JP2002220577A - 接着性樹脂組成物とその製造方法およびそれによる易接着性樹脂フィルム - Google Patents

接着性樹脂組成物とその製造方法およびそれによる易接着性樹脂フィルム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】脂肪族ポリエステル系樹脂を用いて各種基材の
積層・ラミネートなどの加工に使用可能な接着強度を有
し、かつ接着剤自体にも生分解性を有する接着性樹脂組
成物とその製造方法の提供にある。 【解決手段】直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマーに
脂肪族ポリエステルの枝ポリマーがグラフトされて、前
記脂肪族ポリエステルが生分解性ポリマーからなり、そ
の枝ポリマーが環状エステル類化合物の重合反応によっ
て形成されている接着性樹脂組成物であり、その製造に
おいて、前記直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマー
に、少なくとも予めプラズマ照射、電子線照射、コロナ
放電のいずれかの処理を施した後、脂肪族ポリエステル
の枝ポリマーを形成せしめる接着性樹脂組成物の製造方
法とするものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然界における微
生物などによる生分解可能な高分子化合物からなる生分
解性接着性樹脂組成物とその製造方法および生分解性樹
脂の易接着処理改質技術に関するものであり、特に、生
分解可能なフィルム、成型品、繊維製品、紙などの各種
素材加工の接着に適用が可能な接着性樹脂組成物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、廃棄物の増加に伴い、それに係わ
る環境問題が多発しており、その問題とされている廃棄
物のうち、その多くをプラスチック製品が占めていて、
特に半永久的に分解しない特性からきわめて処理困難な
素材として指摘されている。このような社会的なニーズ
から、特開昭57−150393号公報、特開昭59−
220192号公報、特開平5−105736号公報、
特開平5−148352公報、特開平5−179016
号公報などに示されるような、土中の微生物などによっ
て自然分解可能な生分解性プラスチックが開発されてお
り、例えば英国・ゼネカ社の微生物ポリエステル系のバ
イオポール(商品名)、昭和高分子株式会社の脂肪族ポ
リエステル系のビオノーレ(商品名)、さらには株式会
社島津製作所のポリ乳酸などを原料とする脂肪族ポリエ
ステル系のラクティー(商品名)、イタリア・ノバモン
ト社のでんぷんと変性ポリビニルアルコール(PVA)
とを混合したマタービー(商品名)または米国エコスタ
ー社のノボン(商品名)やデグラスター(商品名)など
が商品化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の生分解性樹脂は、一般的に汎用の溶剤には不溶で
あるため、射出成形などの溶融成形以外の用途では利用
ができないものであり、またホットメルト型の接着剤と
しての用途も可能であるものもあるが、接着剤としての
機能、とくに接着強度が不十分であり、その用途には適
するものではなかった。
【0004】このように生分解性樹脂は、接着剤などの
各種用途に適合した製品が少なく、フィルム・成型加工
材料用途以外には、従来の非生分解性材料を使用せざる
を得ない状況である。とくに接着剤はプラスチック、紙
などの各種基材の積層・ラミネート・貼り合わせなどの
加工には必須の材料である。このため、環境保全に負荷
の少ない商品として天然素材である紙を用いて加工して
も、接着剤に従来の合成高分子系樹脂が使用されるた
め、製品全体が生分解性を有し、自然界で分解消失する
ような、環境保全に対応した商品を提供することはでき
なかった。
【0005】本発明は、かかる従来技術の問題点を解決
するものであり、その課題とするところは、脂肪族ポリ
エステル系樹脂を用いた接着剤を検討し、プラスチッ
ク、紙などの各種基材の積層・ラミネート・貼り合わせ
などの加工に使用可能な接着強度を有し、かつ接着剤自
体にも生分解性を有する接着性樹脂組成物とその製造方
法およびその製造方法を用いた易接着性樹脂フィルムを
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に於いて上記課題
を達成するために、まず請求項1の発明では、直鎖状脂
肪族ポリエステルの幹ポリマーに脂肪族ポリエステルの
枝ポリマーがグラフトされていることを特徴とする接着
性樹脂組成物としたものである。
【0007】また、請求項2の発明では、前記脂肪族ポ
リエステルが生分解性ポリマーからなることを特徴とす
る請求項1記載の接着性樹脂組成物としたものである。
【0008】また、請求項3の発明では、前記枝ポリマ
ーが環状エステル類化合物の重合反応によって形成され
ていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項
に記載の接着性樹脂組成物としたものである。
【0009】さらにまた、請求項4の発明では、前記環
状エステル類化合物がグリコリド、ラクチド、β−プロ
ピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、
β−メチル−δ−バレロラクトン、δ−バレロラクト
ン、ε−カプロラクトンの中から選ばれる少なくとも一
つを含んでいることを特徴とする請求項1乃至3のいず
れか1項に記載の接着性樹脂組成物としたものである。
【0010】上記発明の接着性樹脂組成物によれば、ほ
とんど接着性を有していない直鎖状脂肪族ポリエステル
を幹ポリマーとし、側鎖を枝ポリマーとして、後からグ
ラフトされているので、得られた樹脂に接着性が付与さ
れた接着性樹脂組成物とすることができる。
【0011】また、請求項5の発明では、直鎖状脂肪族
ポリエステルの幹ポリマーに脂肪族ポリエステルの枝ポ
リマーがグラフトされている前記請求項1乃至4のいず
れか1項に記載の接着性樹脂組成物の製造において、前
記直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマーに、少なくと
も予めプラズマ照射、電子線照射、コロナ放電のいずれ
かの処理を施した後、脂肪族ポリエステルの枝ポリマー
を形成せしめることを特徴とする接着性樹脂組成物の製
造方法としたものである。
【0012】上記請求項5の発明によれば、直鎖状脂肪
族ポリエステルの幹ポリマーに、少なくとも予めプラズ
マ照射、電子線照射、コロナ放電のいずれかの処理を施
すことによって幹ポリマー表面を活性化させ、枝ポリマ
ーのもとになるモノマーと反応させて接着性を付与させ
る接着性樹脂組成物の製造方法とし、樹脂自体が生分解
性を有し、かつ接着性に優れた接着性樹脂組成物の製造
方法とすることができる。
【0013】また、請求項6の発明では、前記直鎖状脂
肪族ポリエステルがフィルム状でなり、その表面に脂肪
族ポリエステルの枝ポリマーが前記請求項5記載の接着
性樹脂組成物の製造方法によって形成されていることを
特徴とする易接着性樹脂フィルムとしたものである。
【0014】上記請求項6の発明によれば、フィルム状
の直鎖状脂肪族ポリエステル表面に枝ポリマーが形成さ
れた易接着性樹脂フィルムとすることによって、紙や生
分解性プラスチックでなる本、容器、包装袋などの接着
性を有する積層フィルムとして応用が可能な易接着性樹
脂フィルムを提供できる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を説明す
る。本発明は、直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマー
に脂肪族ポリエステルの枝ポリマーがグラフトされてい
ること特徴とする接着性樹脂組成物と、グラフトさせる
その製造方法であり、さらにその製造方法により、フィ
ルム状の直鎖状脂肪族ポリエステルの表面に、脂肪族ポ
リエステルの枝ポリマーをグラフトさせた易接着性樹脂
フィルムである。
【0016】上記接着性樹脂組成物の製造方法として、
直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマーに少なくともあ
らかじめプラズマ照射、電子線照射、コロナ放電のいず
れかの処理をすることによりこの幹ポリマー表面を活性
化させ、枝ポリマーのもとになるモノマーと反応させる
ことによって、後から枝ポリマーを形成させることを特
徴とする接着性樹脂組成物および易接着性樹脂フィルム
の製造方法である。さらにはこの樹脂自体が生分解性を
有し、かつ接着性に優れるという特性を有するものであ
る。
【0017】ところで、一般的な生分解性樹脂として知
られる直鎖状の、いわゆる側鎖を持たない脂肪族ポリエ
ステルは、樹脂自体に接着性はほとんどないが、本発明
者らは側鎖を有する成分を脂肪族ポリエステルにグラフ
トさせることにより脂肪族ポリエステルに高い接着性が
得られることを見いだし、本発明を完成させるに至っ
た。
【0018】本発明の直鎖状脂肪族ポリエステルとは、
たとえばポリプロピレンサクシネート、ポリプロピレン
アジペート、ポリプロピレンピメレート、ポリプロピレ
ンズベレート、ポリプロピレンアゼレート、ポリプロピ
レンマロネート、ポリプロピレンジエチルグルタレー
ト、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペー
ト、ポリエチレンピメレート、ポリエチレンズベレー
ト、ポリエチレンアゼレート、ポリエチレンマロネー
ト、ポリエチレンジエチルグルタレート、ポリブチレン
サクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレン
ピメレート、ポリブチレンズベレート、ポリブチレンア
ゼレート、ポリブチレンマロネート、ポリブチレンジエ
チルグルタレート、ポリヘキサメチレンサクシネート、
ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンピ
メレート、ポリヘキサメチレンズベレート、ポリヘキサ
メチレンアゼレート、ポリヘキサメチレンマロネート、
ポリヘキサメチレンジエチルグルタレート、ポリジエチ
レンサクシネート、ポリジエチレンアジペート、ポリジ
エチレンピメレート、ポリジエチレンズベレート、ポリ
ジエチレンアゼレート、ポリジエチレンマロネート、ポ
リジエチレンジエチルグルタレート、ポリトリエチレン
サクシネート、ポリトリエチレンアジペート、ポリトリ
エチレンピメレート、ポリトリエチレンズベレート、ポ
リトリエチレンアゼレート、ポリトリエチレンマロネー
ト、ポリトリエチレンジエチルグルタレート、ポリプロ
ピオネート、ポリピバレート、ポリバリレート、ポリカ
プロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロ
キシピメレート、ポリヒドリキシバリレート、ポリヒド
ロキシプロピオネート、ポリグリコリド、ポリ乳酸など
が挙げられ、これらを単独または共重合させたものも用
いることができる。また、構造中に脂環式化合物、たと
えば、ポリブチレンシクロヘキサンジメタレート、ポリ
ヘキサメチレンシクロジメタレート、ポリシクロヘキサ
ンシクロヘキサネートなども利用可能であるが微生物分
解性の速度は多少遅くなる。
【0019】本発明では、これらの脂肪族ポリエステル
がほとんど接着性を有しないため、これらのポリマーを
幹ポリマーとし、側鎖を枝ポリマーとして、後からグラ
フトすることにより、樹脂に接着性を付与するものであ
る。また、幹ポリマー、枝ポリマーとも環境に適応した
完全微生物分解性であることが好ましく、すべての成分
が脂肪族構造のポリエステルからなることが望ましい。
【0020】本発明で述べる枝ポリマーとしては、環状
エステル類化合物から合成されるポリエステル鎖が特に
望ましい。この理由としてジカルボン酸類、ジオール類
もしくはジエステル類の重縮合反応によって得られるポ
リエステルは、重縮合時に脱水、脱アルコールなどの脱
離成分を伴うため幹ポリマーの側鎖にグラフトさせるこ
とは技術的に困難なためである。
【0021】また、本発明で述べる環状エステル類化合
物としては、グリコリド、ラクチド、β−プロピオラク
トン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、β−メチ
ル−δ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カ
プロラクトンなどが挙げられ、これらを単独、もしくは
混合して共重合の枝ポリマーを得てもよい。これらの化
合物は開環重合反応によって容易にポリエステル鎖を形
成させることができる。また、接着性や生分解性を制御
するために必要に応じて環状エーテル類化合物、環状エ
ステルエーテル、環状酸無水物などの化合物を共重合成
分として加えても良い。
【0022】本発明の接着性樹脂組成物の製造方法で
は、幹ポリマーに枝ポリマーをグラフトさせる方法とし
て、予め幹ポリマーとして用いる脂肪族ポリエステルに
プラズマ照射、電子線照射、コロナ放電のいずれかの処
理を行っておき、環状エステル類化合物が含まれるモノ
マー溶液に、処理ポリマーを適当な条件で浸積すること
によって脂肪族ポリエステルの枝ポリマーを形成させる
ものである。本発明はこのような強力な物理的処理をポ
リマー表面層に施すことにより、環状エステル類化合物
を開環重合させるための活性点を幹ポリマー上に形成
し、枝ポリマーをグラフトさせるものであり、従来の化
学合成では得られない脂肪族ポリエステル側鎖を有する
新規なポリマーの合成方法を見いだすことにより、本発
明を完成させた。
【0023】さらに本発明では、幹ポリマーの種類を選
ぶことによりフィルム形態の易接着性樹脂フィルムを製
造することが可能である。例えば商品名バイオポール
(ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレー
ト共重合体)やポリ乳酸のフィルムを幹ポリマーに用い
たとき、フィルムはほとんどの環状エステルモノマーや
溶媒に不溶であるため、フィルム表面にのみ枝ポリマー
をグラフトさせることができ、易接着性樹脂フィルムを
得ることができる。
【0024】一方、ポリカプロラクトン、ポリヘキサメ
チレンサクシネートなどを幹ポリマーに用いたときは、
樹脂はほとんどの環状エステルに溶解するため溶液の状
態で本発明の接着性樹脂化合物が得られるため、接着性
樹脂として共押し出しフィルム用樹脂や適切な溶剤に塗
布して接着剤として用いることもできる。
【0025】また、本発明の接着性樹脂組成物は熱可塑
性の樹脂であり、そのままフィルムとして用いたり、生
分解性フィルムの接着面に共押し出し成分として用いる
ことや、紙へ押し出しコーティングすること、さらには
適当な溶剤に溶かして塗布して利用することなどができ
