JP2002179588A - チオレドキシンファミリーに属するポリペプチド類を含む炎症予防乃至治療剤 - Google Patents

チオレドキシンファミリーに属するポリペプチド類を含む炎症予防乃至治療剤

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JP2002179588A JP2000321457A JP2000321457A JP2002179588A JP 2002179588 A JP2002179588 A JP 2002179588A JP 2000321457 A JP2000321457 A JP 2000321457A JP 2000321457 A JP2000321457 A JP 2000321457A JP 2002179588 A JP2002179588 A JP 2002179588A
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Jiyunji Yodoi
淳司 淀井
Hajime Nakamura
肇 中村
Tomoaki Hoshino
友昭 星野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 白血球浸潤に由来する種々の炎症疾患の予防
乃至治療に有効な新規な物質を提供することにある。 【解決手段】チオレドキシンファミリーに属するポリペ
プチド類(TRXファミリーに属するポリペプチド)を含
む白血球の浸潤に由来する炎症疾患予防乃至治療剤を提
供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、TRXファミリーに
属するポリペプチドを含む炎症疾患の予防乃至治療剤に
関する。
【0002】
【従来の技術】チオレドキシン(TRX)は、高く保存さ
れた活性部位(−Cys−Gly−Pro−Cys−)
においてジチオール/ジスルフィドの酸化還元活性を有
する分子量約12kDの偏在するタンパク質である。TR
Xは、大腸菌においてリボヌクレオチドレダクターゼの
電子供与体として同定され、原核生物及び真核生物にお
いてチオレドキシンレダクダーゼ及びNADPHと共
に、蛋白質のジスルフィド還元を触媒することが知られ
ている。
【0003】ヒトTRXは、ヒトTリンパ球性ウイルス1
型(HTLV―1)−形質転換T細胞から、産生される
ヒト成人T細胞白血病由来因子(ヒトADF)としてク
ローニングされている。TRXはウイルス感染を含む種々
のストレスによって誘導され、細胞から分泌されること
が知られている。外因性のTRXは、過酸化水素によって
誘導される細胞障害性及び再灌流障害を抑制することが
知られている。
【0004】β−アクチンプロモーターによってヒトTR
Xを全身的に過剰発現するTRX−トランスジェニックマウ
スは、限局性大脳虚血、放射線、パラコート障害に、よ
り抵抗性がある。更に、最近の研究によって、TRXが好
中球、単球及びリンパ球に対して走化性効果があること
が知られている。
【0005】急性間質性肺炎は、3ヶ月後には>70%
の死亡率という重篤な予後を示す。その多くは原因不明
(特発性)であるが、その他放射線、抗癌剤、ショッ
ク、敗血症などによって発症する。多くのメディエータ
ー(例えば、サイトカイン類、ケモカイン類、遊走阻止
因子(MIF)、酸素ラジカル)が、急性間質性肺炎の原
因に含まれると考えられている。確かに、高サイトカイ
ン血症(hypercytochenemia)は、しばしば多臓器障害
(MOF)において、系統的炎症応答症候群(SIRS、syste
mic inflammatory response syndrome)及び/又は成人
呼吸窮迫症候群(ARDS)と共に臨床的に観察される。IL
-1、IFN-γ、TNF-αなどの炎症誘発性のサイトカイン及
びIL-8等のケモカインは、これら致命的な臓器不全のメ
ディエーターとして考えられている。
【0006】IL-18は、最も新しい炎症誘発性のサイト
カインであり、毒素ショックのアクネ菌(Proprionobac
terium acnes)-誘導性のモデルにおいて、IFN-γ誘導
因子(IGIF)として発見された。IL-18は、IL-12、IL-2
等の共同刺激シグナル及び抗原が添加されると、Tヘル
パー1(Th1)クローンや細胞株やNK細胞中で相乗的にIF
N-γ及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-C
SF)産生を誘導する。本発明者や他のグループは、IL-1
8が潜在的にTh2サイトカイン(IL-4、IL-10、IL-13)及
びIgE産生を誘導することができ、IL-18がTh1及びTh2細
胞誘導においてコファクターとして作用することができ
