JP2002095282A - モータ制御装置 - Google Patents
モータ制御装置Info
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Abstract
の信頼性向上を図る。 【解決手段】 同期モータのd軸、q軸の電圧、電流、
インダクタンス等を用いて電圧方程式に基づき、電気角
をセンサレスで検出する。また、所定のタイミングで、
極性判定、即ち、電気角がπ(rad)ずれて認識され
ているか否かの判定を行う。極性判定は、判定用電圧に
対する電流の挙動に基づいてセンサレスで行う。極性判
定を適宜行うことにより、ノイズ等の影響で電気角に不
測の大きな誤差が生じた場合でも、安定した制御を実現
することができる。
Description
て、センサレスでロータの電気角を検出し、運転を制御
するモータ制御装置に関する。
交流を流すことによって生じる回転磁界に同期してロー
タを回転させる同期モータがある。同期モータにより所
望の回転トルクを得るためには、ロータの位置、即ち電
気角に応じてコイルに流す多相交流を制御する必要があ
る。
出用のセンサを用いることなく、電気角を検出し、運転
を制御する方法(以下、「センサレス制御」と称する)
が提案されている。センサレス制御は、センサの故障が
生じない点で信頼性が高い。
(1)(2)に示す電圧方程式に基づいて行われる。 Vd−R・Id−p(Ld・Id)+ω・Lq・Iq=0 ・・・(1); Vq−R・Iq−p(Lq・Iq)−ω・Ld・Id−E=0 ・・・(2); ここで、V…モータに印加される電圧値; I…モータコイルに流れる電流値; L…コイルのインダクタンス; R…モータコイル抵抗; ω…モータの電気角の角速度(モータの機械的な角速度
に極対数を乗じて求められる値); E…モータの回転によって生じる起電力; p(Ld・Id)=d(Ld・Id)/dt; をそれぞれ表している。なお、V,I,Lに付けられた
添え字dおよびqは、それぞれの値がモータのいわゆる
d軸、q軸方向の値であることを意味している。
等価回路によって表される。この等価回路において、モ
ータの回転中心を通り、永久磁石の作る磁界に沿う方向
を一般にd軸と呼ぶ。一方、ロータの回転面内において
d軸に直交する方向を一般にq軸と呼ぶ。また、図3の
等価回路においてU相とd軸のなす角度がモータの電気
角θに相当する。
に誤差が含まれていなければ、d軸、q軸について常に
成立する方程式である。しかしながら、センサレスでモ
ータを制御する場合、まずモータの制御装置はある推定
された電気角(図3におけるθcに相当)に基づいて上
記方程式を演算する。このとき、演算結果には推定され
た電気角θcと現実の電気角θとの誤差角(図3におけ
るΔθ)に応じた演算誤差が生じる。つまり、算出され
た電流および電圧値を用いて上述の電圧方程式(1)
(2)を計算すれば、本来は値0となるべき両方程式が
0以外の値となる。この演算誤差は、誤差角Δθに対応
して生じる。従って、この演算誤差に基づいて電気角の
推定値を逐次修正することによって、センサレス制御を
実現できる。
角を0〜2π(rad)の範囲で一義的に特定するもの
ではない。推定した電気角と真値との誤差角Δθを特定
するに過ぎない。しかも、電圧方程式の演算誤差には、
2つの誤差角Δθが対応するのが通常であり、誤差角Δ
θさえ0〜2πの範囲で一義的に特定するのが困難な状
況にあった。従来は、±π/2の範囲内に誤差角Δθが
収まっているものと仮定して制御が実行されていた。
流の検出値に対するノイズの影響、モータ運転中の不測
の外乱によって、電気角の誤差は、±π/2の範囲を超
えて生じることがある。一旦、このように大きな誤差が
生じると、従来の制御、即ち誤差角Δθに応じた電気角
の補正では、真値に至るまでに長時間かかっていた。場
合によっては、電気角が真値に収束しないこともあっ
た。
ータから要求トルクを出力し得ないばかりでなく、運転
状態が不安定となり、異音や振動を生じていた。更に、
電気角をπ(rad)ずれて認識、即ち、現実のロータ
のN極、S極の位置関係(以下、「極性」と呼ぶ)を逆
に認識することにより、同期モータに逆トルクが発生す
ることもあった。
され、電気角の大きな検出誤差に起因する制御の不安定
性を緩和すること、即ち同期モータのセンサレス制御の
信頼性を向上することを目的とする。
記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明で
は、ロータとコイルが巻回されたステータとを有する同
期モータの運転をセンサレスで制御するモータ制御装置
において、電圧印加回路、電流センサ、駆動制御手段、
極性判定手段を備えるものとした。
圧を印加する回路である。電源およびスイッチング素子
などのハードウェアが含まれる。電流センサは、印加さ
れた電圧に応じて前記コイルに流れた電流を検出するセ
ンサである。高周波成分を除去するためのフィルタなど
も含まれる。
で制御するユニットである。電圧と電流との関係に基づ
いてロータの電気角の推定値に含まれる誤差を逐次補正
しながら、その推定値に基づいて同期モータに駆動用の
電圧を印加するよう電圧印加回路を制御する。同期モー
タの運転が開始された後は、電気角を0〜2πの範囲で
一義的に特定する処理は実行されず、推定値に含まれる
誤差を補正することによって推定値の誤差の発散を抑制
する。
所定のタイミングで、ロータの極性を判定するユニット
である。ロータのN極、S極の電気的な位置関係が、電
気角の推定値と整合しているか否かを判定する処理を行
う。π(rad)を単位として電気角の推定値の正否を
判定する手段とも言える。
するように電圧印加回路を制御する判定用電圧印加手段
と、電流センサで検出された電流の変化に基づいて、極
性の判定を行う判定手段から構成される。従って、極性
判定もセンサレスで行われる。N極、S極の電気的な位
置に応じてコイルのインダクタンスが変化するため、特
定相のコイルにN極が近い場合と、S極が近い場合とで
は電圧に対する電流変化の様子が相違する。極性判定手
段は、かかる物理的性質を利用して、ロータの極性判定
を行うものである。
誤差が含まれた場合には、極性の逆認識を招く。本発明
では、極性判定手段の作用により、極性の正否を適宜判
