JP2002157952A - 冷陰極形成方法、及び電子放出素子並びにその応用デバイス - Google Patents

冷陰極形成方法、及び電子放出素子並びにその応用デバイス

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JP2002157952A JP2000352324A JP2000352324A JP2002157952A JP 2002157952 A JP2002157952 A JP 2002157952A JP 2000352324 A JP2000352324 A JP 2000352324A JP 2000352324 A JP2000352324 A JP 2000352324A JP 2002157952 A JP2002157952 A JP 2002157952A
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    • H01J9/02Manufacture of electrodes or electrode systems
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子放出素子の形成において、簡単な工程で
均一にかつ再現性良く陰極表面に微構造を形成し、放出
電流値の増大と安定化を図ること。 【解決手段】 電子放出素子において、電子放出部を、
ターゲット材にレーザ光を照射して、ターゲット材から
の脱離・射出物質を対向基板に堆積させて薄膜を形成す
るレーザアブレーション法を用い、電子放出性材料の結
晶配向性薄膜を自己整合的に形成させて成る薄膜状電子
源とする。この構成により、従来より簡単な構成で、電
子放出しきい値の低下、放出電流値の増大と安定化を実
現するとともに、低コスト化を図ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、平面型の固体表示
素子等への応用が期待される電子放出源に関し、特に、
集積化及び低電圧化が実現可能な冷陰極型電子放出素子
及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出源としては熱陰極型電子
放出素子が多く用いられていたが、熱電極を利用した電
子放出は加熱によるエネルギーロスが大きく、予備加熱
が必要等の問題を有していた。
【0003】これに対し、真空マイクロエレクトロニク
ス技術の進展とともに、微小な冷陰極構造の形成が可能
になったことから、冷陰極型電子放出素子が注目されて
いる。その中でも、局部的に高電界を発生させ電界放出
を行わせる、電界効果型の電子放出素子の開発が盛んに
なりつつある。
【0004】第9図は、従来の電界効果型の電子放出素
子の一例を示す概略的部分断面図である。本図におい
て、91はシリコン(Si)等の基板、92は基板91
上に形成されたSiO2 等の絶縁層、93は金属層から
成る引き出し電極であり、94はモリブデン(Mo)等
から成る円錐形状の電極である。
【0005】以上の構造を有する電子放出素子におい
て、基板91と引き出し電極93との間に電圧を印加す
ると、電界強度の強い電極94の尖頭部から電子が放出
される。
【0006】さらに、従来より低い駆動電圧で動作可能
な高性能な電子源を実現するために、LSI技術を応用
してゲート口径の縮小化や急峻な先端を有する陰極の作
製等のアプローチが行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、従来の
電子放出素子は、微少な径を持ちかつ急峻な先端部を有
するコーン形状の陰極を備えているために低い電圧での
動作は可能であるが、以下に説明するような問題を有し
ている。
【0008】まず、電子放出材料としては、電子放出し
きい値が低い(電子親和力が小さい)物質が適してお
り、W、Mo等の金属や窒化物、酸化物等が検討されて
いる。しかしながら、従来の作製方法では、高純度なコ
ーン形状の加工が可能な材料は限られていた。
【0009】また、電子源を実用化する上で要求される
重要な性能の一つに、電子放出安定性、均一性がある。
従来例では、陰極の放出電流は、動作時の真空雰囲気や
陰極先端部の表面状態に強く影響を受け、電流放出中に
電流放出部の表面の物性的性質、例えば仕事関数等が変
化してしまい、結果的に動作電流が大幅に変化してしま
い、前記要求性能を満たしていなかった。これは、動作
中に放出電子が陰極近傍の残留ガスと衝突してイオンを
発生させ、このイオンが陰極先端部に衝突することによ
って陰極先端部の表面状態を変化させて発生すると考え
られている。
【0010】これらの電流変動を抑制するために、陰極
を複数個同時に配列したマルチ電子源として、個々の電
子放出変動を平均化して放出電流を安定化させる方法等
が提案されているが、従来の電子放出素子では、円錐形
状を製造する工程が複雑であり、またその形状のバラツ
キが大きいため、実用上の大きな課題となっていた。
【0011】さらに、このような電界放出型電子源をC
RT用電子源として用いることが検討されているが、ハ
イビジョンでは、高精細のため電子線を細くしたいが、
輝度が落ちるため、輝度と精細度はトレイドオフの関係
になるという課題があった。
【0012】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、簡単な工程で均一にかつ再現性よく陰極表面に微
構造を形成し、放出電流値の増大と安定化を図るように
することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の冷陰極形成方法は、ターゲット材及び基板
を反応室内に配置し、前記ターゲット材にビーム光を照
射することにより前記ターゲット材近傍に形成される高
温高圧領域のサイズが最適となるように、前記反応室に
導入する雰囲気ガスの圧力及び、前記基板と前記ターゲ
ット材との間の距離を調整し、前記反応室に前記圧力で
前記雰囲気ガスを導入しながら、前記ターゲット材にビ
ーム光を照射することにより励起し、脱離した前記ター
ゲット材に含まれる物質を前記基板上に堆積して冷陰極
を形成する。この構成により、製造工程の簡略化と低コ
スト化を図ることができるだけでなく、自己整合型結晶
構造を得ることができる。
【0014】また、本発明の電子放出素子は、電子放出
部が、上述の冷陰極形成方法により形成された、電子放
出性材料の結晶配向性薄膜から成る冷陰極から構成され
ている。この構成により、従来より簡単な構成で、電子
放出しきい値の低下、放出電流値の増大と安定化を実現
するとともに、低コスト化を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明
は、ターゲット材及び基板を反応室内に配置する工程
と、前記ターゲット材にビーム光を照射することにより
前記ターゲット材近傍に形成される高温高圧領域のサイ
ズが最適となるように、前記反応室に導入する雰囲気ガ
スの圧力(P)及び、前記基板と前記ターゲット材との
間の距離(D)を調整する工程と、前記反応室に前記圧
力で前記雰囲気ガスを導入しながら、前記ターゲット材
にビーム光を照射することにより励起し、脱離した前記
