JP4092082B2 - セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ - Google Patents
セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ Download PDFInfo
- Publication number
- JP4092082B2 JP4092082B2 JP2001065477A JP2001065477A JP4092082B2 JP 4092082 B2 JP4092082 B2 JP 4092082B2 JP 2001065477 A JP2001065477 A JP 2001065477A JP 2001065477 A JP2001065477 A JP 2001065477A JP 4092082 B2 JP4092082 B2 JP 4092082B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dynamic pressure
- ceramic
- bearing
- motor
- hard disk
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Sliding-Contact Bearings (AREA)
- Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
- Motor Or Generator Frames (AREA)
- Connection Of Motors, Electrical Generators, Mechanical Devices, And The Like (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気機器の駆動源となるモータ軸の軸受としてはボールベアリングが用いられることが多かったが、コンピュータ周辺機器などの精密機器においては、モータの高速回転化が急速に進んでおり、低回転ムラや異音・振動の少ない優れた軸受性能を得るため、あるいは軸受の長寿命化のために、空気等の流体を媒介とした動圧軸受が用いられている。動圧軸受は、例えば主軸とこれを取り囲むように配置される軸受部とが軸線周りに回転する場合には、主軸外周面と軸受部内周面との隙間に発生する流体動圧により回転軸を支持する。また、主軸又は軸受部のスラスト面を動圧支持するようにした軸受もある。
【0003】
ところで、動圧軸受においては、発生動圧レベルの十分に高い高速回転状態では、動圧隙間を挟んで対向する部材同士の接触は生じないが、回転数の小さい起動時および停止時には十分な動圧が発生しないために、部材同士の接触が生ずる。そして、上記のような動圧軸受の部品構成材料には、ステンレス等の金属もしくはこれらに樹脂等のコーティングを施したものが一般的に用いられてきたが、金属製のものは上記起動時あるいは停止時の部材接触により、摩耗や焼き付きが問題になることがある。これを防止するために、動圧隙間に面する部分に樹脂などの潤滑層をコーティングする試みもなされているが、効果は必ずしも十分ではない。そこで、摩耗や焼き付きに対する耐久性を十分に確保するために、上記主軸ないし軸受部など、動圧隙間を挟んで対向する部材をアルミナ等のセラミックにより構成することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、動圧部品にアルミナ質セラミックを使用した従来の動圧軸受では、加工仕上げ精度の観点において、材料設計上の考慮があまり払われていなかった。例えば、ラジアル方向の動圧は、主軸外周面と軸受部内周面とを動圧隙間形成面として、それらの間に形成されるラジアル動圧隙間に発生する形となるが、本発明者らが検討したところによると、単に動圧隙間形成面の加工精度を確保するのみでは、均一で安定な回転状態を確保するのには必ずしも十分でないことが判明した。
【0005】
本発明の課題は、始動・停止時等において摩耗等が生じにくく、かつ動圧軸受の好適な回転を実現できるセラミック動圧軸受を提供することにある。
【0006】
【課題を解決する手段及び作用・効果】
上記課題を解決するために本発明のセラミック動圧軸受は、円筒状の外周面を有する第一部材と、円筒状の挿通孔を有した第二部材とを有し、第二部材の挿通孔に該第一部材が挿通されるとともに、第二部材の挿通孔内面と、これに挿通される第一部材の外周面とをそれぞれラジアル動圧隙間形成面として、それらラジアル動圧隙間形成面の間にラジアル動圧隙間が形成され、それら第一部材と第二部材との非接触による相対回転に伴い、ラジアル動圧隙間に気体を媒体とする動圧を発生させるよう構成され、第一部材及び第二部材とはいずれも、Al2O3換算したAl成分の含有率が90〜99.5質量%であって、酸化物系焼結助剤成分を酸化物換算にて0.5〜10質量%含有するアルミナ質セラミックにて構成され、さらに、ハードディスクもしくはポリゴンミラーが第二部材の外周面に直接圧入されるか、又は、第二部材の外周面に圧入された支持部材にハードディスクもしくはポリゴンミラーが取り付けられ、かつ第二部材に圧入されたハードディスクもしくはポリゴンミラー又は支持部材を取り外した際に、第二部材の外周面の軸線方向に測定した算術平均粗さRa1及び周方向に測定した算術平均粗さRa2が、いずれも0.2μm以下に調整されていることを特徴とする。
【0007】
本発明者が検討したところによると、ラジアル動圧隙間形成面の局所的な摩耗を防止しつつ、均一で安定な気体を媒体とする動圧発生状態ひいては非接触による回転状態を確保するには、単にラジアル動圧隙間形成面の加工仕上げ精度を一定レベル以上に確保するのみならず、ハードディスクやポリゴンミラー等の取付けがなされる第二部材の外周面の加工精度を一定以上に確保すること、具体的には、第二部材の外周面に圧入されているハードディスクやポリゴンミラーあるいはそれらの支持体等を取り外したときに、該外周面の算術平均粗さが上記範囲のものとなっていることが重要であることが判明した。そして、さらに鋭意検討を重ねた結果、それら第一部材及び第二部材をアルミナ質セラミックにて構成する場合、該セラミックのアルミナ含有率を90〜99.5質量%に調整することが、上記のような加工精度を確保する上で有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
以 上
【0008】
上記算術平均粗さRa1(軸線方向)及びRa2(周方向)の少なくともいずれかが0.2μmより大きくなっていると、第二部材の外周面に対するハードディスクやポリゴンミラーあるいはそれらの支持体等の圧入による取付精度が、偏心等により損なわれ、起動あるいは停止時のラジアル動圧隙間形成面の局所摩耗や、芯ぶれによる振動等が避けがたくなる。なお、算術平均粗さはJIS:B0601に従い測定されたものを採用する。
