JP2002088645A - 洗濯耐久性を有する高塩水吸収性繊維及びその製造方法 - Google Patents

洗濯耐久性を有する高塩水吸収性繊維及びその製造方法

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JP2002088645A JP2000279976A JP2000279976A JP2002088645A JP 2002088645 A JP2002088645 A JP 2002088645A JP 2000279976 A JP2000279976 A JP 2000279976A JP 2000279976 A JP2000279976 A JP 2000279976A JP 2002088645 A JP2002088645 A JP 2002088645A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生理食塩水に対して高い吸収性能を有し、さ
らに繰り返して洗濯した際に重量減少と生理食塩水吸収
性能の低下をほとんど示さない洗濯耐久性を併せ持つ高
塩水吸収性繊維を提供する。 【解決手段】 被洗濯履歴を有しないときの生理食塩水
吸収性能が自重の 5〜15倍であり、10回繰り返し洗濯後
の、重量保持率が90%以上生理食塩水吸収性能保持率が8
5%以上である高塩水吸収性繊維。 【効果】 本発明になる高塩水吸収性繊維は生理食塩水
に対する吸収性能が高いばかりでなく、繰り返し洗濯に
よる生理食塩水吸収性能の低下がほとんどない為、介護
用途、リネン用途、衣料用途への適用が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高度な塩水吸収性能
を有し、さらに繰り返し洗濯による塩水吸収性能の低
下、重量変化がほとんどない高塩水吸収性繊維とその製
造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自重の数百倍もの水分を吸収する吸水性
樹脂は紙おむつや生理用品等の吸収剤、農園芸用の保水
材、土壌改良剤、止水材等に使用されている。この様な
吸水性樹脂としては、例えば、デンプン-アクリロニト
リルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン-アクリ
ル酸グラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架
橋物、酢酸ビニル-アクリル酸メチル共重合体加水分解
物、ポリアクリル酸塩架橋物等が一般的に使用されてい
る。
【0003】また、吸水性樹脂は主に粉体で供給されるが一
部で繊維状のものが上市されており、その加工性の良さ
を生かして不織布、成形体、エレメント等に加工して様
々な用途に展開されている。この様な吸水性繊維として
は、特開昭54-138693号公報にアクリロニトリル系繊維
を内層、ポリアクリル酸塩架橋体を外層とした芯-鞘2層
構造の繊維が良好な繊維物性を維持しながら高吸水性を
発現するものとして開示されている。また、特開平6-65
810号公報にカルボキシル基を有するビニルモノマーと
ヒドロキシル基及び/またはアミノ基を有するビニルモ
ノマーとの共重合体からなる高吸水性繊維が開示されて
いる。
【0004】この様な吸水性繊維は高吸水性を示すものの、
吸水膨潤した際の吸水性繊維自体の強度が非常に弱い。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとヒドロキシル
基及び/またはアミノ基を有するビニルモノマーとの共
重合体からなる高吸水性繊維であれば繊維形態そのもの
が破壊され粉状になる、あるいは芯-鞘2層構造を有する
ものであればポリアクリル酸架橋体からなる外層が剥が
れ落ちてアクリロニトリル系繊維からなる内層部だけが
残るという欠点を有している。
【0005】汗、尿、生理食塩水等の塩水吸収性能が要求さ
れる介護、衣料用途に於いては、高い塩水吸収性能と共
に繰り返し使用を想定した洗濯耐久性能が要求されるが
従来の技術では上記欠点を有しているために要求を満た
す塩水吸収性繊維は得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は上記のよう
な問題点を克服するために、高い塩水吸収性能と洗濯に
よる吸水繊維の物理的破壊がなく、従って繰り返し洗濯
をしても塩水吸収性能が低下しない高塩水吸収性繊維に
ついて鋭意検討した結果、本発明に到達したものであ