ることを示唆した報告がなされている。最近の研究で
は、IL-18は、IL-12、IL-2又はIL-15と相乗して臓器不
全の病原性、致命的な敗血症において重大な役割を示す
ことが判ってきた。
【0007】より、最近では、我々は、IL-18がIL-2と
共に使用されたときに、急性間質性肺炎を誘導すること
を見出した。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、白血
球浸潤に由来する炎症疾患の予防や治療に有効な新規な
物質を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、TRXファミリー
に属するポリペプチド、特に、チオレドキシンが、その
ような炎症予防乃至治療効果があることを見出し、本発
明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の発明を
提供するものである。
【0010】1. チオレドキシンファミリーに属する
ポリペプチド類(TRXファミリーに属するポリペプチ
ド)を含む白血球の浸潤に由来する炎症疾患予防乃至治
療剤。
【0011】2. 炎症疾患が、間質性肺炎、肺線維
症、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、リウマチ、痛風、虚
血再灌流障害又は糸球体腎炎である、項1に記載の予防
乃至治療剤。
【0012】3. チオレドキシンファミリーに属する
ポリペプチド類(TRXファミリーに属するポリペプチ
ド)を含む間質性肺炎の予防乃至治療剤。
【0013】4. TRXファミリーに属するポリペプチ
ドがチオレドキシンである項1〜3のいずれかに記載の
予防乃至治療剤。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明において、「チオレドキシ
ンファミリー」とは、活性中心に配列-Cys-X-Y-Cys-
(X及びYは同一又は異なって20種類のアミノ酸を示
す。)を有し、チオレドキシンスーパーファミリー(以
下、「TRXファミリー」という)と呼ばれるものであ
る。
【0015】このTRXファミリーに属するポリペプチド
としては、活性中心に配列-Cys-Gly-Pro-Cys-、-Cys-Pr
o-Tyr-Cys-、-Cys-Pro-His-Cys-、-Cys-Pro-Pro-Cys-を
有するポリペプチド類を例示することができ、これらの
中でも、活性中心に配列-Cys-Gly-Pro-Cys-を有するポ
リペプチド類が好ましい。
【0016】具体的には、TRXファミリーに属するポリ
ペプチドとしては、ヒト由来のチオレドキシン(ヒトA
DF)、大腸菌由来のチオレドキシン、酵母由来のチオ
レドキシン等のチオレドキシン;ヒトADF活性を有す
るポリペプチド(ヒトADFP);ヒト,大腸菌等由来
のグルタレドキシン等が含まれる。また、チオレドキシ
ン活性を有するものであれば、全長を有する必要はな
く、オリゴペプチドであってもよく、本発明のポリペプ
チドにはそのようなものも包含される。
【0017】TRXファミリーに属するポリペプチドは、
細菌、植物及び動物由来のいずれであってもよい。ま
た、TRXファミリーに属するポリペプチドは、天然物を
精製する方法、遺伝子組換え法により、酵母,大腸菌等
から得られるものであってもよく、TRX活性を有する限
り、その1又は複数のアミノ酸を置換、付加、欠失等し
た誘導体であってもよい。また、化学合成によって製造
してもよい。
【0018】このようなポリペプチドの製造方法の一例
としては、例えば、下記のようなヒトADFPを得る方
法が挙げられる。
【0019】(i) ヒト由来細胞株(例えばATL−2細
胞等)を培養し、その培養液又は細胞抽出液から、塩
析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、クロ
マトフォーカシング、逆相クロマトグラフィー、疎水性
クロマトグラフィー等の一般に用いられる手法により精
製する方法(特開平1−85097号公報参照)。
【0020】(ii) 遺伝子組換え法により、ヒトADF
PのcDNA又はゲノム遺伝子を、大腸菌、枯草菌、酵
母、高等動物細胞、植物細胞などの宿主細胞に導入し、
宿主細胞内で組み換えヒトADFPを発現させ、その後
(i)に記したような手法を用いて精製する方法(特開平
1−85097号公報参照)。
【0021】(iii) ペプチド化学合成法により、特開平
5−139992号公報に開示された配列表の配列番号
1又は2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドを
合成する方法。
【0022】本発明における「炎症疾患」とは、主とし
て白血球の浸潤による炎症疾患をいう。このような炎症
