JP2002154475A - トランサムスターン型船尾形状及びその造波抵抗低減方法 - Google Patents
トランサムスターン型船尾形状及びその造波抵抗低減方法Info
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Abstract
抗となり、多大な馬力増加と燃費の増加を招いていた。 【解決手段】 トランサムスターンを有する、航海速力
がフルード数0.2以上0.4以下の排水量型船舶の船尾部の
船体中心線における船底面形状であって、船尾端5から
一定距離前方の位置において変曲点2を設け、この変曲
点2を境に前方に流速の遅い領域を形成すると共に、該
変曲点2から後方へ流れを加速する領域を形成すること
により該変曲点2の前後で流場を変化させたうえ、船尾
端5の下端5aを満載計画喫水線LWL付近に位置せしめ
ることにより造波抵抗を低減させるようにしたトランサ
ムスターン型船尾形状である。
Description
ーンを有する一般商船(航海速力がフルード数0.2以上
0.4以下の排水量型船舶)において船尾造波抵抗を低減
できるトランサムスターン型船尾構造に関する。トラン
サムスターンは、図12(b)で示すような船尾の最後
端が切り立った平面(船尾端)5をもった形状の船尾で
ある。図12(a)はクルーザースターン型の船尾であ
る。本明細書でフルード数(Fn)とは、Fn=V/√(L
WL・g) である。ここに、Vは船速(m/s),LWL は水
線長さ(m)、gは重力加速度(m/s2)を示す。
船(フルード数0.4以上)においては、抵抗低減および
動揺低減の観点より、船尾端から突出した可動板(トリ
ムタブ)や船尾船底に設けるウエッジを装備した例が数
多く存在する(例えば特開平9−52591号公報や特
開昭62−8891号公報参照)。
高速であるため、船尾端に設けたトリムタブおよびウエ
ッジの発生する揚力により、船尾端を大きく持ち上げる
力を発生させることができる。超高速船においては、船
尾没水深度が大きいほど船尾造波抵抗が大きいため、こ
のトリムタブやウエッジが発生する揚力により船尾端が
上昇することで、船尾造波抵抗は減少する。
商船と呼ばれる排水量型で航海速力がフルード数0.2〜
0.4の範囲の船舶においては、一般的に超高速船と比較
して、相対的に船速が遅く、排水量も大きいためトリム
タブやウエッジの揚力によって船尾端を大幅に持ち上げ
ることは難しく、航走状態変化を伴うことにより船尾造
波を低減させる効果はないと考えられてきた。
に近いため2次元形状のトリムタブやウエッジを比較的
容易に装備できるが、一般商船の船尾端断面形状は、通
常凸型の曲線で構成された断面となっているため2次元
形状のものを装備すると不連続部が生じ、不連続部にお
ける抵抗が増加するという問題が生じる。
る排水量型の一般商船であって航海速力がフルード数0.
2以上0.4以下の船舶においては、トランサム船尾端より
発生する船尾造波が大きくなり、場合によっては船尾造
波の波頂より波崩れを起こし、船尾トランサム部に死水
域を生成することもある。これらの現象を船舶の推進性
能の観点からみると、波崩れを伴った船尾造波は大きな
船尾造波抵抗となり、多大な馬力増加と燃費の増加を招
く。そのため、船尾造波を減少させることは船舶性能設
計者にとって大きな課題となっている。
船舶の船尾端に近い位置で流場を変化させて船尾造波を
低減させることを目的として、数々の水槽試験を行って
得られた船型パラメータに基づき、一般商船に対する最
適な船尾形状を提供するものである。
め、本願発明方法は、トランサムスターンを有する、航
海速力がフルード数0.2以上0.4以下の排水量型船舶の船
尾部の船体中心線における船底面形状であって、船尾端
