JP3683750B2 - 再仕込醤油の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、色沢が淡麗で、醤油特有の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
再仕込醤油は、中国地方では別名甘露醤油とも呼ばれており、通常の濃口醤油に比べ、色・味ともに濃厚で、性状は粘稠性を帯びており、またJAS規格では全窒素分、無塩可溶性固形分(エキス分)が高く、食塩分が低いことが知られている。
その製法は、濃口生醤油に醤油麹を仕込み、酵母を添加して数ケ月発酵熟成させる。
仕込水として食塩水を用いる代わりに濃口生醤油を用いるため、最終製品は全窒素(特にアミノ酸)含量が多く、非常に旨味に富む。
しかし、諸味は、濃口生醤油に由来するフェノール系物質の如き発酵阻害物質や窒素の濃度が共に高いため、酵母の諸味中での生育が悪く、諸味のアルコール発酵が緩慢であるため、製品は醤油特有の芳醇な香りが乏しい欠点を有する。
このように再仕込醤油は、旨味は非常に濃厚であるが、色沢も濃厚で、醤油特有の芳醇な香りが乏しい特徴を有している。
【0003】
従来、色沢が淡麗で、醤油特有の香りを濃厚に有する再仕込醤油として、淡口生醤油を仕込水とし、これに醤油麹を添加混合し、以下常法により発酵熟成させる方法が知られている。
この方法は、フェノール系物質の如き発酵阻害物質の含量が非常に少なく、しかも色沢が淡麗な淡口生醤油を用いるため、色沢が淡麗であると共に、アルコール発酵が旺盛で、香りが優れた醤油が得られる特徴を有するが、発酵阻害物質を高濃度で含有する濃口生醤油を利用できない。
【0004】
一方また、窒素濃度が高い環境下でも旺盛に増殖する耐塩性醤油酵母を、再仕込醤油諸味の中から分離し、この酵母を利用して、30℃で発酵を行い1.8容量%のアルコールを含有し、香りの優れた再仕込醤油を得る方法が知られている(醤研Vol.15、No.3、1989、第86〜92頁参照)。
しかし、この方法は、諸味の品温を30℃にて、発酵を行うため、色沢の淡麗な再仕込醤油を得ることは期待できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、仕込水として発酵阻害物質を高濃度で含有する濃口生醤油を用いた場合と雖も、色沢が淡麗で、醤油の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油を得ることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を解決するため鋭意検討を重ねた結果、通常の醤油諸味には、15〜23℃という低温状態において、しかもフェノール系物質の如き発酵阻害物質を高濃度に含有し、窒素濃度の高い環境において、旺盛に生育、増殖し、アルコールを高濃度に生産蓄積する酵母が僅かではあるが、存在し、これを分離することに成功した。そして、諸味品温を仕込時から発酵熟成終了まで一貫して15〜23℃に保持し、かつ酵母として、上記で得られた酵母を少なくとも105細胞/諸味g添加使用するときは、色沢が淡麗で、醤油の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油が得られることを知り、この知見に基づいて本発明を完成した。すなわち、本発明は、醤油に醤油麹を仕込み、得られた諸味に酵母を添加して発酵熟成させる再仕込醤油の製造法において、該諸味品温を仕込時から発酵熟成終了まで一貫して15〜23℃に保持し、かつ該酵母として、下記培養条件で培養した場合、培養液中にエチルアルコールを2容量%以上生産蓄積する能力を有する、通常の醤油諸味から分離された耐塩性醤油酵母(以下、低温発酵性酵母ということがある)を、少なくとも105細胞/諸味g添加使用することを特徴とする色沢が淡麗で香りが良好な再仕込醤油の製造法である。
【0007】
(培養条件)
500ml容三角フラスコに、市販の濃口醤油(JAS特級規格)170ml、30重量%食塩水65mlを入れ、これに通常の醤油麹150gを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日棒で1回均一に撹拌し、2週間消化し、得られた消化諸味に酵母を0.8〜1.2×105細胞/諸味g添加し、開口部をア ルミホイルで軽く密閉し、毎日棒で1回均一に撹拌し、20℃で30日培養する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