る。かかる物性を有する高塩水吸収性繊維を開発するこ
とは、従来の吸水性繊維では困難であった塩水吸収性能
と洗濯耐久性の両立を可能にし、該高塩水吸収性繊維を
加工することで装身具、衣料、寝具、リビング用品、花
粉症や風邪用マスク、切花輸送用包装材料、蓄冷剤、失
禁者用シーツ、メディカル用シーツ、靴インソール汗取
り、脇の下の汗取り材、前掛け、フェイスマスク、額、
足、首などの冷却材、失禁パンツ、バスマット、歯科
用、医療用、介護用吸水材料などの様々な用途への応用
が可能となる。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の構成を
有するものである。 1. 被洗濯履歴を有しないときの生理食塩水吸収性能が
自重の 5〜15倍であり、10回繰り返し洗濯後の、重量保
持率が90%以上で生理食塩水吸収性能保持率が85%以上で
ある高塩水吸収性繊維。 2. 繊維断面が、生理食塩水吸収性能を主に担当する表
層吸収部と引張乾強度を主に担当する芯部の、2層で構
成されていることを特徴とする上記1記載の高塩水吸収
性繊維。 3. 被洗濯履歴を有しない繊維の、窒素含有率が10〜15
重量%、引張乾強度が1.0cN/dtex以上であることを特徴
とする上記1または上記2記載の高塩水吸収性繊維。 4. アクリロニトリル系重合体でなる繊維を基材として
なることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の高塩
水吸収性繊維。 5. アクリロニトリル系重合体でなる繊維をヒドラジン
と水溶液がアルカリ性を示すアルカリ金属化合物(以下
「水溶液がアルカリ性を示すアルカリ金属化合物」を、
単にアルカリ性金属化合物と略称することがある。)を
用いて処理し、繊維中に架橋構造の導入と、-COOX(X:
アルカリ金属またはNH4)で示される塩型カルボキシル基
の含有率が2.0〜5.0mmol/gとなるように加水分解を行わ
しめることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載する
高塩水吸収性繊維の製造方法。 6. 前記の処理を、先ずヒドラジンにより窒素含有率の
増加が0.1〜1.0重量%となるように処理し、次いで水溶
液がアルカリ性を示すアルカリ金属化合物による処理
と、逐次に行うことを特徴とする上記5記載の高塩水吸
収性繊維の製造方法。 7. 上記5または上記6記載の処理に際し、被処理繊維
表面に水溶液がアルカリ性を示すアルカリ金属化合物を
繊維重量に対し2.5〜10.0meq/g付着せしめて行うことを
特徴とする上記5または上記6記載の高塩水吸収性繊維の
製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を記述する。まず本
発明の高塩水吸収性繊維は、洗濯耐久性を備えることが
特徴であるが、未だ洗濯操作を受けていないとき即ち被
洗濯履歴を有しないときでも高い塩水吸収性能を有して
いる。本発明では塩水吸収性能を表現する物差しとして
生理食塩水(測定条件は後述する)の繊維自重当りの吸
収重量を用いるが、その吸収倍率で表示して被洗濯履歴
を有しないときでは5〜15倍、より好ましくは8〜15倍を
有する繊維である。
【0009】また、本発明繊維の洗濯耐久性は、10回の繰り
返し洗濯(洗濯条件は後述する)後で、繊維自重の重量
保持率が90%以上且つ前記した生理食塩水の吸収倍率の
当初(被洗濯履歴を有しないとき)のそれとの比率で表
示した生理食塩水吸収性能保持率が85%以上というもの
である。
【0010】従来の技術による吸水性繊維は、当初の吸水性
能は高くても塩水例えば生理食塩水の吸収となると途端
に性能が発現されず、また洗濯を受けると繊維自体の重
量が激減して行く、即ち繊維の構成成分が溶出してしま
い、洗濯経験後はほとんど塩水吸収性を有するとは言え
ないものとなってしまっていた。かかる現状の中で前述
の洗濯耐久性を有し、しかも塩水吸収性である本発明繊
維は画期的である。
【0011】かかる本発明繊維の当初生理食塩水吸収性能は
5〜15倍であるが、これが5倍未満であると高い塩水吸収
性能を有しているとは言い難いため、15倍を超えると洗
濯耐久性が発現できないため、いずれも本発明で解決し
ようとする課題を克服することはできない。また、繰り
返し洗濯後の重量保持率が90%を下回ったり生理食塩水
吸収性能保持率が85%未満では洗濯により該繊維が劣化
していることは明らかであり洗濯耐久性を有していると
