JP2002186421A - 食品醗酵のための炭素含有添加剤及びそれを含有する食品組成物 - Google Patents

食品醗酵のための炭素含有添加剤及びそれを含有する食品組成物

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 食品醗酵剤の増殖に対する、そしてその結果
増殖培地の酸性化の速度に対する、有利な効果を示す炭
素含有添加剤と、これを含む醗酵食品組成物を提供す
る。 【解決手段】 15乃至35%の1→6グルコシド結合
を有し、還元糖含有量が20%未満、多分子性指数が5
未満、数平均分子質量Mnが多くても4,500g/モ
ルである分枝状マルトデキストリンを含むことを特徴と
する、醗酵又は食品醗酵剤のための炭素含有添加剤と、
これを含む醗酵食品組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明の主題は、醗酵のため
の、又は乳酸及び/又はビフィダス食品醗酵剤のため
の、分枝状マルトデキストリンを含む炭素含有添加剤で
ある。その主題は、前記炭素含有添加剤の存在により生
産される、又は含有する、醗酵食品組成物でもある。
【0002】
【従来の技術】本発明が対象とする食品醗酵は、グラム
陽性細菌を用いる醗酵であり、大量の乳酸の生産により
特徴付けられる乳酸菌と、乳酸菌に類似して乳酸と酢酸
の混合醗酵により特徴付けられるビフィダス菌はそれに
属するものである。
【0003】乳酸菌は、以下の属のタイプを含む:Lact
obacillus、Lactococcus、Streptococcus、Enterococcu
s、Leuconostoc、及びPediococcus。ビフィダス菌は、B
ifidobacterium属で代表される。
【0004】これらの細菌は、一般的に、多くの天然醗
酵動物および植物製品における他の微生物に関連して見
出される:醗酵乳(チーズ、ヨーグルト)、醗酵肉(ソ
ーセージ、ハム)、果実ベースのアルコール飲料(ワイ
ン、サイダー、ビール)、醗酵果実及び野菜(ザワーク
ラフト、オリーブ、ピクルス)、醗酵シリアル(種々の
パン)及び醗酵飼料(サイレージ)。
【0005】これらの細菌は、集合的に「食品醗酵剤」
として知られており、栄養的観点から最も気難しい細菌
の群の一つと考えられている(La technique Laitiere
No.979,1983-pp.41-47)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するため
の手段】食品醗酵剤のための種々の増殖培地について、
特に、利用可能な異なる炭素含有物質について研究する
間に、出願人は、特定の分枝状マルトデキストリンの添
加が、驚くべきことに、そして予想外に、食品醗酵剤の
増殖に対する、そしてその結果増殖培地の酸性化の速度
に対する、有利な効果を有することを知見した。特にラ
クトースなどの低分子量の炭素源は、乳酸菌により好ま
しく代謝されることが知られているので、このことは特
に驚くべきことである。本発明によれば、増殖培地へ
の、又は醗酵される製品への分枝状マルトデキストリン
の添加が: −細菌の増殖の潜伏期間の減少 −pH4.4となるために必要な醗酵時間の節約を伴
う、より高い酸性化 −生存度が増加した、数が2乃至4倍多い細菌集団 を可能にする。
【0007】この現象は、食品醗酵において、特に「ヨ
ーグルト」タイプの醗酵において、非常に魅力的であ
る。なぜなら、出願人は上記利点に加えて、最終製品の
レオロジーに有益な、ヨーグルトの粘度の増加を観察し
たからである。さらに、この粘度の増加は、製品中の、
特にタンパク質などのテクスチャー剤の濃度の有利な減
少を可能にする。
【0008】したがって、本発明の主題は、15乃至3
5%の1→6グルコシド結合を有し、還元糖含有量が2
0%未満、多分子性指数が5未満、数平均分子質量Mn
が多くても4,500g/モルである分枝状マルトデキ
ストリンを含むことを特徴とする、醗酵又は食品醗酵剤
のための炭素含有添加剤である。
【0009】
【発明の実施の形態】多分子性指数は、Mp/Mn比
(Mpは重量分子質量であり、Mnは数分子質量であ
る)を意味する。分枝状マルトデキストリンは、本出願
人が所有する特許出願FR−A−2,786,775に
記載されたマルトデキストリンを意味する。これらのマ
ルトデキストリンは、標準マルトデキストリンよりも高
い1→6グルコシド結合含有量を有する。
【0010】本発明で意味するところの標準マルトデキ
ストリンは、古典的には、デンプンの酸性、又は酵素加
水分解により生産され、20未満のデキストロース当量
