JP2002235746A - セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ - Google Patents

セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ

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JP2002235746A
JP2002235746A JP2001035842A JP2001035842A JP2002235746A JP 2002235746 A JP2002235746 A JP 2002235746A JP 2001035842 A JP2001035842 A JP 2001035842A JP 2001035842 A JP2001035842 A JP 2001035842A JP 2002235746 A JP2002235746 A JP 2002235746A
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ceramic
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pressure gap
bearing according
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JP2001035842A
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Atsutoshi Sugiyama
敦俊 杉山
Takanobu Ishikawa
敬展 石川
Tetsuji Yogo
哲爾 余語
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Niterra Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 始動・停止時等において摩耗等が生じにく
く、かつ動圧軸受けの好適な回転を実現できるセラミッ
ク動圧軸受けを提供する。 【解決手段】 所定の回転軸線周りに相対回転する第一
部材14と第二部材15との間に動圧隙間17が形成さ
れ、それら第一部材14と第二部材15との相対回転に
伴い、動圧隙間17に流体動圧を発生させる。そして、
第一部材14及び第二部材15の少なくともいずれかに
おいて、動圧隙間17に面する研磨表面(動圧隙間形成
面)を含む部分が少なくともセラミックにて構成される
とともに、その研磨仕上げされた動圧隙間形成面を構成
するアルミナ質セラミックにおける、Al換算し
たAl成分の含有率が90〜99.5質量%に調整され
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セラミック動圧軸
受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴン
スキャナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、電気機器の駆動源となるモータ軸
の軸受としてはボールベアリングが用いられることが多
かったが、コンピュータ周辺機器などの精密機器におい
ては、モータの高速回転化が急速に進んでおり、低回転
ムラや異音・振動の少ない優れた軸受性能を得るため、
あるいは軸受の長寿命化のために、空気等の流体を媒介
とした動圧軸受が用いられている。動圧軸受は、例えば
主軸とこれを取り囲むように配置される軸受部とが軸線
周りに回転する場合には、主軸外周面と軸受部内周面と
の隙間に発生する流体動圧により回転軸を支持する。ま
た、主軸又は軸受部のスラスト面を動圧支持するように
した軸受もある。
【0003】ところで、動圧軸受においては、発生動圧
レベルの十分に高い高速回転状態では、動圧隙間を挟ん
で対向する部材同士の接触は生じないが、回転数の小さ
い起動時および停止時には十分な動圧が発生しないため
に、部材同士の接触が生ずる。そして、上記のような動
圧軸受の部品構成材料には、ステンレス等の金属もしく
はこれらに樹脂等のコーティングを施したものが一般的
に用いられてきたが、金属製のものは上記起動時あるい
は停止時の部材接触により、摩耗や焼き付きが問題にな
ることがある。これを防止するために、動圧隙間に面す
る部分に樹脂などの潤滑層をコーティングする試みもな
されているが、効果は必ずしも十分ではない。そこで、
摩耗や焼き付きに対する耐久性を十分に確保するため
に、上記主軸ないし軸受部など、動圧隙間を挟んで対向
する部材をアルミナ等のセラミックにより構成すること
が行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに動圧部品にアルミナ質セラミックを使用する場合、
従来は、材料設計上の観点において、上記始動・停止時
の摩耗等に対する考慮が必ずしも十分に払われていると
はいいがたい側面があった。また、動圧軸受部品をセラ
ミックで構成しているにもかかわらず、主軸回転中に振
動が発生し、スムーズに回転しないという問題が生じる
こともある。また、回転体のスラスト面に円盤状のスラ
スト板が対向する構造を有するものなど、スラスト面を
動圧支持するようにした軸受においては、動圧軸受の起
動時や停止時において、回転体とスラスト板とが接触す
る際に、リンキング(即ち隙間が真空状になって部材同
士が密着する現象)や摩耗が発生することもあった。
【0005】本発明の課題は、始動・停止時等において
摩耗等が生じにくく、かつ動圧軸受の好適な回転を実現
できるセラミック動圧軸受を提供することにある。
【0006】
【課題を解決する手段及び作用・効果】上記課題を解決
するために本発明のセラミック動圧軸受は、所定の回転
軸線周りに相対回転する第一部材と第二部材との間に動
圧隙間が形成され、それら第一部材と第二部材との相対
回転に伴い、動圧隙間に流体動圧を発生させるよう構成
されるとともに、第一部材及び第二部材の少なくともい
ずれかにおいて、動圧隙間に面する研磨表面(以下、動
圧隙間形成面という)を含む部分が少なくともアルミナ
質セラミックにて構成されるとともに、その研磨仕上げ
された動圧隙間形成面を構成するアルミナ質セラミック
における、Al換算したAl成分の含有率(以
下、アルミナ含有率という)が、90〜99.5質量%
であることを特徴とする。
【0007】本発明ではセラミックの材質として、アル
ミナ質セラミックを使用する。アルミナは、比較的安価
で強度も高く、しかも化学的な安定性に優れている。そ
して、本発明においては、そのアルミナ質セラミックの
アルミナ含有率を比較的高い値である90〜99.5質
量%に調整する。この場合、アルミナ質セラミック中
の、粒界相を構成する酸化物系焼結助剤成分を、酸化物
換算にて0.5〜10質量%含有させることができる。
【0008】アルミナ含有率を最大でも99.5質量%
に留めるのは、以下のような理由による。まず、アルミ
ナ質セラミックを動圧軸受の材料として採用する場合
は、主軸や軸受を構成するセラミックの動圧隙間形成面
における表面状態が問題になる。つまり、一般に研磨加
工後のセラミック表面では、微小な孔が存在している
が、このような孔の大きさが、動圧軸受の回転状態に大
きな影響を及ぼしていると考えられる。
【0009】他方、本発明者らの検討によると、動圧隙
間形成面が極端に平滑な面であると、動圧隙間に十分な
流体動圧を発生できなくなることわかった。発生する動
圧レベルが不十分であると、当然に回転軸の安定的な支
持状態を実現できなくなり、動圧軸受の好適な回転状態
を確保することも困難となる。従って、動圧隙間形成面
には、一定の寸法範囲の表面空孔を積極的に形成するこ
とが、発生する流体動圧レベルを高く安定なものとする
上で有効である。
【0010】具体的には、セラミックの動圧隙間形成面
に寸法の大きな孔が存在している場合には、例えば主軸
が回転する際に、主軸と軸受の間にある流体層に乱れが
発生し、例えば主軸に振動が発生すると考えられる。一
方、セラミックの動圧隙間形成面に存在する孔の寸法が
小さい場合には、主軸と軸受の動圧隙間形成面に凝着が
生じやすくなり、例えば凝着した高摩擦状態で無理に回
転しようとすることによる摩耗(以下、凝着摩耗とい
う)等を引き起こしやすくなる。また、主軸等、動圧隙
間形成面の片側をなす部材が金属で形成されている場合
には、焼き付きが生じることもある。他方、極端に寸法