いえるレベルから程遠く、本発明で解決しようとする課
題を克服することはできない。
【0012】かかる発明繊維の断面構造としては、表層吸収
部と芯部のいわゆるシース・コア型2層構造でなるもの
が推奨される。この場合表層吸収部は本発明繊維の生理
食塩水吸収性能を主に担当し、芯部は引張乾強度を主に
担当すると言う機能分担が行われている。なおここで
「主に」の表現は、通常用いられている意味で程度を表
しており、例えば芯部は本発明繊維の引張乾強度のかな
りの部分を担っているが、吸収性能は全く示さないのか
と言うとそうではないという程の意味である。
【0013】本発明繊維を別の観点からの特徴で記述すれ
ば、洗濯前当初繊維の構成成分のうち窒素成分の含有率
が繊維重量に対し10〜15重量%であり、引張乾強度は1.0
cN/dtex以上であることが挙げられる。この乾強度は上
述の通り発明繊維の芯部によって主に担われているが、
それ故に該繊維が塩水吸収した時にも大きくは影響を受
けず、発明繊維の使用の場における強さを担保すること
になる。
【0014】かかる本発明の繊維は、出発材料としてアクリ
ロニトリル系重合体でなる繊維を基材としたとき最も工
業的有利に実現される。その理由は該重合体がニトリル
基という化学修飾に対して活性な基を有していることに
依る。以下本発明繊維の製造方法について説明する。
【0015】まず、アクリロニトリル系重合体でなる繊維
(以下アクリロニトリル系繊維という)を構成するアク
リロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルを80
重量%以上、好ましくは85重量%以上含む重合体が望まし
い。共重合モノマーとしては塩化ビニル、臭化ビニル、
塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビ
ニリデン類:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、
イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸及びこれら
の塩類:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル
酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アク
リル酸エステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等
のビニルエステル類:ビニルスルホン酸、(メタ)アリ
ルスルホン酸、P-スチレンスルホン酸等のエチレン系不
飽和スルホン酸及びこれらの塩類:(メタ)アクリルア
ミド、シアン化ビニリデン、メタアクリロニトリル等の
ビニル化合物類等があげられる。
【0016】繊維直径としては、吸収速度、不織布加工、紡
績加工した場合の柔軟性の観点からできるだけ細いもの
が好ましいが、繊維物性等の兼ね合いから概ね3〜100μ
m、好ましくは5〜50μmのものが推奨される。また繊維
の断面形状としては、丸、扁平、三角など限定されるこ
となく用いることができる。
【0017】該アクリロニトリル系繊維を出発物質として使
用し、目的とする高塩水吸収性を付与するためには、ヒ
ドラジン架橋処理後、加水分解処理またはヒドラジン架
橋、加水分解同時処理することが必要である。本発明に
て加水分解に使用する水溶液がアルカリ性を示すアルカ
リ金属化合物とは、アルカリ金属化合物の1.0wt%水溶液
のpHが7.5以上を示す物質をいい、かかる物質の例とし
ては、Na、K、Li等のアルカリ金属の水酸化物または炭
酸、酢酸、ギ酸等の有機酸のNa、K、Li等のアルカリ金
属塩をあげることができる。次に上述処理の詳細を説明
する。
【0018】はじめにアクリロニトリル系繊維にヒドラジン
架橋を導入した後、次いで加水分解を行う方法について
説明を行う。アクリロニトリル系繊維にヒドラジン架橋
を導入する方法としては、窒素含有率の増加が0.1〜1.0
重量%に調整しうる手段である限り採用できるが、ヒド
ラジン(N2H4純分換算)濃度0.1〜10.0重量%、温度50〜12
0℃で5〜120分間処理する手段が工業的に好ましい。こ
こで窒素含有率の増加とは、原料アクリロニトリル系繊
維の窒素含有率とヒドラジン架橋アクリロニトリル系繊
維の窒素含有率の差を言う。
【0019】なお窒素含有率の増加が上記下限に満たない場
合には、最終的に加水分解を施した後に得られる塩水吸
