JP2002249017A - エアバック装置のインフレータ用フィルタ - Google Patents

エアバック装置のインフレータ用フィルタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造が簡単で強度が強く、かつ製造コストが
安価なエアバック装置のインフレータ用フィルタを提供
する。 【解決手段】 フィルタ1は、その素材であるエクスパ
ンドメタルを円筒状に多数層、螺旋状に重ね巻きして、
その最内周部と最外周部のエクスパンドメタルをスポッ
ト溶接することにより、巻回されたエクスパンドメタル
がばらけず、円筒状のフィルタの形状が保たれるように
なされている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車の衝突事故
時に乗員が受ける衝撃を緩和して乗員の安全を図るエア
バッグ装置のインフレータ(ガス発生器)に用いるフィ
ルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車の衝突事故時に、インフレータ内
の推進薬(火薬)に点火してガスを爆発的に発生させ、
このガスによりエアバッグを開き、エアバッグのクッシ
ョン効果で運転者等乗員が受ける衝撃を緩和し乗員の安
全を図るエアバッグシステムは、標準品として乗用車に
取り付けられるようになってきている。
【0003】インフレータのガス発生室において推進薬
から爆発的に発生したガスは、冷却用のメッシュに接触
した後に筒状のフィルタを内側から外側へ通過し、フィ
ルタの外側に筒壁に沿って設けられた複数個のガス通過
孔を通ってインフレータからエアバッグ内へ流入し、エ
アバッグを展開する。前記フィルタは、ガス中に含まれ
ている爆発した推進薬の粉塵等の、高温の微粒子がバッ
グ内に流入しないように、これを捕捉するものである。
このフィルタには高い耐熱性が要求されるので、金属線
(通常ステンレス線)を平織りした金網を適当なサイズ
のストリップに切断し、これを筒状に多重に巻回したも
のが用いられていた。
【0004】また、特開平7−285412号公報に
は、円筒状のメリヤス編み金網に、その長さ方向の端部
を該金網の円筒外周面上に折返す折込みを複数回繰り返
し施して成形した円筒状の多重折込み成形金網を、更に
長さ方向に圧縮した筒状の成形金網体によりフィルタを
構成したことを特徴とするエアバッグシステムのインフ
レータ用フィルタが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記
の、金属線を平織りした金網を適当なサイズのストリッ
プに切断し、これを筒状に多重に巻回したフィルタは、
フィルタ効果を高めようとすれば、金網を構成する金属
線の線径を小さくし、かつ網目を細かく編んだ金網をよ
り多重に用いる必要がある。したがって、フィルタがコ
スト高になるという問題点がある。また、上記した従来
のフィルタは保形強度が小さく、ガス圧を受けたときに
拡がり、インフレータのガス通過孔に入り込んで破損し
易い難点がある。
【0006】また、特開平7−285412号公報に記
載されるフィルタは、インフレータ爆発時の火薬から出
る粉塵等の除去及びガスの冷却機能には優れているが、
そのサイズ(幅)は編機の幅によって決まってしまうた
め、所要のサイズごとに異なる幅の編機を用意しなけれ
ばならず、かつ、製造工程が複雑であり、メリヤス編機
を使用しているため製造時間が長くなるという問題点が
ある。
【0007】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
もので、製造が簡単で強度が強く、かつ製造コストが安
価なエアバック装置のインフレータ用フィルタを提供す
ることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する第1
の手段は、エアバック装置のインフレータに使用される
フィルタであって、エキスパンドメタルを多層巻きして
構成された筒状体からなり、その内面側と外面側のエキ
スパンドメタルが、それぞれ、当該筒状体から剥がれな
いように、当該筒状体に固着されていることを特徴とす
るエアバック装置のインフレータ用フィルタ(請求項
1)である。
【0009】エキスパンドメタルとは、金属板に切り込
みを入れて広げることにより、網目状の穴部を形成した
もので、ラスメタルとも呼ばれ、この方法により、細か
い網目を有し、かつ強度の大きな網状金属板を製造する
ことができる。エキスパンドメタルは、このような製造
方法により製造されるため、非常に長く、かつ幅の広い
ものが容易に得られる。
【0010】本手段においては、このような性質を有す
るエキスパンドメタルを、適当な長さと幅に切断して使
用する。そして、これを筒状に重ね巻き(螺旋状巻き)
することにより筒状体を構成し、その内面側と外面側の
エキスパンドメタルが筒状体から剥がれないように、ス
ポット溶接等により、出来上がった筒状体に固着する。
【0011】これにより、非常に簡単な方法でエアバッ
ク装置のインフレータ用フィルタを製造することができ
