JPH05296248A - 摺動部材 - Google Patents

摺動部材

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Publication number
JPH05296248A
JPH05296248A JP10090292A JP10090292A JPH05296248A JP H05296248 A JPH05296248 A JP H05296248A JP 10090292 A JP10090292 A JP 10090292A JP 10090292 A JP10090292 A JP 10090292A JP H05296248 A JPH05296248 A JP H05296248A
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JP
Japan
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sliding
sliding member
film
thin film
ceramics
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Pending
Application number
JP10090292A
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English (en)
Inventor
Tetsuya Katayama
哲也 片山
Osamu Komura
修 小村
Akira Yamakawa
晃 山川
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Sumitomo Electric Industries Ltd
Original Assignee
Sumitomo Electric Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高速摺動時においても、摩擦特性、耐久性の
良好な摺動部材を得る。 【構成】 複合軸受け体50は、ステータ21とロータ
22から構成されている。このステータ21とロータ2
2は、所定のクリアランスを介して設置されている。ま
た、ロータ22はステータ21に対して回転可能であ
る。このステータ21は、Si3 4 系セラミックスの
基材と、その基材の表面に形成されたDLC(ダイヤモ
ンドライクカーボン)膜から構成されている。このDL
C膜が形成される基材の表面粗さの最大値Rmax は0.
8μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は摺動部材に関し、薄膜に
よって摺動面が構成される摺動部材に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】摺動
運動をする軸受は、NIKKEI MECHANICAL 1991.4.1 p94に
紹介されている。これによると、軸受は転がり運動と滑
り運動をする軸受けに分類できる。前者の運動をする転
がり軸受けの応用例としてはボールベアリングがある。
このボールベアリングは、一般的に複雑な構造となる。
後者の滑り運動をする軸受けには、接触型(メタル・ブ
ッシュ軸受け、含油軸受け)と無接触型(油軸受け、空
気軸受け、磁気軸受け)の軸受けがある。後者の軸受け
は、1対の平坦な表面で構成されるがごとく非常に簡単
な構造である。また、非常に簡単な構造であるにもかか
わらず、滑り軸受は転がり軸受と同等の機能を有すると
いう特徴を持つ。
【0003】ところで各種精密機器の分野では、年々、
小型かつ細密化の要求が増している。これに応じて、各
機器に用いられる摺動機構自体の単純化が検討されてい
る。また、摺動機構部分に採用する高性能な材料の開発
なども検討されている。中でも、レーザプリンタ、ファ
クシミリなどの光学関連機械分野においては、高機能化
が急務である。このため、近年、光学関連機械分野では
ますます厳しい摺動条件でも耐え得る摺動部材の開発が
要求されている。たとえば、レーザプリンタでは印字速
度の高速化に伴い、ポリゴンミラー(多面鏡)の回転駆
動部分には、回転速度20000r.p.m.以上での
安定動作の要求が出ている。このような高速化用途の場
合、従来より使用されている金属製ボールベアリングを
用いると、回転速度16000r.p.m.でも焼き付