から一定距離前方の位置において変曲点を設け、この変
曲点を境に前方に流速の遅い領域を形成すると共に、該
変曲点から後方へ流れを加速する領域を形成することに
より該変曲点の前後で流場を変化させたうえ、船尾端の
下端を満載計画喫水線付近に位置せしめることにより造
波抵抗を低減させるようにしたことを特徴とするトラン
サムスターン型船尾形状における造波抵抗低減方法であ
る。
れが変曲点から後方へ向かって加速されて船尾端まで流
れていくことから、波崩れの発生が抑制される上に、船
尾端下端から加速された流れが下方へ流れ出ていくため
船尾造波も抑制され、これらから船体抵抗が大幅に低減
する。
尾形状は、トランサムスターンを有する、航海速力がフ
ルード数0.2以上0.4以下の排水量型船舶の船尾部の船体
中心線における船底面形状であって、船尾端から一定距
離前方の位置において変曲点を設け、この変曲点を境に
前方に流速の遅い領域を形成すべく船底面をなだらかな
曲面もしくは平面で後方へ上昇させると共に、該変曲点
から後方へ流れを加速する領域を形成すべく船尾端から
0.1〜10%Lpp(垂線間長さ)の距離をもち且つ水平ない
し下向き流れを生成するように後方へ水平ないし下方傾
斜した船底面を有し、その船尾端の下端を満載計画喫水
線付近に位置せしめたことを特徴とする。
間長さ)の距離は、遅い流れを加速するに十分な距離で
あり、波崩れや造波現象を発生させないように働く。
が直線もしくはおだやかな曲線をもつ底面形状であり、
その変曲点から船尾端下端を結ぶ線の満載計画喫水線に
対する角度αを0〜20度の水平ないし下方傾斜度とし
たり、また、変曲点における船底面前後の接線のなす交
角βを140〜180度未満の範囲に設定したり、また、船体
中心線上のベースラインから船尾端下端までの高さとベ
ースラインから満載計画喫水線までの高さとの比γを0.
95〜1.2の範囲に設定したりすれば、上記波崩れの防止
や造波防止作用が一層増大し、また、船体中心線上の2
次元形状が、船体中心線上の船尾端下端高さと同じであ
るかもしくはそれ以上であって且つ舷側に向かって滑ら
かにある関数をもって変化させ、3次元形状とした場合
も同様に波崩れの防止や造波防止作用が一層増大する。
速する領域を形成すべく0.1〜10%Lpp(垂線間長さ)だ
け船体を延長してトランサムスターン型船尾端をもつ船
尾形状として、本願発明を既存船まで拡大して同様な作
用を得ることができる。
て図面を参照しながら説明する。
ムスターン型船尾を有する、一般商船と呼ばれる排水量
型で航海速力がフルード数0.2〜0.4の範囲の船舶(Lpp
が50m以上の船舶が好適)であり、かかる船舶は、一
般的に超高速船と比較して、相対的に船速が遅く、排水
量も大きいためトリムタブやウエッジの揚力によって船
尾端を大幅に持ち上げることは難しく、航走状態変化を
伴うことにより船尾造波を低減させる効果はないと考え
られてきた船である。
抵抗低減の技術原理を説明するための図であって、
(a)は船体中心線における船尾船体の断面形状を示
し、(b)は通常型船尾形状(図12(c))を有する
船舶と本願船尾形状を有する船舶の長手方向の圧力差分
布6を示す。
のある所定位置(船尾端から前方0.1〜10%Lppの位置)
に変曲点2があり、この変曲点2を境に前方の船底面
(前方船底面)3がなだらかな曲面もしくは平面で後方
へ上昇している。そして、変曲点2から船尾へ向かう流
れを加速するに十分な距離、すなわち、船尾端から前方
0.1〜10%Lppの距離をもち且つ水平ないし下向き流れを
生成するように後方へ水平ないし下方傾斜した船底面
(後方船底面)4を有し、その船尾端5の下端が満載計
画喫水線LWL付近に位置せしめられている。なお、後述