ターゲット材に含まれる物質を前記基板上に堆積する工
程と、を具備することを特徴とする冷陰極形成方法であ
る。
【0016】本発明の請求項2に記載の発明は、請求項
1において、前記雰囲気ガスの圧力(P)及び、前記基
板と前記ターゲット材との間の距離(D)は、PDn
一定(nは2〜3程度)にしたがって調整される方法で
ある。
【0017】これらの方法によれば、レーザ照射により
ターゲットから射出した物質(主に原子・イオン・クラ
スター)と不活性ガスとの相互作用(衝突、散乱、閉じ
込め効果)の最適化により、化学量論組成の保たれた薄
膜を自己整合型結晶構造として得ることができる。
【0018】本発明の請求項3に記載の発明は、請求項
1または2において、前記雰囲気ガスが、不活性ガスで
ある方法である。この方法によれば、酸化性ガスを導入
することなく冷陰極を形成することができる。
【0019】本発明の請求項4に記載の発明は、請求項
1から3のいずれかにおいて、前記雰囲気ガスの圧力
が、0.1〜10Torrの範囲である方法である。こ
の方法によれば、ターゲット材と同一組成の薄膜を好適
に形成することができる。本発明の請求項5に記載の発
明は、請求項1から4のいずれかに記載の冷陰極形成方
法において、前記ターゲット材を構成する材料が、少な
くても2種類以上の組成から成る方法である。
【0020】ここで、ターゲット材を構成する材料は、
請求項6記載のように、LaB6 、TiC、SiC、及
びSnC等の化合物であることが好ましい。あるいは、
請求項7記載のように、TiN、BN、SrN、Zr
N、及びHfNに代表される窒化物であってもよく、請
求項8記載のように、In2 3 、SnO2 、ITO、
ZnO、TiO2 、WO3 、及びCuAlO2 からなる
群より選ばれた透明導電体であってもよい。
【0021】本発明の請求項9に記載の発明は、電子放
出部が、請求項1から8のいずれかに記載の方法で形成
された、電子放出性材料の結晶配向性薄膜から成る冷陰
極から構成されることを特徴とする電子放出素子であ
る。この構成により、従来より簡単な構成で、電子放出
しきい値の低下、放出電流値の増大と安定化を実現する
とともに、低コスト化を図ることができる。
【0022】本発明の請求項10に記載の発明は、電子
放出部が、請求項1から8のいずれかに記載の方法で形
成された、電子放出性材料の結晶配向性薄膜から成り、
導電膜または抵抗膜から成る干渉層を介して基板上に形
成されていることを特徴とする電子放出素子である。こ
の構成により、従来より簡単な構成で、電子放出しきい
値の低下、放出電流値の増大と安定化を実現するととも
に、低コスト化を図ることができる。
【0023】ここで、冷陰極を構成する結晶配向性薄膜
は、請求項11記載のように、LaB6 、TiC、Si
C、及びSnC等の化合物であることが好ましい。ある
いは、請求項12記載のように、TiN、BN、Sr
N、ZrN、及びHfNに代表される窒化物であっても
よい。
【0024】本発明の請求項13に記載の発明は、請求
項9から12のいずれかに記載の電子放出素子を電子源
としたことを特徴とするCRTである。この構成によ
り、高輝度かつ高精細なハイビジョン用CRTが可能と
なる。
【0025】本発明の請求項14に記載の発明は、請求
項9から12のいずれかに記載の電子放出素子を電子源
としたことを特徴とする平面ディスプレイである。この
構成により、平面ディスプレイの低コスト化を図ること
ができる。
【0026】本発明の請求項15に記載の発明は、透明
基板と、前記透明基板上に、請求項1から8のいずれか
に記載の方法で形成された、電子放出性材料の結晶配向
性薄膜から成る冷陰極とを備えている電子放出型素子で
ある。
【0027】本発明の請求項16に記載の発明は、透明
基板と、前記透明基板上に、請求項1から8のいずれか
に記載の方法で形成された、電子放出性材料の結晶配向
性薄膜から成り、導電膜または抵抗膜から成る干渉層を
介して基板上に形成されている電子放出型素子である。
【0028】ここで、冷陰極を構成する結晶配向性薄膜
は、請求項17記載のように、In 2 3 、SnO2
ITO、ZnO、TiO2 、WO3 、及びCuAlO2
からなる群より選ばれた透明導電体であることが望まし
い。
【0029】本発明の請求項18に記載の発明は、請求
項15から17のいずれかに記載の電子放出素子を電子
源としたことを特徴とする透過型平面ディスプレイであ
る。この構成により、高輝度かつ高精細な透過型平面デ
ィスプレイの実現が可能となる。
【0030】(実施の形態1)以下、本発明の電子放出
素子及びその形成方法を、図1から図5を用いて詳細に
説明する。
【0031】図1は、本発明の電子放出素子の構造を示
す断面図である。図1において、11はSi等の基板、
12は基板11上に形成されたSiO2 、Al2 3
の酸化膜の絶縁層、13はMo等の金属層から成る引き
出し電極であり、14は開口部の基板11の上に形成さ
れた結晶配向性薄膜である。この結晶配向性薄膜14
は、電子放出性材料から構成することにより、基板11
と引き出し電極13との間に電圧を印加することによ
り、容易に電子を放出する。この電子放出は、方向の揃
った微細構造部分から行われるため、マルチソースであ
りかつ電子の方向性が揃った冷陰極となる。この結果、
電流密度を増大させるとともに、安定化することがで
き、たとえば、高輝度かつ高精細を要求されるハイビジ
ョン用電子源等として用いることができる。
【0032】次に、図1に示した電界放出素子におい
て、冷陰極となる結晶配向性薄膜の形成方法について説
明する。本実施の形態では、希ガス(Ar,He等)雰
囲気中におけるレーザアブレーションを用いて基板上に
酸化物透明導電体薄膜を堆積させる。なお、レーザアブ
レーション法とは、高いエネルギー密度(パルスエネル
ギー:1.0J/cm2 程度又はそれ以上)のレーザ光
をターゲット材に照射し、被照射ターゲット材表面を溶
融・脱離させる方法である。
【0033】この方法の特徴は、非熱平衡性及び無質量
性プロセスであることにある。非熱平衡性における具体
的効果としては、空間的・時間的選択励起が可能である
ことが挙げられる。特に、空間的選択励起性を有するこ
とから、従来の熱プロセスやプラズマプロセスにおいて
は反応槽のかなり広い領域あるいは全体が熱やイオンに
晒されるのに対し、必要な物質源のみを励起することが
できるので、不純物混入が抑制されたクリーンなプロセ
スとなる。また、無質量性とは、同じ非熱平衡性のイオ
ンプロセスに比較して、格段な低ダメージ性であること
を意味する。レーザアブレーションにおける脱離物質
は、主にイオン及び中性粒子である原子・分子・クラス
ター(数個から数十個程度の原子から構成される)であ
り、その運動エネルギーは、イオンで数十eV、中性粒
子の場合は数eVのレベルに達する。これは、加熱蒸発
原子よりはるかに高エネルギーであるが、イオンビーム
よりはるかに低エネルギーの領域である。
【0034】このようにクリーンでダメージの少ないレ
ーザアブレーションプロセスは、不純物の混入・組成・
結晶性等が制御された薄膜の作製に適している。また、
このレーザアブレーションプロセスは、レーザ光の透過