(又はD.E.)により表される還元力により特徴付け
られる。
【0011】本発明の好ましい変形によれば、分枝状マ
ルトデキストリンは、還元糖含有量が2乃至5%で、M
nが2,000乃至3,000g/モルである。
【0012】有利には、本発明の炭素含有添加剤は、少
なくとも0.1重量%の分枝状マルトデキストリンを含
む。それはまた標準マルトデキストリンを含むこともで
きる。
【0013】本発明の炭素含有添加剤は、0.1乃至1
00重量%の、好ましくは2乃至90重量%の、さらに
好ましくは5乃至85重量%の分枝状マルトデキストリ
ンと、可能性として0.1乃至99.9重量%の、好ま
しくは5乃至75重量%の、より好ましくは5乃至55
重量%の標準マルトデキストリンを含む。
【0014】醗酵培地中のマルトデキストリンが0.1
%未満であると、有利な効果は十分には示されない。醗
酵培地中にマルトデキストリンが30重量%を超える
と、過剰な浸透圧の結果、有害な効果が観察される。
【0015】本発明の変形によれば、分枝状マルトデキ
ストリンの全部又は一部が、水素添加されたものであ
る。
【0016】炭素含有添加剤は、強力な甘味料、例えば
アスパルテーム又はアセサルフェームKを含むこともで
きる。
【0017】本発明の炭素含有添加剤は、粉末として、
又はペースト、分散液、又は溶液の形態で、それ自身
で、又は醗酵培地を構成する他の製品との組み合わせ
で、又は醗酵剤との組み合わせで、醗酵培地へ添加する
ことができる。
【0018】本発明の醗酵食品組成物は、それが本発明
の炭素含有添加剤の全部又は一部を含むことにより特糖
付けられる。実際にマルトデキストリン化合物は、それ
が分枝状、分枝状水素化又は標準であるかに応じて、基
本的には醗酵されない、又は部分的に醗酵され、したが
って最終食品組成物にほぼ完全に、又は一部、再出現す
る。ヨーグルト又は醗酵乳の場合に、炭素含有添加剤
は、直接醗酵されるミルク内へ導入される。本発明が対
象とする醗酵食品組成物は、動物由来又は植物由来とす
ることができ、特にサイレージ作製組成物として動物の
栄養摂取を意図することができる。
【0019】本発明の別の主題は、本発明の炭素含有添
加物を用いることを特徴とする、醗酵食品組成物の製造
方法である。
【0020】こうして、より高い醗酵収率で、種々の食
品を得ることができ、そこでは本発明の炭素含有添加剤
の存在が、他の技術的及び感覚的利点も付与する。特
に、本発明に用いられる分枝状マルトデキストリンは、
食品に繊維効果を与える。実際に、出願人は、これらの
マルトデキストリンが、ビフィド属及び乳酸菌フローラ
などのヒト及び動物の健康に有利な微生物の増殖に好都
合であることを示した。例えば、分枝状マルトデキスト
リンは、前生物的効果を有するといわれている。したが
って、本発明の炭素含有添加剤を含む食品組成物は、ビ
フィドジェニックであるという付加的な利点を有してい
るであろう。よって、in vivoでヒト又は動物の乳酸菌
フローラの増殖に、本発明の添加剤は好適であり得る。
他の利点は、以下の実施例と図面を参照することによ
り、明らかとなろう。これらは、例示的なものであり、
これにより制限されるものではない。
【0021】もちろん、本発明の炭素含有添加剤は、食
品醗酵剤自身に、同様に関連することもでき、それは保
存安定性及び乾燥安定性の改善の利点を有する。
【0022】
【実施例】実施例1:攪拌される乳製品の調製 0%脂肪含有量の甘味乳業製品のテクスチャー、味、及
び醗酵速度に対する本発明の炭素含有添加剤の影響を示
すことを目的とする。これを行なうために、出願人は、
以下の種々の醗酵剤とともに、すべてのサッカロース
(スクロース)を、本発明の分枝状マルトデキストリン
と合成甘味料で置換した。 −「伝統的」醗酵剤、通常のヨーグルト培養物のバラン
ス混合物(Streptococcus thermophilus, Lactobacillu
s delbruekii sp. bulgaricus) −現在の消費者の期待(より低い酸性度、よりクリーム
状)に合わせた後の、同じ培養物からなる「現代的」醗
酵剤 −Bifidobacterium lactis単独からなるビフィド属醗酵
剤。
【0023】ヨーグルトは以下のレシピと処方に従って
調製した。
【0024】
【表1】
【0025】醗酵剤は、直接シードのためにデザインさ
れた凍結乾燥形態で、CHR HANSEN社により提供された。
用いられる醗酵剤の用量は、醗酵剤のタイプによった。
例えば、ミルク100リットルについて、約4.8gの
伝統的又は現代の醗酵剤を用い、ミルク100リットル