き現象が生じ、耐久性に問題があった。そこで、機構
面、製作面からも有利なスラスト軸受けが注目されてい
る。しかし、この場合でも摺動部材として金属を無潤滑
下で使用すると、数1000r.p.m.でも低負荷荷
重で焼き付き現象が発生してしまう。ゆえに、摺動部材
として耐摩耗性に優れたセラミックスが注目されてい
る。このセラミックスとして、Al2 3 、ZrO2
SiCおよびSi3 4 などの開発が進められている。
【0004】また、摺動部材の表面に表面皮膜を形成す
る開発も、近年、進められている。この表面皮膜とし
て、ニューセラミックス(1991)No.9,p49
に示されているようにダイヤモンド膜が知られている。
このダイヤモンド膜は、その表面性状を適正に制御する
ことにより非常に優れた耐摩耗性、低摩擦係数を示す表
面皮膜である。また、表面皮膜として、表面科学 第1
2巻 第4号(1991)p.227に示されているダ
イヤモンドライクカーボン(以下、DLCとする)も知
られている。このDLCは、sp3 結合を比較的多く含
有する非晶質炭素であり、多くは水素を含んでいる場合
が多くa−C:Hまたはi−カーボンとも記載される。
さらに、水分を含む雰囲気下、真空下、乾燥雰囲気下、
高温度雰囲気下での摩擦特性の劣化を改善すべくSiを
含有したDLCが注目されている。このDLCは、a−
1-x ・Six :Hと記載される。DLCは、理想的な
ダイヤモンドには及ばないものの、優れた耐摩耗性なら
びに低摩擦係数を有する長寿命の固体潤滑皮膜である。
【0005】上記のように、従来、表面皮膜により摺動
面が構成される摺動部材が得られていた。しかし、従来
の摺動部材においては、研削のような機械加工を施した
部材の表面に表面皮膜が形成されていた。このような従
来の摺動部材では、高速摺動時において優れた摩擦特
性、耐久性を得難いという問題点があった。
【0006】本発明は、上記のような問題点を解決する
ためになされたもので、高速摺動時においても、優れた
摩擦特性、耐久性を示す摺動部材を提供することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に従った摺動部材
は、セラミックスを含む部材の表面を覆うように形成さ
れた薄膜によって摺動面を構成する摺動部材であって、
部材の表面の凹凸の最大高低差Rmax が0.8μm以下
である。
【0008】本発明の好ましい第1の局面によれば、薄
膜が非晶質炭素膜である。本発明の好ましい第2の局面
によれば、部材に含まれるセラミックスがSi系セラミ
ックスである。
【0009】本発明の好ましい第3の局面によれば、部
材に含まれるセラミックスがSi34 系セラミックス
である。
【0010】本発明の好ましい第4の局面によれば、セ
ラミックスを含む部材が大気中で加熱処理を施されてい
る。
【0011】本発明の好ましい第5の局面によれば、加
熱処理は800℃以上1400℃以下である。
【0012】本発明の好ましい第6の局面によれば、薄
膜で覆われる摺動面の表面の凹凸の最大高低差Rmax
0.3μm以下である。
【0013】本発明の好ましい第7の局面によれば、摺
動部材が滑り軸受け体として使用されている。
【0014】本発明の好ましい第8の局面によれば、摺
動部材が回転多面鏡の滑り軸受け体として使用されてい
る。
【0015】
【作用】本発明者らは、種々検討した結果、薄膜で覆わ
れる部材の表面の凹凸の最大高低差Rmax が0.8μm
以下であることが高速摺動における摺動特性の向上に有
効であることを見出した。
【0016】本発明の摺動部材が非常に優れた摩擦特性
ならびに耐久性を示す理由は、以下のように考えられ
る。
【0017】従来の摺動部材においては、研削のような
機械加工を施された部材の表面に薄膜が形成されてい
た。機械加工を施した部材では、表面の凹凸の最大高低
差Rma x が3.0μm程度である。このRmax の比較的
大きい部材の表面に薄膜を形成する際、薄膜が薄いと部
分的に部材表面が皮膜から露出する。この部材の表面に
は、機械加工によってミクロンあるいはサブミクロンオ
ーダーの微細なクラックなどの表面欠陥が導入されてい
る。このため、摺動の際の外乱等によって、露出した部
材表面が負荷を受けて、部材表面の剥れが生じやすい。
また、部材表面を完全に覆うべく薄膜を厚く形成する
と、薄膜内部にクラックなどの欠陥が導入されやすい。
このため、摺動の際の外乱などによって、薄膜が剥離し