性により、種々のガス種、広い範囲のガス圧条件下での
成膜が可能である。さらに、この特性は融点・蒸気圧に
あまり依存しないので、レーザアブレーションプロセス
は、従来の熱平衡プロセス技術では困難とされていた、
融点・蒸気圧の異なる材料を同時に処理(蒸発・堆積)
することによる多元系材料の成膜への適用が可能であ
る。
【0035】なお、レーザアブレーション法を用いて薄
膜形成を行うためには、ターゲット材料が、光源である
レーザ光の波長域で吸収があることが望ましい。一般
に、酸化物透明導電体材料は、バンドギャップエネルギ
ーが3eV程度以上であるため、光源として、エキシマ
レーザあるいはYAGレーザの高調波を用いることが望
ましい。
【0036】図2は、本発明の冷陰極形成方法に使用す
る薄膜形成装置を示す図である。ここでは、酸化物透明
導電体ターゲットを用いてレーザアブレーションを行う
ことにより、均質な酸化物透明導電体薄膜を形成する場
合について説明する。
【0037】図2(a)において、101はターゲット
が配置される金属製の反応室を示す。反応室101の底
部には、反応室101内の空気を排気して反応室101
内を超真空にする超真空排気系102が設けられてい
る。反応室101には、反応室101へ雰囲気ガスを供
給するガス導入ライン104が取り付けられている。こ
のガス導入ライン104には、反応室101へ供給する
雰囲気ガスの流量を制御するマスフローコントローラ1
03が取り付けられている。また、反応室101の底部
には、反応室101内の雰囲気ガスを排気するガス排気
系105が設けられている。
【0038】反応室101内には、ターゲット107を
保持するターゲットホルダー106が配置されている。
このターゲットホルダー106には、回転シャフトが取
り付けられており、この回転シャフトが図示しない回転
制御部の制御で回転することにより、ターゲット107
が回転するようになっている。このターゲット107の
表面に対向するようにして堆積基板109が配置されて
いる。この堆積基板109には、レーザ光の照射により
励起されたターゲット107から脱離・射出された物質
が堆積される。なお、ここでは、ターゲットとして、I
2 3 多結晶焼結体ターゲットを用いる。
【0039】反応室101の外側には、ターゲット10
7にエネルギービームとしてのレーザ光を照射するパル
スレーザ光源108が配置されている。反応室101の
上部には、レーザ光を反応室101内に導入するレーザ
導入窓110が取り付けられている。パルスレーザ光源
108から出射したレーザ光の光路上には、レーザ光源
108から近い順にスリット111,レンズ112,及
び反射鏡113が配置されており、パルスレーザ光源1
08から出射したレーザ光がスリット111により整形
され、レンズ112で集光され、反射鏡113で反射さ
れて、レーザ導入窓110を通って反応室101内に設
置されたターゲット107に照射されるようになってい
る。
【0040】上記構成を有する薄膜製造装置における動
作について説明する。反応室101の内部を、ターボ分
子ポンプを主体とする超高真空排気系102により到達
真空1.0×10-9Torr程度まで排気した後、マス
フローコントローラ103を経由して、ガス導入ライン
104より、Heガスの導入を行う。ここで、ドライロ
ータリーポンプもしくは高圧用ターボ分子ポンプを主体
としたガス排気系105の動作と連動することにより、
反応室101内の希ガス圧力を、0.1〜10Torr
程度の範囲の一圧力値に設定する。
【0041】この状態で、自転機構を有するターゲット
ホルダー106に配置された、純度:4NのIn2 3
多結晶焼結体ターゲット107の表面に対して、パルス
レーザ光源108からレーザ光を照射する。ここでは、
アルゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193
nm、パルス幅:12ns、エネルギー密度:1J/c
2 、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、
In2 3 ターゲット107表面では、レーザアブレー
ション現象が発生し、In,O,InO,In 2 3
のイオンあるいは中性粒子(原子、分子、クラスター)
が脱離し、当初はイオンで50eV、中性粒子で5eV
のオーダーの運動エネルギーを有し、主にターゲット法
線方向に分子、クラスターレベルの大きさを維持して、
射出して行く。そして、脱離物質は、雰囲気希ガス原子
と衝突することにより、飛行方向が乱雑になるととも
に、運動エネルギーが雰囲気に散逸され、約3cm離れ
て対向した堆積基板109上に均質な薄膜として堆積す
る。なお、基板、ターゲット温度とも積極的な制御は行
っていない。
【0042】ここでは、雰囲気ガスとして、Heガスを
用いているが、Ar,Kr,Xe,N2 等の他の不活性
ガスを用いてもよい。この場合、気体密度がHeガスの
場合と同等になるように圧力を設定すればよい。例え
ば、雰囲気ガスとしてAr(気体密度:1.78g/
l)を用いる場合には、He(気体密度:0.18g/
l)を基準とすると0.1倍程度の圧力に設定すればよ
い。
【0043】或いは、希ガス(Ar、He等)と酸化性
ガス(O2 ,O3 ,N2 O,NO2等)の混合ガスを用
いてもよい。この場合、酸化性ガスの混入割合は、50
容量%以下で希ガスに対して混入すればよく、雰囲気ガ
スの平均気体密度がHe希釈O2 ガスの場合と同等にな
るように圧力を設定すればよい。上記の方法により雰囲
気ガスであるHeガスの圧力を変えながら堆積基板に形
成した酸化インジウム薄膜について、X線回折測定およ
び電子顕微鏡観察による結晶性評価を行った。
【0044】図3に、各堆積薄膜の電子顕微鏡観察写真
を示す。(a)、(b)、(c)は、それぞれ、Heガ
ス圧:0.5Torr、2.0Torr、5.0Tor
rで堆積した薄膜である。(a)では微粒子状になって
堆積しているのに対し、(b)では突起部を有する自己
整合型結晶構造が得られている。一方、(c)では、微
結晶の集合体となっている。
【0045】図4に、各堆積薄膜のX線回折測定結果を
示す。Heガス圧:0.5Torr以下で形成したサン
プルでは、回折角:33°付近にブロードなピークが観
測される。このピーク位置はIn結晶の(101)面に
対応するが、半値全幅が広いことから、アモルファス構
造あるいは微粒子の凝集体となっていると考えられる。
一方、Heガス圧:1.0Torr及び2.0Torr
で形成したサンプルでは、In2 3 結晶構造に対応し
た4つの回折ピークが観測され、特に(400)配向性
が高くなっている。また、Heガス圧:5.0Torr
で形成したサンプルでは、7つの回折ピークが観測され
ており、各ピークの強度比が、粉末標準試料における各
ピークの強度比と同様であることから、配向性の無い構
造となっていることがわかる。
【0046】以上の結果は、本実施の形態の薄膜形成方
法による酸化物薄膜作製において、酸素を含有しない不
活性ガスを用いても、その雰囲気ガス圧の制御により酸
素欠損のない酸化物薄膜を形成できたことを示してい
る。換言すれば、レーザ照射によりターゲットから射出
