JP4407798B2 - ルテニウム錯体化合物およびその製造方法、ならびにメタセシス反応用触媒および水素化反応用触媒 - Google Patents

ルテニウム錯体化合物およびその製造方法、ならびにメタセシス反応用触媒および水素化反応用触媒 Download PDF

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Description

本発明は、新規なルテニウム錯体化合物およびその製造方法に関する。また本発明は、特定のルテニウム錯体化合物を含有してなるオレフィン化合物のメタセシス反応用触媒および水素化反応用触媒、ならびに該メタセシス反応用触媒を用いたノルボルネン系開環重合体の製造方法に関する。
オレフィン化合物の開環メタセシス重合、閉環メタセシス反応、非環状オレフィンのクロスメタセシス反応、非環状ジエンのメタセシス重合等のメタセシス反応は工業的に有用な反応である。メタセシス反応に用いられる触媒として、近年、ルテニウムにカルベン化合物が配位したルテニウム錯体化合物(以下、「ルテニウム−カルベン錯体」ということがある。)が注目されている。
特に、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム−カルベン錯体(錯体I)や1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム−カルベン錯体(錯体II)が高活性なメタセシス反応用触媒となることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。しかしながら、錯体Iは配位子の原料である1,3−二置換イミダゾリニウム塩の合成工程が長く、製造効率が低かった。一方、錯体IIは合成が比較的容易であるが、一般的な有機溶剤に溶けやすいため、晶析による単離・精製を低温で行う必要があった。
また、4位および5位が塩素原子で置換された1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム−カルベン錯体(錯体III)の製造方法、および該錯体を用いた1,5−シクロオクタジエンの開環メタセシス重合についても報告されている(非特許文献1,2参照)。しかしながら錯体IIIの合成は、3段階からなる各反応における生成物を逐一単離、精製する必要があり、極めて工程数が多かった。
特表2003−500412号公報 特表2002−524250号公報 Chemistry−A European Journal,2001年,第7巻,p.3236−3253 Journal of American Chemical Society,2003年,第125巻,p.2546−2558
本発明の目的は、メタセシス反応および水素化反応の触媒として有用なルテニウム錯体化合物およびそれを得るための簡便で工業的有利な製造方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、高活性なメタセシス反応用触媒および水素化反応用触媒、ならびに該メタセシス反応用触媒を用いたノルボルネン系開環重合体の製造方法を提供することである。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討の結果、1,3−二置換イミダゾリウム塩の脱プロトン化工程、ハロゲン化工程およびルテニウム化合物との配位子交換工程をワンポットで行うことにより、4,5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)を簡便に製造できること、および特定の有機溶媒を用いることで得られるルテニウム錯体化合物を簡単に単離、精製できることを見出した。また、ルテニウム錯体化合物(A)がメタセシス反応および水素化反応の触媒として有用であり、特にノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合反応に高い活性を示すことを見出した。さらに、4位および5位が臭素原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A1)が新規化合物であり、該ルテニウム錯体化合物(A1)が極性基を有するノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合反応に高い活性を示すことを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)の製造方法であって、イミダゾリウム塩を脱プロトン化剤と反応させる脱プロトン化工程、次いでハロゲン化剤を添加して反応させるハロゲン置換工程、さらに得られた反応物に中性配位子を有するルテニウム化合物を添加して反応させる配位子交換工程、をワンポットで行うことを特徴とするルテニウム錯体化合物の製造方法が提供される。
前記各工程はルテニウム錯体化合物(A)が可溶な有機溶媒の存在下に行うことが好ましく、前記配位子交換工程に引き続き、ルテニウム錯体化合物(A)が不溶な有機溶媒を添加して該ルテニウム錯体化合物を析出させる工程を有することがさらに好ましい。
第二の本発明によれば、4位および5位が臭素原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A1)が提供される。
第三の本発明によれば、ルテニウム錯体化合物(A1)を含有してなるオレフィン化合物のメタセシス反応用触媒が提供される。該メタセシス反応用触媒はノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合用であることが好ましい。
第四の本発明によれば、ルテニウム錯体化合物(A)を含有してなるノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合用触媒が提供される。
第五の本発明によれば、前記本発明の開環メタセシス重合用触媒の存在下に、ノルボルネン系単量体を重合することを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法が提供される。該ノルボルネン系単量体は極性基を有するものであることが好ましい。
第六の本発明によれば、ルテニウム錯体化合物(A)を含有してなるオレフィン化合物の水素化反応用触媒が提供される。