することからも明らかなように、上記「変曲点」とは、
船尾部の船体中心線における船底面形状において、流場
変化を生じさせるためのナックル状もしくはナックルに
フィレットをかけた形状変化点である。
尾形状を有する船舶と比較して実線で示す如く、変曲点
2の前方位置では圧力が高くなり、従って(静圧と動圧
の和が一定というベルヌーイの定理から)この前方位置
では通常型船尾形状を有する船舶と比較して流速の遅い
領域が形成されることになる。一方、変曲点2から船尾
端5までの後方位置では通常型船尾形状を有する船舶と
比較して、圧力が低くなり、従って後方位置では、流れ
を加速する領域が形成されることになる。
ることになる。しかも、船尾端の下端が満載計画喫水線
LWL近くにあるので加速された流れが造波現象を生起し
難くなり、また波崩れも生じ難くなるため全体として船
尾造波抵抗を大幅に減少できるものである。
後方船底面4とのなす角度βは、後方船底面が下方傾斜
することにより多少抗力が増加しても、これが前記造波
抵抗減少効果を損なうことがないように後述するように
決定される。
する。
の船尾プロファイル(船体側断面)を示すが、船尾端よ
り前方L(=0.1〜10%Lpp)の位置で変曲点2を有し、
その変曲点2がナックル(a図)もしくはナックルにフ
ィレットをかけた形状(b図)となっている。この変曲
点2より船尾端5までの間が図2(a)のように直線に
形成されるか、或いは図2(b)のようになだらか曲線
をもつ形状に形成されている。なだらかな曲線の場合に
は、上に凸の湾曲状(実線)か、下に凸の湾曲状(想像
線)のいずれかに形成される。
下端5aとを結ぶ線(船底線)が満載計画喫水線となす
角度をαとした場合、船底線が満載計画喫水線に平行な
いし満載計画喫水線よりも下方20度以下の角度をもつの
が好ましい。これは、船尾端から流れ出る加速された水
流を水平ないし下方へ向けることにより、波崩れや造波
を抑制するようにしたものである。
置に変曲点2を設けたのは、前述したとおり、この変曲
点2の前方からの遅い流れを、船尾端5までの間で十分
加速するための距離をとるためであり、変曲点2を境に
して前後の流場を変化させるためである。
しているが、図3〜図5は、これの3次元形状の3つの
例を示す。
船体中心線の角度αと同じ、つまり、角度αが幅方向に
一定となるような形状例を示している。点線は変曲点位
置2における断面形状(変曲点断面)を示している。
船体中心線の角度αより幅方向に減少し、ある位置で変
曲点位置における断面と船尾端5とが一致する形状であ
る。
角度αが幅方向に減少し、ある位置で角度αが反対方向
になる形状であり、反対方向になる部分の平面形状が滑
らかな曲線となる。
P1〜P3位置における平面形状を示しており、図3の
場合の平面形状P1は、変曲点断面位置2から船尾端5
に向けて広がった幅を有する。図4の場合の平面形状P
2は、変曲点断面位置2と平行に幅が一定のまま船尾端
5まで延びている。図5の場合の平面形状P3は、変曲
点断面位置2から滑らかな曲線で船尾端5まで延びる形
状となり、これにより流れが船体から離れるのを防止で
きる。
が、船体中心線上の船尾端下端高さと同じであるかもし
くはそれ以上であって且つ舷側に向かって滑らかにある
関数をもって変化させ、3次元形状となるような船尾形
状が好ましい。
の接線と船尾プロファイルの接線とのなす角度β、即ち
変曲点2における船底面前後の接線のなす交角βを140
〜180度未満の範囲に設定するのがよい。この範囲であ
ると、抗力よりも造波抵抗減少効果の方が大きくなるか
らである。
ラインから船尾端下端までの高さHaとベースラインから
満載計画喫水線LWLまでの高さHbとの比γ(Ha/Hb)を0.
