JPH0893752A - 動圧軸受 - Google Patents

動圧軸受

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JPH0893752A
JPH0893752A JP23544094A JP23544094A JPH0893752A JP H0893752 A JPH0893752 A JP H0893752A JP 23544094 A JP23544094 A JP 23544094A JP 23544094 A JP23544094 A JP 23544094A JP H0893752 A JPH0893752 A JP H0893752A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】ヤング率が300GPa以上のセラミック体2
2の表面24に溝21お形成し、非晶質硬質炭素膜23
を備えて動圧スラスト軸受2を構成する。 【効果】セラミック体22は剛性が高いことから安定し
た動圧効果が得られるとともに、非晶質硬質炭素膜23
は高硬度で自己潤滑性、耐食性などに優れているため、
相手材の摩耗量を低減し、起動トルクを低下できること
から、高い信頼性と長寿命化をもたらすことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は動圧効果を利用した軸受
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のFDD装置等に用いるスピンドル
モータの軸受は、玉軸受と含油軸受を積み重ねた構造を
とっていた。しかしながら、従来の軸受では、製品の薄
型化、高性能化に伴い、種々の問題点が発生してきた。
【0003】例えば、FDD装置等のスピンドルモータ
の薄型化をはかる場合は軸受を短くする必要があるが、
短くするにつれ軸振れが大きくなってくる。これによ
り、メディアの偏心が大きくなり、データの書き込み、
読み出しの信頼性が著しく低下する問題点が発生した。
【0004】そこで、このような問題点の解決手段とし
て、軸受面に動圧効果を生み出すスパイラル溝を形成し
た動圧軸受が開発された。これは、スパイラル溝が潤滑
流体に与えるポンピング作用により、スピンドルモータ
の回転に伴う油圧の上昇を得てシャフトを浮上させ、流
体膜を形成して無接触で回転するものである。更には油
圧によるセンタリング効果を与えることにより偏心を著
しく抑えられるものである。
【0005】動圧軸受の構成としては、シャフト外周ま
たはスリーブ内面のいずれか一方に溝が形成されラジア
ル方向の剛性を持つラジアル軸受部と、スパイラル溝に
よるオイル、気体等の潤滑流体のポンピング作用により
スラスト剛性を持つスラスト軸受部とからなる。
【0006】ここで、重要な要素は動圧スラスト軸受で
ある。即ち、縦型モータにおけるラジアル方向は、シャ
フト外径とスリーブ内径がほぼ等しいために接触により
傷がついたり、面が剥離することはほとんど無い。これ
に対し、スラスト方向は回転部の自重や、マグネットと
ステータの吸引力等のスラスト力が、全てスラスト軸受
とシャフト端部との接触部にかかることになり、動圧軸
受であってもスタート・ストップ時や、低速回転時には
接触回転するため、耐久性に対して重要な影響を持つの
である。
【0007】また、動圧スラスト軸受の表面には前述し
たとおりスパイラル溝が形成され、その深さは極めて高
精度に仕上がっており、この動圧軸受を構成するシャフ
ト及び軸受は、いずれも従来はステンレス等の焼き入れ
材を使用していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シャフ
トと軸受を共に金属材で構成した場合、金属同士の接触
により摩耗が生じたり、また発生した摩耗粉が軸受の隙
間に入り込んだりして、かじりや焼き付きを生じる等の
問題があった。そのため、長期の使用において信頼性の
面で問題を有していた。
【0009】また、従来の金属材からなる動圧スラスト
軸受は剛性が低いため、大きなスラスト荷重が加わるよ