した物質(主に原子・イオン・クラスター)と不活性ガ
スとの相互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化
により、化学量論組成の保たれた結晶配向性酸化物薄膜
の形成が可能であることを示している。
【0047】ここで、さらに、レーザアブレーションに
おける雰囲気ガスの効果について考察を行う。レーザ照
射によりターゲット表面から射出した物質は、ターゲッ
ト組成を保ったまま蒸気化されず、主に原子・イオンの
状態で直進性を保って伝播していく。しかしながら、雰
囲気ガスが存在すると、衝突により散乱したりエネルギ
ーを奪われ、薄膜形成における空間分布、堆積速度、堆
積物質の運動エネルギーの分布等に変化を生じさせる。
これらの変化は射出物質の種類、運動エネルギーにより
異なり、一般に、重い物質(ここではIn)の方が散乱
を受けにくいため、ガス雰囲気中でのレーザアブレーシ
ョンにおいても直進性を保つと考えられる。その結果、
低ガス圧で薄膜形成を行った場合、散乱を受けやすく蒸
気圧も高い酸素が欠損した状態で基板に到達する。
【0048】ターゲットから射出された原子やイオン
は、最初はそれぞれ異なる速度で進むが、雰囲気ガス圧
が高くなると、雰囲気ガスとの衝突・散乱を多く受ける
ことにより、その速度は均一化されつつ遅くなってい
く。その結果、図2(b)に示すように、射出物質はプ
ルーム114内に閉じ込められて、低ガス圧で生じてい
た酸素抜けが抑えられることになる。希ガス雰囲気中で
のレーザアブレーションにおいては、堆積薄膜中の酸素
はターゲットから射出された酸素のみから供給されるた
め、この効果は重要である。
【0049】しかしながら、Heガス雰囲気中で堆積し
た薄膜における結晶構造の急激な変化は、酸素の空間的
閉じ込めによる酸素供給量の増加だけでは説明できな
い。
【0050】高圧ガス雰囲気中でレーザアブレーション
を行うと、雰囲気ガスが圧縮され、その圧力と温度が上
昇してショックフロントが形成される。そこで、酸化物
形成におけるショックフロントの影響を考察する。圧力
の増加は、体積及びモル数の減少をもたらす反応である
In2 3 の形成を促進する。温度の上昇は、射出物質
の励起を熱的に促進する。しかしながら、温度の上昇は
In2 3 の生成エネルギーを増加する方向にも働くた
め、In2 3 の形成が妨げられることになる。ショッ
クフロントが前進してターゲットからの距離が増加する
とともに、圧力と温度は減少していく。また、生成エネ
ルギーは温度の減少とともに低くなる。以上の結果、高
圧状態と、生成エネルギーが十分に低い条件が満たされ
る高温状態が同時に実現された領域が、ターゲットから
ある距離のところで形成され、この領域内で酸化反応が
促進される。すなわち、この気相中の酸化促進領域で、
化学量論組成の保たれたIn2 3 が形成され、基板上
で透明薄膜が得られると考えられる。
【0051】さらに、結晶性については、従来の製造方
法で常温でガラス基板上に作製した薄膜は、アモルファ
ス構造となっている。これに対し、本実施の形態では、
常温で合成石英基板上に形成した薄膜において結晶性I
2 3 薄膜が得られている。また、配向性について
は、Heガス圧:1.0〜2.0Torrでは強い配向
性が見られたのに対し、5.0Torrでは配向性の無
い構造となった。この結果は、ショックフロントにより
形成された酸化促進領域と堆積基板の位置関係により以
下のように説明できる(図5参照)。
【0052】すなわち、気相中の酸化促進領域におい
て、酸化反応が促進されてIn2 3の結晶核が生成さ
れた後、さらなる飛行に伴い急激に冷やされて微結晶に
成長する。この酸化促進領域に接するように堆積基板が
配置されていると、基板表面が活性領域となり、気相で
生成された結晶核が基板上でのマイグレーションを伴う
ことで配向して結晶化すると考えられる。一方、堆積基
板がこの酸化促進領域の外に配置されていると、気相中
で大きく成長した微結晶が凝集しつつ基板に到達するた
め、配向性を持たない構造になる。本実施の形態におけ
るプロセス条件では、Heガス圧:1.0〜2.0To
rr程度の場合に、堆積基板がショックフロントにより
形成された酸化促進領域に接するような配置になってい
ると考えられる。
【0053】以上のように、レーザアブレーションにお
いては、雰囲気ガス圧(P)とターゲット−基板間距離
(D)の間に相関関係がある。レーザ照射によりターゲ
ットから射出した物質はプルームと呼ばれるプラズマ状
態を形成する。このプルームは雰囲気ガスとの衝突の影
響を受けるため、プルームの大きさはガス圧依存性を有
し、ガス圧が高いほどその大きさは小さくなる。
【0054】一方、化学量論組成の保たれた配向性薄膜
を得るには、プルーム内に形成される上述の酸化促進領
域が基板に接するような条件とすることが望ましい。具
体的には、本実施の形態では、D=3cmとしており、
この場合にはP=1.0Torr程度で配向性薄膜が得
られている。Dをさらに大きくする場合には、プルーム
を大きくする、すなわちガス圧を低くすればよい。さら
に、堆積薄膜の膜質は、ターゲットからの射出物質が堆
積基板に到達する時の速度に大きく依存する。このた
め、同様の膜質を得るには、上記速度が一定になるプロ
セス条件として、PDn =一定という相関関係があり、
このnの値は2〜3程度とされている。したがって、例
えば、Dを2倍にした場合には、対応するガス圧を1/
4〜1/8程度とすればよい。
【0055】このように、本実施の形態の冷陰極形成方
法では、蒸気圧が高い元素(ここでは酸素)を含む材料
で構成されたターゲット材を用いてレーザアブレーショ
ンを行う場合において、蒸気圧が高い元素が抜けること
により化学量論組成がくずれてしまうことを防止するた
めに、雰囲気ガスに蒸気圧が高い元素を含むガスを用い
て蒸気圧が高い元素を補う方法ではなく、雰囲気ガス圧
と、ターゲットと堆積基板との間の距離とを調整して適
切な大きさのプルームを形成させることにより化学量論
組成の保たれた結晶配向性薄膜を形成する。すなわち、
適切な大きさのプルーム内で蒸気圧の高い元素の抜けを
防止して、堆積基板上にターゲット材とほぼ同じ組成の
薄膜を形成する。適切な大きさのプルームとは、上述し
たように、プルーム内に形成される酸化促進領域が堆積
基板109の表面に接する程度の大きさである。したが
って、本実施の形態に係る冷陰極形成方法では、このよ
うな適切な大きさのプルームが形成されるために十分な
雰囲気ガス圧及びターゲット−堆積基板間距離を適宜設
定する。
【0056】この方法を利用すると、雰囲気ガスの圧力
を調整して、すなわちターゲット材からの脱離物質と雰
囲気ガス原子との間の衝突回数を調整して、プルーム内
に形成される高温高圧領域に閉じ込められる蒸気圧の高
い元素の割合を制御することにより、形成する薄膜の結
晶状態や欠損等を制御することが可能となる。
【0057】さらに、形成直後の薄膜は、結晶性が悪
い、欠陥が存在する等の問題を生じることがある。この
ような場合には、結晶性、純度等の膜質向上のために、
薄膜を酸素雰囲気中で酸化したり、窒素雰囲気中で熱処
理をすることも有効である。
【0058】以上述べてきたように、本実施の形態の冷