について、2gのビフィダス醗酵剤を用いた。 −伝統的醗酵剤:Ref.YC-380 −現代的醗酵剤:Ref.YC-X11 −ビフィダス醗酵剤:Ref.BB-12
【0026】レシピ −スキムミルク粉末を水中で15分間攪拌しながら(8
00rpm)水和する。 −サッカロース(スクロース)又は分枝状マルトデキス
トリンを添加し、500rpmで7分間攪拌する。 −沸点の湯浴に浸したコイル管で溶液を殺菌する、コイ
ル管のミルクの滞留時間:7分間。 −ミルクを44℃に冷やす。ついで、前もって滅菌水中
に10%に希釈した甘味料と、希釈された醗酵剤を添加
する。培養物の混合物を含む、伝統的及び現代的醗酵剤
については、良好な割合で各培養物を抜き出すことを確
実にするために、シードの数分前に、滅菌ミルク中に少
なくとも50%の凍結乾燥物に希釈することが重要であ
る。 −ミルクを、44℃の熱いキャビネットにおき、pHを
4.4にする。 −醗酵を終了する:ヨーグルトを500rpmで1分間
攪拌し、4℃に保存されたガラスジャーに注ぐ。
【0027】ヨーグルトで測定されたパラメーターは以
下の通りである:醗酵後、攪拌前及び攪拌後のB形粘
度、醗酵前と後のDornic(乳酸)度での酸度、醗酵の間
のpHを追跡することによって測定される酸性化。製造
の後の日の官能分析は、得られるテクスチャーと風味の
知覚を評価することを可能にする。製造後1日目の測定
を以下の表に示す。
【0028】
【表2】
【0029】いずれの醗酵剤を用いた場合でもヨーグル
トの粘度の大幅な増加が観察された。初期粘度の測定
は、分枝状マルトデキストリン自身の粘度特性が観察さ
れた相違を説明するには不十分であることを示す。
【0030】酸性化速度は、図1のグラフに示す。これ
は酸性化の速度に対する分枝状マルトデキストリンの有
利な効果を示す。
【0031】実施例2:微生物学的研究 伝統的醗酵剤を用いてヨーグルトを実施例1と同様の条
件で製造し、醗酵の後、インキュベーション期間の間の
培地のインピーダンスの変化を測定し(BACTOMETER(登
録商標)、BIOMERIEUX)、フローサイトメトリー(CHEM
FLOW(登録商標)、CHMUNEX)により微生物集団の定量
的及び定性的測定を行なった。BACTOMETER(登録商標)
システムは、迅速で、信頼性の高い、感度の高い微生物
検出システムであり、完全に自動であり、インピーダン
スによる微生物学的原理に基づく。それは、微生物増殖
の代謝活性から生じるインピーダンスにおける変化を検
出するために設計されている。検出時間は、与えられた
試料の、増殖速度論、潜伏時間及び微生物の濃度の連立
関数である。結果は、DT(検出時間)で表される。乳
酸醗酵剤の増殖に対する、種々のサッカリドの効果を調
べた。
【0032】増殖培地は、1mlの容量で、9%のミル
ク、10%のサッカロース(スクロース)及び/又は1
0%の調べられるサッカリドからなる。ミルクは滅菌水
中での再水和により調製し、殺菌しなかった。調べられ
るサッカリドは、濾過により滅菌した。
【0033】乳酸醗酵剤の分散物は滅菌水で調製し、ミ
ルク培地の2×106CFU/mlの初期集団を得た
(CFU=コロニー形成単位)。
【0034】インキュベーションは24時間44℃で行
なった。培地のインピーダンスの変化を連続的に測定
し、%変化に換算した。
【0035】ネガティブの培地は、調べる培地と同じ組
成物の培地であるが、シードされていないものである。
結果を以下の表に示す。
【0036】
【表3】
【0037】この測定は、ミルクラクトースに加えて炭
素含有産物の非存在の対照と検出時間が同一であるため
に、分枝状マルトデキストリンの有利な効果が浸透圧の
減少に関連していないことを示すことを目的としてい
る。
【0038】潜伏時間の減少に対応する検出時間の減少
が、サッカロース(スクロース)が分枝状マルトデキス
トリンで置換された実験で観察される。
【0039】実施例3:細菌濃度の検出 前記実施例で記載された培地(ミルク9%、サッカロー
ス(スクロース)10%、又は分枝状マルトデキストリ
ン10%)に乳酸醗酵剤を用いた。
【0040】インキュベーションは、2リットル反応器
で44℃で行ない、酸性化反応速度を追った。CHEMFLOW
分析機を用いることによって全細菌濃度とこの集団の生
存度を測定するために醗酵の間に試料を抜き取った。
【0041】醗酵は、pHが4,4に達した時点ですぐ
に終了した。
【0042】以下の表は、全細胞の濃度、生存細胞の濃
度を示す。これらの2つの値の間の比は細胞生存度を与
える。醗酵の終了に対応した最終サンプリングの分析