本発明によれば、4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)を簡便かつ効率よく製造することができる。また、該ルテニウム錯体化合物(A)の中でも4位および5位が臭素原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A1)は新規化合物であり、特に極性基を有するノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合用触媒として高い活性を示す。
本発明のルテニウム錯体化合物の製造方法は、4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)の製造方法であって、イミダゾリウム塩を脱プロトン化剤と反応させる脱プロトン化工程、次いでハロゲン化剤を添加して反応させるハロゲン置換工程、さらに得られた反応物に中性配位子を有するルテニウム化合物を添加して反応させる配位子交換工程、をワンポットで行うことを特徴とするルテニウム錯体化合物の製造方法である。なお、本発明において、ワンポットで行うとは、各工程の反応生成物を単離精製することなく連続して反応を行うことを意味する。
4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンは、一般式(1)で表される化合物である。
Figure 0004407798
式(1)中、YおよびYはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。なかでも、塩素および臭素が合成し易さの点で好ましく、特に極性基を有する単量体の重合反応において触媒活性が高いので臭素が最も好ましい。
およびRは互いに独立して、水素またはハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、およびケイ素原子の中から選ばれた少なくとも一種を含む置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。炭素数1〜20の炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基等が挙げられる。また、前記アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。該炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、ニトロ基、ニトロソ基、アルコキシル基、アリールオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボニル基、シリル基、スルホニル基等が挙げられる。
炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロへキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;ベンジル基、1−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基、1−(α−ナフチル)エチル基、1−(β−ナフチル)エチル基等の炭素数7〜20のアラルキル基;1−(1,2,2−トリメチルプロポキシカルボニル)エチル基、2−(1,2,2−トリメチルプロポキシカルボニル)エチル基、1−(エトキシカルボニル)エチル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基等の官能基を有する炭素数1〜20のアルキル基;
フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、メシチル基、3,5−ジメトキシフェニル基、2−アミノフェニル基、4−アミノフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ニトロフェニル基、4−ニトロフェニル基、2−アセトキシフェニル基、4−アセトキシフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等の置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。
中でも、イソプロピル基、シクロへキシル基、1−フェニルプロピル基、ジフェニルメチル基、メシチル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基が特に好ましい。
本発明に係るルテニウム錯体化合物(A)は、4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するものであれば特に限定されないが、特に4位および5位が臭素原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A1)が、極性基を有するノルボルネン系単量体の開環メタセシス反応用触媒として高活性なので好ましい。また、その具体的構造としては、一般式(2)で示されるルテニウム−カルベン錯体化合物が高活性なので好ましい。
Figure 0004407798
式(2)中、R、R、YおよびYは一般式(1)と同じ意味を表す。XおよびXは、互いに独立して任意のアニオン性配位子を表し、Lは任意の中性配位子を表す。mは1または2であり、nは0または1である。
およびRは、互いに独立して水素原子又は有機基を表す。RまたはRはLと互いに結合して環を形成していても構わない。有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜20のカルボキシレート基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数2〜20のアルキニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数6〜20のアリールチオ基、炭素数1〜20のアルキルスルフォニル基および炭素数1〜20のアルキニルスルフィニル基が挙げられる。また、これらの有機基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子のいずれかを含む基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。これらの中でも、RおよびRは、どちらか一方が水素原子で、他方が上記の有機基であるのが好ましく、一方が水素原子で、他方が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数1〜20のアルコキシル基であるのがより好ましい。
