JP2002112799A - 癌疾患の予後判定法 - Google Patents
癌疾患の予後判定法Info
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Abstract
プルを用い簡便で、迅速、安価に癌患者の予後が良好か
否かを診断することのできる技術を確立する。 【解決手段】癌部または非癌部組織検体より得られたD
NA繰り返し配列中に存在する脱メチル化DNA数を測
定し、その割合に基づいて癌疾患の予後が良好か否かを
判断する。
Description
後が良好か否か、具体的には癌再発の危険性を判定する
のに有用な方法に関する。さらに本発明は当該方法に用
いられるDNAマーカー配列、及びオリゴヌクレオチド
に関する。本発明の方法によれば、治療前に予め被験者
(患者)の癌再発の確率が予測できるので、これを参考
にして個々の患者に適した治療方法並びに治療後のアフ
ターケアを検討することが可能となる。
を予想することは臨床的に大変重要なことである。この
ため従来より、癌患者の遺伝子異常を中心に種々の因子
について研究されており、食道癌や乳癌ではc-erb B癌
遺伝子及びint-2癌遺伝子の増幅が癌の再発・転移など
の臨床特性と相関するという知見から、当該癌遺伝子が
マーカーとして癌患者の治療予後の判定に利用されてい
る。例えば、食道癌では、c-erbB癌遺伝子増幅症例及
びint-2癌遺伝子増幅症例では術後累積生存率が低く、
さらにint-2癌遺伝子増幅症例では、高い確率で術後遠
隔臓器への転移が認められている。しかしながら、肝細
胞癌症例においては既知の癌遺伝子の増幅と再発・転移
や術後累積生存率などの臨床特性との間に密接な相関関
係は見出されておらず、従来報告されている遺伝子異常
だけでは、正しく患者の手術後の予後を判断することが
出来ない。
(Hatada, I., et al., Proc. Natl.Acad. Sci. USA,
88, 9523-9527 (1991))を用いて、ヒト癌細胞株からD
NAを検出し、染色体8q21に局在する200コピーの13k
bの核酸中の繰り返し配列の一部分が明らかにされ、該
繰り返し配列中に生じるNotI制限酵素の認識部位に
おける脱メチル化現象が幾つかのタイプの癌の発生また
は進展に関連しているという可能性が報告されている
(Miwa,W.,et al. Electrophoresis, 16 (2) 227-232(1
995))。
法を用いて、ヒト肝細胞癌(HCC)患者の癌組織検体から
NotI制限酵素認識部位を有する1.4kbのDNA繰
り返し配列を有する新規遺伝子(DE−1)が単離され
た。該DE-1遺伝子は、健常なヒト肝細胞においてはメチ
ル化されていたが、ヒト肝細胞癌においては高い頻度を
持ってCpGジヌクレオチドのシトシン残基で脱メチル
化されており、この遺伝子領域のDNA低メチル化が細
胞の分子量化と肝癌発生の両方において何らかの役割を
演じているという可能性が報告されている(Nagai, H.,e
t al.,Gene, 237 (1) 15-20 (1999))。
S法により、肝癌患者のDNAを制限酵素NotI−PvuII
で切断し、更にPstIでイン・サィツゥ(in situ)に切断
した断片をポリアクリルアミドゲルにて分離して得られ
るスポットの変化数が肝癌患者の術後の予後と相関して
いることを報告している(Itano, O., et al., Oncogen
e, 19, 1676-1683 (2000))。
あるPCR法は、組織中RNAの発現量やウイルスDN
A量などを定量測定する方法としても応用され、鋳型依
存性核酸ポリメラーゼプローブを用いてPCR反応をリ
アルタイムでモニターしたカイネティックス分析によ
り、2倍の遺伝子量の差を検出できる高精度の定量PC
R法が開発されている(均質検定システム:特許登録番
号第2825976号、ABI PRISM 7700 Sequence Detection S
ystem User's Manual: 5.10.5.13(1996))。
PCR検出法(TaqManPCR法)と呼ばれ、各種ウイル
ス遺伝子の測定に応用されている(EBウイルス遺伝
子:特開平11-137300号、HCVウイルス遺伝子:特開
平11-103899号、HBVウイルス遺伝子:特開平11-1038
97号)。さらに該方法は、男女のX染色体の差や癌抑制
遺伝子の欠失の判定に応用され(Boulay, J.L., et al.,
Biotechniques, 27, 228-230 (1999))、また末梢血か
ら抽出したDNAによって癌家系内の保因者同定が、L
OH法やFISH法より簡便に行えることも報告されて
いる(Laurendaeau,I., et al., Clin. Chem., 45(7) 98
2-986 (1999))。
法を用いることにより、サンプル中のDNAの非メチル
化、メチル化を簡単に測定できることが報告されている
(Eads, CA. et al., Nucleic Acids Res.,28(8) E32 (2
000): MethyLight : a high-throughput assay to meas
ure DNA methylation.)。
後の予後の判定には、上記RLGS法は、2度の制限酵
素消化、ゲル電気泳動並びに放射線標識したdNTPs
或いはハイブリダイゼーション・プローブなど、手間の
かかる操作が必要であるため、簡便な方法とは言い難
い。
度の検出は、例えば癌部と非癌部の2種類の組織を対象
として両者のメチル化または脱メチル化の程度を比較す
ることによって行っていた。しかしこの方法は、用いる
組織によってDNA増幅に違いがあるため(例えば、癌
部ではメチル化または脱メチル化部位が増幅しているの
に対し、非癌部では増幅していない等の相違)、単純な
方法で、メチル化または脱メチル化の程度を比較するこ
とができないという問題があった。
して上記従来の問題を解決し、少量のDNAサンプルを
用いて短時間で簡便な操作で癌患者の治療予後の診断を
可能とする方法を提供することを目的とする。具体的に
は、本発明は癌組織中のDNAのメチル化または脱メチ
ル化の程度を簡便な方法で精度良く測定することによ
り、癌の予後を診断する方法を提供することを目的とす
る。さらに本発明は、癌患者の手術後の治療方針を判断
したり決定するのに役立つ臨床上重要な情報を取得する
のに有用な診断・判定方法を提供することを目的とす
る。
達成するために鋭意研究した結果、癌部組織より得られ
るDNAくり返し配列中に存在する脱メチル化DNAの
数と癌治療の予後(癌再発の確率)との間に一定の相関
関係があることを見いだし、当該脱メチル化DNAの数
を指標にすることによって癌患者の手術の予後が良好か
否かを、手術前に予め診断できることを確認した。そし
て、本発明者は、当該方法を実施することによって得ら
れる情報は、癌患者、特に肝癌患者の手術方法並びに手
