JP2002191321A - 魚醤油の製造法 - Google Patents

魚醤油の製造法

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JP2002191321A JP2000392383A JP2000392383A JP2002191321A JP 2002191321 A JP2002191321 A JP 2002191321A JP 2000392383 A JP2000392383 A JP 2000392383A JP 2000392383 A JP2000392383 A JP 2000392383A JP 2002191321 A JP2002191321 A JP 2002191321A
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Tadashi Mizutani
忠士 水谷
Sachi Hirai
佐知 平井
Yoichi Ueda
要一 上田
Akiyoshi Maehashi
明佳 前橋
Tetsuya Kato
哲也 加藤
Toshiaki Ohira
利明 大平
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KATSUO GIJUTSU KENKYUSHO KK
YANAGIYA HONTEN KK
Ajinomoto Co Inc
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KATSUO GIJUTSU KENKYUSHO KK
YANAGIYA HONTEN KK
Ajinomoto Co Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】魚のくさみがなく色がうすい魚醤油を、新たな
特別の処理工程を加えず通常の醸造工程だけで1.5か
月程度以内という短期間で製造する方法を開発提供する
こと。 【解決手段】魚介肉原料に食塩、水及びスターターとし
ての耐塩性乳酸菌、例えばテトラゲノコッカス・ハロフ
ィルス(Tetragenococcus halophilus)を加えて混合
し、これに固体麹を加えて混合して諸味となし、この諸
味を仕込み直後から加温すると共に諸味の発酵熟成途中
pH下降時にスターターとして耐塩性酵母、例えばチゴ
サッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharomyces roux
ii)を添加することにより、短期間に諸味を発酵熟成さ
せることを特徴とする魚醤油の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚介類原料と固体
麹を使用して、魚のくさみがなく色がうすい特長を有す
る魚醤油を短期間に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】魚介類を原料に、高い食塩濃度の中で酵
素や微生物によって徐々に分解して作られる調味料であ
る魚醤油の伝統的な製造法(いわゆる「魚醤」の製造
法)としては、生魚を食塩水に仕込む製法がよく知られ
ているが、製造期間が通常1年程度必要なことと魚臭が
するという問題がある。
【0003】魚臭が弱く醤油風味を有する魚醤油の製造
法としては、生魚や加熱魚肉を固体麹を用いて発酵熟成
させる方法が知られている。具体的には、乳酸菌や酵母
スターターは用いないで固体麹を用いて、1か月程度の
短期間に製造する公知の製法としては、例えば、特開平
06−209738号公報に記載の「魚醤油の製造方
法」があるが、この方法は製品色度はうすいものの、減
圧濃縮処理工程を必要とする。又、特開平08−239
17号公報に記載の「魚醤油の製造方法」は魚介類を自
己消化処理あるいは酵素剤による酵素分解処理工程を組
入れた後に固体麹を混合する方法である。
【0004】一方、乳酸菌と酵母スターターと固体麹を
併用する公知の方法としては、特開平08−25672
7号公報に記載の「魚醤油の製造方法」があるが、製品
色度はうすいものの、仕込み工程で魚介類に食塩及び固
体麹を加えた後に乳酸菌スターターを添加する通常の乳
酸菌スターターの添加順序である共に低温醗酵熟成であ
るため、製造期間が6か月程度も必要とする。又、特開
平11−178540号公報に記載の「調味料の製造
法」は、製造期間が3週間程度と短期間であるが、諸味
に酵母スターターを添加した後に乳酸菌スターターを添
加する方法であると共に、高温無塩消化のために製品色
度が濃くなる特徴を有する。
【0005】以上の如く、魚くさくない上に色がうすく
醤油風味を有する魚醤油を、新たな処理工程を加えず通
常の醸造工程だけで、醸造期間1.5か月以内という短
期間で製造する方法は知られていない。因みに、固体麹
と乳酸菌スターターを用いる魚醤油の製造は、通常、魚
介類、水、食塩(または食塩水)および固体麹を仕込ん
で諸味を作成し、これに乳酸菌スターター、次いで酵母
スターターを加えて発酵熟成させ、得られた熟成諸味を
圧搾してしょうゆ粕および生揚げしょうゆに分離し、生
揚げしょうゆは適宜火入れ処理して魚醤油の製品とされ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】魚くさくない魚醤油
を、1か月程度の短期間で製造する従来技術は、製品色
度が濃く仕上がったり、あるいは通常の醸造工程以外に
新たな特別の処理工程を加える必要があるなどの問題が
あり、これを解決することが本発明の課題である。すな
わち、本発明は、魚のくさみがなく色がうすい魚醤油
を、新たな処理工程を加えず通常の醸造工程だけで1.