収性繊維が吸水して膨潤した際の表層吸収部はゲル状態
にあるが、該ゲルの物理的強度(以下ゲル強度という)
が低く、従って洗濯耐久性を有する高塩水吸収性繊維が
得られない。上限を超えると、最終的に加水分解を施し
た後に得られる塩水吸収性繊維の塩水吸収性能が低く目
的とする高塩水吸収性繊維は得られない。ここに使用す
るヒドラジンとしては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジ
ン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジ
ン等が例示される。
【0020】なお、アクリロニトリル系繊維をポンプ循環系
を備えた容器内に充填し、ヒドラジン水溶液をポンプよ
り循環しつつ反応を進めて上記ヒドラジン架橋を導入す
る手段が、装置上、安全性、均一反応性等の諸点から望
ましい。かかる装置(ポンプ循環系を備えた容器)の代
表例としては、オーバーマイヤー染色機が挙げられる。
【0021】かくして得られたヒドラジン架橋アクリロニト
リル系繊維を加水分解する手段は、アルカリ性金属化合
物またはその水溶液を該繊維の乾燥重量に対し、純分の
アルカリ性金属化合物量が2.5〜10.0meq/g、好ましくは
5.0〜10.0meq/gの範囲内になるように付着させた繊維を
調整し、該繊維を80℃以上の温度で5〜120分間加熱、好
ましくは100〜150℃の湿熱雰囲気下で10〜40分間加熱す
る手段を採用することが望ましい。なお、アルカリ性金
属化合物の水性溶液を作製する溶媒としては、工業上は
水が好ましいが、アルコール、アセトン、ジメチルホル
ムアミド等の水混和性有機溶媒と水との混合溶媒でも良
い。
【0022】なお繊維の乾燥重量に対するアルカリ性金属化
合物の付着量が上記下限に満たない場合は、加水分解に
より生成する塩型カルボキシル基量が2.0mmol/g未満と
なり高塩水吸収性能が得られない。上限を超えると加水
分解により生成する塩型カルボキシル基量が5.0mmol/g
を超え、繊維全体が加水分解されて芯部-表層吸収部2層
構造の芯部分が消失、または部分的に2層構造の芯部が
消失した塩水吸収性繊維が形成され、洗濯した際にこの
1層構造部分が破壊され洗濯耐久性能が発現されない。
【0023】続いてアクリロニトリル系繊維にヒドラジン架
橋の導入と加水分解を同時に行う方法について説明を行
う。ヒドラジンとアルカリ性金属化合物とを共存させた
水性溶液を、繊維の乾燥重量に対し、アルカリ性金属化
合物は付着量が2.5〜10.0meq/g好ましくは5.0〜10.0meq
/g、ヒドラジン(N2H4純分換算)が0.1〜1.5重量%、好ま
しくは0.5〜1.0重量%の範囲内になるように付着させた
繊維を調整し、該繊維を80℃以上の温度で5〜120分間加
熱、好ましくは100〜150℃の湿熱雰囲気下で10〜40分間
加熱する手段を採用することが望ましい。なお、水性溶
液を作製する溶媒としては、工業上は水が好ましいが、
アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水混
和性有機溶媒と水との混合溶媒でも良い。
【0024】なお乾燥繊維重量に対するヒドラジンの付着量
が上記下限に満たない場合には、最終的に加水分解を施
した後の塩水吸収性繊維のゲル強度が低く、従って洗濯
耐久性を有する高塩水吸収性繊維が得られない。上限を
超えると、最終的に加水分解を施した後の塩水吸収性繊
維の塩水吸収性能が低く目的とする高塩水吸収性繊維は
得られない。ここに使用するヒドラジンとしては、水加
ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒ
ドラジン、臭素酸ヒドラジン等が例示される。
【0025】なお繊維の乾燥重量に対するアルカリ性金属化
合物の付着量が上記下限に満たない場合は、加水分解に
より生成する塩型カルボキシル基量が2.0mmol/g未満と
なり高塩水吸収性能が得られない。上限を超えると加水
分解により生成する塩型カルボキシル基量が5.0mmol/g
を超え、繊維全体が加水分解されて芯部-表層吸収部2層
構造の芯部分が消失、または部分的に2層構造の芯部が
消失した塩水吸収性繊維が形成され、洗濯した際にこの
1層構造部分が破壊され洗濯耐久性能が発現されない。
【0026】このようにして、出発アクリロニトリル系繊維
の表層吸収部にヒドラジン架橋構造と2.0〜5.0mmol/gの