術後の治療方針(アフターケア)を判断し、かつ決定す
ることに有効に役立つことを確信して、本発明を完成す
るにいたった。
る、癌患者の予後を診断する方法である: (1)癌部または非癌部組織より得られたDNA繰り返
し配列中に存在する脱メチル化DNA数を測定し、該D
NA数に基づいて癌疾患の予後を診断する方法。 (2)DNA繰り返し配列がセントロメリック・クラス
ター領域、またはタンデムリピート領域に由来するもの
である、(1)記載の癌疾患の予後を診断する方法。 (3)癌部組織より得られたDNA繰り返し配列中に存
在する脱メチル化DNA数をTaqManPCR法を用
いて検出・測定することを特徴とする、(1)又は
(2)に記載の癌疾患の予後を診断する方法。 (4)DNA繰り返し配列がメチル化感受性制限酵素認
識部位を有するものであることを特徴とする(1)乃至
(3)のいずれかに記載の癌疾患の予後を診断する方
法。 (5)メチル化感受性制限酵素がNotI、BglI
、FseI 、PshAI及びSfiIよりなる群から
選択されるいずれかの制限酵素から選択されるものであ
る、(4)記載の癌疾患の予後を診断する方法。 (6)メチル化感受性制限酵素がNotIであることを
特徴とする、(4)に記載の癌疾患の予後を診断する方
法。 (7)DNA繰り返し配列が配列番号1〜4に示される
DNA配列のいずれか少なくとも1つのDNA配列であ
ることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載
の癌疾患の予後を診断する方法。 (8)癌部組織より得られたDNA繰り返し配列をメチ
ル化感受性制限酵素で切断し、得られたDNA断片にア
ダプターをライゲーションし、このアダプターのDNA
配列を含むフォワード・プライマーと上記メチル化感受
性制限酵素で切断されたDNA断片を特異的に増幅する
ことのできるリバース・プライマーを用いて、メチル化
感受性制限酵素認識部位を含むDNAを特異的に増幅
し、次いでフォワード・プライマーとリバース・プライ
マーの間に設定したプローブにより増幅したDNAを定
量することによって、DNA繰り返し配列中の脱メチル
化DNAの数(NC-1)を定量する工程a:DNA繰り返し
配列中のメチル化感受性制限酵素認識部位を含まない部
分に特異的なフォワード・プライマー、リバース・プラ
イマー及びプローブを用いて、増幅したDNAを定量す
ることによって、上記DNA繰り返し配列の数(NC-2)を
定量する工程b:並びに工程aで定量した脱メチル化し
たDNA数(NC-1)と工程bで定量したDNA繰り返し配
列の数(NC-2)の比から脱メチル化の割合〔(NC-1)/(NC-
2)x100(%)〕を算出する工程cからなり、工程cに
よって得られた脱メチル化の割合〔(NC-1)/(NC-2)x10
0(%)〕に基づいて癌疾患の予後を診断する方法。 (9)配列番号5で示されるオリゴヌクレオチドをフォ
ワード・プライマーとして、配列番号6で示されるオリ
ゴヌクレオチドをプローブとして、また配列番号7で示
されるオリゴヌクレオチドをリバース・プライマーとし
て用いて工程aを行い、また配列番号8で示されるオリ
ゴヌクレオチドをフォワード・プライマーとして、配列
番号9で示されるオリゴヌクレオチドをプローブとし
て、また配列番号10で示されるオリゴヌクレオチドを
リバース・プライマーとして用いて工程bを行うことを
特徴とする、(8)に記載の癌疾患の予後を診断する方
法。 (10)脱メチル化の割合〔(NC-1)/(NC-2)x100
(%)〕が1%未満の場合を癌患者の予後が良好とし、1
%以上を予後不良として判断することからなる、(8)
または(9)に記載の癌疾患の手術の予後を診断する方
法。 (11)癌が非上皮系癌細胞に起因する癌である(1)
乃至(7)のいずれかに記載の癌疾患の予後を診断する
方法。 (12)癌が肝細胞癌、神経膠芽腫、骨髄腫、胃癌、膵
臓癌、脳腫瘍、大腸癌、肺細胞癌、腎癌、膀胱癌、乳
癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌及び白血病よりなる群
から選択されるいずれかである、(1)乃至(10)の
いずれかに記載の癌疾患の予後を診断する方法。 (13)癌が肝細胞癌である(1)乃至(10)のいず
れかに記載の癌疾患の予後を診断する方法。 (14)癌治療の手術前に実施することを特徴とする、
(1)乃至(13)のいずれかに記載の癌疾患の予後を
診断する方法。
めに用いられるDNAマーカー配列であり、これらとし
ては配列番号1〜4に記載されるオリゴヌクレオチドを
例示することができる。
患の予後を診断する方法に用いられるヌクレオチドのセ
ットであって、かかるヌクレオチドとして下記のものを
例示することができる: <工程a> フォワードプライマー:配列番号5で示されるオリゴヌクレオチド、 プローブ :配列番号6で示されるオリゴヌクレオチド、 リバースプライマー :配列番号7で示されるオリゴヌクレオチド、 <工程b> フォワードプライマー:配列番号8で示されるオリゴヌクレオチド、 プローブ :配列番号9で示されるオリゴヌクレオチド、 リバースプライマー :配列番号10で示されるオリゴヌクレオチド。
象として、これから得られるDNAの繰り返し配列中の
メチル化部位又は脱メチル化部位の数と、DNA繰り返
し配列の数を比較することによって得られる情報に基づ
いて、癌患者の治療後(手術後)の予後が良好か否か、
再発がないか否かを、簡単に且つ高い信頼性をもって判
断することができる。
用いられるDNAは、ヒト癌患者より得られる癌組織ま
たは非癌組織から常法により取得でき、例えば組織をプ
ロティナーゼKにより溶解し、フェノール−クロロホル
ムにより分離しエタノールにより抽出されたDNAを用
いることができる。該DNAの抽出は、癌患者の癌診断
後の治療開始前或いは手術前に患者の生検組織から抽出
されたDNA、或いは手術中に摘出された癌部または非
癌部の組織から抽出されたDNA、或いは末梢血液から
単離されたDNAを用いることができる。後記実施例に
示されるTaqManPCRを用いる場合、例えば肝細
胞癌の患者の場合は手術前に予め生検組織から所望のD
NAが取得できるため、本発明の方法から得られる情報
が手術後の予後の治療方針の決定には勿論、手術そのも
のの方針の決定に重要な情報となり得る。
配列中の脱メチル化DNAは、上記ヒト組織から得られ
たDNAを脱メチル化DNAの配列を認識するメチル化
感受性認識制限酵素を用いて消化することによって取得
できる。ここでメチル化感受性認識制限酵素としては、
制限酵素NotI、BglI 、FseI 、PshAI
及びSfiIなどが例示できるが、特に制限酵素No
tIが好適に例示される。
繰り返し配列中の脱メチル化DNAの数を測定する領域
は、検体中のDNA配列中で数百塩基から数千塩基から
なるDNA配列が繰り返されてなる領域、すなわちDN
A繰り返し配列断片の領域である。本発明の方法は、こ