疾患としては、サイトカイン・ケモカインによって誘導
されるものを含む。ここで、サイトカインとは主に白血
球を活性化する因子で、ケモカインは白血球を遊走させ
る因子である。炎症疾患では、サイトカインにより活性
化された白血球がケモカインを産生し、さらに白血球を
遊走させ、炎症がおこる。このような炎症疾患として
は、例えば、間質性肺炎、肺線維症、ARDS、リウマチ、
痛風、虚血再灌流障害、糸球体腎炎等が挙げられる。虚
血再灌流障害とは、各種臓器の一部又は全体が虚血に陥
った後、血液によって再灌流される際に生じる組織の障
害をいい、例えば、心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞等の疾患
の治療時に生じる障害である。本発明においては、特
に、肺梗塞、脳梗塞の治療時に有効である。
【0023】本発明においては、特に、チオレドキシ
ン、好ましくはヒト由来のチオレドキシンがよい。
【0024】又、本発明の予防乃至治療剤は、白血球の
浸潤に由来する各種炎症疾患の予防又は治療に有効であ
る。例えば、癌患者に抗腫瘍剤を投与していると、その
副作用として、間質性肺炎を発症する場合があり、本発
明の炎症疾患予防剤は、そのような発症を予防するのに
非常に有効である。
【0025】本発明の炎症疾患予防乃至治療剤の投与単
位形態としては、一般的には有効成分であるTRXファミ
リーに属するポリペプチドのみ又はそれと慣用の担体と
共に、各種の形態が治療目的に応じて選択できる。その
代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カ
プセル剤、坐剤、トローチ剤、硬膏剤等の固形製剤;液
剤、懸濁剤、乳剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、シロッ
プ剤、ローション剤等の液状製剤;軟膏剤等のクリーム
状の製剤;貼布剤;エアゾール剤、アトマイザー、ネブ
ライザー等の吸入剤;含嗽剤等が挙げられる。これら
は、当該形態において通常用いられている方法により調
製することができる。
【0026】本発明の予防乃至治療剤に利用される上記
製剤学的に許容される担体としては、製剤の使用形態に
応じて通常使用される、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、
吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、滑沢剤、充填剤、増量
剤、付湿剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、可溶化剤、浸透
圧を調節する塩、緩衝剤等の希釈剤又は賦形剤を例示で
き、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜
選択使用される。
【0027】更に、予防乃至治療剤中には、必要に応じ
て着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬
品を含有させて、剤として調製することもできる。
【0028】上記予防乃至治療剤の投与方法は特に制限
がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条
件、疾患の程度等に応じて決定される。例えば、錠剤、
丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、
懸濁剤、乳剤、シロップ剤は経口投与され、注射剤は静
脈内に、或いは筋肉内、皮内、皮下又は腹腔内に投与さ
れ、硬膏剤、軟膏剤、ローション剤、貼布剤は経皮投与
され、坐剤は直腸内投与される。また、吸入剤は、鼻腔
又は口腔より鼻粘膜、口腔・上部消化管粘膜、気道上皮
に投与される。含嗽剤は、口腔・上部消化管粘膜を通し
て投与される。
【0029】注射剤中のTRXファミリーに属するポリペ
プチド含量としては、例えば、0.0002〜0.2(w/v%)程
度、好ましくは0.001〜0.1(w/v%)程度に調整される。ま
た、これら液状製剤とした場合は凍結保存、又は凍結乾
燥等により水分を除去して保存してもよい。凍結乾燥製
剤は、使用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使
用される。
【0030】本発明の予防乃至治療剤は、その製剤形態
に応じた適当な投与経路により投与され得る。例えば、
注射剤の形態にして静脈、動脈、皮下、筋肉内などに投
与することができる。その投与量は、患者の症状、年
齢、体重などにより適宜調整されるが、通常TRXファミ
リーに属するポリペプチドとして体重1kg当たり、0.005
mg〜500mg、好ましくは0.1mg〜100mgであり、これを1