塩型カルボキシル基のほとんどが導入された、生理食塩
水吸収性能が自重の5〜15倍であり、1.0cN/dtex以上の
引張乾強度を有し、10回繰り返し洗濯後の重量保持率が
90%以上、生理食塩水吸収性能保持率が85%以上である洗
濯耐久性を有する高塩水吸収性繊維を提供することがで
きる。
【0027】ここで、-COOX(X:アルカリ金属またはNH4)で
示される塩型カルボキシル基の量(mmol/g)は、十分乾
燥した試料約0.4gを精秤(Xg)し、これに100mlの水と0.5
gの塩化ナトリウムを加えた後、1mol/lの塩酸水溶液を
添加してpH2にし、次いで0.1mol/lのNaOH水溶液で常法
に従って滴定曲線を求め、該滴定曲線からカルボキシル
基に消費されたNaOH水溶液消費量(Yml)を求め、また約
0.4gを精秤した試料(X1g)に100mlの水と0.5gの塩化ナト
リウムを加えた後、0.1mol/lのNaOH水溶液で上記と同様
に滴定してNaOH水溶液消費量(Y1ml)を求め、以上の測定
結果から、次式によって算出した。 (-COOX基量:mmol/g) =(全カルボキシル基量:mmol/g) -(酸型カルボキシル基量:mmol/g) = 0.1Y/X-0.1Y1/X1 なお、多価カチオンが含まれる場合は、常法によりこれ
らのカチオンの量を求め、上式を補正する必要がある。
【0028】なお、塩型カルボキシル基の種類としては、リ
チウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;また
はNH4の塩があげられる。かかる所望の型の塩型カルボ
キシル基の形成も、本発明では加水分解処理の一環とし
て扱う。加水分解の仕上げとして塩の型を作為的に変え
る場合の変換手段としては、酸型カルボキシル基含有繊
維をアルカリ金属水酸化物、炭酸水素ナトリウム、炭酸
ナトリウム等の塩基性塩、アンモニア等の水溶液で処理
したり、アンモニアガスで処理する手段があげられる。
なお、塩型カルボキシル基の量が前記範囲を満たしてい
る限り、酸型カルボキシル基が共存していても差し支え
ない。
【0029】なお、本発明で用いる塩水吸収性能の尺度であ
る生理食塩水吸収倍率は、試料約0.5gを25℃の生理食塩
水(本発明では0.9%NaCl水溶液を生理食塩水として使用
した)300ml中に30分間浸漬した後、遠心脱水(160G×5
分、ただしGは重力加速度)して調整した試料の重量を
測定(W1g)し、次に該試料を80℃の真空乾燥機中で恒量
になるまで乾燥した繊維の重量を測定(W2g)し、次式
によって算出したものである。 (生理食塩水吸収倍率:倍)=(W1-W2)/W2
【0030】なお、発明繊維加工品の使用時におけるへた
り、目詰まり等の一層の改善や、カードがけ等の発明繊
維の加工性の改善などの諸点から、捲縮を有する繊維を
出発アクリロニトリル系繊維として使用し、最終的に概
ね捲縮数4〜15個/25mm、捲縮度5〜25%の範囲内の捲縮特
性を備えた高塩水吸収性繊維を形成させることが望まし
い。
【0031】また、実用上問題のない繊維物性を維持し、か
つ高い塩水吸収性能を持たせながら洗濯に耐え得るゲル
強度を付与するという二律背反した課題を同時に満たす
本発明の繊維を提供するためには、特に下記特性を備え
た出発アクリロニトリル系繊維を選択することが望まし
い。
【0032】すなわち、繊維を形成するAN系重合体分子が十
分に配向しておりコンゴーレッド(以下CRという)二色
性比が0.45以上、更に好ましくは0.5以上のアクリロニ
トリル系繊維を採択することが望ましい。なお、CR二色
性比は、高分子化学23(252)193(1966)記載の方法に従っ
て求めた。
【0033】なお、かかるアクリロニトリル系繊維の製造手
段に限定はなく、上記CR二色性比が満たされている限
り、適宜公知の手段を用いることができるが、中でも全
延伸倍率を6倍以上、好ましくは8倍以上とし、かつ工程
収縮率を30%以下、好ましくは20%以下とする手段の採用
により工業的有利に所望のアクリロニトリル系繊維を作
製することができる。
【0034】なお、得られた高塩水吸収性繊維は、最終形態
に応じて適宜糸、不織布、編織物等に加工することがで
きる。特に寸法安定性が求められる使途においては、本
発明高塩水吸収性繊維と熱接着性繊維(好ましくは10〜
80%の混用率)からなる不織布が推奨される。なお、熱
接着性繊維としては、熱接着性を備えている限り使用で
き、例えば低融点-高融点成分が、ポリエチレン(PE)-
