JP2002212953A - 斜面安定化工法 - Google Patents

斜面安定化工法

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JP2002212953A
JP2002212953A JP2001011125A JP2001011125A JP2002212953A JP 2002212953 A JP2002212953 A JP 2002212953A JP 2001011125 A JP2001011125 A JP 2001011125A JP 2001011125 A JP2001011125 A JP 2001011125A JP 2002212953 A JP2002212953 A JP 2002212953A
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ring
slope
unit
winding
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JP2001011125A
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English (en)
Inventor
Taiji Masui
泰治 増井
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Chuko Sangyo Kk
Original Assignee
Chuko Sangyo Kk
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  • Pit Excavations, Shoring, Fill Or Stabilisation Of Slopes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】多数のリングを連結させることにより斜面の凸
凹等に応じた任意形状のネットを形成し、該ネットを斜
面に張って固定する斜面安定化工法を提供する。 【解決手段】複数本の金属線が撚り合わされて形成され
たリング21aを多数連結させて形成したネット3を斜
面に張る。地中の安定地盤までアンカーロッドを穿孔し
て固定し、アンカーロッドに貫通孔を有する下支圧板を
通す。ネット3を下支圧板に載せ、その上に押さえ板6
を載せてネット3を挟み込み、ナットで締めて固定し、
斜面に押さえつける。リング21aが柔軟性を有するの
でネット3は斜面の凹凸に沿うことができ、斜面に立ち
木があるときにもリング21aの欠損部24を形成する
ことで対応できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜面の落石や地滑
り等を防止するための斜面安定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】山腹等の斜面の落石や地滑りなどを防止
する工法の一例としてワイヤネット工法がある。これ
は、斜面に多数のロープ(ワイヤ)を縦横に張り、ロー
プ同士の交点を結合することによってネットを形成する
と共に、各ロープの両端及び中間の適宜の箇所を斜面に
固定するものである。また、ロープかけ工法は、上記ワ
イヤネットの上から菱形金網を被せ、該金網の適宜の箇
所をロープに結合するようにしたものであり、ロープと
金網とを併用したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記ワイヤネット工法
では、当該ネットの網目を細かくしないと小さな石の落
下を防ぐことができない。上記ロープかけ工法では、金
網によって小さな石の落下を防ぐことができるが、斜面
に凸凹がある場合、菱形金網を該凸凹に沿わせて設ける
ことが難しい。これは、菱形金網が柔軟性に欠けるため
である。また、例えば落石が発生した際には、菱形金網
が変形しながらその落石のエネルギーを吸収できること
が望ましいが、上述の如く菱形金網は柔軟性に欠けるた
め、落石発生箇所に応力が集中して金網が破壊されやす
い。
【0004】また、斜面に立ち木が有る場合、菱形金網
をその部分で分断し、この分断した菱形金網を立ち木の
周囲で別途連結する必要がある。また、菱形金網の場合
は、その列線を長くするにも製造上の限界があるから、
落石や地滑り等を防止すべき斜面が広い場合には、相隣
り合う菱形金網同士を部分的に重ね合わせて列線の長手
方向に連結していく必要がある。しかし、このような重
なり部を設けることは材料の浪費になると共に、金網を
山肌に沿わせることも難しくなり、さらにはネット全体
としてみたときの強度が一様でなくなるために、落石時
には強度の低い部分に応力が集中しやすくなる。
【0005】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、その目的とするところは、多数のリングを
連結させることにより斜面の凸凹等に応じた任意形状の
ネットを形成し、該ネットを斜面に張って固定する斜面
安定化工法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を実現するた
めの請求項1に係る発明は、複数本の金属線が撚り合わ
された線材により形成されたリングを多数連結させて形
成したネットを斜面に張り、地中の安定地盤に固定した
アンカー部材に上記ネットを結合させ、上記アンカー部
材によって上記ネットを斜面に固定することを特徴とす
る斜面安定化工法である。
【0007】このような構成であれば、ネットはリング
を連結することで形成されるので、該ネットの大きさや
形状はリングの数や配置によって自由に調節することが
でき、さらには立ち木があっても、立ち木を囲むように
リングの欠損部をネットに簡単に作ることができる。
【0008】また、リングは複数本の金属線が撚り合わ
されているので、これと同等の径を有する単線に比べて
曲がりやすい。つまり、連結されたリング同士が相対的
に回転し、また連結位置を変えることができるだけでは
なく、リング自体が柔軟性を有するのである。このた
め、地面の凸凹に沿うようにネット形状を自由に定める
ことができる。そして、ネット内の石が移動するときは
ネットが変形しながらこれを食い止めるため、ネットの
破損やそれに伴う落石を防ぐことができる。
【0009】また、アンカー部材にネットを結合し、ネ
ットを斜面に固定するので、斜面の石や土砂等を確実に
押さえつけて動かないようにできる。ここで、アンカー
部材が固定される地中の安定地盤とは、基礎岩盤等であ
って、地滑り面の下側の地盤等も含まれる。
【0010】次に、請求項2に係る発明は、立ち木のあ
る斜面に適用する斜面安定化工法であって、複数本の金
属線が撚り合わされた線材により形成されたリングが縦
横に連結されてなる所定の大きさのユニットネットを複
数準備し、立ち木を避けながら複数の上記ユニットネッ
トを斜面に張るとともにユニットネット同士を上記リン
グで連結する工程と、アンカー部材により上記ユニット
ネットを斜面に固定する工程とを備えていることを特徴
とする斜面安定化工法である。
【0011】このような構成であれば、予めリングを連
結して形成された所定の大きさのユニットネットを複数
作成しておいて、それらを斜面に運んで立ち木を避けな
がらユニットネット同士をリングで連結して全体として
一つのネットとするので、ユニットネットの準備や運搬
が容易であるとともに、斜面での施工が簡単で短時間で
できる。また、ユニットネット同士を連結するリングも
ユニットネットを形成しているリングと同じなので、連
結してできたネットは全て同種のリングからできていて
ネット内の柔軟性や強度が一様となり応力集中しにく
い。なお、ユニットネットは、リングを数個から数十個
縦横に連結して作成した小ネットであることが好まし
い。ユニットネットの大きさは、運搬のしやすさと施工
のしやすさにより適宜の大きさを選択すれば良い。その
ような観点から、ユニットネットは数十cm×数十cm
〜数m×数mの方形であることが好ましい。
【0012】次に、請求項3に係る発明は、請求項2に
おいて、立ち木を避けるために上記ユニットネットを構
成する上記リングの一部を除去する工程を備えているこ
とを特徴とする斜面安定化工法である。
【0013】このような構成であれば、施工現場におい
て立ち木に容易に対応でき、簡単に且つ短時間で立ち木
部分のリングを除去したネットを形成することができ
る。
【0014】次に、請求項4に係る発明は、請求項1〜
3のいずれかにおいて、上記リングは、上記複数本の金
属線が撚り合わされてなる撚り線部と、上記撚り線部の
少なくとも一方の端に続いて設けられ、リングを形成す
るために該撚り線部の反対側の部位に巻き付けられる巻
き付け部とを有し、上記巻き付け部は、上記複数本の金
属線が帯状に引き揃えられ、且つ上記撚り線部の反対側
の部位に巻き付くように該撚り線部の撚り方向と同方向
に螺旋状に捻られていることを特徴とする斜面安定化工
法である。
【0015】リングがこのような構成であれば、巻き付
け部を撚り線部の反対側の部位に巻き付けることによっ
てリング形状とすることができる。2つのリングの連結
も、一方をリング形状(閉じた環状)としておいて、他
方のリング部品(巻き付けをしていなくて閉じていない