【0009】
なお、算術平均粗さRa1及びRa2は、いずれも小さければ小さいほどよいが、加工コストの兼ね合いを考慮すれば、いずれも0.01μm程度を下限とすることが妥当である。
【0010】
第二部材を構成するアルミナ質セラミックのアルミナ含有率あるいは焼結助剤成分含有率を上記のような範囲に調整するのは、以下のような理由による。すなわち、焼結助剤成分が過度に増加してアルミナ含有率が不足すると、焼成時に発生する液相量が増加して焼結体の結晶粒成長が過度に進行する。このように、焼結助剤成分の含有率が高く、また、結晶粒成長が進みすぎたセラミック組織は硬さが小さく、砥石や砥粒にて加工仕上げする際の研削抵抗が小さくなる。研磨が不必要に急速進行する傾向があり、研磨面の精度を確保しにくくなる欠点がある。すなわち、研磨面の加工精度を高めるには、セラミックの材質が適度な硬さを有していることが重要である。
【0011】
そこで、セラミックのアルミナ含有率を最低でも90質量%確保すること、あるいは焼結助剤成分の含有率を10質量%以下に制限することにより、上記のような過度の結晶粒成長が生じ難くなり、ひいては、第二部材の外周面の加工精度、すなわち算術平均粗さを前記数値範囲内に容易に確保することができるようになる。その結果、回転時の芯ぶれや起動停止時のラジアル動圧隙間形成面の局所的な摩耗が生じ難くなり、ひいては軸受の回転状態を均一で安定なものとすることができる。
【0012】
他方、焼結助剤成分含有率が減少してアルミナ含有量が過剰になると、焼結時の液相発生量が減少し、結晶粒子の成長が抑制されて平均結晶粒径は相当小さな値となる。その結果、逆にセラミックの研磨や研削に対する抵抗が大きくなりすぎて、加工能率の大幅な低下を招くことにつながる。
【0013】
以上の観点において、アルミナ含有率は、望ましくは92〜98質量%、より望ましくは93〜97質量%とするのがよい。さらに、粒界相を構成する酸化物系焼結助剤成分は、酸化物換算にて望ましくは2〜8質量%、より望ましくは3〜7質量%含有させることができる。
【0014】
酸化物系焼結助剤成分としては、例えばカチオン成分がLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びSiである酸化物を使用することができる。この場合、アルミナ質セラミックには、上記カチオン成分群から選ばれる1種又は2種以上を酸化物換算した値にて、合計で0.5〜10質量%(望ましくは2〜8質量%、より望ましくは3〜7質量%)含有させることができる。
【0015】
これらのうち、Si成分は粒界相の骨格を形成して強度を高めるとともに、液相の流動性を改善する効果を有する。また、アルカリ金属であるLi、Na及びKの3成分は、焼成時に生ずる液相の融点を下げ、液相の流動性を向上させて焼結体の緻密化を促進する効果がある。このうち、Naは安価であり、また、バイヤー法にて製造された一般的なアルミナ原料粉末中では、本来不純物として存在するNaも、焼結助剤として流用できる利点がある。なお、これら3成分は、いずれも組成式M2O(ただし、Mはカチオン金属元素である)にて酸化物換算する。
【0016】
他方、アルカリ土類金属であるMg、Ca、Sr及びBaの4成分も、アルカリ金属に次いで焼成時に生ずる液相の融点を下げる効果が大きい。他方、これらの元素は、粒界相中に取り込まれた際にその強度を向上させる効果を有する。その結果、焼結体全体(ひいては動圧隙間形成面)の強度及び耐摩耗性を向上させることができる。該効果は、Caを用いた場合に特に大きい。これら4成分は、いずれも組成式MO(ただし、Mはカチオン金属元素である)にて酸化物換算する。
【0017】
また、希土類金属であるSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuは、粒界相の結晶化を促進し、その強度を向上させる効果を有する。その結果、焼結体全体ひいては動圧隙間形成面の強度及び耐摩耗性を向上させることができる。該効果は、Ceを用いた場合に特に大きい。これら成分は、Ceのみ組成式MO2により、他は組成式M2O3(ただし、Mはカチオン金属元素である)にて酸化物換算する。
【0018】
次に、アルミナ質セラミックの見かけ密度は、3.5〜3.9g/cm3であることが望ましい。アルミナ質セラミックの密度を比較的高い値である3.5〜3.9g/cm3に調整することにより、動圧隙間発生面を構成するアルミナ質セラミックの強度及び耐摩耗性の絶対値を向上させることができ、ひいては部材間の接触が生じやすい回転の起動・停止時において、動圧隙間形成面の摩耗を効果的に防止することができる。
【0019】
なお、理想的に緻密化したアルミナ質セラミックの密度は最大で4.0g/cm3に到達するが、このように完全に緻密化するまでアルミナ質セラミックを焼結しようとすると、焼結温度をどうしても高温に設定せざるを得なくなり、結晶粒成長が避けがたくなる。このような状態になると、前述の通りラジアル動圧隙間形成面の精度を確保しにくくなる場合がある。しかしながら、アルミナ質セラミックの見かけ密度を3.9g/cm3程度までに留めれば、焼結温度をそれほど高温化する必要はなくなり、結晶粒成長も抑制されるので、第二部材の外周面の算術平均粗さ(加工精度)を前記した数値範囲内のものとする上で一層好都合である。他方、見かけ密度が3.5未満になるとアルミナ質セラミックの強度及び耐摩耗性が損なわれ、起動・停止時の動圧隙間形成面の摩耗が却って生じやすくなる場合がある。アルミナ質セラミックの見かけ密度は、より望ましくは3.6〜3.9g/cm3の範囲にて調整することが望ましい。
【0020】
なお、アルミナ質セラミックの見かけ密度は、緻密化の進行状態のみでなく、添加する焼結助剤の種類や含有量の影響も多少は受ける。そして、セラミックの緻密化レベルと結晶粒成長の度合いとの関係を論ずる場合は、相対密度(すなわち、アルミナ及び焼結助剤の組成比から見積もられる真密度により、見かけ密度を除した値)を尺度として用いることもできる。本発明においては、アルミナ質セラミックの相対密度は90%以上とするのがよく、望ましくは90〜98%、より望ましくは94〜97%とするのがよい。
【0021】
上記のような密度範囲に調整されたアルミナ質セラミックは、その曲げ強度レベルとして、280〜550MPaの比較的高い値が可能となる。また、荷重15Nにて測定したロックウェル硬さは、92〜98程度とすることができる。さらに、破壊靭性値は3〜5MPa・m1/2程度とすることができる。アルミナ質セラミックの強度、硬さあるいは破壊靭性値がこのような範囲のものとなることで、研磨ないし研削といった加工能率を極端に低下させることなく、十分な加工精度を確保することができる。なお、本明細書において曲げ強度は、JIS:R1601(1981)に規定された方法に基づいて、室温にて測定した3点曲げ強度を意味する。また、荷重15Nにて測定したロックウェル硬さは、JIS:Z2245に規定された方法に基づいて、室温にて測定した硬さ値を意味する。さらに、破壊靭性値はJIS:R1607(1990)に規定されたIF法による測定値を意味する。