のDNA繰り返し配列に存在する脱メチル化DNAの数
を検出することを含むため、本発明が対象とするDNA
繰り返し配列は、数百塩基から数千塩基のDNA配列が
繰り返されるDNA配列であれば、何れのDNA繰り返
し配列領域であってもよく、例えば、セントロメリック
・クラスター領域、またはタンデムリピート領域などが
例示できる。より具体的には、例えば前記DNA繰り返
し配列として配列番号1〜配列番号4に示されるDNA
配列が例示できる。また本診断方法で用いられる検出方
法は、前記DNA繰り返し配列中に含まれる脱メチル化
DNAの数が測定できる方法であるかぎり、特に制限さ
れない。
イゼーション法、TaqManプローブを用いる定量的
リアルタイムPCR検出法などが例示できる。ここで、
サザンハイブリダイゼーション法においては、例えば患
者の癌部及び非癌部組織からDNAを取得した後、No
tI等のメチル化感受性認識制限酵素で消化してDNA
断片を得、電気泳動した後、得られた脱メチル化DNA
配列(GCリッチDNA配列)を標識してプローブとし
て、これをハイブリダイズさせて目的のDNA断片を検
出する方法を用いることができる。
よれば、癌部組織のみを用いて目的のDNA繰り返し配
列中の脱メチル化DNAの数を測定することにより、本
発明の診断方法を実施することができる。定量的リアル
タイムPCR検出法は本質的には、公知の方法、例えば
特許第2825976号公報に記載の方法に従うか、PEバイ
オシステムズ社製のABI PRISM 7700配列決定システム・
ユーザーマニュアルに従い実施できる。
おいて用いられる、プライマーとしては特に制限されな
いが、例えばフォワード・プライマーとして、配列番号
5に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙
げることができる。該プライマー配列は、癌患者の組織
検体から制限酵素で切断され単離されたDNA繰り返し
配列に含まれる脱メチル化DNAの近傍配列を認識でき
る配列であれば、特に制限されず、例えばメチル化感受
性制限酵素が認識するGCリッチなDNA配列を認識す
るプライマー配列からなる、連続する約15〜40塩基
から成る塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが例示で
きる。
例えばNotI(GCGGCCGC配列を認識)などの制限酵素に
より切断されるGCリッチな領域(DNA配列中、シト
シン(C)とグアニン(G)の含量が多い領域)であって、D
NAの脱メチル化が生じているかを知り得る配列を挙げ
ることができる。尚、本発明においては、メチル化感受
性制限酵素として上記NotIのほか、BglI、Fs
eI、PshAI、SfiIなどの8塩基の配列を認識
する制限酵素が好ましく例示される。
ては、好ましくは、例えばDNA繰り返し配列を有する
セントロメリック・クラスター(Centromeric Not I clu
ster)領域、タンデムリピート領域中に存在するメチル
化感受性制限酵素認識DNA配列に相応するオリゴヌク
レオチドが挙げられ、具体的には配列番号1〜4に示さ
れるDNA配列の中に存在するメチル化感受性制限酵素
認識DNA配列に相応するオリゴヌクレオチドを例示す
ることができる。
に示すように手術によって摘出された癌部組織より抽出
されたDNAを制限酵素NotIで切断した後、得られ
たDNA断片に大腸菌リガーゼを用いてアダプターをラ
イゲーションするが、フォワード・プライマーとしては
該アダプター部位のDNA配列に相応するオリゴヌクレ
オチドを例示できる。かくしてDNA繰り返し配列中の
脱メチル化DNAのDNA配列が検出可能なフォワード
・プライマーを作成することができる。
ワード・プライマーを5’側に結合するプライマーとし
て用いて、上記DNAの繰り返し配列を含めてPCR反
応によりDNAの繰り返し配列が増幅できるプライマー
配列を有するものであれば特に制限されない。この限り
においてそのDNA配列は制限されないが、例えばセン
トロメリック・クラスター領域の3’側に相同する配列
からなる連続する約15〜40塩基から成る塩基配列を
有するオリゴヌクレオチドが好適であり、具体的には配
列番号7に示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチ
ドが例示できる。
フォワード・プライマーとリバース・プライマーの両者
で挟まれる、いわゆるこれらのプライマーが結合する位
置の内側に位置するDNA配列に対応するオリゴヌクレ
オチドであれば限定されない。一例として本発明の実施
例において示すようには、GCリッチな領域であって、
DNAの脱メチル化が生じていると考えられているセン
トロメリック・クラスター領域内に存在するDNA配列
に相応するオリゴヌクレオチドからなる連続する約15
〜47塩基から成る塩基配列を有するオリゴヌクレオチ
ドを好ましく例示できる。
れるDNA配列は、癌の手術前の生検時に得られた癌部
組織、または手術後の癌患者の癌部またはび非癌部組
織、好ましくは、特に肝癌の患者の手術によって摘出さ
れた癌部の組織より、常法により抽出されたDNAを制
限酵素NotIで切断後、該DNA断片に大腸菌リガー
ゼ等のリガーゼを用いてアダプターをライゲーションし
たDNA配列がその対象DNA配列として好ましく例示
できる。
列番号6で示される塩基配列のうち連続する15〜47
塩基から成るオリゴヌクレオチドに、レポーター蛍光色
素と、クエンチャー蛍光色素とが結合されてなるものを
使用することもできる。ここでレポーター蛍光色素は、
レポーター蛍光色素がクエンチャー蛍光色素と同一のプ
ローブに結合されている場合には蛍光共鳴エネルギー転
移によりその蛍光強度が抑制され、前記クエンチャー蛍
光色素と同一のプローブに結合されていない状態では蛍
光強度が抑制されないものである。すなわち、上記プロ
ーブは、定量的リアルタイム検出PCR法において、癌
患者のDNAのDNA繰り返し配列中に、脱メチル化が
どの程度生じているかを知る、脱メチル化DNA配列の
測定用プローブである。
癌疾患の予後を診断する方法を提供する:癌患者の癌部
組織より得られたDNA繰り返し配列をメチル化感受性
制限酵素で切断し、得られたDNA断片にアダプターを
ライゲーションし、これを鋳型として、上記アダプター
に対して相補的なDNA配列を含むフォワード・プライ
マーと上記メチル化感受性制限酵素で切断されたDNA
断片を特異的に増幅することのできるリバース・プライ
マーを用いて、メチル化感受性制限酵素認識部位を含む
DNAを特異的に増幅し、次いでフォワード・プライマ
ーとリバース・プライマーの間に設定したプローブによ
り増幅されたDNAを定量することによって、脱メチル
化したDNA数(NC-1)を定量する工程a:DNA繰り返
し配列中のメチル化感受性制限酵素認識部位を含まない
部分に特異的なフォワード・プライマー、リバース・プ
ライマー及びプローブを用いて、増幅したDNAを定量