日1回ないし数回に分けて投与するのが適当である。
【0031】また、ヒトADFは、本発明者らによりイン
ターロイキン2レセプターの発現を誘導する物質として
発見され、ヒト成人型T白血病患者より樹立したT白血
病細胞株の培養液上清中に存在することが見出され(特
許第1845952号)、チオレドキシンの遺伝子配列は既に知
られているため(特開昭64-85097号)、例えば、この遺
伝子を各種動物、例えば、ブタ、ウシ、マウス、ラッ
ト、ハムスター、ニワトリ、イヌ等に組み込むことによ
って、間質性肺炎、肺線維症、ARDS、リウマチ、痛風、
虚血再灌流障害又は糸球体腎炎等の炎症疾患に抵抗性の
あるトランスジェニック動物を得ることができる。
【0032】更に、ヒトの場合には、遺伝子治療法によ
って、チオレドキシンファミリーに属するポリペプチド
をコードする遺伝子を細胞に組み込むことによって、間
質性肺炎、肺線維症、ARDS、リウマチ、痛風、虚血再灌
流障害又は糸球体腎炎等の炎症疾患を予防乃至治療する
ことができる。
【0033】
【発明の効果】本発明のチオレドキシンファミリーに属
するポリペプチド類(TRXファミリーに属するポリペプ
チド)を含む炎症疾患予防乃至治療剤は、白血球の浸潤
を抑制することができるので、間質性肺炎、肺線維症、
ARDS、リウマチ、痛風、虚血再灌流障害又は糸球体腎炎
等の炎症疾患に有効である。
【0034】
【実施例】以下、この発明の実施例を詳細に説明する
が、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0035】実施例1:リコンビナントTRXを用いた急
性間質性肺炎の予防効果 リコンビナントのヒトTRX(ヒトrTRX)を、Mitsui, A.,
Hirakawa, T. & Yodoi, J. (1992) Biochem Biophys R
es Commun 186, 1220-6.に記載の方法によって調製し
た。
【0036】本発明者らは、IL-18とIL-2をマウスの腹
腔内に投与すると、肺の間質腔に白血球浸潤を伴った急
性間質性肺炎を発症し、それによって死亡することを発
見したので、このモデルを用いて、以下の試験を行っ
た。
【0037】(1)若年の(8週令の雌)C57BL/6(B
6)マウス(体重約20g)を2群(各群n=5)にわけ、各
々に0.2μgのIL-18及び50000I.U.のIL-2を含む0.2mlのP
BSを毎日腹腔内注射した。更に、一方の群には20μgの
ヒトrTRXを溶解した0.1mlのPBS(TRX投与群)を、他方
の群にはコントロール群として、0.1mlのPBSのみ(コン
トロール群)を、1日おきに腹腔内注射した。
【0038】その結果、IL-18/IL-2投与後12日目には、
TRX投与群では60%の生存率であったが、コントロール群
においては、IL-18/IL-2投与後11日間にすべて死亡し
た。
【0039】(2)次に、8週令の雌のC57BL/6マウス
(体重約20g)を2群(各群n=10)にわけ、各々に0.2μ
gのIL-18及び50000I.U.のIL-2を含む0.2mlのPBSを毎日
腹腔内注射(ip)した。更に、一方の群には20μgのヒトr
TRXを溶解した0.1mlのPBS(TRX投与群)を、他方の群に
はコントロールタンパクとしてOVAを用い「OVA投与群」
として、20μgのOVAを溶解した0.1mlのPBSを、1日おき
に腹腔内注射(ip)した。
【0040】その結果、投与開始後20日目には、TRX投
与群では80%の生存率であったが、OVA投与群では90%の
マウスが死亡した。Kaplan-Meier(Log-Rank)及びWilc
oxon分析によれば、TRX投与群はOVA投与群に比して有意
な生存率を示した(それぞれp=0.0059、p=0.0226)(図
1)。
【0041】更に、20日目まで生存していたTRX投与群
(TRX day 20)及び19日目に死亡したOVA投与群(OVA d
ay 19)の各マウスの肺の組織を、光学顕微鏡で観察し
た。その結果を図2に示す。図2から明らかなように、
TRX投与群においては、白血球の浸潤や浮腫も抑制さ
れ、更に肺胞性の空洞の大幅な分散が見られたのに対
し、OVA投与群では、肺間質への著明な白血球浸潤と間
質の浮腫・肥厚・破壊が観察され、間質性肺炎の病巣が
見られた。
【0042】(3)更に、8週令の雌のC57BL/6マウス
(体重約20g)を3群(各群n=5)にわけ、1日おきにPB
Sを0.1mlのみ腹腔内注射したマウス(n=5)(コントロ
ール群)、上記(2)と同様な処置をしたマウス(TRX
投与群及びOVA投与群(0.2μgのIL-18及び50000I.U.のI
L-2を含む0.2mlのPBSを毎日腹腔内注射、TRX投与群には
20μgのヒトrTRXを溶解した0.1mlのPBSを、OVA投与群に