【0022】
なお、本発明のセラミック動圧軸受は、回転軸線方向における第二部材の少なくとも一方の端面に対向する形で配置されるスラスト板を有し、第二部材の端面と、これに対向するスラスト板の対向面とをそれぞれスラスト動圧隙間形成面として、それらスラスト動圧隙間形成面の間にスラスト動圧隙間が形成されるものとして構成することができる。
【0023】
例えば図1に例示する構造の動圧軸受の場合には、ラジアル方向とは、主軸の回転軸線方向(図の上下方向)と垂直な方向(従って径方向)である。図1では、第一部材である固定された主軸の外周面と、筒状回転体として構成された第二部材である軸受部の内周面とが、ラジアル動圧隙間形成面である。回転軸線方向に長い形態の軸受の場合、ラジアル動圧が十分に発生するか否かは、回転軸線を安定に支持する上で重要である。また、スラスト方向とは、主軸の軸方向、すなわち回転軸線の向き(図の上下方向)である。図1では、軸受部の端面と、軸線方向においてその軸受部の端面と対向するスラスト板の板面とが、スラスト動圧隙間形成面となる。なお、スラスト動圧隙間形成面は、回転軸線方向に対する垂直面より僅かに傾斜していてもよい。後述の通り、回転軸線方向に短い形態の軸受の場合、スラスト動圧が十分に発生するか否かは、回転軸線を安定に支持する上で重要である。なお、図10に示すように、主軸212が回転側となり、筒状の軸受部221が固定側となる軸受251も可能である。なお、以下において、ラジアル動圧隙間(形成面)とスラスト動圧隙間(形成面)とを総称する場合は、単に動圧隙間(形成面)と称する。
【0024】
また、上記の加工精度確保の観点から、本発明に使用するアルミナ質セラミックの結晶粒子の平均粒径は、1〜7μmの範囲に調整することが望ましい。アルミナ質セラミック結晶粒子の平均粒径が7μmよりも大きくなると、研磨加工時に比較的大きなアルミナ結晶粒子が脱落して研磨面を傷つけやすくなり、加工精度低下を招く場合がある。一方、平均粒径を1μm未満とすることは焼成温度をそれほど高くできなくなることを意味し、焼結体密度の低下ひいては強度不足等を招く結果につながる。
【0025】
なお、本明細書において結晶粒子の寸法とは、図11に示すように、SEMや光学顕微鏡等による動圧隙間形成面組織の観察面上において、結晶粒子(あるいは表面空孔)の外形線に対し、それらの内部を横切らない外接平行線を、該外形線との位置関係を変えながら各種引いたときに、その平行線の最小間隔dmin と、最大間隔dmaxとの平均値(すなわち、d=(dmin+dmax)/2)にて表すものとする。
【0026】
また、本発明の動圧軸受は、動圧軸受の軸方向の長さがスラスト動圧隙間形成面の外径よりも長いか、あるいはスラスト動圧隙間が形成されないものとし、回転体の回転時の傾斜がラジアル動圧隙間に発生する動圧により規制されるように構成できる。これは、例えば図7に示すように、回転軸の長い動圧軸受を規定したものであり、回転体である軸受部35が傾斜すると、ラジアル動圧隙間37に発生する圧力により、その傾斜が修正される。他方、動圧軸受の軸方向の長さがスラスト動圧隙間形成面の外径よりも短く、回転体の回転時の傾斜が、主にスラスト動圧隙間に発生する動圧により規制されるように構成することもできる。これは、例えば図3に示すような回転軸が短い動圧軸受を規定したものであり、回転体である軸受部が傾斜すると、スラスト動圧隙間に発生する動圧により、その傾斜が修正される。
【0027】
なお、動圧隙間形成面には動圧溝を形成することができる。例えば、ラジアル動圧隙間形成面となる回転軸外周面に、周知の動圧溝が形成されていることにより、より一層スムーズな回転が実現できる。この動圧溝としては、図2(a)に例示するように、例えば軸受部に挿入される軸外周面(ラジアル動圧隙間形成面)に周方向に所定間隔で複数の動圧溝を形成できる。この実施形態では軸外周面の母線と一定角度をなす形で傾斜した直線状の溝列とされているが、山型(あるいはブーメラン型)の溝パターンを、軸周方向の基準線上に、溝パターンの先端が位置するように、所定の間隔で全周にわたって形成した、いわゆるヘリングボーン形態など、他の公知の形態を採用することもできる。また、図2(b)に例示するように、例えばスラスト板の表面(スラスト動圧隙間形成面)に動圧溝を形成することもできる。この例では、板面周方向において、スラスト板中心位置からの距離が漸減する曲線状の溝部を周方向に所定の間隔で複数形成している。
【0028】
本発明の動圧軸受は、例えばハードディスク装置のハードディスク回転主軸部分、あるいはCD−ROMドライブ、MOドライブあるいはDVDドライブなどのコンピュータ用周辺機器のディスク回転主軸部分、さらにはレーザープリンタやコピー機等に使用されるポリゴンスキャナのポリゴンミラー回転主軸部分の軸受として有効に使用することができる。これらの精密機器における回転駆動部の軸受には、例えば8000rpm以上(さらに高速性の要求される場合には、10000rpm以上ないし30000rpm以上)の高速回転が要求されるため、本発明の適用により、発生する流体動圧レベルを高く安定なものとでき、ひいては振動等を低減する効果を特に有効に引き出すことができる。また、本発明は、上記セラミック動圧軸受をモータ回転出力部の軸受として用いた軸受付きモータを提供する。さらに、上記の軸受付きモータと、その軸受付きモータにより回転駆動されるハードディスクとを備えたハードディスク装置、あるいは、上記の軸受付きモータと、その軸受付きモータにより回転駆動されるポリゴンミラーとを備えたポリゴンスキャナも提供する。
【0029】
なお、アルミナ質セラミックにさらに強靭性を付与するために、ジルコニア質セラミックを配合した複合セラミック材料とすることもできる。このような複合セラミック材料は、最も含有率の高いセラミック成分がアルミナ及びジルコニアの一方であり、二番目に含有率の高いセラミック成分がアルミナ及びジルコニアの他方であるセラミック粉末を用いて、成形・焼成することにより得ることができる。なお、アルミナ質セラミックに対するジルコニア質セラミックの配合量は、5〜60体積%とするのがよい。
【0030】