することによって、上記DNA繰り返し配列の数(NC-2)
を定量する工程b:並びに工程aで定量した脱メチル化
したDNA数(NC-1)と工程bで定量したDNA繰り返し
配列の数(NC-2)の比から脱メチル化の割合〔(NC-1)/(N
C-2)x100(%)〕を算出する工程c、工程cによって
得られた脱メチル化の割合〔(NC-1)/(NC-2)x100
(%)〕に基づいて癌疾患の予後を診断する方法。
おいては前述するフォワード・プライマー、リバース・
プライマー及びプローブとを用い、測定すべき癌組織、
特に肝癌患者の当該癌部組織から得られるDNAを制限
酵素NotI消化して得られるDNA繰り返し配列を鋳
型としてPCRを行ない、反応液からの蛍光をリアルタ
イムに測定することによって被検サンプル中のDNA繰
り返し配列中の脱メチル化DNAの数が定量され、また
工程bにおいては、前記DNA繰り返し配列のうち、制
限酵素NotI認識配列と一致しないDNA配列に対応
する配列を有するオリゴヌクレオチドをフォワード・プ
ライマー並びにリバース・プライマーとし、両者に挟ま
れるDNA繰り返し配列の内側のDNA配列に相応する
オリゴヌクレオチドをプローブとして用いて、TaqM
anPCR法によりDNA繰り返し配列を増幅すること
によって検体中のDNA繰り返し配列が定量される尚、
DNA繰り返し配列に結合するフォワード・プライマー
とリバース・プライマーの距離は、DNA繰り返し配列
中の脱メチル化DNAの数とDNA繰り返しDNA配列
の数とが検出できる範囲のDNA断片の増幅が出来る限
り、限定されない。
ライマーとしては配列番号5に示されるオリゴヌクレオ
チド、プローブとしては配列番号6に示されるオリゴヌ
クレオチド、リバース・プライマーとしては配列番号7
に示されるオリゴヌクレオチドが好適に例示され、また
工程bにおいて用いられるフォワード・プライマーとし
ては配列番号8に示されるオリゴヌクレオチド、プロー
ブとしては配列番号9に示されるオリゴヌクレオチド、
リバース・プライマーとしては配列番号10に示される
オリゴヌクレオチドが好適に例示される。
ル化したDNA数と工程bで得られるDNA繰り返し配
列の数の比に基づいて、癌患者の予後が良好か否かを容
易に診断することができる。具体的には、工程aで得ら
れる脱メチル化したDNA数を(NC−1)とし、工程
bで得られるDNA繰り返し配列の数を(NC−2)と
した場合、 式:(NC−1)/(NC−2)×100(%) で脱メチル化の割合を算出し、かかる脱メチル化の程度
を示す客観的な値に基づいて癌患者の予後を診断するこ
とができる。
上記式で得られる脱メチル化の割合が1%未満の場合を
癌治療の予後が良好であるとし、1%以上の場合を癌治
療の予後が不良であるとして判定することが可能であ
る。
癌患者に対する治療開始前、または手術前後に行うこと
が好ましく、得られた判定結果に基づいて癌治療の方針
や手術後の治療やアフターケアの方法が検討され決定で
きる。
いが、例えば非上皮系癌細胞に起因する癌、肝細胞癌、
神経膠芽腫、骨髄腫、胃癌、膵臓癌、脳腫瘍、大腸癌、
肺細胞癌、腎癌、膀胱癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌
及び白血病等を挙げることができる。好ましくは非上皮
系癌細胞に起因する癌、及び肝細胞癌である。
レオチド部分がハイブリダイズするセントロメリック・
クラスター領域は、上記5’側プライマーがハイブリダ
イズする領域と近接して一部重複しているが、実際に反
応を行なう場合には、5’側プライマーとプローブのハ
イブリダイズする領域が互いに重複することがない組み
合わせを選択する必要がある。
−カルボキシ−フルオレッセイン)のようなフルオレッ
セイン系蛍光色素が好ましく、クエンチャー蛍光色素と
しては、TAMRA(6−カルボキシ−テトラメチル−
ローダミン)のようなローダミン系蛍光色素が好まし
い。これらの蛍光色素は公知であり、市販されているも
のを用いることができる。レポーター蛍光色素及びクエ
ンチャー蛍光色素の結合位置は特に限定されないが、通
常、プローブのオリゴヌクレオチド部の一端(好ましく
は5’末端)にレポーター蛍光色素が、他端にクエンチ
ャー蛍光色素が結合される。なお、オリゴヌクレオチド
に蛍光色素を結合する方法は公知であり、例えばNoble
et al., (1984) Nuc. Acids Res. 12:3387-3403及びIye
r et al.,(1990) J. Am. Chem. Soc. 112:1253-1254 に
記載されている。
プライマー(5’側プライマー)とリバース・プライマ
ー(3’側プライマー)と上記蛍光標識されたプローブ
とを用い、被検体中のメチル化感受性制限酵素にて切断
されたDNA断片中の測定すべきDNA配列中のDNA
繰り返し配列を鋳型としてPCRを行ない、反応液から
のプローブに起因する蛍光をリアルタイムに測定する方
法が好適に採用される。このリアルタイム検出PCR法
自体は公知であり、そのための装置及びキットも市販さ
れているので、このような市販の装置及びキットを用い
て行なうことができる。
は非癌部組織から抽出し得られたDNAまたはcDNA
を上記フォワード・プライマー、リバース・プライマー
及び上記プローブ並びに耐熱性DNAポリメラーゼ、d
ATP、dGTP、dCTP、dTTPを含む溶液を調
製して行なう。反応の具体的な条件は下記実施例に詳述
されている。なお、被検試料としては、所望の遺伝子を
含有する疑いのあるいずれのものであってもよく、例え
ば血清等の体液である。検体のDNAの調製は、従来法
に用いられるPCRの場合と同様に行なうことができ
る。
検体、或いは癌患者から摘出した癌部若しくは非癌部組
織から市販のDNA抽出用キットなどで抽出されたゲノ
ムDNAを調製しそのまま増幅用DNAとするか、或い
は検体から得られた組織をプロティンキナーゼKにより
分解し、フェノール−クロロホルム抽出後、エタノール
沈殿により所望のDNAを得ることができる。また、m
RNAの場合は、mRNAを鋳型としてcDNAが合成
され、次いで、このcDNAを鋳型としてPCRにより
DNAの増幅が起きる。
域を含んでいるので、プローブは一本鎖状態の増幅DN
Aにハイブリダイズする。プローブが完全にハイブリダ
イズした状態で、プローブがハイブリダイズしている一
本鎖DNAを鋳型とする伸長が起きると、TagDNA
ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性によりプローブ
が5’末端側から加水分解される。この分解の結果、プ
ローブに結合し、レポーター蛍光色素とクエンチャー蛍
光色素とが離れ、クエンチャー蛍光色素に起因する蛍光
共鳴エネルギー転移により抑制されていたレポーター蛍
光色素からの蛍光強度が増加する。一方、被検試料中に
DNA配列中繰り返し配列を有するDNA領域中の脱メ
チル化DNAが存在しない場合には、DNAの増幅が起
