JP2002168844A - ポリイミド前駆体樹脂膜の残存溶媒量測定方法及びこの方法によるベーク条件出し方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体樹脂膜の残存溶媒量測定方法及びこの方法によるベーク条件出し方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明はポリイミド前駆体樹脂のベーク膜の残
存溶媒量を、ガスクロ分析を用い、装置のコンディショ
ンや装置の種類によらず、高精度かつ再現性良く測定す
る方法及びポリイミド前駆体樹脂のベーク条件出しを簡
易的かつ短時間で可能にする方法を提供する。 【解決手段】ガスクロマトグラフィーによるポリイミド
前駆体樹脂膜の残存溶媒量測定方法及びこの方法による
ベーク条件出し方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリイミド前駆体
樹脂ベーク膜の残存溶媒量を高精度かつ再現性良く測定
する方法及びこれを用いたポリイミド前駆体樹脂のベー
ク条件出し方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エレクトロニクス産業を中心に、液状ポ
リイミド前駆体樹脂が使用されている。通常ポリイミド
前駆体樹脂は、まずスピンコートなどで塗布された後、
プリベークと呼ばれるベーク工程で溶媒を蒸発させ、膜
状物の形態で一連のプロセスが行われる。また、感光性
樹脂では、露光後にポスト露光後ベーク(PEB)とい
われるベーク工程が必要な場合もある。
【0003】多くの場合、ベーク状態によってその後の
プロセス条件が大きく異なり、パターンを形成する場合
には、得られるパターンの形状や寸法などが変化するの
で、非常に重要なファクターである。
【0004】このベーク状態を、分析的手法を用いて、
膜の残存溶媒量で定量化できる可能性がある。特に、ガ
スクロマトグラフィー(以後ガスクロと略す)分析は簡
易的で定量性も有している。
【0005】しかしながら、ベーク膜は耐熱性の高いポ
リイミド前駆体ポリマーを含んでいるため、それが阻害
物質となり、定量性に悪影響を及ぼす。また、ガスクロ
では検出器のコンディションやカラムの状態、さらには
装置の機差により、定量性および再現性が悪化する場合
がある。前記のような理由から、これまでポリイミド前
駆体樹脂の膜の残存溶媒量をガスクロ分析で、高精度か
つ再現性良く測定することが出来なかった。
【0006】ポリイミド前駆体樹脂ユーザーのプロセス
条件出しは、樹脂メーカー推奨プロセス条件を基に行わ
れる。しかしながら、装置の差、排気などの環境の違い
からベーク状態が樹脂メーカーと異なることが多く、ベ
ークの温度設定を同じにしても充分なパターニング特性
が発揮されない場合がある。また、ユーザーのライン間
もしくは事業所間での横展開においても、同様の理由で
同等のパターンが得られない場合がある。これらの理由
のため、ユーザーでのベークプロセスの条件出しには時
間を要することが多かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はポリイミド前
駆体樹脂のベーク膜の残存溶媒量を、ガスクロ分析を用
い、装置のコンディションや装置の種類によらず、高精
度かつ再現性良く測定する方法を提供するものである。
また、本発明は前記測定方法を用いて、ポリイミド前駆
体樹脂のベーク条件出しを簡易的かつ短時間で可能にす
る方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、ガスクロマト
グラフィーによるポリイミド前駆体樹脂膜の残存溶媒量
測定方法に関する。また本発明は、内部標準法と標準添
加法を併用することを特徴とする前記のガスクロマトグ
ラフィーによるポリイミド前駆体樹脂膜の残存溶媒量測
定方法に関する。さらに本発明は、前記測定方法により
残存溶媒量を測定し、それによりベーク条件を決定する
ポリイミド前駆体樹脂のベーク条件出し方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のポリイミド前駆体樹脂ベ
ーク膜の残存溶媒量測定方法はガスクロ分析を用いるも
のであるが、内部標準法と標準添加法を適用することに
より、高精度と良好な再現性が得られる。ここで、内部
標準を用いないとサンプル打ち込み量のばらつきのため
定量性および再現性が得られない。また標準添加法を適
用しないとポリイミド前駆体ポリマーの阻害効果により
定量性および再現性も得られない。内部標準法及び標準
添加法は共に、ガスクロ分析で良く知られた方法であ
り、本発明は、これらを共に用いること以外は特に制限
されず、使用するガスクロ分析の機器やカラムの種類と
しては特に限定されない。
【0010】本発明に適用されるポリイミド前駆体樹脂
に関しては、含まれる有機溶媒やポリマー、その他配合
物の種類は特に限定されない。また、樹脂の感光性の有