陰極形成方法により、O2 ガスの導入や基板加熱を必要
とすることなく、化学量論組成の保たれた結晶配向性酸
化物薄膜を形成することができた。したがって、この方
法を用いれば、冷陰極を形成する基板材料が限定される
ことも無く、製造工程の簡略化と低コスト化を図ること
ができる。
【0059】さらに、上記により形成された冷陰極にお
いて、真空度10-6TorrでMo金属層13と結晶配
向性薄膜14の間で10V/μm程度の電圧を印可し、
垂直方向3mm程度離した位置に被照射体を置いたとこ
ろ、1mA/cm2 程度の安定な電子放出を確認した。
この結果は、形成された冷陰極が、図3(b)に示した
ように、複数の突起体を自己整合的に形成しており、こ
れに電圧を印加した結果、高電界強度がそれぞれの突起
体にかかることにより、電子放出しきい値が低下すると
ともに、全体として放出電流値の増大と安定化を図るこ
とができたと考えられる。
【0060】なお、以上の説明では、二元系の酸化物透
明導電体薄膜である、In2 3 薄膜を用いた冷陰極形
成方法について述べたが、冷陰極材料としては、SnO
2 、ITO、ZnO、TiO2 、WO3 、及びCuAl
2 のいずれかの透明導電体を用いることも可能であ
る。
【0061】また、本実施の形態に係る方法は、透明導
電体に限らず、冷陰極材料に適している、電子放出しき
い値が低い(電子親和力が小さい)物質にも同様に適用
することができる。特に、従来の熱平衡プロセス技術で
は困難とされていた、融点・蒸気圧の異なる材料を同時
に処理(蒸発・堆積)することによる多元系材料の成膜
への適用が可能である。このような物質としては、La
6 、TiC、SiC、及びSnC等の化合物や、Ti
N、BN、SrN、ZrN、及びHfNに代表される窒
化物等がある。さらに、電子放出性材料として、従来プ
ロセスでは酸化されやすく突起状の加工も難しい金属材
料(W、Mo等)を用いる場合でも、高純度のターゲッ
トを用いて、自己整合的に高純度の突起形状を形成する
ことができる。
【0062】以上のように、本実施の形態の電子放出素
子において、電子放出は方向の揃った微細構造部分から
行われるため、マルチソースでありかつ電子の方向性が
揃った冷陰極となる。したがって、CRT用電子源に応
用した場合、従来のCRT用電子源において必要であっ
た、電子を加速・集束させるための電子銃の構造を簡素
化することもでき、CRTの薄型化を図ることができ
る。さらに、電子源の電流密度を増大させるとともに、
安定化することができることから、高輝度かつ高精細を
要求されるハイビジョン用CRTの電子源等として用い
ることもできる。
【0063】(実施の形態2)以下、本発明の他の電子
放出素子及びその形成方法を、図6を用いて詳細に説明
する。 図6は、本発明の電子放出素子の構造を示す断
面図である。図6において、61はSi等の基板、62
は基板61上に形成されたSiO2 、Al2 3 等の酸
化膜の絶縁層、63はMo等の金属層から成る引き出し
電極であり、64は開口部の基板61の上に形成され
た、導電膜あるいは抵抗膜から成る干渉層、65は干渉
層64の上に形成された結晶配向性薄膜である。
【0064】以上の構成において、結晶配向性薄膜65
は、電子放出性材料から構成することにより、基板61
と引き出し電極63との間に電圧を印加することによ
り、容易に電子を放出する。この電子放出は、方向の揃
った微細構造部分から行われるため、マルチソースであ
りかつ電子の方向性が揃った冷陰極となる。ここで、結
晶配向性薄膜65を干渉層64を介して形成する際に、
電子放出部先端が引き出し電極とほぼ同面位置になるよ
うに、それぞれの膜厚を調整することにより、電界強度
を高くする、すなわち、電子放出開始電圧を低減するこ
とができる。また、干渉層を抵抗膜で構成することによ
り、より電流を安定化することが可能となる。さらに、
結晶配向性薄膜を形成する下地である干渉層を、結晶配
向性薄膜と同様の配向性を有する導電膜あるいは抵抗膜
としておくことにより、その上に形成する薄膜の結晶化
が促進され、電子放出部の先端形状を安定化することが
できる。
【0065】以上の結果、電流密度を増大させるととも
に、安定化することができ、たとえば、高輝度かつ高精
細を要求されるハイビジョン用電子源等として用いるこ
とができる。
【0066】次に、図6に示した電界放出素子におい
て、冷陰極となる結晶配向性薄膜の形成方法について説
明する。本実施の形態では、基板上に干渉層を形成した
後、希ガス(Ar,He等)雰囲気中におけるレーザア
ブレーションを用いて、電子放出性材料である金属窒化
物薄膜を堆積させる。
【0067】ここでは、実施の形態1で述べた、図2に
示した薄膜形成装置を用い、金属窒化物ターゲットを用
いてレーザアブレーションを行うことにより、均質な金
属窒化物薄膜を形成する場合について説明する。
【0068】図2に示した薄膜製造装置において、ま
ず、反応室101の内部を、ターボ分子ポンプを主体と
する超高真空排気系102により到達真空1.0×10
-9Torr程度まで排気した後、マスフローコントロー
ラ103を経由して、ガス導入ライン104より、He
ガスの導入を行う。ここで、ドライロータリーポンプも
しくは高圧用ターボ分子ポンプを主体としたガス排気系
105の動作と連動することにより、反応室101内の
希ガス圧力を、0.1〜10Torr程度の範囲の一圧
力値に設定する。
【0069】この状態で、自転機構を有するターゲット
ホルダー106に配置された、純度:4NのTiN多結
晶焼結体ターゲット107の表面に対して、パルスレー
ザ光源108からレーザ光を照射する。ここでは、アル
ゴン弗素(ArF)エキシマレーザ(波長:193n
m、パルス幅:12ns、エネルギー密度:1J/cm
2 、繰返し周波数:10Hz)を用いた。このとき、T
iNターゲット107表面では、レーザアブレーション
現象が発生し、Ti,N,TiN等のイオンあるいは中
性粒子(原子、分子、クラスター)が脱離し、当初はイ
オンで50eV、中性粒子で5eVのオーダーの運動エ
ネルギーを有し、主にターゲット法線方向に分子、クラ
スターレベルの大きさを維持して、射出して行く。そし
て、脱離物質は、雰囲気希ガス原子と衝突することによ
り、飛行方向が乱雑になるとともに、運動エネルギーが
雰囲気に散逸され、約3cm離れて対向した堆積基板1
09上に均質な薄膜として堆積する。なお、基板、ター
ゲット温度とも積極的な制御は行っていない。
【0070】ここでは雰囲気ガスとして、Heガスを用
いているが、Ar,Kr,Xe等の他の不活性ガスを用
いてもよい。この場合、気体密度がHeガスの場合と同
等になるように圧力を設定すればよい。例えば、雰囲気
ガスとしてAr(気体密度:1.78g/l)を用いる
場合には、He(気体密度:0.18g/l)を基準と
すると0.1倍程度の圧力に設定すればよい。
【0071】あるいは、希ガス(Ar、He等)と窒化
性ガス(N2 ,NH3 等)の混合ガスを用いてもよい。
この場合、窒化性ガスの混入割合は、50容量%以下で
希ガスに対して混入すればよく、雰囲気ガスの平均気体
密度がHe希釈N2 ガスの場合と同等になるように圧力