やすく、薄膜の密着性が低かった。
【0018】これに対して、本発明の摺動部材では部材
表面のRmax が0.8μm以下である。このため、薄い
膜厚で部材を露出させることなく部材表面全体を覆うこ
とができる。部材表面が露出しないため、部材表面が外
乱により直接負荷を受けることはない。よって、部材表
面の剥れは生じ難い。また、薄膜は薄いため、その内部
に欠陥は導入され難く、薄膜の剥離も生じ難い。すなわ
ち、密着性が向上する。このように、本発明の摺動部材
では、部材表面の剥れや薄膜の剥離を防止することがで
きるため、非常に優れた摩擦特性ならびに耐久性を示す
摺動部材を得ることができる。
【0019】また、本発明者らは種々検討した結果、薄
膜に非晶質炭素膜を採用することがさらに優れた摩擦特
性ならびに耐久性を示す摺動部材を得ることに有効であ
ることを見出した。
【0020】薄膜として非晶質炭素膜を採用した摺動部
材が優れた耐摩耗性ならびに低摩擦を示す理由は以下の
ように考えられる。
【0021】前述のごとく、非常に優れた耐摩耗性なら
びに低摩擦係数を示す表面皮膜として、ダイヤモンド膜
と非晶質炭素膜が知られている。しかしながら、このダ
イヤモンド膜は平滑性に乏しい。このため、ダイヤモン
ド膜を部材表面に薄く形成した場合、部分的に部材表面
が露出する。よって、上述と同様、露出した部材表面が
剥れやすく、摺動部材の摩耗率が高くなる。
【0022】これに対して、非晶質炭素膜は平滑性に優
れている。このため、非晶質炭素膜は薄い膜厚で部材表
面全体を覆うことができる。よって、上述と同様、部材
表面の剥れや非晶質炭素膜の剥離が生じ難い。このよう
に、薄膜として非常に優れた耐摩耗性ならびに低摩擦係
数を示す非晶質炭素膜を用いることにより、さらに優れ
た摩擦特性ならびに耐久性を示す摺動部材を得ることが
できる。
【0023】Al2 3 系、SiC系、ZrO2 系およ
びSi3 4 系セラミックスについて摺動試験を行なっ
た。この結果、Al2 3 系では粒界割れが観察され、
ZrO2 系では相変態によるクラックの発生が観察され
た。この実験結果より、Si系セラミックスは、良好な
摺動特性を示すことが判明した。このSi系セラミック
スでは、シリカ(Siを主成分とする酸化物)系の微細
かつ緻密な潤滑性を有する表面生成物により、摩擦係数
が低下するといった効果を期待することができる。な
お、Al2 3 系およびZrO2 系セラミックスについ
ても、摺動条件(たとえば、負荷荷重や摺動速度など)
を適切に選択することにより、部材表面の表面粗さR
max を制御した効果を得ることができる。
【0024】また、上記のSiC系セラミックスでは、
割れは生じ難いが、ミクロポア(微細な細孔)を起点と
してミクロクラックへ成長するおそれがある。これに対
して、Si3 4 系セラミックスは、他のセラミックス
と比較して非常に優れた耐久性を有することが確認され
た。このため、部材にSi3 4 系セラミックスを含ま
せることにより、非常に優れた摩擦特性ならびに耐久性
を示す摺動部材を得ることが可能となる。
【0025】ところで、セラミックスの研削加工表面に
は、微視的な磨耗の原因となる微細クラックが導入され
ている。一方、セラミックスの表面近傍には、摺動下で
新たな微細クラックの発生につながる結晶格子欠陥が導
入されている。この微細クラックと結晶格子欠陥の作用
により、セラミックスの研削加工表面近傍には残留応力
場が生じている。この残留応力場は摺動部での磨耗を促
進させる原因となり得る。したがって、微細クラック、
結晶格子欠陥、残留応力などを除去あるいは無害化する
必要がある。セラミックスを含む部材の表面制御には、
大気中で加熱処理を施すことが好ましい。すなわち、大
気中で加熱処理を施すことにより、部材の表面に反応生
成物が形成される。また、セラミックス中で拡散を介し
た原子移動が生じる。この反応生成物の形成と原子移動
とにより、微細なクラックは再結合され、欠陥は修復さ
れる。このように、部材の表面および表面近傍に導入さ
れていた微細クラックおよび結晶格子欠陥が修復される
ため、部材表面近傍の残留応力も間接的に緩和される。
残留応力場が緩和されるため、クラックの、伝播・成長
が防止される。たとえば、非酸化物系であるSi系セラ
ミックスでは、反応生成物としてSiOx (xは2の正
の定数)が形成され、これにより、上記のごとく微細ク
ラックが修復され、かつクラックの伝播・成長が防止さ
れる。一方、酸化物系では、おもに原子移動と残留応力