る。本フィルタにおいては、エキスパンドメタルの網目
が多層に複雑に重なり合って、複雑な気体の流通路を形
成する。よって、インフレータの爆発により発生する推
進薬の粉塵を、有効に補足することができると共に、発
生するガスを有効に冷却することができる。
【0012】本フィルタは、金属板の厚さを厚く保った
ままで細かい網目を製造することができるので、平織り
した金網を用いたものに比して、フィルタの強度を大き
くすることができる。かつ、素材として大きな寸法のも
のが得られるエキスパンドメタルを使用して、それを適
当な寸法に切断して筒状体を形成するのみで製造できる
ので、製作が容易で安価である。また、インフレータの
爆発によっても、ばらけることがないので、破片がエア
バッグ内に入り込むことがない。さらに、金属部分の表
面積が大きくなることにより、冷却効果の優れたものと
することができる。
【0013】また、本フィルタは、特開平7−2854
12号公報に記載されるフィルタに比して、異なる幅を
有するものを同一の製造設備で容易に製作でき、かつ製
造能率も格段に向上するという優位性を有する。
【0014】また、これら従来のフィルタは、その形状
を保持するために、実際的には外周部に補強材を巻くこ
とが不可欠であったが、本手段においてはこのような補
強材は必ずしも必要がない。
【0015】前記課題を解決するための第2の手段は、
エアバック装置のインフレータ用に使用されるフィルタ
であって、突起部の先端をつぶして平坦化したフック金
属板を多層巻きして構成された筒状体からなり、その内
面側と外面側のフック金属板が、それぞれ、当該筒状体
から剥がれないように、当該筒状体に固着されているこ
とを特徴とするエアバック装置のインフレータ用フィル
タ(請求項2)である。
【0016】本手段は、前記第1の手段の素材であるエ
キスパンドメタルを、フック金属板に代えたものであ
る。フック金属板とは、薄い金属板に針状の部材により
多数の穴を高密度に開けたものである。しかし、これを
そのまま使用すると、穴部に形成された突起部によっ
て、筒状体を製造したときの金属板間の間隔が広がり、
フック金属板を密な層とすることができなくなる。
【0017】又、穴の先端部が隣り合う層の金属板によ
ってふさがれ、ガスの流通が妨げられることがある。よ
って、フック金属板の穴部に形成されている突起部の先
端をつぶして平坦化したものを使用する。これにより、
フック金属板の厚さが減少すると共に、フック立て時に
できた裂け目と突起部の先端部がつぶされて広がるとき
にできる裂け目がガスの流通路となり、ガスが流通する
際の抵抗が減少する。
【0018】本手段においても、フック金属板の穴部が
多層に複雑に重なり合って、複雑な気体の流通路を形成
する。よって、インフレータの爆発により発生する爆薬
の粉塵を、有効に補足することができると共に、発生す
るガスを有効に冷却することができる。
【0019】本フィルタは、平織りした金網を用いたも
のに比して、金属板の厚さを厚く保ったままで細かい穴
構造を製造することができるので、フィルタの強度を大
きくすることができる。かつ、素材として大きな寸法の
ものが得られるフック金属板を使用して、それを適当な
寸法に切断して筒状体を形成するのみで製造できるの
で、製作が容易で安価である。さらに、金属部分の表面
積が大きくなることにより、冷却効果の優れたものとす
ることができる。
【0020】また、本フィルタは、特開平7−2854
12号公報に記載されるフィルタに比して、異なる幅を
有するものを同一の製造設備で容易に製作でき、かつ製
造能率も格段に向上するという優位性を有する。
【0021】また、これら従来のフィルタは、その形状
を保持するために、実際的には外周部に補強材を巻くこ
とが不可欠であったが、本手段においてはこのような補
強材は必ずしも必要がない。
【0022】前記課題を解決するための第3の手段は、
前記第1の手段又は第2の手段であって、これらのフィ
ルタの外周部に、さらに、筒壁に多数の貫通小孔を有す
る筒状の保護板を設けたことを特徴とするもの(請求項
3)である。
【0023】本手段においては、筒状の保護板によって
前記フィルタが補強されるので、保形強度が更に向上
し、また取扱が一層容易かつ便利になる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例
を、図を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施
の形態であるフィルタの構成を示す概要図である。フィ
ルタ1は、その素材であるエキスパンドメタルを円筒状
に多数層、螺旋状に重ね巻きして、その最内周部と最外
周部のエキスパンドメタルをスポット溶接することによ
り、巻回されたエキスパンドメタルがばらけず、円筒状
のフィルタの形状が保たれるようになされている。
【0025】図2にエキスパンドメタルの拡大図を示す
が、図においてAは1.5〜3.0mm、Bは2.0〜6.0mm、板厚
tは0.3〜0.5mm、板部の幅Wは0.3〜0.8mmとすることが
好ましい。一例として、A=1.5mm、B=2.0mm、W=0.
