JP2002201180A - 新規なルテニウム化合物及びその使用方法 - Google Patents

新規なルテニウム化合物及びその使用方法

Info

Publication number
JP2002201180A
JP2002201180A JP2001126970A JP2001126970A JP2002201180A JP 2002201180 A JP2002201180 A JP 2002201180A JP 2001126970 A JP2001126970 A JP 2001126970A JP 2001126970 A JP2001126970 A JP 2001126970A JP 2002201180 A JP2002201180 A JP 2002201180A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
ylidene
compound
reaction
ruthenium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2001126970A
Other languages
English (en)
Inventor
Seiji Okada
誠司 岡田
Kazunori Taguchi
和典 田口
Yasuo Tsunokai
靖男 角替
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Zeon Corp
Original Assignee
Nippon Zeon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Zeon Co Ltd filed Critical Nippon Zeon Co Ltd
Priority to JP2001126970A priority Critical patent/JP2002201180A/ja
Priority to PCT/JP2001/009206 priority patent/WO2002034723A1/ja
Publication of JP2002201180A publication Critical patent/JP2002201180A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Catalysts (AREA)
  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 オレフィン化合物のメタセシス反応及びオレ
フィン化合物の水素化反応において高い触媒活性を有
し、かつ安定性に優れた新規なルテニウム錯体及びその
製造方法、該錯体をオレフィンメタセシス反応用触媒ま
たは水素化反応用触媒として使用する方法が提供するこ
と。 【解決手段】 窒素原子に置換基を有し、さらに芳香族
性環とイミダゾリン環とが2個の炭素原子を共有して縮
合した構造を有する置換イミダゾリン−2−イリデンが
配位してなるルテニウム化合物を、オレフィンメタセシ
ス反応及びオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水
素化反応に用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なルテニウム
化合物及び該化合物を用いたオレフィン化合物のメタセ
シス重合法及び重合体の水素化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オレフィン化合物のメタセシス反応は、
開環メタセシス重合、閉環メタセシス反応、非環状オレ
フィンのクロスメタセシス反応、非環状ジエンのメタセ
シス反応など、工業的にも有用な反応である。この触媒
としては、従来、タングステン、モリブデン、チタンな
どの遷移金属化合物が主に用いられているが、最近で
は、水やアルコールの影響を受けにくいという利点を持
つルテニウム−カルベン結合を有する錯体化合物(以
降、ルテニウム−カルベン錯体ということがある。)が
注目されている。例えば、特表平9−512828号公
報には、ホスフィンを配位子とするルテニウム−カルベ
ン錯体が、高活性なオレフィンメタセシス反応触媒とし
て開示されている。また、特開平10−195182号
公報には、該ルテニウム−カルベン錯体で環状オレフィ
ン類を開環メタセシス重合したのち、その錯体を水素化
用触媒として使用することにより、開環重合体を水素化
する方法が開示されている。また、Ru化合物を水素化
触媒として重合体のオレフィン性不飽和結合を水素化し
た報告例は、特開平6−25325、特開平9−176
233、特開平11−138009、特開平7−292
9、特開平7−149823、特開平11−15825
6、特開平11−193323、特開平11−2094
60などを挙げることができ、いずれも少なくとも一つ
以上のホスフィン類を配位子として有するルテニウム化
合物を水素化触媒として用いているが、水添触媒活性は
どれも十分に高いとは言えず、より高活性な水素化触媒
の開発が望まれていた。
【0003】一方、国際公開WO99/51344号公
報、同WO00/15339号公報には、置換イミダゾ
リン−2−イリデンまたは置換イミダゾリジン−2−イ
リデンを配位子として使用すると、メタセシス反応触媒
活性はさらに向上することが開示されている。しかし、
これらの触媒であっても、工業的に利用するには依然と
して活性が不足しており、溶液中での錯体の安定性も十
分ではなく、分解し易いという問題もあった。さらに、
置換イミダゾリジン−2−イリデンはN位の置換基の種
類によっては合成できないものが多く、目的とするメタ
セシス反応に最適な触媒が容易に得られない場合もあっ
た。一方、ベンズイミダゾリン−2−イリデン化合物お
よびそれらの合成例は、Chem.Eur.J.,Vo
l.5,No.6 1931−1935(1999)に
報告されているが、その合成方法は危険な操作を伴い、
長時間を要し、合成が困難であるため、この化合物を配
位子として持つルテニウム−カルベン錯体は得られては
いなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、工業
的に利用できる程度の活性を有し、安定で、新規なルテ
ニウム化合物を提供することにある。さらに、該錯体を
オレフィンメタセシス反応用触媒または重合体の水素化
反応用触媒として使用する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意研究を行った結果、炭素−炭素不
飽和結合をイミダゾリン環と共有する芳香族性環構造を
有する置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として
有する新規なルテニウム−カルベン錯体を安全でしかも
簡便な方法により合成することに初めて成功し、さらに
該ルテニウム−カルベン錯体が、オレフィンメタセシス
反応の極めて高活性で、しかも安定な触媒であることを
見出し、また、ヘテロ原子を有するカルベン化合物が配
位してなる周期表第8〜10族遷移金属化合物、特にヘ
テロ原子を有するカルベン化合物が配位したルテニウム
化合物が水素化触媒として、極めて高活性に重合体中の
オレフィン性不飽和結合を水素化できることを見出し、
本発明を完成するに至った。
【0006】かくして本発明によれば、芳香族性環とイ
ミダゾリン環とが2個の炭素原子を共有して縮合した構
造を有する置換イミダゾリン−2−イリデンが配位して
なるルテニウム化合物が提供される。本発明によれば、
前記のルテニウム化合物を用いたオレフィン化合物のメ
タセシス反応方法が提供される。また、本発明によれ
ば、ヘテロ原子を有するカルベン化合物が配位してなる
周期表第8〜10族遷移金属化合物を用いて、重合体中
のオレフィン性炭素−炭素不飽和結合を水素化する方法
が提供される。さらに本発明によれば、(1)隣接する
炭素それぞれに、少なくとも1個のアミノ基が結合した
芳香族性環化合物を脱プロトン反応させた後、二硫化炭
素を反応させることによって置換イミダゾリン−2−チ
オンを合成し、続いて脱硫黄反応によって置換イミダゾ
リウム塩を合成し、(2)得られた置換イミダゾリウム
塩を脱プロトン反応して、置換イミダゾリン−2−イリ
デンを合成し、(3)得られた置換イミダゾリン−2−
イリデンをルテニウム化合物と接触させて、置換イミダ
ゾリン−2−イリデンが配位したルテニウム化合物を合
成する方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明のメタセシス反応に用いら
れるルテニウム化合物は、芳香族性環とイミダゾリン環
とが2個の炭素原子を共有して縮合した構造を有する置
換イミダゾリン−2−イリデンがルテニウム原子に配位
してなる化合物である。本発明の置換イミダゾリン−2
−イリデンは、置換基を有するイミダゾリン環の2位の
炭素がメチレン遊離基である化合物である。メチレン遊
離基は、結合手を有する、電荷のない2価の炭素原子で
あり、(>C:)で表される。メチレン遊離基を有する
化合物は、一般的には不安定であり、ほとんどは反応中
間体として一時的にしか存在しないが、置換イミダゾリ
ン−2−イリデンは、メチレン遊離基がイミダゾリンの
1位、3位の窒素原子により安定化されるため、化合物
として単離することができる。上記の置換イミダゾリン
−2−イリデンは、通常、一般式[1]で示すことがで
きる。
【0008】
【化1】 (R及びRはそれぞれ独立に、水素又は置換基であ
り、好ましくは水素、ハロゲン原子又は炭素数1〜20
の炭化水素基である。RとRとは互いに結合して芳
香族性の環構造を形成する。)
【0009】R及びRで示される炭素数1〜20の
炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
基、及びアリール基からなる群から選択され、直鎖状で
も分岐状でも環状でもよい。また、該炭化水素基中の1
個以上の水素が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン
原子、及びけい素原子のいずれかを含む官能基、又はハ
ロゲン原子で置換されていてもよい。このような官能基
の具体例としては、ニトロ基、ニトロソ基、アルコキシ
基、アリールオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カ
ルボニル基、シリル基、スルホニル基などが挙げられ
る。
【0010】上記炭化水素基の中でも、炭素数1〜20
のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基が好まし
い。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル
基、シクロへキシル基、1−フェニルエチル基、1−ナ
フチルエチル基、1―tert−ブチルエチル基、te
rt−ブチル基などの、官能基を有しないアルキル基;
ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒ
ドロキシプロピル基、2−クロロエチル基、3−フロロ
プロピル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル
基、2−アセチルエチルアミノエチル基、エトキシエチ
ル基、エトキシアセチル基、メトキシカルボニルエチル
基、エトキシカルボニルエチル基などの、官能基を有す
るアルキル基;フェニル基、2−メチルフェニル基、4
−メチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、
2,6−ジイソプロピルフェニル基、メシチル基、ナフ
チル基などの、官能基を有しないアリ−ル基;2−アミ
ノフェニル基、4−アミノフェニル基、2−ヒドロキシ
フェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−クロロフ
ェニル基、4−クロロフェニル基、2−ニトロフェニル
基、4−ニトロフェニル基、2−アセトキシフェニル
基、4−アセトキシフェニル基などの、官能基を持つア
リ−ル基を挙げることができる。
【0011】RとRとが互いに結合して形成する芳
香族性の環構造は、特に限定されず、例えば、ベンゼン
環構造;ナフタレン環構造、ピレン環構造などの結合ベ
ンゼン環構造;ピリジン環構造、ピロール環構造、チオ
フェン環構造、フラン環構造などの複素芳香環構造など
が挙げられ、置換イミダゾリン−2−イリデンの安定
性、原料入手の容易性などの理由からベンゼン環構造、
結合ベンゼン環構造などが好ましい。
【0012】上記の置換イミダゾリン−2−イリデン
は、下記一般式[2]乃至一般式[10]によって、さ
らに具体的に示される。
【0013】
【化2】
【0014】
【化3】
【0015】
【化4】
【0016】
【化5】
【0017】
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】 (R〜R28は、それぞれ独立に、水素又は置換基で
ある。置換基はお互いに結合して環を形成してもよ
い。)
【0022】R〜R28で示される置換基の具体例と
しては、炭化水素基又は置換炭化水素基などが挙げられ
る。炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキ
ニル基、及びアリール基からなる群から選択され、直鎖
状でも分岐状でも環状でもよい。置換炭化水素基は、炭
化水素基中の1個以上の水素が、酸素原子、窒素原子、
硫黄原子、リン原子、及びけい素原子のいずれかを含む
基、又はハロゲン原子で置換されている炭化水素基であ
る。置換基の例としては、アルコキシ基、カルボキシル
基、アルキニル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオ
キシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、
アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、
アリールアミノ基、アルキルアミド基、アリールアミド
基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルス
ルホニル基、アルキルスルフィニル基、ハロゲン原子、
ニトロ基、ニトロソ基、及びシアノ基などを挙げること
ができる。
【0023】R〜R28は、水素、アルキル基、アリ
−ル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原
子、シアノ基が好ましく、水素、アルキル基、アルコキ
シ基、ハロゲン原子が特に好ましい。具体的には、水
素;メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−
ブチル基、シクロへキシル基などのアルキル基;メトキ
シ基、エトキシ基、イソプロポキシ基などのアルコキシ
基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子な
どを挙げることができる。互いに結合して環状を形成す
る場合には、ベンゼン環が好ましい。
【0024】本発明のルテニウム化合物は、上記の置換
イミダゾリン−2−イリデンがルテニウムに配位した化
合物であれば、いずれのものも含まれるが、メチレン遊
離基(>C:)がルテニウム金属と結合したルテニウム
−カルベン構造を有するルテニウム錯体化合物が、触媒
活性が高くて好ましい。一般にカルベンは不安定である
が、ルテニウムに結合することによって安定化する。該
ルテニウム化合物は下記一般式[11]で示すことがで
きる。
【0025】
【化11】 (式中、X及びXはそれぞれ独立に任意のアニオン
性配位子を示し、Lは任意の中性配位子を示す。R
29およびR30はそれぞれ独立に、水素又は置換基、
好ましくは水素、又は炭素数1〜20の炭化水素基を示
し、炭化水素基はハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、
硫黄原子、リン原子、又はけい素原子を含んでもよ
い。)
【0026】前記アニオン性配位子(X及びX
は、中心金属(Ru)から引き離されたときに負の電荷
を持つ配位子であればいかなるものでもよく、また中性
配位子(L)は、中心金属から引き離されたときに中
性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。
は、芳香族性環とイミダゾリン環とが2個の炭素原
子を共有して縮合した構造を有する置換イミダゾリン−
2−イリデンであってもよい。
【0027】このようなアニオン性配位子(X及びX
)の具体例としては、フッ素(F)、臭素(Br)、
塩素(Cl)及びヨウ素(I)などのハロゲン原子、水
素、アセチルアセトン、ジケトネート基、置換シクロペ
ンタジエニル基、置換アリル基、アルケニル基、アルキ
ル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、
アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルキルま
たはアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アル
ケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル
基、アルキルスルフィニル基を挙げることができる。
【0028】また、中性配位子(L)のその他の例と
しては、酸素原子、水、カルボニル、アミン類、ピリジ
ン類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィ
ン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシ
ド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族化合物、環状
ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオ
シアネ−ト類、及びカルベン化合物などが挙げられる。
【0029】R29、R30の具体例としては、水素、
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール
基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アルキニル
オキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル
基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホ
ニル基、及びアルキルスルフィニル基を挙げることがで
きる。
【0030】一般式〔11〕で示される本発明のルテニ
ウム化合物の具体例としては、ビス(N,N’−ジイソ
プロピルベンズイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリ
デンルテニウムジクロリド、ビス(N,N’−ジシクロ
ヘキシルベンズイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリ
デンルテニウムジクロリド、ビス(N,N’−ジフェニ
ルベンズイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンル
テニウムジクロリド、ビス(N,N’−ジシクロペンチ
ルベンズイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンル
テニウムジクロリドなどの、置換イミダゾリン−2−イ
リデンが2個配位したルテニウム化合物;
【0031】(N,N’−ジシクロヘキシルベンズイミ
ダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフ
ィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(N,N’
−ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イリデン)(ト
リシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム
ジクロリド、[N,N’−ジ(1−フェニルエチル)ベ
ンズイミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシ
ルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、
[N,N’−ジ(ジフェニルメチル)ベンズイミダゾリ
ン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)
ベンジリデンルテニウムジクロリド、[N,N’−ジ
(p−メチルフェニル)ベンズイミダゾリン−2−イリ
デン](トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデン
ルテニウムジクロリド、[N,N’−ジ(1−シクロへ
キシルエチル)ベンズイミダゾリン−2−イリデン]
(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニ
ウムジクロリドなどの、置換イミダゾリン−2−イリデ
ンと中性配位子がそれぞれ配位したルテニウム化合物な
どを挙げることができる。
【0032】ルテニウム化合物の合成方法 本発明の新規ルテニウム化合物は、任意の方法で合成で
きるが、以下の方法によると、安全且つ短時間で目的と
するルテニウム化合物を合成することが可能となる。
【0033】(1)置換イミダゾリウム塩を合成する工
程 まず、隣接する炭素それぞれに少なくとも1個のアミ
ノ基が結合した芳香族性環化合物の脱プロトン反応を行
った後、二硫化炭素を反応させて置換イミダゾリン−