また、アルミナ質セラミックを基質として、これに、金属カチオン成分がTi、Zr、Nb、Ta及びWの少なくともいずれかである導電性無機化合物相を含有させた複合セラミック材料とすることもできる。このような複合セラミック材料は、基質セラミックの成形用素地粉末に、導電性無機化合物相の形成源となる粉末を配合して、成形・焼成することにより得ることができる。導電性無機化合物相を含有させることにより、セラミック材料に導電性を付与することができ、ひいては該セラミック材料にワイヤーカット等の放電加工を施すことが可能となる。また、導電性の付与により、帯電防止の効果を達成することができる。
【0031】
導電性無機化合物は、Ti、Zr、Nb、Taの少なくともいずれかを金属カチオン成分とする金属窒化物、金属炭化物、金属硼化物、金属炭窒化物、及び炭化タングステンの少なくともいずれかとすることができ、具体的には、窒化チタン、炭化チタン、硼化チタン、炭化タングステン、窒化ジルコニウム、炭窒化チタン及び炭化ニオブ等を例示できる。なお、導電性無機化合物相の含有量は、複合セラミック材料の強度及び破壊靭性値を確保しつつ十分な導電性向上を図るため、20〜60体積%とするのがよい。なお、上記のような複合セラミックを使用する場合、すでに説明したアルミナ含有率あるいは焼結助剤の含有率は、複合セラミック全体における含有率ではなく、アルミナ質セラミックからなる基質中での含有率に読み替えるものとする。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例により説明する。
(実施例1)
図3に示すセラミック動圧軸受3は、(以下単に動圧軸受とも記す)は、例えばポリゴンスキャナ1において、ポリゴンミラー8を回転駆動するための動圧軸受付きモータに使用されるものであり、空気を動圧発生用流体として使用するものである。この動圧軸受付きモータ2では、円筒状の軸受部15(回転体)を回転させるために、軸受部15の外周面に一体化された支持体7に永久磁石9が取り付けられ、基台11にはこの永久磁石9と対向するコイル13が取り付けられている。なお、永久磁石9とコイル13との配置関係はこれを入れ替えてもよい。
【0033】
セラミック動圧軸受3は、筒状の軸受部15(例えば、内径15mm、外径25mm、軸方向長さ8mm)の挿通孔15aに、筒状の主軸(例えば、内径5mm、外径15mm、軸方向長さ8mm)14が挿通されている。図4に示すように、挿通孔15aの内周面M2と、主軸14の外周面M1とはいずれも円筒状のラジアル動圧隙間形成面であり、それらの間には、回転軸線Оに関するラジアル方向の動圧を発生させるために、空気にて満たされたラジアル動圧隙間17が形成されている。なお、ここでは主軸14が請求項でいう第一部材であり、軸受部15が同じく第二部材である。
【0034】
一方、主軸14の両端面には、円板状のスラスト板(例えば、内径5mm、外径25mm、厚さ2mm)21,23が同軸的に一体化されており、それらスラスト板21,23の内側の板面M4,M6が、回転体である軸受部15の両端面M3,M5と対向している。本実施例では、スラスト板21,23は、図3に示すように、各内孔21b,23bの内縁部にて主軸14の端面に重ねられ、主軸14の中心孔14bに挿通されたボルト25を基台11にねじ込むことにより押圧固定されているが、固定形態はこれに限られるものではない。
【0035】
そして、図4に示すように、スラスト板21,23の板面M4,M6と、軸受部15の両端面M3,M5とが各々スラスト動圧隙間形成面となり、それらの間には、回転軸線Оに関するスラスト方向の動圧を発生させるために、空気にて満たされたスラスト動圧隙間18,18が形成されている。スラスト動圧隙間18,18の各大きさは例えば約6μm程度である。また、スラスト動圧隙間18形成の観点から見た場合、スラスト板21,23が第一部材であり、軸受部15が第二部材である。
【0036】
主軸14、軸受部15及びスラスト板21,23は、それぞれ全体がアルミナ質セラミックにて構成されており、そのアルミナ含有率は90〜99.5質量%、望ましくは92〜98質量%であり、残部が酸化物系焼結助剤成分と不可避不純物である。
【0037】
支持体7(及びポリゴンミラー8)は金属製であり、中心挿通孔7aにおいて軸受部15の外周面に圧入されている。そして、支持体7を取り外したときの、軸受部(第二部材)15の外周面15bは、中心軸線Oの向きに測定した算術平均粗さRa1及び周方向に測定した算術平均粗さRa2がいずれも0.2μm以下である。
【0038】
例えば、第二部材(軸受部15)の外周面の軸線方向に測定した算術平均粗さRa1が0.2μmより大きくなっていると、図5(a)に誇張して示すように、該外周面にハードディスク、ポリゴンミラーもしくはそれらの支持体(以下、これらを総称する場合に、被圧入体ともいう)を圧入した際に、該被圧入体の軸線O2が第二部材の軸線O1に対して傾斜しやすくなり、芯ぶれの原因となりうる。また、該被圧入体の挿通孔の両開口縁が、傾斜方向における片側に偏った形にて、第二部材の外周面に押し付けられるので該位置にて応力集中し、第二部材にクラックC等が発生しやすくなることもありうる(特に高速回転時)。しかしながら、図5(b)に示すように、算術平均粗さRa1を0.2μm以下に留めることで、該被圧入体の軸線O2の傾斜が生じ難くなり、上記不具合を解消することができる。
【0039】
他方、第二部材(軸受部15)の外周面の周方向に測定した算術平均粗さRa2が0.2μmより大きくなっていると、図6(a)に誇張して示すように、該外周面に被圧入体を圧入した際に、当該外周面の各位置における半径寸法が不均一となるので、該被圧入体の軸線O2が第二部材の軸線O1に対して半径方向に偏心しやすくなり、芯ぶれの原因となりうる。しかしながら、図6(b)に示すように、算術平均粗さRa2を0.2μm以下に留めることで、該被圧入体の、軸線O2の第二部材の軸線O1に対する偏心が生じ難くなり、上記不具合を解消することができる。
【0040】
各部材を構成するアルミナ質セラミックの見かけ密度は3.5〜3.9g/cm3、望ましくは3.6〜3.8g/cm3であり、相対密度は90〜98%、望ましくは94〜97%である。さらに、セラミック結晶粒子の平均粒径は1〜7μm、望ましくは2〜5μmである。
【0041】
ラジアル動圧隙間形成面M1,M2の少なくとも一方(例えば主軸14側のM1)には、発生動圧レベルを高めるために、図2(a)に示すような周知の動圧溝を形成することができる。また、スラスト動圧隙間形成面M3〜M6の少なくともいずれか(例えばスラスト板21,23側のM4,M6)にも、図2(b)に示すような周知の動圧溝を形成することができる。
【0042】
以下、上述したセラミック動圧軸受3の製造方法について説明する。
各セラミック部材すなわち、主軸14、軸受部15、及びスラスト板21,23は、公知の焼結法により製造できる。すなわち、平均粒径1〜5μmのアルミナ原料粉末に対し、焼結助剤粉末としてMgO,CaO,CeO2,SiO2,Na2O等の酸化物粉末を配合して成形用素地粉末とし、これを金型成形あるいは冷間静水圧プレス等の公知の成形法により対応する形状にプレス成形する。その成形体を温度1400〜1700℃にて焼結することにより焼結体を得る。