きないので、プローブはDNAにハイブリダイズせず、
従ってDNAポリメラーゼによって加水分解されること
もない。このため、レポーター蛍光色素からの蛍光は、
クエンチャー蛍光色素により抑制されたままであり、蛍
光強度は増加しない。従って、蛍光強度を測定すること
により、被検試料中にDNA繰り返し配列領域内にある
脱メチル化DNAの数を検出することが可能である。
ムに測定する。すなわち、蛍光強度を測定しながらPC
R反応を行なう。測定される蛍光強度は、あるサイクル
数を過ぎると検出限界を超え、急激に増加する。そし
て、被検試料中のDNA繰り返し配列領域内にある脱メ
チル化DNA数が多いほど、少ないサイクル数で蛍光強
度が急に増加する。従って、何サイクルを過ぎた時に蛍
光強度の急激な増加が始まるかを調べることにより、被
検試料中のDNAの定量測定を行なうことができる。
ントロメリックNotIクラスター領域内に存在するD
NA配列中にある脱メチル化DNAのDNA配列を含ま
ないネガティブコントロールにおける各サイクル(例え
ば3〜15サイクル)の蛍光強度の標準偏差の10倍で
よいかを閾値として設定し、蛍光強度がこの閾値を超え
るサイクル数を調べることにより、正確に被検試料中の
セントロメリックNotIクラスター領域のDNAを定
量測定することができる。すなわち、既知濃度のセント
ロメリックNotIクラスター領域のDNA標準物質の
常用対数を横軸に、上記閾値を超えた時のサイクル数を
縦軸にとると、標準物質を用いた測定結果はほぼ完全に
直線上にのるので、検量線を作成しておけば、何サイク
ルで閾値を超えるかを調べることにより被検試料中のセ
ントロメリックNotIクラスター領域のDNAの数を
定量測定することができる。従って、本発明の方法によ
れば、従来のRLGS法のように、複数の制限酵素処理
やRIの使用が不要で、また通常のPCRのように電気
泳動を行なって増幅を調べる操作が不要であり、非常に
簡便である。
るが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。実施例1 1)1991年8月から1997年12月までに肝細胞
癌と診断された肝切除を施行された患者34例を対象と
し、切除した肝臓から肝細胞癌組織とそれに隣接した非
癌様組織(非癌部組織)をDNA出抽用サンプルとして取
得し、DNA調製まで−70℃にて凍結保存した。
ップし、癌の再発は再手術、剖検、及び/またはルーチ
ンの全身のコンピュータ断層撮影、核磁気共鳴イメー
ジ、及び超音波造影を含むイメージ診断による発見に基
づいて診断された。最大経過観察期間は、50ヶ月で平
均観察期間は、32ヶ月であった。
に順じて単離した(Blln, n.and Stafford,D.W., Nu
cleic Acids Res., 3, 2903-2308 (1976) )。即ち、上
記で得られたDNA調製用凍結サンプル1gに対して
(組織1g)に氷冷したTNM溶液(20mM トリス−塩
酸 (pH7.5)、0.1M NaCl、1.5mM MgCl2)を10〜20m
l加えてホモゲナイズした後、試料を適当なチューブに
移して、冷却遠心機で1500rpm、5分間遠心した
後、粗画分画のペレットを得、氷冷したTNE溶液(10
mM トリス−塩酸 (pH7.5)、0.1M NaCl、1mM EDTA)を2
0ml加え混合した後、1/20容(1ml)の10%SD
Sを加えて穏やかに混和した後、1/100容(200μl)
の10mg/mlのプロテイナーゼKを加えて50℃で
4時間から一晩インキュベートさせた後、等量のフェノ
ールを加え、さらに4時間から一晩にかけて穏やかに振
盪した。3000rpm、10分間遠心分離した後、等
量のフェノール-クロロホルム(1:1)を加え、30分間程
度振盪した後、水層を回収し、1/50量の5M Na
Clを加えた。次いで2〜2.5倍量の100%エタノ
ールを加えて穏やかに混合した後、−20℃で1〜15
時間、または−70℃で10〜20分間、DNAの収量
を増やす為に冷却した。3000rpm、10分間冷却
遠心した後、上清を捨てて、所望のDNAペレットを回
収し、風乾などで乾燥した後、少量(1ml)のTE液(10m
M トリス−塩酸 (pH7.5)、1mM EDTA)に溶解し4℃で保
存した。
後、QIAampDNA MiniKit(QIAGEN社製)等を用いて、ゲノ
ムDNAを抽出することによっても行うことができる。
し配列のクローニング 本発明者は、先に肝癌患者から、RLGS法(Hatada,
I., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88, 9523-9527 (1
991))を用いてDNAサンプルを得て制限酵素NotI
−PvuII断片で切断し、NotIの5’末端をP3
2で標識し、大きさで分離した後、PstIで更にイン
・サイテゥ(in situ)に切断して、断片をポリアクリル
アミドゲルにて分離し、変化の見られたスポットの数を
分析し、癌部と非癌部のスポット数、スポットのパター
ンを複数症例を比較し、スポットの相違数と術後再発、
累積生存率との相関関係を調査し、その数から患者を2
層に分けて(16>=、15<)予後との相関検討し報告して
いる(Oncogene, 19, 1676-1683 (2000))。
違数とスポットの濃度に相関があるスポットがあるかど
うかを以下の方法で検討した。
Aを制限酵素NotIで切断後、フェノール/クロロホ
ルム/イソアミルアルコール混合溶媒で抽出した後、遠
心分離し、得られた沈澱物を蒸留水に再懸濁させた。
Pで標識した。続いて制限酵素PuVIIでDNA断片
を切断し、得られたNotI−PvuII/DNA断片
をアガロース電気泳動にかけ、さらにゲル中に分離され
たDNA断片を制限酵素PstIで切断し、ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動を行ない、標識DNA断片は、多
数のスポットとして二次元電気泳動図上に展開され、オ
ートラジオグラフィーによって視覚的に検出できた。
トの強度(濃度)の濃い興味ある部位が4箇所、31例中
12例(38.7%)に見出された。
非癌部の濃度)と累積生存率との相関関係をみると、強
度比が1以下(17症例)と1以上(14症例)で累積生存率を
見るとスポットの濃度が高くなるに従い累積生存率が低
下した。
スポット数とスポットの強度(濃度)の濃い興味ある4つ
のスポット(スポットAからスポットD)の強度の相関
は、それぞれのケースにおけるスポットAからスポット
Dの4つスポットの2倍レベルの相対的密度で比較した
(検定法:Spearman rank correlation coefficient)。そ
の結果、これらのスポットの強度は、変化したRLGS
スポット数と有意に相関していた(Spearman rank corre
lation coefficient:スホ゜ットA:0.650, p<0.0001:スホ゜ット