を設定すればよい。
【0072】上記の方法により雰囲気ガスであるHeガ
スの圧力を変えながら堆積基板に形成した窒化チタン薄
膜について、X線回折測定および電子顕微鏡観察による
結晶性評価を行った結果、突起部を有する自己整合型結
晶構造が得られていた。
【0073】以上の結果は、本実施の形態の薄膜形成方
法による窒化物薄膜作製において、窒素を含有しない不
活性ガスを用いても、その雰囲気ガス圧の制御により組
成ずれのない窒化物薄膜を形成できたことを示してい
る。換言すれば、実施の形態1で図5を用いて説明した
ように、レーザ照射によりターゲットから射出した物質
(主に原子・イオン・クラスター)と不活性ガスとの相
互作用(衝突、散乱、閉じ込め効果)の最適化により、
化学量論組成の保たれた結晶配向性窒化物薄膜が形成さ
れたと考えられる。
【0074】さらに、実施の形態1で述べたように、レ
ーザアブレーションにおいては、雰囲気ガス圧(P)と
ターゲット−基板間距離(D)の間に相関関係がある。
レーザ照射によりターゲットから射出した物質はプルー
ムと呼ばれるプラズマ状態を形成する。このプルームは
雰囲気ガスとの衝突の影響を受けるため、プルームの大
きさはガス圧依存性を有し、ガス圧が高いほどその大き
さは小さくなる。
【0075】一方、化学量論組成の保たれた配向性薄膜
を得るには、プルーム内に形成される上述の窒化促進領
域が基板に接するような条件とすることが望ましい。具
体的には、本実施の形態では、D=3cmとしており、
この場合にはP=1.0Torr程度で配向性薄膜が得
られている。Dをさらに大きくする場合には、プルーム
を大きくする、すなわちガス圧を低くすればよい。さら
に、堆積薄膜の膜質は、ターゲットからの射出物質が堆
積基板に到達する時の速度に大きく依存する。このた
め、同様の膜質を得るには、上記速度が一定になるプロ
セス条件として、PDn =一定という相関関係があり、
このnの値は2〜3程度とされている。したがって、例
えば、Dを2倍にした場合には、対応するガス圧を1/
4〜1/8程度とすればよい。
【0076】このように、本実施の形態の冷陰極形成方
法では、蒸気圧が高い元素(ここでは窒素)を含む材料
で構成されたターゲット材を用いてレーザアブレーショ
ンを行う場合において、蒸気圧が高い元素が抜けること
により化学量論組成がくずれてしまうことを防止するた
めに、雰囲気ガスに蒸気圧が高い元素を含むガスを用い
て蒸気圧が高い元素を補う方法ではなく、雰囲気ガス圧
と、ターゲットと堆積基板との間の距離とを調整して適
切な大きさのプルームを形成させることにより化学量論
組成の保たれた結晶配向性薄膜を形成する。すなわち、
適切な大きさのプルーム内で蒸気圧の高い元素の抜けを
防止して、堆積基板上にターゲット材とほぼ同じ組成の
薄膜を形成する。適切な大きさのプルームとは、上述し
たように、プルーム内に形成される窒化促進領域が堆積
基板109の表面に接する程度の大きさである。したが
って、本実施の形態に係る冷陰極形成方法では、このよ
うな適切な大きさのプルームが形成されるために十分な
雰囲気ガス圧及びターゲット−堆積基板間距離を適宜設
定する。
【0077】この方法を利用すると、雰囲気ガスの圧力
を調整して、すなわちターゲット材からの脱離物質と雰
囲気ガス原子との間の衝突回数を調整して、プルーム内
に形成される高温高圧領域に閉じ込められる蒸気圧の高
い元素の割合を制御することにより、形成する薄膜の結
晶状態や欠損等を制御することが可能となる。
【0078】さらに、形成直後の薄膜は、結晶性が悪
い、欠陥が存在する等の問題を生じることがある。この
ような場合には、結晶性、純度等の膜質向上のために、
薄膜を窒素雰囲気中で窒化したり、不活性ガス雰囲気中
で熱処理をすることも有効である。
【0079】以上述べてきたように、本実施の形態の冷
陰極形成方法により、反応性ガスの導入や基板加熱を必
要とすることなく、化学量論組成の保たれた結晶配向性
窒化物薄膜を形成することができた。したがって、この
方法を用いれば、冷陰極を形成する基板材料が限定され
ることも無く、製造工程の簡略化と低コスト化を図るこ
とができる。
【0080】さらに、上記により形成された冷陰極にお
いて、真空度10-6TorrでMo金属層63と結晶配
向性薄膜65の間で10V/μm程度の電圧を印可し、
垂直方向3mm程度離した位置に被照射体を置いたとこ
ろ、2mA/cm2 程度の安定な電子放出を確認した。
この結果は、形成された冷陰極が複数の突起体を自己整
合的に形成しており、さらに、電子放出部先端が引き出
し電極とほぼ同面位置になるように調整されているた
め、これに電圧を印加した結果、高電界強度が効率的に
それぞれの突起体にかかることにより、電子放出しきい
値が低下するとともに、全体として放出電流値の増大と
安定化を図ることができたと考えられる。
【0081】なお、以上の説明では、二元系の金属窒化
物薄膜であるTiN薄膜を用いた冷陰極形成方法につい
て述べたが、冷陰極材料としては、BN、SrN、Zr
N、及びHfN等の他の窒化物を用いることも可能であ
る。
【0082】また、本実施の形態に係る方法は、窒化物
に限らず、冷陰極材料に適している、電子放出しきい値
が低い(電子親和力が小さい)物質にも同様に適用する
ことができる。特に、従来の熱平衡プロセス技術では困
難とされていた、融点・蒸気圧の異なる材料を同時に処
理(蒸発・堆積)することによる多元系材料の成膜への
適用が可能である。このような物質としてはLaB6
TiC、SiC、及びSnC等の化合物や、In
2 3 、SnO2 、ITO、ZnO、TiO2 、W
3 、及びCuAlO2 等の透明導電体等がある。さら
に、電子放出性材料として、従来プロセスでは酸化され
やすく突起状の加工も難しい金属材料(W、Mo等)を
用いる場合でも、高純度のターゲットを用いて、自己整
合的に高純度の突起形状を形成することができる。
【0083】以上のように、本実施の形態の電子放出素
子において、電子放出は方向の揃った微細構造部分から
行われるため、マルチソースでありかつ電子の方向性が
揃った冷陰極となる。したがって、CRT用電子源に応
用した場合、従来のCRT用電子源において必要であっ
た、電子を加速・集束させるための電子銃の構造を簡素
化することもでき、CRTの薄型化を図ることができ
る。さらに、電子源の電流密度を増大させるとともに、
安定化することができることから、高輝度かつ高精細を
要求されるハイビジョン用CRTの電子源等として用い
ることもできる。
【0084】(実施の形態3)以下、本発明の電子放出
素子を電子源とした平面ディスプレイについて、図7を
用いて詳細に説明する。
【0085】図7は、本発明の平面ディスプレイの構造
を示す断面図である。図7において、71はSi基板、
72は基板71上に形成された冷陰極であり、実施の形
態1で述べた、図1に示した電子放出性材料から成る結
晶配向性薄膜で構成されている。73は第一絶縁膜、7
4は第一ゲート電極、75は第二絶縁膜、76は第二ゲ
ート電極である。第一ゲート電極74と第2ゲート電極
76はそれぞれ直交するラインとなるようなマトリクス
に形成され、端部はフリットシールを通って外部回路と
つながれており、このラインの交点が画素を構成する。