まず、本発明を実施するには、醤油に通常の醤油麹を仕込み、得られた諸味に酵母を添加して発酵熟成させる。
【0010】
ここに用いられる醤油としては、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、化学醤油(アミノ酸醤油)、新式2号醤油、醤油風調味料(植物蛋白の酵素加水分解液)、魚醤油などの、生(生揚げ)または火入醤油を用いることができる。
そして、この醤油を、そのまま或いはこれを水または食塩水で希釈して、全窒素濃度1.0〜1.7%、食塩濃度12〜24%に調整して使用することが好ましい。
醤油麹に対する醤油の配合割合(仕込水量)は、通常の醤油醸造法に従い、例えば醤油麹に対して130〜200重量%が好ましい。
【0011】
この醤油に仕込む醤油麹としては、通常の醤油麹の製造法に従い調製して得られる醤油麹が好ましい。
例えば、加熱(例えば蒸煮)変性した、大豆、脱脂大豆などと、炒熬割砕した小麦などとの混和物にアスペルギルス・オリゼー、同・ソーヤ等の醤油用麹菌を接種し、麹品温23〜38℃で、30〜45時間培養して得られる醤油麹が好ましい。
なお、醤油麹の原料配合は、通常の配合比、例えば蛋白原料/澱粉原料が50〜55/50〜45でもよいが、蛋白質原料の使用割合の高い麹、例えば蛋白原料/澱粉原料が60〜80/40〜20の麹を用いた方が旨味に富む醤油が得られるので好ましい。
【0012】
醤油麹を仕込んだ後は、時々撹拌を行いながら、通常の再仕込醤油の諸味管理を行い、3〜6カ月間発酵熟成させるが、このとき諸味の品温を仕込時から発酵熟成終了まで、一貫して15〜23℃に保持すると共に、この途中において低温発酵性酵母を添加する。
【0013】
本発明において、諸味品温を仕込時から発酵熟成終了まで一貫して15〜23℃で行うときは、色沢が淡くて綺麗(以下、「淡麗」という)である再仕込醤油を得ることができる。そして特に、15〜21℃で行うときは、色沢が極めて淡い再仕込醤油を得ることができる。
しかし、15℃未満で行うときは、後で述べるように低温発酵性酵母といえども、生育が悪く、アルコール発酵が極端に悪くなり、醤油特有の芳醇な香りが乏しくなる。反対に、23℃を越えて行うと、諸味液汁の着色が著しくなり、色沢の淡麗な製品は得られない。
【0014】
これに対し、諸味品温を仕込時から発酵熟成終了まで一貫して15〜23℃に保持するときは、アルコール発酵が旺盛に行われ、短期間に諸味中にアルコールを容量2〜4容量%生成蓄積することができる。
また色沢の淡麗な再仕込醤油を得ることができる。
【0015】
本発明に用いる酵母としては、前記培養条件で培養した場合、培養液中にエチルアルコールを2容量%以上生産蓄積する能力を有する酵母であれば任意の酵母が利用可能であるが、特に通常の醤油諸味から分離された耐塩性醤油酵母、例えばサッカロミセス・ルーキシに属し、上記アルコール生産蓄積能を有する酵母が挙げられる。
【0016】
そして、上記酵母の添加量は醤油諸味1g当たり105細胞以上(105細胞 以上/諸味g)とすることが重要で、これより少ないと発酵不良となり、醤油特有の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油を得ることができない。
また添加時期は、仕込後60日以内に実施することが好ましく、仕込後20〜50日に実施することがより好ましい。60日を過ぎると添加しても芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油が得にくくなるので好ましくない。
【0017】
また、醤油乳酸菌を、仕込と同時または仕込後〜発酵熟成の途中において適宜添加することが好ましい。
【0018】
本発明において、低温発酵性酵母を用いることも極めて重要であって、通常の醤油諸味中より分離される耐塩性醤油酵母においては、25℃以下、特に23℃以下において生育が悪く、特に、再仕込醤油諸味のように窒素濃度が高い環境下においては、極端に生育が悪くなり、アルコール発酵も緩慢となり、香りも乏しくなり本発明の目的は達成できない。
【0019】