もの)を一方のリングに通してから巻き付けてリング形
状とすることにより、簡単に行える。
【0016】リングの巻き付け部は、複数本の金属線が
帯状に引き揃えられているから、撚り線部の周面に沿い
やすく、また、予め螺旋状に捻られているから巻きの戻
りを生ずることがない。しかも、その螺旋巻き方向は撚
り線部の撚り方向と同方向であるから、巻き付け部を撚
り線部に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合
い、軸方向(撚り線部の長手方向)の引っ張りに対する
抵抗力が大きくなる。
【0017】上記リング部品の形状としては、両端部が
(つまり、巻き付け部と撚り線部の反対側の部位とが)
行き違いになった矩形状、その他の多角形状、円形状、
楕円形状のいずれであってもよい。
【0018】上記リングの巻き付け部は、上記帯状に引
き揃えられた金属線同士が解けないように接着処理され
ていることが好ましい。これにより、巻き付け部の撚り
線部に対する巻き付けが解け難くなるからである。
【0019】また、上記巻き付け部は、上記螺旋の軸心
側を向いた内面に滑り止め材が塗布されていることが好
ましい。これにより、巻き付け部と撚り線部との間で滑
りを生じ難くなり、巻き付け強度が高くなるからであ
る。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0021】<斜面安定化工法の手順>図1は、本発明
の斜面安定化工法を施した山地の斜面の図である。この
図を用いて斜面安定化工法の手順を説明する。 リングを縦横に連結させて約2m四方のユニットネッ
トを複数作成しておく。 山地等の斜面1に立ち木4と干渉しないようにユニッ
トネットを並べて、ユニットネット同士をリングで連結
してネット3を形成する。こうして、ネット3は斜面1
に張られる。 ネット3の周縁部及びネット3の内側の適宜の箇所を
地中の安定地盤に固定すべくアンカーロッド5によって
地滑り面2の下まで地面を穿孔していく。 上記穿孔に使用したアンカーロッド5を地面に打ち込
んだままとし、中央に貫通孔を有する下支圧板(アンカ
ー部材の一部、図示省略)をこのアンカーロッド5に通
して地面に設置する。 上記下支圧板の中央貫通孔より、地面に穿孔された孔
のアンカーロッド5の回りにグラウトを注入し固化させ
て、アンカーロッド5を地中の安定地盤に固定する。 上記下支圧板の上にネット3の線材を載せた後、中央
に貫通孔を有する押さえ板6(アンカー部材の一部)を
アンカーロッド5に通し、下支圧板に係合させる。こう
して下支圧板と押さえ板6とでネット3を挟み込む。 押さえ板6の上から上記アンカーロッド5の地面の上
に突き出している部分(雄ねじが切ってある)にナット
を螺合し、押さえ板6を地面に締め付け、ナットの上に
キャップ32を被せて固定する。以上によりネット3が
地面に固定される。
【0022】次に、本工法に用いられるリングとユニッ
トネットおよびネット、アンカー部材について説明す
る。
【0023】<リング>図2は、リング部品(端部の巻
き付けをしていなくて閉じていないもの)の斜視図であ
る。
【0024】図2のリング部品21は、複数本の金属線
(本例は4本の亜鉛メッキ鋼線)によって形成されてい
て、この複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り線部
22と、該撚り線部22の両端の各々に続く巻き付け部
23、23とを有し、該巻き付け部23、23同士が行
き違いになった矩形状に形成されている。
【0025】上記撚り線部22は、中央直線部22a、
該中央直線部22aの両端に続く等長の両側直線部22
b、22b、及び該両側直線部22b、22bに続く端
部直線部22c、22cを備えている。そうして、この
撚り線部22の端部直線部22c、22cに上記巻き付
け部23、23が直線状に連なっている。撚り線部22
の4つの角部22dは、リング部品21がなす面より少
し起こされている。
【0026】巻き付け部23、23は、リング部品21
によってリングを形成するために、撚り線部22の相手
側の端部直線部22c、22cに巻き付けられ、さらに
は巻き付け部23、23同士も互いに一部巻き付けられ
るものである。そのために、この巻き付け部23は、上
記複数の金属線が帯状に引き揃えられて、撚り線部22
の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られることによって形
成されている。この巻き付け部23の螺旋巻きのピッチ
は、撚り線部22の撚りのピッチよりも長くなってい
る。
【0027】また、上記巻き付け部23は、帯状に引き
揃えられた金属線同士が解けないように、当該帯の片面
に接着液が塗布されて接着処理がなされて螺旋状に捻ら
れている。この接着液が塗布された面は、巻き付け部2
3の螺旋の軸心側を向いた内面になっており、且つこの
接着液は乾いた表面がざらついていて滑り止め材として
働くようになっている。
【0028】図3は、リングの斜視図であって、左側に
はもう一つのリングと連結しているところが示してあ
る。すなわち、図2のリング部品21は、その両端の行
き違いになった巻き付け部23、23をそれぞれ相手側
の端部直線部22c、22cに巻き付けることによって
矩形のリング21aを形成することができる。リング2
1a、21a同士は、互いの角部22d、22dを係合
させるようにすれば、該角部22d、22dが矩形面か
ら立ち上がっているから、互いの矩形面をねじることな
く平面的に設けることができる。
【0029】従って、上記リング部品21によれば、巻
き付け部23を撚り線部22の端部直線部22cに巻き
付けることによって矩形のリング21aを簡単に形成す
ることができる。そうして、上記巻き付け部23は、複
数本の金属線が帯状に引き揃えられているから、撚り線
部22の周面に沿いやすく、また、予め螺旋状に捻られ
ているから、巻きの戻りを生ずることがない。さらに、
巻き付け部23の螺旋巻き方向は、撚り線部22の撚り
方向と同方向であるから、巻き付け部23を撚り線部2
2に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合い、軸
方向の引っ張りに対する抵抗力が大きくなる。しかも、
巻き付け部23は接着処理されているから、撚り線部2
2に対する巻き付けが解け難く、さらにその接着剤が撚
り線部22に対する滑り止めとして働くから巻き付け強
度が高くなり、大きな外力を受けても解けなくなる。
【0030】また、上記撚り線部22は、これと同等の
径を有する単線に比べて曲がりやすく、撚り線部22に
巻き付け部23が巻き付けられた部位も同様に曲がりや
すい。このため、施工現場の状況に応じた適正形状のネ
ットを形成する上で有利になる。この点については後述
する。
【0031】<ユニットネット>図4の左側は、2つの
ユニットネット10を並べた図で、矢印の右側は、2つ
のユニットネット10をリング12を用いて連結した図
である。
【0032】ユニットネット10は、上で説明したリン
グ21aをここでは18個連結して作成されている。ユ
ニットネット10は工場等で作成しておいて施工現場に
運搬しても良いし、施工現場やその近辺で作成しても良
い。ユニットネット10の大きさも任意に決めることが
でき、リング21aの数を増減することで大きさは容易
に変えることができる。
【0033】ユニットネット10同士は、連結用のリン
グ12を用いることで容易に連結することができる。こ
こでは、3つの連結用のリング12を用いて2つのユニ
ットネット10を連結している。連結用のリング12
は、ユニットネット10を構成しているリング21aと
同種のものである。このように同種のものを用いると、
強度や柔軟性が連結されたユニットネット11全体で均
一となり、ネット下の石が動いても応力が集中すること
がなく、ネット全体として落石等を防ぐことができる。
【0034】次に図5は、立ち木4がある場所でのユニ
ットネット10同士の連結を示した平面図である。矢印
の左側は2つのユニットネット10を立ち木4の両側に
配置した図であり、矢印の右側は2つのユニットネット
10を立ち木4と干渉しないように連結した図である。
連結するに当たって、立ち木と干渉してしまうリング1
4をそれぞれのユニットネット10から一つずつ除去
し、それから連結用のリング12を用いて立ち木4を取
り囲むようにユニットネット10同士を連結する。この
ようにすれば、施工現場で簡単に立ち木4を避けてネッ
トを張ることができる。
【0035】<ネット>図6は、上記のリング部品21
を用いてユニットネットを形成し、ユニットネット同士
をリング21aで連結して斜面安定用のネット3を形成
した図である。なお、ユニットネット同士を連結すると
元のユニットネットは判別できなくなるので、図6には
ユニットネットは示していない。
【0036】多数のリング部品が、リング21aを形成
しながら縦横に連結されてネット3が形成されている。
このネット3は、その周囲に巡らせたワイヤー26及び
巻き付けグリップ29にコイル線27によって結合され
ている。巻き付けグリップ29は、上記リング部品と同
様に撚り線部の両端に巻き付け部を設けたものであり、
ネット角部に配置され巻き付け部が隣り合うワイヤー2