77は蛍光体層、78はアノードとなる透明導電膜、7
9は透明な面板である。面板79とSi基板71は、不
図示の隔壁板によって例えば200μmのギャップを確
保し、端部でフリットガラスにより接着され、内部が高
真空に保たれる構造となっている。
【0086】以上の構成において、その動作について説
明する。透明導電膜78に、Si基板71に対して例え
ば400V程度の電圧を加えてアノードとする。そし
て、第一ゲート電極74と第二ゲート電極76の両方に
例えば60V程度の電圧を加えると、冷陰極72が電子
放出性材料の結晶配向性薄膜から構成されているため、
図7に示すように電子を放出する。放出された電子は、
透明導電膜78の電圧による電界により透明導電膜78
に向かって真空に保持された内部を進行し、対向して設
置された蛍光体層77の蛍光体を励起し、可視発光を生
じさせる。この光は、面板79を通して外部に放出され
ることになる。
【0087】一方、第一ゲート電極74と第二ゲート電
極76の電圧のいずれか一方が60Vで他方が0Vの時
には、電界の打ち消しあいにより電子は放出されない。
これを利用して、マトリックス状に配置された画素のう
ちの任意の画素を発光させることができる。
【0088】なお、本実施の形態では、冷陰極72は、
実施の形態1で述べた冷陰極構造としたが、実施の形態
2で述べた冷陰極構造としてもよい。すなわち、冷陰極
72は、図6に示したように、開口部の基板71の上に
形成された、導電膜あるいは抵抗膜から成る干渉層と、
その上に形成された結晶配向性薄膜から構成される。こ
こで、結晶配向性薄膜の電子放出部先端が引き出し電極
とほぼ同面位置になるように、それぞれの膜厚を調整す
ることにより、電界強度を高くする、すなわち、電子放
出開始電圧を低減することができる。また、干渉層を抵
抗膜で構成することにより、より電流を安定化すること
が可能となる。さらに、結晶配向性薄膜を形成する下地
である干渉層を、結晶配向性薄膜と同様の配向性を有す
る導電膜あるいは抵抗膜としておくことにより、その上
に形成する薄膜の結晶化が促進され、電子放出部の先端
形状を安定化することができる。
【0089】以上のように、本実施の形態の平面ディス
プレイにおいて、電子源からの電子放出は方向の揃った
微細構造部分から行われるため、マルチソースでありか
つ電子の方向性が揃った冷陰極となる。この構成によ
り、従来より簡単な構成で、電子源の電子放出しきい値
の低下、放出電流値の増大と安定化を実現でき、平面デ
ィスプレイの低電圧化、低コスト化を図ることができ
る。
【0090】(実施の形態4)以下、本発明の電子放出
素子を電子源とした透過型平面ディスプレイについて、
図8を用いて詳細に説明する。
【0091】図8は、本発明の透過型平面ディスプレイ
の構造を示す断面図である。図8において、81は透明
基板、82は透明基板81上に形成された冷陰極であ
り、図1に示した透明導電体材料から成る結晶配向性薄
膜で構成されている。83は第一絶縁膜、84は第一ゲ
ート電極、85は第二絶縁膜、86は第二ゲート電極で
ある。第一ゲート電極84と第2ゲート電極86はそれ
ぞれ直交するラインとなるようなマトリクスに形成さ
れ、端部はフリットシールを通って外部回路とつながれ
ており、このラインの交点が画素を構成する。87は蛍
光体層、88はアノード電極層、89は面板である。面
板89と透明基板81は、不図示の隔壁板によって例え
ば200μmのギャップを確保し、端部でフリットガラ
スにより接着され、内部が高真空に保たれる構造となっ
ている。
【0092】以上の構成において、その動作について説
明する。アノード電極層88に、透明基板81に対して
例えば400V程度の電圧を加えてアノードとする。そ
して、第一ゲート電極84と第二ゲート電極86の両方
に例えば60V程度の電圧を加えると、冷陰極82が電
子放出性材料の結晶配向性薄膜から構成されているた
め、図8に示すように電子を放出する。放出された電子
は、アノード電極層88の電圧による電界によりアノー
ド電極層88に向かって真空に保持された内部を進行
し、対向して設置された蛍光体層87の蛍光体を励起
し、可視発光を生じさせる。この光は、透明な冷陰極8
2および透明基板81を介して外部から見ることができ
る。
【0093】一方、第一ゲート電極84と第二ゲート電
極86の電圧のいずれか一方が60Vで他方が0Vの時
には、電界の打ち消しあいにより電子は放出されない。
これを利用して、マトリックス状に配置された画素のう
ちの任意の画素を発光させることができる。
【0094】なお、本実施の形態では、冷陰極82は、
実施の形態1で述べた冷陰極構造としたが、実施の形態
2で述べた冷陰極構造としてもよい。すなわち、冷陰極
82は、図6に示したように、開口部の基板81の上に
形成された、導電膜あるいは抵抗膜から成る干渉層と、
その上に形成された結晶配向性薄膜から構成される。こ
こで、結晶配向性薄膜の電子放出部先端が引き出し電極
とほぼ同面位置になるように、それぞれの膜厚を調整す
ることにより、電界強度を高くする、すなわち、電子放
出開始電圧を低減することができる。また、干渉層を抵
抗膜で構成することにより、より電流を安定化すること
が可能となる。さらに、結晶配向性薄膜を形成する下地
である干渉層を、結晶配向性薄膜と同様の配向性を有す
る導電膜あるいは抵抗膜としておくことにより、その上
に形成する薄膜の結晶化が促進され、電子放出部の先端
形状を安定化することができる。
【0095】以上のように、平面ディスプレイにおい
て、本発明のように、透明導電体結晶薄膜からなる冷陰
極を用いることにより、透過型平面ディスプレイを実現
することができる。さらに、電子源からの電子放出は方
向の揃った微細構造部分から行われるため、マルチソー
スでありかつ電子の方向性が揃った冷陰極となる。この
構成により、従来より簡単な構成で、電子源の電子放出
しきい値の低下、放出電流値の増大と安定化を実現で
き、平面ディスプレイの低電圧化、低コスト化を図るこ
とができる。
【0096】
【発明の効果】以上のように、本発明の冷陰極形成方法
は、ターゲット材及び基板を反応室内に配置し、前記タ
ーゲット材にビーム光を照射することにより前記ターゲ
ット材近傍に形成される高温高圧領域のサイズが最適と
なるように、前記反応室に導入する雰囲気ガスの圧力
(P)及び、前記基板と前記ターゲット材との間の距離
(D)を調整し、前記反応室に前記圧力で前記雰囲気ガ
スを導入しながら、前記ターゲット材にビーム光を照射
することにより励起し、脱離した前記ターゲット材に含
まれる物質を前記基板上に堆積して冷陰極を形成する。
この構成により、従来の形成方法より容易に、自己整合
型結晶構造を得ることができる。
【0097】また、本発明によれば、電子放出部を、上
述の冷陰極形成方法により形成された、電子放出性材料
の結晶配向性薄膜から成る冷陰極から構成される薄膜状
電子源とすることにより、従来より簡単な構成で低コス
ト化を図ることができる。この構成の電子放出素子は、
素子の形成に際しその再現性が良く、素子間のバラツキ
も少ないことから、マルチソースとして電流密度がかせ
げるため、高輝度・高精細なCRT用電子源として用い