定することができる。従って、かかる大きな誤差が生じ
た場合でも、極性の正否、ひいては電気角検出の正否を
速やかに判定することができ、制御の信頼性を向上する
ことができる。なお、所定のタイミングとは、一定の周
期としてもよいし、電気角の誤差が大きくなり制御が不
安定になったタイミングとしてもよい。その他種々の設
定が可能である。
場合、種々の処理が適用可能である。一例として、駆動
制御手段で極性判定の結果を反映して電気角の補正を行
うことができる。こうすれば、速やかに制御を安定した
状態に復帰させられる。別の例として、同期モータの運
転を一旦停止し、制御をリセットしてから再始動するも
のとしてもよい。
ば、所定の検出用電圧を印加するように前記電圧印加回
路を制御する検出用電圧印加手段と、前記電流センサで
検出された電流値を用いた所定の演算により前記推定値
と真値との誤差角を求める誤差角特定手段と、該誤差角
を反映させて前記推定値の補正を行う反映手段とを有す
る手段として構成することができる。
のd軸方向の電流変化量ΔId、q軸方向の電流変化量
ΔIqの多項式をパラメータとする比例項、積分項を含
む演算式を適用できる。
の特定が行われる場合には、次式(3)を用いることが
できる。 θ=θ(n−1)+k1・PM+k2・ΣPM …(3); ここで、 PM=α・ΔId+β・ΔIq; ΔId=Id(n)−Idm; Idm=Id(n−1)+t(Vd−R・Id(n−
1)+ω・Lq・Iq(n−1))/Ld; ΔIq=Iq(n)−Iqm; Iqm=Iq(n−1)+t(Vq−R・Iq(n−
1)−ω・Ld・Id(n−1)−E(n−1))/L
q; ω=(k1・PM+k2・ΣPM)/t; E(n)=E(n−1)−k3・ΔIq;
タイミングにおける電気角の値;Id(n)は現タイミ
ングにおける磁化電流の値;Idmは磁化電流のモデル
値;Id(n−1)は前タイミングにおける磁化電流の
値;Iq(n)は現タイミングにおけるトルク電流の
値;Iqmはトルク電流のモデル値;Iq(n−1)は
前タイミングにおけるトルク電流の値;Ldは磁化電流
の方向のインダクタンス;Lqはトルク電流の方向のイ
ンダクタンス;Rはコイルの抵抗値;Eはコイルに生じ
る起電力;Vdは磁化電流方向の電圧値;Vqはトルク
電流方向の電圧値;tは演算の実行周期;ωはモータの
回転速度(rad/sec);k1,k2,k3は係数;
(2)を時間差分形式に置き換えて得られる次式により
電気角を求めるものとしてもよい。
様を例示する。第1の態様として、判定用電圧印加手段
は、所定の相に対して、ロータの極性に応じて該相に磁
気飽和を生じさせ得る大きさの前記判定用電圧判定用電
圧を印加する手段とすることができる。同期モータがU
相,V相,W相の三相を有する場合には、いずれかの相
に判定用電圧を印加することになる。
飽和が生じやすくなり、インダクタンスが小さくなるか
ら、電流値は比較的大きい。S極が近い位置にあると逆
に電流値は比較的小さい。従って、第1の態様で判定用
電圧を印加すれば、電流値の大小関係に基づいて極性を
判定できる。
ば、判定用電圧を正方向および負方向に交互に印加し、
正方向に生じた電流と負方向に生じた電流との大小関係
に基づいて極性を判定する方法が挙げられる。この方法
では、後述する閾値のチューニングや記憶が不要とな
り、比較的容易に安定して極性判定を行うことができる
利点がある。
先立って、前記コイルに流れる電流を磁気飽和が生じな
い範囲まで抑制することも望ましい。運転中にコイルに
印加されている駆動用電圧によって、コイルに磁気飽和
が生じている場合には、正負の判定用電圧に対する電流
にほとんど差違が生じない場合がある。判定用電圧を印
加する前に予め駆動用電圧による影響を抑制しておけ
ば、かかる弊害なく安定して極性判定を行うことができ
る。抑制する電圧の印加には、駆動用電圧と逆電圧を印
加する態様、駆動用電圧の指令値を下げる態様などが含
まれる。後者の態様は、例えば、電圧の指令値を0にす
ることによって容易に実現できる。
て、判定用電圧を、各判定につき1回だけ印加し、それ
に応じて生じた電流と所定の閾値との大小関係に基づい
て極性を判定してもよい。電圧の印加が1回で済むた
め、判定時間の短縮、判定用電圧の印加に伴う異音の低
減を図ることができる。判定基準となる閾値は、極性が
正しく認定されている時の電流値、誤認定されている時
の電流値を実験等で求めておき、両者を踏まえて任意に
設定すればよい。閾値は固定値としてもよいし、モータ
の回転数、トルク、電気角などのパラメータに応じて適
宜変動させてもよい。
て、その時点での電流を増大する方向に、判定用電圧を
印加した場合を考える。通常の運転状態であれば、この
電圧によって十分に極性判定が可能である。但し、要求
トルクが高い場合など特定の運転時には駆動用電圧によ
って既に磁気飽和が生じている場合がある。かかる場合
には、極性が正しく認定されているか否かに関わらず判
定用電圧に応じて流れる電流値に差違がほとんど生じな
くなり、極性判定の精度が低下する可能性がある。従っ
て、判定用電圧は、極性判定を行う時点での電流を低減
する方向に印加することが望ましい。この場合でも、判
定用電圧は、極性が正しく認識されている場合と誤って
認識されている場合とで電流に差が生じる程度の大きさ
に設定しておく。
る相は、予め設定されている。いずれか一つの特定の相
に固定してもよいし、モータの運転状態に応じて変化さ
せてもよい。後者の場合は、例えば、電気角の推定値に
応じて定めることができる。判定用電圧に応じて流れる
電流は、電気角に伴って周期的に変化するため、電気角
を用いることで極性判定に適した相を選択することがで
きる。一般に各相電流の正負のピークに対応する電気角
は、π(rad)ずれているため、極性判定の正誤に関
わらず電気角に応じて適切な相を選択することが可能で
ある。
し相対的に定まる所定方向に判定用電圧を印加し、極性
正常時における電流変化の範囲から外れる電流変化が所
定期間継続して現れた場合に極性異常と判定するものと
できる。ロータの回転に応じて判定用電圧の印加方向も
回転する点が第1の態様と相違する。
正常に認識されている時と異常認識されている時とで、
有意差が現れることが多い。従って、正常時に検出され
るはずの範囲を超える電流変化が所定期間に亘って検出
された場合には、極性異常と判断することができる。所
定期間とは、ノイズの影響によって一時的に異常な電流
変化が現れる可能性を考慮したものである。かかる観点
から、所定期間は、誤判定を回避可能な任意の期間を設
定すればよい。
じて相対的に定まる少なくとも2方向に判定用電圧を印
加し、該2方向それぞれで判定用電圧に応じて生じた電
流変化の相違に基づいて極性を判定するものとできる。
ロータの回転に応じて判定用電圧の印加方向も回転する
点で第2の態様と共通する。電圧に対する電流の挙動
は、電気角との相対的な方向に応じて2π周期で変動す
る。例えば、真値と認識されている電気角に対して、正
負にΔθずらした2方向に電圧を印加すると、電流変化
の方向が極性に応じて変動する。極性が正しく認識され
ている場合に2方向の電流変化の傾きが正であったとす
れば、異常認識されている場合には傾きが負となる。第
3の態様では、この電流変化の方向に基づいて、極性判
定を行うことができる。2方向は、種々の設定が可能で
あり、いずれか一方を真値とされている電気角に一致さ
せてもよい。
期モータへの要求トルクに応じた方向としてもよい。即
ち、要求トルクに応じて判定用電圧を印加する方向を変
更してもよい。要求トルクに応じて、即ち駆動用電圧に
応じてコイルに流れている電流は変わるから、それぞれ
極性判定に適した方向を選択することにより、極性判定
を安定して行うことができる。
タの運転状態に応じて極性判定方法を切り替えて使用し
てもよい。例えば、電気角の推定値に応じて定まる所定
の相に対して判定用電圧を印加する第1の極性判定と、
電気角に対し相対的に定まる所定方向に判定用電圧を印
加する第2の極性判定とを同期モータの運転状態に応じ
て切り替えて使用してもよい。運転状態には、モータの
回転数や要求トルクが挙げられる。モータの運転状態に
応じて安定して極性判定可能な手法を使い分けることが
でき、制御の安定性、信頼性をより向上することができ
る。一例として、モータの要求トルクが低い場合に第1
の極性判定を適用し、その他の場合に第2の極性判定を
適用する方法が挙げられる。
気角検出装置、モータ制御方法、電気角検出方法など種
々の態様で構成可能である。
施例に基づき、以下の順序で説明する。 A.装置の構成: B.ベクトル制御: C.モータ制御: D.電気角検出処理: E.極性判定処理: E1.第1態様の極性判定処理: E2.第2態様の極性判定処理: E3.第3態様の極性判定処理: E4.第4態様の極性判定処理: E5.第5態様の極性判定処理: E6.第6態様の極性判定処理: E7.第7態様の極性判定処理:
ータ制御装置10の概略構成を示す説明図である。図2
は制御対象となっている三相同期モータ40の概略構成
を示す説明図である。まず、図2を用いて、三相同期モ
ータ40の構造について説明する。この三相同期モータ
40は、ステータ30とロータ50とからなる。ロータ
50は、直交する位置に4箇所の突極71〜74を備え
る。また、突極71〜74の中間位置には、それぞれ永
久磁石51〜54が貼付されている。永久磁石51〜5
4は、ロータ50の半径方向に磁化されており、その極
性は隣り合う磁石同士が互いに異なる磁極となってい
る。例えば、永久磁石51は外周面がN極であり、その
隣の永久磁石52は外周面がS極となっている。
を備える。ティース22間に形成されたスロット24に
は、ステータ30に回転磁界を発生させるコイル32が
巻回されている。
転軸中心を通ってロータ50を径方向に貫く軸をd軸と
呼び、ロータ50の回転面内において前記d軸に電気的
に直交する軸をq軸と呼ぶ。d軸およびq軸はロータ5
0の回転に伴い回転する軸である。本実施例では、4つ
の永久磁石が用いられているため、d軸とq軸の幾何学
的角度は45度である。
す。等価回路は、U,V,Wの三相コイルと、回転軸中
心回りに回転する永久磁石で表される。d軸はこの等価
回路において永久磁石のN極側を正方向として貫く軸で
ある。q軸は、幾何学的にd軸に直交する軸となる。電
気角θはU相コイルを貫く軸とd軸との角度となる。
0、バッテリ132、制御ユニット100、電流センサ
102、103、フィルタ106、107、アナログデ
ィジタル変換器(ADC)112、113から構成され
ている。インバータ130はトランジスタのスイッチン
グによりバッテリ132を電源として三相交流を生じさ
せる。制御ユニット100は、内部にCPU、RAM,
ROM等を備えるマイクロコンピュータである。制御ユ
ニット100は、トルク指令値に応じた電流が流れるよ
う、電気角θに応じてインバータ130のスイッチング
を制御し、三相同期モータ40を運転する。
加された電圧と、電流との関係に基づいてセンサレスで
検出される。電流は、電流センサ102、103、フィ
ルタ106、107、アナログディジタル変換器(AD
C)112、113を用いて検出される。電流センサ1
02,103は、U相電流Iu、V相電流Ivを検出す
る。フィルタ106,107は、検出された電流の高周
波ノイズを除去する。ADC112、113は、電流値
をディジタルデータに変換する。なお、三相交流の各相
に流れる電流の総和は常に値0であるから、W相の電流
については検出を要しない。
30に出力信号Vu,Vv,Vwが出力される。出力信
号は、インバータ130の各相に設けられたトランジス
タのスイッチングを制御する信号である。PWM制御に
よって、各相のトランジスタのスイッチング・デューテ
ィを制御することによって、所望電圧の三相交流をモー
タ40に印加することができる。
ベクトルとして扱うベクトル制御によってモータ30を
制御している。ベクトル制御では、平面内の電流ベクト
ルは代表的な2方向の電流ベクトルの和で表される。本
実施例では、d軸方向、q軸方向の電流をこの2方向と
して使用する。U,V,Wの各相に流れる電流Iu,I
v,Iwとd軸方向の電流Id、q軸方向の電流Iqと
の変換は次式によって行われる。
Iqへの変換(3相/2相変換); Id=(−Iu・sin(θ−2π/3)+Iv・sinθ)・
√2; Iq=(−Iu・cos(θ−2π/3)+Iv・cosθ)・
√2;
への変換(2相/3相変換); Iu=(Id・cosθ−Iq・sinθ)・√(2/3); Iv=(Id・cos(θ−2π/3)−Iq・sin(θ−2π
/3))・√(2/3); Iw= −Iu−Iv;
フローチャートである。制御ユニット100のCPUが
他の制御処理と共に周期的に実行するルーチンである。
CPUはモータ40の制御目標となる要求トルク、回転
数を入力し(ステップS10)、センサレスで電気角を
検出し(ステップS100)、その電気角に基づいて電
流制御処理を行う(ステップS200)。電流制御処理
とは、トルクを生じさせる電流を電気角に応じてコイル
32に流す処理である。CPUは、所定の極性判定タイ
ミングにおいて、極性判定処理を行う(ステップS30
0,S302)。極性判定処理は、電気角がπ(ra
d)ほどずれて誤認識されていないかを判定する処理で
ある。この処理は、極性の誤認識による制御の不安定化
を回避するための処理である。
ある。モータ制御処理を所定回数実行する度に1度して
もよい。電気角の誤差に起因してトルク変動や異音が生
じた時点で実行するものとしてもよい。所定期間トルク
変動が継続して生じたタイミングで実行してもよい。
については、種々の処理が適用可能である。例えば、モ
ータの制御処理をリセットしてもよい。モータの運転を
停止してもよい。制御に用いられている電気角の極性を
自動的に反転させて制御を継続してもよい。極性の誤認
識によって制御が不安定になっていることを運転者等に
報知するものとしてもよい。これらの処理は、別途、極
性誤認識への対応処理を設けることにより実現される。
角検出(図4のステップS100)の処理内容について
説明する。図5は電気角検出処理ルーチンのフローチャ
ートである。この処理が開始された時点では、これまで
に行ってきた制御に基づいてCPUは電気角をあるモデ
ル値θcに推定している(図3参照)。コイル32に
は、要求トルクに応じた電流が流れている。
所定の検出用電圧を印加し、各方向の電流Id、Iqを
検出する(ステップS102、S104)。電流Id,
Iqは、U相電流、V相電流を2相/3相して得られ
る。座標変換は、モデル値としての電気角θcを用いて
行われる。検出用電圧は、電圧値が既知であれば良く、
駆動用の印加電圧を検出用電圧に兼用してもよい。
いて、CPUは先に示した式(3)に基づき、電流変化
量ΔId、ΔIqを算出する(ステップS106)。式
中の(n)および(n−1)は、電気角検出処理ルーチ
ンが周期的に繰り返し実行されていることを踏まえて付
されている。(n)は現在の処理中に検出された値、
(n−1)は前回の処理時に検出された値を意味する。
変数tは電気角検出処理ルーチンが実行される周期を用
いる。Idm、Iqmは、磁化電流のモデル値であり、
電気角が正しいものとして電圧方程式を計算することに
より得られる電流の理論値に相当する。
う(ステップS108)。先に示した式(3)はインダ
クタンスを一定値としているが、実際にはコイルに流れ
る電流による磁界の影響を受けてインダクタンスが非線
形に変化する領域が存在する。上記補正は、この変化に
よる影響をΔId、ΔIq側で相殺するために行われ
る。本実施例では、要求トルクと補正量との関係を表す
テーブルを予め用意し、これを用いて補正するものとし
た。補正量は、実験的または解析的に求めることができ
る。
Iqを用いて、CPUは先に示した式(3)に基づき電
気角θ(n)を求める(ステップS110)。CPU
は、次のステップで使用するωを算出する(ステップS
112)。電気角θ(n)は、ΔIdとΔIqの多項式
(α・ΔId+β・ΔIq)をパラメータPMとする比
例項、積分項によって求められる。本実施例では、α=
β=1、即ちPM=ΔId+ΔIqとした。上記α、β
は種々の値を適用可能である。この算出方法には、演算
が比較的容易であり、高速処理に適している利点があ
る。
ができる。パラメータPMを用いた演算式ではなく、次
式によって電気角θ(n)を求めるものとしてもよい。 θ(n)=θ(n-1)+tE(n)/kk2+sgn・kk3・ΔId; sgnはω>0のとき「+」であり、ω<0のとき
「−」であることを意味する。モータが回転しているこ
とが前提であるため、ω=0である場合は考慮しない。
kk2,kk3はkk1と同じく電気角の算出に用いら
れるゲインであり、実験的に定められるものである。
て、極性が誤認識されていると判断された場合は、その
後にステップS110を実行する際に極性を正す補正を
行ってもよい。この補正は、例えば、電気角θにさらに
π(rad)を加えることにより実現できる。
ステップS302)は、以下に示す種々の態様のいずれ
かを選択して適用することができる。
の極性判定について、判定原理を説明した後、具体的な
処理方法について説明する。図6は電流による磁界も含
めた外部磁界Hと磁束密度Bとの関係を示すグラフであ
る。q軸についての関係を示した。曲線Cq上の各点に
おける接線の傾きがインダクタンスLqに相当する。要
求トルクが比較的小さい領域A(ポイントp1など)で
は、磁束密度が低く、インダクタンスは一定である。要
求トルクが比較的高い領域B(ポイントp3など)で
は、曲線Cqが非線形となり、インダクタンスが小さく
なる。インダクタンスが小さい程、コイルに流れる電流
量が大きくなる。例えば、駆動電流によってコイルの磁
束密度が点p2に相当する状態にあるときに、正方向の
判定用電圧をさらに印加すれば、磁束密度は点p3に移
行し、磁気飽和を生じる。負方向の判定用電圧を印加す
れば、磁束密度は点p1に移行するため、磁気飽和は生
じない。駆動電流による磁束密度が、領域A内のいずれ
かの点にあれば、十分な大きさの判定用電圧を印加する
ことにより、正方向印加時にのみ磁気飽和を生じさせる
ことができる。
の影響も受ける。極性判定が正しい場合には、永久磁石
による磁界と判定用電圧による磁界との相互作用によっ
て磁気飽和が生じる。極性判定が誤っている場合には、
永久磁石による磁界が本来あるべき状態よりも弱い状態
で判定用電圧を印加することになる。従って、正方向の
電圧印加時でも磁気飽和は生じない。逆に、負方向に電
圧を印加した時に、図6中の第3象限において非線形の
領域に入ることになり、磁気飽和が生じる。従って、正
方向および負方向への判定用電圧に対する磁気飽和現象
の有無を検出することにより、極性判定を行うことがで
きる。ここでは、q軸の磁気飽和を例示したが、各相ご
とにみても同様の現象が生じる。
して極性を判定する。図7は第1態様の極性判定の原理
を示す説明図である。図の下段には、モータ40の運転
中にU相に流れる交流の様子を示した。極性判定は、こ
のように駆動電流が流れている状況下で、ごく短期間に
行われる。上段には、極性判定時に印加される判定用電
圧と電流を示した。コイルには、駆動用電圧に判定用電
圧を重畳した電圧が印加される。
おいて、正方向、負方向の順に印加される。正方向の電
圧に応じて、コイルに流れる電流は絶対値ΔI1だけ増
加する。負方向の電圧に応じて、コイルに流れる電流は
絶対値ΔI2だけ減少する。判定用電圧は、正方向に印
加された時にコイルに磁気飽和を生じさせる程度の大き
さに設定されているものとする。正方向の判定用電圧が
印加されると、磁気飽和が生じ、インダクタンスが小さ
くなる。従って、この電圧に応じて正方向に生じる電流
変化の絶対値ΔI1は比較的大きい。負方向に判定用電
圧が印加された時は、磁気飽和を生じず、インダクタン
スが大きい。従って、この電圧に応じて負方向に生じる
電流変化の絶対値ΔI2は比較的小さい。なお、ここで
いう電流変化とは、実測された電流の差違を意味してお
り、電気角の検出時に用いられる電流変化量、即ち先に
示した式(3)に基づいて算出される値とは異なる。
1,ΔI2の大小関係に基づいて極性を判定する。極性
が正しく認識されている場合には、正負の順で電圧を印
加すると、「ΔI1>ΔI2」なる大小関係が得られ
る。極性が誤って認識されている場合には、正負の順に
電圧を印加したつもりが、実際には負正の順に電圧が印
加されたと同等の状態になる。従って、「ΔI1<ΔI
2」なる大小関係が得られる。このように、検出された
電気角に基づいて特定の相に正負の順に判定用電圧を印
加した時、それに応じて生じる電流変化量ΔI1,ΔI
2の大小関係によって、極性認識の正否を判定すること
ができる。
定用電圧を印加する場合を例示した。駆動電流が値0と
なるタイミングで判定用電圧を印加した場合には、正負
いずれの方向でも磁気飽和が生じない可能性がある。本
実施例では、かかる原因による誤判定を回避するため、
電気角に応じて判定用電圧を印加する相を切り替えてい
る。換言すれば、電気角に応じて電流値がピーク値に近
くなっている相を選択して、判定用電圧を印加するので
ある。もっとも、かかる相の切り替えは必ずしも必要で
はなく、U,V,W相のいずれかに固定して極性判定を
行うことも可能である。但し、相の切り替えを行えば、
より安定して精度良く極性判定することができる利点が
ある。
ラフである。各相にロータのN極が対向している時にコ
イルに磁気飽和が生じる程度の電圧を印加した場合の関
係を示した。U相については、N極が対向する電気角0
(rad)と、S極が対向する電気角π(rad)で電
流変化量ΔIuに顕著な差違が生じる。W相について
は、N極が対向する電気角2π/3(rad)と、S極
が対向する電気角5π/3(rad)で電流変化量ΔI
wに顕著な差違が生じる。V相については、N極が対向
する電気角4π/3(rad)と、S極が対向する電気
角π/3(rad)で電流変化量ΔIvに顕著な差違が
生じる。
定用電圧を印加する相を切り替えることにより、極性判
定を確実に行うことができる。 -π/6≦θ<π/6, 5π/6≦θ<7π/6 → U相; π/6≦θ<π/2, 7π/6≦θ<3π/2 → V相; π/2≦θ<5π/6, 3π/2≦θ<11π/6 → W相; この関係を、図8中に併せて示した。極性が誤認識され
ている場合でも、判定用電圧を印加する相は変わらな
い。
ャートである。CPUは、図8に示した方法によって、
判定用電圧を印加する相を電気角θに基づいて決定する
(ステップS310)。こうして決定された相に対し、
正方向に判定用電圧を印加して、電流変化量の絶対値Δ
Ipを検出する(ステップS312,S314)。次
に、負方向に判定用電圧を印加して、電流変化量の絶対
値ΔInを検出する(ステップS316,S318)。
図7に例示した判定用電圧の印加に相当する処理であ
る。電圧の大きさ、印加時間および正電圧を印加してか
ら負電圧を印加するまでの間隔は、モータ40の定格等
に応じて実験等により定められる。
化量の絶対値ΔIp、ΔInの大小関係に基づいて極性
判定を行う(ステップS320)。先に説明した通り、
「ΔIp>ΔIn」であれば、極性は正しく認識されて
いると判定される。「ΔIp<ΔIn」であれば、極性
は誤認識されていると判定される。
1態様では、2方向の電流変化量ΔIp、ΔInの大小
関係に基づいて極性判定を行う場合を例示した。図8に
示す通り、ΔIpが取りうる範囲と、ΔInが取りうる
範囲は異なっている。従って、両者の中間に位置する閾
値と、ΔIp、ΔInのいずれか一方とを比較すること
により、極性判定を行うことも可能である。かかる場合
の判定処理を第2態様として説明する。
理(図9)からステップS316,S318を省略した
処理内容となる。第1態様では、ステップS320にお
いて、ΔIp、ΔInの大小関係に基づいて極性判定を
行ったのに対し、第2態様では、ΔIpと所定の閾値と
の大小関係に基づいて極性判定を行う点で相違する。
る。図10は、極性認識の正誤に伴う電流変化の差違を
示すグラフである。図9で示した処理によって選択され
た相に一定の判定電圧を印加した場合の実験結果を示し
た。図中の実線は極性が正しく認識されている場合、破
線は極性が誤認識されている場合の結果を示している。
電流変化は、トルク、回転数の影響を受けるため、代表
的な回転数について各トルクに対する結果をプロットし
た。図示する通り、極性判定の正誤によって、電流変化
には有意差が生じることが分かる。第2態様における閾
値は、検出された電流変化に基づいて両者を判別する基
準となる値である。従って、閾値は、各回転数およびト
ルクに対応する実線と破線に挟まれた領域内で任意に設
定可能である。第2態様では、両者の中央値を閾値とし
て設定した。
る。図示する通り、閾値Thは、トルクおよび回転数の
関数として設定される。第2態様では、この設定結果を
予めマップとして記憶しておく。検出された電流変化が
この閾値Thよりも大きい場合には極性が正しく認識さ
れていると判断される。電流変化が閾値Thよりも小さ
い場合には極性が誤って認識されていると判断される。
図11には、トルクおよび回転数が共に正の場合の設定
結果を図示したが、両者の符号の組み合わせに応じて閾
値Thを用意してもよい。
を1回印加するだけで極性判定をすることができる。従
って、判定処理に要する時間を短縮することができる。
また、判定用電圧の印加に伴う異音を抑制することもで
きる。
を印加する場合を例示したが、U,V,W相のいずれか
特定の相に判定用電圧を印加するものとしてもよい。か
かる場合には、判定用電圧を印加する際の電気角に応じ
て電流変化が影響を受けるため、閾値は回転数、トルク
および電気角の関数として設定しておくことが望まし
い。
ではΔIpと閾値Thとの比較によって極性判定を行う
場合を例示した。判定用電圧を印加する相を切り換える
場合、ΔIpは、図7中におけるΔI1を利用すること
と同等である。つまり、電流が正のピーク時に正方向に
判定用電圧を印加することになる。かかる判定では、例
えば、要求トルクが比較的大きい場合など、駆動用電圧
のみで既に磁気飽和が生じている場合に、極性判定の精
度が低下する可能性がある。かかる場合には、極性判定
の正誤に関わらず、判定用電圧に対しては磁気飽和が生
じている時に相当する大きな電流変化が現れるからであ
る。
を抑制する方向に判定用電圧を印加することが有効であ
る。例えば、第2態様の処理において、ΔIpに代えて
ΔInを用いればよい。これは、図9のフローチャート
で、ステップS312,S314を省略した処理で実現
される。この場合も第2態様と同様、電流変化と閾値と
の比較によって極性判定を行うことができる。第3態様
では、極性が正しく認識されている場合には、磁気飽和
が生じないため、電流変化は比較的小さくなる。極性が
ご認識されている場合には、磁気飽和が生じるため、電
流変化は比較的大きくなる。判断基準となる閾値は、第
2態様と同様の方法で設定可能である。
を伴わず、特定の相に判定用電圧を印加するものとして
もよい。特定の相に流れる電流は、電気角に応じて正負
が周期的に変化する。第3態様は、駆動電流を抑制する
方向に判定用電圧を印加する。従って、各相に流れてい
る電流の正負を検出し、この検出結果に基づいて判定用
電圧の印加方向を切り換える。つまり、正方向に電流が
流れている場合には負方向に判定用電圧を印加し、負方
向に電流が流れている場合には正方向に判定用電圧を印
加する。電流の流れる方向はπ(rad)周期で変化す
るから、判定用電圧の印加方向もπ(rad)周期で変
化することになる。
生じるほどの大きな駆動電流が流れている場合でも、精
度良く極性判定を行うことができる利点がある。また、
第2態様と同様、判定用電圧を1回印加するだけで極性
判定することができる利点もある。
第4態様の極性判定の原理を示す説明図である。第4態
様は、正負の順に判定用電圧を印加し、それに応じて生
じる電流変化量の大小関係に基づいて極性判定を行う点
で第1態様と共通する。但し、第4態様では、判定用電
圧の印加前に駆動用電圧を0に低減する点で第1態様と
相違する。
の状態を示した。ここでは、コイルに実際に印加される
電圧値を示した。図示する通り、t1までの時間では、
駆動用の電圧がコイルに印加されている。また、コイル
には、この電圧に応じた電流が流れている。
駆動用電圧を0とする。コイルに流れる電流はこれに伴
い減衰する。電流が十分に減衰した時刻t2から、正負
の順に判定用電圧を印加する。判定用電圧は、正方向の
印加時に磁気飽和を生じさせる程度の大きさに設定され
ている。従って、正負それぞれの電流変化量ΔI11、
ΔI12の大小関係に基づいて極性を判定することがで
きる。極性判定が終了した後、時刻t3以降は、再び駆
動電圧が印加される。
チャートである。第1態様の極性判定処理(図9)と異
なる部分のみを示した。第4態様では、第1態様と同様
の方法で判定用電圧を印加する相を決定した後(ステッ
プS310)、コイルの電圧指令値を0にする(ステッ
プS311)。こうしてコイルに流れる電流を十分に低
減させた後、判定用電圧の印加を行う(ステップS31
2)。その後の処理は、第1態様(図9)と同じであ
る。
低減させてから判定用電圧を印加することにより、極性
の誤判定を抑制することができる。要求トルクが比較的
高い場合、駆動用電圧には磁気飽和に近い。かかる状態
では、判定用電圧を負方向に印加した場合でも、磁気飽
和が生じる可能性がある。第4態様では、極性判定前に
コイルの電流を抑制するため、正負いずれか一方の印加
時にのみ磁気飽和が生じ、確実に極性を判定することが
可能となる。
0に限定されない。正負いずれか一方に判定用電圧を印
加した時にのみ磁気飽和が生じる程度にコイルの電流を
抑制できる範囲の値を任意に用いることができる。
電圧を印加する相の決定は、電気角の推定値に基づいて
行う場合を例示した(図8参照)。これに対し、U,
V,W相にそれぞれ順次判定用電圧を印加し、極性判定
に適した顕著な電流変化が現れた相を判定に使用するも
のとしてもよい。例えば、第1態様および第4態様では
正負の判定用電圧に対する電流変化の差違が最も大きい
相を選択することができる。第2態様、第3態様では、
判定用電圧に対する電流変化が最大または最小となる相
を選択することができる。この方法は、判定用電圧を3
つの相にそれぞれ順次印加する必要があり、処理時間を
要するという欠点はあるものの、電気角の推定誤差が比
較的大きい場合でも、安定して極性判定を行うことがで
きる利点がある。
の極性判定処理の原理について説明する。図14は誤差
角Δθとq軸電流の変化量ΔIqの関係を示すグラフで
ある。要求トルク別に3種類を示した。曲線C1,C
2,C3の順に要求トルクが低い。ΔIqは、電気角検
出処理において式(3)に従って算出される値である。
近傍の領域PC1と、π(rad)近傍の領域PO1で
は、誤差角に対するΔIqの傾きが相違する。第5態様
の極性判定では、傾きの相違に着目して極性判定を行
う。なお、第5態様では、「誤差角」に対する傾きを利
用するため、第1、第4態様と異なり、U相,V相,W
相の切り替えを考慮する必要はない。
明図である。一定の回転数、要求トルクで500回に亘
り、極性正常時と異常時のΔIqの傾きを算出し、統計
的に示した図である。正の傾きは、極性正常時の値であ
る。負の傾きは、極性異常時の傾きである。運転中は、
誤差角が変動するため、傾きにもばらつきが生じる。し
かしながら、図示する通り、正常時と異常時の傾きは、
正負で明確に区別される。従って、ΔIqの傾きの正負
に基づき、極性の正否を判定することができる。
チャートである。この処理では、電気角θを2通りに変
化させてそれぞれΔIqを求め、それらの値を用いて傾
きを算出する。
θを加えた方向に検出用電圧を印加し(ステップS33
0)、生じた電流変化量ΔIq1を算出する(ステップ
S334)。次に、電気角θから所定の誤差角Δθを引
いた方向に検出用電圧を印加し(ステップS336)、
生じた電流変化量ΔIq2を算出する(ステップS33
8)。これらの処理は、それぞれ電気角検出処理のステ
ップS102〜S106と同様の方法で行われる。
いて、CPUは傾きΔItを算出する(ステップS34
0)。即ち、 ΔIt=(ΔIq1−ΔIq2)/(2Δθ); である。そして、傾きΔItが正であれば極性は正しく
認識され、負であれば極性は誤認識されていると判断す
る(ステップS342)。
る場合を例示した。第5態様では、傾きΔItが算出で
あれば、電圧を印加する2方向は、任意に選択可能であ
る。いずれか一方を電気角θ自体としてもよい。
た電圧およびΔIqで兼用することもできる。電気角検
出処理で最初に想定されている電気角に敢えて2つの異
なる誤差角を含ませてΔIqを算出するものとしてもよ
い。このように電気角検出処理を極性判定にも活用する
場合には、誤差角は制御の不安定化を招かない範囲で設
定することが望ましい。かかる範囲は、要求トルク、回
転数、極性判定の実行周期などに依存するため、これら
をパラメータとして誤差角を設定すればよい。第5態様
では、ΔIqを用いる場合を例示したが、ΔIdを用い
ても極性判定を行うことができる。
では、電流変化量ΔIqの推移によって極性判定を行
う。極性判定の原理を図14に基づいて説明する。
0)において、図14中の点P1および点P2に相当す
る電流変化量ΔIqが検出された場合を考える。電気角
検出処理では、誤差角が±π/2(rad)程度の範囲
に収まっているものとして電気角の検出を行う。従っ
て、電流変化量ΔIqに応じた誤差角は点P2相当と認
識される。この誤差角が0となるように電気角を補正す
れば、点P2は図中の矢印A1方向に移動する。これに
伴って、電流変化量ΔIqは、徐々に低減する。
れは、CPUは点P2相当の状態と認識しているにも関
わらず、実際には点P1相当の状態にある場合に相当す
る。CPUは点P2相当の誤差角に基づいて電気角を修
正するから、現実の状態は点P1から図中の矢印A2方
向に移動する。この結果、電流変化量ΔIqは、徐々に
増加する。極性が誤判定されている場合には、電流変化
量ΔIqの収束までに長期間を要する。第6態様では、
かかる特定を考慮して、所定値以上の電流変化量ΔIq
が長期間継続した場合に極性が誤認識されているものと
判定する。
チャートである。CPUは、継続時間判定用の変数Tを
0に初期化する(ステップS350)。次に、電気角θ
方向に検出用電圧を印加し(ステップS352)、それ
に対する電流変化量ΔIqを算出する(ステップS35
4)。算出は、先に示した式(3)を用いて行われる。
である場合には(ステップS356)、十分収束したも
のと判断され、極性判定フラグをオフにする(ステップ
S364)。即ち、極性は正しく認識されているものと
判定する。閾値Thは、極性が正しく認識されている状
況下での電流変化量ΔIqの変動範囲を考慮して任意の
値に設定することができる。
合(ステップS356)には、極性が誤認識されている
可能性があると判定される。従って、変数Tを所定値Δ
Tだけ増加する(ステップS358)。所定値ΔTは、
ステップS352〜S358の繰り返し実行周期に相当
する値である。
は(ステップS360)、電流変化量ΔIqが長期間収
束しなかったものと判定し、極性判定フラグをオンにす
る(ステップS362)。つまり、極性が誤認識されて
いるものと判定する。
は、ステップS352〜S358の処理を繰り返し実行
する。電気角θには、実行の都度、電流変化量ΔIqを
反映した補正が施される。
間の判断基準となる値である。極性が正常に認識されて
いる場合に収束に要する時間を考慮して任意の値を設定
可能である。所定値Tthは、ノイズの影響によって電
流変化量ΔIqが一時的に大きな値となった場合の誤判
定を回避できる程度の大きさに設定することが望まし
い。
352、S354を電気角検出処理(図4のステップS
100)で兼用することもできる。電気角検出処理で
は、電流変化量ΔIqが算出されるから(図5のステッ
プS106参照)、この値を用いて極性判定をするもの
としてもよい。第6態様において、電流変化ΔIdを用
いることも可能である。
第7態様の極性判定処理のフローチャートである。第7
態様の極性判定処理では、要求トルクに応じて2種類の
極性判定処理を使い分ける。つまり、CPUは要求トル
クが所定値Tch以下の場合には低トルク用極性判定処
理を実行する(ステップS370,S372)。要求ト
ルクが所定値Tchよりも大きい場合には高トルク用極
性判定処理を実行する(ステップS370、S37
4)。
判定処理は、それぞれ第1〜第6態様の極性判定を任意
に適用可能である。特に、低トルク用極性判定処理に
は、第1態様の処理を適用することが望ましい。第1態
様の処理は、磁気飽和を利用している点で低トルク時に
適した方法だからである。また、駆動用電圧を低下させ
ずに極性判定を行うため、判定時に異音や振動が生じる
可能性も低い。
たは第6態様の処理を適用することが望ましい。これら
の処理は、高トルク時により安定して極性判定を行うこ
とができるからである。図14の曲線C3に着目する。
これは要求トルクが比較的小さい場合の電流変化量ΔI
qを表す曲線である。図中の領域PC3,PO3におけ
る電流変化量ΔIqの値およびその傾きは比較的小さ
い。これに対し、高トルク時の曲線C1では、顕著な差
違が生じる。
じて2種類の極性判定方法を使い分けることにより、幅
広い運転状態で安定して極性判定を行うことができる。
なお、使い分けの判断基準となる所定値Tchは、2種
類の判定方法の特性、即ち、極性判定精度、処理に要す
る時間等を考慮して、任意に設定可能である。
によれば、極性判定処理を適宜行うことにより、ノイズ
等の影響により、不測の誤差が生じた場合でも、その影
響を抑制することができる。この結果、制御の信頼性、
安定性を向上することができ、モータの異音、振動を抑
制することができる。
したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣
旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができるこ
とはいうまでもない。例えば、以上の制御処理はソフト
ウェアで実現する他、ハードウェア的に実現するものと
してもよい。
を示す説明図である。
略構成を示す説明図である。
る。
Bとの関係を示すグラフである。
る。
る。
る。
グラフである。
る。
ある。
を示すグラフである。
る。
ある。
ある。
ある。
Claims (15)
- 【請求項1】 コイルが巻回されたステータとロータと
を有する同期モータの運転をセンサレスで制御するモー
タ制御装置であって、 前記コイルに電圧を印加する電圧印加回路と、 該印加された電圧に応じて前記コイルに流れた電流を検
出する電流センサと、 前記電圧と電流との関係に基づいて該ロータの電気角の
推定値に含まれる誤差を逐次補正しながら、該推定値に
基づいて該同期モータに駆動用の電圧を印加するよう前
記電圧印加回路を制御する駆動制御手段と、 前記同期モータの回転中に、所定のタイミングで、前記
ロータの極性を判定する極性判定手段とを備え、 前記極性判定手段は、 所定の判定用電圧を印加するように前記電圧印加回路を
制御する判定用電圧印加手段と、 前記電流センサで検出された電流の変化に基づいて、極
性の判定を行う判定手段を有するモータ制御装置。 - 【請求項2】 前記駆動制御手段は、前記極性判定の結
果をも反映した補正を行う手段である請求項1記載のモ
ータ制御装置。 - 【請求項3】 請求項1記載のモータ制御装置であっ
て、 前記駆動制御手段は、 所定の検出用電圧を印加するように前記電圧印加回路を
制御する検出用電圧印加手段と、 前記電流センサで検出された電流値を用いた所定の演算
により前記推定値と真値との誤差角を求める誤差角特定
手段と、 該誤差角を反映させて前記推定値の補正を行う反映手段
とを有する手段であるモータ制御装置。 - 【請求項4】 請求項3記載のモータ制御装置であっ
て、 前記誤差角特定手段は、前記同期モータのd軸方向の電
流変化量ΔId、q軸方向の電流変化量ΔIqの多項式
をパラメータとする比例項、積分項を含む所定の演算式
により前記誤差角を求める手段であるモータ制御装置。 - 【請求項5】 前記判定用電圧印加手段は、所定の相に
対して、前記ロータの極性に応じて該相に磁気飽和を生
じさせ得る大きさの前記判定用電圧を印加する手段であ
る請求項1記載のモータ制御装置。 - 【請求項6】 請求項5記載のモータ制御装置であっ
て、 前記判定用電圧印加手段は、前記判定用電圧を正方向お
よび負方向に交互に印加する手段であり、 前記判定手段は、正方向と負方向の判定用電圧に応じて
生じた電流の大小関係に基づいて極性判定を行う手段で
あるモータ制御装置。 - 【請求項7】 請求項5記載のモータ制御装置であっ
て、 前記極性判定手段は、前記判定用電圧の印加に先立っ
て、前記コイルに流れる電流を磁気飽和が生じない範囲
まで抑制する電圧を印加する抑制電圧印加手段を備える
モータ制御装置。 - 【請求項8】 請求項5記載のモータ制御装置であっ
て、 前記判定用電圧印加手段は、前記判定用電圧を各判定に
つき1回だけ印加し、前記判定手段は、該判定用電圧に
応じて生じた電流と所定の閾値との大小関係に基づいて
極性判定を行うモータ制御装置。 - 【請求項9】 請求項8記載のモータ制御装置であっ
て、 前記判定用電圧印加手段は、前記所定の相に流れている
電流を低減する方向に前記判定用電圧を印加するモータ
制御装置。 - 【請求項10】 前記所定の相は、電気角の推定値に応
じて定められている請求項5記載のモータ制御装置。 - 【請求項11】 請求項1記載のモータ制御装置であっ
て、 前記判定用電圧印加手段は、電気角に対し相対的に定ま
る所定方向に前記判定用電圧を印加する手段であり、 前記判定手段は、極性正常時における電流変化の範囲か
ら外れる電流変化が所定期間継続して現れた場合に極性
異常と判定する手段であるモータ制御装置。 - 【請求項12】 請求項1記載のモータ制御装置であっ
て、 前記判定用電圧印加手段は、電気角に応じて相対的に定
まる少なくとも2方向に前記判定用電圧を印加する手段
であり、 前記判定手段は、該2方向それぞれで該判定用電圧に応
じて生じた電流変化の相違に基づいて極性を判定する手
段であるモータ制御装置。 - 【請求項13】 請求項12記載のモータ制御装置であ
って、 前記2方向は、前記同期モータへの要求トルクに応じて
予め定められた方向であるモータ制御装置。 - 【請求項14】 請求項1記載のモータ制御装置であっ
て、 判定用電圧印加手段として電気角の推定値に応じて定ま
る所定の相に対して前記判定用電圧を印加する手段を備
える第1の極性判定手段と、 判定用電圧印加手段として電気角に対し相対的に定まる
所定方向に前記判定用電圧を印加する手段を備える第2
の極性判定手段と、 前記同期モータの運転状態に応じて前記第1の極性判定
手段と前記第2の極性判定手段とを切り替えて極性判定
を行う切替手段とを備えるモータ制御装置。 - 【請求項15】 コイルが巻回されたステータとロータ
とを有する同期モータの運転をセンサレスで制御するモ
ータ制御方法であって、(a) 前記コイルに印加され
た電圧と該電圧に応じて流れる電流との関係に基づい
て、前記ロータの電気角の誤差を逐次補正しながら、前
記同期モータを駆動する工程と、(b) 前記同期モー
タの回転中に、所定のタイミングで、前記コイルに所定
の判定用電圧を印加し、該電圧に応じて生じた電流の変
化に基づいて、前記ロータの極性を判定する工程とを備
えるモータ制御方法。
Priority Applications (1)
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