ポリプロピレン(PP)、PE-ポリエステル(PES)、PES-PES
等で形成される繊維などが挙げられる。
【0035】
【作用】本発明に係る洗濯耐久性を有する高塩水吸収性
繊維とその製造方法が、洗濯により重量減少をほとんど
起こさない、また生理食塩水吸収性能低下をほとんど起
こさない理由は概ね次のように考えられる。
【0036】即ち、本発明に関わる繊維は、アクリロニトリ
ル系繊維に予め、または加水分解反応時にヒドラジン架
橋構造を適量導入することで、最終的に繊維表面に形成
される架橋構造と-COOX基を併せ有する表層吸収部の塩
水吸収性能が損なわれない範囲で、ゲル強度を洗濯中に
起こると予想される物理的な摩擦力で剥がれない程度に
していると考えられる。
【0037】また、アルカリ性金属化合物またはその水溶液
を該繊維の乾燥重量に対し、純分のアルカリ性金属化合
物量が、2.5〜10.0meq/g好ましくは5.0〜10.0meq/gの範
囲内になるように付着させ加水分解を行うことで生成す
る塩型カルボキシル基量が5.0mmol/g以内になるよう調
整されている。このことにより加水分解が過度に進行し
引張乾強度を主に担当する芯部が消失することがなく、
繊維断面が生理食塩水吸収性能を主に担当する表層吸収
部と引張乾強度を主に担当する芯部の2層となり、洗濯
中に起こると予想される物理的なせん断力に対しても繊
維形態を崩すことなく保持するものと考えられる。
【0038】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が本発明の範囲は、これら実施例のみに限定されるもの
ではない。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り
重量基準で示す。
【0039】なお、洗濯試験は、JIS L 0217 103記載の洗い
方を利用し、中性洗剤を使用して実施した。なお、塩水
吸収性繊維はお茶パック(スバル株式会社製)に0.5g入
れて、入り口をホチキスで止めて封をしてから洗濯試験
にかけた。
【0040】窒素含有率の増加率は、原料アクリロニトリル
系繊維の窒素含有率とヒドラジン架橋アクリロニトリル
系繊維の窒素含有率を元素分析により求めた値の差を言
う。
【0041】実施例1〜4,比較例1〜5 AN90%及びアクリル酸メチル(以下MAという)10%からなる
AN系重合体(30℃ジメチルホルムアミド中での極限粘度
[η]:1.2)10部を48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解
した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍
率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で
乾燥(工程収縮率14%)し、機械捲縮付与後、カット
(繊維長51mm)してアクリロニトリル系繊維である原料
繊維1(CR二色性比0.58)を得た。次に、原料繊維1を表
1に示した条件でヒドラジン水溶液処理次いでNaOH水溶
液の処理を施した。ここでヒドラジン処理の場合、原料
繊維と処理液の重量比率は1/10であり、オーバーマイヤ
ー染色機にて処理を行ない、NaOH水溶液処理の場合は前
記処理済みの繊維の表面に処理液を付着させた後、湿熱
処理する方法によった。得られた繊維の特性値を表1に
示した。なお、これらの例のカルボキシル基の塩型はい
ずれもNaである。
【0042】
【表1】
【0043】実施例1〜4は生理食塩水吸収性能と共に10回繰
り返し洗濯後の重量保持率と生理食塩水吸収性能保持率
で評価できる洗濯耐久性に優れた性能を有していること
が判る。これに対して窒素含有率の増加率の大きい比較
例1は優れた洗濯耐久性を有するものの生理食塩水吸収
性能は低い。窒素含有率の増加率の少ない比較例2は高
い生理食塩水吸収性能を有するものの洗濯耐久性は低
い。洗濯により表層吸収部であるゲル層が剥離している
のが確認された。
【0044】塩型カルボキシル基量が少ない比較例3は優れ
た洗濯耐久性を有するものの生理食塩水吸収性能は低
い。塩型カルボキシル基量が多い比較例4、5は高い生理
食塩水吸収性能を有するものの洗濯耐久性は低い。洗濯
により繊維形態が破壊され粉体状になった。また引張強
度が低く、脆い繊維でカードがけ等の加工に耐える物性
を有するものではなかった。
【0045】実施例5〜9,比較例6〜9 原料繊維1を表2に示した条件でヒドラジンとNaOHが共