2−チオンを合成し、次いで得られた置換イミダゾリ
ン−2−チオンの脱硫黄反応を行い置換イミダゾリウム
塩を合成する。原料として使用される上記芳香族性環化
合物は、例えば下記一般式[12]で示すことができ
る。
【0034】
【化12】
【0035】一般式[12]で表される芳香族性環化合
物は、例えば、一般式[12]のR 、Rが水素原子
である芳香族一級ジアミンとハロゲン化炭化水素を反応
させる方法、1,2-ジハロゲン化芳香族化合物とモノ
アルキルアミンとを反応させる方法など、既知の方法を
用いて合成することができる。
【0036】芳香族性環化合物の脱プロトン反応は特
に限定されないが、例えば、アルカリ金属化合物または
アルカリ土類金属化合物を反応させて、アルカリ金属イ
ミド、アルカリ土類金属イミドを形成させる方法を挙げ
ることができる。アルカリ金属化合物の具体例として
は、NaH、KH、(i−Pr)NLi、n−BuL
i、t−BuOK、t−BuONa、MeONa、Et
ONa、MeOK、EtOKなどを、アルカリ土類金属
化合物としては、CaH、MgH、(MeO)
g、(EtO)Mgなどを挙げることができる。i−
Prはイソプロピル、n−Buはn−ブチル、t−Bu
はt−ブチル、Meはメチル、およびEtはエチルをそ
れぞれの示す記号である。原料の芳香族性環化合物に対
する、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合
物のモル比は、通常0.1〜5、好ましくは0.5〜
1.5であり、多すぎても少なすぎても目的とする反応
が進行しにくくなる。
【0037】脱プロトン反応で得られた化合物に二硫化
炭素を反応させて、置換イミダゾリン−2−チオンを合
成する()。置換イミダゾリン−2−チオンは、例え
ば下記一般式[13]で示すことができる。
【0038】
【化13】
【0039】脱プロトン反応生成物に対する二硫化炭素
のモル比は、通常0.1〜10000、好ましくは0.
5〜100である。
【0040】反応温度は、生成する置換イミダゾリン−
2−チオンが安定に存在できる温度であればよいが、通
常は200℃以下であり、好ましくは−80〜100
℃、さらに好ましくは−10〜50℃である。反応時間
は、1分以上、好ましくは10分〜5時間である。反応
溶媒は、反応に不活性で、生成する置換イミダゾリン−
2−チオンを溶解するものであればよく、例えば、エー
テル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素
類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類などを挙げる
ことができる。中でも、エーテル類、芳香族炭化水素類
が好ましい。
【0041】次に、生成した置換イミダゾリン−2−チ
オンの脱硫黄反応を行い置換イミダゾリウム塩を合成す
る()。このとき、一度単離した置換イミダゾリン−
2−チオンを用いても良いし、前工程の反応溶液をその
まま使用してもよい。置換イミダゾリウム塩は、例えば
下記一般式[14]で示される化合物である。
【0042】
【化14】 (式中、Xは任意の陰イオンである。)
【0043】脱硫黄反応は、置換イミダゾリン−2−チ
オンをブレンステッド酸に接触させることによって行う
ことができる。ブレンステッド酸の具体例としては、H
Cl、HBr、HI、HNO、HSO、HB
、HPF、HSbFなどを挙げることができ
る。一般式[14]のXは、使用するブレンステッド
酸の種類によって決まる。また、上記のブレンステッド
酸の塩を同時に添加して、陰イオン交換を行って、X
をブレンステッド酸塩の陰イオンにしてもよい。置換イ
ミダゾリン−2−チオンに対する、ブレンステッド酸の
モル比は、0.1〜100、好ましくは0.5〜10で
ある。反応温度、反応時間、及び反応溶媒などの反応条
件は、上記の反応と同様の条件で構わない。
【0044】(2)置換イミダゾリン−2−イリデンを
合成する工程 上記一般式[14]で示される置換イミダゾリウム塩の
脱プロトン反応を行うことにより、置換イミダゾリン−
2−イリデンを合成できる。この化合物は、例えば下記
一般式[15]で示される化合物である。
【0045】
【化15】
【0046】使用する脱プロトン剤としては、例えば、
アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を挙
げることができる。これらの具体例は、(1)置換イミ
ダゾリウム塩を合成する方法で挙げたものと同様のもの
を使用することができる。
【0047】置換イミダゾリウム塩に対する、脱プロト
ン剤のモル比は、通常0.1〜100、好ましくは0.
5〜5である。反応温度は、生成する置換イミダゾリン
−2−イリデンが安定である温度であればよいが、通常
は200℃以下であり、好ましくは−80〜150℃、
さらに好ましくは0〜100℃である。反応時間は、1
分以上、好ましくは10分〜5時間である。反応溶媒
は、反応に不活性で、生成する置換イミダゾリン−2−
イリデンを溶解するものであればよく、例えば、エーテ
ル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、
芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類などを挙げること
ができる。中でも、エーテル類、芳香族炭化水素類が好
ましい。生成した置換イミダゾリン−2−イリデンは単
離することもできるが、反応液をそのまま次工程に使用
しても構わない。
【0048】従来、置換ベンズイミダゾリン−2−イリ
デンを得る方法として、アミンに毒性の強いチオホス
ゲンを反応させてチオ尿素を合成し、次いで置換イミ
ダゾリウム塩をつくらずに直接置換ベンズイミダゾリン
−2−イリデンを合成する方法が採用されていた。しか
し、反応が危険であったり、合成に1ヶ月以上の長期間
を要していた。本発明の方法によれば、危険な試薬を使
用せずに、極めて短時間で目的とする置換ベンズイミダ
ゾリン−2−イリデンを得ることができる。
【0049】(3)置換イミダゾリン−2−イリデン配
位ルテニウム化合物を合成する工程 このようにして得られた置換イミダゾリン−2−イリデ
ンは、中性配位子を有するルテニウム化合物と接触させ
て、該中性配位子と置換イミダゾリン−2−イリデンと
の配位子交換により、目的とする置換イミダゾリン−2
−イリデン配位ルテニウム化合物を合成することができ
る。上記の中性配位子としては中性の電荷を持つ配位
子、すなわちルイス塩基であればいかなるものでもよ
く、その具体例としては、酸素原子、水、カルボニル、
アミン類、ピリジン類、エ−テル類、ニトリル類、エス
テル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイ
ト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、
アミド類、芳香族化合物、環状ジオレフィン類、オレフ
ィン類、イソシアニド類、チオシアネ−ト類、カルベン
化合物などが挙げられる。
【0050】置換イミダゾリン−2−イリデンは、通
常、定量的にルテニウム化合物に配位するので、ルテニ
ウム化合物と等量の置換イミダゾリン−2−イリデンを
用いればよいが、過剰の置換イミダゾリン−2−イリデ
ンを用いても構わない。反応温度は、生成する置換イミ
ダゾリン−2−イリデン配位ルテニウム化合物が安定に
存在できる温度であればよいが、通常は200℃以下で
あり、好ましくは−80〜150℃、さらに好ましくは
−40〜100℃である。反応時間は、好ましくは1分
以上24時間以下、さらに好ましくは10分以上5時間
以下である。反応溶媒は、反応に不活性で、生成する置
換イミダゾリン−2−イリデン配位ルテニウム化合物を
溶解するものであればよく、例えば、エーテル類、ケト
ン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化
水素類、脂肪族炭化水素類などを挙げることができる。
中でも、エーテル類、芳香族炭化水素類が好ましい。な
お、一般式[11]に示されるルテニウム−カルベン錯
体の合成ルートの例を参考のために図1に示す。
【0051】3.メタセシス反応 本発明のルテニウム化合物は、オレフィンメタセシス反
応の高活性触媒として用いることができる。本発明のル
テニウム化合物は、従来困難であった官能基を有するオ
レフィン化合物のメタセシス反応においても高活性触媒
となる。オレフィン化合物の官能基としては、ハロゲン
原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、及び
けい素原子等を含有する官能基が挙げられ、具体的に
は、アルコキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ
基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキ
シカルボニル基、アルキルチオ基、アリ−ルチオ基、ア
ルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルアミド
基、アリールアミド基、アルキルシリル基、アリールシ
リル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル
基、ハロゲン原子、ニトロ基、ニトロソ基、及びシアノ
基などである。
【0052】ここで、オレフィン化合物のメタセシス反
応は、一般にオレフィンメタセシス反応といわれる反応
全般を含む(K.J.Ivin and J.C.Mo
l,Olefin Metathesis and M
etathesis Polymerization,
Academic Press,Tokyoなどを参
照)。例えば、開環メタセシス重合、閉環メタセシス反
応、非環状オレフィンのクロスメタセシス反応、非環状
ジエンメタセシス反応などを挙げることができる。オレ
フィンメタセシス反応は、無溶媒下で行っても、溶媒中
で行ってもよい。使用する溶媒は、反応させるオレフィ
ン化合物の種類により適宜に選択できる。本発明のルテ
ニウム化合物は、極性溶媒にも安定であるので、非極性
溶媒ばかりでなく、水、アルコールなどの極性溶媒中で
の反応にも用いることができる。反応温度も、反応の種
類、及び反応させるオレフィン化合物の種類により任意
に選択することができるが、一般的には、下限は−80
℃であり、上限は200℃である。反応温度が低すぎる
と、反応速度が遅く、高すぎるとルテニウム化合物が分
解してしまう。反応時間は反応の種類により任意に選択
することができ、一般的には、1分間〜1週間の範囲で
行う。
【0053】本発明のルテニウム化合物は、特に環状オ
レフィン類の開環メタセシス重合の触媒に適している。
環状オレフィン類としては、ノルボルネン類、ジシクロ
ペンタジエン類、テトラシクロドデセン類等のノルボル
ネン環を有する環状オレフィン類、単環の環状オレフィ
ン類、等が挙げられる。これらの環状オレフィン類は、
アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基などの炭化
水素基や、極性基によって置換されていても、ノルボル
ネン環の二重結合以外に二重結合をさらに有していても
よい。
【0054】ノルボルネン環を有する環状オレフィン類
の具体的な例としては、ジシクロペンタジエン、メチル
−ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエ
ン(トリシクロ[4.3.12,5.0]−デカ−3−
エン)等のジシクロペンタジエン類; テトラシクロド
デセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチル
テトラシクロドデセン、8−シクロヘキシルテトラシク
ロドデセン、8−シクロペンチルテトラシクロドデセ
ン、8−メチリデンテトラシクロドデセン、8−エチリ
デンテトラシクロドデセン、8−ビニルテトラシクロド
デセン、8−プロペニルテトラシクロドデセン、8−シ
クロヘキセニルテトラシクロドデセン、8−シクロペン
テニルテトラシクロドデセン、8−フェニルテトラシク
ロドデセン、8−メトキシカルボニルテトラシクロドデ
セン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシク
ロドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロドデセ
ン、8−カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシク
ロドデセン−8,9−ジカルボン酸、テトラシクロドデ
セン−8,9−ジカルボン酸無水物、8−シアノテトラ
シクロドデセン、テトラシクロドデセン−8,9−ジカ
ルボン酸イミド、8−クロロテトラシクロドデセン、8
−トリメトキシシリルテトラシクロドデセンなどのテト
ラシクロドデセン類;
【0055】ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、
5−エチルノルボルネン、5−ブチルノルボルネン、5
−ヘキシルノルボルネン、5−デシルノルボルネン、5
−シクロヘキシルノルボルネン、5−シクロペンチルノ
ルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニル
ノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−シク
ロヘキセニルノルボルネン、5−シクロペンテニルノル
ボルネン、5−フェニルノルボルネン、テトラシクロ
[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ
−3,8,10,12−テトラエン(1,4−メタノ−
1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともい
う)、テトラシクロ[6.6.12,5.0 1,6.0
8,13]テトラデカ−3,8,10,12−テトラエ
ン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a
−ヘキサヒドロアントラセンともいう)、5−メトキシ
カルボニルノルボルネン、5−エトキシカルボニルノル
ボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニルノルボ
ルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルノルボル
ネン、ノルボルネニル−2−メチルプロピオネイト、ノ
ルボルネニル−2−メチルオクタネイト、ノルボルネン
−5,6−ジカルボン酸無水物、5−ヒドロキシメチル
ノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボ
ルネン、5,5−ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネ
ン、5−ヒドロキシ−i−プロピルノルボルネン、5,
6−ジカルボキシノルボルネン、5−メトキシカルボニ
ル−6−カルボキシノルボルネン、などのノルボルネン
類;
【0056】オキサノルボルネン、5−メチルオキサノ
ルボルネン、5−エチルオキサノルボルネン、5−ブチ
ルオキサノルボルネン、5−ヘキシルオキサノルボルネ
ン、5−デシルオキサノルボルネン、5−シクロヘキシ
ルオキサノルボルネン、5−シクロペンチルオキサノル
ボルネン、5−フェニルオキサノルボルネン、5−エチ
リデンオキサノルボルネン、5−ビニルオキサノルボル
ネン、5−プロペニルオキサノルボルネン、5−シクロ
ヘキセニルオキサノルボルネン、5−シクロペンテニル
オキサノルボルネン、5−メトキシカルボニルオキサノ
ルボルネン、5−エトキシカルボニルオキサノルボルネ
ン、5−メチル−5−メトキシカルボニルオキサノルボ
ルネン、5−メチル−5−エトキシカルボニルオキサノ
ルボルネン、オキサノルボルネニル−2−メチルプロピ
オネイト、オキサノルボルネニル−2−メチルオクタネ
イト、オキサノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水
物、5−ヒドロキシメチルオキサノルボルネン、5,6
−ジ(ヒドロキシメチル)オキサノルボルネン、5,5
−ジ(ヒドロキシメチル)オキサノルボルネン、5−ヒ
ドロキシ−i−プロピルオキサノルボルネン、5,6−
ジカルボキシオキサノルボルネン、5−メトキシカルボ
ニル−6−カルボキシオキサノルボルネン、5−シアノ
オキサノルボルネン、オキサノルボルネン−5,6−ジ
カルボン酸イミドなどのオキサノルボルネン類;
【0057】ヘキサシクロヘプタデセン、12−メチル
ヘキサシクロヘプタデセン、12−エチルヘキサシクロ
ヘプタデセン、12−ブチルヘキサシクロヘプタデセ
ン、12−ヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12−
デシルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロヘキシ
ルヘキサシクロヘプタデセン、12−シクロペンチルヘ
キサシクロヘプタデセン、12−エチリデンヘキサシク
ロヘプタデセン、12−ビニルヘキサシクロヘプタデセ
ン、12−プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12
−シクロへキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12−
シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセンなどのヘキ
サシクロヘプタデセン類などが挙げられる。
【0058】単環の環状オレフィン類は、炭素数が通常
4〜20、好ましくは4〜10の環状モノオレフィン又
は環状ジオレフィンである。環状モノオレフィンの具体
例としては、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシ
クロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセ
ン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの特開昭64
−66216などに記載されているものが挙げられ、環
状ジオレフィンの具体例としては、シクロヘキサジエ
ン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、
メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエ
ンなどの特開平7−258318などに記載されている
ものが挙げられる。これらの環状オレフィン類は、それ
ぞれ独立で、あるいは2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。
【0059】4.水素化反応 本発明の水素化方法は、ゲルパーミエーションクロマト
グラフィーにより測定した重量平均分子量がポリスチレ
ン換算で1,000〜1,000,000である重合体
中のオレフィン性不飽和結合を、ヘテロ原子を有するカ
ルベン化合物が配位してなる周期表第8〜10族遷移金
属化合物を触媒として用いて水素化する方法である。従
来から知られている、周期表第8〜10族遷移金属化合
物にホスフィン類が配位した水素化触媒は、ゲルパーミ
エーションクロマトグラフィーにより測定した重量平均
分子量がポリスチレン換算で1,000以上の重合体中
のオレフィン性炭素−炭素不飽和結合を選択的に水素化
するには不十分な活性しか有していなかった。これに対
して、本発明の水素化方法に用いる水素化触媒は、ヘテ
ロ原子を有するカルベン化合物が配位してなる周期表第
8〜10族遷移金属化合物からなり、その活性が非常に
高い。
【0060】周期表第8〜10族の遷移金属としては、
Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、P
tを挙げることができる。なかでもRu、Rh、Pdが
水添活性が高くて好ましく、Ruが特に好ましい。ヘテ
ロ原子を含有するカルベン化合物は、ヘテロ原子を有し
且つメチレン遊離基(結合手を有する電荷のない2価の
炭素原子で、(>C:)で表される)を有する化合物で
ある。メチレン遊離基を有する化合物は、一般的には不
安定であり、ほとんどは反応中間体として一時的にしか
存在しないが、メチレン炭素に2つのヘテロ原子が結合
することにより安定化されるため、化合物として単離す
ることができる。ヘテロ原子は、周期表第15族および
第16族の原子のことであり。具体的にはN、O、P、
S、As、Seなどを挙げることができる。なかでも、
N、O、S、Pが安定なカルベン化合物を得るには好ま
しく、N、Pが特に好ましく、Nが最も好ましい。窒素
原子を含有するカルベン化合物の具体例としては、一般
式[16]で示す化合物を挙げることができる。
【0061】
【化16】 (R31〜R34は互いに独立に、水素又は置換基であ
り、好ましくは水素、ハロゲン原子又は炭素数1〜20
の炭化水素基である。R33とR34とは互いに結合し
て環構造を形成してもよい。) R31〜R34は、前述のRと同様の置換基から選択
することができる。さらに、R33とR34が互いに結
合して環構造を形成したカルベン化合物が最も安定で好
ましい。
【0062】一般式[16]で示される窒素原子を含有
するカルベン化合物としては、1,3−ジイソプロピル
イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキ
シルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジ(メチ
ルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−