は、ヨーグルトの攪拌の後に行なった。値は、ブドウ搾
液のml当たりの細胞で表す。
【0043】
【表4】
【0044】各培地の生存度は同じである。全集団及び
生存集団は、サッカロース(スクロース)よりも分子マ
ルトデキストリンでより高い。添加されたサッカリドに
応じて、生存細胞濃度は、サッカロース(スクロース)
対照よりも、濃縮されており、分枝状マルトデキストリ
ンは増殖を最も活性化したサッカリドである。
【0045】実施例4;サッカリドの濃度の変化 分枝状マルトデキストリンと標準マルトデキストリンの
混合物で、マルトデキストリンの濃度を変化させて、そ
れ以外は前記と同じ条件で実験を行なった。用いた標準
マルトデキストリンは、出願人により市販されているGL
UCIDEX(登録商標)6である。
【0046】
【表5】
【0047】分枝状及び標準マルトデキストリンの混合
物の使用は、乳製品へ栄養的特性(繊維効果)を付加し
つつ、保持される乳酸醗酵に対する分枝状マルトデキス
トリンの有利な効果を可能にする。標準マルトデキスト
リンは、分枝状マルトデキストリンと相乗効果を有して
いるようである。
【0048】結論として、本発明の炭素含有添加剤は、
ヨーグルトにいくつかの利点を与える: −繊維の豊富化 −クリーム性の増加、これは乳タンパク質の節約を可能
にする −酸性化速度の増加 −及び微生物濃度の増加。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、サッカロース(スクロース)対照
(黒の菱形)分枝状マルトデキストリン(グレーの正方
形)についての酸性化速度論(y軸:pH;x軸:分で
の時間)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ベルナール・ブルシエ フランス・62138・ヴィオレーヌ・ルー ト・デステール・63 (72)発明者 ソフィー・ドゥフルタン フランス・62400・ロコン・リュ・ヴィク トール・ジェネル・365 Fターム(参考) 4B001 AC03 AC31 BC14 4B065 AA01 BB18 CA42

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 15乃至35%の1→6グルコシド結
    合を有し、還元糖含有量が20%未満、多分子性指数が
    5未満、数平均分子質量Mnが多くても4,500g/
    モルである分枝状マルトデキストリンを含むことを特徴
    とする、醗酵又は食品醗酵剤のための炭素含有添加剤。
  2. 【請求項2】 前記分枝状マルトデキストリンが還元
    糖含有量が2乃至5%で、Mnが2,000乃至3,0
    00g/モルであることを特徴とする、請求項1記載の
    炭素含有添加剤。
  3. 【請求項3】 少なくとも0.1重量%の分枝状マル
    トデキストリンを含むことを特徴とする請求項1又は2
    記載の炭素含有添加剤。
  4. 【請求項4】 標準マルトデキストリンも含むことを
    特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の炭素含
    有添加剤。
  5. 【請求項5】 0.1乃至100重量%の、好ましく
    は2乃至90重量%の、さらに好ましくは5乃至85重
    量%の分枝状マルトデキストリンと、可能性として0.
    1乃至99.9重量%の、好ましくは5乃至75重量%
    の、より好ましくは5乃至55重量%の標準マルトデキ
    ストリンを含むことを特徴とする請求項4記載の炭素含
    有添加剤。
  6. 【請求項6】 分枝状マルトデキストリンの全部又は
    一部が、水素添加されたものであることを特徴とする請
    求項1乃至5のいずれか1項記載の炭素含有添加剤。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか1項記載の
    炭素含有添加剤の全部又は一部を含むことを特徴とす
    る、醗酵食品組成物。
  8. 【請求項8】 乳製品からなることを特徴とする請求
    項7記載の食品組成物。
  9. 【請求項9】 醗酵乳からなることを特徴とする請求
    項7記載の食品組成物。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至5のいずれか1項記載
    の添加剤を醗酵の間に用いることを特徴とする、醗酵食
    品組成物の調製方法。
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