3mm、t=0.3mmの網目形状を持つエキスパンドメタルを
10mmの幅に裁断し、これを5層重ね巻きしてフィルタを
構成する。この場合の空隙率は約70%である。この空隙
率は、エキスパンドメタルの網目の形状や重ね巻きの密
度を変えることにより適宜調整できるが、実用上は概ね
50〜80%の間にすることが好ましい。
【0026】図3は、本発明の第2の実施の形態である
フィルタの構成を示す概要図である。フィルタ1は、そ
の素材である、突起部の先端をつぶして平坦化したフッ
ク金属板を円筒状に多数層、螺旋状に重ね巻きして、そ
の最内周部と最外周部のフック金属板をスポット溶接す
ることにより、巻回された突起部の先端をつぶして平坦
化したフック金属板がばらけず、円筒状のフィルタの形
状が保たれるようになされている。
【0027】一般的に、厚さ0.2〜0.4mmの板に、直径1.
0〜2.0mmの大きさの穴を設けたフック鋼板を使用するこ
とが好ましい。一例として、穴の直径1mm、穴の間隔1
mm、厚さ0.2mmの金属板を使用し、これを5層の重ね巻
きにしてフィルタを構成する。この場合の空隙率は約50
%である。この場合も、空隙率は、エキスパンドメタル
の場合と同様、フックの穴径や重ね巻きの密度を変える
ことにより適宜調整できる。
【0028】図4は、図3に示した実施の形態に用いる
フック金属板の製造過程を示す端面図である。原材料で
あるフック金属板2には、(a)に示すように、その平
坦部3に、針状の工具により、表裏面から交互に穴4が
押し開けられ、それに伴い突起5が、表裏方向に交互に
突出している。このままフック金属板を重ね巻きする
と、この突起5により、フック金属板間の間隔が大きく
なり、同じフィルタ効果を出すためのフィルタの厚みが
厚くなる。
【0029】よって、このフック金属板を表裏面から押
圧することにより、(b)に示すように突起部をつぶ
し、フック金属板の全体の厚みを薄くしてから重ね巻き
を行う。
【0030】図5は、このようにして押しつぶされた穴
部の形状の例を示す斜視図と平面図である。図4、図5
において、5aは押しつぶされた部分であり、図5に示
すように、切れ目が形成されて4枚の花びらのように側
方に開いた形状となる。この花びらのように折れ曲がっ
たフック部の間をガスが通って、穴4に達することがで
きる。フック部をこのような形状に押しつぶすことによ
り、フック金属板の全体の厚みを薄くすることができる
ばかりでなく、ガスの流通路が確保でき、かつ、粉塵を
捕捉し易いような形状とすることができる。
【0031】なお、以上の説明においては、両面にフッ
クを形成したフック金属板を使用した例を示したが、本
発明においては、片面にのみフックを形成した金属板を
使用することもできる。
【0032】図6は、本発明の第3の実施の形態である
フィルタの構成を示す概要図である。図6において、6
は図1に示したような、エキスパンドメタルを重ね巻き
したフィルタである。この実施の形態においては、この
フィルタ6の外周部に、さらに、筒壁に多数の貫通小孔
を有する筒状の保護板7が設けられている。
【0033】保護板7はフィルタ6の外周に、例えば厚
さが0.5mmで多数の貫通小孔8を有するステンレス鋼板
を巻回し、その重ね合わせ部をスポット溶接することに
より形成されている。貫通小孔8の孔径は例えば1.0m
m、孔間隔は例えば2.0mmで、当該小孔は例えば千鳥状に
配列されている。これにより、フィルタ6の強度がさら
に補強される。なお、さらに、フィルタ6の内周側に
も、このような筒状の保護板を設けてもよく、このよう
にすれば、フィルタ6の強度をさらに補強することがで
きる。
【0034】なお、第3の実施例の説明においては、エ
キスパンドメタルを重ね巻きした例について説明した
が、エキスパンドメタルの代わりにフック金属板を使用
してもよいことはいうまでもない。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のうち請求
項1に係る発明においては、素材として大きな寸法のも
のが得られるエキスパンドメタルを使用して、それを適