ジ(メチルナフチル)イミダゾリジン−2−イリデン、
1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、
1,3−ジアダマンチルイミダゾリジン−2−イリデ
ン、1,3−ジフェニルイミダゾリジン−2−イリデ
ン、1,3,4,5−テトラメチルイミダゾリジン−2
−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリ
ン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシル−4−イ
ミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ(メチルフェニ
ル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジ
(メチルナフチル)−4−イミダゾリン−2−イリデ
ン、1,3−ジメシチル−4−イミダゾリン−2−イリ
デン、1,3−ジアダマンチル−4−イミダゾリン−2
−イリデン、1,3−ジフェニル−4−イミダゾリン−
2−イリデン、1,3,4,5−テトラメチル−4−イ
ミダゾリン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフ
ェニル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4
−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H
−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−
(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5
−テトラヒドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジ
シクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデ
ン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムア
ミジニリデン、1,3,4−トリフェニル−4,5−ジ
ヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデ
ン、3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2,3
−ジヒドロチアゾール−2−イリデンなどを挙げること
ができる。また、前述の一般式[1]〜[10]のカル
ベン化合物も具体例として挙げることができる。
【0063】これらの内、カルベンに隣接するヘテロ原
子が嵩高い置換基を有する飽和環状化合物、具体的には
1,3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデ
ン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イ
リデン、1,3−ジ(メチルフェニル)イミダゾリジン
−2−イリデン、1,3−ジ(メチルナフチル)イミダ
ゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾ
リジン−2−イリデン、1,3−ジアダマンチルイミダ
ゾリジン−2−イリデン、1,3−ジフェニルイミダゾ
リジン−2−イリデン、1,3,4,5−テトラフェニ
ルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3,4−トリフ
ェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,
2,4−トリアゾール−5−イリデン、3−(2,6−
ジイソプロピルフェニル)−2,3,4,5−テトラヒ
ドロチアゾール−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキ
シルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N’
−ジシクロヘキシルベンズイミダゾリン−2−イリデ
ン、N,N’−ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イ
リデン、N,N’−ジ(1−フェニルエチル)ベンズイ
ミダゾリン−2−イリデンが特に好ましい。
【0064】ヘテロ原子を含有するカルベン化合物を配
位してなる周期表第8〜10族遷移金属化合物とは、上
記のヘテロ原子を含有するカルベン化合物が周期表第8
〜10族遷移金属化合物に配位した金属錯体であれば、
如何なる物でも構わないが、特に一般式[17]で表さ
れる遷移金属化合物、[18]又は[19]で表される
ルテニウム化合物が好ましい。
【0065】
【化17】
【0066】
【化18】
【0067】
【化19】 (式中、Mは周期表第8族〜第10族遷移金属であ
り、X〜Xは互いに独立に任意のアニオン性配位子
を示す。L、LおよびLはヘテロ原子を含有する
カルベン化合物を示し、L、LおよびLは任意の
中性電子供与体を示す。R35〜R38はそれぞれ独立
に、水素又は置換基、好ましくは水素、又は炭素数1〜
20の炭化水素基を示し、炭化水素基はハロゲン原子、
酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、又はけい素
原子を含んでもよい。m、pは0〜2の整数で、n、z
は1または2である。)
【0068】X〜Xの具体例として、F、Br、C
lおよびIなどのハロゲン原子、水素、アセチルアセト
ン、ジケトネート基、置換シクロペンタジエニル基、置
換アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、
アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニ
ル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールスルフ
ォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリ
ールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィ
ニル基を挙げることができる。
【0069】L、LおよびLの具体例として、酸
素、水、カルボニル、ニトロシル、アミン類、ピリジン
類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン
類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、
スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族化
合物、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニ
ド類、チオシアネ−ト類などが挙げられる。
【0070】R35〜R38の具体例として、水素、ア
ルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アリール基、
カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキ
シ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、ア
ルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル
基、アルキルスルフィニル基を挙げることができる。
【0071】すなわち、一般式[17]の例としては、
ジクロロ(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン
−2−イリデン)(p−シメン)ルテニウム、ジヒドリ
ド(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデ
ン)(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、カルボニ
ルクロロヒドリド(1,3−ジイソプロピル−4−イミ
ダゾリン−2−イリデン)(トリフェニルホスフィン)
ルテニウム、カルボニルクロロヒドリド(1,3−ジメ
シチル−4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシク
ロヘキシルホスフィン)ルテニウムなど;一般式[1
8]の例としては、ビス(1,3−ジイソプロピルイミ
ダゾリジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジ
クロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリ
ジン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリ
ド、ビス(1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン
−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、
ビス(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−
2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなど
の2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位したルテ
ニウム化合物など、
【0072】(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジ
ン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)
エトキシカルベンルテニウムジクロリド、(1,3−ジ
シクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)
(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニ
ウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメ
チルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリ
シクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジ
クロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフ
ェニル)イミダゾリジン−2−イリデン](ペンタメチ
ルシクロペンタジエニル)ベンジリデンルテニウムジク
ロリド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェ
ニル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシク
ロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロ
リド、[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニ
ル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](ペンタメチ
ルシクロペンタジエニル)ベンジリデンルテニウムジク
ロリドなどのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電
子供与性化合物が配位したルテニウム化合物など;
【0073】一般式[19]の例としては、ビス(1,
3−ジイソプロピルイミダゾリジン−2−イリデン)フ
ェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3
−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン)t
−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,
3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデ
ン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス
(1,3−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−
イリデン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド
などの2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が配位した
ルテニウム化合物など、
【0074】(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジ
ン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)
t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、(1,3
−ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデ
ン)(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリ
デンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,4,
6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イリデ
ン](トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニ
リデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス(2,
4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリジン−2−イ
リデン](ペンタメチルシクロペンタジエニル)フェニ
ルビニリデンルテニウムジクロリド、[1,3−ビス
(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダゾリ
ン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)
フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、[1,3−
ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4−イミダ
ゾリン−2−イリデン](ペンタメチルシクロペンタジ
エニル)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリドな
どのヘテロ原子含有カルベン化合物と中性の電子供与性
化合物が配位したルテニウム化合物などを挙げることが
できる。
【0075】ヘテロ原子を含有するカルベン化合物を配
位してなる周期表第8〜10族遷移金属化合物の水素化
触媒活性をさらに向上させる方策として、高活性化剤を
添加することもできる。具体的には、有機リチウム、有
機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、有機ス
ズなどの有機金属還元剤またはアミン化合物などを挙げ
ることができる。
【0076】有機金属還元剤の好ましい例としては、有
機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチ
ウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオ
フィルリチウムなど;有機マグネシウムとしては、ブチ
ルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、
ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリ
ド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシ
ウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネ
オフィルマグネシウムクロリドなど;有機亜鉛として
は、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛な
ど;有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウ
ム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニ
ウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニ
ウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリドな
ど;有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n
−ブチル)スズ、テトラフェニルスズなどを挙げること
ができる。アミン化合物の好ましい例としては、メチル
アミン、エチルアミン、アニリン、エチレンジアミン、
1,3−ジアミノシクロブタンなどの一級アミン化合
物;ジメチルアミン、メチルイソプロピルアミン、N−
メチルアニリンなどの二級アミン化合物;トリメチルア
ミン、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、N,N
−ジメチルアニリン、ピリジン、γ−ピコリンなどの三
級アミン化合物を挙げることができる。
【0077】有機金属還元剤またはアミン化合物などの
高活性化剤を添加する量は、ヘテロ原子を含有するカル
ベン化合物を配位してなる周期表第8族〜第10族遷移
金属化合物に対して、0.1〜1000当量が好まし
く、0.2〜500当量がより好ましく、0.5〜20
0当量が特に好ましい。添加量が0.1当量以下では添
加効果がなく、1000当量以上であると、副反応が起
こりやすくなる。
【0078】本発明の水素化反応に用いられるゲルパー
ミエーションクロマトグラフィーにより測定した重量平
均分子量がポリスチレン換算で1,000〜1,00
0,000である重合体は、オレフィン性炭素−炭素不
飽和結合を重合体中に有するものであれば、特に限定さ
れないが、重合体主鎖中にオレフィン性不飽和結合を有
する重合体は水素化により耐候性、耐熱性が大幅に向上
するので、好ましい。これらの具体的例としては、環状
オレフィンの開環メタセシス重合体、共役ジエン類の重
合体を挙げることができる。環状オレフィンの開環メタ
セシス重合体の例としては、上述のノルボルネン環を有
する環状オレフィン、単環の環状オレフィン類などの開
環メタセシス(共)重合体を挙げることができる。ま
た、本発明においては、オレフィンメタセシス反応によ
り生成したオレフィン性重合体を水素化することもでき
る。なお、本発明のルテニウム化合物をメタセシス反応
触媒として使用した場合には、該ルテニウム化合物をそ
のまま水素化触媒として使用することもできる。
【0079】共役ジエン類の重合体としては、ブタジエ
ン、イソプレンまたはピペリレンなどの重合体およびそ
の他の単量体とのランダム、ブロック、交互、またはグ
ラフト共重合体を挙げることができる。その他の単量体
の例としては、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳
香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロ二ト
リルなどのアクリロ二トリル類;アクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸などのα,
β−不飽和カルボン酸およびこれらのカルボン酸エステ
ル類などを挙げることができる。重合方法は、特に限定
されず、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、
配位重合などの重合様式、バルク重合、溶液重合、乳化
重合などの重合方法にも限定されるものではない。これ
らの方法で重合され、本発明の水素化反応に用いること
ができる重合体の具体例としては、ポリブタジエン、ポ
リイソプレン、ブタジエン−スチレンランダム共重合
体、ブタジエン−スチレンブロック共重合体、イソプレ
ン−スチレンブロック共重合体、ブタジエン−アクリロ
二トリル共重合体などを挙げることができる。
【0080】本発明の水素化反応に用いられる重合体は
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定し
た重量平均分子量がポリスチレン換算で1,000〜
1,000,000である重合体である。本発明の水素
化触媒は分子量1,000以上、好ましくは2,000
以上、また分子量1,000,000以下、好ましくは
500,000以下の重合体を特に効率よく水素化する
ことができる。水素化反応は、上記の重合体と水素と
を、本発明のルテニウム化合物の存在下に、必要に応じ
て高活性化剤の共存下に、接触させることにより行う。
水素化反応は、無溶媒下で行っても、溶媒中で行っても
よい。溶媒は、水素化する重合体の種類により適宜に選
択でき、非極性溶媒ばかりでなく、水、アルコールなど
の極性溶媒を用いることもできる。反応温度及び反応時
間も適宜に選択することができるが、その範囲は、上記
のオレフィンメタセシス反応の場合と同様である。反応
時の水素圧力は、通常0〜10MPa、好ましくは0.