の除去とにより微細クラックが修復され、これによりク
ラックの伝播・成長が防止される。上記のように、セラ
ミックスを含む部材を大気中で加熱処理を施すことによ
り、部材の耐磨耗性が向上する。このため、外乱などに
よる摺動部分の突発的な接触によっても、磨耗粉が生じ
難くなる。したがって、高速摺動時においても非常に優
れた摩擦特性ならびに耐久性を示す摺動部材を得ること
が可能となる。
【0026】また、セラミックスを含む部材を大気中で
加熱する温度は、800℃以上1400℃以下であるこ
とが好ましい。800℃以下では、反応が遅くなるため
適当ではない。また、加熱温度が1400℃以上では、
材料組成によってはセラミックスの組織の分解といった
問題が生じる。このため、加熱温度を800℃以上14
00℃以下の温度範囲とすることにより、セラミックス
中での反応生成物の形成と原子移動とによる効果が一層
促進される。また、残留応力のより一層の緩和も可能と
なる。したがって、より一層優れた摩擦特性ならびに耐
久性を示す摺動部材を得ることが可能となる。
【0027】セラミックスを含む部材の表面の凹凸の最
大高低差Rmax が0.3μm以下であると、表面荒れな
どの基板に起因する摩耗原因を少なくすることができ
る。また、部材の表面全体を覆う薄膜の厚みをより薄く
することができる。このため、薄膜の剥離も生じ難くな
る。よって、摺動特性の良好な摺動部材を得ることが可
能となる。
【0028】この摺動部材が滑り軸受け体に使用される
と、摩耗粉の生成を起因とする異常摺動現象を発生する
ことのない良好な滑り軸受け体が得られる。
【0029】さらに、この摺動部材を回転多面鏡の滑り
軸受け体に採用することにより、上記と同様、異常摺動
現象を発生することなく、かつ光学特性に優れた回転多
面鏡を得ることが可能となる。
【0030】
【実施例】実施例として、本発明者らは、セラミックス
の中でも強靭性に優れるSi3 4 系セラミックスを基
材とし、この基材表面を被覆する皮膜として非晶質炭素
膜のDLCを用いて以下の摺動特性調査を行なった。
【0031】まず、基材Si3 4 系セラミックスの製
造方法を示す。平均粒径0.3μm、粒度分布3σ=
0.2μm、α結晶化率96.5%、酸素量1.4重量
%であるSi3 4 の原料粉末を準備した。このSi3
4 の原料粉末を92重量%、平均粒径が0.8μmの
2 3 粉末を4重量%、平均粒径0.5μmのAl2
3 粉末を3重量%、平均粒径1.0μmのAlN粉末
を1重量%の割合で混合、調製した。この混合粉末を、
エタノール中で100時間ボールミルによる湿式混合を
行なった。その後、乾燥後の混合粉末を5000kg/
cm2 の圧力でCIP(冷間静水圧)成形処理を施し
た。得られた成形体を1気圧の窒素ガス雰囲気下におい
て、1600℃で4時間加熱保持した。さらに、175
0℃で6時間の焼結処理を施すことにより焼結体を得
た。その後、この焼結体を1700℃、1000気圧で
窒素ガス雰囲気中で2時間のHIP(熱間静水圧)成形
処理を施した。
【0032】このようにして得られたSi3 4 系焼結
体は、長さ30μm当りの線密度が35個以上である結
晶粒子を含み、その粒界相の体積率が15体積%以下で
最大径20μm以下の気孔を含み、その気孔率が3%以
下であった。また、このSi 3 4 系焼結体は、平均長
軸粒径5μm以下、アスペクト比4以上、最大の長軸粒
径15μm以下であった。なお、この焼結体は、JIS
三点曲げ強度80kg/mm2 以上、破壊靭性値5MP
a・m1/2 以上であった。
【0033】上記の特性を有するSi3 4 系焼結体か
らテストピースを切出した。このテストピースに、Si
膜を0.1μmの厚みでCH4 とSiCl4 を形成し
た。この後、プラズマCVD法により、テストピースに
DLC膜を形成した(a−C0. 8 ・Si0.2 :H)。こ
のDLC皮膜処理を施したテストピースについて、ピン
オンディスク型摩擦試験により摩擦特性評価を実施し
た。なお、ピンオンディスク型摩擦試験は、円板状(φ
50mm)のテストピースに一端が球状(直径5mm)
の円柱状(φ5mm×15mm)のテストピースの球状
部が円板と摺動するようにして行なった。この際、所定
の荷重Pおよび回転速度Vで摺動試験を行ない、摩耗量
を測定することにより各テストピースを評価した。
【0034】表1に各テストピースに施した処理方法を
示す。なお、No.1、2、6は比較材であり、No.