6、26に巻き付けられて、このワイヤー26、26同
士を連結している。また、巻き付けグリップ29、ワイ
ヤー26、及びネット3の適宜の箇所は、アンカー部材
の一部である押さえ板6によって斜面に固定されてい
る。
【0037】従って、上記のネット3によれば、連結さ
れたリング21a、21a同士が相対的に回転し、また
連結位置を変えることができるだけでなく、リング21
a自体が柔軟性を有するため、地面の凸凹に沿わせるこ
とが容易になる。しかも、ネット3内の石が移動すると
きには、ネット3が変形しながらこれを食い止めること
になり、ネット3の破損やそれに伴う落石を防ぐ上で有
利になる。
【0038】また、上記ネット3の大きさや形状は、使
用するユニットネットの数や配置、すなわち使用するリ
ング21aの数や配置によって自由に調節することがで
き、さらには図6に示すようにリング21aが欠損した
欠損部24を簡単に作ることができ、この欠損部24に
よって図1のようにネット3を張る斜面に立ち木4があ
っても、立ち木4との干渉を避けることができる。
【0039】<アンカー部材>アンカー部材8は、図7
に示すように押さえ板6、下支圧板38、及びアンカー
ロッド5によって構成されている。下支圧板38は、中
央に貫通孔34を有するボス部35が形成され、該ボス
部35より線材受け入れ部36が四方へ突出して十字形
になっている。その十字形の各々の先端に上方へ突出し
た嵌合部37が設けられている。押さえ板6は、円板状
のものであって、中央に上記貫通孔34に対応する貫通
孔39が形成され、該貫通孔39の周囲に上記嵌合部3
7に対応する嵌合孔40が形成されている。ここでは、
下支圧板38は十字形で、押さえ板6は円板状である
が、いずれも形状はここに示す形状に限定されない。両
方ともに円形、十字形、三角形や四角形等の多角形でも
良いし、下支圧板38と押さえ板6との形状が異なって
いても構わない。
【0040】アンカーロッド5は、ジャックハンマー等
により回転力と打撃力とを与えられて、基礎岩盤等の地
中の安定な地盤にまで斜面に孔を穿設する。その孔の該
アンカーロッド5の周囲に注入固化材のグラウトを注入
してアンカーロッド5を地中の安定岩盤に固定する。な
お、ここではアンカーロッド5を自穿孔ロッドとして用
いているが、該アンカーロッドを穿孔専用とし、その穿
孔後に別のアンカーロッドを孔に挿入するようにしても
よい。
【0041】固定されたアンカーロッド5の地上に突き
出した先端部に下支圧板38を通し、その線材受け部3
6の上にリング21aやワイヤー26等の線材をボス部
35の周面に沿わせるように載せる。そして、押さえ板
6をアンカーロッド5に通して上記嵌合部37と嵌合孔
40とを嵌合し、ナット31によって押さえ板6を下支
圧板38に締め付けて、さらにネット3を斜面に押さえ
つける。このように下支圧板38と押さえ板6とでリン
グ21aやワイヤー26等を挟み込み締め付けること
で、アンカー部材8にネット3を結合させ、アンカー部
材8によってネット3を斜面に固定する。ここで、嵌合
部37が嵌合孔40に嵌合するので、線材受け入れ部3
6に載せたリング21aやワイヤー26等は、押さえ板
6と下支圧板38の間から外れることはなく、アンカー
部材8にネット3は確実に結合されている。ナット31
の外れ防止等のために、ナット31の上にキャップを被
せても良いし、キャップ付きのナットを用いても良い。
【0042】なお、ここでは、アンカー部材として下支
圧板や押さえ板を用いているが、リングやワイヤー等を
アンカーロッドに巻き付け等で結合させるだけでも良
い。
【0043】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に述べる効果を奏する。
【0044】複数本の金属線が撚り合わされた線材によ
り形成されたリングを多数連結してネットを形成し、該
ネットを斜面に張り地中の安定地盤に固定したアンカー
部材に結合させて斜面にネットを固定するので、地面の
凸凹や立ち木等にも対応して斜面を押さえて落石や地滑
り等を防ぐことができる。また、立ち木を伐採したり地
面の整形が不要なので、自然環境を大きく破壊すること
がなく、工期の短縮とコストの削減が可能となる。
【0045】予めユニットネットを複数用意しておい
て、施工現場で立ち木を避けながらリングで連結してネ
ットを形成するので、施工が容易に短時間で行える。ま
た、連結用のリングがネット構成するリングと同じもの
なので、ネットは強度と柔軟性が一様になり、応力の集
中を避けられる。
【0046】立ち木を避けるため、ユニットネットのリ
ングの一部を除去してユニットネットを連結するので、
立ち木があっても簡単に且つ短時間でネットを張ること
ができる。
【0047】複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り
線部と、該撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設け
られ、リングを形成するために該撚り線部の反対側の部
位に巻き付けられる巻き付け部とを有し、該巻き付け部
は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃えられ且つ上記
撚り線部の反対側の部位に巻き付くように該撚り線部の
撚り方向と同方向に螺旋状に捻られているから、柔軟性
を有し、且つ解け難い強いリングを簡単に形成すること
ができ、このようなリング部品同士を縦横に連結してい
くことによって、斜面の状況に応じた適宜形状の柔軟性
を有するカバーネットを簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る斜面安定化工法を示す図。
【図2】実施の形態に係るリング部品の斜視図。
【図3】リングの連結状態を示す斜視図。
【図4】ユニットネットの連結状態を示す図。
【図5】立ち木を避けてユニットネットを連結する方法
を示す平面図。
【図6】ネットを上方から見た図
【図7】アンカー部材の斜視図
【符号の説明】
1 山地の斜面 2 地滑り面 3 ネット 4 立ち木 5 アンカーロッド 6 押さえ板 8 アンカー部材 10 ユニットネット 11 連結されたユニットネット 12 連結リング 14 立ち木と干渉するリング(除去するリング) 21 リング部品 21a リング 22 撚り線部 22a 中央直線部 22b 両側直線部 22c 端部直線部 22d 角部 23 巻き付け部 24 欠損部 26 ワイヤー 27 コイル線 29 巻き付けグリップ 31 ナット 32 キャップ 34 貫通孔 35 ボス部 36 線材受け部 37 嵌合部 38 下支圧板 39 貫通孔 40 嵌合孔
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 斜面安定化工法
【特許請求の範囲】
請求項1】 立ち木のある斜面に適用する斜面安定化
工法であって、 複数本の金属線が撚り合わされた線材により形成された
リングが縦横に連結されてなる所定の大きさのユニット
ネットを複数準備し、 立ち木の両側に上記ユニットネットを2つ配置する工程
と、 上記立ち木を避けて上記両側の ユニットネット同士を上
記リングで連結する工程と、 アンカー部材により上記ユニットネットを斜面に固定す
る工程とを備えていることを特徴とする斜面安定化工
法。
請求項2請求項1において、 立ち木を避けるために上記ユニットネットを構成する上
記リングの一部を除去する工程を備えていることを特徴
とする斜面安定化工法。
請求項3請求項1又は請求項2において、 上記リングは、上記複数本の金属線が撚り合わされてな
る撚り線部と、 上記撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設けられ、
リングを形成するために該撚り線部の反対側の部位に巻
き付けられる巻き付け部とを有し、 上記巻き付け部は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃
えられ、且つ上記撚り線部の反対側の部位に巻き付くよ
うに該撚り線部の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られて
いることを特徴とする斜面安定化工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜面の落石や地滑
り等を防止するための斜面安定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】山腹等の斜面の落石や地滑りなどを防止
する工法の一例としてワイヤネット工法がある。これ
は、斜面に多数のロープ(ワイヤ)を縦横に張り、ロー
プ同士の交点を結合することによってネットを形成する
と共に、各ロープの両端及び中間の適宜の箇所を斜面に
固定するものである。また、ロープかけ工法は、上記ワ
イヤネットの上から菱形金網を被せ、該金網の適宜の箇
所をロープに結合するようにしたものであり、ロープと
金網とを併用したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記ワイヤネット工法
では、当該ネットの網目を細かくしないと小さな石の落
下を防ぐことができない。上記ロープかけ工法では、金