ることができる。さらに、基板を透明とし、結晶性配向
膜を透明導電体とすることにより、透過型平面ディスプ
レイの実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子放出素子の構
造を示す断面図
【図2】(a) 本発明の方法に使用する薄膜製造装置
を示す構成図 (b) 堆積基板とターゲットとの間における現象を説
明するための図
【図3】本発明の実施の形態1に係る方法により得られ
た薄膜の電子顕微鏡写真
【図4】本発明の実施の形態1に係る方法により得られ
た薄膜のX線回折測定結果を示す図
【図5】結晶構造制御のメカニズムを説明するための図
【図6】本発明の実施の形態2に係る電子放出素子の構
造を示す断面図
【図7】本発明の実施の形態3に係る平面ディスプレイ
の構造を示す断面図
【図8】本発明の実施の形態4に係る透過型平面ディス
プレイの構造を示す断面図
【図9】従来の電界効果型電子放出素子の一例を示す概
略的部分断面図
【符号の説明】
11、71 基板 12、62 絶縁層 13、63 金属層 14、65 結晶配向性薄膜 64 干渉層 72、82 冷陰極 73、83 第一絶縁膜 74、84 第一ゲート電極 75、85 第二絶縁膜 76、86 第二ゲート電極 77、87 蛍光体層 78 透明導電膜 79、89 面板 81 透明基板 88 アノード電極 101 反応室 102 超高真空排気系 103 マスフローコントローラ 104 ガス導入ライン 105 ガス排気系 106 ターゲットホルダ 107 ターゲット 108 パルスレーザ光源 109 堆積基板 110 レーザ導入窓 111 スリット 112 レンズ 113 反射鏡 114 プルーム
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鈴木 信靖 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 牧野 俊晴 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 堀 義和 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5C031 DD09 DD15 DD17 5C036 EE01 EE03 EF01 EF06 EF08 EG02 EG12 EH11

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ターゲット材及び基板を反応室内に配置
    する工程と、前記ターゲット材にビーム光を照射するこ
    とにより前記ターゲット材近傍に形成される高温高圧領
    域のサイズが最適となるように、前記反応室に導入する
    雰囲気ガスの圧力(P)及び、前記基板と前記ターゲッ
    ト材との間の距離(D)を調整する工程と、前記反応室
    に前記圧力で前記雰囲気ガスを導入しながら、前記ター
    ゲット材にビーム光を照射することにより励起し、脱離
    した前記ターゲット材に含まれる物質を前記基板上に堆
    積する工程と、を具備することを特徴とする冷陰極形成
    方法。
  2. 【請求項2】 前記雰囲気ガスの圧力(P)及び、前記
    基板と前記ターゲット材との間の距離(D)は、PDn
    =一定(nは2〜3程度)にしたがって調整されること
    を特徴とする請求項1記載の冷陰極形成方法。
  3. 【請求項3】 前記雰囲気ガスが、不活性ガスであるこ
    とを特徴とする請求項1または2記載の冷陰極形成方
    法。
  4. 【請求項4】 前記雰囲気ガスの圧力が、0.1〜10
    Torrの範囲であることを特徴とする請求項1から3
    のいずれかに記載の冷陰極形成方法。
  5. 【請求項5】 前記ターゲット材を構成する材料が、少
    なくとも2種類以上の組成から成ることを特徴とする請
    求項1から4のいずれかに記載の冷陰極形成方法。
  6. 【請求項6】 前記ターゲット材を構成する材料が、L
    aB6 、TiC、SiC、及びSnC等の化合物である
    ことを特徴とする請求項5記載の冷陰極形成方法。
  7. 【請求項7】 前記ターゲット材を構成する材料が、T
    iN、BN、SrN、ZrN、及びHfNに代表される
    窒化物であることを特徴とする請求項5記載の冷陰極形
    成方法。
  8. 【請求項8】 前記ターゲット材を構成する材料が、I
    2 3 、SnO2 、ITO、ZnO、TiO2 、WO
    3 、及びCuAlO2 のいずれかの透明導電体であるこ
    とを特徴とする請求項5記載の冷陰極形成方法。
  9. 【請求項9】 電子放出部が、請求項1から8のいずれ
    かに記載の方法で形成された、電子放出性材料の結晶配
    向性薄膜から成る冷陰極から構成されることを特徴とす
    る電子放出素子。
  10. 【請求項10】 電子放出部が、請求項1から8のいず
    れかに記載の方法で形成された、電子放出性材料の結晶
    配向性薄膜から成り、導電膜または抵抗膜から成る干渉
    層を介して基板上に形成されていることを特徴とする電
    子放出素子。
  11. 【請求項11】 冷陰極を構成する結晶配向性薄膜が、
    LaB6 、TiC、SiC、及びSnC等の化合物であ
    ることを特徴とする請求項9または10記載の電子放出
    素子。
  12. 【請求項12】 冷陰極を構成する結晶配向性薄膜が、
    TiN、BN、SrN、ZrN、及びHfNに代表され
    る窒化物であることを特徴とする請求項9または10記
    載の電子放出素子。
  13. 【請求項13】 請求項9から12のいずれかに記載の
    電子放出素子を電子源としたことを特徴とするCRT。
  14. 【請求項14】 請求項9から12のいずれかに記載の
    電子放出素子を電子源としたことを特徴とする平面ディ
    スプレイ。
  15. 【請求項15】 透明基板と、前記透明基板上に、請求
    項1から8のいずれかに記載の方法で形成された、電子
    放出性材料の結晶配向性薄膜から成る冷陰極とを備えて
    いることを特徴とする電子放出素子。
  16. 【請求項16】 透明基板と、前記透明基板上に、請求
    項1から8のいずれかに記載の方法で形成された、電子
    放出性材料の結晶配向性薄膜から成り、導電膜または抵
    抗膜から成る干渉層を介して基板上に形成されているこ
    とを特徴とする電子放出素子。
  17. 【請求項17】 冷陰極を構成する結晶配向性薄膜が、
    In2 3 、SnO2ITO、ZnO、TiO2 、WO
    3 、及びCuAlO2 からなる群より選ばれた透明導電
    体であることを特徴とする請求項15または16記載の
    電子放出素子。
  18. 【請求項18】 請求項15から17のいずれかに記載
    の電子放出素子を電子源としたことを特徴とする透過型
    平面ディスプレイ。
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