これに対し本発明は、23℃以下でしかも窒素濃度が高い環境下において、旺盛に生育し、諸味中にアルコールを2容量%以上生産蓄積する能力を有する酵母を利用するため、諸味品温を一貫して低温度に保持しても、アルコール発酵が旺盛に行われ、色沢が淡麗であるばかりでなく、香りが良好な再仕込醤油を得ることができる。
【0020】
ここで、本発明において用いられる酵母の純粋分離用培地、同培地を用いる酵母の純粋分離法および低温発酵性酵母の育種法などについて説明する。
【0021】
1)酵母の純粋分離用培地(10%食塩含有YPD培地)(組成)
グルコース :2.0%(%は重量による、以下同じ)
イーストエキストラクト:1.0%
ポリペプトン :2.0%
食塩 :10.0%
pH 5.0
なお、この培地に代えて、酵母の培養に用いられる他の液体栄養培地(但し、食塩を10%含有させる)を用いてもよい。
【0022】
2)酵母の純粋分離法
醤油諸味の一定量を採取し、これに生理食塩水等を加えて、種々の濃度に希釈して醤油酵母含有・諸味懸濁液を調製し、これを寒天2%を含有する、上記10%食塩含有YPD寒天平板培地を用いて、常法に従い混釈培養法により30℃で2日間培養し、平板上に発生するコロニー(殆どが酵母のコロニーとなる)の中から任意のコロニーを釣菌し、耐塩性の醤油酵母を純粋分離する。
【0023】
3)酵母培養液の調製
寒天を含有しない、10%食塩含有YPD液体培地に、上記で分離した醤油酵母を1白金耳接種し、2日間振盪培養(30℃、140rpm)して、酵母培養液を得る。
【0024】
4)低温発酵性酵母の選抜
(培養条件)
500ml容三角フラスコに、市販の濃口醤油(JAS特級規格)170ml、30重量%食塩水65mlを入れ、これに通常の醤油麹150gを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日棒で1回均一に撹拌し、2週間消化し、得られた消化諸味に上記で調製した酵母培養液を0.8〜1.2×105細胞/諸味 g添加し、開口部をアルミホイルで軽く密閉し、毎日1回棒で均一に撹拌し、20℃で30日培養する。
この条件で培養したとき、諸味液汁のエチルアルコールが2%以上となるような酵母を低温発酵性酵母として選抜する。
【0025】
【発明の効果】
本発明は、仕込水として発酵阻害物質を高濃度で含有する濃口生醤油を用いた場合と雖も、色沢が非常に淡麗で醤油特有の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油を得ることができる。
また得られた再仕込醤油は、上記特徴を有するため、水または食塩水で希釈することにより、色沢が淡麗で、醤油特有の芳醇な香りを濃厚に有する減塩醤油や調味料を容易に製造することができる。
【0026】
【参考例】
参考例1
(低温発酵性酵母の育種選抜)
【0027】
1)酵母の純粋分離
常法により得られた醤油諸味を一定量採取し、これに生理食塩水等を加えて、種々の濃度に希釈して醤油酵母含有・諸味懸濁液を調製し、これを寒天2%を含有する、上記10%食塩含有YPD寒天平板培地を用いて、常法に従い混釈培養法により30℃で2日間培養し、平板上に発生するコロニー(殆どが酵母のコロニーとなる)の中から任意のコロニーを釣菌し、耐塩性の醤油酵母を純粋分離した。
【0028】
2)酵母培養液の調製
寒天を含有しない、10%食塩含有YPD液体培地に、上記で分離した醤油酵母を1白金耳接種し、2日間振盪培養(30℃、140rpm)して、酵母培養液を得た。
【0029】
3)低温発酵性酵母の選抜
500ml容三角フラスコに、市販の濃口醤油(JAS特級規格、食塩16重量%)170ml、30重量%食塩水65mlを入れ、これに醤油麹150gを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日棒で1回均一に撹拌し、2週間消化し、得られた消化諸味に上記で調製した酵母培養液を105細胞/諸味g添加 し 、開口部をアルミホイルで軽く密閉し、毎日1回棒で均一に撹拌し、20℃ で30日培養した。
この条件で培養したとき、諸味液汁のエチルアルコールが2%以上となるような酵母を低温発酵性酵母として選抜する。
この条件で培養したとき、諸味液汁のエチルアルコールが2.5%生成蓄積する低温発酵性酵母K−1を育種選抜した。
【0030】
参考例2
(比較のための酵母の育種選抜)
比較のため、前記低温発酵性酵母の育種選抜において「諸味液汁のエチルアルコールが1.5%生成蓄積する」以外は全く同じ性質を有する、比較のための酵母C−1を育種選抜した。