網によって小さな石の落下を防ぐことができるが、斜面
に凸凹がある場合、菱形金網を該凸凹に沿わせて設ける
ことが難しい。これは、菱形金網が柔軟性に欠けるため
である。また、例えば落石が発生した際には、菱形金網
が変形しながらその落石のエネルギーを吸収できること
が望ましいが、上述の如く菱形金網は柔軟性に欠けるた
め、落石発生箇所に応力が集中して金網が破壊されやす
い。
【0004】また、斜面に立ち木が有る場合、菱形金網
をその部分で分断し、この分断した菱形金網を立ち木の
周囲で別途連結する必要がある。また、菱形金網の場合
は、その列線を長くするにも製造上の限界があるから、
落石や地滑り等を防止すべき斜面が広い場合には、相隣
り合う菱形金網同士を部分的に重ね合わせて列線の長手
方向に連結していく必要がある。しかし、このような重
なり部を設けることは材料の浪費になると共に、金網を
山肌に沿わせることも難しくなり、さらにはネット全体
としてみたときの強度が一様でなくなるために、落石時
には強度の低い部分に応力が集中しやすくなる。
【0005】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、その目的とするところは、多数のリングを
連結させることにより斜面の凸凹等に応じた任意形状の
ネットを形成し、該ネットを斜面に張って固定する斜面
安定化工法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を実現するた
めの請求項1に係る発明は、立ち木のある斜面に適用す
る斜面安定化工法であって、複数本の金属線が撚り合わ
された線材により形成されたリングが縦横に連結されて
なる所定の大きさのユニットネットを複数準備し、立ち
の両側に上記ユニットネットを2つ配置する工程と、
上記立ち木を避けて上記両側のユニットネット同士を上
記リングで連結する工程と、アンカー部材により上記ユ
ニットネットを斜面に固定する工程とを備えていること
を特徴とする。
【0007】このような構成であれば、ネットはリング
を連結することで形成されるので、該ネットの大きさや
形状はリングの数や配置によって自由に調節することが
でき、さらには立ち木があっても、立ち木を囲むように
リングの欠損部をネットに簡単に作ることができる。
【0008】また、リングは複数本の金属線が撚り合わ
されているので、これと同等の径を有する単線に比べて
曲がりやすい。つまり、連結されたリング同士が相対的
に回転し、また連結位置を変えることができるだけでは
なく、リング自体が柔軟性を有するのである。このた
め、地面の凸凹に沿うようにネット形状を自由に定める
ことができる。そして、ネット内の石が移動するときは
ネットが変形しながらこれを食い止めるため、ネットの
破損やそれに伴う落石を防ぐことができる。
【0009】また、アンカー部材にネットを結合し、ネ
ットを斜面に固定するので、斜面の石や土砂等を確実に
押さえつけて動かないようにできる。ここで、アンカー
部材が固定される地中の安定地盤とは、基礎岩盤等であ
って、地滑り面の下側の地盤等も含まれる。
【0010】そうして、予めリングを連結して形成され
た所定の大きさのユニットネットを複数作成しておい
て、それらを斜面に運んで立ち木を避けながらユニット
ネット同士をリングで連結して全体として一つのネット
とするので、ユニットネットの準備や運搬が容易である
とともに、斜面での施工が簡単で短時間でできる。ま
た、ユニットネット同士を連結するリングもユニットネ
ットを形成しているリングと同じなので、連結してでき
たネットは全て同種のリングからできていてネット内の
柔軟性や強度が一様となり応力集中しにくい。なお、ユ
ニットネットは、リングを数個から数十個縦横に連結し
て作成した小ネットであることが好ましい。ユニットネ
ットの大きさは、運搬のしやすさと施工のしやすさによ
り適宜の大きさを選択すれば良い。そのような観点か
ら、ユニットネットは数十cm×数十cm〜数m×数m
の方形であることが好ましい。
【0011】次に、請求項2に係る発明は、請求項1
おいて、立ち木を避けるために上記ユニットネットを構
成する上記リングの一部を除去する工程を備えているこ
とを特徴とする斜面安定化工法である。
【0012】このような構成であれば、施工現場におい
て立ち木に容易に対応でき、簡単に且つ短時間で立ち木
部分のリングを除去したネットを形成することができ
る。
【0013】次に、請求項3に係る発明は、請求項1
は請求項2において、上記リングは、上記複数本の金属
線が撚り合わされてなる撚り線部と、上記撚り線部の少
なくとも一方の端に続いて設けられ、リングを形成する
ために該撚り線部の反対側の部位に巻き付けられる巻き
付け部とを有し、上記巻き付け部は、上記複数本の金属
線が帯状に引き揃えられ、且つ上記撚り線部の反対側の
部位に巻き付くように該撚り線部の撚り方向と同方向に
螺旋状に捻られていることを特徴とする斜面安定化工法
である。
【0014】リングがこのような構成であれば、巻き付
け部を撚り線部の反対側の部位に巻き付けることによっ
てリング形状とすることができる。2つのリングの連結
も、一方をリング形状(閉じた環状)としておいて、他
方のリング部品(巻き付けをしていなくて閉じていない
もの)を一方のリングに通してから巻き付けてリング形
状とすることにより、簡単に行える。
【0015】リングの巻き付け部は、複数本の金属線が
帯状に引き揃えられているから、撚り線部の周面に沿い
やすく、また、予め螺旋状に捻られているから巻きの戻
りを生ずることがない。しかも、その螺旋巻き方向は撚
り線部の撚り方向と同方向であるから、巻き付け部を撚
り線部に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合
い、軸方向(撚り線部の長手方向)の引っ張りに対する
抵抗力が大きくなる。
【0016】上記リング部品の形状としては、両端部が
(つまり、巻き付け部と撚り線部の反対側の部位とが)
行き違いになった矩形状、その他の多角形状、円形状、
楕円形状のいずれであってもよい。
【0017】上記リングの巻き付け部は、上記帯状に引
き揃えられた金属線同士が解けないように接着処理され
ていることが好ましい。これにより、巻き付け部の撚り
線部に対する巻き付けが解け難くなるからである。
【0018】また、上記巻き付け部は、上記螺旋の軸心
側を向いた内面に滑り止め材が塗布されていることが好
ましい。これにより、巻き付け部と撚り線部との間で滑
りを生じ難くなり、巻き付け強度が高くなるからであ
る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0020】<斜面安定化工法の手順>図1は、本発明
の斜面安定化工法を施した山地の斜面の図である。この
図を用いて斜面安定化工法の手順を説明する。 リングを縦横に連結させて約2m四方のユニットネッ
トを複数作成しておく。 山地等の斜面1に立ち木4と干渉しないようにユニッ
トネットを並べて、ユニットネット同士をリングで連結
してネット3を形成する。こうして、ネット3は斜面1
に張られる。 ネット3の周縁部及びネット3の内側の適宜の箇所を
地中の安定地盤に固定すべくアンカーロッド5によって
地滑り面2の下まで地面を穿孔していく。 上記穿孔に使用したアンカーロッド5を地面に打ち込
んだままとし、中央に貫通孔を有する下支圧板(アンカ
ー部材の一部、図示省略)をこのアンカーロッド5に通
して地面に設置する。 上記下支圧板の中央貫通孔より、地面に穿孔された孔
のアンカーロッド5の回りにグラウトを注入し固化させ
て、アンカーロッド5を地中の安定地盤に固定する。 上記下支圧板の上にネット3の線材を載せた後、中央
に貫通孔を有する押さえ板6(アンカー部材の一部)を
アンカーロッド5に通し、下支圧板に係合させる。こう
して下支圧板と押さえ板6とでネット3を挟み込む。 押さえ板6の上から上記アンカーロッド5の地面の上
に突き出している部分(雄ねじが切ってある)にナット
を螺合し、押さえ板6を地面に締め付け、ナットの上に
キャップ32を被せて固定する。以上によりネット3が
地面に固定される。
【0021】次に、本工法に用いられるリングとユニッ
トネットおよびネット、アンカー部材について説明す
る。
【0022】<リング>図2は、リング部品(端部の巻
き付けをしていなくて閉じていないもの)の斜視図であ
る。
【0023】図2のリング部品21は、複数本の金属線
(本例は4本の亜鉛メッキ鋼線)によって形成されてい
て、この複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り線部
22と、該撚り線部22の両端の各々に続く巻き付け部
23、23とを有し、該巻き付け部23、23同士が行
き違いになった矩形状に形成されている。
【0024】上記撚り線部22は、中央直線部22a、
該中央直線部22aの両端に続く等長の両側直線部22
b、22b、及び該両側直線部22b、22bに続く端
部直線部22c、22cを備えている。そうして、この
撚り線部22の端部直線部22c、22cに上記巻き付
け部23、23が直線状に連なっている。撚り線部22
の4つの角部22dは、リング部品21がなす面より少
し起こされている。
【0025】巻き付け部23、23は、リング部品21