3、4、5、7、8は本発明材である。表1に示す加熱
処理は、テストピースを切り出した後に、加熱炉を用い
て行なった。
【0035】
【表1】
【0036】図1は、表1に示す各テストピースについ
てピンオンディスク型摩擦試験を行なった実験結果を示
す図である。図1を参照して、横軸は負荷荷重Pと回転
速度Vの積(P・V値)である。また、縦軸は比摩耗量
である。図中の○、●などの印は、表1に示す各テスト
ピースに対応している。なお、比較として窯業協会誌1
985年第93巻p73で示されたSi3 4 系焼結体
である5Y5A材および5Y5L材の結果も実線および
二点鎖線で示す。この図から明らかなように、DLC処
理を施したテストピースは、DLC未処理のものに比較
して摩耗量が小さいことがわかる。また、表面粗さR
max が0.8μm以下の基材表面にDLC処理を施す
と、さらに特性が向上することがわかる。また、加熱処
理を併用することにより、その効果は一層著しいものに
なっていることがわかる。
【0037】以上のことから、DLC処理を施す基材の
仕上げ表面粗さRmax が0.8μm以下であれば、非常
に優れた摩擦特性の得られることが判明した。また、こ
のSi3 4 系焼結体のテストピースに加熱処理を施す
ことによって、耐摩耗性がさらに向上することも判明し
た。さらに、仕上げ表面粗さRmax が0.3μm以下で
あれば、より一層優れた摩擦特性の得られることも判明
した。
【0038】なお、上記の処理をAl系、Zr系セラミ
ックスに施した場合も材料本質の機械的性質(たとえ
ば、曲げ強度など)の値を超えない条件下で、同様に耐
摩耗性が向上する効果が得られることも確認された。
【0039】次に、本発明材を採用した軸受けの性能を
調べるため、以下の実験を行なった。
【0040】まず、実験に用いた軸受の構造について説
明する。図2は、軸受の性能を試験するための複合軸受
け体の構造を示す概略図である。図2を参照して、複合
軸受け体10は、内輪1、外輪2、上下スラスト板3、
4および永久磁石5a、5bから構成されている。内輪
1は所定の軸の外周面を包囲すべく円筒形状を有してい
る。上下スラスト板3および4は内輪1の両端面に接触
するように設定されている。外輪2は内輪1と上下スラ
スト板3および4に対して所定のクリアランスを保つよ
うに調整されている。また、このクリアランスは、高速
回転中のラジアル回転精度を出すため、微小値に調整さ
れている。外輪2の下部および下部スラスト板4には、
磁性の異なる永久磁石5a、5bが対向するように各々
組込まれている。また、外輪2が上下スラスト板3およ
び4に接触しないように所望のクリアランスが設けられ
ている。
【0041】図3は、上記の複合軸受け体の構造を有す
る軸受け性能評価試験器の構成を示す概略図である。図
3を参照して、内輪11、外輪12、上下スラスト板1
3、14および永久磁石15a、15bにより複合軸受
け体20が構成されている。外輪12は、内輪11に対
して所定のクリアランスを維持するように設置されてい
る。また、上下スラスト板13、14は、永久磁石15
a、15bの働きにより、外輪12と所定のクリアラン
スを維持している。スラスト板13、14が接合された
内輪11には、円筒上面から下面にかけて10mmの内
径を有する孔が形成されている。この孔には回転体16
が嵌められている。内輪11はこの回転体16とともに
回転可能である。回転体16は、モータ17によって回
転可能なように設置されている。また、このモータ17
の駆動トルクはトルク計18により測定される。
【0042】上記のように、軸受け性能評価試験器は構
成されている。この軸受け性能評価試験器の複合軸受け
体に、表2に示す各処理を施したSi 3 4 系焼結体を
採用して、各焼結体の軸受け性能を評価した。表2のD
LC処理は内輪11の外周(円筒面)に施されている。
軸受け性能は、軸受け性能評価器を用いて、回転体16
の回転数を設定値まで到達させた後、10分間保持さ
せ、その時点での駆動トルクをトルク計18で測定する
ことにより行なった。なお、表2のA0 、A1 、B0
比較材であり、B1 およびC0 は本発明材である。
【0043】
【表2】
【0044】図4は、表2の各試料で構成された複合軸
受け体について駆動トルクを測定したときの実験結果を
示す図である。図4を参照して、横軸は、各軸受け体に