B:0.712, p<0.0001 スホ゜ットC: 0.745, p<0.0001スホ゜ット
D:0.704, p<0.0001)。さらにこれら4つのスポットの
強度比(癌部の濃度と非癌部の濃度)と累積生存率との相
関関係をみると、術後の再発が低いグループ(スポット
の強度が2倍レベルより未満)と術後の再発が高いグル
ープ(スポットの強度が2倍レベルより同等以上)で累積
生存率を見るとこれら4つのすべてのスポットにおい
て、スポットの濃度が高くなるに従い累積生存率が有意
に低下した(p<0.05)。
びスポットの強度(癌部の濃度と非癌部の濃度の比)と累
積生存率が相関することから、これら4つのスポットに
おけるDNAの脱メチル化に関連する特徴的なDNA配
列が存在するかどうかを検討することにした。
tIのDNA断片を含むDNA断片をゲルから切り出
し、スポットA−Dとし、それぞれフェノール/クロロ
ホルム/イソアミルアルコール混合溶媒で抽出し、No
tI−PstI/DNA増幅の為にNotI−PstI
DNA断片末端にDNAアダプターをライゲートし、該
DNAをPCRによって増幅した。
R産物を、ベクターpBluescriptIIを用いてクローニン
グを行なった。
イド・バイオシステムズ・モデル377DNAシーケンサ
ー(アプライド・バイオシステムズ社製)で配列決定し
た。
配列は、ジーンワークス・ソフトウェア(GENEWORKS sof
tware)を用いて分析し、相同性検索は、NCBI(the N
ational Center of Biotechnology Information)のBL
ASTネットワーク・サービス(Altachul, S.F., et a
l., J. Mol. Biol., 215, 403-410 (1990))を用いて実
施した。
ntyx-Mac Version 10.1(SOFTWAREDEVELOPMENT CO., LT
D., Tokyo, Japan)を使用して行なった。
酸配列情報から、配列番号1に示されるスポットAに相
当するクローンされた核酸配列は、1993年にウォン
グら(S. Wong, M.J. Wagner and D. Wells )によって
ヒト・タンデム繰り返し配列(Human tandem repeat seq
uence: HTRS )として、アクセッション番号L0955
2としてGenbankに登録されている13キロ塩基
対の繰り返しのあるユニットの一部分のそれと完全に一
致していた。該ユニットは、ヒト染色体8q21上にあ
るタンデムにおいておよそ200回繰り返されていると
報告され、この断片はRLGS法を用いた他のヒト癌に
おいて同定されていた(Miwa, W., et al., Electropho
resis, 16, 227-232 (1995): Thoraval, D., et al.,
Gene. Chromosones & Cancer, 17, 234-244 (1996) )。
相当するクローンされた核酸配列は、セントロメトリッ
クNotIクラスター(Centromeric Not I cluster: CN
IC)として、アクセッション番号Y10752としてG
enbankに登録されている1415塩基対のNot
I−NotI断片の繰り返しのあるユニットの一部分の
それと完全に一致しており、この断片はRLGS法を用
いて肝細胞癌において既に特定されている(Nagai, H.,
et al., Gene, 237 (1) 15-20 (1999): Nagai, H., et
al., DNA Res., 6 (4) 219-225 (1999) )。
(Thoraval)らがRLGS法を用いて神経膠芽腫から単離
し、クローニングした断片の相補配列である(Thoraval,
D.,et al., Gene. Chromosones & Cancer, 17, 234-2
44 (1996))。また、該核酸配列は、染色体9、13、1
4、および21のセントロメアの近傍のヒト1.4キロ
塩基タンデムに繰り返された配列として、Genbankにア
クセッション番号U59100として登録されていて、FIS
H(Fluorescence in situ hybridization)を使用するこ
とによってアクロセントリックacrocentric染色体9、
13、14、および21のセントロメリックな領域上に
あることが明らかになった。
相当するクローンされた核酸配列は、スポットBのそれ
と同一であった。該核酸配列は、ナガイらによってco
sDE−1としてコスミドクローンから単離された2.
8キロ塩基対のNotI−NotI断片のタンデム繰り
返しされているアレイの一部分であった(Nagai, H.,et
al., Gene, 237(1) 15-20(1999))。該配列は、メチル
化されたNotI配列間にある2つのセントロメトリッ
クNotIクラスター(2CNIC)の連結であることが考え
られた。
相当するクローンされた核酸配列は、新規な配列で相同
性ある配列はなかった。
ICスポット、および2CNICスポットの増大したシ
グナルは、対応している断片のNotIの認識配列にお
ける脱メチル化に負わされることが明らかにされ、RL
GSプロファイルにおけるこれらのスポットの強度は、
脱メチル化の量(数)を提供していることが確認され
た。
れスポットA〜Dに対応するDNA繰り返し配列のいず
れかの配列中のNotIの認識部位における脱メチル化
の量がこれらのスポットの強度に対応しており、即ち、
術後の予後とスポットの強度の相関関係は、術後の予後
とDNA繰り返し配列中の脱メチル化DNAの数との相
関関係に置き換えることが可能となる。
れかにあるDNA繰り返し配列における脱メチル化され
たDNAの割合を定量することで、所望の癌患者の術後
の予後を判定することが可能となる。
慮される診断方法としては、少量の臨床サンプルを基に
短時間で簡便な患者の予後診断が可能な方法、具体的に
は癌患者の手術前の生検検体や手術中に得られた癌部組
織より得られた検体から癌患者、特に肝癌患者の手術後
の予後の治療方針の決定に役立つ患者の予後予測を可能
とする方法が望まれる。従って、本発明者は上記実施例
1より得られた結果から、癌患者より得られたDNA繰
り返し配列中に存在する脱メチル化DNAの数に着目
し、該DNA繰り返し配列中の脱メチル化DNA数を測
定し、癌患者の予後が良好か否かを診断する方法に適し
た方法を、定量的リアルタイムPCR検出法を利用して
行った。
て実施されるが、癌患者の癌部組織および非癌部組織か
ら抽出されたDNAをメチル化感受性制限酵素、本実施
例においては制限酵素NotIで切断し、さらにその切
断部位にアダプターをライゲートしたものを増幅するた
めに、アダプター部位配列に相補するフォワードプライ
マー、上記実施例1で得られた4つのスポットのいずれ
かにあるDNA繰り返し配列を考慮して設計したリバー