によってリングを形成するために、撚り線部22の相手
側の端部直線部22c、22cに巻き付けられ、さらに
は巻き付け部23、23同士も互いに一部巻き付けられ
るものである。そのために、この巻き付け部23は、上
記複数の金属線が帯状に引き揃えられて、撚り線部22
の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られることによって形
成されている。この巻き付け部23の螺旋巻きのピッチ
は、撚り線部22の撚りのピッチよりも長くなってい
る。
【0026】また、上記巻き付け部23は、帯状に引き
揃えられた金属線同士が解けないように、当該帯の片面
に接着液が塗布されて接着処理がなされて螺旋状に捻ら
れている。この接着液が塗布された面は、巻き付け部2
3の螺旋の軸心側を向いた内面になっており、且つこの
接着液は乾いた表面がざらついていて滑り止め材として
働くようになっている。
【0027】図3は、リングの斜視図であって、左側に
はもう一つのリングと連結しているところが示してあ
る。すなわち、図2のリング部品21は、その両端の行
き違いになった巻き付け部23、23をそれぞれ相手側
の端部直線部22c、22cに巻き付けることによって
矩形のリング21aを形成することができる。リング2
1a、21a同士は、互いの角部22d、22dを係合
させるようにすれば、該角部22d、22dが矩形面か
ら立ち上がっているから、互いの矩形面をねじることな
く平面的に設けることができる。
【0028】従って、上記リング部品21によれば、巻
き付け部23を撚り線部22の端部直線部22cに巻き
付けることによって矩形のリング21aを簡単に形成す
ることができる。そうして、上記巻き付け部23は、複
数本の金属線が帯状に引き揃えられているから、撚り線
部22の周面に沿いやすく、また、予め螺旋状に捻られ
ているから、巻きの戻りを生ずることがない。さらに、
巻き付け部23の螺旋巻き方向は、撚り線部22の撚り
方向と同方向であるから、巻き付け部23を撚り線部2
2に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合い、軸
方向の引っ張りに対する抵抗力が大きくなる。しかも、
巻き付け部23は接着処理されているから、撚り線部2
2に対する巻き付けが解け難く、さらにその接着剤が撚
り線部22に対する滑り止めとして働くから巻き付け強
度が高くなり、大きな外力を受けても解けなくなる。
【0029】また、上記撚り線部22は、これと同等の
径を有する単線に比べて曲がりやすく、撚り線部22に
巻き付け部23が巻き付けられた部位も同様に曲がりや
すい。このため、施工現場の状況に応じた適正形状のネ
ットを形成する上で有利になる。この点については後述
する。
【0030】<ユニットネット>図4の左側は、2つの
ユニットネット10を並べた図で、矢印の右側は、2つ
のユニットネット10をリング12を用いて連結した図
である。
【0031】ユニットネット10は、上で説明したリン
グ21aをここでは18個連結して作成されている。ユ
ニットネット10は工場等で作成しておいて施工現場に
運搬しても良いし、施工現場やその近辺で作成しても良
い。ユニットネット10の大きさも任意に決めることが
でき、リング21aの数を増減することで大きさは容易
に変えることができる。
【0032】ユニットネット10同士は、連結用のリン
グ12を用いることで容易に連結することができる。こ
こでは、3つの連結用のリング12を用いて2つのユニ
ットネット10を連結している。連結用のリング12
は、ユニットネット10を構成しているリング21aと
同種のものである。このように同種のものを用いると、
強度や柔軟性が連結されたユニットネット11全体で均
一となり、ネット下の石が動いても応力が集中すること
がなく、ネット全体として落石等を防ぐことができる。
【0033】次に図5は、立ち木4がある場所でのユニ
ットネット10同士の連結を示した平面図である。矢印
の左側は2つのユニットネット10を立ち木4の両側に
配置した図であり、矢印の右側は2つのユニットネット
10を立ち木4と干渉しないように連結した図である。
連結するに当たって、立ち木と干渉してしまうリング1
4をそれぞれのユニットネット10から一つずつ除去
し、それから連結用のリング12を用いて立ち木4を取
り囲むようにユニットネット10同士を連結する。この
ようにすれば、施工現場で簡単に立ち木4を避けてネッ
トを張ることができる。
【0034】<ネット>図6は、上記のリング部品21
を用いてユニットネットを形成し、ユニットネット同士
をリング21aで連結して斜面安定用のネット3を形成
した図である。なお、ユニットネット同士を連結すると
元のユニットネットは判別できなくなるので、図6には
ユニットネットは示していない。
【0035】多数のリング部品が、リング21aを形成
しながら縦横に連結されてネット3が形成されている。
このネット3は、その周囲に巡らせたワイヤー26及び
巻き付けグリップ29にコイル線27によって結合され
ている。巻き付けグリップ29は、上記リング部品と同
様に撚り線部の両端に巻き付け部を設けたものであり、
ネット角部に配置され巻き付け部が隣り合うワイヤー2
6、26に巻き付けられて、このワイヤー26、26同
士を連結している。また、巻き付けグリップ29、ワイ
ヤー26、及びネット3の適宜の箇所は、アンカー部材
の一部である押さえ板6によって斜面に固定されてい
る。
【0036】従って、上記のネット3によれば、連結さ
れたリング21a、21a同士が相対的に回転し、また
連結位置を変えることができるだけでなく、リング21
a自体が柔軟性を有するため、地面の凸凹に沿わせるこ
とが容易になる。しかも、ネット3内の石が移動すると
きには、ネット3が変形しながらこれを食い止めること
になり、ネット3の破損やそれに伴う落石を防ぐ上で有
利になる。
【0037】また、上記ネット3の大きさや形状は、使
用するユニットネットの数や配置、すなわち使用するリ
ング21aの数や配置によって自由に調節することがで
き、さらには図6に示すようにリング21aが欠損した
欠損部24を簡単に作ることができ、この欠損部24に
よって図1のようにネット3を張る斜面に立ち木4があ
っても、立ち木4との干渉を避けることができる。
【0038】<アンカー部材>アンカー部材8は、図7
に示すように押さえ板6、下支圧板38、及びアンカー
ロッド5によって構成されている。下支圧板38は、中
央に貫通孔34を有するボス部35が形成され、該ボス
部35より線材受け入れ部36が四方へ突出して十字形
になっている。その十字形の各々の先端に上方へ突出し
た嵌合部37が設けられている。押さえ板6は、円板状
のものであって、中央に上記貫通孔34に対応する貫通
孔39が形成され、該貫通孔39の周囲に上記嵌合部3
7に対応する嵌合孔40が形成されている。ここでは、
下支圧板38は十字形で、押さえ板6は円板状である
が、いずれも形状はここに示す形状に限定されない。両
方ともに円形、十字形、三角形や四角形等の多角形でも
良いし、下支圧板38と押さえ板6との形状が異なって
いても構わない。
【0039】アンカーロッド5は、ジャックハンマー等
により回転力と打撃力とを与えられて、基礎岩盤等の地
中の安定な地盤にまで斜面に孔を穿設する。その孔の該
アンカーロッド5の周囲に注入固化材のグラウトを注入
してアンカーロッド5を地中の安定岩盤に固定する。な
お、ここではアンカーロッド5を自穿孔ロッドとして用
いているが、該アンカーロッドを穿孔専用とし、その穿
孔後に別のアンカーロッドを孔に挿入するようにしても
よい。
【0040】固定されたアンカーロッド5の地上に突き
出した先端部に下支圧板38を通し、その線材受け部3
6の上にリング21aやワイヤー26等の線材をボス部
35の周面に沿わせるように載せる。そして、押さえ板
6をアンカーロッド5に通して上記嵌合部37と嵌合孔
40とを嵌合し、ナット31によって押さえ板6を下支
圧板38に締め付けて、さらにネット3を斜面に押さえ
つける。このように下支圧板38と押さえ板6とでリン
グ21aやワイヤー26等を挟み込み締め付けること
で、アンカー部材8にネット3を結合させ、アンカー部
材8によってネット3を斜面に固定する。ここで、嵌合
部37が嵌合孔40に嵌合するので、線材受け入れ部3
6に載せたリング21aやワイヤー26等は、押さえ板
6と下支圧板38の間から外れることはなく、アンカー
部材8にネット3は確実に結合されている。ナット31
の外れ防止等のために、ナット31の上にキャップを被
せても良いし、キャップ付きのナットを用いても良い。
【0041】なお、ここでは、アンカー部材として下支
圧板や押さえ板を用いているが、リングやワイヤー等を
アンカーロッドに巻き付け等で結合させるだけでも良
い。
【0042】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に述べる効果を奏する。
【0043】複数本の金属線が撚り合わされた線材によ
り形成されたリングを多数連結してネットを形成し、該
ネットを斜面に張り地中の安定地盤に固定したアンカー
部材に結合させて斜面にネットを固定するので、地面の
凸凹や立ち木等にも対応して斜面を押さえて落石や地滑
り等を防ぐことができる。また、立ち木を伐採したり地