5か月程度以内という短期間で製造する方法を開発提供
することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、固体麹を
用いる魚醤油の製造法について鋭意研究した結果、生魚
肉又は加熱処理した魚肉などの魚介肉を食塩と混合した
後に仕込み水に懸濁させるか、又は魚介肉を食塩水に懸
濁させて食塩含有魚介肉懸濁液を調製し、これに直ちに
スターターとして耐塩性乳酸菌を添加混合し、これに固
体麹を加えて混合して諸味となし、この諸味を加温しつ
つ、且つ時々攪拌しながら乳酸発酵を早期に立ち上げた
後に、スターターとして耐塩性酵母を添加して酵母発酵
を行わしめることによって、魚のくさみがなく色がうす
い魚醤油を短期間に製造できることを見出し、このよう
な知見に基いて本発明を完成した。
【0008】すなわち、本発明は、魚介肉原料に食塩、
水及びスターターとしての耐塩性乳酸菌、例えばテトラ
ゲノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus haloph
ilus)を加えて混合し、これに固体麹を加えて混合して
諸味となし、この諸味を仕込み直後から加温すると共に
諸味の発酵熟成途中pH下降時にスターターとして耐塩
性酵母、例えばチゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygo
saccharomyces rouxii)を添加することにより、短期間
に諸味を発酵熟成させることを特徴とする魚醤油の製造
法に関する。
【0009】このような本発明は、例えば、前記固体麹
がアスペルギルス属及びモナスカス属に属する糸状菌か
ら選ばれた少なくとも1種を生育させた固体麹であり、
好ましくは醤油用種麹を生育させた小麦麹であることを
特徴とする上記本発明の魚醤油の製造法、前記各原料と
乳酸菌スターターを仕込んだ後の諸味の発酵熟成工程で
は、諸味温度を25〜35℃に保持して4〜6週間、発
酵熟成させることによって、麹由来の酵素による魚肉の
分解処理と乳酸菌による魚臭分解と醤油風味生成と淡色
化処理並びに、諸味のpHが5.3以下に低下した時点
で添加する酵母スターターによる魚臭分解と醤油風味生
成処理から成る、各種処理を施すことを特徴とする前記
2種類のいずれかの魚醤油の製造法、等の実施の態様を
包含する。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】前述したように、本発明の魚醤油は、例え
ば、生魚介肉又は加熱魚介肉などの魚介肉原料を食塩水
に仕込み、その後乳酸菌スターターを添加し、攪拌混合
した後に固体麹を加え攪拌混合して諸味を作成し、この
諸味を発酵熟成工程に付して製造される。本発明に用い
られる魚介肉は、かつお、まぐろ、さけ、あじ、いわ
し、いか、小エビ、貝類等の魚介肉であり、魚介類の種
類には特別の制限はない。又、本発明において用いられ
る魚介肉原料とは、魚介類の正肉部のみならず、頭、内
臓、ハラモ、皮及びそれらの混合物をも含むものであ
る。
【0012】本発明の魚醤油を製造するために用いられ
る固体麹製麹用の微生物、すなわち糸状菌はアスペルギ
ルス属の微生物であって、例えばアスペルギルス・オリ
ーゼ(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ソーヤ