【0043】
この焼結体には、動圧隙間形成面の予定面を含む必要な面に研磨加工が施され、所定の寸法に仕上げられる。具体的には、軸受部15の挿通孔15aの内周面及び両端面、主軸14の外周面、及び両スラスト板21,23の軸受部15端面への対向面に、例えば番手#100〜#200のダイアモンド砥石により、周速1000〜1200m/sの高速研磨を施し、さらに仕上げのために、番手#4000〜#6000のダイアモンド砥粒によりバフ研磨を行なう。各部材を構成するアルミナ質セラミックの材質として、アルミナ含有率が90〜99.5質量%、望ましくは92〜98質量%のものを使用することで、軸受部15の外周面15bの算術平均粗さを前記の範囲のものとする上で好都合となる。
【0044】
加工仕上げが終了すれば、各動圧隙間形成面Mに前述の動圧溝がサンドブラストやエッチングなどにより刻設され、最終的な主軸14、軸受部15あるいはスラスト板21,23が得られる。そして、図3に示すように、支持体7、永久磁石9及びコイル13を組み付け、さらに、ボルト25を用いて主軸14、軸受部15及びスラスト板21,23を組み立てることにより、動圧軸受付きモータが得られる。また、支持体7にポリゴンミラー8を取り付ければ、ポリゴンスキャナ1の組立てが完了する。
【0045】
ポリゴンスキャナ1は以下のように動作する。すなわち、動圧軸受付きモータ2は交流誘導モータとして構成され、コイル13への通電によりにポリゴンミラー8が主軸14を固定軸として、軸受部15及び支持体7とともに一体的に回転駆動される。その最大回転数は8000rpm以上の高速回転であり、より大きなスキャン速度が要求される場合には、最大回転数にて10000rpm以上、さらには30000rpm以上(例えば50000rpm程度)にも達する場合がある。従って、コイル13のターン数や励磁用の永久磁石9が発生する外部磁界の値、さらには定格駆動電圧等が、ポリゴンミラー8の回転負荷を考慮して上記最大回転数が実現されるように適宜設定される。ここで、主軸14と軸受部15との間のラジアル動圧隙間17には回転軸線Оに関するラジアル動圧が、スラスト板21,23と軸受部15との間のスラスト動圧隙間18には同じくスラスト動圧が発生し、ラジアル方向及びスラスト方向の双方において、相対回転する部材間の非接触状態が維持された状態でポリゴンミラー8の回転軸線が支持される。
【0046】
次に、図7は、ポリゴンスキャナに使用するモータの別例を示すものである(ポリゴンミラーは図示を省略している)。このモータ31も、図3と類似の構成の、本発明のセラミック動圧軸受33を含んで構成される。セラミック動圧軸受33は、円筒状の軸受部35(例えば、内径13mm強、外径25mm、軸方向長さ5mm)と、その挿通孔37にて軸受部35の軸方向に嵌挿された主軸39(直径13mm弱、長さ8mm)とを有し、主軸39は固定されて回転せず、その周囲の軸受部35側が回転する構成となっている。軸受部35の内周面及び主軸39の外周面をそれぞれラジアル動圧隙間形成面M2,M1として、それらの間にはラジアル動圧隙間38が形成される。なお、図7のセラミック動圧軸受33では、軸受部35及び主軸39の軸線方向寸法が図3のセラミック動圧軸受3よりも大きく、回転軸線Оの支持力としてはラジアル動圧が主体的となることから、スラスト板が省略された構成となっている。
【0047】
なお、図3のセラミック動圧軸受3と同様に、軸受部35側を回転させるために、軸受部35の外周に一体化された環状の支持体41に永久磁石43が配置され、この永久磁石43と対向するコイル47が基台45上に取り付けられている。さらに、軸受部35及び主軸39の少なくとも一方の動圧隙間形成面M、例えば主軸39の外側の動圧隙間形成面(外側ラジアル動圧隙間形成面)M1には、前記図2(a)に示すような動圧溝が形成されている。そして、支持体41を取り外したときの、軸受部35の外周面35bの算術平均粗さが、図3と同様の範囲内のもとされている。
【0048】
図9は、ポリゴンスキャナのさらに具体的な構成例を示すものである。ポリゴンスキャナ90において基台100上には、本発明のセラミック動圧軸受101を支持固定するための芯軸102の一端を垂直に固定してある。この芯軸102にはセラミック製の下スラスト板103を固定して設けてある。芯軸102にはセラミックス製の主軸105を貫通して固定してある。さらに、セラミック製の軸受部107は、主軸105の円筒外周面をなすラジアル動圧隙間形成面106と、軸受部107の内周面をなすラジアル動圧隙間形成面108との間にラジアル動圧隙間91を有していて、回転自在に設けてある。さらに、セラミック製の上スラスト板109は、芯軸102に貫通されて固定してある。また、軸受部107の上部と下部に形成したスラスト動圧隙間形成面110,111と、下スラスト板103のスラスト動圧隙間形成面112、及び上スラスト板109のスラスト動圧隙間形成面113とのそれぞれの間にスラスト動圧隙間92,92が形成される。各セラミック部材の材質は、ここでもアルミナ系セラミックであり、組織的あるいは組成的には図3及び図7のセラミック動圧軸受3ないし33と同様の構成である。
【0049】
軸受部107の外周面107bには、別体で形成された支持部114を固定し、さらに、多数の反射面115が形成されたポリゴンミラー116を固定部材117で支持部114に固定する(回転体と支持部114は一体でもよい)。芯軸102の他端は保持座板118とボルト119で固定してある。また、下スラスト板103のスラスト動圧隙間形成面112に、図2(b)に示すものと同様の動圧溝121を形成する。さらに、図示はしていないが、ラジアル動圧隙間形成面106をなす、主軸105の外周面(以下、外周面106とも記す。)にも図2(a)に示すものと同様の動圧溝を形成する。
【0050】
そして基台100上には、三相ブラシレスモータ133の構成として、絶縁部材123を介して巻き線129を設け、軸受部107の支持部114の下部には回転方向に対して巻き線129に対向したマグネット125が設けられる。巻き線129に通電することで、軸受部107を高速度で誘導回転させる上記ポリゴンミラー116の駆動モータとして機能する。該三相ブラシレスモータ133の回転により、ラジアル動圧隙間91に動圧が発生し、円滑な高速度回転が可能となる。
【0051】
軸受部107が停止しているときは、該軸受部107の対向面110と下スラスト板103のスラスト動圧隙間形成面112とが接触している。そして、軸受部107が主軸105を中心に回転を開始すると、スラスト動圧隙間92にスラスト動圧が発生して接触状態が解除され、高速回転を可能とする。