前記アニオン性配位子(XおよびX)は、中心金属(Ru)から引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよい。また、中性配位子(L)は、中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子であればいかなるものでもよく、前記式(1)で示される4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンであってもよい。
アニオン性配位子(XおよびX)の具体例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素等のハロゲン原子;水素原子;アセチルアセトネート等のジケトネート基;置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換基を有していてもよいアリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルキルスルフォネート基、アリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフォニル基およびアルキルスルフィニル基が挙げられる。これらの中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
また中性配位子(L)の具体例としては、酸素原子、水、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族化合物、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネート類、複素環式カルベン化合物等が挙げられる。これらの中でも、ピリジン類、ホスフィン類、エーテル類、複素環式カルベン化合物が好ましく、ホスフィン類がより好ましく、トリシクロヘキシルホスフィンが特に好ましい。
一般式(2)で表されるルテニウム錯体化合物(A)の好ましい具体例は、m=1、n=0であるものとしては、下記一般式(3)〜(7)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004407798
Figure 0004407798
Figure 0004407798
Figure 0004407798
Figure 0004407798
m=2、n=0であるものとしては、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004407798
m=1、n=1であるものとしては、下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004407798
一般式(3)〜(9)において、R、R、YおよびYは一般式(1)と同じ意味を表す。また、Phはフェニルを、PCyはトリシクロヘキシルホスフィンを、Etはエチルを、i−Prはイソプロピルを、Pyはピリジンを、t−Buはtert−ブチルを、それぞれ表す。
上記一般式で表される化合物の中でも、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジフェニルメチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、エトキシメチレン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、エトキシメチレン(1,3−ジフェニルメチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、2−フェニルエチリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、2−フェニルエチリデン(1,3−ジフェニルメチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドが特に好ましい。
本発明のルテニウム錯体化合物の製造方法では、先ず、脱プロトン化工程として、イミダゾリウム塩を脱プロトン化剤と反応させる。イミダゾリウム塩は、一般式(10)で表される化合物である。
Figure 0004407798
式(10)中、RおよびRは一般式(1)と同じ意味を表す。Zはアニオンを表し、pはZのアニオン価数に対応する整数である。Zは任意のアニオンで構わないが、好ましいイミダゾリウム塩の具体例としては、ハロゲン化物、硫酸塩、硫酸水素塩、燐酸塩、燐酸水素塩、燐酸二水素塩、過塩素酸塩、四フッ化ホウ素塩などを挙げることができる。
脱プロトン化剤は、イミダゾリウム塩の2位のプロトンを引き抜き、イミダゾリン−2−イリデン類を生成させる化合物である。脱プロトン化剤の具体例としては、カリウムtert−ブトキサイド等のアルカリ金属アルコキサイド;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物;リチウムジイソプロピルアミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド等のアルカリ金属アミド;n−ブチルリチウム等のアルキルリチウム;を挙げることができる。なかでも、カリウムtert−ブトキサイドが好ましい。
反応は、アルゴン、窒素などの不活性ガス雰囲気下、通常有機溶媒中で、イミダゾリウム塩と脱プロトン化剤を混合することにより行う。有機溶媒としては、脱プロトン化工程ならびに後述のハロゲン置換工程および配位子交換工程における反応に影響を及ぼさないものであれば、いずれも使用できる。中でも、生成物であるルテニウム錯体化合物(A)が可溶な溶媒が好ましく、ルテニウム錯体化合物(A)、原料であるイミダゾリウム塩、脱プロトン化剤、後述のハロゲン化剤および中性配位子を有するルテニウム化合物、ならびに各工程における中間生成物が可溶な溶媒が特に好ましい。このような溶媒を用いることにより、生成したルテニウム錯体化合物(A)の単離、精製が容易になる。このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アニソールなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;を挙げることができ、エーテル類が特に好ましい。