うな場合や、もしくは動圧スラスト軸受をネジ止めで取
りつける場合には、たわみを生じるという問題があっ
た。これにより、動圧スラスト軸受のスパイラル溝を高
精度に仕上げても、たわみにより溝の深さにばらつきが
生じて安定した動圧効果を得ることができない等の問題
があった。
【0010】上記問題に対し、シャフトもしくは動圧軸
受のいずれか一方をアルミナ、ジルコニア等のセラミッ
クスで構成することも考えられている(特開昭63−1
63016号、特開平2−93115号公報等参照)
が、この場合、摺動相手の金属材を摩耗させやすく、長
期の使用に於て信頼性の低下を引き起こすことがあると
いう問題点があった。
【0011】本発明は上記課題に鑑みてなされたもの
で、接触回転時に長期間使用しても摺動する相手部材の
摩耗を小さくし、また剛性を高めて、大きなスラスト荷
重または組み付け時の荷重に対する変形を小さくするこ
とにより安定した性能を確保できる動圧軸受を提供する
ことを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、動圧軸受を構
成する部材としてヤング率が300GPa以上のセラミ
ックスを使用し、その表面に非晶質硬質炭素膜を被覆し
たことを特徴とする。
【0013】また、本発明は上記セラミックス表面の中
心線平均粗さ(Ra)を0.05〜0.6μmとし、か
つ非晶質硬質炭素膜の膜厚を0.3〜1.5μmとした
ことを特徴とする。
【0014】即ち、セラミックスの表面に非晶質硬質炭
素膜を被覆することでシャフトと動圧軸受との摩擦係数
を小さくし、摩耗量も最小限に抑え、耐摩耗性を向上さ
せるようにしたものである。また非晶質硬質炭素膜を被
覆することで、母材を成すセラミックスの材質に関係な
く非晶質硬質炭素膜自体の優れた摺動特性が引き出せる
ため、摺動相手であるシャフト等の金属材を摩耗させる
こともない。
【0015】ここで、母材を成すセラミックスのヤング
率を300GPa以上としたのは、300GPa未満で
あると、負荷荷重に対する変形のために、高精度(溝深
さ精度±1μm)に仕上がったスパイラル溝による動圧
効果を充分に安定して引き出すことができなくなるため
である。
【0016】また、セラミックス表面の中心線平均粗さ
(Ra)を0.05〜0.6μmとしたのは、0.05
μm未満であると、非晶質硬質炭素膜が剥離しやすく、
0.6μmを越えると相手材を摩耗させやすくなるため
である。さらに非晶質硬質炭素膜の厚みを0.3〜1.
5μmとしたのは、0.3μm未満であると剥離しやす
く、1.5μmを越えると非晶質炭素膜中にクラックが
生じやすくなるためである。なお、このような厚みで形
成した非晶質硬質炭素膜の表面粗さは、母材であるセラ
ミックスの表面粗さとほぼ同じとなり、中心線平均粗さ
(Ra)で0.05〜0.6μmの範囲内となる。
【0017】
【実施例】以下、実施例により本発明の詳細について説
明する。
【0018】図1に示す動圧軸受装置は、スリーブ3と
該スリーブ3に取りつけられた動圧スラスト軸受2によ
り軸支されたシャフト1から成り、該動圧スラスト軸受
2にはスパイラル形状の溝21を形成してある。また、
シャフト1の外周にヘリングボーン形状の溝41が形成
されて動圧ラジアル軸受4となっている。なお、溝41
はスリーブ3の内周面側に形成しても良い。
【0019】そして、上記シャフト1を回転させた時、
上記溝21及び溝41の動圧作用により、シャフト1は
動圧スラスト軸受2から浮上して滑らかに回転すること
ができる。
【0020】また、図1とは上下を逆にして、シャフト
1を固定し、スリーブ3側を回転させるような構造とす
ることもできる。
【0021】いずれにしても、シャフト1の先端は、ス
タート・ストップ時や、低速回転時には動圧スラスト軸
受2と摺動するようになっており、このとき回転体の全
荷重がシャフト1の先端と動圧スラスト軸受2に負荷と
して加わることになる。
【0022】図2に示すように、この動圧スラスト軸受
2はヤング率300GPa以上のセラミックス体22の
表面24に溝21を有し、この表面24に非晶質硬質炭