【0052】
そして、固定部材117及び支持部114は、ポリゴンミラー116を支持しつつ、軸受部107を半径方向に締め付けているが、これらを取り外したときの、軸受部107の外周面107bの算術平均粗さが、図3と同様の範囲内のもとされている。
【0053】
図10は、本発明をハードディスク装置に適用した例を示すものである。このハードディスク装置200は、ハブ211の外周に磁気ディスク209a、209bが固定され、中央にはモータ回転軸212が固設されている。ハブ211は、これに固定されたディスク209a,209bと共に回転する。モータ回転軸212は、アルミナ質セラミックからなる固定軸受部221によってラジアル方向に支承され、またアルミナ質セラミックからなるスラスト板222でスラスト方向に支承されている。
【0054】
上記モータ回転軸212、固定軸受部221及びスラスト板222はセラミック材料からなるため、そのモータ回転軸212及び固定軸受部221は高速で回転するディスク209a,209bの負荷及び高速回転に耐えるだけの機械剛性を持つ。
【0055】
次に、上記モータ回転軸212と固定軸受部221との間、モータ回転軸212とスラスト板222との間には空気が充填され、モータ回転軸212と固定軸受部221との間には周方向にラジアル動圧隙間240が形成されており、固定軸受部221の内周面217には図示しない動圧溝が形成されている。モータ回転軸212は、その回転に伴い、ラジアル動圧隙間240にラジアル動圧が発生して固定軸受部221に対し非接触で回転する。ラジアル動圧隙間形成面をなすモータ回転軸212の外周面及び固定軸受部221の内周面とは、図3及び図7のセラミック動圧軸受3ないし33と同様に構成されている(すなわち、本発明のセラミック動圧軸受の構成を有している)。なお、モータ回転軸212の軸端212aは球面ピボット形状になっており、スラスト方向の力をスラスト板222で支えている。
【0056】
ハードディスク装置200においては、ステータコア224はブラケット223に固定されている。そのステータコア224にはステータコイル225が巻回されている。図9のポリゴンスキャナ90と同様に、モータの回転駆動力は、そのステータコイル225に電流を流すことにより励磁されたステータコア224がつくる回転磁界と、そのステータコア224の周囲を取り巻く多極着磁された駆動マグネット214とにより発生する。そのマグネット214はハブ211の内周に固着され、ハブ211とともにロータ210を構成する。
【0057】
また、ブラケット223は、挿通孔223aにおいて軸受部221の外周面に圧入されているが、これを取り外した状態では、軸受部221の外周面232の算術平均粗さが、図3と同様の範囲内のもとされている。
【0058】
なお、ハードディスク装置200においては外側の軸受部221側が固定、内側の主軸(回転軸)212側が回転となっていたが、図3を援用して説明すれば、ポリゴンミラー8を磁気ディスク408にて置き換えることにより、軸受部15側が回転となり、主軸14側が固定となるハードディスク装置構成も当然に可能である。
【0059】
なお、本発明は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることは言うまでもない。例えば、動圧発生用流体としては、空気以外の気体を用いてもよいし、気体に代えて油や水等の液体を用いてもよい。
【0060】
【実施例】
本発明の効果を確認するために以下の実験を行なった。
まず、図3に示す軸受部15、主軸14及びスラスト板21,23の各部材を、アルミナ質セラミック焼結体として以下のように製造した。すなわち、原料として、レーザー回折式粒度計にて測定した平均粒径が1.8μmのアルミナ粉末(純度:99.9%)と、CaO粉末(平均粒径:4μm)、MgO粉末(平均粒径:4μm)及びSiO2粉末(平均粒径:4μm)を、重量比にて3:1:1に配合した焼結助剤粉末とを用意した。そして、焼結助剤粉末が0.3〜15質量%、残部アルミナ粉末となるように配合して、水と適量のバインダーとしてのPVAとを加えて湿式混合した後、スプレードライ法にて噴霧乾燥することにより、造粒原料素地粉末を得た。
【0061】
造粒原料素地粉末は、金型プレス法により各部材形状に成形した後、1400〜1700℃の温度にて焼成した。得られた焼結体は、動圧隙間形成面となる軸受部15の挿通孔15aの内周面及び両端面、主軸14の外周面、さらにスラスト板21,23の軸受部15の端面に対する対向面に、番手#100〜200のダイアモンド砥石により、周速1000m/分の高速研磨を施し、さらに仕上げのために、番手#6000のダイアモンド砥粒によりバフ研磨を行なった。他方、軸受部15の外周面については、番手#2000〜#6000の種々のダイアモンド砥粒によりバフ研磨を行なった。次いで、各部材の溝パターンに予定された以外の領域をマスキングしてショットブラスト処理することにより、図2に示す動圧溝を形成した。
【0062】
そして、各動圧隙間形成面において、動圧溝を形成していない研磨面領域を光学顕微鏡観察し、その観察画像上において公知の手法を用いて画像解析することにより、アルミナ結晶粒子の平均寸法(平均粒径)を求めた。また、各部材の見かけ密度をアルキメデス法により測定し、アルミナ及び焼結助剤の配合比から見積もられる真密度を用いて相対密度の値を算出した。
【0063】
次に、上記各部材を図3に示す動圧軸受付きモータに組み込み、以下の試験を行なった。
▲1▼回転数30000rpmにて連続回転させたときの、回転部分となる軸受部15の回転振れ量(回転軸線と直交する向きにおける外周面測定位置の最大振れ振幅)を、レーザー干渉式測長器を用いて測定する。そして、振れ量が0.1μm未満のものを優(◎)、同じく0.1μm以上0.2μm未満のものを良(○)、0.2μm以上0.3μm未満のものを可(△)、0.3μmを超えるものを不可(×)として評価した。
【0064】
▲2▼停止状態から回転数30000rpmまで加速し、1分保持した後、停止させるサイクルを100000回まで繰り返す。そして、動圧隙間形成面の凝着摩耗に関しては、サイクル終了まで、動圧隙間形成面に凝着摩耗の全く見られなかったものを優(◎)、サイクル終了時に凝着摩耗が見られたが極めて僅かであったものを良(○)、サイクル終了時に多少の凝着摩耗が見られたが問題のなかったものを可(△)、サイクル途中で大きな凝着摩耗が発生し、試験続行不能となったものを不可(×)として評価した。さらに、軸受部15のスラスト動圧隙間形成面を利用して、JIS:Z2245に規定された方法により荷重15Nにてロックウェル硬さを測定した。
【0065】