イミダゾリウム塩と脱プロトン化剤の使用量は、イミダゾリウム塩:脱プロトン化剤のモル比で、通常1:0.5〜1:10、好ましくは1:1〜1:5である。反応温度は通常−100℃〜+100℃、反応時間は通常1分〜1時間である。
本発明の製造方法では、脱プロトン化工程に引き続き、ハロゲン化剤を添加して反応させるハロゲン置換工程を有する。
ハロゲン化剤は、イミダゾリン−2−イリデン類の4位および5位をハロゲン化する化合物であり、求核性ハロゲンを有する化合物が用いられる。このような化合物の具体例としては、四フッ化炭素、四塩化炭素、四臭化炭素、四ヨウ化炭素、クロロトリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ヨードトリフルオロメタン、ブロモトリクロロメタン、1,1,1−トリクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、クロロペンタフルオロベンゼン、1,1,1−トリブロモ−2,2,2−トリフルオロエタン、ブロモペンタフルオロベンゼンなどのハロゲン化炭素;N−クロロこはく酸イミド、N−ブロモこはく酸イミドなどのこはく酸イミド類;を挙げることができる、なかでも、ハロゲン化炭素が好ましく、四フッ化炭素、四塩化炭素、四臭化炭素、四ヨウ化炭素、クロロトリフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、ヨードトリフルオロメタンおよびブロモトリクロロメタンがより好ましい。反応性が高く取り扱いが容易な点で四塩化炭素および四臭化炭素が特に好ましく、揮発性が低く環境上の問題を生じ難いことから四臭化炭素が最も好ましい。
ハロゲン化剤の使用量は、前記のイミダゾリウム塩とのモル比で、イミダゾリウム塩:ハロゲン化剤が通常1:1〜1:5、好ましくは1:1.5〜1:2.5、特に好ましくは、1:1.8〜1:2.2である。ハロゲン化剤の量が少なすぎると収率が低下し、多すぎると置換イミダゾリン−2−イリデンの分解が起きる場合がある。反応温度は通常−100℃〜+100℃、反応時間は通常1分〜1時間である。
本発明の製造方法では、ハロゲン置換工程に引き続き、中性配位子を有するルテニウム化合物を添加して反応させる配位子交換工程を有する。
中性配位子としては、中性の電荷を持つ配位子、すなわちルイス塩基であればいかなるものでもよい。その具体例としては、酸素原子、水、カルボニル、アミン類、ピリジン類、エーテル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族化合物、環状ジオレフィン類、オレフィン類、イソシアニド類、チオシアネ−ト類、カルベン化合物等が挙げられる。
中性配位子を有するルテニウム化合物の具体例としては、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、クロロ(シクロぺンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)、ジクロロ(ベンゼン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)、ジカルボニルシクロペンタジエニルルテニウム(II)、ジ−μ−クロロビス(p−シメン)クロロルテニウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム(II)、ジクロロジカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)ジクロロトリカルボニルルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(II)などが挙げられる。
また、メタセシス反応、特にノルボルネン系単量体のメタセシス開環重合に好適なルテニウム錯体化合物を得るためには、ルテニウム−カルベン構造を有するルテニウム化合物を用いることが好ましい。具体的には、一般式(2)で表されるルテニウム−カルベン錯体化合物において置換イミダゾリン−2−イリデンがホスフィン類に置換された構造を有するルテニウム化合物が好ましく、一般式(3)〜(9)で表されるルテニウム−カルベン錯体化合物において置換イミダゾリン−2−イリデンがホスフィン類に置換された構造を有するルテニウム化合物が特に好ましい。
中性配位子を有するルテニウム化合物の使用量は、前記のイミダゾリウム塩とのモル比で、イミダゾリウム塩:ルテニウム化合物が通常1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.2〜1:2である。反応温度は通常−100℃〜+100℃、反応時間は通常1分〜1時間である。
本発明の製造方法では、前記の脱プロトン化工程、ハロゲン置換工程および配位子交換工程をワンポットで行う。本発明の製造方法によれば各工程における中間生成物を単離生成する必要がないので、簡便かつ効率的にルテニウム錯体化合物(A)を製造することができる。
ルテニウム錯体化合物(A)の単離、精製の方法は特に限定されず、従来公知の再結晶法などが採用できる。また、前記の配位子交換工程に引き続き、ルテニウム錯体化合物(A)が不溶な有機溶媒を添加することにより、該化合物(A)を析出させる工程を採用してもよい。ルテニウム錯体化合物(A)が不溶な有機溶媒としてはメタノールなどのアルコール類やn−ヘキサンなどの脂肪族炭化水素が挙げられる。該有機溶媒の添加に先立って、前記反応混合液は必要に応じ濃縮して用いてもよい。この方法によれば、ルテニウム錯体化合物(A)だけを選択的に析出させることができるので、該化合物(A)の単離、精製がきわめて容易であり好ましい。もちろん、さらに不溶性溶媒で洗浄してもよいし、再結晶による精製を行っても構わない。
ルテニウム錯体化合物(A)は、オレフィン化合物のメタセシス反応用触媒として好適に用いることができる。ここでオレフィン化合物は、分子内に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものであれば特に制限されない。また、ルテニウム錯体化合物(A)は、極性基を有するオレフィン化合物に対しても高活性を示す。極性基としては、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびケイ素原子等を含有する官能基が挙げられる。