当な寸法に切断して筒状体を形成するのみで製造できる
ので、製作が容易で安価である。また、インフレータの
爆発によっても、ばらけることがないので、破片がエア
バッグ内に入り込むことがない。さらに、金属部分の表
面積が大きくなることにより、冷却効果の優れたものと
することができる。
【0036】また、本発明によれば、異なる幅を有する
ものを同一の製造設備で容易に製作でき、かつ製造能率
も格段に向上するという優位性を有する。また、従来の
フィルタは、その形状を保持するために、実際的には外
周部に補強材を巻くことが不可欠であったが、本発明に
おいてはこのような補強材は必ずしも必要がない。
【0037】請求項2に係る発明においては、金属板の
厚さを厚く保ったままで細かい穴構造を製造することが
できるので、フィルタの強度を大きくすることができ
る。かつ、素材として大きな寸法のものが得られるフッ
ク金属板を使用して、それを適当な寸法に切断して筒状
体を形成するのみで製造できるので、製作が容易で安価
である。さらに、金属部分の表面積が大きくなることに
より、冷却効果の優れたものとすることができる。
【0038】また、本発明によれば、異なる幅を有する
ものを同一の製造設備で容易に製作でき、かつ製造能率
も格段に向上するという優位性を有する。また、従来の
フィルタは、その形状を保持するために、実際的には外
周部に補強材を巻くことが不可欠であったが、本発明に
おいてはこのような補強材は必ずしも必要がない。
【0039】請求項3に係る発明においては、筒状の保
護板によって前記フィルタが補強されるので、保形強度
が更に向上し、また取扱が一層容易かつ便利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるフィルタの構
成を示す概要図である。
【図2】エキスパンドメタルの形状と寸法を示す図であ
る。
【図3】本発明の第2の実施の形態であるフィルタの構
成を示す概要図である。
【図4】図3に示した実施の形態に用いるフック金属板
の製造過程を示す端面図である。
【図5】押しつぶされた穴部の形状の例を示す斜視図と
平面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態であるフィルタの構
成を示す概要図である。
【符号の説明】
1…フィルタ 2…フック金属板 3…平坦部 4…穴 5…突起 5a…突起が押しつぶされた部分 6…フィルタ 7…保護版 8…貫通小孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 村田 益彦 神奈川県大和市深見西一丁目5番2号 日 本ラインツ株式会社内 Fターム(参考) 3D054 DD18 DD19 FF17 FF18

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エアバック装置のインフレータに使用さ
    れるフィルタであって、エキスパンドメタルを多層巻き
    して構成された筒状体からなり、その内面側と外面側の
    エキスパンドメタルが、それぞれ、当該筒状体から剥が
    れないように、当該筒状体に固着されていることを特徴
    とするエアバック装置のインフレータ用フィルタ。
  2. 【請求項2】 エアバック装置のインフレータに使用さ
    れるフィルタであって、突起部の先端をつぶして平坦化
    したフック金属板を多層巻きして構成された筒状体から
    なり、その内面側と外面側のフック金属板が、それぞ
    れ、当該筒状体から剥がれないように、当該筒状体に固
    着されていることを特徴とするエアバック装置のインフ
    レータ用フィルタ。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のインフレ
    ータ用フィルタの外周部に、筒壁に多数の貫通小孔を有
    する筒状の保護板を設けたことを特徴とするインフレー
    タ用フィルタ。
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