の小さい表面空孔は、動圧発生にはほとんど寄与しな
い。
【0011】ところで、動圧隙間形成面に形成される上
記のような空孔は、主として研磨時の粒子脱落により形
成されることから、動圧隙間形成面におけるアルミナ質
セラミックの結晶粒子の寸法(結晶粒径)あるいはその
分布は、上記のような不具合を生じない好適な表面空孔
の形成状態を得る上で極めて重要な役割を果たす。この
場合、アルミナ含有率が99.5質量%を超えてしまう
と、焼結助剤の添加量が不足し、焼結時に液相をほとん
ど生じなくなる。その結果、焼結時の結晶粒子の成長が
抑制されて、焼結体の平均結晶粒径は相当小さな値とな
る。そして、表面空孔が主に研磨時の粒子脱落により形
成されることを考慮すれば、焼結体の平均結晶粒径が小
さくなりすぎることは、動圧発生効果を高める上で十分
な大きさを有した表面空孔が形成されにくくなることを
意味する。また、焼結助剤の添加量が不足することは、
焼結体の緻密化が妨げられ、焼結体の強度や耐摩耗性が
低下する不具合にもつながる。
【0012】しかしながら、本発明では、アルミナ含有
量の上限を99.5質量%とし、最低でも0.5質量%
は焼結助剤を添加できるようにしたから、表面空孔の寸
法が不足する程度にまで焼結体の平均結晶粒径が小さく
なることを防止でき、ひいては、回転の起動ないし停止
時に動圧隙間形成面に凝着摩耗や焼き付きあるいはリン
キングが生じることを防止ないし抑制できる。また、動
圧隙間に発生する流体動圧レベルも十分に確保され、回
転振れ等を引き起こしにくくなる。また、焼結体の緻密
化も促進されるので、強度や耐摩耗性の絶対値を向上で
き、ひいてはこの観点からも動圧隙間形成面の摩耗を防
止ないし抑制することが可能となる。
【0013】他方、アルミナ含有量が90質量%未満に
なることは、逆に焼結助剤の添加量が増えすぎることを
意味するから、焼結体の強度や耐摩耗性が損なわれるこ
とにつながる。また、焼結体の粒成長が過度に進んで、
平均結晶粒径が大きくなりすぎる結果、研磨時の粒子脱
落が却って起こりにくくなり、表面空孔の形成量が不足
したり、あるいは極度に大きな表面空孔が形成された場
合は、安定な回転の維持が困難となり、あるいは起動な
いし停止時の凝着磨耗等も発生したりしやすくなる。な
お、アルミナ含有率は、望ましくは92〜98質量%、
より望ましくは93〜97質量%とするのがよい。ま
た、粒界相を構成する酸化物系焼結助剤成分は、酸化物
換算にて望ましくは2〜8質量%、より望ましくは3〜
7質量%含有させることができる。
【0014】酸化物系焼結助剤成分としては、例えばカ
チオン成分がLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、B
a、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、
Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及び
Siである酸化物を使用することができる。この場合、
アルミナ質セラミックには、上記カチオン成分群から選
ばれる1種又は2種以上を酸化物換算した値にて、合計
で0.5〜10質量%(望ましくは2〜8質量%、より
望ましくは3〜7質量%)含有させることができる。
【0015】これらのうち、Si成分は粒界相の骨格を
形成して強度を高めるとともに、液相の流動性を改善す
る効果を有する。また、アルカリ金属であるLi、Na
及びKの3成分は、焼成時に生ずる液相の融点を下げ、
液相の流動性を向上させて焼結体の緻密化を促進する効
果がある。このうち、Naは安価であり、また、バイヤ
ー法にて製造された一般的なアルミナ原料粉末中では、
本来不純物として存在するNaも、焼結助剤として流用
できる利点がある。なお、これら3成分は、いずれも組
成式MO(ただし、Mはカチオン金属元素である)に
て酸化物換算する。
【0016】他方、アルカリ土類金属であるMg、C
a、Sr及びBaの4成分も、アルカリ金属に次いで焼
成時に生ずる液相の融点を下げる効果が大きい。他方、
これらの元素は、粒界相中に取り込まれた際にその強度
を向上させる効果を有する。その結果、焼結体全体ひい
ては動圧隙間形成面の強度及び耐摩耗性を向上させるこ
とができる。該効果は、Caを用いた場合に特に大き
い。これら4成分は、いずれも組成式MO(ただし、M
はカチオン金属元素である)にて酸化物換算する。
【0017】また、希土類金属であるSc、Y、La、
Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、H
o、Er、Tm、Yb及びLuは、粒界相の結晶化を促
進し、その強度を向上させる効果を有する。その結果、
焼結体全体ひいては動圧隙間形成面の強度及び耐摩耗性
を向上させることができる。該効果は、Ceを用いた場
合に特に大きい。これら成分は、Ceのみ組成式MO
により、他は組成式M (ただし、Mはカチオン金
属元素である)にて酸化物換算する。
【0018】次に、研磨仕上げされた動圧隙間形成面を
構成するアルミナ質セラミックの見かけ密度は、3.5
〜3.9g/cmであることが望ましい。アルミナ質
セラミックの密度を比較的高い値である3.5〜3.9
g/cmに調整することにより、動圧隙間発生面を構
成するアルミナ質セラミックの強度及び耐摩耗性の絶対
値を向上させることができ、ひいては部材間の接触が生
じやすい回転の起動・停止時において、動圧隙間形成面
の摩耗や焼き付きを効果的に防止することができる。
【0019】なお、理想的に緻密化したアルミナ質セラ
ミックの密度は最大で4.0g/cmに到達するが、
このように完全に緻密化するまでアルミナ質セラミック
を焼結しようとすると、焼結温度をどうしても高温に設
定せざるを得なくなり、結晶粒成長が避けがたくなる。
このような状態になると、研磨時の粒子脱落が起こりに
くくなって表面空孔の形成量が不足し、起動ないし停止
時の凝着磨耗等も発生しやすくなる場合がある。また、
成長した結晶粒が脱落すると、極度に大きな表面空孔の
形成を招き、安定な回転の維持が困難となる場合があ
る。しかしながら、アルミナ質セラミックの見かけ密度
を3.9g/cm程度までに留めれば、焼結温度をそ
れほど高温化する必要はなくなり、結晶粒成長も抑制さ
れて表面空孔の形成状態は改善される。その結果、比較
的高密度のアルミナ質セラミックを採用することによる
強度及び耐摩耗性の絶対値向上とも相俟って、動圧隙間
形成面の摩耗の問題あるいはリンキング発生の問題を効
果的に解決することができる。他方、見かけ密度が3.
5未満になるとアルミナ質セラミックの強度及び耐摩耗
性が損なわれ、起動・停止時の動圧隙間形成面の摩耗が
却って生じやすくなる場合がある。アルミナ質セラミッ
クの見かけ密度は、より望ましくは3.6〜3.8g/
cmの範囲にて調整することが望ましい。
【0020】なお、アルミナ質セラミックの見かけ密度
は、緻密化の進行状態のみでなく、添加する焼結助剤の
種類や含有量の影響も多少は受ける。そして、セラミッ
クの緻密化レベルと結晶粒成長の度合いとの関係を論ず
る場合は、相対密度(すなわち、アルミナ及び焼結助剤
の組成比から見積もられる真密度により、見かけ密度を
除した値)を尺度として用いることもできる。本発明に
おいては、アルミナ質セラミックの相対密度は90%〜
98%、望ましくは、94〜98%とするのがよい。
【0021】上記のような密度範囲に調整されたアルミ
ナ質セラミックは、その曲げ強度レベルとして、280
〜550MPaの高い値が可能となる。また、動圧隙間
形成面にて、荷重15Nにて測定したロックウェル硬さ
は、92〜98の高い値を達成できる。さらに、破壊靭
性値は3〜5MPa・m1/2の高い値を達成できる。
アルミナ質セラミックの強度、硬さあるいは破壊靭性値
を、このように高めることで、起動・停止時の動圧隙間
形成面の摩耗を効果的に防止ないし抑制することができ
る。なお、本明細書において曲げ強度は、JIS:R1
601(1981)に規定された方法に基づいて、室温
にて測定した3点曲げ強度を意味する。また、荷重15
Nにて測定したロックウェル硬さは、JIS:Z224
5に規定された方法に基づいて、室温にて測定した硬さ
値を意味する。さらに、破壊靭性値は、JIS:R16
07(1990)に規定されたIF法に基づいて、室温
にて測定した測定値を意味する。
【0022】次に、部材の動圧隙間形成面を構成するセ