無や感光性基の導入方法(例えば、イオン型、エステル
型など)も限定されない。
【0011】測定される樹脂の有機溶媒に関しては、特
に限定されないが、例えばジメチルスルホキシド、メチ
ルスルホン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピ
ロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジ
メチルホルムアミド、シクロペンタノン等が挙げられ
る。
【0012】本発明に適用される樹脂に含まれるポリイ
ミド前駆体ポリマーとしては特に限定されないが、例え
ば、テトラカルボン酸またはその誘導体、ジアミンとが
アミド結合して得られる下記一般式(化1)の繰り返し
単位を有するものが挙げられる。
【0013】
【化1】 (式中、Xは四価の有機基を示し、Yは二+n価の有機基
を示し、A1及びA2は各々独立にOH、OR1、NHR2又はO-N+H
R3R4R5であり、R1、R2、R3、R4及びR5は1価の有機基で
あり、Zは炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機
基であり、nは0、1又は2であり、nが0の場合、A1及びA2
は各々独立にOR1、HNR2又はO-N+HR3R4R5であり、R1、R2
及びR3は炭素炭素不飽和二重結合を有する1価の有機基
である)
【0014】また、R1、R2及びR5が、炭素炭素不飽和二
重結合を有する基の場合は、次式
【化2】 (但し、R6、R7及びR8は、水素、アルキル基、フェニル
基、ビニル基及びプロペニル基からそれぞれ独立に選択
された基、R9は2価の有機基を示す)で表される1価の
有機基が挙げられる。前記アルキル基としては炭素数1
〜4のものが挙げられる。また、R9で示される2価の有
機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基
等の炭素原子数1〜4のアルキレン基が挙げられる。-C
OA1及び-COA2で示される基と、Xに結合する2つのアミ
ド基とは、全て芳香環に直接結合することが好ましく、
この場合、-COA1及び-COA2で示される基は、いずれか一
方のアミド基に対してオルト位又はペリ位に位置するこ
とが好ましい。
【0015】Zで示される基としては、ビニル基、アリ
ル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等を含む有機
基が挙げられる。上記ポリイミド前駆体は、テトラカル
ボン酸または誘導体(二無水物など)、ジアミン及び必
要に応じて感光性基を有する化合物を材料として得られ
る。
【0016】膜サンプルを溶かしてガスクロサンプルに
する溶解液としては、測定されるべき樹脂の溶媒以外で
膜を溶解する有機溶媒であれば特に限定されないが、樹
脂の溶媒とガスクロの保持時間の差がある程度大きいも
のが好ましい。例えば、ジメチルスルホキシド、メチル
スルホン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロ
リドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメ
チルホルムアミド、シクロペンタノン等が挙げられる。
【0017】ガスクロ分析に用いる内部標準液として
は、測定されるべき樹脂の溶媒以外の有機溶媒であれば
特に限定されないが、測定されるべき溶媒と沸点の近い
物が好ましく、ガスクロの保持時間の差があまり大きく
ないものが好ましい。例えば、ジメチルスルホキシド、
メチルスルホン、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2
−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N、N
−ジメチルホルムアミド、シクロペンタノン等が挙げら
れる。また測定される溶媒が2種類以上存在する場合、
内部標準を2種類以上添加することもできる。
【0018】標準添加法は試料溶液を3から4個に同量
小分けし、そのうち一つを除いた残りの試料溶液に、目
的溶媒を一定倍数で添加する。例えば、試料溶液に目的
溶媒を0%(試料溶液そのもの)、5%、10%加えた
測定試料を作成する。それぞれの測定試料をガスクロ測
定し、ピーク面積を縦軸、添加した濃度を横軸にプロッ
トする。プロットした点を結べば、原点を通らない直線
の検量線が得られる。この検量線が十分低濃度まで直線
的であると仮定して、ピーク値ゼロ(横軸)まで外挿す
る。原点から横軸と交わった点までの間隔で、目的溶媒
を添加していない測定溶液(試料溶液そのもの)の濃度
を求めることが出来る。
【0019】本発明でいうベークとはいわゆるプリベー
ク、PEB以外にも樹脂を加熱する工程全てを指す。ま
た、樹脂が塗布される基板には特に制限はない。さら
に、ベーク装置に関しても代表例としてホットプレー