(Aspergillus soyae)、アスペルギルス・サイトイ(A
spergillus saitoi)、アスペルギルス・アワモリ(Asp
ergillus awamori)、並びにモナスカス属の微生物を挙
げることができ、好ましくはモナスカス・アンカ(Mona
scus anka)を挙げることができる。これらの糸状菌は
一種類又は複数種類混合して使用できる。また、上記糸
状菌は、醤油用種麹、味噌用種麹などとして市販されて
おり、容易に入手できる。
【0013】本発明の魚醤油製造にスターターカルチャ
ーとして用いる微生物は、テトラゲノコッカス・ハロフ
ィルス(Tetragenococcus halophilus)などの耐塩性乳
酸菌とチゴサッカロマイセス・ルキシー(Zygosaccharo
myces rouxii)などの耐塩性酵母であり、これら微生物
は醸造用乳酸菌スターター、醸造用酵母スターターとし
て市販されており、容易に入手できる。
【0014】固体麹の製法は、特に限定されるものでは
なく、従来一般的に行われている方法を用いることがで
きる。麹の原料としては、小麦、脱脂大豆、米等を単
独、又はこれらの混合物を用いることができるが、好ま
しくは小麦単独、又は小麦と米の混合物を用いることで
ある。これによって、色がよりうすい魚醤油を製造する
ことができるからである。
【0015】本発明の魚醤油の一般的な製造法は、例え
ば、以下に述べる通りである。魚肉などの魚介肉と食塩
と水の混合物は次の2通りの製造法で調製できる。1つ
目は、魚介肉を細断したものを食塩と混合した後に仕込
み水に懸濁させる。2つ目は、魚介肉を細断したものを
食塩水に懸濁させる。上記の如く調製した食塩含有魚介
肉懸濁液に乳酸菌スターターを添加し攪拌混合する。そ
の後、これに固体麹を加えて攪拌混合し、諸味となす。
【0016】従来から知られている方法は、食塩含有魚
介肉懸濁液に固体麹を加え攪拌混合した後、これに乳酸
菌スターターを添加し攪拌混合して諸味を仕込む方法で
あるが、この方法では乳酸発酵の立ち上がりが遅れる
か、ときとして乳酸発酵が起きない場合もある。
【0017】このように、仕込み工程での乳酸菌スター
ターと麹の添加順序が異なることが乳酸発酵に影響する
要因について考察を加える。耐塩性乳酸菌は通性嫌気性
であり、生育環境から酸素がなくなってから旺盛な生育
をすることが知られている。本発明の方法では、乳酸菌
スターターを食塩含有魚介肉懸濁液に添加してから麹を
添加するため、乳酸菌は既に魚介肉懸濁液の内部に取り
込まれており、空気を含む麹と直接接触する機会は少な
く嫌気的環境に置かれやすい。一方、従来の方法は、食
塩含有魚介肉懸濁液に麹を添加した後に乳酸菌スタータ
ーを添加するため、乳酸菌は空気を含む麹と直接接触す
る機会が多くなり好気的環境にさらされやすいと考えら
れる。このような乳酸菌の周りの酸素濃度の違いが乳酸
発酵の立ち上がり時期の差に結びつくものと考察され
る。
【0018】魚介肉に対する麹の使用量は特に限定され
るものではないが、通常、固体麹1重量部に対し魚介肉
1〜4重量部の範囲内で適宜選択することができる。
【0019】食塩と水の使用量は、最終製品の目標塩分
濃度に応じて任意に設定できるが、通常、魚醤油諸味中
(生揚)の塩分濃度は14〜18g/dlの範囲である