ラミック結晶粒子の平均粒径は、具体的には1〜7μm
の範囲となるように調整することができる。これによ
り、発生する流体動圧レベルを高く安定なものとし、か
つ動圧軸受の始動ないし停止時の凝着摩耗や焼き付きあ
るいはリンキングといった不具合を効果的に抑制する観
点において、より有利な表面空孔の寸法及び形成量が実
現できる。また、セラミック結晶粒子の平均粒径を、1
〜7μmという、アルミナ質セラミックとしては比較的
小さな値に留めることで、セラミックの機械的な強度を
向上させることができ、ひいては耐摩耗性を向上させる
ことができる。
【0023】本明細書において表面空孔(あるいは結晶
粒子)の寸法とは、図6に示すように、SEMや光学顕
微鏡等による動圧隙間形成面組織の観察面上において、
表面空孔(あるいは結晶粒子)の外形線に対し、それら
の内部を横切らない外接平行線を、該外形線との位置関
係を変えながら各種引いたときに、その平行線の最小間
隔dmin と、最大間隔dmaxとの平均値(すなわち、d
=(dmin+dmax)/2)にて表すものとする。
【0024】セラミック結晶粒子の平均粒径が1μm未
満になると、形成される表面空孔の平均寸法が小さくな
りすぎ、軸受の回転の起動ないし停止時に動圧隙間形成
面に凝着摩耗や焼き付きあるいはリンキングが生じやす
くなる。また、動圧隙間に発生する流体動圧レベルが不
足しがちとなり、回転振れ等を引き起こしやすくなる。
他方、セラミック結晶粒子の平均粒径が7μmを超える
と、逆に形成される表面空孔の平均寸法が大きくなりす
ぎ、動圧隙間に過度の乱流が発生して、回転軸に振動が
発生しやすくなる。セラミック結晶粒子の平均寸法は、
より望ましくは2〜5μmとするのがよい。
【0025】なお、動圧隙間形成面において、前記した
有利な表面空孔の寸法及び形成量を実現するためには、
粒径2〜5μmのセラミック結晶粒子の面積率が40%
以上(100%含む)であることがより望ましい。該寸
法範囲のセラミック粒子が40%未満になると、例えば
該寸法範囲の上限よりも大きな粒子が多くなった場合
は、粒子の脱落そのものが生じにくくなって、動圧発生
に有効寄与する表面空孔の面積率が不足する結果につな
がる場合がある。他方、寸法範囲の下限よりも小さな粒
子が多くなった場合は、形成される表面空孔の平均寸法
が小さくなりがちとなる。いずれも十分なレベルの動圧
を発生させる上で不利となる場合がある。
【0026】アルミナ質セラミックは、アルミナ粉末に
焼結助剤粉末を配合したものを原料として、これを焼成
することにより製造できる。このようなアルミナ質セラ
ミックは、図11に示すように、アルミナを主成分とす
るアルミナ主相の結晶粒子が、焼結助剤に由来する粒界
相にて結合された組織を有する。そして、研磨時の結晶
粒子の脱落は、主にこの粒界相の破壊により生ずると考
えられる。そして、その抜け落ちた結晶粒子の占めてい
た空間が動圧隙間形成面に開放する空孔となって残留す
る。特に局所的に粒界相が薄くなっていたり、内部キャ
ビティ等の存在により粒界相が不足したりしている部
分、あるいは成分偏析や熱応力等に起因したクラックの
存在等により、粒界相の強度が不足している部分など、
粒界相結合力が相対的に低下した部分にて、結晶粒子の
脱落は生じやすいものと考えられる。なお、本発明にお
いて、「主成分」(「主体」あるいは「主に」等も同
義)とは、特に断りがない限り、着目している物質にお
いてその成分の含有率が50重量%以上であることを意
味する。
【0027】例えば、1個の結晶粒子が脱落すれば、図
12(a)の空孔V1(図中、白が抜け落ちていない粒
子を、黒が抜け落ちた粒子を表す)のように、その結晶
粒子の形状及び寸法に対応した空孔が形成されることと
なる。他方、複数の結晶粒子が集団で脱落すれば、V2
のような空孔が生ずる。また、図12(b)に示すよう
に、通常は種々の大きさの結晶粒子が混在した組織とな
ることから、大きな結晶粒子が複数の小さな結晶粒子に
取り囲まれた組織部分が生じていると、周りの小さな結
晶粒子が連鎖的に脱粒することで、真中の大きな結晶粒
子が抜け落ちることも多い。これらの場合、形成される
空孔の寸法は、当然個々の結晶粒子よりは大きなものと
なる。
【0028】また、アルミナ質セラミックの組織が、個
々の結晶粒子の形状異方性が小さい等軸晶的なものとな
っており、また、上記のような粒界相結合力の低下した
部分が一定の広がりをもって形成されている場合は、砥
石や砥粒からの研磨力が複数の結晶粒子にまたがって作
用したときに、V2のような脱落形態のほうが頻度的に
は発生しやすくなる。この場合、1〜7μmに設定され
た結晶粒子の平均寸法よりも、形成される表面空孔の平
均寸法の方が大きくなる。また、表面空孔は、研磨方向
によらず動圧隙間形成面には略等方的に散った形で形成
される。結晶粒子の平均寸法よりも表面空孔の平均寸法
を大きくすることで、発生動圧レベルをさらに向上させ
ることができ、軸受のより安定な回転を実現することが
可能となる。
【0029】上記のような本発明特有の組織を有したア
ルミナ質セラミックを製造する場合、原料として使用す
るアルミナ粉末の平均粒径は1〜5μmとするのがよ
い。この範囲を外れた平均粒径のアルミナ粉末を用いた
場合、得られる焼結体の平均粒径を上記の好ましい範囲
のものとできなくなる場合がある。また、比表面積値が
小さすぎる粉末ないし平均粒径が大きすぎる粉末を使用
すると、焼結助剤成分を相当量含有させても焼結体が緻
密化しにくくなり、強度あるいは耐摩耗性の不足につな
がる場合がある。なお、粉末の平均粒子径はレーザー回
折式粒度計を用いて測定できる。また、比表面積値は吸
着法により測定できる。
【0030】また、焼成温度は1400〜1700℃の
範囲にて設定するのがよい。焼成温度が1400℃未満
では焼結体の緻密化が進みにくくなり、強度あるいは耐
摩耗性の不足につながる。他方、焼成温度が1700℃
を超えると過度の粒成長が生じて、得られる焼結体の結
晶粒子の平均粒径を前述の望ましい範囲内に留めること
が困難となる場合がある。また、焼結体の変形等が生じ
やすくなって寸法精度が損なわれる場合がある。
【0031】次に、セラミックからなる動圧隙間形成面
に存在する表面空孔の平均寸法は、具体的には2〜20
μmとするのがよい。2〜20μmの平均寸法の表面空
孔を積極形成することにより、発生する流体動圧レベル
を高く安定なものとすることができる。さらに、後述す
るスラスト動圧発生隙間が形成される動圧軸受の場合に
は、リンキングの発生を防止することができる。
【0032】表面空孔の平均寸法が20μmを超える
と、動圧隙間に過度の乱流が発生して、回転軸に振動が
発生しやすくなる。他方、表面空孔の寸法が2μm未満
になると、回転の起動ないし停止時に動圧隙間形成面に
凝着摩耗や焼き付きあるいはリンキングが生じやすくな
る。また、動圧隙間に発生する流体動圧レベルが不足し
がちとなり、回転振れ等を引き起こしやすくなる。表面
空孔の平均寸法は、より望ましくは5〜15μmとする
のがよい。
【0033】次に、個々の表面空孔の寸法については、
2μm以下のものは動圧発生にあまり寄与することがで
きず、他方、20μmを超えるものがあまり多数存在し
すぎると、振動等が発生しやすくなる。すなわち、動圧
発生に有効に寄与し、かつ安定な回転を実現する上で好
適な表面空孔の寸法は、2〜20μmである。そして、
このような寸法範囲にある表面空孔の、動圧隙間形成面
における形成面積率は、回転の起動ないし停止時に動圧
隙間形成面に焼き付きあるいはリンキングをより生じに
くくし、かつ動圧隙間に発生する流体動圧レベルを高め
る観点において15%以上、より望ましくは20%以上
であるのがよい。他方、該面積率は、振動等の発生をよ
り効果的に抑制する観点においては60%以下、望まし
くは40%以下であるであるのがよい。
【0034】また、動圧発生に有効に寄与し、かつ安定
な回転を実現する上で、より好適な表面空孔の寸法は5
〜15μmであり、このような寸法範囲にある表面空孔
の動圧隙間形成面における形成面積率を15〜30%と
するのがよい。
【0035】なお、本明細書において、表面空孔の面積
率とは、動圧隙間形成面に観察される空孔の合計面積
を、動圧隙間形成面の面積により除した値をいう。ただ
し、動圧隙間形成面に周知の動圧溝が形成されている場
合には、動圧溝の部分を除いた動圧隙間形成面領域につ
いて、表面空孔の面積率を算出するものとする。なお、
面積率の測定は、光学顕微鏡等の拡大観察手段を用いて