より具体的には、アルコキシル基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルアミド基、アリールアミド基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、ニトロ基、ニトロソ基およびシアノ基等の官能基が挙げられる。
オレフィン化合物のメタセシス反応とは、一般的にオレフィンメタセシス反応といわれる反応全般を含むものである(K.J.Ivin and J.C.Mol,Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization, Academic Press,Tokyo等を参照)。例えば、開環メタセシス重合、閉環メタセシス反応、非環状オレフィンのクロスメタセシス反応、非環状ジエンのメタセシス重合等が挙げられる。
メタセシス反応は無溶媒又は溶媒中で行なうことができる。使用する溶媒は反応させるオレフィン化合物の種類により適宜選択できるが、本発明のルテニウム錯体は非極性溶媒中のみならず、極性溶媒中でも安定であるので、非極性溶媒のみならず極性溶媒も用いることができる。
非極性溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロナフタレン等の芳香族炭化水素等を用いることができる。また極性溶媒としては、例えば、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール等のアルコール類;水等を用いることができる。これらの中でも、工業的に汎用される鎖状脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル類、アルコール類、水の使用が好ましい。
メタセシス反応において、オレフィン化合物と溶媒との混合割合は特に限定されないが、反応溶液中のオレフィン化合物濃度は、通常1〜100重量%、好ましくは2〜100重量%、より好ましくは5〜100重量%の範囲である。オレフィン化合物濃度が1重量%以下の場合は反応生成物の生産性が低下する。
メタセシス反応はオレフィン化合物とルテニウム錯体化合物(A)とを混合することにより開始させることができる。オレフィン化合物に対するルテニウム錯体化合物の使用量は特に限定されないが、(触媒中の金属ルテニウム):(オレフィン化合物)のモル比で表すと、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000の範囲である。使用する触媒量が多すぎると触媒除去が困難となる一方で、触媒量が少なすぎる場合には十分な反応活性が得られなくなる。
メタセシス反応の反応温度はメタセシス反応の種類および反応させるオレフィン化合物の種類により任意に選択することができるが、通常−80℃〜200℃の範囲である。反応温度が低すぎると反応速度が遅くなる一方で、反応温度が高すぎる場合にはルテニウム錯体化合物(A)が分解するおそれがある。反応時間は反応の種類により任意に設定することができるが、通常1分間〜1週間の範囲である。
これらのメタセシス反応の中でも、本発明のルテニウム錯体化合物(A)は、環状オレフィンの開環メタセシス重合反応(以下、単に「重合反応」という。)用の触媒として特に好適である。
環状オレフィンとしては、単環の環状オレフィン単量体;ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類等のノルボルネン系単量体等が挙げられ、重合活性が高い点でノルボルネン系単量体が好ましい。環状オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの環状オレフィンは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基等の炭化水素基や、前記の極性基によって置換されていてもよい。また、ノルボルネン系単量体を用いる場合には、ノルボルネン環の二重結合以外にさらに二重結合を有していてもよい。
単環の環状オレフィンとしては、炭素数が通常4〜20、好ましくは4〜10の環状モノオレフィン又は環状ジオレフィンが挙げられる。環状モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等が挙げられる。環状ジオレフィンの具体例としては、シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等が挙げられる。
ノルボルネン系単量体としては、置換および非置換の二環若しくは三環以上の多環ノルボルネンを用いることができ、その具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナジック酸無水物、ナジック酸イミド等の官能基を有していてもよい二環ノルボルネン類;
ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール、ヒドロキシル、酸無水物基、ジカルボキシイミド、カルボキシル、アルコキシカルボニル置換体等の三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール、ヒドロキシル、酸無水物基、ジカルボキシイミド、カルボキシル、アルコキシカルボニル置換体等の四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエン等の五環ノルボルネン類;ヘキサシクロヘプタデセン等の六環ノルボルネン類;ジノルボルネン、二個のノルボルネン環が炭化水素又はエステル基等で結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体等のノルボルネン環を含む化合物等が挙げられる。
重合反応においては、重合体の分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤としては、例えば、ビニル基を有する化合物等が挙げられる。具体的には、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、グリシジルメタクリレート等のビニルエステル類;アリルアルコール等のビニルアルコール類;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物等を使用することができる。
ビニル化合物の使用量は、目的とする重合体の分子量に応じて適宜選択することができるが、通常、ノルボルネン系単量体に対して0.001〜20モル%の範囲である。
