱記録
媒体を作製した。次いで、この情報記録部を有する可逆
性感熱記録媒体について、実施例2と同様にして試験1
及び試験2を10回繰り返したところ、10回繰り返し
ても発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消
し残り濃度も0.01であった。
【0030】実施例4 [接着剤層を有する可逆性感熱記録媒体の作製例]実施
例2−1における、厚さ188μmの白色PETフィル
ムに代えて、厚さ38μmの透明PETフィルムを用い
た以外は実施例2と同様にして可逆性記録媒体を作製
し、この記録層塗布面の裏面に、厚さ約5μmのアクリ
ル系接着剤層を設け、この接着剤層を有する可逆性感熱
記録媒体を、厚さ188μmの白色PETフィルム上に
貼り付けた。次いで、この情報記録部を有する可逆性感
熱記録媒体について、実施例2と同様にして試験1及び
試験2を10回繰り返したところ、10回繰り返しても
発色濃度は1回目と同じであり、また10回後の消し残
り濃度も0.01であった。
【0031】
【発明の効果】本発明の可逆性感熱組成物及び可逆性感
熱記録媒体は、発色性が高く、同時に消色性にも優れた
ものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆性感熱組成物及び可逆性感熱記録
媒体の発色・消色特性を説明する図である。
フロントページの続き (72)発明者 渋谷 毅 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内 Fターム(参考) 2H026 AA09 DD01 DD43 FF25 FF29

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化
    合物を用い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違
    いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成し
    うる可逆性感熱発色組成物において、該可逆性感熱発色
    組成物中に発色消色制御剤として下記一般式(1)〜
    (3)で表わされる化合物の少なくとも1種を含有させ
    ることを特徴とする可逆性感熱発色組成物。 【化1】 (式中、mは2〜12の整数、nは5〜29の整数を表
    す。) 【化2】 (式中、pは2〜12の整数、qは5〜21の整数を表
    す。) 【化3】 (式中、rは5〜29の整数を表す。)
  2. 【請求項2】 請求項1記載の可逆性感熱発色組成物を
    主成分として含有する記録層を支持体上に設けたことを
    特徴とする可逆性感熱記録媒体。
  3. 【請求項3】 シート状又はカード状に加工されたもの
    であることを特徴とする請求項2記載の可逆性感熱記録
    媒体。
  4. 【請求項4】 情報記憶部を有することを特徴とする請
    求項3記載の可逆性感熱記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記情報記憶部が、磁気記録層及び/又
    はICであることを特徴とする請求項4記載の可逆性感
    熱記録媒体。
  6. 【請求項6】 接着剤層又は粘着剤層を有する請求項2
    〜5の何れかに記載の可逆性感熱記録媒体。
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