動圧隙間形成面領域を観察し、その観察視野中に300
μm×300μmの正方形の測定領域を設定し、該測定
領域中に識別される表面空孔の合計面積を測定領域面積
にて除する事により算出する。なお、測定精度向上のた
め、1つの動圧隙間形成面領域において測定領域は任意
に5ヶ所ないしそれ以上し、表面空孔の面積率を、そ
れら測定領域の平均値として算出することが望ましい。
【0036】また、動圧隙間形成面における表面空孔
は、振動等の原因を招きやすい寸法20μmを超えるも
のはなるべく存在していないことが望ましい。具体的に
は、動圧隙間形成面おける寸法20μmを超える表面空
孔の形成面積率が10%以下、望ましくは5%以下であ
るのがのがよい。また、振動発生防止の観点において
は、動圧隙間形成面に存在する表面空孔の最大寸法が1
00μm以下であること、すなわち100μmを超える
表面空孔は存在しないことが望ましい。
【0037】次に、動圧隙間を形成する第一部材及び第
二部材は、それぞれ全体をアルミナ質セラミック(以
下、単にセラミックともいう)にて構成することができ
る。部材を構成するセラミックは、内部は空孔の少ない
緻密な焼結体組織とし、動圧隙間形成面部分は空孔が比
較的多く形成された組織とすることが、発生動圧レベル
の向上や、凝着摩耗、焼き付きあるいはリンキングの防
止効果と、強度及び耐摩耗性向上効果とを両立させる上
で望ましい。具体的には、セラミック焼結体に存在する
寸法2〜20μmの空孔が主に、動圧隙間形成面に表面
空孔の形で局在化した形で存在しているのがよい。そし
て、このような組織を能率よく形成するには、前述のよ
うに、動圧隙間形成面を加工仕上げする際に、セラミッ
ク結晶粒子を脱落させて表面空孔を形成することが有効
である。
【0038】次に、動圧隙間形成面は、軸受の回転軸線
に対してラジアル方向に形成されたラジアル動圧隙間形
成面とすることができる。すなわち、第一部材を軸状に
形成し、第二部材に形成された挿通孔に該第一部材を挿
通するとともに、第二部材の挿通孔内面と、これに挿通
される第一部材の外周面とをそれぞれラジアル動圧隙間
形成面として、それらラジアル動圧隙間形成面の間にラ
ジアル動圧隙間を形成することができる。
【0039】例えば図1に例示する構造の動圧軸受の場
合には、ラジアル方向とは、第一部材たる主軸の回転軸
線方向(図の上下方向)と垂直な方向(従って径方向)
である。例えば図1では、固定された第一部材である主
軸の外周面と、筒状回転体として構成された第二部材で
ある軸受部の内周面とが、ラジアル動圧隙間形成面であ
る。後述の通り、回転軸線方向に長い形態の軸受の場
合、ラジアル動圧が十分に発生するか否かは、回転軸線
を安定に支持する上で重要である。従って、本発明の適
用により、ラジアル動圧隙間に十分な動圧を発生でき、
かつ始動・停止時の凝着摩耗や焼き付き等も効果的に防
止ないし抑制することができる。
【0040】他方、動圧隙間形成面は、回転体の回転軸
に対してスラスト方向に形成されたスラスト動圧隙間形
成面とすることもできる。すなわち、第一部材を、回転
軸線方向における第二部材の少なくとも一方の端面に対
向する形で配置し、該第二部材の端面と、これに対向す
る第一部材の対向面とをそれぞれスラスト動圧隙間形成
面として、それらスラスト動圧隙間形成面の間にスラス
ト動圧隙間を形成する。
【0041】例えば、図1に例示する構造の動圧軸受の
場合には、スラスト方向とは、主軸の軸方向、すなわち
回転軸線の向き(図の上下方向)である。例えば図1で
は、筒状回転体として構成された第二部材である軸受部
の端面と、軸線方向においてその軸受部の端面と対向す
る第一部材としてのスラスト板の板面と、スラスト動
圧隙間形成面となる。なお、スラスト動圧隙間形成面
は、回転軸線方向に対する垂直面より僅かに傾斜してい
てもよい。後述の通り、回転軸線方向に短い形態の軸受
の場合、スラスト動圧が十分に発生するか否かは、回転
軸線を安定に支持する上で重要である。従って、本発明
の適用により、スラスト動圧隙間に十分な動圧を発生で
き、かつ始動・停止時の凝着摩耗や焼き付き及びリンキ
ングを効果的に防止ないし抑制することができる。
【0042】なお、1つの軸受に、図1のようにラジア
ル動圧隙間とスラスト動圧隙間との両方を形成すること
ももちろん可能である。この場合、各動圧隙間の形成形
態によって、ラジアル動圧隙間の観点から見た第一部材
(あるいは第二部材)と、スラスト動圧隙間の観点から
見た第一部材(あるいは第二部材)とは、実体が同一の
部材となることもあるし、互いに異なる部材となること
もありうる。例えば、図1の例では、第二部材はいずれ
の観点においても軸受部であり、その内周面がラジアル
動圧隙間形成面となり、両端面がスラスト動圧隙間形成
面となる。他方、第一部材に関しては、ラジアル動圧隙
間の観点から見た場合は主軸が第一部材であり、スラス
ト動圧隙間の観点から見た場合は、軸受部の両端面に対
向する1対のスラスト板が第一部材である。また、主軸
は非回転の固定軸である。なお、図10に示すように、
主軸212が回転側となり、筒状の軸受部221が固定
側となる軸受251も可能である。
【0043】また、本発明の動圧軸受は、動圧軸受の軸
方向の長さがスラスト動圧隙間形成面の外径よりも長い
か、あるいはスラスト動圧隙間が形成されないものと
し、回転体の回転時の傾斜がラジアル動圧隙間に発生す
る動圧により規制されるように構成できる。これは、例
えば図7に示すように、回転軸の長い動圧軸受を規定し
たものであり、回転体である軸受部35が傾斜すると、
ラジアル動圧隙間37に発生する圧力により、その傾斜
が規定されて修正される。他方、動圧軸受の軸方向の長
さがスラスト動圧隙間形成面の外径よりも短く、回転体
の回転時の傾斜が、主にスラスト動圧隙間に発生する動
圧により規制されるように構成することもできる。これ
は、例えば図3に示すような回転軸が短い動圧軸受を規
定したものであり、回転体である軸受部が傾斜すると、
スラスト動圧隙間に発生する動圧により、その傾斜が規
定されて修正される。
【0044】なお、動圧隙間形成面には動圧溝を形成す
ることができる。例えば、ラジアル動圧隙間形成面とな
る回転軸外周面に、周知の動圧溝が形成されていること
により、より一層スムーズな回転が実現できる。この動
圧溝としては、図2(a)に例示するように、例えば軸
受部に挿入される軸外周面(ラジアル動圧隙間形成面)
に周方向に所定間隔で複数の動圧溝を形成できる。この
実施形態では軸外周面の母線と一定角度をなす形で傾斜
した直線状の溝列とされているが、山型(あるいはブー
メラン型の溝パターンを、軸周方向の基準線上に、溝パ
ターンの先端が位置するように、所定の間隔で全周にわ
たって形成した、いわゆるヘリングボーン形態など、他
の公知の形態を採用することもできる。また、図2
(b)に例示するように、例えばスラスト板の表面(ス
ラスト動圧隙間形成面)に動圧溝を形成することもでき
る。この例では、板面周方向において、スラスト板中心
位置からの距離が漸減する曲線状の溝部を周方向に所定
の間隔で複数形成している。
【0045】本発明の動圧軸受は、例えばハードディス
ク装置のハードディスク回転主軸部分、あるいはCD−
ROMドライブ、MOドライブあるいはDVDドライブ
などのコンピュータ用周辺機器のディスク回転主軸部
分、さらにはレーザープリンタやコピー機等に使用され
るポリゴンスキャナのポリゴンミラー回転主軸部分の軸
受として有効に使用することができる。これらの精密機
器における回転駆動部の軸受には、例えば8000rp
m以上(さらに高速性の要求される場合には、1000
0rpm以上ないし30000rpm以上)の高速回転
が要求されるため、本発明の適用により、発生する流体
動圧レベルを高く安定なものとでき、ひいては振動等を
低減する効果を特に有効に引き出すことができる。ま
た、本発明は、上記セラミック動圧軸受をモータ回転出
力部の軸受として用いた軸受付きモータを提供する。さ
らに、上記の軸受付きモータと、その軸受付きモータに
より回転駆動されるハードディスクとを備えたハードデ
ィスク装置、あるいは、上記の軸受付きモータと、その
軸受付きモータにより回転駆動されるポリゴンミラーと
を備えたポリゴンスキャナも提供する。
【0046】なお、アルミナ質セラミックにさらに強靭
性を付与するために、ジルコニア質セラミックを配合し
た複合セラミック材料とすることもできる。このような
複合セラミック材料は、最も含有率の高いセラミック成