る。またこれらの樹脂面は適当な条件で熱プレスするこ
とにより熱融着が可能であり、各種生分解性素材の接着
に利用できる。
【0026】
【実施例】次に実施例により、本発明を具体的に説明す
る。 〈実施例1〉厚さ約50μmのポリカプロラクトンフィ
ルムに、13.56MHzの高周波電源を備えたプラズ
マ処理装置により、出力300W、で大気圧アルゴンプ
ラズマ処理を5分間施した。
【0027】次にこのプラズマ処理されたフィルムをε
−カプロラクトンの80%トルエン溶液中に浸積し、窒
素雰囲気下で温度60℃、48時間反応させた。なおこ
の処理フィルムは反応溶液中に完全に溶解した。反応
後、エバポレーターでの溶媒および未反応モノマーを除
去し、精製樹脂ポリマーをメタノール中で沈殿させるこ
とによって、接着性樹脂樹脂組成物を得た。
【0028】〔接着性評価〕上記で得られた接着性樹脂
組成物を小型エクストルーダーを用いてコートボール紙
(米坪量310g/m2 )に約30μmの厚さでこの接
着性樹脂組成物をコーティングした。このコートボール
紙と厚さ約50μmの市販PLA2軸延伸フィルムレイ
ソックス(三井化学社製)をヒートシーラーにて適切な
シール温度,圧力でヒートシールした後、サンプルを1
5mm幅の短冊状に切り出し,引張速度300mm/m
inでの90°剥離試験を行い接着性の評価とした。こ
の結果、基材と樹脂間で紙ムケが生じ、充分なシール強
度であった。また、比較として上記のコートボール紙に
ポリエチレン樹脂(三井化学社製商品名ミラソン14
P)を同条件でコーティングした基材とPLAフィルム
をヒートシールしたが接着強度は100g/15mm幅
以下であった。 〔生分解性評価〕生分解性の評価は市販のコンポストを
用いて生ゴミから調整したコンポスト土壌に、5cm×
5cmの大きさにカットした試験フィルムを温度60
℃、湿度90%で一ヶ月間保存して、残存フィルムの有
無、残存量より評価した。この結果、紙以外のフィルム
は完全に分解し残存物はなく、生分解性が確認された。
【0029】〈実施例2〉厚さ約50μmの市販PLA
2軸延伸フィルムレイソックス(三井化学社製)に、1
3.56MHzの高周波電源を備えたプラズマ処理装置
により、出力300W、で大気圧アルゴンプラズマ処理
を5分間施した。
【0030】次にこのプラズマ処理フィルムをε−カプ
ロラクトンの80%トルエン溶液中に浸積し、窒素雰囲
気下で温度60℃、48時間反応させた。反応後のフィ
ルムをメタノールで十分に洗浄後、乾燥させ易接着性樹
脂フィルムを得た。
【0031】〔接着性評価〕得られた樹脂フィルムとコ
ートボール紙(米坪量310g/m2 )をポリカプロラ
クトン樹脂(ダイセル化学社製商品名プラクセル)溶融
押し出し機により約15μmの厚さポリ乳酸/カプロラ
クトン/紙のサンドラミネーションを行い、ポリ乳酸と
コートボール紙を貼り合わせた。サンプルを15mm幅
の短冊状に切り出し,引張速度300mm/minでの
90°剥離試験を行い接着性の評価とした。この結果、
剥離はカプロラクトン樹脂と紙の間で紙ムケし、充分な
接着強度が得られた。また、比較として未処理のポリ乳
酸フィルムを同条件でカプロラクトン樹脂を用いてコー
トボール紙とサンドラミを行ったがシール強度は100
g/15mm幅以下であった。 〔生分解性評価〕生分解性の評価は市販のコンポストを
用いて生ゴミから調整したコンポスト土壌に、5cm×
5cmの大きさにカットして試験フィルムを温度60
℃、湿度90%で一ヶ月間保存して、残存フィルムの有
無、残存量より評価した。この結果、紙以外のフィルム
は完全に分解し残存物はなく、フィルムの生分解性が確
認された。
【0032】〈実施例3〉厚さ約50μmの市販PLA
2軸延伸フィルムレイソックス(三井化学社製)に、1
3.56MHzの高周波電源を備えたプラズマ処理装置
により、出力300W、で大気圧アルゴンプラズマ処理
を3分間施した。
【0033】次にこのプラズマ処理フィルムをε−カプ
ロラクトンの80%トルエン溶液中に浸積し、窒素雰囲
気下で温度60℃、24時間反応させた。反応後のフィ
ルムをメタノールで十分に洗浄後、乾燥させ反応後の重
量と初期重量との比較からフィルム重量の約30%のポ
リカプロラクトンがグラフトされていることが確認され
た。
【0034】〔接着性評価〕製造したグラフトフィルム
2枚を張り合わせ,ヒートシーラーにて適切なシール温
度,圧力でヒートシールした後、そのサンプルを15m
m幅の短冊状に切り出し,引張速度300mm/min
での90°剥離試験を行い接着性の評価とした。この結
果、約500g/15mmのシール強度を得た。また、
比較として未処理のPLAフィルムを同条件でヒートシ
ールしたが全く接着性は認められなかった。 〔生分解性評価〕生分解性の評価は市販のコンポストを
用いて生ゴミから調整したコンポスト土壌に、5cm×
5cmの大きさにカットして試験フィルムを温度60
℃、湿度90%で一ヶ月間保存して、残存フィルムの有
無、残存量より評価した。この結果、フィルムは完全に
