JP2002242040A - ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

ポリエステル繊維の製造方法

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JP2002242040A JP2001035604A JP2001035604A JP2002242040A JP 2002242040 A JP2002242040 A JP 2002242040A JP 2001035604 A JP2001035604 A JP 2001035604A JP 2001035604 A JP2001035604 A JP 2001035604A JP 2002242040 A JP2002242040 A JP 2002242040A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】力学特性、特に強度に優れるポリエステル繊維
を生産性に優れかつ省スペース、省エネルギーで製造す
る。 【解決手段】固有粘度IVが0.85以上、密度が1.345g/c
m3以下、複屈折率△nが0.040以下であるポリエステル
未延伸糸にレーザ光を照射し、延伸速度400m/min以上で
実質的に1段で延伸を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリエステル繊維の
製造方法に関する。詳しくは力学特性が良好なポリエス
テル繊維の生産性に優れる製造方法、さらに詳しくは高
速生産に適し、省スペース、省エネルギーであり、かつ
力学特性、特に強度に優れるポリエステル繊維の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレートをはじめと
するポリエステル繊維は強度、弾性率、寸法安定性にお
いてバランスよく優れた特性をもち、かつ比較的安価に
製造できるため、衣料用途のみならず、産業用途にも広
く使用されている。
【0003】ポリエステル繊維が産業用途に用いられる
場合、一般に最も重要視される特性は力学的特性、例え
ばその強度が大きいことであり、ポリエステル繊維の産
業用としての用途が広がるにつれ、さらなる高強度化へ
の要望が高まってきている。また一方ではポリエステル
繊維の「比較的安価に製造できる」という力学的特性か
ら見たコストパフォーマンスの良さも重要視されてお
り、他素材との競争力を高めるため生産性の向上、昨今
の繊維製造事情を考えると高速化、省スペース、省エネ
ルギー化が強く望まれている。
【0004】高強度ポリエステル繊維の代表的な製造法
は「繊維便覧」p.107(繊維学会編、丸善(1994))にあ
り、高[η]すなわち高IVポリエチレンテレフタレート
で低配向原糸を得て、高倍率延伸、高温セットを施すと
いう手法が長らく採用されている。このため、工業的に
は一般に低紡糸速度で溶融紡糸したポリエステル未延伸
糸に、加熱ローラを用いて多段延伸を施す製法が行われ
ている。
【0005】しかしこの手法では、生産性向上のため延
伸速度を高速化した場合、繊維の加熱ローラーへの接触
時間を維持するためローラー上への多周巻き付けあるい
はローラー大径化が必要となり、ローラーのためのスペ
ースが広く必要となる問題があることに加え、ローラー
表面速度が上昇することによりローラー加熱効率が悪化
するという問題がある。
【0006】このような問題を解消するためには延伸段
数を減少させ、使用するローラーの個数を減少させれば
良いのだが、加熱ローラーを用いると、1段で高倍率延
伸を行うと単糸切れ、毛羽が発生するため、多段延伸と
同程度の延伸倍率を1段で得ることは困難である。この
ため延伸倍率を低くせざるを得ず、得られる繊維の強度
は低下してしまうという問題がある。
【0007】これを防ぐため、加熱ローラー温度を高め
ることも考えられるが、この場合はローラー上で未延伸
糸が融着してしまい、延伸倍率を高めることは出来ない
ばかりか、得られる繊維の品質も悪化してしまう。
【0008】また一般にIVを高めると得られる繊維の
強度は向上するため、高IVポリエステルを用いること
でこの問題を解消することも考えられる。しかし高IV
ポリエステルの場合、加熱ローラーを用いて1段で高倍
率延伸を施すと単糸切れや毛羽発生の傾向はより顕著に
なり、1段では延伸倍率を高めることができず、むしろ
強度が低下してしまう。
【0009】このように従来の手法では高強度ポリエス
テル繊維の生産性を向上するため延伸速度を高速化する