95〜1.2の範囲に設定するのがよい。船尾端下端高さを
満載計画喫水線LWL近くにもってくることで、船尾端5
の下端からの加速された流れとの協働作用で波崩れや造
波の生起を抑制することができる。
計時或いは就航中船舶の船尾端よりも延長した形で実施
することもできる。すなわち、既存の船舶の船尾端5’
からこの位置を変曲点2として流れを加速するためのト
ランサムスターン船尾船体7を付加的に延設して本発明
と同様な効果を得ることができる。或いは、図9(b)
において斜線で示す三角形断面の付加部材8を既存のト
ランサムスターン船尾端5’に付設してもよい。いずれ
の場合もα,βおよび加速に必要な距離Lは同じであ
る。
やウエッジのようにその揚力によって船尾端を持ち上げ
抵抗を減少させるものではなく、船尾で流場を変化させ
ることで波崩れの抑制や造波の抑制を図ることによっ
て、船尾造波抵抗を大幅に減少させることができる。
10は縦軸に造波抵抗係数、横軸にフルード数をとって
示すが、従来の船型(原型)に比し本発明の船型は係数
が減少し、しかもフルード数が大きくなるにつれてその
効果が増大する。
示すが、その効果は馬力比で4〜10%もの低減効果が
期待できる。
であって、(a)は船体中心線における船尾船体の断面
形状を示し、(b)は通常型船尾形状を有する船舶と本
願船尾形状を有する船舶の長手方向の圧力差分布を示
す。
部の2次元形状を示す断面図である。
度αと同じ、つまり、角度αが一定となるような3次元
形状をした船尾部の正面図である。(b)はその角度変
化の説明図である。
度αより幅方向に減少し、ある位置で変曲点断面と船尾
端とが一致する3次元形状をした船尾部の正面図であ
る。(b)はその角度変化の説明図である。
度αが幅方向に減少し、ある位置で角度αが反対方向に
なる3次元形状をした船尾部の正面図である。(b)は
その角度変化の説明図である。
3断面における平面形状図である。
を140〜180度未満の範囲に設定した場合の図である。
での高さHaとベースラインから満載計画喫水線LWLまで
の高さHbとの比γ(Ha/Hb)を0.95〜1.2の範囲に設定し
た場合の図である。
場合の実施形態図である。
較で示した図である。
図である。
(b)は本願が対象とするトランサムスターン型の船尾
形状で、(c)はこのトランサムスターンの通常型船尾
形状の側面図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 トランサムスターンを有する、航海速力
がフルード数0.2以上0.4以下の排水量型船舶の船尾部の
船体中心線における船底面形状であって、船尾端から一
定距離前方の位置において変曲点を設け、この変曲点を
境に前方に流速の遅い領域を形成すると共に、該変曲点
から後方へ流れを加速する領域を形成することにより該
変曲点の前後で流場を変化させたうえ、船尾端の下端を
満載計画喫水線付近に位置せしめることにより造波抵抗
を低減させるようにしたことを特徴とするトランサムス
ターン型船尾形状における造波抵抗低減方法。 - 【請求項2】 トランサムスターンを有する、航海速力
がフルード数0.2以上0.4以下の排水量型船舶の船尾部の
船体中心線における船底面形状であって、船尾端から一
定距離前方の位置において変曲点を設け、この変曲点を
境に前方に流速の遅い領域を形成すべく船底面をなだら
かな曲面もしくは平面で後方へ上昇させると共に、該変
曲点から後方へ流れを加速する領域を形成すべく船尾端
から0.1〜10%Lpp(垂線間長さ)の距離をもち且つ水平
ないし下向き流れを生成するように後方へ水平ないし下
方傾斜した船底面を有し、その船尾端の下端を満載計画
喫水線付近に位置せしめたことを特徴とするトランサム
スターン型船尾形状。 - 【請求項3】 変曲点より船尾端までの間が直線もしく
はおだやかな曲線をもつ底面形状であり、その変曲点か
ら船尾端下端を結ぶ線の満載計画喫水線に対する角度α
を0〜20度の水平ないし下方傾斜度とした請求項2記
載のトランサムスターン型船尾形状。 - 【請求項4】 変曲点における船底面前後の接線のなす
交角βを140〜180度未満の範囲に設定した請求項2又は
3いずれか1項に記載のトランサムスターン型船尾形
状。 - 【請求項5】 船体中心線上のベースラインから船尾端
下端までの高さとベースラインから満載計画喫水線まで
の高さとの比γを0.95〜1.2の範囲に設定した請求項2
〜4いずれか1項に記載のトランサムスターン型船尾形
状。 - 【請求項6】 船体中心線上の2次元形状が、船体中心
線上の船尾端下端高さと同じであるかもしくはそれ以上
であって且つ舷側に向かって滑らかにある関数をもって
変化させ、3次元形状となる請求項2〜5いずれか1項
に記載のトランサムスターン型船尾形状。 - 【請求項7】 既存船の船尾端から後方へ流れを加速す
る領域を形成すべく0.1〜10%Lpp(垂線間長さ)だけ船
体を延長してトランサムスターン型船尾端をもつ船尾形
状とした請求項2〜6いずれか1項に記載のトランサム
スターン型の船尾形状。
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