存する水溶液で処理を行なった。混合溶液系処理液を用
いた反応は繊維表面に処理液を付着させた後、湿熱処理
を行なう方法を用いた。得られた繊維の特性値を表2に
示した。
【0046】
【表2】
【0047】実施例5〜9は生理食塩水吸収性能と共に10回繰
り返し洗濯後の重量保持率と生理食塩水吸収性能保持率
で評価できる洗濯耐久性に優れた性能を有していること
が判る。これに対し比較例6はヒドラジン付着量が少な
いため高い生理食塩水吸収性能を有するものの洗濯耐久
性は低い。洗濯により表層吸収部であるゲル層が剥離し
ているのが確認された。比較例7はヒドラジン付着量が
多いため優れた洗濯耐久性を有するものの生理食塩水吸
収性能は低い。
【0048】塩型カルボキシル基量が多い比較例8は高い生
理食塩水吸収性能を有するものの洗濯耐久性は低い。洗
濯により繊維形態が破壊され粉体状になった。また引張
強度が低く、脆い繊維でカードがけ等の加工に耐える物
性を有するものではなかった。塩型カルボキシル基量が
少ない比較例9は優れた洗濯耐久性を有するものの生理
食塩水吸収性能は低い。
【0049】
【発明の効果】本発明の塩水吸収性繊維は、高い生理食
塩水吸収性能を示し、且つ洗濯によっても剥離を引き起
こさないゲル強度を有し、なお且つ引張乾強度を主に担
当する芯部があるために洗濯により繊維形態が破壊され
るようなことはない。従ってこれまで困難であった、塩
水吸収性能と洗濯耐久性の両立が可能となり、該高吸収
性繊維を加工することで装身具、衣料、寝具、リビング
用品、花粉症や風邪用マスク、切花輸送用包装材料、蓄
冷剤、失禁者用シーツ、メディカル用シーツ、靴インソ
ール汗取り、脇の下の汗取り材、前掛け、フェイスマス
ク、額、足、首などの冷却材、失禁パンツ、バスマッ
ト、歯科用、医療用、介護用吸水材料などの様々な用途
への応用が可能となる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被洗濯履歴を有しないときの生理食塩水
    吸収性能が自重の 5〜15倍であり、10回繰り返し洗濯後
    の、重量保持率が90%以上で生理食塩水吸収性能保持率
    が85%以上である高塩水吸収性繊維。
  2. 【請求項2】 繊維断面が、生理食塩水吸収性能を主に
    担当する表層吸収部と引張乾強度を主に担当する芯部
    の、2層で構成されていることを特徴とする請求項1記載
    の高塩水吸収性繊維。
  3. 【請求項3】 被洗濯履歴を有しない繊維の、窒素含有
    率が10〜15重量%、引張乾強度が1.0cN/dtex以上である
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の高塩水吸
    収性繊維。
  4. 【請求項4】 アクリロニトリル系重合体でなる繊維を
    基材としてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
    に記載の高塩水吸収性繊維。
  5. 【請求項5】 アクリロニトリル系重合体でなる繊維を
    ヒドラジンと水溶液がアルカリ性を示すアルカリ金属化
    合物を用いて処理し、繊維中に架橋構造の導入と、-COO
    X(X:アルカリ金属またはNH4)で示される塩型カルボキ
    シル基の含有率が2.0〜5.0mmol/gとなるように加水分解
    を行わしめることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに
    記載する高塩水吸収性繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記の処理を、先ずヒドラジンにより窒
    素含有率の増加が0.1〜1.0重量%となるように処理し、
    次いで水溶液がアルカリ性を示すアルカリ金属化合物に
    よる処理と、逐次に行うことを特徴とする請求項5記載
    の高塩水吸収性繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項5または請求項6記載の処理に際
    し、被処理繊維表面に水溶液がアルカリ性を示すアルカ
    リ金属化合物を繊維重量に対し2.5〜10.0meq/g付着せし
    めて行うことを特徴とする請求項5または請求項6記載の
    高塩水吸収性繊維の製造方法。
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