ことが望ましい。14g/dl以下の場合、諸味の有害
微生物汚染の原因になりやすい。一方、18g/dl以
上では麹の酵素活性阻害などにより諸味の発酵熟成に長
期間を要することになるからである。具体的には、魚介
肉と固体麹との混合物1重量部に対し、25〜30%
(w/w)の食塩水を0.6〜1.0重量部の割合で使
用することができる。
【0020】諸味の発酵熟成に使用される容器は半密閉
の容器が好ましい。容器に仕込まれた諸味は、液温25
〜35℃に調整し、諸味を時々攪拌しながら、4〜6週
間、発酵熟成させる。仕込み初期には麹の酵素により魚
介肉蛋白等が分解される。また、生魚介肉の場合には魚
介肉自体の酵素により自己消化も起きる。一方、仕込み
時に添加した乳酸菌が生育して徐々にpHが低下する。
諸味pHが5.3以下に低下した時点で酵母スターター
を添加して酵母発酵を促す。
【0021】pH5.3以下で酵母スターターを添加す
る理由は次の通りである。仕込み直後の諸味のpHは通
常、5.6〜6.0である。仕込み直後の諸味やpHが
5.3以上の諸味に酵母スターターを添加すると、乳酸
菌よりも酵母の生育が旺盛のために乳酸菌の生育が阻害
されることによる。仕込み工程で、乳酸菌スターターを
添加しない場合は、乳酸発酵の立ちあがりが遅れて長期
の醸造期間が必要になる。また、乳酸菌スターター添加
の代わりに諸味に乳酸を添加して醗酵熟成を促進しよう
としても色度低減は達成できない。
【0022】一方、諸味pHが下がるにつれて酵母が自
然に生育してくるが、酵母スターターを添加することに
よって短期醸造における品質の安定化を図ることができ
る。
【0023】上記の諸味発酵を終了した後に、通常の醤
油諸味の後処理と同様の処理を施して製品化する。すな
わち、例えば、諸味を濾過して生揚となし、この生揚を
80℃、30分の火入れ殺菌をした後に火入れオリをセ
ライト濾過して清澄な火入れ製品を得る。この火入れ製
品は、伝統的な魚醤に比べ、魚くささがなく、魚醤油特
有の甘味のある呈味を有すると共に、色の濃さは日本の
本醸造うすくちしょうゆと同等か、それ以下のうすさと
醤油風味も有する魚醤油である。
【0024】本発明の魚醤油の製品組成は、pH4.7
〜5.2、全窒素1.3〜3.0g/dl、食塩14〜
18g/dl、乳酸0.6g/dl以上、エタノール
1.2g/dl以上、色度0.3〜0.9(波長550
nm、10mmセルの吸光度)であることを特徴とす
る。これは醤油標準色No.30〜No.50に相当す
る色度である。因みに、日本で市販されている本醸造う
すくちしょうゆの色度は0.8〜1.0程度であり、こ
れは醤油標準色No.28〜No.34に相当する。本
発明の魚醤油は魚くささがないのに魚醤の呈味を有し、
また日本醤油の風味をも合わせもつ上記特性により、日
本料理にとどまらず、中華料理、西洋料理、エスニック
料理用の汎用調味料として最適である。
【0025】
【実施例】以下、実施例により、本発明をより詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例によって限定される
ものではない。
【0026】実施例1 小麦(日清製粉株式会社製、商品名;こうじむぎSTう
すくち)880gに、種麹(株式会社秋田今野商店製、
商品名;醤油用2号菌「Aspergillus oryzae」)を0.