素膜23を備えたものである。なお、図2では溝21の
内部まで非晶質硬質炭素膜23を被着したが、溝21の
内部には被着しなくてもよい。
【0023】また、セラミックス体22表面の中心線平
均粗さ(Ra)は0.05〜0.6μmの範囲内とし、
非晶質硬質炭素膜23の厚みtは0.3〜1.5μmの
範囲内としてある。このとき、最終的な非晶質硬質炭素
膜23の表面の中心線平均粗さ(Ra)は母材であるセ
ラミックス体22と同じ0.05〜0.6μmの範囲内
となる。
【0024】ここで非晶質硬質炭素膜23とは、例えば
ベンゼンを熱電子イオン化し、イオン化した炭素成分を
PVD法等で蒸着することによって得られる非晶質状の
不定形炭素の膜のことであり、規則的な結晶構造を持つ
ダイヤモンドや立方晶窒化ほう素(cBN)、六方晶窒
化ほう素(hBN)とは明確に異なるものである。この
非晶質硬質炭素膜23の組成をカーボンやダイヤモンド
の同定に用いられるラマン分光装置を使って調べると、
本炭素膜は1350cm-1付近にピークを持つダイヤモ
ンドではなく、1550cm-1付近にピークをもつグラ
ファイトのみの組成でもない。また非晶質硬質炭素膜2
3の断面を電子顕微鏡(SEMやTEM)で観察すると
非常に緻密で結晶粒界が見られずガラスを割ったような
形態を示していることから非晶質であることがわかる。
【0025】さらに、非晶質硬質炭素膜23の硬度をマ
イクロビッカース硬度計で調べると、ビッカース硬度3
0〜50GPaとダイヤモンド(100GPa)に次
ぐ、極めて硬質の膜であることが分かった。このように
非晶質硬質炭素膜23はそれ自体が極めて硬質であるた
め、耐摩耗性に優れるだけでなく、摺動性が良いため相
手部材を摩耗させにくい。
【0026】また、母材となるセラミック体22は、ヤ
ング率300MPa以上のアルミナ、炭化珪素、窒化珪
素等のセラミックス、あるいはAl2 3 −TiC系セ
ラミックスやサーメットを用いる。
【0027】この軸受装置は、VTRのスピンドルモー
タに用いる場合は3000rpm程度、LBP(レーザ
ービームプリンター)のスピンドルモータでは2000
0rpm程度と非常に高速となる。このとき、シャフト
1と動圧スラスト軸受2は、スタート・ストップ時に負
荷の加わった状態で激しく摺動することになるが、上記
のように動圧スラスト軸受2の表面24が耐摩耗性、摺
動性に優れた非晶質硬質炭素膜23からなるため、動圧
スラスト軸受2自身及び相手材であるシャフト1の摩耗
を少なくし、長期間にわたって良好に使用することがで
きる。
【0028】なお、上記実施例では、動圧スラスト軸受
2に非晶質硬質炭素膜23を形成した例を示したが、本
発明の動圧軸受はスラスト側のみに限定するものではな
い。例えば、図1における動圧ラジアル軸受4をなすス
リーブ3の内周面に非晶質硬質炭素膜を形成し、かつ動
圧発生用の溝を形成することもできる。
【0029】さらに、本発明はVTRやLBPのスピン
ドルモータに限らず、異なる構造をもつ各種軸受装置に
ついても適用できることは言うまでもない。
【0030】実験例1 ここで、本発明の動圧軸受の耐摩耗性および摺動性を調
べるため、ボール・オン・ディスク型の摩擦摩耗試験を
用いた試験を行った。
【0031】ヤング率300GPa以上のアルミナ系セ
ラミックスを用いてボール・オン・ディスク摩擦摩耗実
験用のテストピースを作成し、表面粗さをいろいろ変化
させて、厚みtが0.5μmの非晶質硬質炭素膜を被覆
させて摺動実験を行った。各試料を、乾式無潤滑下の状
態で、相手材に高炭素クロム軸受け鋼SUJ2のボール
を用いて、荷重0.5kg、相対摺動速度0.17m/
sで2時間摺動試験を行った後、両部材の摺動面を観察
した結果を表1に示す。
【0032】表1から明らかなように、セラミックスの
表面粗さ(Ra)が0.05〜0.6μmの範囲であれ
ば膜の剥がれもなく優れた摺動特性が得られた。また表
面粗さ(Ra)が0.6μmを越えると相手材である金
属の摩耗量が極端に増加したため不適当であった。
【0033】
【表1】
【0034】実験例2 次に実験1と同様にボール・オン・ディスクを用い、セ