と延伸スペースを広く必要とし、加えて加熱効率の悪化
からエネルギー負荷が大きく増加するという問題を抱え
ており、さらに延伸段数を減少せしめるため加熱ローラ
ーの温度を高めたり、未延伸糸IVを高めても、1段で
は延伸倍率を大きくすることができず、強度が低下する
問題もあった。これは延伸する際の加熱手法が十分考慮
されていないためである。
【0010】ところで、延伸を行う際の加熱源としてレ
ーザ光を用いる技術が特開昭48-45612号公報等により知
られている。この中で特開昭60-94619号および61-75811
号公報にはレーザ光により多段延伸して得た高配向非晶
繊維を熱処理により結晶化せしめることにより超高強力
糸が得られる技術が開示されており、注目される。
【0011】しかし該公報記載の手法は、ある特定条件
の下でレーザを用いて多段延伸を行うというものであ
り、スペースを広く必要とするうえに、複数のレーザー
照射装置が必要となり、省スペース、省エネルギーは達
成されていない。さらに該公報には延伸速度の規定はな
いものの、実施例での延伸速度は最高でも約300m/minで
あり生産性が低い。さらに該公報に記載されている未延
伸糸のIVは高いものでも0.80であり、これを越える高
IV領域でのレーザ延伸の特徴については何ら言及され
ていない。
【0012】また成形加工シンポジア'99,p.185(1999)
およびFiber Preprints,Japan,Vol.55,No.1,p.30(200
0)、Fiber Preprints,Japan,Vol.55,No.3,p.38(2000)等
にはレーザを用いた1段延伸によるポリエステル繊維の
高強度化技術が示されている。しかしこの手法でも延伸
速度は最高でも約100m/minと遅く、生産性が低いという
問題がある。
【0013】この様に、高強度ポリエステル繊維を得る
ためにレーザ光を用いる従来技術では繊維の高強度化は
達成できているようであるが、ポリエステル繊維が有す
るコストパフォーマンスの良さを発揮するために重要視
される延伸速度高速化による生産性の向上は犠牲にされ
ているという課題があった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記
従来技術の問題点を解消し、力学特性、特に強度に優れ
るポリエステル繊維を生産性に優れかつ省スペース、省
エネルギーで製造する方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、レーザ加
熱延伸による高強度ポリエステル繊維の生産性向上につ
いて鋭意検討を重ねてきた。その中で、未延伸糸のIV
と配向・結晶化度および延伸速度がある一定条件を満た
すことによって従来技術の欠点を解消できることを見い
だし、本発明に到達したものである。
【0016】すなわち、本発明は固有粘度IVが0.85以
上、密度が1.345g/cm3以下、複屈折率△nが0.040以下
であるポリエステル未延伸糸にレーザ光を照射し、延伸
速度400m/min以上で実質的に1段で延伸を施すことを特
徴とするポリエステル繊維の製造方法を提供するもので
ある。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明でいうポリエステルとは、
ジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合か
ら形成される重合体であり、好ましくはポリエチレンテ
レフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブ
チレンテレフタレートであり、より好ましくはポリエチ
レンテレフタレートである。
【0018】また本発明で用いるポリエステルは、発明
の主旨を損ねない範囲で他の成分が共重合されていても
良い。さらに、本発明のポリエステルは艶消剤、難燃
剤、滑剤等の添加剤を少量含有しても良い。共重合成分
としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボ
ン酸、ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン
酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5−ナトリ
ウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウ
ムイソフタル酸等の芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン
酸およびそれらの誘導体、またプロピレングリコール、
ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコー
ル、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような芳香
族、脂肪族、脂環族のジオール化合物を挙げることがで
きる。
【0019】本発明での延伸における要件はIVが0.85
以上、密度1.345g/cm3以下、複屈折率△n0.040以下で
あるポリエステル未延伸糸にレーザ光を照射し、延伸速
度400m/min以上で実質的に1段で延伸を施すことであ
る。このような延伸条件を採用することで強度1.0GPa以
上である高強度ポリエステル繊維を高速、省スペース、
省エネルギーで製造することができるのである。本発明
者らはレーザ延伸技術について検討を行い本発明に至っ
た。以下、詳細に説明する。
【0020】高強度繊維を得るために必要なことは高I
Vポリエステルを高倍率かつ均一に延伸することで分子
鎖を引き伸ばし、その後、引き伸ばされた分子鎖を緩和
させず結晶化させることである。高倍率かつ均一な延伸
を実現するためには高IV未延伸糸を十分可塑化する必
要があり、このため十分な加熱が要求される。また均一
な延伸を施すためには1段で急激な延伸を加えることは
好ましくないと考えられる。このため従来のローラー加
熱延伸で高速延伸を行うには、広大なスペースで高温多
段延伸を行う必要があった。
【0021】そこでレーザ光による加熱が重要となる。
レーザ光を用い延伸を行う特徴は、均一性などもあるが
最大の特徴は大過剰のエネルギーを瞬間的に糸条に与え
ることができる点にある。省スペース化の理想的な形は
1段延伸であるため、本発明者らは十分なレーザ光を照
射することで高IV未延伸糸を1段で高倍率かつ均一に
延伸できると考えた。しかしながら単にレーザ光を用い
延伸するだけでは1段で高倍率延伸を達成できず、繊維
の溶断等の問題が発生した。この現象について延伸速度
との関係を中心に検討を進めた結果、1段で高倍率延伸
を行う際の未延伸糸IVと延伸速度の関係が重要である
ことを見出した。
【0022】すなわち0.85以上という高IVの未延伸糸
を用い、延伸速度を400m/min以上とすることで高い延伸
張力による分子鎖の十分な引き延ばしを実現し、かつ繊
維の過度の加熱による溶断を防ぎ、さらに高張力下での
安定した延伸をも同時に達成し得たのである。加えて延
伸速度を400m/min以上と高速化することは生産性の向上
に大きく貢献することから、本発明は1段延伸による省
エネルギー、省スペース化と高速化による生産性向上を
同時に達成し得るのである。
【0023】加えて、本発明者らは上述した条件下でレ
ーザ光を用い延伸することで十分に結晶化した繊維が得
られることも見出した。これはレーザ光が大過剰のエネ
ルギーを瞬間的に糸条に与えることができるため、レー
ザ照射領域中で分子鎖を引き伸ばした後、引き続いて連
続的に加熱され、結晶化も起こるためと推測する。した
がってレーザを照射し、1段で高倍率延伸を行うことで
実用的な高強度繊維が得られるのである。
【0024】本発明の方法を用いることで、同一原糸を
用いても一般的な加熱延伸を施した繊維に比べ強度が高
くなるが、その理由については以下のように考える。
【0025】従来の一般的な加熱手法は高温物に繊維を
接触させて加熱するものであり、繊維内部への加熱は主
に熱伝導、単糸間での加熱は主に熱伝達であるため均一
加熱が難しい。加えて、特に未延伸糸のIVが増加する
と分子鎖1本あたりの絡み合い点の数が増加するせい
か、温度上昇に伴い結晶化類似の凝集構造が形成されや
すくなり、高倍率延伸がより困難となる。非接触式の加
熱手段も種々考案されているが、全て繊維表面を加熱さ
せる方式であるため、上記した問題点は解決できない。
【0026】一方レーザは単一波長で構成されており、
照射物に対し適当な透過率を持つ波長のレーザを用いる
ことで繊維断面内を均一かつ瞬間的に加熱することがで
きる。このためIVが高い未延伸糸を用いても、凝集構
造が発達する前に延伸を施すことができ、高倍率延伸が
達成されると考えられる。
【0027】加えてレーザ加熱は非接触で行うことがで
きるため、加熱し可塑化した状態で繊維に傷を付けるこ
ともなく、さらに1段延伸であるため糸条へのローラー
等の接触が極限的に減少でき、糸条へのダメージを小さ
くできる。これらの理由により繊維の強度が向上すると
考えられる。
【0028】本発明に用いるポリエステル未延伸糸は加