そして、その後、軸受部15に圧入された支持体7を取り外し、公知の形状プロファイル測定機により、軸受部15の外周面15bの、中心軸線方向及び周方向の各算術平均粗さRa1及びRa2をJIS:B0601に従い測定した。以上の結果を表1及び表2に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
この結果からも明らかな通り、アルミナ質セラミックのアルミナ含有率を90〜99.5質量%とすることにより、上記各算術平均粗さRa1及びRa2をいずれも0.2μm以下の範囲に収めることができ、それにより、回転振れや凝着摩耗も生じにくくなることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセラミック動圧軸受の一構成例を示す断面模式図。
【図2】ラジアル動圧隙間形成面に形成される動圧溝及びスラスト動圧隙間形成面に形成される動圧溝の一例をそれぞれ示す説明図。
【図3】本発明のセラミック動圧軸受が使用されたポリゴンスキャナ用モータユニットの一例を示す正面断面図。
【図4】図3の要部をなすセラミック動圧軸受の正面断面図及び分解斜視図。
【図5】第二部材(軸受部)の外周面の、軸線方向の算術平均粗さ調整によりもたらされる効果を説明する図。
【図6】同じく、周方向の算術平均粗さ調整によりもたらされる効果を説明する図。
【図7】本発明のセラミック動圧軸受が使用されたモータユニットの変形例を示す断面模式図。
【図8】さらに別の変形例の要部を示す斜視図。
【図9】本発明のセラミック動圧軸受を用いたポリゴンスキャナの一例を示す正面断面図。
【図10】本発明のセラミック動圧軸受を用いたハードディスク装置の一例を示す正面断面図。
【図11】結晶粒子の寸法の定義を示す説明図。
【符号の説明】
1,90 ポリゴンスキャナ
3,33,101,251 セラミック動圧軸受
14,39,105,212 主軸
15,35,107,221 軸受部
15a 挿通孔
17,38,91,240 ラジアル動圧隙間
18,92 スラスト動圧隙間
21,23,103,109,222 スラスト板
M 動圧隙間形成面
M1,M2 ラジアル動圧隙間形成面
M3〜M6 スラスト動圧隙間形成面
Claims (14)
- 円筒状の外周面を有する第一部材と、円筒状の挿通孔を有した第二部材とを有し、前記第二部材の前記挿通孔に該第一部材が挿通されるとともに、前記第二部材の挿通孔内周面と、これに挿通される前記第一部材の外周面とをそれぞれラジアル動圧隙間形成面として、それらラジアル動圧隙間形成面の間にラジアル動圧隙間が形成され、それら第一部材と第二部材との非接触による相対回転に伴い、前記ラジアル動圧隙間に気体を媒体とする動圧を発生させるよう構成され、前記第一部材及び前記第二部材とはいずれも、Al2O3換算したAl成分の含有率が90〜99.5質量%であって、酸化物系焼結助剤成分を酸化物換算にて0.5〜10質量%含有するアルミナ質セラミックにて構成され、さらに、ハードディスクもしくはポリゴンミラーが前記第二部材の外周面に直接圧入されるか、又は、前記第二部材の外周面に圧入された支持部材にハードディスクもしくはポリゴンミラーが取り付けられ、かつ前記第二部材に圧入された前記ハードディスクもしくはポリゴンスキャナ又は前記支持部材を取り外した際に、前記第二部材の外周面の軸線方向に測定した算術平均粗さRa1及び周方向に測定した算術平均粗さRa2がいずれも0.2μm以下に調整されていることを特徴とするセラミック動圧軸受。
- 前記アルミナ質セラミックの見かけ密度が3.5〜3.9g/cm3である請求項1記載のセラミック動圧軸受。
- 前記アルミナ質セラミックの相対密度が90%以上である請求項1又は2に記載のセラミック動圧軸受。
- 前記アルミナ質セラミック結晶粒子の平均粒径が1〜7μmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受。
- 回転軸線方向における前記第二部材の少なくとも一方の端面に対向する形で配置されるスラスト板を有し、前記第二部材の端面と、これに対向する前記スラスト板の対向面とをそれぞれスラスト動圧隙間形成面として、それらスラスト動圧隙間形成面の間にスラスト動圧隙間が形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受。
- 前記ラジアル動圧隙間形成面及び前記スラスト動圧形成面の少なくともいずれかに動圧溝が形成されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受。
- ハードディスク装置のハードディスク回転主軸部分の軸受として使用される請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受。
- ポリゴンスキャナのポリゴンミラー回転主軸部分の軸受として使用される請求項1ないし6のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のセラミック動圧軸受をモータ回転出力部の軸受として用いたことを特徴とする軸受付きモータ。
- ハードディスク装置のハードディスク回転駆動部に使用される請求項9記載の軸受付きモータ。
- ポリゴンスキャナのポリゴンミラー駆動部に使用される請求項9記載の軸受付きモータ。
- 最大回転数が8000rpm以上の高速回転用モータである請求項9ないし11のいずれか1項に記載の軸受付きモータ。
- 請求項10又は12に記載の軸受付きモータと、その軸受付きモータにより回転駆動されるハードディスクとを備えたことを特徴とするハードディスク装置。
- 請求項11又は12に記載の軸受付きモータと、そのベアリング付きモータにより回転駆動されるポリゴンミラーとを備えたことを特徴とするポリゴンスキャナ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001065477A JP4092082B2 (ja) | 2001-03-08 | 2001-03-08 | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001065477A JP4092082B2 (ja) | 2001-03-08 | 2001-03-08 | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002266866A JP2002266866A (ja) | 2002-09-18 |
JP4092082B2 true JP4092082B2 (ja) | 2008-05-28 |
Family
ID=18924115