分がアルミナ及びジルコニアの一方であり、二番目に含
有率の高いセラミック成分がアルミナ及びジルコニアの
他方であるセラミック粉末を用いて、成形・焼成するこ
とにより得ることができる。なお、アルミナ質セラミッ
クに対するジルコニア質セラミックの配合量は、5〜6
0体積%とするのがよい。
【0047】また、アルミナ質セラミックを基質とし
て、これに、金属カチオン成分がTi、Zr、Nb、T
a及びWの少なくともいずれかである導電性無機化合物
相を含有させた複合セラミック材料とすることもでき
る。このような複合セラミック材料は、基質セラミック
の成形用素地粉末に、導電性無機化合物相の形成源とな
る粉末を配合して、成形・焼成することにより得ること
ができる。導電性無機化合物相を含有させることによ
り、セラミック材料に導電性を付与することができ、ひ
いては該セラミック材料にワイヤーカット等の放電加工
を施すことが可能となる。また、導電性の付与により、
帯電防止の効果を達成することができる。
【0048】導電性無機化合物は、Ti、Zr、Nb、
Taの少なくともいずれかを金属カチオン成分とする金
属窒化物、金属炭化物、金属硼化物、金属炭窒化物、及
び炭化タングステンの少なくともいずれかとすることが
でき、具体的には、窒化チタン、炭化チタン、硼化チタ
ン、炭化タングステン、窒化ジルコニウム、炭窒化チタ
ン及び炭化ニオブ等を例示できる。なお、導電性無機化
合物相の含有量は、複合セラミック材料の強度及び破壊
靭性値を確保しつつ十分な導電性向上を図るため、20
〜60体積%とするのがよい。なお、上記のような複合
セラミックを使用する場合、すでに説明したアルミナ含
有率あるいは焼結助剤の含有率は、複合セラミック全体
における含有率ではなく、アルミナ質セラミックからな
る基質中での含有率に読み替えるものとする。
【0049】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図
面に示す実施例により説明する。 (実施例1)図3に示すセラミック動圧軸受3は、(以
下単に動圧軸受とも記す)は、例えばポリゴンスキャナ
1において、ポリゴンミラー8を回転駆動するための動
圧軸受付きモータに使用されるものであり、空気を動圧
発生用流体として使用するものである。この動圧軸受付
きモータ2では、円筒状の軸受部15(回転体)を回転
させるために、軸受部15の外周面に一体化された支持
体7に永久磁石9が取り付けられ、基台11にはこの永
久磁石9と対向するコイル13が取り付けられている。
なお、永久磁石9とコイル13との配置関係はこれを入
れ替えてもよい。
【0050】セラミック動圧軸受3は、筒状の軸受部1
5(例えば、内径15mm、外径25mm、軸方向長さ
8mm)の挿通孔15aに、筒状の主軸(例えば、内径
5mm、外径15mm、軸方向長さ8mm)14が挿通
されている。図4に示すように、挿通孔15aの内周面
M2と、主軸14の外周面M1とがラジアル動圧隙間形
成面となり、それらの間には、回転軸線Оに関するラジ
アル方向の動圧を発生させるために、空気にて満たされ
たラジアル動圧隙間17が形成されている。ラジアル動
圧隙間17の大きさは例えば約5μmである。なお、ラ
ジアル動圧隙間17形成の観点から見た場合、主軸14
が第一部材であり、軸受部15が第二部材である。
【0051】一方、主軸14の両端面には、円板状のス
ラスト板(例えば、内径5mm、外径25mm、厚さ2
mm)21,23が同軸的に一体化されており、それら
スラスト板21,23の内側の板面M4,M6が、回転
体である軸受部15の両端面M3,M5と対向してい
る。本実施例では、スラスト板21,23は、図3に示
すように、各内孔21b,23bの内縁部にて主軸14
の端面に重ねられ、主軸14の中心孔14bに挿通され
たボルト25を基台11にねじ込むことにより押圧固定
されているが、固定形態はこれに限られるものではな
い。
【0052】そして、図4に示すように、スラスト板2
1,23の板面M4,M6と、軸受部15の両端面M
3,M5とが各々スラスト動圧隙間形成面となり、それ
らの間には、回転軸線Оに関するスラスト方向の動圧を
発生させるために、空気にて満たされたスラスト動圧隙
間18,18が形成されている。スラスト動圧隙間1
8,18の各大きさは例えば約6μm程度である。ま
た、スラスト動圧隙間18形成の観点から見た場合、ス
ラスト板21,23が第一部材であり、軸受部15が第
二部材である。
【0053】本実施例では、主軸14、軸受部15及び
スラスト板21,23は、それぞれ全体がアルミナ質セ
ラミックにて構成されており、そのアルミナ含有率は9
0〜99.5質量%、望ましくは92〜98質量%であ
り、残部が酸化物系焼結助剤成分と不可避不純物であ
る。また、その見かけ密度は3.5〜3.9g/c
、望ましくは3.6〜3.8g/cmである。ま
た、相対密度は90〜98%、望ましくは94〜97%
である。さらに、動圧隙間形成面M1〜M6におけるセ
ラミック結晶粒子の平均粒径は1〜7μm、望ましくは
2〜5μmである。また、粒径2〜5μmのセラミック
結晶粒子の面積率が50〜80%である。さらに、動圧
隙間形成面M1〜M6には、図5に示すように多数の表
面空孔Kが形成されている。
【0054】すでに説明した通り、本発明の構成による
と、セラミック動圧軸受3の回転動作時における振動発
生を効果的に防止することができ、また、その回転の起
動ないし停止時において動圧隙間形成面に、凝着摩耗が
生じにくくするために、表面空孔の好適な形成状態が実
現される。また、発生する流体動圧レベルを高く安定な
ものとすることができる。さらに、スラスト動圧発生隙
間18においては、スラスト板21,23と軸受部15
とのリンキング発生を防止する上でも効果的である。
【0055】動圧隙間形成面に、後述する研磨時に積極
形成される表面空孔の平均寸法は2〜20μmである。
また、動圧隙間形成面におけるその形成面積率を10〜
60%、望ましくは15〜40%とすることで、上記の
凝着摩耗あるいはリンキングをより生じにくくし、かつ
動圧隙間に発生する流体動圧レベルを高めることが可能
となる。
【0056】なお、上記の効果を達成するには、動圧隙
間形成面M1〜M6の少なくとも1つのものついて、表
面空孔Kの寸法及び面積率が上述の範囲に調整されてい
ればよいが(例えば、ラジアル動圧隙間形成面M1,M
2のいずれかのみ、スラスト動圧隙間発生面M3,M4
の一方のみ、あるいは同M5,M6の一方のみとす
る)、より効果を高めるためには、なるべく多くの動圧
隙間形成面、理想的には、全ての動圧隙間形成面M1〜
M6において、表面空孔Kの寸法及び面積率が上述の範
囲に調整されていることが望ましい。
【0057】なお、ラジアル動圧隙間形成面M1,M2
の少なくとも一方(例えば主軸14側のM1)には、発
生動圧レベルを高めるために、図2(a)に示すような
周知の動圧溝を形成することができる。また、スラスト
動圧隙間形成面M3〜M6の少なくともいずれか(例え
ばスラスト板21,23側のM4,M6)にも、図2
(b)に示すような周知の動圧溝を形成することができ
る。
【0058】以下、上述したセラミック動圧軸受3の製
造方法について説明する。各セラミック部材すなわち、
主軸14、軸受部15、及びスラスト板21,23は、
公知の焼結法により製造できる。すなわち、平均粒径1
〜5μmのアルミナ原料粉末に対し、焼結助剤粉末とし
てMgO,CaO,CeO,SiO,NaO等の
酸化物粉末を配合して成形用素地粉末とし、これを金型
成形あるいは冷間静水圧プレス等の公知の成形法により
対応する形状にプレス成形する。その成形体を温度14
00〜1700℃にて焼結することにより焼結体を得
る。この焼結体には、動圧隙間形成面の予定面を含む必
要な面に研磨加工が施され、所定の寸法に仕上げられ
る。
【0059】ここで、図5(c)に示すように、グライ
ンダ研磨あるいは砥粒によるラップ研磨により仕上げら
れる動圧隙間発生面には、研磨時に生ずるセラミック結
晶粒子の脱落により、表面空孔が脱粒孔の形で形成され
る。形成される表面空孔の寸法の平均値や分布及び面積
率は、焼結体を構成するセラミック結晶粒子の寸法の平
均値及び分布、あるいは研磨砥石や砥粒の寸法(番
手)、さらには研磨時間といった研磨条件の調整によ
り、前述した範囲のものとなるように調整される。ま
た、焼結助剤に由来する粒界相の組成や分布により、研
磨時のセラミック結晶粒子の脱粒のしやすさが影響を受