分解し残存物はなく、フィルムの生分解性が確認され
た。
【0035】
【発明の効果】本発明は以上の構成であるから、下記に
示す如き効果がある。即ち、直鎖状脂肪族ポリエステル
の幹ポリマーに脂肪族ポリエステルの枝ポリマーをグラ
フトさせたこと特徴とする接着性樹脂組成物であって、
この接着性樹脂組成物を得る方法として、直鎖状脂肪族
ポリエステルの幹ポリマーに、少なくとも予めプラズマ
照射、電子線照射、コロナ放電のいずれかの処理をし
て、その幹ポリマー表面を活性化させ、枝ポリマーのも
とになるモノマーと反応させることによって、後から枝
ポリマーを形成させた接着性樹脂組成物および易接着性
樹脂フィルムとするもので、この樹脂自体が生分解性を
有し、かつ接着性に優れるという特性を有するものとす
ることができる。
【0036】また、本発明の接着性樹脂組成物を用いた
易接着性樹脂フィルムによって組み立てを行なうことに
より、素材に紙や生分解性プラスチックを用いた構造
体、例えば本、容器、包装袋などの接着性フィルムとし
ての用途に適し、使用後は接着剤を含めて、構造体全体
すべてが易微生物分解性を発揮し、その分解成分は人体
や自然界の生物に対し、毒性が全く無いか、もしくは環
境に与える影響が極めて軽微であること等の要請に十分
対応できるものとすることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09J 167/04 C09J 167/04 // B29K 67:00 B29K 67:00 B29L 7:00 B29L 7:00 C08L 67:02 C08L 67:02 Fターム(参考) 4F071 AA43 AA44 AA77 AA78 AH19 BA09 BB08 BC01 4F201 AA01 AA24 AG01 BA04 BC01 BC02 BC03 BR34 4J004 AA15 AB03 BA02 GA01 4J029 AA03 AB07 AC05 AE13 BA02 BA03 BA04 BA05 CA02 CA03 CA04 CA06 CD04 EG02 EG03 EG05 EG07 EG09 EH02 EH03 HA01 HB01 KD11 KD13 KE09 KH01 4J040 ED011 ED051 JB07 MA09 MA10 QA01

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマーに
    脂肪族ポリエステルの枝ポリマーがグラフトされている
    ことを特徴とする接着性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】前記脂肪族ポリエステルが生分解性ポリマ
    ーからなることを特徴とする請求項1記載の接着性樹脂
    組成物。
  3. 【請求項3】前記脂肪族ポリエステルの枝ポリマーが環
    状エステル類化合物の重合反応によって形成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載
    の接着性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】前記環状エステル類化合物がグリコリド、
    ラクチド、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクト
    ン、ピバロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクト
    ン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンの中から
    選ばれる少なくとも一つを含んでいることを特徴とする
    請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着性樹脂組成
    物。
  5. 【請求項5】直鎖状脂肪族ポリエステルの幹ポリマーに
    脂肪族ポリエステルの枝ポリマーがグラフトされている
    前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着性樹脂
    組成物の製造において、前記直鎖状脂肪族ポリエステル
    の幹ポリマーに少なくともあらかじめプラズマ照射、電
    子線照射、コロナ放電のいずれかの処理を施した後、脂
    肪族ポリエステルの枝ポリマーを形成せしめることを特
    徴とする接着性樹脂組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】前記直鎖状脂肪族ポリエステルがフィルム
    状でなり、その表面に前記請求項5記載の接着性樹脂組
    成物の製造方法により脂肪族ポリエステルの枝ポリマー
    が形成されていることを特徴とする易接着性樹脂フィル
    ム。
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