は20μgのOVAを溶解した0.1mlのPBSを、1日おきに腹腔
内注射))の28日後のマウスの肺及び心臓の重量を測定
した。但し、OVA投与群については、死亡したマウスの
肺及び心臓の重量を測定したが、他の群については、28
日後に殺し、その肺及び心臓の重量を測定した。結果を
表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】TRX投与群において肺の湿重量がOVA投与群
に比して有意に減少した(p=0.007)。
【0045】実施例2 TRXトランスジェニックマウス
を用いた間質性肺炎の予防効果 ヒトチオレドキシン遺伝子を導入され、ヒトチオレドキ
シンを全身に過剰発現するマウスであるヒトTRXトラン
スジェニックマウスを、特開平5-130819号に従って作製
し、実施例1と同様な実験を行った。該マウスは、刺激
により血中にヒトチオレドキシンが放出され、チオレド
キシンを点滴静脈内投与するようなモデルとなるもので
ある。
【0046】即ち、8週令の雄のヒトTRXトランスジェ
ニックマウス(n=8)(体重約20g)と8週令の雄のC57B
L/6マウス(体重約20g)(n=10)を用い、各々に0.2μg
のIL-18及び50000I.U.のIL-2を含む0.2mlのPBSを毎日腹
腔内注射(i.p.)した。
【0047】その結果を図3に示す。TRXトランスジェ
ニックマウス(TRX TG)においては、C57BL/6マウスに
比して26日後有意に生存した(Kaplan-Meier(Log-Ran
k):p=0.0391及びWilcoxon: p=0.0774)。
【0048】更に、26日後に犠牲にしたTRXトランス
ジェニックマウス(TRX TG Day 26 Sacrificed)及び8
日後に死亡したC57BL/6マウス(C57BL/6 Day 8 dead)
の肺及び他の器官の組織を、光学顕微鏡で観察した。そ
の結果を図4(図4は肺の結果を示す)に示す。TRXト
ランスジェニックマウスにおいては、ほとんど病理学的
に変化が見られなかったのに対し、C57BL/6マウスで
は、肺に白血球の浸潤と共に、間質の浮腫、肥厚及び破
壊が観察され、間質性肺炎の病巣が見られた。
【0049】実施例3 マウスエアパウチモデル(Mous
e Air Pouch Model)を用いたTRXの白血球浸潤抑制 マウスエアパウチモデル(Mouse Air Pouch Model)を
用いて、TRXの白血球浸潤抑制を調べた。
【0050】即ち、8週令の雄のC57BL/6(B6)マウス
(体重約20g)の背中の皮下に注射器を用いて4mlの空気
を注射し、該マウスの背中にエアパウチを作製した。
【0051】3匹の各マウスのエアパウチ中に、各々下
記の溶液を注射した。 生理食塩水を1ml 1μg/mlのLPSを含む生理食塩水を1ml 1μg/mlのLPSを含む生理食塩水を1ml 但し、の場合のみ、エアパウチにLPSを注射する直前
に、40μgのTRXを400μg/ml(生理食塩水に溶解)の濃
度で0.1ml尾静脈より静注(iv)した。
【0052】その後、エアパウチから、注射器を用い
て、細胞を取り出し、フローサイトメーターを用いて観
察した。その結果を図5に示す。
【0053】図5より、LPSを注入すると、白血球の
浸潤が見られるが、TRXを投与することによって、その
白血球の浸潤が抑制されるのが判った。
【0054】上記のマウスエアパウチモデルは、例え
ば、痛風(尿酸結晶)関節炎の治療モデルとしても使用
されるものであり(Terkeltaub R, Baird S, Sears P,
Santiago R, Boisvert W.The murine homolog of the i
nterleukin-8 receptor CXCR-2is essential for the o
ccurrence of neutrophilic inflammation in the airp
ouch model of acute urate crystal-induced gouty sy
novitis. Arthritis Rheum. 1998 May;41(5):900-
9.)。他の白血球の浸潤に由来する各種炎症疾患、例え
ば、肺線維症、ARDS、リウマチ、虚血再灌流障害又
は糸球体腎炎においてもモデルとして使用されるもので
あるので、このような疾患の予防乃至治療に本願の剤が
有効であることは明らかである。
【0055】実施例4 肺局所におけるTRXのサイト
カインの発現抑制 8週令の雌のC57BL/6マウス(体重約20g)を5群(各
群n=10)にわけ、 PBSを3日連続0.2mlのみ腹腔内注射したマウス(コン
トロール群)、 IL-2 (50000 IU)を含む0.2mlのPBSを3日連続腹腔内