ラミックスの表面粗さ(Ra)を実験1で剥離のなかっ
た0.3μmにして、非晶質硬質炭素膜の厚みtをそれ
ぞれ変化させたときの表面状態を観察した。結果を表2
に示す。
【0035】表2から明かな通り、非晶質硬質炭素膜の
厚みtは0.3〜1.5μmの範囲で剥離がなく摺動性
もよく良好である。0.2μm以下では部分的ではある
が膜が剥離した。一方2.0μmになると摺動部にクラ
ックが入った。またそれ以上の厚みにすると膜生成にも
時間がかかる上、コストも高くなるという問題点がある
ため摺動特性、コストからみると0.3〜1.5μmが
最適であった。
【0036】
【表2】
【0037】実験例3 実験例1、2より非結晶質硬質炭素膜の表面粗さ(R
a)を0.3μmに、厚みtを0.7μmに設定した。
表3に示すさまざまなセラミックスに非晶質硬質炭素膜
を被覆させた場合、及び比較例として非晶質硬質炭素膜
を被覆しない場合について、ボール・オン・ディスクに
て摺動試験を行った。結果を表3に示す。
【0038】表3からも明らかな通り、非晶質硬質炭素
膜を備えていないものは相手材、即ち金属(SUJ2)
を大きく摩耗させてしまった。
【0039】これに対し、非晶質硬質炭素膜を被覆した
本発明実施例は、自材の摩耗は同レベルであるが、相手
材(金属)の摩耗量を大幅に減少させられることがわか
る。さらに摩擦係数も低く、摺動性が優れていることが
わかった。また、母材をなすセラミックスの種類にかか
わらず、ほぼ同様の特性を示すこともわかる。
【0040】
【表3】
【0041】
【発明の効果】このように本発明によれば、表面に動圧
発生溝を備えた動圧軸受において、ヤング率が300G
Pa以上のセラミックスで形成するとともに、その表面
に非晶質硬質炭素膜を備えたことによって、剛性が高い
ことから安定した動圧効果が得られるとともに、非晶質
硬質炭素膜は高硬度で自己潤滑性、耐食性などに優れて
いるため、相手材の摩耗量を低減し、起動トルクを低下
できることから、高い信頼性と長寿命化をもたらすこと
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動圧軸受を用いた動圧軸受装置を示す
縦断面図である。
【図2】本発明の動圧軸受を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 :シャフト 2 :動圧スラスト軸受 21:溝 22:セラミック体 23:非晶質硬質炭素膜 24:表面 3 :スリーブ 4 :動圧ラジアル軸受 41:溝

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に動圧発生溝を備えた動圧軸受におい
    て、ヤング率が300GPa以上のセラミックスで形成
    するとともに、その表面に非晶質硬質炭素膜を備えたこ
    とを特徴とする動圧軸受。
  2. 【請求項2】上記セラミックス表面の中心線平均粗さ
    (Ra)を0.05〜0.6μmとし、かつ非晶質硬質
    炭素膜の膜厚を0.3〜1.5μmとしたことを特徴と
    する請求項1記載の動圧軸受。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000213533A (ja) * 1999-01-27 2000-08-02 Sankyo Seiki Mfg Co Ltd 動圧軸受装置及びそれを用いたモ―タ
JP2003328060A (ja) * 2002-05-02 2003-11-19 Mitsubishi Materials Corp 焼結合金とその製造方法
JP2009501688A (ja) * 2005-07-16 2009-01-22 センター フォー アブレイシブズ アンド リフラクトリーズ リサーチ アンド ディベロップメント シー.エー.アール.アール.ディー. ゲーエムベーハー α−酸化アルミニウム・ベースのナノ結晶焼結体、その製造方法およびその使用

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