熱時の溶断や高延伸張力下での糸切れに対する耐性を高
めるためIVを0.85以上、好ましくは0.90以上とする。
このような高IVの未延伸糸を用いることでレーザを用
いても安定した延伸を行うことができ、かつ1段延伸で
も強度1.0GPa以上の高強度繊維が得られる。
【0029】本発明に用いるポリエステル未延伸糸は密
度1.345g/cm3以下、複屈折率△n0.040以下である。レ
ーザによる加熱をもってしても結晶化したポリエステル
繊維の高倍率延伸は困難であるため、配向結晶化が小さ
いことが望ましく、配向結晶化の指標である△n、密度
は小さい方が好ましい。
【0030】本発明に用いるレーザ光は単一波長で構成
される光線であり、好ましくは炭酸ガスレーザである。
レーザ光の照射方法は任意であり、平行光でもレンズを
用い集光して照射しても良いし、片面照射でも多方向か
ら照射しても良い。照射効率を高めるため反射を利用し
た多面照射を行うことが好ましい。なおレーザ出力は照
射効率に加え糸条の走行速度、表面形態、添加物の影響
などがあり一概に規定できないが、糸条に大過剰のエネ
ルギーを付与するため、糸条が溶断しない程度に高める
ことが好ましい。したがってレーザ照射により糸条に与
えられるエネルギーの範囲は以下の範囲が好ましい。
【0031】
【数1】 本発明における延伸倍率は実質的に1段である。ここで
言う実質的とは、工程安定化のために付与する延伸前後
での若干のストレッチを延伸倍率には含まないことを意
味する。レーザを照射しつつ多段延伸を行うことも可能
ではあるが、結晶化した糸のさらなる延伸は困難であ
り、高倍率延伸が達成できないことに加え、ローラー数
が増加するとスペース、エネルギーの負荷が増え、糸条
への損傷も懸念されることから好ましくない。
【0032】本発明における延伸速度は400m/min以上で
ある。なお本発明で言う延伸速度とは延伸後最初に通過
するローラーの速度である。延伸速度が400m/min以上の
高速延伸とすることで、高IVかつ低配向の未延伸糸で
も1段で高倍率延伸が達成できる。このため直接紡糸延
伸は好適な実施形態である。直接紡糸延伸の場合、原糸
の配向結晶化を抑えるため引取速度は2500m/min以下と
し、一旦引き取った後にローラー間でレーザ光を照射し
延伸する方が延伸倍率を制御する上で好ましい。なお本
発明における直接紡糸延伸での未延伸糸の物性はレーザ
照射を行う直前のローラーを通過した糸をアスピレータ
ー等で吸引し、採取した糸の物性を言う。
【0033】本発明の延伸手法を用いることで、レーザ
延伸のみで実用的な高強度繊維が得られるが、さらに低
収縮、高弾性率、高強度といった特性を向上させるため
にレーザ延伸後に熱処理帯を設けても良い。この場合、
レーザ延伸により高度に分子鎖は配向、結晶化している
ため、熱処理温度は180℃以上とすることが好ましい。
【0034】以下実施例により、本発明を具体的かつよ
り詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に制
限されるものではない。なお、実施例中の物性値は以下
の方法によって測定した。
【0035】
【実施例】A.IV オルソクロロフェノール、25℃で測定した。
【0036】B.強度・伸度 オリエンテック社製テンシロン引張試験機を用い、未延
伸糸は初期試料長50mm、引張速度400mm/min、延伸糸は
初期試料長200mm、引張速度200mm/minで測定し求めた。
【0037】C.密度 臭化ナトリウム水溶液による密度勾配管法で測定した。
【0038】D.複屈折率(△n) OLYMPUS社製BH−2偏光顕微鏡コンペンセータ
ーを用い、通常の干渉縞法によって、レターデーション
と繊維径より求めた。
【0039】参考例1 IV1.47のポリエチレンテレフタレートを2軸エクスト
ルーダーを用い紡糸温度295℃で孔径0.36mmφ、孔数48
の紡糸口金より吐出量35g/minで吐出し、500m/minの紡
糸速度で引き取ってポリエステル未延伸糸を得た。
【0040】参考例2 IV0.98のポリエチレンテレフタレートを用い、吐出量
を90g/min、紡糸速度を2000m/minとする以外は参考例1
と同様の方法で紡糸を行いポリエステル未延伸糸を得
た。
【0041】参考例3 IV1.18のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸口
金の口径を0.40mmφ、吐出量を95g/min、紡糸速度を250
0m/minとする以外は参考例1と同様の方法で紡糸を行い
ポリエステル未延伸糸を得た。
【0042】参考例4 IV1.15のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸口
金の口径を0.40mmφ、吐出量を100g/min、紡糸速度を40
00m/minとする以外は参考例1と同様の方法で紡糸を行
いポリエステル未延伸糸を得た。
【0043】参考例5 IV0.64のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸口
金の口径を0.24mmφ、吐出量を100g/min、紡糸速度を20
00m/minとする以外は参考例1と同様の方法で紡糸を行
いポリエステル未延伸糸を得た。
【0044】参考例1〜5で得られた未延伸糸の物性を
表1に示す。
【0045】
【表1】 実施例1 参考例1で得た未延伸糸を第1ローラー98m/min、第2
ローラー500m/min(延伸倍率5.1)とし、第1と第2ロー
ラーの間で出力60Wの炭酸ガスレーザを照射し延伸を行
った。なお各ローラーは特に加熱していない。
【0046】延伸中に糸切れは発生せず、安定した延伸
が可能であった。得られた延伸糸物性を表2に示す。
【0047】表2から高IVの未延伸糸を高速でレーザ
延伸することにより1段延伸で1.0GPaを越える十分な強
度を持つ延伸糸が得られることが分かる。
【0048】
【表2】 比較例1 レーザを照射せず第1ローラーを90℃、第2ローラーを
180℃と加熱すること以外は実施例1と同様の方法で延
伸を試みたが、断糸が頻発したため第1ローラーを104m
/min(延伸倍率4.8)として延伸を行った。得られた延伸
糸物性を表2に示す。
【0049】表2から通常の加熱延伸では高IVの未延
伸糸を十分に延伸することができず、レーザ延伸に比べ
延伸倍率が低く、得られる繊維の強度が低下することが
分かる。
【0050】実施例2 参考例2で得た未延伸糸を用い、第1ローラー速度を34
5m/min、第2ローラー速度を1000m/min(延伸倍率2.9)、
レーザー照射出力を80Wとすること以外は実施例1と同
様の方法で延伸を行った。
【0051】延伸中に糸切れは発生せず、安定した延伸
が可能であった。得られた延伸糸物性を表2に示す。
【0052】表2から未延伸糸のIVが0.85であれば高
速でレーザ延伸することにより1段延伸で十分な強度を
持つ延伸糸が得られることが分かる。
【0053】実施例3 参考例3で得た未延伸糸を用い、第1ローラー速度を16
7m/min、第2ローラー速度を400m/min(延伸倍率2.4)と
し、レーザ出力を50Wとすること以外は実施例1と同様
の方法で延伸を行った。
【0054】延伸中にローラーへの単糸巻き付きが1度
発生したが、概ね安定した延伸が可能であった。得られ
た延伸糸物性を表2に示す。
【0055】表2から未延伸糸密度が1.344g/cm3以下、
△nが40×10-3以下ならば延伸速度400m/minでの安定し
たレーザ1段延伸が可能であり、十分な強度を持つ延伸
糸が得られることが分かる。
【0056】比較例2 参考例4で得た未延伸糸を用い、第1ローラー速度を38
5m/min(延伸倍率1.3)とし、レーザ出力を50Wとすること
以外は実施例1と同様の方法で延伸を行った。
【0057】延伸中にローラーへの単糸巻き付きが2〜
3度発生し、延伸挙動はやや不安定であった。得られた
延伸糸物性を表2に示す。
【0058】表2から未延伸糸密度が1.371g/cm3、△n
が75×10-3では延伸速度500m/minでの安定したレーザ1
段延伸は困難であり、得られる延伸糸強度も不十分であ
ることが分かる。
【0059】比較例3 参考例5で得た未延伸糸を用い、第1ローラー速度を15
2m/min(延伸倍率3.3)とし、レーザ出力を40Wとすること
以外は実施例1と同様の方法で延伸を行った。
【0060】延伸開始時に溶断が発生し、延伸挙動はや
や不安定であった。得られた延伸糸物性を表2に示す。
【0061】表2から未延伸糸IVが0.63では延伸速度
500m/minでの安定したレーザ1段延伸は困難であり、得
られる延伸糸強度も不十分であることが分かる。
【0062】実施例4〜6 第2ローラーを180℃(実施例4)、230℃(実施例5)、22
0℃(実施例6)に加熱すること以外は、それぞれ実施例
1〜3と同様の方法で延伸を行った。
【0063】延伸中に糸切れは発生せず、安定した延伸
が可能であった。得られた延伸糸物性を表3に示す。
【0064】表3からレーザ延伸後に180℃以上で再加
熱処理を施すことで、強度がさらに向上することが分か
る。
【0065】
【表3】 実施例7 IV1.47のポリエチレンテレフタレートを2軸エクスト
ルーダーを用い紡糸温度295℃で孔径0.36mmφ、孔数48
の紡糸口金より吐出量35g/minで吐出し、非加熱の第1
ローラーにて500m/minの紡糸速度で引き取り、第1と第
2ローラーの間で出力100Wの炭酸ガスレーザを照射し、
非加熱の第2ローラーを2500m/min(延伸倍率5.0)として
直接紡糸延伸を行った。
【0066】直接紡糸延伸中に糸切れは発生せず、安定
した製糸が可能であった。得られた延伸糸物性を表4に
示す。
【0067】表4から未延伸糸IV、△n、密度が特定
条件を満たす場合に、レーザを用いることで直接紡糸延
伸のような高速紡糸でも非加熱の1段延伸で1.0GPaを越
える、十分な強度を持つ延伸糸が得られることが分か
る。
【0068】
【表4】 比較例4 第1ローラーを温度95℃、第2ローラーを温度180℃に
加熱し、レーザを照射しないこと以外は実施例7と同様
の方法で直接紡糸延伸を試みたが、ローラー間で糸切れ
が頻発するため、第2ローラー速度を2250m/min(延伸倍
率4.5)として直接紡糸延伸を行った。得られた延伸糸物
性を表4に示す。
【0069】表4から加熱ローラーによる直接紡糸延伸
ではレーザ加熱に比べ1段での延伸倍率が低く、十分な
強度が得られないことが分かる。
【0070】実施例8 IV0.98のポリエチレンテレフタレートを2軸エクスト
ルーダーを用い紡糸温度295℃で孔径0.36mmφ、孔数48
の紡糸口金より吐出量90g/minで吐出し、非加熱の第1
ローラーにて2000m/minの紡糸速度で引き取り、第1と
第2ローラーの間で出力160Wの炭酸ガスレーザを照射
し、温度を180℃とした第2ローラーを5500m/min(延伸
倍率2.75)として直接紡糸延伸を行った。
【0071】直接紡糸延伸中に糸切れは発生せず、安定
した製糸が可能であった。得られた延伸糸物性を表4に
示す。
【0072】表4から未延伸糸IVが0.85であれば、レ
ーザを用いることで直接紡糸延伸のような高速紡糸でも
非加熱の1段延伸で十分な強度を持つ延伸糸が得られる
ことが分かる。
【0073】実施例9 IV1.18のポリエチレンテレフタレートを2軸エクスト
ルーダーを用い紡糸温度295℃で孔径0.40mmφ、孔数48
の紡糸口金より吐出量95g/minで吐出し、非加熱の第1
ローラーにて2500m/minの紡糸速度で引き取り、第1と
第2ローラーの間で出力160Wの炭酸ガスレーザを照射
し、温度を220℃とした第2ローラーを5625m/min(延伸
倍率2.25)として直接紡糸延伸を行った。
【0074】直接紡糸延伸中に糸切れは発生せず、安定
した製糸が可能であった。得られた延伸糸物性を表4に
示す。
【0075】表4から未延伸糸密度が1.344g/cm3以下、
△nが40×10-3以下ならばレーザを用いることで直接紡
糸延伸のような高速紡糸でも非加熱の1段延伸で十分な
強度を持つ延伸糸が得られることが分かる。
【0076】
【発明の効果】力学特性、特に強度に優れるポリエステ
ル繊維を高速かつ省スペース、省エネルギーで製造でき
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4L035 BB36 BB88 DD20 EE08 HH05 HH10 4L036 MA05 MA25 PA12 PA18 UA07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】固有粘度IVが0.85以上、密度が1.345g/c
    m3以下、複屈折率△nが0.040以下であるポリエステル
    未延伸糸にレーザ光を照射し、延伸速度400m/min以上で
    実質的に1段で延伸を施すことを特徴とするポリエステ
    ル繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】レーザ光が炭酸ガスレーザであることを特
    徴とする請求項1記載のポリエステル繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】ポリエステルを未延伸糸を2500m/min以下
    の速度で引き取り、直接紡糸延伸を行い、巻き取ること
    を特徴とする請求項1または2記載のポリエステル繊維
    の製造方法。
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