面の整形が不要なので、自然環境を大きく破壊すること
がなく、工期の短縮とコストの削減が可能となる。
【0044】予めユニットネットを複数用意しておい
て、施工現場で立ち木を避けながらリングで連結してネ
ットを形成するので、施工が容易に短時間で行える。ま
た、連結用のリングがネット構成するリングと同じもの
なので、ネットは強度と柔軟性が一様になり、応力の集
中を避けられる。
【0045】立ち木を避けるため、ユニットネットのリ
ングの一部を除去してユニットネットを連結するので、
立ち木があっても簡単に且つ短時間でネットを張ること
ができる。
【0046】複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り
線部と、該撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設け
られ、リングを形成するために該撚り線部の反対側の部
位に巻き付けられる巻き付け部とを有し、該巻き付け部
は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃えられ且つ上記
撚り線部の反対側の部位に巻き付くように該撚り線部の
撚り方向と同方向に螺旋状に捻られているから、柔軟性
を有し、且つ解け難い強いリングを簡単に形成すること
ができ、このようなリング部品同士を縦横に連結してい
くことによって、斜面の状況に応じた適宜形状の柔軟性
を有するカバーネットを簡単に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る斜面安定化工法を示す図。
【図2】実施の形態に係るリング部品の斜視図。
【図3】リングの連結状態を示す斜視図。
【図4】ユニットネットの連結状態を示す図。
【図5】立ち木を避けてユニットネットを連結する方法
を示す平面図。
【図6】ネットを上方から見た図
【図7】アンカー部材の斜視図
【符号の説明】 1 山地の斜面 2 地滑り面 3 ネット 4 立ち木 5 アンカーロッド 6 押さえ板 8 アンカー部材 10 ユニットネット 11 連結されたユニットネット 12 連結リング 14 立ち木と干渉するリング(除去するリング) 21 リング部品 21a リング 22 撚り線部 22a 中央直線部 22b 両側直線部 22c 端部直線部 22d 角部 23 巻き付け部 24 欠損部 26 ワイヤー 27 コイル線 29 巻き付けグリップ 31 ナット 32 キャップ 34 貫通孔 35 ボス部 36 線材受け部 37 嵌合部 38 下支圧板 39 貫通孔 40 嵌合孔 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年4月15日(2002.4.1
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 斜面安定化工法
【特許請求の範囲】
請求項2請求項1において、 上記リングは、上記複数本の金属線が撚り合わされてな
る撚り線部と、 上記撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設けられ、
リングを形成するために該撚り線部の他方の端の部位に
巻き付けられる巻き付け部とを有し、 上記巻き付け部は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃
えられ、且つ上記撚り線部の他方の端の部位に巻き付く
ように該撚り線部の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られ
ていることを特徴とする斜面安定化工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜面の落石や地滑
り等を防止するための斜面安定化工法に関する。
【0002】
【従来の技術】山腹等の斜面の落石や地滑りなどを防止
する工法の一例としてワイヤネット工法がある。これ
は、斜面に多数のロープ(ワイヤ)を縦横に張り、ロー
プ同士の交点を結合することによってネットを形成する
と共に、各ロープの両端及び中間の適宜の箇所を斜面に
固定するものである。また、ロープかけ工法は、上記ワ
イヤネットの上から菱形金網を被せ、該金網の適宜の箇
所をロープに結合するようにしたものであり、ロープと
金網とを併用したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記ワイヤネット工法
では、当該ネットの網目を細かくしないと小さな石の落
下を防ぐことができない。上記ロープかけ工法では、金
網によって小さな石の落下を防ぐことができるが、斜面
に凸凹がある場合、菱形金網を該凸凹に沿わせて設ける
ことが難しい。これは、菱形金網が柔軟性に欠けるため
である。また、例えば落石が発生した際には、菱形金網
が変形しながらその落石のエネルギーを吸収できること
が望ましいが、上述の如く菱形金網は柔軟性に欠けるた
め、落石発生箇所に応力が集中して金網が破壊されやす
い。
【0004】また、斜面に立ち木が有る場合、菱形金網
をその部分で分断し、この分断した菱形金網を立ち木の
周囲で別途連結する必要がある。また、菱形金網の場合
は、その列線を長くするにも製造上の限界があるから、
落石や地滑り等を防止すべき斜面が広い場合には、相隣
り合う菱形金網同士を部分的に重ね合わせて列線の長手
方向に連結していく必要がある。しかし、このような重
なり部を設けることは材料の浪費になると共に、金網を
山肌に沿わせることも難しくなり、さらにはネット全体
としてみたときの強度が一様でなくなるために、落石時
には強度の低い部分に応力が集中しやすくなる。
【0005】本発明はこのような事情に鑑みてなされた
ものであり、その目的とするところは、多数のリングを
連結させることにより斜面の凸凹等に応じた任意形状の
ネットを形成し、該ネットを斜面に張って固定する斜面
安定化工法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上述の目的を実現するた
めの請求項1に係る発明は、立ち木のある斜面に適用す
る斜面安定化工法であって、複数本の金属線が撚り合わ
された線材により形成されたリングが縦横に連結されて
なる所定の大きさのユニットネットを複数準備し、立ち
木を避けながら複数の上記ユニットネットを上記斜面に
張るとともにそのユニットネット同士を上記リングで連
結する第1工程と、アンカー部材により上記ユニットネ
ットを斜面に固定する第2工程とを備え、上記第1工程
では、上記ユニットネットから上記立ち木と干渉するリ
ングを除去し、当該立ち木を囲むようにそのユニットネ
ット同士を連結することを特徴とする。
【0007】このような構成であれば、ネットはリング
を連結することで形成されるので、該ネットの大きさや
形状はリングの数や配置によって自由に調節することが
でき、さらには立ち木があっても、立ち木を囲むように
リングの欠損部をネットに簡単に作ることができる。
【0008】また、リングは複数本の金属線が撚り合わ
されているので、これと同等の径を有する単線に比べて
曲がりやすい。つまり、連結されたリング同士が相対的
に回転し、また連結位置を変えることができるだけでは
なく、リング自体が柔軟性を有するのである。このた
め、地面の凸凹に沿うようにネット形状を自由に定める
ことができる。そして、ネット内の石が移動するときは
ネットが変形しながらこれを食い止めるため、ネットの
破損やそれに伴う落石を防ぐことができる。
【0009】また、アンカー部材にネットを結合し、ネ
ットを斜面に固定するので、斜面の石や土砂等を確実に
押さえつけて動かないようにできる。ここで、アンカー
部材が固定される地中の安定地盤とは、基礎岩盤等であ
って、地滑り面の下側の地盤等も含まれる。
【0010】そうして、予めリングを連結して形成され
た所定の大きさのユニットネットを複数作成しておい
て、それらを斜面に運んで立ち木を避けながらユニット
ネット同士をリングで連結して全体として一つのネット
とするので、ユニットネットの準備や運搬が容易である
とともに、斜面での施工が簡単で短時間でできる。ま
た、ユニットネット同士を連結するリングもユニットネ
ットを形成しているリングと同じなので、連結してでき
たネットは全て同種のリングからできていてネット内の
柔軟性や強度が一様となり応力集中しにくい。なお、ユ
ニットネットは、リングを数個から数十個縦横に連結し
て作成した小ネットであることが好ましい。ユニットネ
ットの大きさは、運搬のしやすさと施工のしやすさによ
り適宜の大きさを選択すれば良い。そのような観点か
ら、ユニットネットは数十cm×数十cm〜数m×数m
の方形であることが好ましい。
【0011】また、上記ユニットネットから上記立ち木
と干渉するリングを除去し、当該立ち木を囲むようにそ
のユニットネット同士を連結するので、施工現場におい
て立ち木に容易に対応でき、簡単に且つ短時間で立ち木
部分のリングを除去したネットを形成することができ
る。
【0012】次に、請求項2に係る発明は、請求項1
おいて、上記リングは、上記複数本の金属線が撚り合わ
されてなる撚り線部と、上記撚り線部の少なくとも一方
の端に続いて設けられ、リングを形成するために該撚り