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001065477A Expired - Fee Related JP4092082B2 (ja) | 2001-03-08 | 2001-03-08 | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4092082B2 (ja) |
-
2001
- 2001-03-08 JP JP2001065477A patent/JP4092082B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2002266866A (ja) | 2002-09-18 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6619847B1 (en) | Ceramic dynamic-pressure bearing, motor having bearing, hard disk drive, and polygon scanner | |
US6619848B2 (en) | Ceramic dynamic pressure bearing, motor with bearing, hard disc apparatus and polygon scanner | |
JP2002266865A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JPH05296248A (ja) | 摺動部材 | |
JP4092082B2 (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
US6702466B2 (en) | Ceramic dynamic-pressure bearing, motor having bearing, hard disk drive, polygon scanner, and method for manufacturing ceramic dynamic-pressure bearing | |
JP2002295477A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
US7215508B2 (en) | Ceramic dynamic-pressure bearing and hard disk drive using the same | |
US6508591B2 (en) | Conductive ceramic bearing ball, ball bearing, motor having bearing, hard disk drive, and polygon scanner | |
JP2002235746A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2973651B2 (ja) | 複合軸受構造 | |
JP2002266867A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2002295453A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2005249209A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2002266864A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2002235745A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP4693677B2 (ja) | 動圧軸受およびこれを用いたモータ | |
JP2002235743A (ja) | セラミック動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP2002106570A (ja) | 転動体およびこれを用いたベアリング | |
JP2002295460A (ja) | 動圧軸受、軸受付きモータ、ハードディスク装置及びポリゴンスキャナ | |
JP3285269B2 (ja) | 高速回転体 | |
JP2005337508A (ja) | セラミックス製動圧軸受 | |
JPH0752418Y2 (ja) | 動圧軸受構造 | |
JP4530781B2 (ja) | 摺動部材とこれを用いた動圧軸受及びモータ | |
JPH03157513A (ja) | 軸受け構造 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050401 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050830 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051031 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20060522 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080303 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 4092082 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110307 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110307 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110307 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120307 Year of fee payment: 4 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120307 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120307 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130307 Year of fee payment: 5 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130307 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140307 Year of fee payment: 6 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |