JP2002112765A - ウイルス不活化法 - Google Patents

ウイルス不活化法

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JP2002112765A JP2001233936A JP2001233936A JP2002112765A JP 2002112765 A JP2002112765 A JP 2002112765A JP 2001233936 A JP2001233936 A JP 2001233936A JP 2001233936 A JP2001233936 A JP 2001233936A JP 2002112765 A JP2002112765 A JP 2002112765A
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virus
protein
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factor xiii
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Takahito Matsuo
宇人 松尾
Hiroshi Kaneko
博 金子
Kazunori Oshima
一紀 大嶋
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Nihon Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】蛋白溶液の加熱によるウイルス不活化方法にお
いて、蛋白の変性、不活性化率を低く抑え、高い収率で
ウイルスが不活化された製剤を得る方法の提供。 【解決手段】加熱処理を不活性雰囲気下または減圧下に
実施することにより課題を解決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウイルス夾雑の危
惧のある蛋白溶液の加熱によるウイルス不活化の際、蛋
白の変性、失活の割合が極めて低く、且つウイルス不活
化後も蛋白の性状が安定であるウイルス不活化法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】蛋白、特に生体由来の蛋白、より具体的
には血液由来の蛋白は、エイズウイルス、各種肝炎ウイ
ルス、ヒトパルボウイルスB19などの種々のウイルス
に汚染されている可能性がある。したがって、これらを
原料とした治療剤の製造に際しては、ウイルスを十分に
除去または不活化する工程を組み込むことが必須であ
る。血液由来の製剤、すなわち血液製剤に夾雑してくる
ウイルスを不活化する方法としては、水溶液状態での加
熱処理法(以下、液状加熱法という。)がMurrayら(Th
e New York Academy of Medicine, 31巻(5)341
〜358(1955))により提案され、それ以来この
方法は血液製剤のウイルス不活化法として広く採用され
ている。しかし、この液状加熱法に耐え得る熱に対する
安定性の高い蛋白質としてはアルブミンなどごく一部に
限られ、他の多くの血漿蛋白は熱に不安定で、この方法
によっては変性、失活する割合が高い。そこでこの液状
加熱法とは別に、蛋白を乾燥状態で加熱する乾燥加熱法
(特開昭58−213721号)、特殊な溶媒と洗浄剤
を用いるソルベントデタージェント(SD)法(特開昭
60−51116号)なども提案されている。一方、血
液製剤に夾雑してくるウイルスを除去する方法として
は、血液凝固第VIII因子製剤中のウイルスを再生セルロ
ース製多孔性中空糸フィルターで濾過することにより除
去する方法(特開平2−167232号)や、免疫グロ
ブリン製剤製造工程中にウイルス除去用中空糸フィルタ
ーによる工程を導入し、混入したウイルスを除去する方
法(Japanese Journal of Transfusion Medicine, 34
巻(6)615〜617(1988))が報告されてい
る。また、従来法であるアフィニティークロマトグラフ
ィー、イオン交換クロマトグラフィーにっよってもウイ
ルスの除去が可能であることも報告されている( Devel
opments in Biological Standardization, vol. 81, 19
9〜209(1993))。これらのいずれの方法も一長一短があ
り、1つの方法で各種ウイルスの完全不活または完全除
去は期し難く、従って複数の方法を組み合わせて用いる
ことが有効であると考えられるが、そのためには個々の
処理工程における蛋白の変性、不活性化を極力抑え、収
率の低下を防ぐことが工業的生産の見地から重要となっ
てくる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述した液状加熱法
は、ウイルスの不活化という点では優れた方法の1つで
はあるが、蛋白が液状で比較的長時間(約10時間)6
0℃前後の高い温度に曝される結果、アルブミン等熱に
安定な数少ない蛋白を除き、多くの血漿蛋白は溶液状態
では加熱に不安定で、変性、失活する率が高い。血漿蛋
白の中でもトランスグルタミナーゼの1つである血液凝
固第XIII因子は、熱に不安定であるので、液状加熱法に
よる収率低下を防ぐためこれまでにも種々の提案がなさ
れてきた。その方法として、たとえば第XIII因子含有溶
液にグリシン、アラニン等のアミノ酸、グルコース、マ
ンニトールなどの糖類を10〜20重量%添加する方法
(特開昭53ー59018号)、グリシンと蔗糖を併用
する方法(特開昭55ー145615号)などが報告さ
れているが、これらの方法も加熱による蛋白の変性や失
活を充分に抑制することはできず、またこれらの変性体
や不活性体が最終製品の品質に何らの影響を及ぼす万能
性も否定し得ない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、液状加熱
法における蛋白の変性、失活率を極力低く抑えるという
課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、生体由来
蛋白、特に血漿蛋白、さらに具体的にはトランスグルタ
ミナーゼの液状加熱法において、処理雰囲気を不活性雰
囲気下または減圧下で行うことにより、蛋白の変性、失
活率を大幅に低減しうることを見出し、さらに検討を重
ねて本発明を完成した。すなわち本発明は、(1)ウイ
ルス夾雑の危険性のある蛋白溶液を不活性雰囲気下また
は減圧下に加熱処理するウイルス不活化法、(2)不活
性雰囲気下が窒素雰囲気下である前記(1)記載のウイ
ルス不活化法、(3)蛋白が生体由来のものである前記
(1)記載のウイルス不活化法、(4)蛋白がトランス
グルタミナーゼである前記(1)記載のウイルス不活化
法、(5)蛋白が血液凝固第XIII因子である前記(1)
記載のウイルス不活化法、および(6)加熱処理が、4
5〜80℃、1〜48時間の処理である前記(1)記載
のウイルス不活化法、である。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のウイルス不活化法の対象
となる蛋白は、生体成分由来のものであれば特に限定さ
れず、ウイルスの夾雑が危惧される蛋白、たとえば血
漿、尿、胎盤、皮膚、骨、肺などの生物由来の蛋白、細
胞培養由来の蛋白が例としてあげられる。本発明は、液
状加熱に対して不安定なトランスグルタミナーゼ、特に
第XIII因子の処理に好適である。蛋白溶液における蛋白
の濃度は特に限定されないが、通常0.01〜30.0
重量%、好ましくは0.03〜10.0重量%である。
蛋白が第XIII因子である場合の濃度は0.05〜3.0
重量%であることが好ましい。蛋白溶液には、必要に応
じ、蛋白の安定化剤としてグリシン、アラニン等のアミ
ノ酸を0.1〜3モル濃度、グルコース、マンニトー
ル、蔗糖などの糖類を10〜50重量%程度添加しても
よい。その他緩衝液として、たとえばクエン酸緩衝液を
添加してもよい。蛋白溶液のpHは、通常 5.0〜1
0.0、好ましくは6.0〜8.5である。たとえば血
漿から第XIII因子の含有溶液を調製するための具体的な
方法としては次の方法があげられる。まず、コーン低温
エタノール分画の画分Iを採取し、0.02Mクエン酸
緩衝液(pH7.5)を加え、ミキサーで画分を十分に
攪拌して溶解させる。この溶液を遠心分離器により30
00g、20℃で15分間遠心分離し上清を得る。この
上清に、1Mクエン酸緩衝液(pH7.5)をゆっくり
と加え、攪拌後20℃で1時間放置する。この溶液を再
び遠心分離器にて3000g、10℃で15分遠心分離
して沈殿物を濾別する。この沈殿物に、クエン酸緩衝液
(pH7.5)を加えて溶解し、56℃、3分間加熱処
理して熱変性物を遠心分離して上清を得る。この上清を
陰イオン交換クロマトグラフで処理し、吸着画分から第
XIII因子含有溶液を得る。
【0006】また、胎盤由来の第XIII因子含有溶液を調
製する具体的な方法としては次の方法があげられる。ま
ず凍結した人の胎盤に0.5%食塩溶液を添加後抽出
し、組織を含まない上澄みからアクリジン塩基を用いて
第XIII因子を析出させる。2.5%食塩水を用いてアク
リジン付加物を溶解させ、セチルピリジニウムクロリド
により第XIII因子含有溶液から酸性の付加蛋白と脂質を
除く。再度アクリジン塩基を用いて第XIII因子を析出さ
せ、2.5%食塩で抽出し、抽出液を硫酸アンモニウム
を用いる沈殿及びゲル濾過により精製する。第XIII因子
活性フラクションを合し、濾過または中性塩沈殿法によ
りさらに濃縮して第XIII因子濃縮物とする。第XIII因子
含有溶液の活性は、例えばダンシルカダベリン法(Trom
b. Res., 36巻、123〜131頁(1984))、
クロット溶解法(J. Biol. Chem., 236巻、2625
〜2633(1961))などの方法により測定するこ
とができる。このようにして調製された蛋白溶液を不活
性雰囲気下または減圧下に加熱処理する。不活性雰囲気
としては、ヘリウム、アルゴンなどの希ガスや窒素ガス
などの不活性ガスによる置換率が、通常70%以上、好
ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上のも
のをいう。減圧下とは、その圧力が通常10Pa以下、
好ましくは10Pa以下、更に好ましくは10Pa以下
をいう。加熱温度は45〜80℃、好ましくは50〜7
0℃、加熱時間は1〜48時間、好ましくは5〜24時
間程度である。この加熱処理の際、攪拌、振盪等の物理
的衝撃をなるべく与えない条件下で実施することにより
更に本発明の効果が高められる。
【0007】
【実施例】以下に実施例、比較例および試験例をあげて
本発明を具体的に説明する。 実施例1 コーン低温エタノール分画の画分Iを約1Kg採取し、
これに5リットルの0.02Mクエン酸緩衝液(pH
7.5)を加え、ミキサーにて画分Iを十分に攪拌しな
がら溶解した。この溶液を遠心分離器により3000
g、20℃で15分間遠心分離し上清を得た。この上清
に、2.5リットルの1Mクエン酸緩衝液(pH7.
5)100mlをゆっくりと添加攪拌し、20℃で1時
間放置した。この溶液を再び遠心分離器にて3000
g、10℃で15分間遠心分離して沈殿物を採取した。
この沈澱物に3リットルの0.02Mクエン酸緩衝液
(pH7.5)を加え溶解し、56℃、3分間加熱処理
をおこない、遠心分離器により3000g、20℃で1
5分間遠心分離して上清を得ることで熱変性物を分離し
た。この上清を陰イオン交換クロマトグラフで処理し、
吸着画分から第XIII因子含有溶液を得る。この溶液を液
状加熱用サンプルとした。調製した液状加熱用サンプル
に蔗糖及びグリシンをそれぞれ30%重量および1.5
Mとなるように添加し、容器内空間を窒素ガスでに置換
した(置換率約98%)後、60℃で15時間加熱し
た。加熱後の残存第XIII因子力価を測定し、加熱前の第
XIII因子力価から加熱による活性収率を算出した。その
結果を〔表1〕に示した。
【0008】実施例2 コーン低温エタノール分画の画分Iを約1Kg採取し、
実施例1と同様にして液状加熱用サンプルを得た。調製
した液状加熱用サンプルに蔗糖及びグリシンをそれぞれ
30重量%及び1.5Mとなるように添加した。サンプ
ルを密封タンクに移しバキュームポンプで20分間脱気
し、容器内を0.01気圧(10Pa)の減圧状態にし
た後60℃で15時間加熱した。加熱後の残存第XIII因
子力価を血液凝固試験用標準ヒト血漿(ヘキスト社)を
標準としてダンシルカタベリン法により測定し、加熱前
の第XIII因子力価から加熱による活性収率を算出した。
その結果を〔表1〕に示した。 比較例1 コーン低温エタノール分画の画分Iを約1Kg採取し、
実施例1と同様にして液状加熱用サンプルを得た。調製
した液状加熱用サンプルに蔗糖及びグリシンをそれぞれ
30%及び1.5Mとなるように添加した。60℃で1
5時間加熱後残存第XIII因子力価を血液凝固試験用標準
ヒト血漿(ヘキスト社)を標準としてダンシルカタベリ
ン法により測定し、加熱前の第XIII因子力価から加熱に
よる活性収率を算出した。その結果を〔表1〕に示し
た。
【0009】
【表1】 〔表1〕から明らかなように、実施例1および2の方法
により加熱されたサンプルはいずれも95%以上の高い
活性収率が得られたのに対し、比較例1は約70%の活
性収率しか得られず、沈殿物が生じるなど性状にも変化
が見られた。このことから本発明の方法が蛋白の変性、
不活化体の生成を低く抑え、収率を向上させることが明