注射したマウス(IL-2群)、 IL-18 (1μg)を含む0.2mlのPBSを3日連続腹腔内注射
したマウス(IL-18群)、 IL-2 (50000 IU)とIL-18 (1μg)を含む0.2mlのPBSを
3日連続腹腔内注射したマウス(IL-2/IL-18群)、 更に40 μgのヒトrTRXを溶解した0.1mlのPBSを1,3
日目に前投与しIL-2/IL-18群と同様の処置をしたマウス
(TRX群) の肺局所のサイトカインを、Neteaらの方法(J. Immunol
ogy,164:2644-9,2000)で測定した。以下の表に示すごと
くTRX群は肺局所のIFN-γの発現がIL-2/IL-18群に比べ
有意に(p=0.019933)抑制された。
【0056】
【表2】
【0057】実施例5 TRXによるブレオマイシン肺炎
の抑制 8週令雌のC57BL/6マウス(体重約20g)を2群(各群n
=5)にわけ、ブレオマイシン2mgを含む0.2mlのPBSを尾
静脈より投与したマウス(ブレオマイシン群)、更に40
μgのヒトrTRXを溶解した0.1mlのPBSを0,2,4,6
日目に投与しブレオマイシン群と同様の処置をしたマウ
ス(TRX群)を7日目に処分し、マウスの肺の組織を光
学顕微鏡で観察した。TRX投与群(Bleomycin+TRX)では
ブレオマイシン群(Bleomycin)と比べ肺間質部、血管
部への白血球浸潤が抑制された。上段の写真は正常(No
rmal)のものである。
【0058】製造例1 注射剤 注射剤を下記配合割合で常法に従い調製した。
【0059】 リコンビナント ヒト チオレドキシン 0.8mg注射用蒸留水 適量 1管中 2ml
【図面の簡単な説明】
【図1】TRXの間質性肺炎の予防効果を示す図である。
縦軸は生存率(SURVIVING)、横軸は日数(TIME(DAY
S))を示す。
【図2】TRXが間質性肺炎を予防したことを示す写真で
ある。上段の写真はTRX投与群、下段の写真はOVA投与群
である。
【図3】TRXトランスジェニックマウスにおいて間質性
肺炎が予防できたことを示す図である。縦軸は生存率
(Surviving)、横軸は日数(Days)を示す。
【図4】TRXトランスジェニックマウスの肺において間
質性肺炎を発症しなかったことを示す写真である。上段
の写真は26日後に犠牲にしたTRXトランスジェニック
マウス(TRX TG Day 26 Sacrificed)の肺、下段の写真
は、8日後に死亡したC57BL/6マウス(C57BL/6 Day 8 d
ead)の肺の写真である。
【図5】マウスエアパウチモデルにおける、フローサイ
トメーターの結果を示す。上段は、生理食塩水(Saline
in air pouch)、中段は、LPSで刺激した結果(LPS in
air pouch)、下段は、LPS刺激と共にTRXを投与した結
果(40μg TRX iv LPSin air pouch)を示す。
【図6】TRXがブレオマイシンによる肺間質部、血管部
への白血球の浸潤を抑制したことを示す写真である。上
段の写真は正常(Normal)のもの、中段の写真はブレオ
マイシン群(Bleomycin)、下段の写真はTRX投与群(Bl
eomycin+TRX)のものである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 29/00 101 A61P 43/00 111 43/00 111 A61K 37/02 Fターム(参考) 4C084 AA02 BA02 BA44 CA03 CA05 CA18 CA36 DA58 DA59 NA14 ZA361 ZA591 ZA811 ZB151 ZC311 ZC412

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チオレドキシンファミリーに属するポ
    リペプチド類(TRXファミリーに属するポリペプチド)
    を含む白血球の浸潤に由来する炎症疾患予防乃至治療
    剤。
  2. 【請求項2】 炎症疾患が、間質性肺炎、肺線維症、
    成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、リウマチ、痛風、虚血再
    灌流障害又は糸球体腎炎である、請求項1に記載の予防
    乃至治療剤。
  3. 【請求項3】 チオレドキシンファミリーに属するポ
    リペプチド類(TRXファミリーに属するポリペプチド)
    を含む間質性肺炎の予防乃至治療剤。
  4. 【請求項4】 TRXファミリーに属するポリペプチド
    がチオレドキシンである請求項1〜3のいずれかに記載
    の予防乃至治療剤。
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