なお、このC−1株は、前記低温発酵性酵母の育種選抜における培養法において、諸味品温が20℃ではアルコール生成蓄積量が低いが、同品温を30℃に保持すると、旺盛に増殖し、アルコールを3%生成蓄積する能力を有する。
【0031】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。
実施例1
(本発明の再仕込醤油の製造法)
200リットル容のドラム缶型容器に、市販の濃口生醤油(JIS特級規格)(全窒素1.6重量%、食塩16重量%、エチルアルコール3容量%)45リットルに30%食塩水20リットルを混和し、これに醤油麹45kgを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日1回均一に撹拌し、30日経過させた。
次いで、この諸味に対し上記参考例1で育種した低温発酵性酵母(醤油酵母K−1株)の培養液を105細胞/諸味gとなるように添加し20℃で120日時 々撹拌し(発酵・熟成させ)、色沢が淡麗で、香りの良好な再仕込醤油を得た。
【0032】
【比較例1】
比較例1
(再仕込醤油の製造法)
比較のため上記実施例1の再仕込醤油の製造法において、「醤油酵母K−1株」を用いる代わりに、前記参考例2で育種した「醤油酵母C−1株」を用いる以外は、全く同様にして、比較例1の再仕込醤油を得た。
【0033】
比較例2
(再仕込醤油の製造法)
比較のため実施例1の再仕込醤油の製造法において、「諸味品温を、一貫して20℃に保持する」代わりに「諸味品温を、仕込後30日まで20℃、31〜90日まで28℃、そして91〜150日まで25℃で、それぞれ保持する」以外は全く同様にして、発酵・熟成させ、比較例2の再仕込醤油を得た。
【0034】
比較例3
(再仕込醤油の製造法)
比較のため、実施例1の再仕込醤油の製造法において、「醤油酵母K−1株」を用いる代わりに、前記参考例2で育種した「醤油酵母C−1株」を用い、また「諸味品温を、一貫して20℃に保持する」代わりに「諸味品温を、仕込後30日まで20℃、31〜90日まで28℃、そして91〜150日まで25℃で、それぞれ保持する」以外は全く同様にして、発酵・熟成させ、比較例3の再仕込醤油を得た。
【0035】
対照例1
通常の濃口醤油の製造法に従い、蒸煮変性した脱脂大豆と炒熬割砕した小麦とを、生原料換算で等重量となるように混和し、水分を調整した盛込原料(水分約35%)にアスペルギルス・ソーヤ(市販の醤油用種麹菌)を接種し、麹品温32℃で、42時間製麹して、醤油麹を得た。
200リットル容のドラム缶型容器に、24%の食塩水60リットルを混和し、これに醤油麹45kgを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日1回均一に撹拌し、30日経過させた。
次いで、この諸味に対し上記参考例2で育種した醤油酵母C−1株の培養液を105細胞/諸味gとなるように添加し、仕込後30日まで20℃、31〜90日まで28℃、そして91 〜150日まで25℃で発酵・熟成させ、色沢が淡麗で(L*値:32)、香りの良好な濃口生醤油を得た。
【0036】
上記実施例1、比較例1〜比較例3及び対照例で得られた5種類の醤油諸味液汁の成分分析値を求め、香りについての官能検査を行った。
結果を表1に示した。
なお、表中の諸味液汁の成分分析値の欄におけるTN、NaCl、Alcはそれぞれ、 全窒素、食塩、アルコールを表わす。
分析法は、「しょうゆ試験法」(財団法人、日本醤油研究所)に記載されている方法により、また色沢は色差計により測定し、L*値(明度指数)で示した(JIS Z8729 JISハンドブック色彩、(日本工業位規格協会参照))。また官能検査は、評点法により行い、本発明、比較例1〜比較例3の諸味液汁を、それぞれ対照例(従来例)のそれと比較し、差なしを0、差有りを1、大きな差有りを2と評価し、対照区分よりも優れた香りを有しているときには「+」、反対に劣っているときには「−」の符号を付して示した。
また表中の評点は識別能力を有する訓練されたパネル28名の平均値を示し、評価スコアからt検定により評価した。
さらに検定の欄における記号*:5%危険率で有意差有り、**:1%危険率で有意差有り、−:有意差無し、をそれぞれ意味する。
【0037】