線部の他方の端の部位に巻き付けられる巻き付け部とを
有し、上記巻き付け部は、上記複数本の金属線が帯状に
引き揃えられ、且つ上記撚り線部の他方の端の部位に巻
き付くように該撚り線部の撚り方向と同方向に螺旋状に
捻られていることを特徴とする斜面安定化工法である。
【0013】リングがこのような構成であれば、撚り線
部の一方の端の巻き付け部を撚り線部の他方の端の部位
に巻き付けることによってリング形状とすることができ
る。2つのリングの連結も、一方をリング形状(閉じた
環状)としておいて、他方のリング部品(巻き付けをし
ていなくて閉じていないもの)を一方のリングに通して
から巻き付けてリング形状とすることにより、簡単に行
える。
【0014】リングの巻き付け部は、複数本の金属線が
帯状に引き揃えられているから、撚り線部の周面に沿い
やすく、また、予め螺旋状に捻られているから巻きの戻
りを生ずることがない。しかも、その螺旋巻き方向は撚
り線部の撚り方向と同方向であるから、巻き付け部を撚
り線部に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合
い、軸方向(撚り線部の長手方向)の引っ張りに対する
抵抗力が大きくなる。
【0015】上記リング部品の形状としては、両端部が
(つまり、撚り線部の一方の端の巻き付け部と撚り線部
他方の端の部位とが)行き違いになった矩形状、その
他の多角形状、円形状、楕円形状のいずれであってもよ
い。
【0016】上記リングの巻き付け部は、上記帯状に引
き揃えられた金属線同士が解けないように接着処理され
ていることが好ましい。これにより、巻き付け部の撚り
線部に対する巻き付けが解け難くなるからである。
【0017】また、上記巻き付け部は、上記螺旋の軸心
側を向いた内面に滑り止め材が塗布されていることが好
ましい。これにより、巻き付け部と撚り線部との間で滑
りを生じ難くなり、巻き付け強度が高くなるからであ
る。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。
【0019】<斜面安定化工法の手順>図1は、本発明
の斜面安定化工法を施した山地の斜面の図である。この
図を用いて斜面安定化工法の手順を説明する。 リングを縦横に連結させて約2m四方のユニットネッ
トを複数作成しておく。 山地等の斜面1に立ち木4と干渉しないようにユニッ
トネットを並べて、ユニットネット同士をリングで連結
してネット3を形成する。こうして、ネット3は斜面1
に張られる。 ネット3の周縁部及びネット3の内側の適宜の箇所を
地中の安定地盤に固定すべくアンカーロッド5によって
地滑り面2の下まで地面を穿孔していく。 上記穿孔に使用したアンカーロッド5を地面に打ち込
んだままとし、中央に貫通孔を有する下支圧板(アンカ
ー部材の一部、図示省略)をこのアンカーロッド5に通
して地面に設置する。 上記下支圧板の中央貫通孔より、地面に穿孔された孔
のアンカーロッド5の回りにグラウトを注入し固化させ
て、アンカーロッド5を地中の安定地盤に固定する。 上記下支圧板の上にネット3の線材を載せた後、中央
に貫通孔を有する押さえ板6(アンカー部材の一部)を
アンカーロッド5に通し、下支圧板に係合させる。こう
して下支圧板と押さえ板6とでネット3を挟み込む。 押さえ板6の上から上記アンカーロッド5の地面の上
に突き出している部分(雄ねじが切ってある)にナット
を螺合し、押さえ板6を地面に締め付け、ナットの上に
キャップ32を被せて固定する。以上によりネット3が
地面に固定される。
【0020】次に、本工法に用いられるリングとユニッ
トネットおよびネット、アンカー部材について説明す
る。
【0021】<リング>図2は、リング部品(端部の巻
き付けをしていなくて閉じていないもの)の斜視図であ
る。
【0022】図2のリング部品21は、複数本の金属線
(本例は4本の亜鉛メッキ鋼線)によって形成されてい
て、この複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り線部
22と、該撚り線部22の両端の各々に続く巻き付け部
23、23とを有し、該巻き付け部23、23同士が行
き違いになった矩形状に形成されている。
【0023】上記撚り線部22は、中央直線部22a、
該中央直線部22aの両端に続く等長の両側直線部22
b、22b、及び該両側直線部22b、22bに続く端
部直線部22c、22cを備えている。そうして、この
撚り線部22の端部直線部22c、22cに上記巻き付
け部23、23が直線状に連なっている。撚り線部22
の4つの角部22dは、リング部品21がなす面より少
し起こされている。
【0024】巻き付け部23、23は、リング部品21
によってリングを形成するために、撚り線部22の相手
側の端部直線部22c、22cに巻き付けられ、さらに
は巻き付け部23、23同士も互いに一部巻き付けられ
るものである。そのために、この巻き付け部23は、上
記複数の金属線が帯状に引き揃えられて、撚り線部22
の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られることによって形
成されている。この巻き付け部23の螺旋巻きのピッチ
は、撚り線部22の撚りのピッチよりも長くなってい
る。
【0025】また、上記巻き付け部23は、帯状に引き
揃えられた金属線同士が解けないように、当該帯の片面
に接着液が塗布されて接着処理がなされて螺旋状に捻ら
れている。この接着液が塗布された面は、巻き付け部2
3の螺旋の軸心側を向いた内面になっており、且つこの
接着液は乾いた表面がざらついていて滑り止め材として
働くようになっている。
【0026】図3は、リングの斜視図であって、左側に
はもう一つのリングと連結しているところが示してあ
る。すなわち、図2のリング部品21は、その両端の行
き違いになった巻き付け部23、23をそれぞれ相手側
の端部直線部22c、22cに巻き付けることによって
矩形のリング21aを形成することができる。リング2
1a、21a同士は、互いの角部22d、22dを係合
させるようにすれば、該角部22d、22dが矩形面か
ら立ち上がっているから、互いの矩形面をねじることな
く平面的に設けることができる。
【0027】従って、上記リング部品21によれば、巻
き付け部23を撚り線部22の端部直線部22cに巻き
付けることによって矩形のリング21aを簡単に形成す
ることができる。そうして、上記巻き付け部23は、複
数本の金属線が帯状に引き揃えられているから、撚り線
部22の周面に沿いやすく、また、予め螺旋状に捻られ
ているから、巻きの戻りを生ずることがない。さらに、
巻き付け部23の螺旋巻き方向は、撚り線部22の撚り
方向と同方向であるから、巻き付け部23を撚り線部2
2に巻き付けたとき、互いの金属線同士が絡み合い、軸
方向の引っ張りに対する抵抗力が大きくなる。しかも、
巻き付け部23は接着処理されているから、撚り線部2
2に対する巻き付けが解け難く、さらにその接着剤が撚
り線部22に対する滑り止めとして働くから巻き付け強
度が高くなり、大きな外力を受けても解けなくなる。
【0028】また、上記撚り線部22は、これと同等の
径を有する単線に比べて曲がりやすく、撚り線部22に
巻き付け部23が巻き付けられた部位も同様に曲がりや
すい。このため、施工現場の状況に応じた適正形状のネ
ットを形成する上で有利になる。この点については後述
する。
【0029】<ユニットネット>図4の左側は、2つの
ユニットネット10を並べた図で、矢印の右側は、2つ
のユニットネット10をリング12を用いて連結した図
である。
【0030】ユニットネット10は、上で説明したリン
グ21aをここでは18個連結して作成されている。ユ
ニットネット10は工場等で作成しておいて施工現場に
運搬しても良いし、施工現場やその近辺で作成しても良
い。ユニットネット10の大きさも任意に決めることが
でき、リング21aの数を増減することで大きさは容易
に変えることができる。
【0031】ユニットネット10同士は、連結用のリン
グ12を用いることで容易に連結することができる。こ
こでは、3つの連結用のリング12を用いて2つのユニ
ットネット10を連結している。連結用のリング12
は、ユニットネット10を構成しているリング21aと
同種のものである。このように同種のものを用いると、
強度や柔軟性が連結されたユニットネット11全体で均
一となり、ネット下の石が動いても応力が集中すること
がなく、ネット全体として落石等を防ぐことができる。
【0032】次に図5は、立ち木4がある場所でのユニ
ットネット10同士の連結を示した平面図である。矢印
の左側は2つのユニットネット10を立ち木4の両側に
配置した図であり、矢印の右側は2つのユニットネット
10を立ち木4と干渉しないように連結した図である。
連結するに当たって、立ち木と干渉してしまうリング1
4をそれぞれのユニットネット10から一つずつ除去
し、それから連結用のリング12を用いて立ち木4を取
り囲むようにユニットネット10同士を連結する。この
ようにすれば、施工現場で簡単に立ち木4を避けてネッ
トを張ることができる。
【0033】<ネット>図6は、上記のリング部品21
を用いてユニットネットを形成し、ユニットネット同士
をリング21aで連結して斜面安定用のネット3を形成
した図である。なお、ユニットネット同士を連結すると