よって支持される回転体の回転数(r.p.m.)であ
る。また、縦軸は駆動トルク(g・cm)である。図中
の●などの印は、表2の各試料に対応している。この図
から明らかなように、回転数(周速)の増加率に対する
駆動トルクの増加率の比は、表面粗さRmax が小さいほ
ど低下していることがわかる。また、加熱処理を施すこ
とによって、回転数の増加率に対する駆動トルクの増加
率の比は一層小さくなっていることがわかる。また、D
LC処理を施した基材では、その効果は一層著しいもの
になっていることがわかる。
【0045】以上の結果から、DLC処理を施す焼結体
表面の表面粗さRmax が0.8μm以下であれば、回転
速度の増加に対する駆動トルクの上昇を極めて小さく抑
制できることが判明した。
【0046】次に、回転多面鏡(ポリゴンミラー)の複
合軸受け体に、表2に示す各試料を用いて、各試料にお
ける摺動部材としての性能を測定した。その実験結果に
ついて以下に説明する。
【0047】まず、実験に用いた回転多面鏡の構成につ
いて説明する。図5は、レーザプリンタに用いられる回
転多面鏡の一実施例を概略的に示す図である。図5を参
照して、ベース36には、支軸35が固定されている。
支軸35には、コイル部34が取付けられている。この
コイル部34は、支軸35に対して垂直方向に突出して
いる。また、このコイル部34は、互いに90°をなす
4つの軸にコイルが巻かれた構成となっている。この支
軸35のコイル部34が取付けられた位置よりも上方に
は、複合軸受け体50を構成するステータ21が取付固
定されている。このステータ21と所定のクリアランス
を介して、複合軸受け体50を構成するロータ22が配
置されている。この複合軸受け体50を構成するステー
タ21とロータ22の下側摺動面には、磁性の異なる永
久磁石25a、25bが対向するように各々組込まれて
いる。この永久磁石25aおよび25bにより、ステー
タ21とロータ22のクリアランスは維持されている。
複合軸受け体50を構成するステータ21とロータ22
は、表2に示される各処理が施されたそれぞれの試料A
0 、A1 、B0 、B1 、C0 から製造されている。特に
ステータ21は、上記の試料からなる基材の外周(円筒
面)にDLC処理が施されることにより構成されてい
る。ロータ22の外周面には、ポリゴンミラー31とフ
レーム32が取付け固定されている。フレーム32下端
部の内周面側には、コイル部34と対向するように永久
磁石33が取付けられている。また、ポリゴンミラー3
1の外周部には、アルミニウム製の多面体反射枠37が
取付けられている。なお、複合軸受け体50のステータ
21の外径はφ20mm、長さ30mmである。また、
ステータ21とロータ22の間のクリアランスは2.5
μmである。さらに、ロータ22を含めた可動体側の重
量は約290gに調整されている。
【0048】上記のように、回転多面鏡は構成されてい
る。この回転多面鏡のポリゴンミラー31は、コイル部
34に電流を流すことによって回転させることができ
る。
【0049】図5に示す回転多面鏡に、表2の各処理が
施されたSi3 4 系セラミックスからなる試料A0
1 、B0 、B1 およびC0 を用いた場合の性能評価試
験の結果を表3に示す。また、表3の結果を図6に示
す。なお、A0 、A1 、B0 は比較材であり、B1 およ
びC0 は本発明材である。
【0050】
【表3】
【0051】図6は、表2の示される各試料を回転多面
鏡の複合軸受け体に用いた場合の性能評価の実験結果を
示す図である。図中の●などの印は表2の各試料に対応
している。図6を参照して、横軸はロータの回転数であ
る。また、縦軸は定常時電流である。この定常時電流
は、多面鏡が定常回転に到達したときの駆動モータの電
流値であり、駆動トルクに相当する。この図から明らか
なように、DLC処理を施す基材の表面粗さRmax
0.8μm以下になると、回転数の増加に対する定常時
電流、すなわち駆動トルクの増加が抑制されることがわ
かる。
【0052】以上の結果から、DLC処理を施す基材の
表面粗さRmax が0.8μm以下の複合軸受け体を回転
多面鏡に用いることにより、回転数の増加に対するトル
クの増加率が極めて減少することが判明した。
【0053】なお、本発明の摺動部材の実施例として、
回転多面鏡の滑り軸受け体を示したが、これに限定され