けることもあるので、研磨条件はこの点も考慮して好ま
しい表面空孔の形成状態が得られるように、適宜調整す
る必要がある。
【0060】上記のように動圧隙間発生面を仕上げたセ
ラミック部材は、緻密焼結体の表面にセラミック粒子の
脱落により空孔が形成された組織、すなわち、図5
(b)に示すように、表面空孔が存在する表層部よりも
内層部が緻密となった特有の組織が得られる。従って、
表面空孔の存在により凝着摩耗やリンキング発生防止あ
るいは発生動圧レベルの向上を効果的に図ることができ
るとともに、緻密な内層部が形成されることでセラミッ
ク部材の強度が向上する。また、表層部も、粒子脱落を
生じなかった組織部分は基本的には緻密な組織を維持し
ているから、例えばはじめから緻密化しない多孔質セラ
ミック焼結体として構成した場合よりも、耐摩耗性が大
幅に改善される。
【0061】各動圧隙間形成面Mの加工仕上げが終了す
れば、ここに前述の動圧溝がサンドブラストやエッチン
グなどにより刻設され、最終的な主軸14、軸受部15
あるいはスラスト板21,23が得られる。そして、図
3に示すように、接着等により支持体(ここでは、軸受
部15を嵌め込むための孔部7aを有する円盤状に形成
される)7、永久磁石9及びコイル13を組み付け、さ
らに、ボルト25を用いて主軸14、軸受部15及びス
ラスト板21,23を組み立てることにより、動圧軸受
付きモータが得られる。また、支持体7にポリゴンミラ
ー8を取り付ければ、ポリゴンスキャナ1の組立てが完
了する。
【0062】ポリゴンスキャナ1は以下のように動作す
る。すなわち、動圧軸受付きモータ2は交流誘導モータ
として構成され、コイル13への通電によりにポリゴン
ミラー8が主軸14を固定軸として、軸受部15及び支
持体7とともに一体的に回転駆動される。その最大回転
数は8000rpm以上の高速回転であり、より大きな
スキャン速度が要求される場合には、最大回転数にて1
0000rpm以上、さらには30000rpm以上
(例えば50000rpm程度)にも達する場合があ
る。従って、コイル13のターン数や励磁用の永久磁石
9が発生する外部磁界の値、さらには定格駆動電圧等
が、ポリゴンミラー8の回転負荷を考慮して上記最大回
転数が実現されるように適宜設定される。ここで、主軸
14と軸受部15との間のラジアル動圧隙間17には回
転軸線Оに関するラジアル動圧が、スラスト板21,2
3と軸受部15との間のスラスト動圧隙間18には同じ
くスラスト動圧が発生し、ラジアル方向及びスラスト方
向の双方において、相対回転する部材間の非接触状態が
維持された状態でポリゴンミラー8の回転軸線が支持さ
れる。
【0063】次に、図7は、ポリゴンスキャナに使用す
モータの別例を示すものである(ポリゴンミラーは図
示を省略している)。このモータ31も、図3と類似の
構成の、本発明のセラミック動圧軸受33を含んで構成
される。セラミック動圧軸受33は、円筒状の軸受部3
5(例えば、内径13mm強、外径25mm、軸方向長
さ5mm)と、その挿通孔37にて軸受部35の軸方向
に嵌挿された主軸39(直径13mm弱、長さ8mm)
とを有し、主軸39は固定されて回転せず、その周囲の
軸受部35側が回転する構成となっている。軸受部35
の内周面及び主軸39の外周面をそれぞれラジアル動圧
隙間形成面M2,M1として、それらの間にはラジアル
動圧隙間38が形成される。なお、図7のセラミック動
圧軸受33では、軸受部35及び主軸39の軸線方向寸
法が図3のセラミック動圧軸受3よりも大きく、回転軸
線Оの支持力としてはラジアル動圧が主体的となること
から、スラスト板が省略された構成となっている。
【0064】なお、図3のセラミック動圧軸受3と同様
に、軸受部35側を回転させるために、軸受部35の外
周に一体化された環状の支持体41に永久磁石43が配
置され、この永久磁石43と対向するコイル47が基台
45上に取り付けられている。さらに、軸受部35及び
主軸39の少なくとも一方の動圧隙間形成面M、例えば
主軸39の外側の動圧隙間形成面(外側ラジアル動圧隙
間形成面)M1には、前記図2(a)に示すような動圧
溝が形成されている。
【0065】なお、主軸39及び軸受部35の少なくと
もいずれかをセラミック以外の材料、例えば金属にて構
成することもできる。図8は、主軸39をステンレス鋼
にて構成し、軸受部35は同様にセラミックにて構成し
た例を示している。他方、主軸39をセラミックで構成
し、軸受部35を金属で構成してもよい。
【0066】図9は、ポリゴンスキャナのさらに具体的
な構成例を示すものである。ポリゴンスキャナ90にお
いて基台100上には、本発明のセラミック動圧軸受1
01を支持固定するための芯軸102の一端を垂直に固
定してある。この芯軸102にはセラミック製の下スラ
スト板103を固定して設けてある。芯軸102にはセ
ラミック製の主軸105を貫通して固定してある。さら
に、セラミック製の軸受部107は、主軸105の円筒
外周面をなすラジアル動圧隙間形成面106と、軸受部
107の内周面をなすラジアル動圧隙間形成面108と
の間にラジアル動圧隙間91(1〜7μm)を有してい
て、回転自在に設けてある。さらに、セラミック製の上
スラスト板109は、芯軸102に貫通されて固定して
ある。また、軸受部107の上部と下部に形成したスラ
スト動圧隙間形成面110,111と、下スラスト板1
03のスラスト動圧隙間形成面112、及び上スラスト
板109のスラスト動圧隙間形成面113とのそれぞれ
の間にスラスト動圧隙間92,92が形成される。各セ
ラミック部材の材質は、ここでもアルミナ系セラミック
であり、組織的あるいは組成的には図3及び図7のセラ
ミック動圧軸受3ないし33と同様の構成である。
【0067】軸受部107の外周には、別体で形成され
た支持部114を固定し、さらに、多数の反射面115
が形成されたポリゴンミラー116を固定部材117で
支持部114に固定する(回転体と支持部114は一体
でもよい)。芯軸102の他端は保持座板118とボル
ト119で固定してある。また、下スラスト板103の
スラスト動圧隙間形成面112に、図2(b)に示すも
のと同様の動圧溝121を形成する。さらに、図示はし
ていないが、ラジアル動圧隙間形成面106をなす、主
軸105の外周面(以下、外周面106とも記す。)に
も図2(a)に示すものと同様の動圧溝を形成する。
【0068】そして基台100上には、三相ブラシレス
モータ133の構成として、絶縁部材123を介して巻
き線129を設け、軸受部107の支持部114の下部
には回転方向に対して巻き線129に対向したマグネッ
ト125が設けられる。巻き線129に通電すること
で、軸受部107を高速度で誘導回転させる上記ポリゴ
ンミラー116の駆動モータとして機能する。該三相ブ
ラシレスモータ133の回転により、ラジアル動圧隙間
91に動圧が発生し、円滑な高速度回転が可能となる。
【0069】軸受部107が停止しているときは、該軸
受部107の対向面110と下スラスト板103のスラ
スト動圧隙間形成面112とが接触している。そして、
軸受部107が主軸105を中心に回転を開始すると、
スラスト動圧隙間92にスラスト動圧が発生して接触状
態が解除され、高速回転を可能とする。
【0070】図10は、本発明をハードディスク装置に
適用した例を示すものである。このハードディスク装置
200は、ハブ211の外周に磁気ディスク209a、
209bが固定され、中央にはモータ回転軸212が固
設されている。ハブ211は、これに固定されたディス
ク209a,209bと共に回転する。モータ回転軸2
12は、アルミナ質セラミックからなる固定軸受部22
1によってラジアル方向に支承され、またアルミナ質セ
ラミックからなるスラスト板222でスラスト方向に支
承されている。
【0071】上記モータ回転軸212、固定軸受部22
1及びスラスト板222はセラミック材料からなるた
め、そのモータ回転軸212及び固定軸受部221は高
速で回転するディスク209a,209bの負荷及び高
速回転に耐えるだけの機械剛性を持つ。
【0072】次に、上記モータ回転軸212と固定軸受
部221との間、モータ回転軸212とスラスト板22
2との間には空気が充填され、モータ回転軸212と固
定軸受部221との間には周方向にラジアル動圧隙間2
40が形成されており、固定軸受部221の内周面21
7には図示しない動圧溝が形成されている。モータ回転
軸212は、その回転に伴い、ラジアル動圧隙間240
にラジアル動圧が発生して固定軸受部221に対し非接