ト、オーブン等が挙げられるが、特に制限はない。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。 「ポリイミド前駆体樹脂の合成」攪拌機、温度計及び窒
素導入管を備えた三口フラスコに2,2'−ジメチル−
4'−ジアミノビフェニル10g及びN−メチル−2−
ピロリドン70gを加え、室温で撹拌溶解した。ここ
に、オキシジフタル酸二無水物15gを添加して、8時
間撹拌し粘調なポリイミド前駆体樹脂を得た。
【0021】「実施例1」前記で得た樹脂をシリコンウ
エハ上に滴下し、2800rpmで60秒スピンコート
した。次にホットプレートを用いて90℃で200秒加
熱し、膜厚20umのプリベーク膜を形成した。次にウ
エハから膜をはがし、電子天秤で重量を測定後10gの
N、N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、さらにN、
N−ジメチルホルムアミドで10倍希釈し供試試料とし
た。またN、N−ジメチルホルムアミド99.0gにγ
−ブチロラクトン1.0gを加え、内部標準液(1wt
%)とした。さらに、N、N−ジメチルホルムアミド9
9.0gにN−メチル−2−ピロリドンを1.0g、
N、N−ジメチルホルムアミド98.0gにN−メチル
−2−ピロリドンを2.0g加え、それぞれ標準溶液
1、標準溶液2とした。供試試料0.5gを3試料準備
し、それぞれに内部標準液0.5gを加え、試料A,
B,Cとした。試料AにはN、N−ジメチルホルムアミ
ド0.5g、試料Bには標準溶液1を0.5g、試料C
には標準溶液2を0.5g加え、測定試料A、B、Cと
した。これら測定試料を1.0uLガスクロに注入し測定
した。測定は5日間に分け5回行った。得られた測定結
果の絶対値を内部標準で補正し、標準添加法で定量を行
ったところ表1の結果を得た。測定の再現性が非常に良
好であった。
【0022】
【表1】
【0023】「実施例2」実施例1で用いた樹脂をシリ
コンウエハ上に滴下し、2800rpmで60秒スピン
コートした。次にホットプレートを用いて100℃で2
00秒加熱し、膜厚17umのプリベーク膜を形成し
た。その他試料の作成方法等は実施例1と全く同じ操作
を行い、表2の結果を得た。実施例1同様良好な再現性
が得られた。
【0024】
【表2】
【0025】「実施例3」実施例1で用いた樹脂をシリ
コンウエハ上に滴下し、塗布装置Aにて2800rpm
で60秒スピンコートし、塗布装置のホットプレートを
用いて90℃で200秒加熱し、プリベーク膜を形成し
た。次に塗布装置Bにて2800rpmで60秒スピン
コートし、塗布装置のホットプレートを用いて85℃、
90℃、95℃でそれぞれ200秒加熱し、3種類のプ
リベーク膜を形成した。その他試料の作成方法等は実施
例1と全く同じ操作を行い、表3の結果を得た。装置A
と同等のベーク状態の膜を得るためには、装置Bでは設
定を5℃高くすればよいことが判明した。
【0026】
【表3】
【0027】「比較例1」実施例1と同様の操作で膜を
作成し、測定試料に内部標準液を加えずにガスクロ測定
し、表3の結果を得た。溶解液のN、N−ジメチルホル
ムアミドの粘性が高いためオートサンプラーの注入精度
が悪く、測定値がばらついた。
【0028】
【表4】
【0029】「比較例2」実施例1と同様の操作で膜を
作成し、測定試料に標準液を加えずに検量線法でガスク
ロ測定し、表4の結果を得た。装置コンディションの日
間差が大きく測定値のばらつきが大きくなった。また、
ポリマーの阻害作用で値が全体的に小さくなった。
【0030】
【表5】
【0031】
【発明の効果】本発明の測定方法はポリイミド前駆体樹
脂のベーク膜の残存溶媒量を装置のコンディションや装
置の種類によらず、高精度かつ再現性良く測定すること
ができる。また本発明はベーク膜の残存溶媒量を高精度
かつ再現性良く測定することにより、ベーク条件出し
(最適化)を定量化することが出来る。さらに本発明は
ベーク膜の残存溶媒量を高精度かつ再現性良く測定する
ことにより、異なるプロセス装置間または異なる環境間
でのベーク状態を同一にする事が簡易的に出来る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ガスクロマトグラフィーによるポリイミド
    前駆体樹脂膜の残存溶媒量測定方法。
  2. 【請求項2】内部標準法と標準添加法を併用することを
    特徴とする請求項1記載のガスクロマトグラフィーによ
    るポリイミド前駆体樹脂膜の残存溶媒量測定方法。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の測定方法により残存
    溶媒量を測定し、それによりベーク条件を決定するポリ
    イミド前駆体樹脂のベーク条件出し方法。
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