スプライマー、およびTaqManプローブを設定す
る。
イマー、およびTaqManプローブを用いるTaqM
anPCR法を実施する。これにより、例えばスポット
BまたはスポットCに対応するセントロメトリックNo
tIクラスターのNotIサイトのうちどのくらいのD
NAが脱メチル化しているかを定量する(NC−1)。
癌部および非癌部組織についてNC−1を測定し、当該
測定値の癌部/非癌部(T/N)の比を測定することに
より、癌化することでどのくらいDNAの脱メチル化の
頻度が増加するかを癌患者毎に検討することが可能とな
る。
のスポットのいずれかにあるDNA繰り返し配列の数を
指す。より具体的には例えばスポットBまたはスポット
Cに対応するセントロメトリックNotIクラスターの
中のDNA配列となる。これは制限酵素NotI認識配
列とは無関係(制限酵素NotI認識配列とは異なるオ
リゴヌクレオチド)の配列部位に相補するフォワードプ
ライマー、リバースプライマー、およびTaqManプ
ローブを設定し、上記フォワードプライマー、リバース
プライマー、およびTaqManプローブを用いてTa
qManPCR法を実施することによって、例えばスポ
ットBまたはスポットCに対応するセントロメトリック
NotIクラスターの数を定量することができる(NC
−2)。
測定し、癌部/非癌部(T/N)の比を測定することに
より、また上記の結果とあわせて(NC−1/NC−
2)×100を求めることにより、セントロメトリック
NotIクラスターのうち何%のDNAが脱メチル化し
ているかを測定することが可能となる。
ライゲーション 実施例1(a)で得られた癌部の10μgのゲノムDN
Aに10×緩衝液[500mM トリス-塩酸(pH7.5), 100mM
MgCl2, 10mM DTT, 1000mM NaCl, 0.01 % BSA, 0.01 % T
ritonX-100]、1.5μl(15単位)の制限酵素Not
I、及び蒸留水を適当量加えて全量を100μlとし、
37℃で一晩インキュベーションを行なった後、フェノ
ール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合溶媒
(25/24/1)で2回抽出処理を繰り返した後、1
00%エタノールを加えて穏やかに混合した後、15000r
pm、10分間冷却遠心した後、上清を捨てて、所望のD
NAペレットを回収し、風乾などで乾燥した後、少量(1
ml)のTE液(10mMトリス−塩酸(pH7.5)、1mM EDTA)に
溶解し、DNAの濃度を測定した後4℃で保存した。
A(1μl)、1μl(10μM溶液)のNotI切断末
端接合アダプター(下線領域:NotI認識部位): 5'-ACGCCAGGGTTTTCCCAGTCACGACGC :配列番号11 TGCGGTCCCAAAAGGGTCAGTGCTGCGCCGG-5' :配列番号12 及び0.5μlの大腸菌リガーゼ(Takara製)、1μlの
リガーゼ緩衝液[660mMトリス-塩酸, 66mM MgCl2, 100m
M DTT]、及び蒸留水を加えて全量を10μlとし、1
6℃で一晩インキュベーションを行なった後、30μl
のTE溶液を追加し、全量を40μlとした。次いでス
ピンカラム(S−300:アマシャムファルアmシアバ
イオテク社製)にて精製し、アダプターが連結されたD
NA濃度を測定した。
に配列番号5で示される17merのオリゴヌクレオチ
ド、リバースプライマー用に配列番号7で示される23
merのオリゴヌクレオチド、及びNC−1用TaqM
anプローブ用に配列番号6に示される21merのオ
リゴヌクレオチドを化学合成した。
プライマー用に配列番号8で示される22merのオリ
ゴヌクレオチド、リバースプライマー用に配列番号10
で示される22merのオリゴヌクレオチド、及びNC
−1用TaqManプローブ用に配列番号9に示される
27merのオリゴヌクレオチドを化学合成した。上記
プローブについては、2つとも5’末端にFAMを3’
末端にTAMRAを上記文献記載の方法により結合し、
標識プローブとした。
量PCRは、ABI PRISM7700Sequence Detection System
(PEバイオシステムズ社製)を用いて、該装置の取り扱
いマニュアルに従い、以下の条件で実施した。
NAの50ng、上記化学合成した各NC−1用フォワ
ードプライマー及びリバースプライマーを各々300n
M(10μM 溶液で1.5μl)、NC−1用TaqManプロ
ーブを200nM(10μM 溶液で1μl)に調製した後、2
5μlのTaqMan Universal PCR Mastermix (PEバイオシ
ステムズ社製)及び蒸留水を適量加えて、全反応容量5
0μlに調製した。
体として、アダプターの付いていないNotI切断DN
Aの50ng、上記化学合成した各NC−2用フォワー
ド、リバース・プライマー各々300nM(10μM溶液で
1.5μl)、NC−2用TaqManプローブを200n
M(10μM溶液で1μl)に調製した後、25μlのTaqMan
Universal PCR Mastermix (PEバイオシステムズ社製)及
び蒸留水を適量加えて、全反応容量50μlに調製し
た。
ション、95℃で10分の変性に続いて、95℃で15
秒、60℃で1分の反応を50サイクル行なった。検量
線用DNA(10ng/μl)は、100倍ずつ原液から
108倍の5段階希釈した。
ルについて、NC−1用、NC−2用に調製された反応
溶液[5μlの10×PCR緩衝液、1μlの10mM
dATP、1μlの10mM dGTP、1μlの10
mM dCTP、1.25μlの20mM dUTP、
0.5μlのDNAポリメラーゼ(AmpliTaqGold:5U/
μl)、0.5μlのAmpEraseM:商品名 UNG(1U/m
l)、及び5μlの25mM MgCl2、23.43μ
lの滅菌蒸留水]を加えて同時に測定した。
し、蛍光強度の変化を縦軸に、サイクル数を横軸にとっ
てプロットした。試料中のDNAのコピー数の常用対数
と蛍光強度の急激な増加が始まる閾値を越えたサイクル
数との間には直線関係があり、このサイクル数を測定す
ることにより、被検試料中の所望のDNAを定量測定で
きる。これらPCR反応により得られた結果の解析は、
上記装置に付属の解析用ソフトウェア(Sequence Detect
or)で解析を行なった。
初期DNA量は、検量線用DNA標準物質を用いた検量
線より算出される。かくして得られた癌部組織の検体中
の脱メチル化DNA数(NC-1)の値及び検体中のDNA繰
り返し配列の数(NC-2)の値を下式に当てはめて、検体中
のDNA繰り返し配列における脱メチル化DNA数の比
率を算出した。
が1%未満の患者8例と値が1%以上の患者26例の患
者の2群に分けて、術後の累積無再発生存率を比較検討
した。有意差検定は、スチューデントのT−テスト(Stu
dent's t-test)を用いて群間比較を行なった。
C−2(%)の術後無再発曲線を図1に示す。該図のう