触で回転する。ラジアル動圧隙間形成面をなすモータ回
転軸212の外周面及び固定軸受部221の内周面と
は、図3及び図7のセラミック動圧軸受3ないし33と
同様に構成されている(すなわち、本発明のセラミック
動圧軸受の構成を有している)。なお、モータ回転軸2
12の軸端212aは球面ピボット形状になっており、
スラスト方向の力をスラスト板222で支えている。
【0073】ハードディスク装置200においては、ス
テータコア224はブラケット223に固定されてい
る。そのステータコア224にはステータコイル225
が巻回されている。図9のポリゴンスキャナ90と同様
に、モータの回転駆動力は、そのステータコイル225
に電流を流すことにより励磁されたステータコア224
がつくる回転磁界と、そのステータコア224の周囲を
取り巻く多極着磁された駆動マグネット214とにより
発生する。そのマグネット214はハブ211の内周に
固着され、ハブ211とともにロータ210を構成す
る。なお、ハードディスク装置200においては外側の
軸受部221側が固定、内側の主軸(回転軸)212側
が回転となっていたが、図3を援用して説明すれば、ポ
リゴンミラー8を磁気ディスク408にて置き換えるこ
とにより、軸受部15側が回転となり、主軸14側が固
定となるハードディスク装置構成も当然に可能である。
【0074】なお、本発明は上記の実施例に何ら限定さ
れるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲にお
いて種々の態様で実施しうることは言うまでもない。例
えば、動圧発生用流体としては、空気以外の気体を用い
てもよいし、気体に代えて油や水等の液体を用いてもよ
い。
【0075】
【実施例】本発明の効果を確認するために以下の実験を
行なった。まず、図3に示す軸受部15、主軸14及び
スラスト板21,23の各部材を、アルミナ質セラミッ
ク焼結体として以下のように製造した。すなわち、原料
として、レーザー回折式粒度計にて測定した平均粒径が
表1の種々の値となるアルミナ粉末(純度:99.9
%)と、SiO粉末、CaO粉末及びMgO粉末を、
重量比にて3:1:1に配合した焼結助剤粉末とを用意
した。そして、焼結助剤粉末が0.3〜15質量%、残
部アルミナ粉末となるように配合して、水と適量のバイ
ンダーとしてのPVAとを加えて湿式混合した後、スプ
レードライ法にて噴霧乾燥することにより、造粒原料素
地粉末を得た。
【0076】造粒原料素地粉末は、金型プレス法により
各部材形状に成形した後、表1に示す種々の温度にて種
々の時間焼成した。得られた焼結体は、動圧隙間形成面
となる軸受部15の内周面及び両端面、主軸14の外周
、さらにスラスト板21,23の軸受部15に対する
対向面を、それぞれ番手#100〜#200のダイアモ
ンド砥石によりグラインダ研磨した後、番手#6000
のダイアモンド砥粒によりラップ研磨することにより面
仕上げし、さらに溝パターンに予定された以外の領域を
マスキングしてショットブラスト処理することにより、
図2に示す動圧溝を形成した。
【0077】そして、各動圧隙間形成面において、動圧
溝を形成していない研磨面領域を光学顕微鏡観察し、そ
の観察画像上において公知の手法を用いて画像解析する
ことにより、アルミナ結晶粒子の平均寸法(平均粒
径)、及び寸法2〜5μmのアルミナ結晶粒子の面積率
を求めた。さらに、表面空孔に関しては、平均寸法と、
最大寸法、寸法2〜20μmの空孔の面積率をそれぞれ
求めた。また、各部材の密度をアルキメデス法により測
定し、アルミナ及び焼結助剤の配合比から見積もられる
真密度を用いて相対密度の値を算出した。
【0078】次に、上記各部材を図3に示す動圧軸受付
きモータに組み込み、以下の試験を行なった。 回転数30000rpmにて連続回転させたときの、
回転部分となる軸受部15の回転振れ量(回転軸線と直
交する向きにおける外周面測定位置の最大振れ振幅)
を、レーザー干渉式測長器を用いて測定する。そして、
振れ量が0.1μm未満のものを優(◎)、同じく0.
1μm以上0.2μm未満のものを良(○)、0.2μ
m以上0.3μm未満のものを可(△)、0.3μmを
超えるものを不可(×)として評価した。
【0079】停止状態から回転数30000rpmま
で加速し、1分保持した後、停止させるサイクルを10
0000回まで繰り返す。そして、動圧隙間形成面の凝
着摩耗に関しては、サイクル終了まで、動圧隙間形成面
に凝着摩耗の全く見られなかったものを優(◎)、サイ
クル終了時に凝着摩耗が見られたが極めて僅かであった
ものを良(○)、サイクル終了時に多少の凝着摩耗が見
られが問題のなかったものを可(△)、サイクル途中で
大きな凝着摩耗が発生し、試験続行不能となったものを
不可(×)として評価した。また、リンキングについて
は、モータの通電電流値から回転トルクを推定するとと
もに、サイクル終了までリンキングに基づくと見られる
始動時のトルク異常が発生しなかったものを優(◎)、
その「優」評価を受けたものの平均始動時トルクレベル
を基準として、リンキングに起因すると思われる10%
未満の範囲のトルク増加が見られたものを良(○)、同
じく10%以上50%未満の範囲でトルク増加が見られ
たが、回転不能には陥らなかったものを可(△)、50
%以上のトルク増加により頻繁に始動不能に陥ったもの
を不可(×)として評価した。さらに、軸受部材のスラ
スト動圧隙間形成面を利用して、JIS:Z2245に
規定された方法により荷重15Nにてロックウェル硬さ
を測定するとともに、部材から曲げ試験片を切り出し、
JIS:R1601に規定された方法により3点曲げ強
度を測定した。以上の結果を表1及び表2に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】この結果からも明らかな通り、アルミナ質
セラミックのアルミナ含有率を90〜99.5質量%と
することにより、セラミックの曲げ強度及び硬さが向上
し、摩耗に対する耐久性も良好となっていることがわか
る。また、表面空孔の平均寸法を好適な範囲である2〜
20μmに調整することが可能となり、その結果として
回転振れが少なく、またリンキングや焼き付きの発生し
にくい動圧軸受が実現できていることがわかる。さら
に、2〜20μmの寸法範囲の空孔面積率を10〜60
%、望ましくは20〜50%に調整することにより、そ
の効果が一層高められていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック動圧軸受の一構成例を示す
断面模式図。
【図2】ラジアル動圧隙間形成面に形成される動圧溝及
びスラスト動圧隙間形成面に形成される動圧溝の一例を
それぞれ示す説明図。
【図3】本発明のセラミック動圧軸受が使用されたポリ
ゴンスキャナ用モータユニットの一例を示す正面断面
図。
【図4】図3の要部をなすセラミック動圧軸受の正面断
面図及び分解斜視図。
【図5】表面空孔が形成された動圧隙間形成面を示す模
式図及び研磨時の脱粒により表面空孔が形成される様子
を示す説明図。
【図6】空孔(ないし結晶粒子)の寸法の定義を示す説
明図。
【図7】本発明のセラミック動圧軸受が使用されたモー
タユニットの変形例を示す断面模式図。
【図8】さらに別の変形例の要部を示す斜視図。
【図9】本発明のセラミック動圧軸受を用いたポリゴン
スキャナの一例を示す正面断面図。
【図10】本発明のセラミック動圧軸受を用いたハード
ディスク装置の一例を示す正面断面図。
【図11】アルミナ質セラミック焼結体の組織を示す模
式図。
【図12】セラミック結晶粒子の脱落による種々の空孔
形成態様を示す模式図。
【符号の説明】
1,90 ポリゴンスキャナ 3,33,101,251 セラミック動圧軸受 14,39,105,212 主軸 15,35,107,221 軸受部 17,38,91,240 ラジアル動圧隙間 18,92 スラスト動圧隙間 21,23,103,109,222 スラスト板 M 動圧隙間形成面 M1,M2 ラジアル動圧隙間形成面 M3〜M6 スラスト動圧隙間形成面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 余語 哲爾 愛知県名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日 本特殊陶業株式会社内 Fターム(参考) 2C362 BA10 2H045 AA14 AA15 AA24 3J011 BA06 CA02 DA01 DA02 KA02 KA03 LA01 SD04 4G030 AA02 AA03 AA04 AA07 AA08 AA09 AA10 AA11 AA12 AA13 AA14 AA36 BA19 CA04 CA05