4g混合し、これに水520gを吸水させた後に、麹蓋
に移し変えて、通常の製麹条件に則り、品温25〜30
℃で3日間製麹して小麦麹を作成した。
【0027】魚介肉原料として、生の鰹副生物(頭6部
と内臓およびハラモ4部の混合物をミンチしたもの)を
用い、この魚介肉原料728gと食塩242gを水65
0gに懸濁させた後に乳酸菌スターター(株式会社ビオ
ック製、商品名;乳酸菌「Tetragenococcus halophilu
s」)0.3gを添加して攪拌混合し、その後上記小麦
麹370gを加え攪拌混合して諸味を作成する実験区
(本発明)と、同じ魚介肉原料728gと食塩242g
を水650gに懸濁させた後に上記小麦麹370gを加
え攪拌混合し、その後乳酸菌スターター0.3gを添加
し攪拌混合して諸味を作成する実験区(比較例)の2
種類の諸味について次の実験を行った。因みに、本実験
に供した乳酸菌スターター中の乳酸菌数は6.6×10
10個/gであったことから、乳酸菌植菌数は諸味1g
当り1×10個になる。
【0028】2種類の諸味をそれぞれ30℃の恒温室に
入れて、仕込み後1週間は毎日1回攪拌を行ない、その
後は2日に1回攪拌して4週間、発酵熟成させた。この
諸味の発酵熟成工程において、諸味のpHが5.2に低
下した時点で酵母スターター(株式会社ビオック製、商
品名;醤油用酵母「Zygosaccharomyces rouxii」)0.
3gを添加して、酵母発酵を意図的に行わしめた。
【0029】諸味の発酵熟成工程での両種の諸味のpH
と乳酸菌数及び乳酸発酵の目安としての諸味浮上の経時
変化を下記第1表に示す。
【0030】
【表1】
【0031】第1表から、麹の前に乳酸菌スターターを
添加した実験区は仕込み後12日目に諸味pHが5.
0に下がり乳酸発酵が旺盛になったのに対し、麹の後に
乳酸菌スターターを添加する実験区は仕込み後20日
目にやっと諸味pHが5.2に下がり乳酸発酵が立ちあ
がった。このように諸味仕込み時の乳酸菌スターターの
添加順序が乳酸発酵の立ちあがり時期に大きく影響する
ことがわかる。尚、乳酸菌数の測定には、4%食塩加L
培地を使用した。4%食塩加L培地の培地組成は下記第
2表に示す通り。
【0032】
【表2】
【0033】こうして発酵熟成せしめた2種類の諸味を
それぞれ濾布を用いて濾過して生揚を得た。この生揚を
80℃、30分の火入れ処理を施した後、セライト濾過
して火入れ製品をそれぞれ1,100mlを得た。
【0034】実施例2 小麦(日清製粉株式会社製、商品名;こうじむぎSTう
すくち)880gを用いて、実施例1におけると同様の
方法で小麦麹を作成した。
【0035】魚介肉原料として、実施例1におけると同
じ生の鰹副生物を用い、鰹副生物728gと食塩242
gを混合したものを水に懸濁させた後に、乳酸菌スター
ター1.0gを添加し攪拌混合し、その後上記小麦麹3
70gを加え攪拌混合して作成した諸味(実験区)
(本発明)と、鰹副生物728gと食塩242gを混合
したものを水650gに懸濁させた後に、上記小麦麹3
70gを加え攪拌混合し、その後乳酸菌スターター1.
0gを添加し攪拌混合して作成した諸味(実験区)
(比較例)の2種類の諸味について後記実験をした。
【0036】因みに、諸味の作成に供した乳酸菌スター
ターとしては、株式会社ビオック製の乳酸菌スターター
から乳酸菌を純粋分離した後に、順化、賦活培養した培
養液を遠心分離した沈殿部を用いた。この沈殿部の乳酸
菌数は、1×10個/gであった。尚、順化、賦活培
養は純粋分離した乳酸菌を、寒天を含まない「好井培
地」((株)学会出版センター発行、乳酸菌研究集談会
編、「乳酸菌の科学と技術」に記載、1996年)に接
種し、30℃で2日間培養する方法で行なった。
【0037】前記2種類の諸味を、それぞれ、30℃の
恒温室に入れ、仕込み後の1週間は毎日1回攪拌し、そ
の後は2日に1回攪拌して4週間、発酵熟成させた。こ
の諸味の発酵熟成工程において、諸味のpHが5.2ま
で低下した時点で、酵母スターター(株式会社ビオック
製、商品名;醤油用酵母「Zygosaccharomyces rouxi
i」)0.3gを添加して、酵母発酵を意図的に行わし
めた。
【0038】諸味の発酵熟成工程での両種の諸味のpH
と乳酸菌数及び乳酸発酵の目安としての諸味浮上の経時
変化を下記第3表に示す。
【0039】
【表3】