01〜8MPa、より好ましくは0.05〜5MPaあ
る。本発明の方法によれば、オレフィン性不飽和結合の
50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは9
0%以上の任意の水素化率に水素化することができる。
【0081】
【実施例】以下に、実施例、及び比較例を挙げて、本発
明をさらに具体的に説明する。 (1)生成したルテニウム化合物の同定は、H−NM
Rおよび13C−NMRスペクトルの測定により行っ
た。 (2)開環メタセシス重合の重合転化率は、固形分重量
測定法により求めた。 (3)開環メタセシス重合体の分子量は、テトラヒドロ
フランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマト
グラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として
測定し、開環重合体の水素化物の分子量は、シクロヘキ
サンを溶媒とするGPCによるポリイソプレン換算値と
して測定した。 (4)オレフィン性不飽和結合の水素化率は、H−N
MRスペクトルにより測定した。 (5)閉環メタセシス反応、非環状オレフィンのクロス
メタセシス反応の反応生成物の分析はガスクロマトグラ
フィー・マススペクトル(GC−MS)により行った。
【0082】〔実施例1〕[(N,N’−ジメシチルベ
ンズイミダゾリン−2−イリデン)(シクロへキシルホ
スフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド
の合成] N,N’−ジメシチル−1,2−フェニレンジアミン
1.57重量部をナスフラスコに取り、窒素置換した
後、エーテルを45重量部加え、−78℃に冷却した。
そこに、n−BuLiのシクロヘキサン溶液(濃度:
1.54mol/l)6.0重量部を加えて5分間攪拌
した後、除々に室温に戻した。30分攪拌後、二硫化炭
素2重量部を加えて更に30分攪拌を続けた後、溶媒を
減圧除去した。得られた粉末をメタノールで洗浄した後
に乾燥し、白い粉末(N,N’−ジメシチルベンズイミ
ダゾリン−2−チオン)を得た。(収量1.37重量
部、収率78%)。得られた白い粉末1.3重量部をナ
スフラスコに秤取り、窒素置換した後、テトラヒドロフ
ラン(THF)18重量部を加えた。フラスコを氷浴に
浸し、希硝酸(3.61mol/l濃度のTHF溶液)
1.2重量部を加え、5分攪拌した後、室温に戻した。
30分撹拌後、ホウフッ化ナトリウム0.53重量部を
加え、更に、1時間攪拌した。反応溶液を、セライトか
らなる濾過床で濾過し、固体分を除去した。得られた濾
液を減圧にして溶媒濃縮した後、エーテルを加えて反応
生成物を析出させ、濾別分離した後に乾燥して白色粉末
[(N,N’−ジメシチルベンズイミダゾリウム)テト
ラフルオロボレイト]を得た(収量0.925重量部、
収率62%)。
【0083】得られた生成物0.30重量部をナスフラ
スコに秤取り、窒素置換した後、THF9重量部を加
え、−78℃に冷却した。そこに、n−BuLi(1.
54M/へキサン溶液)0.50重量部を加え、5分間
攪拌した後、室温に戻し、室温で15分攪拌した後、ビ
ス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテ
ニウム(IV)ジクロリド0.372重量部をトルエン
9重量部に溶解させたトルエン溶液を反応溶液に加え1
時間攪拌した。反応溶液を減圧にして溶媒を除去し、残
った固形物をトルエン4.5重量部に溶かし、それをn
−ペンタン18重量部に滴下した。得られた溶液をセラ
イトからなる濾過床で濾過し、濾液を濃縮した後に、−
78℃のn−ペンタン9重量部で3回洗浄した後に乾燥
することにより、桃茶色の粉末を得た(収量0.152
重量部、収率37%)。この粉末を H−NMRスペク
トル(溶媒:CDCl、温度:25℃)で測定したと
ころ、19.37ppmにRu=CHのプロトン(1
H,s)、6.62〜7.41ppmに芳香族プロトン
(13H,aromatic)、2.35ppmにP−
CHのプロトン(3H,m)が観測されたことから、
[(N,N’−ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イ
リデン)(シクロへキシルホスフィン)ベンジリジンル
テニウム(IV)ジクロリド]と同定した。
【0084】〔実施例2〕(開環メタセシス重合及び水
素化反応) 攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン300重
量部とジシクロペンタジエン66.9重量部を加え、さ
らに連鎖移動剤として1−ヘキセン0.64重量部を添
加した。この溶液に、実施例1で得られた(N,N’−
ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イリデン)(シク
ロへキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(I
V)ジクロリド0.0022重量部をTHF9重量部に
溶解した触媒溶液を添加した。溶液を60℃で1時間撹
拌した後、エチルビニルエーテル0.30重量部を加え
て重合反応を停止した。重合反応液の一部を採取して分
析したところ、重合転化率は99%以上、数平均分子量
(Mn)は9,200、重量平均分子量(Mw)は1
8,900であった。次いで、オートクレーブ内に水素
を供給し、150℃、水素圧力5.0MPaで6時間撹
拌して水素化反応を行った。得られた水素化物の水素化
率は99.9%以上、Mnは14,200、Mwは2
9,300であった。
【0085】〔比較例1〕(開環メタセシス重合及び水
素化反応) (N,N’−ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イリ
デン)(シクロへキシルホスフィン)ベンジリジンルテ
ニウム(IV)ジクロリドに代えて1,3−ビス(メシ
チル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシク
ロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(I
V)ジクロリドを用いた以外は、実施例2と同様にして
重合反応を行った。重合反応液の一部を採取して分析し
たところ、収率は67%、数平均分子量(Mn)は8,
200、重量平均分子量(Mw)は16,600であっ
た。次いで、オートクレーブ内に水素を供給して、15
0℃、水素圧力5.0MPaで6時間撹拌して水素化反
応を行った。得られた水素化物の水素化率は20%であ
った。
【0086】〔比較例2〕(開環メタセシス重合及び水
素化反応) (N,N’−ジメシチルベンズイミダゾリン−2−イリ
デン)(シクロへキシルホスフィン)ベンジリジンルテ
ニウム(IV)ジクロリドに代えて1,3−ビス(メシ
チル)イミダゾリジン−2−イリデン](トリシクロヘ
キシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジ
クロリドを用いた以外は、実施例2と同様にして重合反
応を行った。重合反応液の一部を採取して分析したとこ
ろ、収率は88%、数平均分子量(Mn)は9,10
0、重量平均分子量(Mw)は18,800であった。
次いで、オートクレーブ内に水素を供給して、150
℃、水素圧力5.0MPaで6時間撹拌して水素化反応
を行った。得られた水素化物の水素化率は10%であっ
た。
【0087】〔実施例3〕(閉環メタセシス反応) ガラス容器に、実施例1で得られた(N,N’−ジメシ
チルベンズイミダゾリン−2−イリデン)(シクロへキ
シルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジク
ロリド0.0054重量部を添加し、2重量部の1,2
−ジクロロエタンに溶解し、続いて、1,7−オクタジ
エン0.05重量部を加え、混合した。45℃で3時間
反応後、GC−MSにより分析したところ、1,7−オ
クタジエンの閉館メタセシス反応により反応転化率98
%以上で、シクロヘキセンが生成した。
【0088】〔実施例4〕(非環状オレフィンのクロス
メタセシス反応) ガラス容器に、実施例1で得られた(N,N’−ジメシ
チルベンズイミダゾリン−2−イリデン)(シクロへキ
シルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジク
ロリド0.0054重量部を添加し、2重量部の1,2
−ジクロロエタンに溶解し、続いて、1−オクテン0.