また、重合反応終了時においては、所望により上記のビニル化合物を再度添加して重合体の成長末端からルテニウム錯体化合物を遊離させることで、重合を停止させることができる。この重合停止法は、重合反応に引き続いて、得られた重合体を水素化する水素化工程に用いる触媒の活性を向上させるために特に有用である。
本発明の水素化反応用触媒は、ルテニウム錯体化合物(A)を含有してなる。ルテニウム錯体化合物(A)は、オレフィン化合物の炭素−炭素二重結合を選択的に水素化する触媒としても高い活性を示す。オレフィン化合物としては、分子内に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するものであれば特に制限されず、目的に応じて任意に選択することができる。
水素化反応用触媒としては、前記一般式(2)で表されるルテニウム−カルベン錯体化合物およびルテニウムヒドリド錯体化合物が高活性であり好ましい。ルテニウムヒドリド錯体の具体的例としては、カルボニル(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)(ヒドリド)(クロリド)、カルボニル(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)(ヒドリド)(クロリド)、カルボニル(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)ジヒドリド、カルボニル(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)ジヒドリド、水素(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)(ヒドリド)(クロリド)、水素(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)ルテニウム(II)(ヒドリド)(クロリド)などを挙げることができる。
水素化反応は、本発明のルテニウム錯体の存在下に、オレフィン化合物と水素とを接触させることにより行なわれる。この水素化反応は無溶媒又は溶媒中で行なうことができる。溶媒は水素化されるオレフィン化合物の種類により適宜に選択でき、非極性溶媒のみならず、極性溶媒を用いることもできる。具体的には、前記したオレフィン化合物のメタセシス反応の溶媒と同様のものをいずれも用いることができる。
水素化反応に用いられるルテニウム錯体の使用量は特に限定されないが、(触媒中の金属ルテニウム):(オレフィン化合物の炭素−炭素二重結合)のモル比で表すと、通常1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000の範囲である。水素化反応に用いる水素の圧力は、通常10MPa以下、好ましくは0.01〜8MPa、より好ましくは0.05〜5MPaである。水素化反応の反応温度および反応時間も適宜に選択することができるが、その範囲は前記したオレフィン化合物のメタセシス反応の場合と同様である。
また、本発明のルテニウム錯体を用いるオレフィン化合物の開環メタセシス重合を行った後、引き続いて生成した重合体を水素化することもできる。その場合には、重合工程の触媒として使用した本発明のルテニウム錯体化合物をそのまま水素化反応用触媒としても使用することができる。
さらに、水素化反応触媒活性を向上させる方法として、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、トリフェニルホスフィンなどのルイス塩基を加えても良い。加えるルイス塩基の量は、ルテニウム金属に対して、1モル等量〜1,000モル等量の間であれば、特に限定されない。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
(1)合成したルテニウム錯体化合物は、CDClを溶媒とするH−NMRおよび31P−NMRスペクトルの測定により構造を同定した。
(2)開環メタセシス重合における重合転化率は、固形分重量測定法により求めた。
(3)重合体の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、HLC−8020)によるポリスチレン換算値として測定した。また、開環重合体の水素化物の分子量は、オルトジクロロベンゼンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC、東ソー(株)製、HLC−8121、135℃)によるポリスチレン換算値として測定した。
(4)重合体中の炭素−炭素二重結合の水素化率は、H−NMRスペクトルにより測定した。
実施例1:ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(錯体a)のワンポット合成
1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロライド0.58部をシュレンク管に入れ、管内をアルゴンで置換した後、テトラヒドロフラン(THF)を3部加え、5分攪拌した。この懸濁溶液にカリウムtert−ブトキサイド0.15部を加え、30分反応を続けた後、四臭化炭素0.27部を加え、更に30分反応を続けた。そこに、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロライド0.43部を加え、1時間反応を続けた。反応溶媒を濃縮した後、多量のメタノールを加えて、赤茶色の粉末を析出させた。析出物を濾取し、無色になるまでメタノールで洗浄を行った。その後、減圧下で乾燥することにより、錯体a0.33部を得た。なお、全ての操作は室温で行った。
得られた錯体aのH−NMRおよび31P−NMRのスペクトル測定により、この化合物がベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジブロモイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体aの純度がほぼ100%であることが確認できた。
スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(δppm):0.75−1.70(br、30H)、1.96(s、12H)、2.20(m、3H)、2.37(s、6H)、5.93(br、1H)、6.75(br、1H)、7.06(s、2H)、7.12(t、2H)、7.40(t、1H)、8.94(br、2H)、19.4(s、1H)