【0040】第3表から、麹の前に乳酸菌スターターを
添加した実験区は、仕込み後16日目に諸味pHが
5.2に下がり、乳酸発酵が立ち上がったのに対し、麹
の後に乳酸菌スターターを添加した実験区は仕込み後
21日目にやっと諸味pHが5.2に下がり乳酸発酵が
立ちあがった。このように、仕込み時の乳酸菌スタータ
ーの添加順序が乳酸発酵の立ちあがり時期に大きく影響
することがわかった。
【0041】こうして発酵熟成せしめた2種類の諸味を
それぞれ濾布を用いて濾過して生揚を得た。この生揚を
80℃、30分の火入れ処理を施した後に、セライト濾
過して火入れ製品をそれぞれ1,100mlを得た。上
記両製品の組成及び官能評価結果を下記第4表に示す。
【0042】
【表4】
【0043】製品の色は共に薄く良好であったが、麹の
前に乳酸菌スターターを添加した実験区は乳酸及びエ
タノールの生成量が充分であり、乳酸菌および酵母がと
もに充分に生育したことを示し、官能評価も良好であ
る。一方、麹の後に乳酸菌スターターを添加した実験区
は乳酸の生成は充分ながら直糖が多量に残存し、エタ
ノールの生成が不充分であり酵母の生育が不充分であっ
たことを示している。すなわち、実験区は発酵が不充
分であり、官能評価でも魚くさみが残った。
【0044】更に、直糖含量の少ない実験区は、直糖
含量の多い実験区よりも製品が褐変しにくいことを容
易に予測できる。
【0045】
【発明の効果】本発明の方法によれば、魚くささがな
く、従来法では得られなかった色の薄い魚醤油を1.5
か月程度の短期間内で容易に製造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水谷 忠士 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社食品研究所内 (72)発明者 平井 佐知 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社食品研究所内 (72)発明者 上田 要一 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社食品研究所内 (72)発明者 前橋 明佳 静岡県焼津市惣右衛門1320番地の1 株式 会社かつお技術研究所内 (72)発明者 加藤 哲也 神奈川県川崎市川崎区鈴木町1−1 味の 素株式会社川崎工場内 (72)発明者 大平 利明 静岡県焼津市惣右衛門1320番地の1 株式 会社かつお技術研究所内 Fターム(参考) 4B039 LB12 LC01 LC06 LC09 LG06 LG14 LG16 LG18 LG20 LG22 LG23 LG32 LQ11 LQ13 LQ14

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】魚介肉原料に食塩、水及び耐塩性乳酸菌ス
    ターターを加えて混合し、これに固体麹を加えて混合し
    て諸味となし、この諸味を仕込み直後から加温すると共
    に諸味の発酵熟成途中pH下降時に耐塩性酵母スタータ
    ーを添加することにより、短期間に諸味を発酵熟成させ
    ることを特徴とする魚醤油の製造法。
  2. 【請求項2】用いる固体麹が小麦麹であることを特徴と
    する請求項1記載の魚醤油の製造法。
  3. 【請求項3】仕込み直後から諸味を25〜35℃に加温
    し、諸味のpHが5.3以下に下降した時点にスタータ
    ーとして耐塩性酵母を添加して、4〜6週間、諸味を発
    酵熟成させた後常法の濾過、火入れおよびおり引きを行
    い製品としたときの製品色度が0.3〜0.9(波長5
    50nm、10mmセルの吸光度表示)であることを特
    徴とする請求項1または2記載の魚醤油の製造法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011120484A (ja) * 2009-12-08 2011-06-23 Tablemark Co Ltd 新規魚介調味料及びその製造方法
WO2017010520A1 (ja) * 2015-07-13 2017-01-19 国立大学法人東北大学 視神経保護用組成物

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