336重量部を加え、混合した。45℃で3時間反応
後、GC/MSにより分析したところ、1−オクテンの
クロスメタセシス反応により反応転化率65%で、7−
テトラデセンが生成した。
【0089】
【発明の効果】本発明のルテニウム化合物は、オレフィ
ン化合物のメタセシス反応において高活性を示し、特に
従来困難であった官能基を有するオレフィン化合物のメ
タセシス反応および重合体の水素化反応に適用できる。
またこのルテニウム化合物は極性溶媒中でも安定性に優
れており、使用可能な反応溶媒の幅が広い。また本発明
のルテニウム化合物の製法によれば、安全に、且つ簡便
に所望のルテニウム化合物を合成できる。また、本発明
の水素化方法によれば、高分子量の重合体であっても、
ヘテロ原子を有するカルベン化合物が配位してなる周期
表第8〜10族遷移金属化合物を触媒として用いること
によって、高水素化率に水素化することができ、重合体
の耐熱性、耐候性などを大幅に向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明のルテニウム化合物の合成ルー
トの一例を示す図である。
【符号の説明】
〜R:置換基 n−Bu:n−ブチル THF:テトラヒドロフラン Cy:シクロヘキシル基 Ph:フェニル基
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G069 AA06 AA08 BA27B BC70A BC70B BE01B BE13B BE27B BE46B CB02 CB38 DA02 FB08 4H050 AB40 AC90 WB11 WB21 4J032 CA22 CA28 CA34 CA38 CA45 CB01 CB03 CD02 4J100 AB02Q AM02Q AS02P AS03P HA04 HC90 HE41 HG03

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族性環とイミダゾリン環とが2個の
    炭素原子を共有して縮合した構造を有する置換イミダゾ
    リン−2−イリデンが配位してなるルテニウム化合物。
  2. 【請求項2】 ルテニウム−カルベン結合を有する請求
    項1記載のルテニウム化合物。
  3. 【請求項3】 (1)隣接する炭素それぞれに少なくと
    も1個のアミノ基が結合した芳香族性環化合物を脱プロ
    トン反応させた後、二硫化炭素を反応させることによっ
    て置換イミダゾリン−2−チオンを合成し、続いて脱硫
    黄反応によって置換イミダゾリウム塩を合成し、(2)
    得られた置換イミダゾリウム塩を脱プロトン反応させ、
    置換イミダゾリン−2−イリデンを合成し、(3)得ら
    れた置換イミダゾリン−2−イリデンをルテニウム化合
    物と接触させて、置換イミダゾリン−2−イリデンが配
    位したルテニウム化合物を合成する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載のルテニウム化合
    物を用いてオレフィン化合物のメタセシス反応を行う方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2に記載のルテニウム化合
    物を用いて環状オレフィンを開環メタセシス重合反応さ
    せて重合体を得る方法。
  6. 【請求項6】 ゲルパーミエーションクロマトグラフィ
    ーにより測定した重量平均分子量がポリスチレン換算で
    1,000〜1,000,000である重合体中のオレ
    フィン性不飽和結合を、ヘテロ原子を有するカルベン化
    合物が配位してなる周期表第8〜10族遷移金属化合物
    を触媒として用いて、水素化して、重合体水素化物を得
    る方法。
JP2001126970A 2000-10-23 2001-04-25 新規なルテニウム化合物及びその使用方法 Pending JP2002201180A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001126970A JP2002201180A (ja) 2000-10-24 2001-04-25 新規なルテニウム化合物及びその使用方法
PCT/JP2001/009206 WO2002034723A1 (fr) 2000-10-23 2001-10-19 Methode de preparation de complexes de metaux de transition a base de diaminocarbene

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000324452 2000-10-24
JP2000-324452 2000-10-24
JP2001126970A JP2002201180A (ja) 2000-10-24 2001-04-25 新規なルテニウム化合物及びその使用方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002201180A true JP2002201180A (ja) 2002-07-16

Family

ID=26602679

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001126970A Pending JP2002201180A (ja) 2000-10-23 2001-04-25 新規なルテニウム化合物及びその使用方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002201180A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007534796A (ja) * 2004-02-23 2007-11-29 ランクセス・インコーポレーテッド 低分子量ニトリルゴムの調製方法
JP2013503228A (ja) * 2009-08-31 2013-01-31 ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー 水素化ニトリルゴムの製造方法
JP2014529491A (ja) * 2011-08-15 2014-11-13 ザ・ガヴァニング・カウンシル・オヴ・ユニヴァーシティー・オヴ・トロント ルテニウム系錯体触媒
JP2018516863A (ja) * 2015-04-16 2018-06-28 アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー ルテニウムまたはオスミウムベースの錯体触媒
KR20190103727A (ko) * 2018-02-28 2019-09-05 서울대학교산학협력단 시클릭올레핀을 개환 복분해 중합하여 고분자를 제조하는 방법 및 이를 위한 촉매

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007534796A (ja) * 2004-02-23 2007-11-29 ランクセス・インコーポレーテッド 低分子量ニトリルゴムの調製方法
JP2013503228A (ja) * 2009-08-31 2013-01-31 ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー 水素化ニトリルゴムの製造方法
JP2014529491A (ja) * 2011-08-15 2014-11-13 ザ・ガヴァニング・カウンシル・オヴ・ユニヴァーシティー・オヴ・トロント ルテニウム系錯体触媒
JP2018516863A (ja) * 2015-04-16 2018-06-28 アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー ルテニウムまたはオスミウムベースの錯体触媒
KR20190103727A (ko) * 2018-02-28 2019-09-05 서울대학교산학협력단 시클릭올레핀을 개환 복분해 중합하여 고분자를 제조하는 방법 및 이를 위한 촉매
KR102036525B1 (ko) * 2018-02-28 2019-10-25 서울대학교산학협력단 시클릭올레핀을 개환 복분해 중합하여 고분자를 제조하는 방법 및 이를 위한 촉매

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4691867B2 (ja) 環状オレフィンの開環重合体水素化物の製造方法
KR100823365B1 (ko) 이미다졸리딘계 금속 카르벤 복분해 촉매
US5880231A (en) Synthesis of telechelic polymers using ruthenium and osmium carbene complexes
US6107420A (en) Thermally initiated polymerization of olefins using Ruthenium or osmium vinylidene complexes
MX2008010684A (es) Catalizadores para reacciones de metatesis.
JP7120764B2 (ja) シンジオタクチック-ノルボルネン系開環重合体水素化物
JP2009287041A (ja) 開環共重合体水素化物
JP2000309597A (ja) ルテニウムまたはオスミウム化合物、オレフィンのメタセシス反応用触媒および該反応の開始方法
US7084222B2 (en) Ruthenium complexes, process for preparation thereof, and processes for producing open-ring polymer of cycloolefins and hydrogenation products thereof by using the complex as catalyst
JP2002201180A (ja) 新規なルテニウム化合物及びその使用方法
JP4096487B2 (ja) 開環メタセシス重合体水素化物の製造方法
JP4944787B2 (ja) 有機遷移金属錯体化合物およびメタセシス触媒の製造方法
JP4407798B2 (ja) ルテニウム錯体化合物およびその製造方法、ならびにメタセシス反応用触媒および水素化反応用触媒
JP2003089689A (ja) ルテニウム錯体化合物、その製造方法、メタセシス反応用触媒及び水素化反応用触媒
WO2002034723A1 (fr) Methode de preparation de complexes de metaux de transition a base de diaminocarbene
JP2003096167A (ja) 環状オレフィン開環重合体水素化物の製造方法及びジシクロペンタジエン開環重合体水素化物
JP2002105180A (ja) 開環重合体水素化物の製造方法
JP2004043396A (ja) ルテニウム錯体化合物、その製造方法、メタセシス反応用触媒及び水素化反応用触媒
WO2018191373A1 (en) Synthesis and characterization of metathesis catalysts
RU2560151C1 (ru) Рутениевый катализатор метатезисной полимеризации дициклопентадиена в форме катионного комплекса и способ его получения
JP2001122885A (ja) ルテニウム錯体、その製造方法、重合触媒および環状オレフィン重合体の製造方法
JP2006063141A (ja) 重合体水素化物の製造方法
JP2001163959A (ja) 開環重合用触媒系、開環重合体の製造方法、反応原液および成形方法
JP2001151869A (ja) 環状オレフィン開環メタセシス重合体水素化物の製造方法
JP2002363264A (ja) ノルボルネン系樹脂の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060307

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090825

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091224