らかとなった。 試験例1 i)ブタパルボウイルス(PPV)の不活化試験 比較例1で調製した加熱前試料9容に対し、ブタパルボ
ウイルス液1容を加えて少量のモデル実験を実施した。
すなわち、ウイルス含有試料を窒素置換した群及び窒素
置換しない群に分け60℃、10、15、20、25時
間加熱処理を施した後、下記に示すブタパルボウイルス
感染価測定方法に従って試料中のウイルス感染価を測定
した。その結果を容器内雰囲気の窒素置換有無とブタパ
ルボウイルス(PPV)感染価との関係として〔図1〕
に示した。 ii)ウイルス感染価の測定 マイクロプレートを用い、37℃、5%炭酸ガス培養器
で培養したESK(Embryonic Swine Kidney)細胞でブ
タパルボウイルスの感染価の測定を行った。試料は日本
薬局方注射用水で溶解した。ウイルス感染価の測定とし
てはブタパルボウイルスのESK細胞に対する細胞変性
効果を確認することにより行った。すなわち、ウイルス
を含む試料をESK細胞培養培地で10倍段階希釈して
ESK細胞に接種した。引き続き炭酸ガス培養器で7日
間培養し細胞変性効果を観察してウイルス感染価TC
ID50/mlを測定した。
【0010】〔図1〕から明らかなように、本発明の方
法により窒素雰囲気下に加熱処理した試料は、従来の窒
素置換しない方法に比べ何ら遜色なくウイルスの不活化
ができることが証明された。すなわち、〔表1〕と〔図
1〕から、本発明は従来にない蛋白の安定化効果を示す
と同時に、ウイルスの不活化も十分なされることが証明
された。
【0011】試験例2 実施例1におけると同様の操作により蔗糖およびグリシ
ン含有液状加熱用試料を調製した。この加熱前試料9容
に対し、ウシ下痢性ウイルス(BVDV)液1容を加
え、ウイルス含有試料を窒素置換した群及び窒素置換し
ない群に分け、60℃で加熱処理を施し一定時間経過後
に、下記に示すBVDV感染価測定方法に従って試料中
のウイルス感染価を測定した。その結果を〔表2〕に示
した。 ウシ下痢症ウイルス(BVDV)感染価の測定方法 マイクロプレートを用い37℃、5%炭酸ガス培養器で
培養したBT(BovineTestis)細胞でウシ下痢症ウイル
スの感染価の測定を行った。試料は日本薬局方注射用水
で溶解した。ウイルス感染価の測定方法としてはウシ下
痢ウイルスのBT細胞に対する細胞変性効果を確認する
ことによっておこなった。すなわち、ウイルスを含む試
料をBT細胞培養培地で10倍段階希釈してBT細胞に
接種した。引き続き炭酸ガス培養器で7日間培養し細胞
変性効果を確認してウイルス感染価TCID50/ml
を測定した。
【0012】
【表2】
【0013】〔表2〕から明らかなように、窒素置換な
しの場合と、窒素置換ありの場合とでは、BVDV感染
価に関しては両者に殆ど差がなかった。
【0014】
【発明の効果】本発明によれば、ウイルス混在のおそれ
のある蛋白の液状加熱によるウイルス不活化を、蛋白の
変性、不活性化を極力抑えて実施することができるの
で、工業的有利にウイルスが不活化された製剤を得るこ
とができる。また、本法により得られた蛋白溶液は、そ
の後の精製工程の操作性を高め、最終品質の安全性を高
めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】:雰囲気の窒素置換の有無とブタパルボウイル
ス(PPV)感染価との関係を示す。 〔符号の説明〕 ●:窒素置換下の加熱処理 ▲:窒素置換しない加熱処理
フロントページの続き (72)発明者 大嶋 一紀 千葉県成田市新泉3番地の1 日本製薬株 式会社成田工場内 Fターム(参考) 4B065 AA95X BD08 BD44 CA44

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ウイルス夾雑の危険性のある蛋白溶液を不
    活性雰囲気下または減圧下に加熱処理するウイルス不活
    化法。
  2. 【請求項2】不活性雰囲気下が窒素雰囲気下である請求
    項1記載のウイルス不活化法。
  3. 【請求項3】蛋白が生体由来のものである請求項1記載
    のウイルス不活化法。
  4. 【請求項4】蛋白がトランスグルタミナーゼである請求
    項1記載のウイルス不活化法。
  5. 【請求項5】蛋白が血液凝固第XIII因子である請求項1
    記載のウイルス不活化法。
  6. 【請求項6】加熱処理が、45〜80℃、1〜48時間
    の処理である請求項1記載のウイルス不活化法。
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