ることはない。たとえば、80000〜150000
r.p.m.の高速度で回転する過給器用タービン軸受
け、20000〜30000r.p.m.の高速度で回
転するタービン、コンプレッサ用の軸受け、ロケットエ
ンジン用ターボポンプに用いられる高速回転用軸受け、
CNC超精密旋盤、円筒加工用超精密旋盤、超精密平面
研削盤などの工作機械に用いられている軸受けなどにも
本発明摺動部材は適用され得る。なお、近年、注目され
ているフロン代替物質から構成されている潤滑下におけ
る摺動部材としても、本発明材はそれらの物質に対して
不働態性を持つことから使用が可能である。
【0054】なお、本発明の実施例においては、基板を
被覆する皮膜としてDLC膜を採用したが、これに限定
されることはなく、各種の皮膜が適用可能である。皮膜
としては、耐磨耗性、低摩擦係数に優れたものが特に好
ましい。
【0055】
【発明の効果】本発明の摺動部材においては、部材表面
のRmax が0.8μm以下であるため、薄い厚みの薄膜
で部材を露出させることなく覆うことができる。部材表
面が露出しないため、部材表面が外乱により直接負荷を
受けることはない。よって、部材表面の剥れは生じ難
い。また、薄膜は薄いため、その内部に欠陥は導入され
難く、薄膜の剥離も生じ難い。すなわち、密着性が向上
する。したがって、本発明の摺動部材では、部材表面の
剥れや薄膜の剥離を防止することができるため、非常に
優れた耐摩耗性ならびに低摩擦を示す摺動部材を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表1に示される各試料についてピンオンディス
ク型摩擦試験を行なった実験結果を示す図である。
【図2】表2に示す各試料を軸受けに使用した場合の摺
動特性を試験するための複合軸受け体の構造を示す概略
図である。
【図3】図2に示される複合軸受け体を用いた性能評価
試験器の構成を示す概略図である。
【図4】表2に示される試料を用いて図3に示される性
能評価試験器で性能評価を行なった実験結果を示す図で
ある。
【図5】レーザプリンタに用いられる回転多面鏡の一実
施例を示す概略図である。
【図6】表2の試料を用いて図5の回転多面鏡により性
能評価を行なった実験結果を示す図である。
【符号の説明】
21 ロータ 22 ステータ 50 複合軸受け体

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セラミックスを含む部材の表面を覆うよ
    うに形成された薄膜によって摺動面を構成する摺動部材
    において、 前記部材の表面の凹凸の最大高低差Rmax が0.8μm
    以下であることを特徴とする、摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記薄膜が非晶質炭素膜であることを特
    徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記セラミックスがSi系セラミックス
    であること特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記セラミックスがSi3 4 系セラミ
    ックであることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部
    材。
  5. 【請求項5】 前記セラミックスを含む部材が大気中で
    加熱処理を施されていることを特徴とする、請求項1に
    記載の摺動部材。
  6. 【請求項6】 前記加熱処理が800℃以上1400℃
    以下の温度で施されていることを特徴とする、請求項5
    に記載の摺動部材。
  7. 【請求項7】 前記部材の表面の凹凸の最大高低差R
    max が0.3μm以下であることを特徴とする、請求項
    1に記載の摺動部材。
  8. 【請求項8】 当該摺動部材が滑り軸受け体として使用
    されることを特徴とする、請求項1に記載の摺動部材。
  9. 【請求項9】 当該摺動部材が回転多面鏡の滑り軸受け
    体として使用されることを特徴とする、請求項1に記載
    の摺動部材。
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