元のユニットネットは判別できなくなるので、図6には
ユニットネットは示していない。
【0034】多数のリング部品が、リング21aを形成
しながら縦横に連結されてネット3が形成されている。
このネット3は、その周囲に巡らせたワイヤー26及び
巻き付けグリップ29にコイル線27によって結合され
ている。巻き付けグリップ29は、上記リング部品と同
様に撚り線部の両端に巻き付け部を設けたものであり、
ネット角部に配置され巻き付け部が隣り合うワイヤー2
6、26に巻き付けられて、このワイヤー26、26同
士を連結している。また、巻き付けグリップ29、ワイ
ヤー26、及びネット3の適宜の箇所は、アンカー部材
の一部である押さえ板6によって斜面に固定されてい
る。
【0035】従って、上記のネット3によれば、連結さ
れたリング21a、21a同士が相対的に回転し、また
連結位置を変えることができるだけでなく、リング21
a自体が柔軟性を有するため、地面の凸凹に沿わせるこ
とが容易になる。しかも、ネット3内の石が移動すると
きには、ネット3が変形しながらこれを食い止めること
になり、ネット3の破損やそれに伴う落石を防ぐ上で有
利になる。
【0036】また、上記ネット3の大きさや形状は、使
用するユニットネットの数や配置、すなわち使用するリ
ング21aの数や配置によって自由に調節することがで
き、さらには図6に示すようにリング21aが欠損した
欠損部24を簡単に作ることができ、この欠損部24に
よって図1のようにネット3を張る斜面に立ち木4があ
っても、立ち木4との干渉を避けることができる。
【0037】<アンカー部材>アンカー部材8は、図7
に示すように押さえ板6、下支圧板38、及びアンカー
ロッド5によって構成されている。下支圧板38は、中
央に貫通孔34を有するボス部35が形成され、該ボス
部35より線材受け入れ部36が四方へ突出して十字形
になっている。その十字形の各々の先端に上方へ突出し
た嵌合部37が設けられている。押さえ板6は、円板状
のものであって、中央に上記貫通孔34に対応する貫通
孔39が形成され、該貫通孔39の周囲に上記嵌合部3
7に対応する嵌合孔40が形成されている。ここでは、
下支圧板38は十字形で、押さえ板6は円板状である
が、いずれも形状はここに示す形状に限定されない。両
方ともに円形、十字形、三角形や四角形等の多角形でも
良いし、下支圧板38と押さえ板6との形状が異なって
いても構わない。
【0038】アンカーロッド5は、ジャックハンマー等
により回転力と打撃力とを与えられて、基礎岩盤等の地
中の安定な地盤にまで斜面に孔を穿設する。その孔の該
アンカーロッド5の周囲に注入固化材のグラウトを注入
してアンカーロッド5を地中の安定岩盤に固定する。な
お、ここではアンカーロッド5を自穿孔ロッドとして用
いているが、該アンカーロッドを穿孔専用とし、その穿
孔後に別のアンカーロッドを孔に挿入するようにしても
よい。
【0039】固定されたアンカーロッド5の地上に突き
出した先端部に下支圧板38を通し、その線材受け部3
6の上にリング21aやワイヤー26等の線材をボス部
35の周面に沿わせるように載せる。そして、押さえ板
6をアンカーロッド5に通して上記嵌合部37と嵌合孔
40とを嵌合し、ナット31によって押さえ板6を下支
圧板38に締め付けて、さらにネット3を斜面に押さえ
つける。このように下支圧板38と押さえ板6とでリン
グ21aやワイヤー26等を挟み込み締め付けること
で、アンカー部材8にネット3を結合させ、アンカー部
材8によってネット3を斜面に固定する。ここで、嵌合
部37が嵌合孔40に嵌合するので、線材受け入れ部3
6に載せたリング21aやワイヤー26等は、押さえ板
6と下支圧板38の間から外れることはなく、アンカー
部材8にネット3は確実に結合されている。ナット31
の外れ防止等のために、ナット31の上にキャップを被
せても良いし、キャップ付きのナットを用いても良い。
【0040】なお、ここでは、アンカー部材として下支
圧板や押さえ板を用いているが、リングやワイヤー等を
アンカーロッドに巻き付け等で結合させるだけでも良
い。
【0041】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に述べる効果を奏する。
【0042】複数本の金属線が撚り合わされた線材によ
り形成されたリングを多数連結してネットを形成し、該
ネットを斜面に張り地中の安定地盤に固定したアンカー
部材に結合させて斜面にネットを固定するので、地面の
凸凹や立ち木等にも対応して斜面を押さえて落石や地滑
り等を防ぐことができる。また、立ち木を伐採したり地
面の整形が不要なので、自然環境を大きく破壊すること
がなく、工期の短縮とコストの削減が可能となる。
【0043】予めユニットネットを複数用意しておい
て、施工現場で立ち木を避けながらリングで連結してネ
ットを形成するので、施工が容易に短時間で行える。ま
た、連結用のリングがネット構成するリングと同じもの
なので、ネットは強度と柔軟性が一様になり、応力の集
中を避けられる。
【0044】立ち木を避けるため、ユニットネットのリ
ングの一部を除去してユニットネットを連結するので、
立ち木があっても簡単に且つ短時間でネットを張ること
ができる。
【0045】複数本の金属線が撚り合わされてなる撚り
線部と、該撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設け
られ、リングを形成するために該撚り線部の他方の端
部位に巻き付けられる巻き付け部とを有し、該巻き付け
部は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃えられ且つ上
記撚り線部の他方の端の部位に巻き付くように該撚り線
部の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られているから、柔
軟性を有し、且つ解け難い強いリングを簡単に形成する
ことができ、このようなリング部品同士を縦横に連結し
ていくことによって、斜面の状況に応じた適宜形状の柔
軟性を有するカバーネットを簡単に形成することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る斜面安定化工法を示す図。
【図2】実施の形態に係るリング部品の斜視図。
【図3】リングの連結状態を示す斜視図。
【図4】ユニットネットの連結状態を示す図。
【図5】立ち木を避けてユニットネットを連結する方法
を示す平面図。
【図6】ネットを上方から見た図
【図7】アンカー部材の斜視図
【符号の説明】 1 山地の斜面 2 地滑り面 3 ネット 4 立ち木 5 アンカーロッド 6 押さえ板 8 アンカー部材 10 ユニットネット 11 連結されたユニットネット 12 連結リング 14 立ち木と干渉するリング(除去するリング) 21 リング部品 21a リング 22 撚り線部 22a 中央直線部 22b 両側直線部 22c 端部直線部 22d 角部 23 巻き付け部 24 欠損部 26 ワイヤー 27 コイル線 29 巻き付けグリップ 31 ナット 32 キャップ 34 貫通孔 35 ボス部 36 線材受け部 37 嵌合部 38 下支圧板 39 貫通孔 40 嵌合孔

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数本の金属線が撚り合わされた線材に
    より形成されたリングを多数連結させて形成したネット
    を斜面に張り、 地中の安定地盤に固定したアンカー部材に上記ネットを
    結合させ、 上記アンカー部材によって上記ネットを斜面に固定する
    ことを特徴とする斜面安定化工法。
  2. 【請求項2】 立ち木のある斜面に適用する斜面安定化
    工法であって、 複数本の金属線が撚り合わされた線材により形成された
    リングが縦横に連結されてなる所定の大きさのユニット
    ネットを複数準備し、 立ち木を避けながら複数の上記ユニットネットを斜面に
    張るとともにユニットネット同士を上記リングで連結す
    る工程と、 アンカー部材により上記ユニットネットを斜面に固定す
    る工程とを備えていることを特徴とする斜面安定化工
    法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、 立ち木を避けるために上記ユニットネットを構成する上
    記リングの一部を除去する工程を備えていることを特徴
    とする斜面安定化工法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかにおいて、 上記リングは、上記複数本の金属線が撚り合わされてな
    る撚り線部と、 上記撚り線部の少なくとも一方の端に続いて設けられ、
    リングを形成するために該撚り線部の反対側の部位に巻
    き付けられる巻き付け部とを有し、 上記巻き付け部は、上記複数本の金属線が帯状に引き揃
    えられ、且つ上記撚り線部の反対側の部位に巻き付くよ
    うに該撚り線部の撚り方向と同方向に螺旋状に捻られて
    いることを特徴とする斜面安定化工法。
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