31P−NMR(δppm):31.3
実施例2:ベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド(錯体b)のワンポット合成
1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロライドの量を0.3部、THFの量を10部とし、四臭化炭素に代えて四塩化炭素0.27部を用いた他は、実施例1と同様にして錯体b0.32部を得た。
得られた錯体bのH−NMRおよび31P−NMRのスペクトル測定により、この化合物がベンジリデン(1,3−ジメシチル−4,5−ジクロロイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドであることを確認した。また、NMRスペクトルにおいて不純物由来のピークは見られず、得られた錯体bの純度がほぼ100%であることが確認できた。
スペクトルデータを以下に示す。
H−NMR(δppm):0.75−1.70(m、30H)、1.96(s、12H)、2.21(m、3H)、2.37(s、6H)、5.94(br、1H)、6.75(br、1H)7.08(s、2H)、7.12(t、2H)、7.41(t、1H)、8.93(br、2H)、19.4(s、1H)
31P−NMR(δppm):31.5
実施例3
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン430部とジシクロペンタジエン(DCP)150部を仕込み、さらに分子量調整剤として1−ヘキセン1.4部を添加した。この溶液に、実施例1で得られた錯体a0.01部をトルエン15部に溶解した触媒溶液を添加して重合反応を開始した。60℃で1時間反応した後、エチルビニルエーテル0.01部を加えて重合反応を停止した。重合反応液の一部を採取して分析したところ、重合転化率99%以上でDCP開環重合体が得られた。該重合体のMnは12,200、Mwは25,800であった。
次いで、トリエチルアミン0.012部を添加した後、オートクレーブ内に水素を供給し、165℃、水素圧力5MPaで6時間撹拌して水素化反応を行った。得られたDCP開環重合体水素化物の水素化率は99.9%以上で、Mnは15,200、Mwは34,100であった。
実施例4
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン430部と8−エチルテトラシクロドデセン(ETCD)150部を仕込み、さらに分子量調整剤として1−ヘキセン1部を添加した。この溶液に、実施例2で得られた錯体b0.007部をトルエン15部に溶解した触媒溶液を添加して重合反応を開始した。60℃で1時間反応した後、エチルビニルエーテル0.007部を加えて重合反応を停止した。重合反応液の一部を採取して分析したところ、重合転化率99%以上でETCD開環重合体が得られた。該重合体のMnは16,500、Mwは39,300であった。
次いで、トリエチルアミン0.008部を添加した後、オートクレーブ内に水素を供給し、165℃、水素圧力5MPaで6時間撹拌して水素化反応を行った。得られたETCD開環重合体水素化物の水素化率は99.9%以上で、Mnは18,700、Mwは42,200であった。
実施例5
攪拌機付きオートクレーブに、THF430部とETCD75部、ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物(NDCA)75部を仕込み、さらに分子量調整剤として1−ヘキセン1部を添加した。この溶液に、実施例1で得られた錯体a0.07部をTHF15部に溶解した触媒溶液を添加した。溶液を60℃で1時間撹拌した後、エチルビニルエーテル0.07部を加えて重合反応を停止した。重合反応液の一部を採取して分析したところ、重合転化率99%以上でETCDとNDCAの開環共重合体が得られた。該共重合体のMnは15,300、Mwは29,800であった。
次いで、N,N−ジメチルアセトアミド0.08部を添加した後、オートクレーブ内に水素を供給し、165℃、水素圧力5MPaで6時間撹拌して水素化反応を行った。得られた開環共重合体水素化物の水素化率は99.9%以上で、Mnは18,900、Mwは45,000であった。
実施例6
錯体aに代えて錯体b0.07部を用いた他は、実施例5と同様にして重合反応を行った。重合反応液の一部を採取して分析したところ、重合転化率92%でETCDとNDCAの開環共重合体が得られた。該共重合体のMnは13,200、Mwは27,600で、共重合比は重量比でETCD:NDCA=55:45であった。
以上の実施例より明らかなように本発明の方法によれば4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)を簡便かつ効率よく製造できることが分かる。また、得られたルテニウム錯体化合物(A)はノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合反応および水素化反応の触媒として高い活性を示した。

Claims (5)

  1. 4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)を含有してなるノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合用触媒。
  2. 4位および5位が臭素原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A1)を含有してなるノルボルネン系単量体の開環メタセシス重合用触媒。
  3. 請求項またはに記載の開環メタセシス重合用触媒の存在下に、ノルボルネン系単量体を重合することを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
  4. 前記ノルボルネン系単量体が極性基を有するものである請求項記載の製造方法。
  5. 4位および5位がハロゲン原子で置換された置換イミダゾリン−2−イリデンを配位子として有するルテニウム錯体化合物(A)を含有してなるオレフィン化合物の水素化反応用触媒。
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