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の回転軸線周りに相対回転する第一
    部材と第二部材との間に動圧隙間が形成され、それら第
    一部材と第二部材との相対回転に伴い、前記動圧隙間に
    流体動圧を発生させるよう構成されるとともに、 前記第一部材及び前記第二部材の少なくともいずれかに
    おいて、前記動圧隙間に面する研磨表面(以下、動圧隙
    間形成面という)を含む部分が少なくともアルミナ質セ
    ラミックにて構成されるとともに、その研磨仕上げされ
    た動圧隙間形成面を構成するアルミナ質セラミックにお
    ける、Al換算したAl成分の含有率が、90〜
    99.5質量%であることを特徴とするセラミック動圧
    軸受。
  2. 【請求項2】 前記アルミナ質セラミックは、粒界相を
    構成する酸化物系焼結助剤成分が、酸化物換算にて0.
    5〜10質量%含有されている請求項1記載のセラミッ
    ク動圧軸受。
  3. 【請求項3】 前記酸化物系焼結助剤成分として、L
    i、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、L
    a、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、D
    y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びSiから選ばれ
    る1種又は2種以上を、酸化物換算した値にて合計で
    0.5〜10質量%含有されている請求項2記載のセラ
    ミック動圧軸受。
  4. 【請求項4】 前記アルミナ質セラミックの見かけ密度
    が3.5〜3.9g/cmである請求項1ないし3の
    いずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  5. 【請求項5】 前記アルミナ質セラミックの相対密度が
    90〜98%である請求項1ないし4のいずれかに記載
    のセラミック動圧軸受。
  6. 【請求項6】 前記アルミナ質セラミックの曲げ強度が
    280〜550MPaである請求項1ないし5のいずれ
    かに記載のセラミック動圧軸受。
  7. 【請求項7】 前記アルミナ質セラミックの前記動圧隙
    間形成面にて、荷重15Nにて測定したロックウェル硬
    さが92〜98である請求項1ないし6のいずれかに記
    載のセラミック動圧軸受。
  8. 【請求項8】 前記研磨仕上げされた動圧隙間形成面を
    構成するセラミック結晶粒子の平均粒径が1〜7μmで
    ある請求項1ないし7のいずれかに記載のセラミック動
    圧軸受。
  9. 【請求項9】 前記動圧隙間形成面において、粒径2〜
    5μmのセラミック結晶粒子の面積率が40%以上であ
    ることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載
    のセラミック動圧軸受。
  10. 【請求項10】 前記動圧隙間形成面に存在する表面空
    孔の平均寸法が、セラミック結晶粒子の平均粒径よりも
    大である請求項1ないし9のいずれかに記載のセラミッ
    ク動圧軸受。
  11. 【請求項11】 前記動圧隙間形成面に存在する表面空
    孔の平均寸法が2〜20μmである請求項1ないし10
    のいずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  12. 【請求項12】 前記動圧隙間形成面における、寸法2
    〜20μmの表面空孔の形成面積率が10〜60%であ
    る請求項1ないし11のいずれかに記載のセラミック動
    圧軸受。
  13. 【請求項13】 前記第一部材及び前記第二部材は、そ
    れぞれ全体がセラミックにて構成されており、かつ該セ
    ラミックは、相対密度が90%以上の緻密セラミック焼
    結体であって、焼結体に存在する寸法2〜20μmの空
    孔が主に、前記動圧隙間形成面に前記表面空孔の形で局
    在化した形で存在するものである請求項1ないし12の
    いずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  14. 【請求項14】 前記表面空孔は、前記動圧隙間形成面
    を加工仕上げする際に、セラミック結晶粒子が脱落して
    形成されたものである請求項13記載のセラミック動圧
    軸受。
  15. 【請求項15】 前記第一部材は軸状に形成され、前記
    第二部材に形成された挿通孔に該第一部材が挿通される
    とともに、前記第二部材の挿通孔内面と、これに挿通さ
    れる前記第一部材の外周面とをそれぞれラジアル動圧隙
    間形成面として、それらラジアル動圧隙間形成面の間に
    ラジアル動圧隙間が形成されている請求項1ないし14
    のいずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  16. 【請求項16】 前記第一部材は、前記回転軸線方向に
    おける前記第二部材の少なくとも一方の端面に対向する
    形で配置され、該第二部材の端面と、これに対向する前
    記第一部材の対向面とをそれぞれスラスト動圧隙間形成
    面として、それらスラスト動圧隙間形成面の間にスラス
    ト動圧隙間が形成されている請求項1ないし14のいず
    れかに記載のセラミック動圧軸受。
  17. 【請求項17】 前記動圧隙間形成面に動圧溝が形成さ
    れている請求項1ないし16のいずれかに記載のセラミ
    ック動圧軸受。
  18. 【請求項18】 ハードディスク装置のハードディスク
    回転主軸部分の軸受として使用される請求項1ないし1
    7のいずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  19. 【請求項19】 ポリゴンスキャナのポリゴンミラー回
    転主軸部分の軸受として使用される請求項1ないし17
    のいずれかに記載のセラミック動圧軸受。
  20. 【請求項20】 請求項1ないし19のいずれかに記載
    のセラミック動圧軸受をモータ回転出力部の軸受として
    用いたことを特徴とする軸受付きモータ。
  21. 【請求項21】 ハードディスク装置のハードディスク
    回転駆動部に使用される請求項18記載の軸受付きモー
    タ。
  22. 【請求項22】 ポリゴンスキャナのポリゴンミラー駆
    動部に使用される請求項19記載の軸受付きモータ。
  23. 【請求項23】 最大回転数が8000rpm以上の高
    速回転用モータである請求項20ないし22のいずれか
    に記載の軸受付きモータ。
  24. 【請求項24】 請求項21又は23に記載の軸受付き
    モータと、その軸受付きモータにより回転駆動されるハ
    ードディスクとを備えたことを特徴とするハードディス
    ク装置。
  25. 【請求項25】 請求項22又は23に記載の軸受付き
    モータと、その軸受付きモータにより回転駆動されるポ
    リゴンミラーとを備えたことを特徴とするポリゴンスキ
    ャナ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004292230A (ja) * 2003-03-26 2004-10-21 Kyocera Corp 耐磨耗性アルミナ焼結体およびその製造方法
JP2006128368A (ja) * 2004-10-28 2006-05-18 Tokyo Electron Ltd 基板処理装置、および基板回転装置
JP2008072871A (ja) * 2006-09-15 2008-03-27 Nidec Sankyo Corp コアレスモータ

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