ち、縦軸は各群の累積無再発生存率を、横軸は無再発期
間(ヶ月)を示す。図1に示されるように、値が1%以上
の患者群は、値が1%未満の患者群と比較すると有意に
術後の累積無再発生存率が低いことが分かる(p=0.01
2)。
体から、少量のDNAで短時間に簡便に癌患者の予後の
診断が可能となり、手術前後の患者の治療方針を立てる
うえで臨床上有用な情報を得ることができることがわか
る。
体や手術中に得られた癌部組織より得られた検体から癌
患者、特に肝癌患者の手術後の予後の治療方針の決定に
役立つ患者の予後予測を可能とした診断方法が提供され
る。
A中の繰り返し配列中の脱メチル化DNA数を測定し、
癌患者の予後が良好か否かを診断する方法が提供され
る。癌患者、特に肝癌患者より抽出したDNAサンプル
を定量的リアルタイムPCR検出法を用いて短時間に簡
便な方法で癌患者の術後の予後の診断を可能とする方法
を提供され。
無再発生存率を、(NC-1/NC-2)×100(%)の値が1%
未満のケースと1%以上のケースとを比較して示す図面
である。
Claims (16)
- 【請求項1】癌部または非癌部組織より得られたDNA
くり返し配列中に存在する脱メチル化DNA数を測定
し、該DNA数に基づいて癌疾患の予後を診断する方
法。 - 【請求項2】DNAくり返し配列がセントロメリック・
クラスター領域、またはタンデムリピート領域に由来す
るものである、請求項1記載の癌疾患の予後を診断する
方法。 - 【請求項3】癌部組織より得られたDNAくり返し配列
中に存在する脱メチル化DNA数をTaqManPCR
法を用いて検出・測定することを特徴とする、請求項1
又は2に記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項4】DNAくり返し配列がメチル化感受性制限
酵素認識部位を有するものであることを特徴とする請求
項1乃至3のいずれかに記載の癌疾患の予後を診断する
方法。 - 【請求項5】メチル化感受性制限酵素がNotI、Bg
lI 、FseI 、PshAI及びSfiIよりなる群
から選択されるいずれかの制限酵素から選択されるもの
である、請求項4記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項6】メチル化感受性制限酵素がNotIである
ことを特徴とする、請求項4に記載の癌疾患の予後を診
断する方法。 - 【請求項7】DNAくり返し配列が配列番号1〜4に示
されるDNA配列のいずれか少なくとも1つのDNA配
列であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに
記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項8】癌部組織より得られたDNA繰り返し配列
をメチル化感受性制限酵素で切断し、得られたDNA断
片にアダプターをライゲーションし、このアダプターの
DNA配列を含むフォワード・プライマーと上記メチル
化感受性制限酵素で切断されたDNA断片を特異的に増
幅することのできるリバース・プライマーを用いて、メ
チル化感受性制限酵素認識部位を含むDNAを特異的に
増幅し、次いでフォワード・プライマーとリバース・プ
ライマーの間に設定したプローブにより増幅したDNA
を定量することによって、DNA繰り返し配列中の脱メ
チル化したDNAの数(NC-1)を定量する工程a:DNA
繰り返し配列中のメチル化感受性制限酵素認識部位を含
まない部分に特異的なフォワード・プライマー、リバー
ス・プライマー及びプローブを用いて、増幅したDNA
を定量することによって、上記DNA繰り返し配列の数
(NC-2)を定量する工程b:並びに工程aで定量した脱メ
チル化したDNA数(NC-1)と工程bで定量したDNA繰
り返し配列の数(NC-2)との比から脱メチル化の割合〔(N
C-1)/(NC-2)x100(%)〕を算出する工程cからな
り、工程cによって得られた脱メチル化の割合〔(NC-1)
/(NC-2)x100(%)〕に基づいて癌疾患の予後を診断す
る方法。 - 【請求項9】配列番号5で示されるオリゴヌクレオチド
をフォワード・プライマーとして、配列番号6で示され
るオリゴヌクレオチドをプローブとして、また配列番号
7で示されるオリゴヌクレオチドをリバース・プライマ
ーとして用いて工程aを行い、また配列番号8で示され
るオリゴヌクレオチドをフォワード・プライマーとし
て、配列番号9で示されるオリゴヌクレオチドをプロー
ブとして、また配列番号10で示されるオリゴヌクレオ
チドをリバース・プライマーとして用いて工程bを行う
ことを特徴とする、請求項8に記載の癌疾患の予後を診
断する方法。 - 【請求項10】脱メチル化の割合〔(NC-1)/(NC-2)x10
0(%)〕が1%未満の場合を癌疾患の予後が良好とし、
1%以上を予後不良として判断することからなる、請求
項8または9に記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項11】癌が非上皮系癌細胞に起因する癌である
請求項1乃至7のいずれかに記載の癌疾患の予後を診断
する方法。 - 【請求項12】癌が肝細胞癌、神経膠芽腫、骨髄腫、胃
癌、膵臓癌、脳腫瘍、大腸癌、肺細胞癌、腎癌、膀胱
癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、前立腺癌及び白血病より
なる群から選択されるいずれかである、請求項1乃至1
0のいずれかに記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項13】癌が肝細胞癌である請求項1乃至10の
いずれかに記載の癌疾患の予後を診断する方法。 - 【請求項14】癌治療の手術前に実施することを特徴と
する、請求項1乃至13のいずれかに記載の癌疾患の予
後を診断する方法。 - 【請求項15】配列番号1〜4に示されるいずれかのD
NA配列からなる、癌疾患の予後を診断するために用い
られるDNAマーカー配列。 - 【請求項16】請求項8に記載の癌疾患の予後を診断す
る方法に用いられるヌクレオチドのセットであって、 工程aにおいて、フォワード・プライマーとして用いら
れる配列番号5で示されるオリゴヌクレオチド、プロー
ブとして用いられる配列番号6で示されるオリゴヌクレ
オチド、リバース・プライマーとして用いられる配列番
号7で示されるオリゴヌクレオチド、並びに工程bにお
いて、フォワード・プライマーとして用いられる配列番
号8で示されるオリゴヌクレオチド、プローブとして用
いられる配列番号9で示されるオリゴヌクレオチド、リ
バース・プライマーとして用いられる配列番号10で示
されるオリゴヌクレオチドからなるものである、肝癌疾
患の予後を診断するための診断用オリゴヌクレオチド。
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