表1の結果から明らかな如く、諸味品温20℃では旺盛に生育できないが、比較的温度の高い30℃では、窒素濃度が高い環境下でも旺盛に増殖する耐塩性の醤油酵母C−1株を利用して、諸味品温を一貫して低温20℃に保持しつつ発酵熟成を行う比較例1の方法は、仕込時から発酵熟成が完了するまで、一貫して低温で諸味管理を行うため、色沢はかなり淡麗(L*値:20)となるが、酵母の生育が悪く、アルコール生成量が2.1%と低く、香りがよくない結果となる。また、諸味品温が20℃で、しかも窒素濃度が高い環境下でも旺盛に増殖する耐塩性の低温発酵性酵母K−1利用して、比較的温度の高い条件で発酵熟成させる比較例2の方法は、醤油特有の芳醇な香りの高い再仕込醤油が得られるが、諸味の品温を比較的温度の高い条件にて、発酵を行うため、発酵熟成期間中における諸味液汁の着色が多く(L*値:5)、色沢の淡麗な再仕込醤油を得ることは期待できない。 また、前記諸味品温20℃では旺盛に生育できないが、比較的温度の高い30℃では、窒素濃度が高い環境下でも旺盛に増殖する耐塩性の醤油酵母C−1株を利用して、比較的温度の高い条件で発酵熟成させる比較例3の方法は、醤油特有の芳醇な香りの高い再仕込醤油が得られるが、諸味の品温を比較的温度の高い条件にて、発酵熟成を行うため、その期間中における諸味液汁の着色が多く(L*値:5)、色沢の淡麗な再仕込醤油を得ることは期待できない。これに対し、本発明によれば、諸味品温が20℃で、しかも窒素濃度が高い環境下でも旺盛に増殖する低温発酵性酵母K−1を利用し、しかも仕込時〜発酵熟成が完了するまで、一貫して低温(20℃)に保持するものであるから、色沢が非常に淡麗(L*値:25)で、濃口醤油の有する芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油を得ることができる。また仕込時の色沢(L*値:31)と殆ど差のない色沢(L*値:25)の再仕込醤油を得ることができる。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2
(醤油諸味g当たりの酵母濃度と、製品の品質(香り)の関係)
市販の濃口生醤油(JIS特級規格)(全窒素1.6重量%、食塩16重量%、エチルアルコール3容量%)45リットルに30%食塩水20リットルを混和し、これに醤油麹45kgを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日1回均一に撹拌し、30日経過させた。次いで、この諸味を5区分用意し、それぞれ20リットル容のドラム缶型容器に入れ、それぞれに上記参考例1で育種した醤油酵母K−1株の培養液を、表2に示す各濃度となるように加え、時々撹拌しつつ20℃で120日発酵 ・熟成させ、圧搾して再仕込醤油の生揚げを得た。
次いで、このようにして得られた生揚げ醤油ついて、官能検査を実施した。
結果を表2に示す。
なお、官能検査は、対照例1に記載の濃口醤油を対照として、実施例1と同様に行った。
【0040】
【表2】
【0041】
表2の結果から、低温発酵性酵母の添加量は、醤油諸味1g当たり105細胞 以上とすることが重要で、それ未満においては、比較例に示されるように、醤油特有の芳醇な香りを十分に有する再仕込醤油を得ることができない。
これに対し、醤油諸味1g当たり105細胞以上とすることにより、醤油特有 の芳醇な香りを濃厚に有する再仕込醤油を得ることができる。
Claims (1)
- 醤油に醤油麹を仕込み、得られた諸味に酵母を添加して発酵熟成させる再仕込醤油の製造法において、該諸味品温を仕込時から発酵熟成終了まで一貫して15〜23℃に保持し、かつ該酵母として、下記培養条件で培養した場合、培養液中にエチルアルコールを2容量%以上生産蓄積する能力を有する、通常の醤油諸味から分離された耐塩性醤油酵母を少なくとも105細胞/諸味g添加使用することを特徴とする色沢が淡麗で香りが良好な再仕込醤油の製造法。
(培養条件)500ml容三角フラスコに、市販の濃口醤油(JAS特級規格)170ml、30重量%食塩水65mlを入れ、これに通常の醤油麹150gを仕込んで諸味を調製し、諸味品温20℃で毎日棒で1回均一に攪拌し、2週間消化し、得られた消化諸味に、酵母を0.8〜1.2×105細胞/諸味g添加し、開口部をアルミホイルで軽く密閉し、毎日棒で1回均一に攪拌し、20℃で30日培養する。
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